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不登校の子どもの学習支援をめぐる動きについて

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不登校の子どもの学習支援をめぐる動きについて

On the Recent Movement in the Learning Support of School Refusal Children

広瀬 隆雄

HIROSE Takao

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キーワード: eラーニング、不登校、学習支援、不登校対策 はじめに  不登校の問題が注目されてから久しい。この間、国や自治体および学校は、この問題に 対してさまざまな対策を講じてきたが、不登校の子どもの数は一向に減る気配をみせない。 これまで取り組まれてきた主な対策は、不登校の予防対策と子どもの学校復帰対策であっ た。学校復帰については、担任による不登校の子どもへの断続的な働きかけや、スクール カウンセラー・養護教諭等の連携のもとでの組織的対応の実施、子どもの居場所を確保す るためのクラス内の人間関係づくり、学校復帰に向けての保護者との協力関係の構築など、 さまざまな取り組みが実施されてきた。教育委員会による「適応指導教室」の設置もその 一つであった。これらの取り組みによって、実際に学校に復帰した子どもも多くいる。し かし一方では、それにもかかわらず、学校復帰できない子どももまた多数存在した。  こうした現実を前にして2003年以降、国は新たな不登校対策に乗り出した。不登校の子 どもに合わせた柔軟なカリキュラムや学習評価のあり方を容認し、学校外のさまざまな学 習機会と人材の活用を打ち出した。具体的には、民間の教育施設での学習の評価、不登校 の子どものための新タイプの学校づくり、大学と教育委員会の連携による不登校支援事業 の実施、ITを活用した学習支援等々である。これらはいわば正規の教育システムに子ども を合わせるのではなく、不登校の子どもに合わせて教育システムを弾力化しようとする動 きであった。もちろんこれは正規の教育システムの根幹を変更するものではなく、あくま でも学校復帰を前提にした、不登校の子どものための例外的な措置であった。  本稿では、これら新しい不登校対策の動きに焦点をあて、その内容について紹介するこ とにする。筆者自身も、桜美林大学で、eラーニングによる不登校生学習支援のプログラ ムに関わっており、あわせてその具体的な実践例の紹介と検討も行いたい。 1 不登校の現状  周知のように、統計上、「不登校」の定義とは、年間30日以上学校を休んだ児童・生徒(病 欠をのぞく)のことであり、文科省はその統計を毎年発表している。文科省「平成19年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、2007年度の場合、小 学校23,926人、中学校105,328人で、計129,254人となっている。過去最多は、2001年度の 約13万9千人で、その後2005年度までは毎年減少し続けていたが、2006年度以降、ふたた び増加に転じている。  不登校状態が継続している理由は表1のようになる。一番多いのは「情緒不安型」で、次 は「無気力型」「他の児童生徒との関係」の順序になっている。2007年度以前の統計では、「複 合型」という項目があり、それが「情緒不安型」に次いで2番目に多かったが、2007年度か らは、そうしたあいまいな項目は削除された。もともと「複合型」は、「情緒不安型」と「無

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気力型」の両方を含んでいた。「無気力型」の特徴は、学校へ行かないことへの罪悪感があ まりみられないことであり、これに対し「情緒不安型」は、学校へ行くことあるいは行かな いことへの不安が強いことである。つまり一方は「あまり気にしない」、他方は「不安に思う」 で、それぞれ異なる感情を示めしている。それゆえ「複合型」が多いのは、一人の子どもが このような両義的な感情をもっているというよりも、判断する側でそのどちらにするか決 めかねた場合の選択結果と思われる。 表1 継続している理由 区 分 小学校 中学校 計 いじめ 240 1,171 1,411 いじめをのぞく他の児童生徒との関係 2,078 14,888 16,966 教職員との関係 412 809 1,221 その他の学校生活上の影響 1,239 7,832 9,071 あそび・非行 223 11,523 11,746 無気力 6,735 30,168 36,903 不安など情緒的混乱 10,058 35,230 45,288 意図的な拒否 1,468 6,984 8,452 その他 4,930 10,347 15,277  ※国公私立小・中学校を対象  この「調査」では、不登校の人数や理由だけでなく、どのような働きかけをしたら子ども が学校復帰できるようになったのか、興味深い調査結果も載せている。特に効果のあった 学校の措置は以下の通りである。    ○特に効果のあった学校の措置  A)学校内での対応   1 スクールカウンセラー等が専門的に指導にあたった(特に中学校)   2 保健室等特別の場所に登校させて指導   3 不登校問題について全教師の共通理解を図った   4 教師とのふれあいを多くするなど、教師との関係を改善   5 友人関係を改善するための指導を行った  B)家庭への働きかけ   1 家庭訪問を行い、さまざまな指導・援助を行った   2 登校を促すために、電話をかけたり迎えに行くなどした   3 家族関係や家庭生活の改善を図るため、保護者の協力を求めた  これらの措置は特に目新しいものではない。スクールカウンセラーによる指導、保健室

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登校、学校内の連携体制、子どもとのふれあい、家庭訪問、電話による登校の促し等々、ど この学校でもやっていることである。どれが一番効果的かはケースバイケースで、あの手 この手で、できることは何でもやってみる必要があるということである。ただこうした取 り組みを行ったとしても、学校復帰する子どもの割合は、小・中学校ともに3割にすぎない。 残りの子どもたちは、あの手この手を尽くしてもなかなか登校できない。そしていま問題 になっているのは、こうした引きこもり状態の子どもである。  下の表2は、不登校状態が長期化している子どもの割合である。小6では4割以上、中3 では6割以上が長期化している。最近では担任一人が抱え込まないで、スクールカウンセ ラーや養護教諭、その他の教員が連携して不登校の子どもの支援を行うという、校内の支 援体制づくりがすすめられている。しかし学校復帰を前提とする限り、どのような体制を つくってもこうした子どもたちへの効果は疑わしい。むしろ学校以外の場での支援のあり 方を考える必要があるだろう。しかし、学校外での機関や自宅学習により出席扱いになっ た子どもの数は、きわめて少なく、特に自宅におけるIT等を活用した学習活動は1%を切っ ている(表3)。 表2 前年度から継続している児童生徒数 小学校 小4 小5 小6 35.8% 38.5% 43.1% 中学校 中1 中2 中3 29.9% 49.9% 62.9%  ※2007年度国公私立小・中学校を対象  ※比率=2006年度からの継続数÷2007年度不登校児童生徒数 表3 学校外の機関や自宅での学習により出席扱いになった児童生徒数 学校外の機関等で相談・指導 小・中学校 18,073 割合 14% 自宅におけるIT等を活用した学習活動 小・中学校 219 割合 0.17%  ※学校外の機関等~教育支援センター(適応指導教室)や民間施設など  ※割合は、全不登校児童生徒数で割ったもの  以上、不登校の現状を簡単に紹介したが、もちろんこの種の統計資料から不登校の実態 がつかめるわけではない。不登校の子どもは一人ひとり異なっており、「年間30日以上の 欠席」という枠組みでくくってもその実像が見えてくるわけではない。つまりこの統計に よれば、1年間学校休んだ子どもも、30日休んだ子どもも同列に扱われる。年間30日とい うと、1週間に1回程度の割合で学校を休む計算になり、あまり不登校という実感をもた ない子どもや保護者もいるだろう。また継続している不登校の割合について紹介したが、

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その実態は、1~ 2年長期にわたって学校を休んでいる子どももいれば、毎年30日程度休 んでいる子どももいるということである。  もう一つ大切なことは、学校側がさまざまな働きかけを行っても、学校復帰できるのは 3割にすぎず、小6では4割以上、中3では6割以上が長期化しているという現実である。つ まりなかなか学校復帰できず、しかも長期化した引きこもり状態の子どもが多く存在する ということである。こうした子どもへのサポートをどうするか、これが今日大きく問われ ている。学校に復帰するまで辛抱強く「待つ」というのも一つの手であるが、その間の子ど もの学習保障をどのように行えばよいのか。学校への復帰を前提にこの問題を考えるかぎ り、子どもの学習保障は困難である。  しかし、学習の場を学校に限定せずに、学校外の施設や家庭等に広げて考えれば、学習 保障の可能性は拡大する。最近では、このような考えにもとづいて、子どもの学習を保障 する動きが広がりつつある。つまり、学校ではなく、不登校の子どもが行きやすい場所(あ るいは居やすい場所)で学習を行う、あるいは子どもが居る場所に家庭教師等が入って学 習の援助を行う、あるいはITを活用して学習を行うといったさまざまな取り組みが模索さ れている。学習を行う場は正式な学校であるといった固定観念にとらわれているかぎり、 今日の不登校問題に対処することはできない。不登校の子どもの実態に合わせて学習の場 と内容を変えていく柔軟性が求められている。 2 不登校問題に対する国の対策 (1)1992年調査研究協力者会議報告について  不登校の子どもが増大し、社会問題化するようになったのは、1980年代以降である。文 部省(当時)は、それへの対応として、1992年に不登校問題を検討するための調査研究協 力者会議を設置した。同じような調査研究協力者会議は、その後、2003年にもう一度開か れている。  最初の調査研究協力者会議の報告(1)は、不登校はどの子にも起こりうるもので、病気で はないと表明して有名になった。それまでは不登校の子どもは変わった子で、忍耐力がな く、親の育て方が悪い等々といわれてきた。それに対して、不登校は特別な子どもの問題 ではなく、どの子でもなりうると指摘し、教育関係者に大きなインパクトを与えた。そし て不登校の子どもへの対応として、無理に登校刺激を加えるのではなく、そっと見守る姿 勢の重要性を強調し、学校が「心の居場所」になることを求めた。  具体的な取り組みの提言としては、①児童生徒一人一人の個性を尊重し、児童生徒の立 場に立って人間味のある暖かい指導を行うこと、②クラス内の子どもの人間関係に目を配 り、学級内での子どもの居場所に配慮すること、③子どもの豊かな成長発達を見守る視点 に立った保護者との協力関係の構築などであった。これらは確かに正論ではあるが、ある べき教育論をのべた抽象的・一般的な内容の提言であった。しかも、「人間味のある暖かい 指導」「子どもの居場所に配慮すること」など、教師個々人の指導力に大きく委ねられてい

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た。逆にいえば、不登校の子どもの出現は、教師の指導力不足とみなされかねない一面を もっていた。また親との協力関係といっても、多様な親の存在という現実を見逃していた。  このようにこの報告書は、不登校の子ども観を変えることには寄与したが、抽象的・理 念的な内容のゆえに、具体的な解決にはほとんど結びつかなかった。実際、この報告書が 出されたあとも不登校の子どもは増え続けたのである。  当時の報告書にみられる不登校の子どものイメージは、学校に行きたくても行けない子 どもといったイメージであった。どちらかというと、まじめで几帳面な子どもで、行けな いことで自分を責めるようなタイプの子どもである(2)。しかしその後、不登校の子ども= 「学校に行きたくても行けない子ども」というイメージではとらえきれない、多様化した 不登校の子どもが多く出現するようになった。いわゆる無気力型や怠学・遊び型の不登校 である。また、登校刺激を加えず、そっと見守ることが大切だというメッセージは、時には マニュアル化され、休んでいる子どもには何もしないでよいのだという対応を教育現場の 中に生み出した。第1回の調査研究協力者会議が開かれた当時の不登校の子どもの数は、6 万7千人ほどであったが、2000年には、約2倍の13万人にまで達していた。 (2) 2003年調査研究協力者会議報告について  不登校の増大とその要因の多様化を背景に、再度この問題を検討する必要に迫られ、 そこで設置されたのが2003年の調査研究協力者会議であった。同会議の報告書(3)では、 1992年の報告書に対して、基本的には「今でも変わらぬ妥当性を持つ」としながらも、不 登校の増大を考慮すると、「時代の変化とともに、新たに付加すべき点がないかを今一度検 証」することが必要だとのべている。  この報告書の基本的な立場は、不登校の要因が多様化しており、単に刺激を与えないと いう方法だけでは限界があるとしている点である。そして担任一人の力だけでなく、養護 教諭・スクールカウンセラー・NPO等の連携・協力のもとで不登校問題に対処する必要性 を説いた。具体的には、①養護教諭、スクールカウンセラーと連携しながら学校内におけ る組織的な対応を図ること、②長期化した子どもに対して、学習と評価のあり方の検討、 カリキュラムの弾力化、学習評価の工夫を図ること、③保健室・相談室への登校、通所型施 設での学習、訪問型支援の活用、ITの活用、進路問題など不登校への多様な対応を図るこ と。つまりこれまでは教師個人の指導力に委ねられる傾向が強かったが、組織的対応や外 部資源の活用に目が向けられるようになった。さらに現行のカリキュラム・評価のあり方 に不登校の子どもを合わせるのではなく、子どもの実態に合わせてそれらを弾力化すべき だとしたのである。  この報告書を受けて文科省は通知を出し(4)、不登校の子どもが適応指導教室や民間施設 等の学校外の施設で指導を受けている場合、指導要録上出席扱いすることを認める方針を 打ち出した(5)。その後、構造改革特区の実験例を踏まえながら、学習指導要領によらない 特別な教育課程編成を容認したり、NPO(非営利組織)による不登校のための学校設立を

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認めたりするなど、次々と弾力的な政策を実施することになった。なかでも注目すべきは、 ITを活用した在宅学習の取り組みである。  ITの活用については、2003年の調査研究協力者会議の報告に、その可能性を検討する必 要性が記載されていた。「 ITを不登校児童生徒への指導や支援にどのように活用していく かについては、今後先駆的・実験的な事例等を踏まえながら研究する必要がある。既に保 護者との相談等における電子メールの活用については一定の成果が報告されている。また、 特に、ひきこもり傾向がある等、人との直接的な関わりが苦手な児童生徒については、相 談等のきっかけとしてITを活用することは有効である。(中略)/なお、学習指導における ITの活用については、高等学校以上では、通信制の学校が存するなど相応の普及をしてい るが、義務教育段階にあっては、ひきこもり傾向のある不登校児童生徒に対し部分的にイ ンターネットを利用した学習の実施、個別学習ソフトの開発などの試みも見られるものの、 今後なお一層の研究を進めていくことが必要である」(6)  その後文科省は、2005年に「IT活用による指導要録上の取扱い」に関する通知(7)を出し、 不登校の子どもが自宅においてIT等を活用して行った学習活動について、校長は指導要録 上出席扱いできる措置をとった。ここでいうIT等を活用した学習とは、インターネットや 電子メール、テレビを使った通信システム、郵送、ファクスなどを利用した学習活動を意 味する。しかし、子どもが自由にITを活用した学習を行えばよいというものではなく、こ れには以下の要件が必要とされた。すなわち①保護者と学校との間に十分な連携・協力関 係があること、②訪問等による対面の指導が適切に行われること、③計画的な学習プログ ラムであること。  文科省は、ITを活用した学習環境を整えるとともに、他方では、具体的なIT活用に関す る研究事業に着手した。国立教育政策研究所生徒指導研究センターが2006年3月に発表し た「不登校支援のためのIT活用ガイド」の報告書は、その研究成果の一つである。   ここで扱っている主なITのツールとは電子メールである。電子メールを用いてどのよう に学習支援を行うか、その方法と留意点がのべられている。同報告書によれば、電子メー ルを用いた学習支援には二つあるという。一つは、電子メールで課題を送るやり方。もう 一つは、学習ソフトを用いて学習させ、質問があれば、教育委員会の職員や担任が電子メー ルで回答するという方法である。学習教材のコンテンツは、教育委員会のサーバーにあり、 生徒がそこから教材をダウンロードして学習する。そして質疑応答はメールを利用すると いう仕組みになっている。ただこの報告書では、最先端のITを用いた学習支援のさまざま な取り組みを紹介しているが、「ITは一つの道具に過ぎず、ITを活用した不登校支援に関 わる人は、この道具を媒介にして質のよい人間関係をつくることが求められている」(8) のべ、ITの活用それ自体を自己目的化しないように注意を促している。

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3 不登校の子どもへの新たな支援策 (1)不登校対策の新たな動き  2003年の調査研究協力者会議の報告以降、文科省および各自治体は、正規の学校に不登 校の子どもを合わせるのではなく、不登校の子どもに合わせた新たな学習形態や学習方法 を展開する。  その一つは、構造改革の教育特区を利用した新たなタイプの学校の創設である。たとえ ば2004年4月に開校した「八王子市立高尾山学園」がその例である。これは公立としては 唯一の不登校のための小中一貫校であり、授業開始時間や時間割を柔軟に組み、独自のカ リキュラムにもとづく学校運営を行う学校である。校内の支援体制としては、スクールカ ウンセラーとの連携だけでなく、教員志望の若者や市民ボランティアによるメンタルサ ポーター制度も導入している(9)  同じく教育特区を利用した学校としては、2007年に開校した「東京シューレ葛飾中学校」 がある。これはNPO法人「東京シューレ」設立の私立学校で、特区認定により葛飾区から 校舎を借りて開校した学校である。フリースクールの草分けとして有名な「東京シューレ」 は現在4カ所に開設しているが、本格的な学校設立はこれが初めてである。定員は120名で、 授業時間は午前10時から始まり、1日4時間の学習を行う。カリキュラムや授業時数は柔 軟に編成しており、英・数・国は各学年で授業を受け、他教科は3学年編成の「ホーム」(約 28人)で勉強するというユニークな学習方法をとっている(10)  一方、不登校の子どもの進路保障をめぐる動きとしては、東京都のチャレンジスクール がある。90年代後半以降、高校の統廃合が行われ、チャレンジスクールという新たなタイ プの高校(単位制の定時制)が誕生し、不登校生の受け皿になった。2000年開校の桐ヶ丘 高校(北区)から2007年開校の八王子拓真高校(八王子市)に至るまで、現在5校のチャレ ンジスクールが設立されている。八王子拓真高校の場合、募集定員が300人で、午前・午後・ 夜間の3部制をとっている。入試方法は、一般枠(学科試験と調査書)とチャレンジ枠(作 文と面接のみ)の2つがあり、不登校生はいずれも受験できるが、調査書を必要としない チャレンジ枠は不登校生への特別な配慮がなされている(11)  以上は新しいタイプの学校による不登校生支援であるが、他方では大学生・市民のボラ ンティアによる支援活動もある。教育委員会が主体となって学生・大学院生を家庭に派遣 して、引きこもりがちな子どもの「話し相手」をさせる事業(12)、市民ボランティアを募り、 そのボランティアが学校内の相談指導学級に通う不登校の子どもの「話し相手」をする事 業(13)などがある。  一方、教育委員会と大学が連携して組織的に不登校生支援を行うケースもある。その代 表は、福井大学の「ライフパートナー活動」である。これは、福井大と福井市教育委員会の 連携のもとに、教職志望の学生が、地域の小・中学校や家庭を訪問し、不登校の子どもの学 習支援を行うというものである(14)  同様な取り組みとして、2007年から始まった桜美林大学のeラーニングによる不登校生

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支援がある。これも授業の一環として行われる大学生の支援活動であるが、ITを活用した 学習支援という点で特徴的である。不登校の子どもがパソコンを使ってeラーニング教材 を学習し、そのなかで生じた質問や相談についてインターネットを介して大学生が対応す るというシステムである。以下、この2つの事例を紹介することにする。 (2)福井大学のライフパートナー事業 ①ライフパートナー事業の内容  福井大学ではかなり早い時期から(1994年頃から)、市教委と連携しながら不登校支援 の取り組みを行ってきた。不登校支援を主に行っているのは、福井大学の教員養成コース (教育地域科学部学校教育課程)の教員と学生たちである。教員養成コースの必修科目であ る「学校教育相談研究」を受講した学生たちが、週1回(2時間ほど)、不登校生のいる家庭 や学校に派遣され、支援を行うというプロジェクトで、「ライフパートナー事業」とよんで いる。「学校教育相談研究」の授業は、通年科目の4単位で、学生は最大8単位まで修得可能 である。担当責任者の話(15)によると、だいたい130人前後の学生が履修しているという。 教職志望の学生は全員必修であるが、教職をとらない工学部の学生も履修している。  授業は、最初に不登校に関する講義を数回行い、そのあとは10ほどのグループに分かれ て、ケースカンファレンスを実施する。グループのなかには、2年目の学生や不登校支援 の取り組みを始めた学生がいるので、これらの学生が事例報告し、それをもとに話し合い を行う。  大学の教員と院生、現職教員、適応指導教室の教員等を含めて10人ほどで各グループを 担当する。大学の教員だけでなく、院生や研修中の現職教員や適応指導教室の教員が参加 している点が大きな特徴である。特に適応指導教室の教員の参加によって、学生と不登校 生とのマッチングがしやすくなるとのこと。つまり適応指導教室に通う子どもからライフ パートナーの要望があると、その教員が子どもと学生の橋渡しを行い(お見合い)、子ども の要望をふまえた最適の学生を選定できるということである。適応指導教室の教員や教育 委員会の担当者が実際に授業に参加し、直接学生と触れあったり、ケースカンファレンス に参加したりするのは、ライフパートナー事業の推進に大きく寄与している。  学生を派遣するのは、福井市だけでなく、隣接の市を含めて5市(福井市、越前市、鯖江 市、あわら市、坂井市)に及ぶ。派遣は、学校と家庭の2通りあり、家庭の場合、学生二人で 1組になり、不登校生のいる家庭を訪問し、週1回、2時間ほど子どもと過ごす。期間は、一 応3ヶ月が一区切りになっている。この3ヶ月は見直しのための区切りであり、お互いに相 性があえば延長も可能であるが、あわない場合は、そこで打ち切りとなる。学生の数は130 人ぐらいいるが、期間を3ヶ月と区切ることで、ほぼ全員がこの事業に参加できるという。 ②ITを活用した取り組み  ライフパートナー事業では、ネットを利用したeポートフォリオの活用が行われている。

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ポートフォリオとは、もともと「紙ばさみ」とか「書類入れ」という意味がある。それが転 じて、個人の活動記録をファイルしたものをポートフォリオとよぶ。福井大学ではサーバー 上にポートフォリオのフォルダを作成し、不登校の支援活動を行った学生が、そのフォル ダ内に報告書を書き、大学教員や院生、現職教員がそれについてコメントを記すというシ ステムである(16)。これによってネット上での意見交換が迅速かつ容易に行われる(ただし 実際の授業でも同じような意見交換の機会はある)。しかし、なかには教員や院生が多忙な ため、なかなか報告にコメントを書いてくれないという、学生からの不満も報告集(17)にみ うけられた。  もう一つ、福井大学の取り組みで面白いのは、「テレビ会議システム」である。これは、 福井市の学校ネットワークの回線に入り込み、適応指導教室と中学校の相談室と大学の3 拠点をネットワークで連結し、実験授業などを同時放映するというものである。大学で学 生(主に工学部の学生)が実験授業を行い、それを適応指導教室と相談室の子どもたちが 同時に見る。たとえば適応指導教室のテレビ画面には、相談室の子どもと大学の授業の様 子が映し出され、それぞれ双方向のやりとりが可能になっている。なぜ適応指導教室と相 談室を相互に映すかというと、適応指導教室の子どもに、いままで自分のいた相談室の子 どもの様子を知ってもらうためらしい。これによって適応指導教室の子どもが抵抗なく学 校復帰できるように、との配慮がある。  現在は、1カ所の適応指導教室と相談室で、年4回ぐらい実験的に実施している。費用は 大学側が負担しており、全市的にやるとなるとテレビが20台ほど必要になり、多額の費用 がかかるので不可能とのこと。テレビ会議システムの実験授業は、主に工学部の学生が担 当する(ライフパートナーは教職志望の学生に限定)。放映時間は1時間ぐらいで、内容は、 総合学習に関係する実験やクイズ形式の授業が多い。学生は1年間で、2回ほど担当するが、 かなり熱心に取り組んでいるとのことである(18) (2)桜美林大学におけるeラーニング学習支援 ①eラーニング学習支援について  桜美林大学では町田市教育委員会と連携して、桜美林大学生による不登校の子どもへの 学習支援を行っている。これはインターネットを活用した学習支援であり、全国的にもめ ずらしい取り組みである。このプログラムは基盤教育院フィールドスタディーズ科目「地 域社会参加(不登校生学習支援)」(2単位)として実施されており、筆者も含めた複数の教 員で担当している。  この間の経緯についてふれておくと、桜美林大学は、ネットワーク多摩の加盟校として、 大学間におけるeラーニングの事業を試行的に行っていたが、2006年にeラーニングを活 用した不登校生支援の新たなプランを提起し、それがネットワーク多摩の事業の一環とし て認められ、始動することになった。  具体的には2006年9月に町田市と桜美林大学との間で、教育についての連携協定が結ば

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れ、町田市内の不登校生を対象にしたeラーニングによる学習支援の取り組みがはじまっ た。このプロジェクトを授業の一環として位置づけ、支援活動が不登校の子どもだけでな く、支援する学生にとっても意義のある活動になることをめざした。すなわち支援活動を 行うことで単位取得ができ、さらに子どもとの関わり合いを通して、不登校問題に対する 学生自身の理解が深められることをめざしたのである。まさに授業そのものが「実践教育」 の場であった。  eラーニングの学習支援のしくみについて説明すると、これは不登校の子どもが自宅で パソコンの学習ソフトを勉強し、分からないことがあれば、インターネットを通じて大学 生に質問するというシステムである。学習ソフトはネット上のサーバーにあり、子どもは それをダウンロードして学習する。問題の形態はいわゆるプログラム学習とよばれるもの で、いくつかの選択肢のなかから正解の回答をクリックして選ぶ。そのときに間違ったり、 分からなかったりしたとき、画面上にある「質問」ボタンを押すと、メールが送信できるよ うになっていて、子どもはそこに質問内容を書き込む。一方、大学生はそれぞれクラスの 担任を受け持っており、自分のクラスの子どもから質問が来た場合、それについての回答 を送り返すというものである。質問内容と同時に、そのときに子どもがやっていた問題も パソコン画面上に表示され、どこでつまずいたかを確認できる。こうしたシステムがあれ ば、学校に行かなくても、不登校の子どもたちは自宅で気軽に勉強できるというのが一つ のウリであった。  当初、開始するに当たって、子どもから寄せられるメールに、学習に関する質問だけで なく、いろいろな悩み事や相談事が書かれていたらどうするか、その対応を真剣に考えた。 私たちのやることは、あくまでも学習支援なのだから、深刻な悩みや相談には深入りすべ きでなく、専門の相談機関を紹介するというのが、そのときの結論であった。大学に入っ てすぐの学生たちが、不登校の子どもの心を理解し、きちんと対応できるだけの力量があ るかどうか不安だったからである。  しかし、これらは杞憂であった。つまり質問がほとんど来なかった。問題画面には、「質問」 のボタンのほかに、「ヒント」のボタンがあって、わざわざ質問しなくても、このヒントを 読めば分かるようになっている。また、小学生の場合には、パソコンに文字を打ち込んで 質問するという作業自体が大きな負担なのかもしれない。さらに見ず知らずの大学生に質 問すること自体、勇気のいる行為である・・・等々によって質問の数は少なかった。この2 年半で質問メールが来たのは、ほんの数回にすぎない。  質問メールだけでなく、学習ソフトへのアクセス数も思ったほど伸びなかった。これも 質問メールの少なさの要因になっている。たとえば、07年春学期(5月─8月)はのべ142 回のアクセス、秋学期(9月─翌年3月)はのべ229回であったが、翌年からアクセス数が急 減し、09年の春学期(4月─6月)には20回ほどまでに落ち込んでいる。これは一人の子ど もがアクセスし、学習した場合、その日を1回とカウントしたもので、同じ子が何日間もア クセスしているケースが多いので、実際に取り組んでいる子どもの数はそれほど多くない。

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②問題の原因について  eラーニングにおいて質問メールや学習ソフトへのアクセス数が増えない理由はいくつ かある。それらを挙げると以下のようになる。  第1は、学習ソフトの問題である。パソコンを利用したプログラム学習は、変化に乏しく、 単調な作業の繰り返しになる。これをやりこなすには相当の忍耐が必要である。自分のペー スに合わせて、いつでもどこでもできるというのがウリであるが、モチベーションを持続 させることは大変難しい。また、たとえある程度やったとしても、どれだけ力がついたか を確認する機会がないので、達成感を得にくい。学校にいれば定期試験で成果を確認した り、担任の励ましや褒め言葉で勇気づけられたりして「やる気」が起こるが、自宅でやる場 合、そうした機会がない。ただ漫然と問題をこなすだけである。そうした励ます担任の役 割を、本来はeラーニングの大学生が行うはずであったが、子どもから質問やメールが来 ないため、コンタクトそれ自体がとれないのである。  第2は、学習支援システムの問題である。eラーニングの基本は、インターネットを介し ての質問─回答のやりとりである。ITを活用したコミュニケーションは、一見便利な面も あるが、一方では「かったるい」面もある。そもそも質問の内容を文章にすること自体、非 常にかったるいことである。また返信のために、わざわざ文章で回答を書くことも、かっ たるいことである。そばに人がいれば、すぐに質問でき、すぐに回答がもらえるのに、それ をわざわざ文字に書き直さなければならず、さらに教科によっては、化学式や数式や図形 を用いて説明しなければならない。質問する側も、回答する側も、ちょっとしたことをす るのに大きな負担がともなう。質問メールが来ない原因の一つに、この種の「煩わしさ」が あるのかもしれない。  第3は、このeラーニングの授業が半期で終了する点である。実際問題として、半期でe ラーニングの学習支援を行うのは非常に難しい。不登校問題や対応の仕方についての講習 を行い、eラーニングのシステムとその使い方を指導し、やっと一人で取り組みができる ようになるまでに、学期の半分を費やしてしまう。学習履歴のチェックやホームルームへ の書き込み等の作業が行われるのは、6~ 7回に過ぎない。やっと慣れたと思ったら、学期 が終了し、学生が入れ替わってしまうのである。たとえ子どもとのつながりができても、 授業が終了すると同時にそのつながりも切れてしまう。継続的な支援のあり方を考えた場 合、少なくとも1年の授業期間が必要である。ただ、なかには単位のためではなく、純粋な ボランティアとして継続的に参加し、初心者の学生への指導や企画運営等で積極的に協力 してくれる学生も何人かいる。  そして最後に最も大事な問題は、教える側の学生と学習者である子どもとの間に、人間 的なつながりがつくりにくい点である。個人情報の保護の問題や、心理カウンセラー的役 割の排除などによって、学生には、子どもに関する個人情報を知るすべがない。子どもに とっても、質問メールなどによって、きっかけをつくらない限り、クラス担任である学生 の情報は分からない。つまり、質問メールを出さないと、学生の情報を得られないが、逆

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に情報がないからこそ質問メールが出せないという悪循環を生んでいる。顔の見えないこ うした両者の関係は、おそらく学習動機と支援動機の双方のモチベーションに影響を及ぼ していると思われる。教育の原点は人間的なつながりであるといわれるが、まずはface-to-faceの具体的な人間関係をつくり、それからeラーニングに取り組むという手順が必要で ある。在宅しながら学習ができ、質問もできるという手軽さはあるが、それを持続的な取 り組みにするには、顔の見える支援者の暖かい励ましの言葉が不可欠である。 ③問題点の改善について  eラーニングをめぐる問題点については、この間、さまざまな改善策を試みてきた。  まず子どもからメールが来ないのであれば、こちら側から、積極的に子どもたちに呼び かけてみようということで、ポータルサイトにクラスのホームルームという欄を設けた。 担任の学生は、ここに自分のクラスの子どもに向けて、さまざまなメッセージを書き込む。 それを読んだ子どもたちがメッセージにコメントできるように、子どもたち用のメール送 信欄も作成した。子どもからのコメントはあまり来ていないが、アクセス記録を見ると、 多くの子どもがホームルームのメッセージを読んでいることが分かる。  次に、教室内の活動だけでなく、範囲を広げて支援活動を積極的に行おうという試みも 始めた。たとえば、講演会を開催し、子どもと保護者に参加してもらう、あるいは、「ふれ あいの日」と称して、不登校の子どもと大学生が一緒に料理づくりを楽しむといった企画 である。それぞれ半期に1回の割合で実施し、それと同時に企画に参加した子どもや保護 者向けのeラーニング講習会も開催した。講演会ならびに「ふれあいの日」のチラシは、大 学生が自分たちで作成し、それを教育委員会→校長会→各学校の担任に渡るようにしてい る。企画への参加者はそれほど多くないが、これがきっかけになって、私たちと子ども・保 護者との新たな結びつきも生まれている。  上記以外の取り組みとしては、適応指導教室への見学や小・中学校への大学生の派遣な どを行うことにした。町田市内には小学校と中学校に適応指導教室があり、その両方に学 生たちを引率して見学に行く。また学校からの要請で大学生を派遣するというケースもあ る。学校によっては不登校の子どものための相談室があり、教室に入れない子どもはこの 部屋で1日を過ごす。担任やその他の教員は多忙で、相談室にいる子どもの面倒を見るこ とができないので、大学生に支援を依頼するというわけである。学校によっては相談室に パソコンを設置し、インターネット回線をひいて、eラーニング学習を試みたところもあ る(19)  そのほかに新たな試みの一つに、eラーニングのコンテンツづくりがある。コンテンツ といっても、無味乾燥な学習教材ではなく、ビデオカメラを使ってつくる子ども向けの映 像である。学生たちが自分たちでテーマを考え、シナリオをつくり、自分たちで撮影をして、 一つの作品に仕上げる(時間は15分ほど)。テーマは学習に関連するものや(たとえば理科 の実験)、遊びや趣味に関連するものなど、小・中学生が興味関心を引くような面白いテー

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マであれば何でもよいことになっている。15分ものの作品をいくつかつくり、これをeラー ニングのWeb画面に掲載する予定である。 おわりに  正規のカリキュラムと学習評価にもとづく学校での教育を「フォーマルな教育」と位置 づければ、近年、国が不登校対策として追求してきた教育は、「インフォーマルな教育」と いってよい。もちろん、これによって、従来の学校復帰をめざす担任を中心とした不登校 対応が否定されたわけではない。学校復帰をめざす取り組みは従来どおり重点的にすすめ つつ、それではなかなか解決できない長期的な引きこもり状態の子どもへの対策として、 「インフォーマルな教育」が追求されてきたといえる。それは一言でいえば、学校の外部の 教育施設や教育機関、あるいは外部の人材=大学生や市民ボランティアを活用すること、 さらにITなどの最先端の情報通信機器を活用することであった。当然それに合わせて、正 規の学校を中心に組み立てられたカリキュラムや学習評価のあり方も弾力化せざるをえな かった。  こうした新たな取り組みはまだ始まったばかりで、その成果を見極めるには時間が必要 である。特にITを活用したeラーニングについては、不登校の子どもにとっては、「学習の 道具」の一つに過ぎず、それへの過大な期待は禁物であり、ITの活用それ自体を自己目的 化してはならない。支援者と学習者の間における人間的な関係づくりこそが大事であり、 そうした関係性があってはじめて子どもの学ぶ意欲と継続性を高めることができるのであ る。また不登校の子どものために新たなタイプの学校をつくっても、そこで新たな不登校 が生じているという報告もあり、この種の取り組みで問題が一挙に解決するわけではない。 さらに不登校支援で難しいのは、不登校の子どもが多様化していて、その対応が一様では ない点である。不登校になった背景も要因もそれぞれ異なり、またタイプもちがっている。 怠学型や非行型の不登校で、保護者も無関心といった場合、まわりからどのような働きか けを行っても、当事者に届かないということもある。たとえインフォーマルな教育であっ ても、それにさえ関心をもたない子どももいる。いずれにしてもこの取り組みで大切なこ とは、不登校の問題をすぐに解決できる魔法の方程式はないということである。学校内外 の資源と人材をいろいろと活用しながら、不登校の子どもに対する支援活動を地道に行っ ていくことが重要である。

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註 (1) 調査研究協力者会議報告「登校拒否問題について」「文部時報」1992年8月。 (2) この種のタイプの子どもは、一元的な価値を強制する教師と学校の管理主義的な雰囲気に耐え きれなくなり、不登校状態になると考えられていた。「登校拒否になった子どもたちは、誰より も『学校に行かなければ』という思いを持ちながら身動きできない状況に追い込まれた子ども たちである」。広木克行「登校拒否問題から学校と教師を問い直す」『教育学研究 第64巻第3号』 1997年9月、p.47参照。 (3) 調査研究協力者会議報告「今後の不登校への対応の在り方について」「文部科学時報」2003年6月。 (4) 文部科学省通知「不登校への対応の在り方について」2003年5月16日。 (5) 通知では、「不登校児童生徒が適応指導教室や民間施設等の学校外で指導を受けている場合、こ れらの相談指導を受けた日数を指導要録上、出席扱いとする」と記されている。なお文科省は、 1992年に、学校復帰を目指すフリースクールなどに通う場合は、校長裁量で出席扱いにできる 措置をとっていた。 (6) 前掲「文部科学時報」2003年6月を参照。 (7) 文部科学省通知「IT活用による指導要録上の取り扱いについて」2005年7月6日。 (8) 国立教育政策研究所生徒指導研究センター「不登校支援のためのIT活用ガイド」2006年、3月、 p.8。 (9)「朝日新聞」2005年6月14日付け。なお、八王子市立高尾山学園の『平成19年度 学校要覧』に よれば、教育の基本理念について、「本校における教育活動は、児童・生徒の不登校状態に応じて、 一人一人の心の安定を図るとともに、適切な学習支援による基礎学力の向上と集団活動の中で 人間関係性の能力を養うことにより、生きることへの自身と社会的自立(社会性)を獲得するこ とをねらいとして行われる」と記されている。 (10)「朝日新聞」2006年7月8日付。 (11)「朝日新聞」2006年9月28日付。 (12)代表的なものに横浜市が行っている「ハートフルフレンド」などがある。これは1991年度から 始めた事業で、教育総合相談センターが,家庭に引きこもりがちな小・中学生に対して,年齢的 に兄や姉にあたる大学生・大学院生(ハートフルフレンド)を家庭に派遣し,遊び相手や話し相 手になり,家庭にひきこもりがちな小・中学生が,再び学校へ登校できるようになることをめざ すもの。基本的には家庭教師的な役割は行わない。同種の事業は他の自治体でも実施されてい る。 (13)たとえば2007年6月に八王子のある中学校を視察したが、そこでは「特別支援教室」が設けられ、 学校の呼びかけに応じた12名の市民ボランティアが子どもの世話をしていた。市民ボランティ アの役割は学習以外の世話をすることで、その他にカウンセラーやメンタルサポーターがかか わっていた。 (14)東京国際大学も同様の取り組みを実施している。川越市教育委員会との連携のもとで、人間社 会学部・福祉心理学科の学生が中心になって、市内の不登校児童・生徒の支援を行っている。不 登校支援に関わりたい学生がボランティア登録し、一定の研修を受けたうえで、「スチューデン ト・サポーター」として活動をする。「スチューデント・サポーター」の活動は3種類あり、①家 庭に派遣(2人二組、1週間に1回、夕方2時間くらいの学習支援)、②学校の教育相談室に派遣、 ③大学内で行う第3の居場所での支援である。「第3の居場所での支援」とは、学内で陶芸、造形、

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映像、料理などを子どもと一緒に行う活動である。時間は2時間くらいで、大学生と子どもが一 緒に陶芸をしたり、料理を作ったりして、コミュニケーションを深めるのがねらいである。なお、 桜美林大学のeラーニング不登校生学習支援のプロジェクトが中心になって、2009年5月30日 に東京国際大学の担当責任者を招き、講演会を開催した。 (15) 2009年3月19日に福井大学「ライフパートナー事業」の担当責任者に面接調査を実施。あわせて 福井市教育委員会の担当者にもヒアリングを行った。 (16)このeポートフォリオについては、福井大学教育地域科学部『地域と協働する実践的教員養成プ ロジェクト 実施報告書 2003─2006』2007年3月、p.121以下に詳しい。 (17)福井大学教育地域科学部『平成20年度 ライフパートナー活動報告』p.26。 (18)福井市教育委員会の担当者から聞いた話によると、福井市ではこの「ライフパートナー事業」と は別に、大学院生が子どもの学習と相談を担当する取り組みも行っている(週1回2時間)。また 県の義務教育課の取り組みとして、「心のパートナー事業」があり、これは一般の大学生による 不登校生の学習支援とのことである。 (19)小・中学校内でパソコンを用いて、eラーニング学習のデモを試みたことがあるが、パソコンが 旧型であることに加え、学校専用のネットワーク回線とサーバーがないために、インターネッ トがなかなかつながらず、またつながっても突然ダウンしてしまうことがたびたび生じた。

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