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初等教育教員として児童の造形活動を支援するために求められる能力に関する考察 (9) : 「初等図画工作」の授業改善について

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(1)初等教育教員として児童の造形活動を支援するために 求められる能力に関する考察(9) ∼ 「初等図画工作」の授業改善について-. 初田隆*・岩下碩通* (平成15年10月31日受理). A Study of Teaching Skills Required for Elementary School Teacher-s to Enhance Children-s Creative Art Activity (9) ・To Point out Several Aspects of Revision of ''Study of Elementary School Subjects (Art and Crafts)". Takashi HATSUDA and Hiromichi IWASHITA Abstract The purpose of this study is to improve elementary school teacher's skills of basic technique and leading about Arts and Craft. Furthermore this report pointed out several aspects of revision of the method of teaching.. はじめに. 大学生の授業態度や勉学意欲の低下が問題視されてす. 兵庫教育大学学校教育学部附属実技教育研究指導セン. でに久しいが、問題行動への直接的な対応を繰り返すの. ター〔以下実技センターとする〕美術教育分野では、自 学自習によって一定の水準に達したと認められる学生に 「グレード」を付与する「グレード制」を基軸に、学部. 容及び授業展開をっくり出すことによって学生の課題意. ではなく、現代における青年期の問題を踏まえた授業内 識や学習意欲の喚起を図るべきであると考える。. 学生の実技力及び実技指導力の向上を図ってきた。 また、平成12年度からは、学部1年生を標準対象とし. るように、モラトリアムを社会的に保証する制度である. た教養基礎科目「初等図画工作」を実技センター所属教 官2名で担当しており、グレードとの関連性を重視した. た今日の社会においては、モラトリアム自体が変質して. 大学とは、学生がアイデンティティの確立に専念でき ともいえるが、価値観の多様化と近未来の不透明性といっ. 授業を行ってきた。 近年、大学改革の動きとともに、授業改善に向けた実. きていると言われている。モラトリアムが社会的に受容. 践研究の必要性も高まりつつあり、 FDが注目を集めて いる。本稿では、 「初等図画工作」の実践を通し、初等. 踏みとどまったまま、アイデンティティの追求をおろそ. され、それ自体が目的化されるにいたっており、そこに かにするという現象が指摘されている1)。. 教育教員としての実技力と実技指導力の向上を図るため の授業のあり方を考察するものである。. 学生の授業態度からも甘えや依存、自己中心性などの 幼児化傾向、自らの生き方や価値観を追求する姿勢の希 薄さや責任性の回避など、モラトリアムに安住する様相. 1. 「初等図画工作」の内容構成及び指導の観点 現代における青年期の問題及び学生の造形課題などを. が伺える。 また、宮台真司は成熟社会における「承認の供給不足」、. 踏まえ、 「初等図画工作」における授業内容の構成及び 指導の観点を示す。. つまりは他者とのコミュニケ-ションを通して承認され. 1 - 1.現代における青年期の問題と学生の授業態度. を達成することから広範に離脱していく状況を問題視し. た経験の乏しい若者がコミュニケーションを通じて何か. *兵庫教育大学学校教育学部附属実技教育研究指導センター. 一57-.

(2) ているが2)、承認欲求の充足が不完全である場合、自尊. する営みであるといえる。藤沢英昭は次のように述べて. 感情が育ちにくく、自分を大切にできなかったり他者と の関係性を発展させていくことも困難になる。 このことがアイデンティティの確立を一層疎外するこ. いる。 「自分の感性が他者のそれとどこで重なり、また どこで重ならないか、同化を異化がバランスをとり、ま たくづし、限りないスパイラルを描いて、ダイナミック に上昇していく過程を造形教育のプロセスと考えること はできないだろうか。そしてこのプロセスは人を理解し、. とになり、また、教室内での問題行動を強化しているも のと思われる。 現代の青年に関わる問題は複雑であり、その特徴や原. メッセージを限りなく共有化するということから、コミュ ニケーションの問題として大きくとらえることができ. 因の特定は困難であるが、本稿では、社会的に承認され. る」6)。美術表現を通し、表現における自分らしさを肯. たモラトリアムの延長に伴う幼児化傾向、生き方や価値 観を追求する姿勢の希薄さ、そしてコミュニケーション を拒む傾向や他者との関係性を発展させていくことの困. 定するとともに他者の表現を認め、価値の共有化を図る ことから、他者との関係性を発展させていくことも重要. 難性、自尊感情が育ちにくいことなどに着目し、これら -の対応を課題としたい。. な課題である。 1 -3.初等教員養成課程における造形課題 上で述べたような青年期の課題に加え、初等教員養成. 1 -2.青年期における美術教育の課題 青年期は激動の時代と呼ばれるように、様々な試行錯 誤を繰り返しながら、自己の価値観を深め世界観を形成. 課程においては、初等教員として児童の造形指導に携わ ることを想定した課題を設定する必要がある。 初等教員としての実技力は、中等・高等教員や大学教 官、また作家のそれとは異なる側面を持っている。道具. していく時期であり、美術〔制作・鑑賞〕を通した統一 的な自我意識の確立がこの期の最も重要な造形課題とな. や素材、技法などに関しての知識や加工技術などは一定 水準のものが要求されるが、質の高い表現活動に取り組. る。. 大勝恵一郎は、青年期を「世界観との出会いを基礎と した造形活動の時期」であるとし3)、また、東山明は. むことができるだけの能力は要求されていない。むしろ 児童の背丈で造形と向き合う姿勢こそが重視される。造. 「自己の内的世界が形成され、芸術との出会いの時期」 であると位置づけている4)。青年たちにとって美術との 新たな出会いはその後の人生を決定づける重要な意味を 持っ場合も多く、表現を通して人間存在としての自己を. 形活動の楽しさを知り、児童の造形活動と繋いで思考す る資質・能力が求められる。 一方、図画工作科は学習指導要領に盛られた内容と目. 捉えなおし、人格の形成を図っていくことが望まれてい る。. 標をどのように具体化していくのかという点において比 較的融通の利く教科であるといえ、通常、各担任の判断. しかし、青年期中期ごろから生徒の文化的興味が分化 していくことや、授業が選択制となるため、美術とのふ れあいは乏しくなってゆき、大学での授業は単位認定の. や学年単位の話し合いで題材が設定される。また、到達 度が数量的に把握しにくいことや、教科の特性として児 童一人一人の個性的な活動を保証していかねばならない ということからも、 「指導書」等のマニュアル通りの指 導が必ずしも功を奏さないという点が他教科とは異なっ. ために義務的に参加する傾向が強く、また美術-の苦手 意識をもっ学生も少なくないといった状況になっている。 村山久美子はこの期の特徴を「芸術から身を引くもの が増える。作品も作らなくなるし、他者の努力にも無関. ている。そこで、学校や児童の実態に即した適切な題材 を設定し、児童の多様な造形性に応えながら学習を展開 していくことが望まれる。さらには教科外での造形活動. 心である」としつつも次のように述べている. 「自らの 流暢生を取り戻し、進んで実験し、チャンスをつかみ、. にも臨機応変に対応できる実践的な実技指導力が求めら れているといえる。. 再燃する。それは人生初期の芸術行動に似ている。幼児 の無垢の目を持ち込み、自らの言葉で表現し、解釈し、. 初等教員養成の観点からは次のことが課題となろう。 ①造形要素のそれぞれについて、一定の知識と操作の. 芸術的生産と知覚との偉大な統合をもたらす。自作を批 判し、自作にも他者の作品にも美的知覚の先端能力を適. 経験を持ち、要素間のつながりを理解していること。 条件に応じて造形要素を適切に組み合わせ、造形課題. 用し、かくて芸術の成熟の要素がそろう。独自の表現や スタイルも発見し始めるのである」5)。このように青年. を解決することができる。 ②造形実技の経験を客体化し、児童の造形活動に結び. 期は自分の世界から美術を永遠に放逐してしまう危機を 抱えている反面、これまで疑いもなく受容してきた世界. 付けて意義付けすることができる。自己の造形活動を 他者のまなざしから観察し、そこで生起する問題や対 応の方法などを確認することから、児童の立場に置き. のありようを問い返し、世界と自己との新たな関係を美 術を通して再構築していく好期であるともいえる。 一方、美術表現は他者との関係性において初めて成立. 換えて考えることができる。. -58-.

(3) 表す。指導案は学生の「学習活動」と教官の「指導内容」 から記述する。尚、各授業、 2名の教官でティームティー チングを行うことにしており、 「指導内容」の欄におけ. ③造形活動の楽しさを味わったり、意義や目的、可能 性などについて自分なりの手ごたえを持っことができ る。. るTl、 T2は、それぞれの教官の役割分担を示す。 Tlは 平面、 T2は立体が主な担当分野であり、指導において はTlが学校教育へと繋ぐ視点を示し、 T2が表現の意義. 1 -4. 「初等図画工作」の内容構成及び指導の観点 これまで述べてきたことを元に、 「初等図画工作」の. 付けを行うこととした。. 内容構成及び指導の観点を次のように設定した。 (彰自我同一性の確立の方向に表現を伸ばしていくことo. 2-2. 「初等図画工作」の指導計画〔指導案〕. 表現・鑑賞の活動を通して、学生が自己のあり方を見 つめ世界観を確立していくことを支える内容・展開で. ①ドローイング. あること。. 学習活動. ②美術を通して他者との関係性を発展させていけるよ. 指導内容. Tl 「画家の作品」、 「幼児の絵」、 「チンパンジーの絵」を比較し ながらそれぞれの表現の共通性 や相違点につい考えさせる。 T2表現するということの意味、立 体と平面という表現領域の問題 等について説明する。 ○絵画表現における「線」 Tlサインと作家のドローイングの の意義について考える 例を示し、線の形状や勢い、表 とともに、自分のサイ 情等に、作者の性格や描写時の ンをっくる。 状況が投影されることを考えさ ^m T2ドローイングと身体性について 説明する。 ○手をモチ-フにドロー Tl表現方法の指示を行う。それぞ イングを行う。 れの表現方法に応じた「線」の (訂見ないで描く。 技法が生成することを意識させ (塾見て描く。 る。 (参左手〔利き手と反対 T2それぞれの表現の意味や意義に の手〕で描く。 ついて説明する。 (動一筆がきで描く。 ⑤左右反転させて措く。 ○作品を振り返る。 Tl作品を振り返り、それぞれの作 品に自己評価を記号で記し、コ メントを記述するように指示す る。 ○美術を学ぶ意義につい て考える。. うな場を設定すること。相互評価、グループ活動など を取り入れ、学生相互のコミュニケーションが図れる ようにする。自他の表現を互いに認め合うことによっ てそれぞれの個性を尊重し、自尊感情を高めさせたい。 ③美術が今後の生き方や人生観の形成に関わるものと して、その価値意識の高揚と主体的なかかわりを促す こと。. ④自己省察を促す場を設定すること。制作過程で感じ たことを客体化し、価値観やものの見方の変容を自覚 するとともに、児童の造形活動に結び付けて意義付け できるように促すこと。 (昏初等教員として求められる基礎的・基本的な表現技 術を身につけるとともに、造形活動の楽しみを味わい、 大学生としての教養を豊かにするための内容・展開で あること。. 2. 「初等図画工作」の指導計画 2- 1.指導案による指導計画の記述について 通常、大学における授業内容はシラバスで公開されて いるが、ねらいと授業ごとのテーマを記述する程度であ り、個々の授業がどのように展開されているのかを他教 官が知ることは困難な仕組みになっている。幼稚園、小・ 中学校では指導案をもとに授業研究会をもち、指導案を 蓄積することによってカリキュラムの改善を図る=Lとが 基本的な研究のスタイルとなっているが、大学では指導 案による授業内容の公開は稀であり、このことが大学に おける授業研究を閉塞したものにしている原因の一つで あるとも考えられる。 そこで、前項で示した内容構成及び指導の観点に基づ き、改めて「初等図画工作」の指導計画を立案し、各授 業展開を指導案〔略案〕の形式で明らかにした。個々の 教官が自分の授業をオープンにし、教官同士の相互検討 を活性化していく努力を重ねることによって、大学とし ての教育研究のあり方も次第に浮き彫りにされてくるも のと考える。. 図1 -筆がきで描いた手のドローイング. 以下、 「初等図画工作」の指導計画を指導案の形式で. 一59-.

(4) ②イメージの表出と共感. ○グラフィックシンボル. 学習活動 ○音楽に合わせてドロー イングを行う。 ① 1本の鉛筆で。 ②両手に鉛筆を持って。 ③二本の鉛筆を片手で 持って。. ①怒り②喜び③平 穏④憂欝⑤人間の エネルギー⑥女らし さ⑦病気 ○グループに分かれ、そ れぞれの作品の共通点 を探る。 ○発表しあい、共通点を 互いに理解する。 ○造形表現におけるイメー ジの共感について考え る。. リンピックに用いられたピクト グラムを例示し、デザイン上の. Tl緊張感をといた上で、曲のリズ ムやテンポ等に合わせ、自由な. 相違点について考えさせる。 T2グラフィックシンボルについて. ドローイングを行うように指示 する(曲はジャック・ルーシェ 「デジタル・プレイバッハ」か らの3曲)0 T2それぞれの方法で異なる線の技 法が生成すること、音楽と絵画. 説明する。 〇本時の課題について考 Tlロコス、セマントグラフイ-、 ^m. アイソタイプなどの視覚的シン ボル体系の例、及び本時の課題 作例を紹介する。. ○短文をグラフィックシ. の関係〔共感覚〕、シュールレ アリズムのオートマチズムなど. ○言葉のイメージをドロー イングで表現する。. Tl東京オリンピックとメキシコオ. について考える。. 指導内容. Tl制作中、美しいデザインに仕上 げるポイントについて説明する。. ンボルで表現する。 ○作品を学生同士で解読. の説明を行う。 Tl記号や具象的な形態を用いず、 自由な抽象形態でイメージの表 現を行うように指示する。. しあう。. T2グラフィックシンボルの今日的 な意義について説明する。. T1線の勢いや強弱ヾ形状、構図な どの特徴から共通点を見出すよ うに指示する。 T2共通点を整理する。 ⑳. Tlアメリカの大学生の作例(ェド ワーズ『内なる画家の眼』より) を紹介する。 T2イメージの共感について説明す る。. ㌦. 義. ⑳ !. 、 … 、. t . 堊 !、 \. 一一表 題お■!、 λ ㌔ ∼. 1■ ■-. 図3グラフィックシンボル 「夜にコーヒーを飲みながら読書をするのが好きです」 ④イメージの生成と表現. 学習活動. ○抽象的な作品の制作を 行う。 ①画面に3本の線を引 く。. ②3本の線に重ねて自. 行う〔5秒間程度〕。 ③線で囲まれた部分に 表情をっけて「面」 を立ち上げてゆく。 ○作品にタイトルを付し、 作品を振り返るととも に、抽象画について考 ^m O超現実的なイメージの 生成について考える。. ③ビジュアルコミュニケーション 指導内容. ○ 「 造形言語」について T 1 色や形の持つ感情について、問 考える0. Tl制作の手順を指示する。 Tl、 T2机間巡視(抽象的なイメー ジが次第に生成してくることを 自覚させるようにする)0. 由なドローイングを. 図2 「怒り」と「喜び」のイメージ表現. 学習活動. 指導rt'占. いに答えさせる (2つの図の内、 いずれが軽い感 じがするか、と いった形式の問いを複数準備す る)0 T 2 造形言語の意義について説明す る0. -60-. Tl抽象画の作例を示し、学生の作 品の意味を対象化させる。 T2抽象画について説明する。 Tlマグリットの作例から、超現実 的なイメージを生み出す方法に ついて説明する。.

(5) O 「手」をモチーフに、 超現実的な作品の制作 を行う。 ○互いの作品を鑑賞しあ う。. Tl、T2机問巡視(イメージに応 じた表現の工夫をするように促 Hi T2シュールレアリズムの歴史的な 意義について説明する。 Tl小学生にとっての構想画の意義 と想像力の重要性について説明 する。. 図5鳥のバランス. ⑥ 「風・空気」の表現 図4抽象的なイメージ画. ⑤素材と構造〔紙工作の基礎〕 学n,i軸. 更に半分に分割する。. 画用紙で、切る、折る、 繋ぐなどの操作を行い、. Tl風を利用した玩具や工作を紹介 し、その意義について説明する。 ③円筒型の紙飛行機 T2自然と造形作品〔行為〕とのか かわりについて説明する。 〇本時の課題「風〔空気〕」 T l課題の解説と表現方法の指示を について考える。 行う。 T2インスタントカメラの構造と効 ○インスタントカメラで、 果的な表現方法について説明す 「風〔空気〕」の表現を る。 行う。 ・2-3枚の組写真 ・キャンパス内で自由 に制作する. 紙を折る際に、紙の目について 説明する。 T2紙工作に身体性が介在すること などの説明を行う。 Tl制作手順を説明する.. 〇日分の行った活動につ いて紹介しあう。. Tl紙の素材特性や加工について説 明し、のりを使わずに、紙の特 性を活かした丈夫な構造を工夫 させる。. ス」をつくる。. ○制作過程を振り返り、 紙の素材特性と紙工作 の意義について考える。. Tlこれまでの学生が作った作例を 紹介し、それぞれのコンセプト について解説を加える。 T2写真を使用した表現の意義や意 味について説明する。. 高い塔をっくる。 ○鳥の形をした「バラン. Tl風〔空気〕を意識させながら制 作を進めるようにする。. ②紙笛. ○パズル教材「六角変身」 をっくる。 015センチ×10センチの. ○空気〔風〕を利用した (り紙のプロペラ. __∴∴. 帯をっくり、半分に、. 指導内容. 小工作を作る。. 指導内容. ○一辺7センチの正方形 Tl用紙をニッ折にし、図のように の画用紙を加工し、人 切るところまでは指示し、最後 がくぐれるぐらいの穴 の加工は学生に考えさせるよう を開ける。 にする。. ○紙テープでメビウスの. 学習活動. Tl 「つりあい」について説明し、 境でバランスがとれるような羽 のデザインを考えさせる。 T2素材の特性を引き出すこと、素 材に応じた加工法があることな どを説明する。 Tl小学校における紙工作の意義や ねらいについて説明する。. -61-.

(6) (診写真で遊ぶ 学習活動. 指導内容. ○心霊写真などのいかが わしさを持つ写真につ いて考える。. Tl心霊写真やUFO写真などの事 例を示し、何故これらが人々に 好まれるのかを考えさせる。 T2 「キッチュ」の意味及び、トリッ ク写真について説明する。 Tl課題の意味と製作の条件や方法 について指示する。. 〇本時の課題について考 える。. ○トリック写真の撮影を 行う。 ①心霊写真 ②UFO写真 ③UMA写真 〇日分の行った活動につ いて紹介しあう。. T2演出の効果、見立て、カメラア ングルの工夫等、トリック写真 をとるための方法や視点を示唆 する。. ⑨美術と環境. Tlこれまでの学生が作った作例を 紹介し、それぞれのコンセプト について解説を加える。 また、オカルトが子どもに与 える影響について考えさせる。 T2写真から受け取るイメージと実 際の被写体との差異について説 明する。. 学習活動. 指導内容. ○社町の野外彫刻につい て考える。. Tlグレード課題集に掲載している 「社町野外彫刻マップ」をもと に、社町の野外彫刻について考 えさせる。 T2パブリックアートの歴史や意義 について説明する。. ○社町に新たな野外彫刻 を作ることを想定し、 場所や役割を考えた上 でラフスケッチをする. Tlパブリックアートの作例を示し、 条件に応じたデザインを考えさ. 1Sサ. 〔グループ活動〕. 0画用紙その他で野外彫 T2野外彫刻などのマケットの意味 刻のマケットを作る や役割を説明する。 〔グループ活動〕。 ○マケットを撮影し、活 Tl小学校における共同制作の意義 動を振り返る。 や生涯学習の一環として行われ る学杜融合プロジェクトの今後 の展望などについて説明する。 T2パブリックア-トの展望につい て説明する。. ⑲プレゼンテーションの技法 学習活動. 指導内容. ○美しく、見やすいプレ. Tlプレゼンテーションの作例を示 し、条件や技法について説明す る。 〔可能であればデザインの. ゼンテーションについ ○パフォーマンスについ. て考える。. て考える. Tl作例を示し、パフオ-マンスに. 教官に基礎的な講話を依頼する〕 Tl以下の条件でまとめるように指 真に解説や見出しをっ 示する。 けて、スケッチブック ①は詩や短文をっける。 にまとめる。 ②は雑誌や新聞の記事としてま (り風〔空気〕 とめるe ②心霊写真、 UFO、 ③はデータを添えて作品として UMA まとめる。 (診パフォーマンス ④は設置場所やサイズ、コンセ ④野外彫刻のマケット プトなどを明記した企画書と してまとめる。 ○学生相互に批評しあう。 T2プレゼンテーションの技術と生 活について説明する。. ついて考えさせる。. ○これまでに撮影した写. T2パフォーマンスの歴史や意義に ついて説明する。 ○グループでコンセプト をまとめる。. Tl課題の意味や条件について指示 する。. ○グループごとにパフォー マンスを行い、その記 録を写真に残す。 ○活動の紹介を行う。. Tlそれぞれの活動の意義付けを行 う。また、小学校の造形遊びと の関連について説明する。 T2現代美術における身体及び行為 の問題について説明する。. -62-.

(7) ⑪平面充填〔連続模様〕 学習活動. 指導内容. ○正3角形、正方形、正 6角形、正8角形の組 み合わせによる平面充 填のパタンを作図する。 ○正3角形、正方形、正 6角形の等分割から形 成されるかたちをもと. Tl基本的幾何図形によって平面へ の概念的理解を促す。. に造形的図形を考える。. ○平面図形の裁断〔分割〕 によるパズルを制作す る。. ○学生相互に作品の批評 を行う。. T2図形の対称性及び連続性につい て説明する。 T l連続模様の持つ装飾性について 説明する。また、連続模様の例 や、連続模様を活かしたパズル を紹介する。 Tlケント紙を中心に紙の加工につ いて説明する。 T2形の持っ遊戯的一面に触れ、造 形活動の多様性について解説す る。 T2エッシャ-の作品を紹介し、連 続模様を取り入れることによっ て不思議な絵画空間が構成され ることを説明する。 Tl連続模様を題材にした小学生の 授業を想定し、年齢に応じて題 材を具体化することの意義につ いて説明する。. ⑫空間充填〔立方体の2分割〕 学習活動. 指導内容. ○正多面体及び準正多面. Tl正多面体及び準正多面体の相関 について考えさせ、造形的空間 の理解を促す。 T2立方体の性質に着目し、形の連 関を説明する。 T2立方体の2分割の典型的な例、 及びそれらをもとに形成される 立体図形を紹介する。. 体の相関について考え る。. ○正4面体、正方形、正 8面体の展開図を作図 する。 ○グループに分かれ、立 方体の等分割を考える。 ○一定の規則に基づいた 立方体の2分割を考え、 制作する。 ○グループごとに、各自 が制作した立体の組み 合わせを楽しむ。. 図8立方体の2分割 ⑬表現の発達的側面及び心理投影について -?背活動. 指導内容. ○描画発達と幼児の絵の 意味について考える。. Tl以下の点について説明を行う。 ・頭足人や観面混合などの意味 ・描画発達の筋と各措期の特徴 について. ・作品への心理投影について ○作品への心理投影、色 Tl風景構成画法、色彩テストを短 彩象徴などについて考 時間で行い、分析の観点を示し ^m て、学生に自己診断をさせる。 Oコラージュの制作を行 Tl心身をリラックスさせ、自己の IE 内面が素直に投影されるように 配慮する。 Oコラージュの療法的意 Tl事例を示し、コラージュ療法に 義、及び造形的意義に ついて説明する。分析の観点を. Tl前回授業との内容的な関連性、 紙の加工技術の関連性について 示唆する。. T2多面体を用いた空間操作と立体 造形との関係性について説明す る。. ついて考える。. -63-. 示し、自己診断をさせる。 T2現代美術におけるコラージュの 意義について、また、ヒーリン グアートの意義について説明す m. T2カウンセリングマインドの重要 性について説明する。.

(8) ⑮美術史から学ぶ. ⑭空間把握と再現描写 学習活動. 指導内容. 学習活動. 指 導 内容. 〇線遠近法について考え m. Tl 「南蛮画」に措かれた遠近法の 矛盾について考えさせ、線遠近 法が西洋で開発された技術であ ること、様々な遠近法があるこ となどを理解させる。続いて遠 視、近視、正常視のそれぞれで. ○ ス ライ ドによ る美 術鑑. T 2 美 術 史 を学 ぶ 意 義 につ いて 説 明. ○直方体の箱2つと立方 体の箱一つを積み重ね たモチーフを鉛筆で写 生する。. ○制作を振り返り、困難 に思えた点や、発見で きたことなどをまとめ る。. する 〔 可 能 な限 り美 術 史 の 教 官. 賞 を 楽 しむ 。. に講 話 を依 頼 す る〕0 T 1、 T 2. ス ライ ドを 示 し説 明 を 加. え る0 美 術 史 全 般 を扱 うが 、 特 に20 世 紀 美 術 に重 点 をか けて 解 説 す. 描かれた作例を紹介する。 T2遠近法が身体化された文化と非 西洋的な文化とを相対化させ、 ものの見方と表現のあり方につ いて改めて考えさせる。 Tl前回授業で触れた描画発達の道 筋と、技法としての線遠近法と いう視点を結んだ上で、再現描. る0 ○ 「初 等 図 画 工 作 」 の 感 憩 を ま とめ る0. T 1 小 学 校 教 師 と して の美 術 と のか かわ り方 につ い て意 見 を述 べ る0 T 2 生 涯 に わ た って美 術 と親 しむ と い う視 点 か ら意 見 を述 べ る。. *尚、出席カードとして毎回3cm角の色紙を配り、出席 表に貼りこんでいくと12色環が出来上がるようにして. 写をする意味を理解させる。 T2鉛筆デッサンの基本的な技術を 説明する。 Tl小学校において写生を行う意義 と問題点について説明する。 T2現代美術における遠近法、及び 再現描写の意味について説明す m. いる。. 図10出席カード. 3.今後の課題 「初等図画工作」は本学開校以来各専門領域の教官4 名でオムニバス形式の授業を行っていたのだが、平成12 年度より、実技センター所属教官2名で行うこととなり、 昨年度からは2名の教官によるティームティーチングを 試みている。 4名で担当することに比して専門性は希薄 になると思われるが、 「初等図画工作」の意義を勘案す ると、専門性を重視するより、複数の視座から支援して いく体制のほうが、より学生の学びを深めることになる と思われる。また、 2名の教官が同時に指導に当たるこ とが、学生の授業態度に変化を与えていると推察される が、その因果関係については今後検討していきたい。 本年度は昨年度の授業を改善しながら、本稿に示した. -64-.

(9) 内容で実践を進めているところである。後期開講授業で. 注記. あるため、授業終了後の学生の変容を論文中に取り上げ. 1)武藤隆、高橋恵子、田島信元編『発達心理学入門 Ⅱ青年・成人・老人』東京大学出版会、 1990、 84 貢。. ることができなかったが、最終回にアンケートを実施し、 1で設定した観点からの分析を行う予定である。. 2)宮台真司『まぼろしの郊外-成熟社会を生きる若者 たちの行方』毎日新聞社、 1997、 『これが答えだ!一. 学生の授業に向かう姿勢については、私語や居眠りな どがほぼ見られなくなったこと、大教室の後方にひしめ. 新世紀を生きるための100間100答』飛鳥新杜、 1998、 などを参照。 3)大勝恵一郎「青年期の特質と造形発達一停滞の発達. いて席を取っていた状態から適度に散らばって座り始め たことなどからも、集中度や学習期待の向上が伺える。 今後の授業改善の方策としては、自己評価カードを活. 論的解明と克服について-」 『造形美術教育体系 高等学校・教育養成編』美術出版社、 1983、 37-39. 用し、授業ごとの学生の意識変化や意見を把握していく ことを検討している。吉田貴富は「出席カード」を用い. 貢。 4)東山明『美術教育の基軸と課題』明治図書、 1998、 71貢。. て学生と教官、学生相互のインタラクティブな授業展開 を実践しているが7)、机間巡視によるコミュニケーショ ンを補完する上でも、また、学生のコメントを紹介する. 5)村山久美子『視覚芸術の心理学』誠信書房、 1998、 138貢。. ことで意見交流を図るという点からも重要である。一方、 学生からのコメントの採取は授業改善に繋がる有効な手. 6)藤沢英昭「コンテクストの中にある造形教育」 『真 鍋一男退官記念論集現代造形・美術教育の展望』 新曜社、 1992、 155頁。. 段であることはいうまでもない。ただし、コメントを書 くという作業が学生に煩雑な感を与えない様な形式の工 夫を行う必要があろう。. 7)吉田貴富「大学における教養教育としての美術教育 のあり方について(1) -インタラクティブな授業. 尚、 「初等図画工作」では、できるだけ幅広い素材経 験を持たせたいが、場所の制約があるため、粘土や木材. の試み-」 『大学美術教育学会誌』第30号、 1998、 2 17-226貢。 8)関正夫『21世紀の大学像』玉川大学出版、 1995、 22-23頁。. などの使用が困難である。今後、これらの素材の基礎的 な加工が経験できるような、簡便な教材の開発にも努め たい。 本稿では、授業案を公開するに留まったが、大学にお ける授業研究の端緒を開く上ではささやかながらも有効 であると考える。 おわりに 関正夫は大学における授業研究の立ち遅れの主たる原 因を「研究教育予定調和説」においている。 「優れた研 究をしていれば、予定調和的に優れた教育ができる」と いう考え方が「深く浸透している大学においては、学生 の認識等の発達に応じたカリキュラムを検討するとか、 講義の内容を学生に理解できるように工夫するという必 要性は、大学として対応すべき課題として共通認識され ることは原理的にありえないでしょう。まして、大学教 育に関する学問研究が必要であるという発想等が生まれ る可能性は極めて乏しいと思われます」8)と述べている。 このことは大学における研究と教育の関係をどのように 捉えるのかという大学教育の理念に関わる問題に繋がる ものでもあるが、美術領域においては、優秀な作家が必 ずしも優秀な教育者ではないといった論議と置き換える こともできる。大学教官自身の制作経験が学生の教育へ と還元され、さらには初等教育へつなげてゆくための具 体的なプログラムの作成が望まれていると考える。. -65-.

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従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

について最高裁として初めての判断を示した。事案の特殊性から射程範囲は狭い、と考えられる。三「運行」に関する学説・判例

問についてだが︑この間いに直接に答える前に確認しなけれ

ても情報活用の実践力を育てていくことが求められているのである︒

これらの先行研究はアイデアスケッチを実施 する際の思考について着目しており,アイデア

○本時のねらい これまでの学習を基に、ユニットテーマについて話し合い、自分の考えをまとめる 学習活動 時間 主な発問、予想される生徒の姿