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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 : fNIRS 脳イメージング手法によるバイリンガリティー研究

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響:

fNIRS 脳イメージング手法によるバイリンガリティー研究

藤本未来

・田浦秀幸

∗∗

要旨

本研究は、言語流暢性課題(ひらがな 1 文字、アルファベット 1 文字から語を想起する文字タスク と、提示された語と同じ範疇に属する語を想起する日本語・英語両タスク)を行い、左ブローカ部 位、前頭前野中央部、右ブローカ相当部位の fNIRS 値(を比較した。被験者は、第2言語接触開 始が出生前のグループ(G1)、出生時から2言語接触したが実験時まで言語環境継続しなかった グループ(G2)、第2言語接触開始が3歳から小学校入学前までの間のグループ(G3)、6歳から 12 歳のグループ(G4)、16 歳以降のグループ(G5)、第 2 言語圏滞在経験が皆無か数カ月に内のグル ープ(G6)を対象に行った。その結果、G3 は G1 と G2 に比べて前頭前野中央部と右ブローカ相当 部位の fNIRS 値(血液成分の酸化ヘモグロビン濃度変化と光路長の積)が高くなり、左ブローカ以 外の脳部位での第 2 言語処理が行われていることが明らかとなった。また、第 2 言語接触開始年 齢が 16 歳以降のグループでは、英語タスク実行時の方が日本語タスク実行時よりも fNIRS 値が高 くなった。更に、意味タスク実行時と文字タスク実行時では意味タスクの方が想起語数が多く、ま た fNIRS 値も低くなるという結果となった。 ∗藤本未来: 大阪府立大学学生 **田浦秀幸:立命館大学 言語教育情報研究科教授

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響

第1章 はじめに

第1章では、言語と脳機能に関する先行研究を概観し、未解決分野の研究を特定するとともに、 本研究を行う目的とリサーチクエスチョンを述べる。 1.1 先行研究 脳機能に関する研究は、19 世紀、ウィーンの脳解剖学者であるガルが機能局在論を唱えたとこ ろから始まった。ガルは、脳の特定の部位が特定の機能を担い、その機能が発達するとその部分 が隆起し、機能の劣っている部分は未発達になると考え、その結果は頭蓋骨の形に影響を与え ると説いた。その後、ドイツの神経解剖学者であるブロードマンによってブロードマンの脳図 (1909)が作成され、脳の構造に基づいて大脳皮質の地図が示された。ブロードマンが人間の脳 につけた番号は、1 番から 52 番までであるが、人間の脳に関しては12番から 16 番と 48 番から 51 番までは欠番となっている。こうして、脳は場所によって働きが異なるとする機能局在論が発展 し、言語の機能を担う3つの言語野、ブローカ野、ウェルニッケ野、角回・縁上回は、それぞれ前 頭葉、側頭葉、頭頂葉にあることがわかっている。フランスのブローカ(1861)は、左脳の前頭葉の 梗塞によって発話の障害が生じることを報告し、言語の機能が脳の一部分に局在することを示し た。この左脳の場所がブローカ野であり、ブロードマンの 44 野と 45 野にあたる。ドイツのウェルニ ッケ(1874)は、話し言葉の理解や、発話時の言葉の選択に障害が現れる言語障害を発見し、発 話の機能を果たす場所をウェルニッケ野と名付けた。 言語に関する脳機能研究は、元来失語症などの言語障害を持つ患者を対象に行われてきた が、近年科学の発達により機能的脳画像を用いた言語機能の研究が盛んになり、健常者も含め て言語使用時の脳の活動についてより多くの知見が得られるようになってきた。脳機能研究に貢 献してきた手法として、たとえば脳波(EEG: Electroencephalogram)、ポジトロン断層撮影法(PET: Positron Emission Tomography)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI: Functional Magnetic Resonance Imaging) 、 脳 磁 図 (MEG: Magnetoencephalography) 、 近 赤 外 光 分 光 法 ( fNIRS: Functional Near-infrared spectroscopy)があるが、言語刺激を得てからどの時点でどのような反応があるのか、 また脳のどの部分が活動するのかという疑問は、こうした脳の働きを画像化する手法の発展によっ て明らかにされてきた。これらの脳機能計測手法は、時間分解能に優れるもの、空間分解能に優 れるものなど、それぞれ異なる特徴を持つ。例えば fMRI は空間分解能に優れるため、脳内の場 所を特定するのに適している。fNIRS は時間分解能に優れており、さらに実験中に頭を完全に固 定する必要がなく、被験者に負担をかけずに自然な状態で実験が行えるという利点から、近年で は乳幼児を対象とした実験にも適した手法として使われている(桐谷・林、2007)。 fNIRS を用いた研究の一つに言語流暢性課題がある。これは、前頭葉機能検査の一つであり、 ある条件に合致する単語などを、特定の時間内にどれだけ話したり書くことができるかを調べる課 題である。 この言語流暢性課題を用いた研究に、英語母語話者である健常者と統語失調症患者を対象 に fNIRS で前頭葉の活性状況を調べたものがある(Kubota et al, 2005 Ehlis et al, 2007)。 この研

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 究では、意味カテゴリータスク(例えば、 vegetable とパソコン画面に表示された後に、意味的に 関係する言葉をできるだけ多く被験者に言わせるタスク)と文字タスク(例えば、 F とパソコン画 面に表示された後に、F から始まる言葉をできるだけ多く被験者に言わせるタスク)を行い、タスク 実行時の前頭葉前部の血流濃度の変化を調べた。その結果、健常者は文字タスク実行時の方 が意味カテゴリー実行時に比べて前頭葉の血流濃度が高くなる一方、統合失調症患者は意味カ テゴリータスク実行時の方が血流濃度が高くなった。また、意味カテゴリータスクと文字タスク実行 時の前頭葉の血流濃度の差は、統合失調症患者の方が大きいことがわかった。しかし、脳の左右 については差がないことがわかった。この結果から、第一言語については、統合失調症患者にと って意味のつながりによって言葉を羅列していく課題タスクはより困難で、脳もより活性化されるこ とがわかる。また、健常者にとっては意味カテゴリーで言葉を思いつく課題の方が易しく、血流量 も少なくなるということがわかる。 このように、英語を第一言語とする健常者に関する実験では、意味に関連づけて言葉を想起す る意味カテゴリータスクの方が脳血流の濃度が低くなることがわかった。さらに、英語以外の言語 を第一言語とする被験者についても、意味カテゴリータスクの方が文字タスクよりも前頭葉の血流 濃度が低くなるのかどうかという疑問から、次に日本語(平仮名)でタスクを行った研究も行われて いる。Hatta et al. (2009)は、23 人の日本語母語話者(健常者)を対象に、意味カテゴリータスク (例えば、「しろ」と提示し、「くろ」など意味カテゴリーの同じ単語を思いつく限り言わせる)と文字タ スク(例えば、「し」を提示し、「し」で始まる単語をできるだけ多く言わせる)を行い、fNIRS で前頭 葉前部の脳の fNIRS 値の違いを調べた。この実験の結果、前頭前野では、文字タスク実行時は意 味カテゴリータスク実行時に比べて fNIRS 値が高くなることがわかり、さらに文字タスクでは左脳よ り右脳の方が賦活した。これらの結果より、日本人の健常者に第一言語(日本語)でタスクを行っ ても、文字タスクの方が言語に関わらず fNIRS 値は高くなり、脳が活性化されるということがわかる。 つまり、第一言語の場合、健常者は文字から単語を連想するタスクの方がより血流量が増加し、 脳の前頭前野が賦活することが明らかにされている。 こうした第一言語に関する研究が行われる一方で、第 2 言語使用時の脳の賦活部位を特定す る研究、あるいは第一言語と第 2 言語の間では脳の活性化程度や活性場所が異なるのか、に関 する課題は以前から研究されてきた。例えば、日本語を第一言語とする大学院生および大学生 (上級学習者と中級学習者)を対象に英語のリーディング課題を与え、fNIRS を用いて前頭葉と左 脳の血流量を調べた研究では、上級学習者と中級学習者間を比較すると前頭葉の血流増加量 の割合には差がないという結果が報告されている(大石、2003)。しかし、このリーディング課題の 上級学習者と中級学習者は TOEFL の総合得点によって分類されており、英語の能力が脳の血 流量に関係するかに結論づけることは研究の余地がある。さらに言語流暢性課題を用いた fMRI 研究の中で、中国語が優勢である英中バイリンガル 12 人を対象に、中国語・英語タスク実行時に 左脳がより賦活するという結果が出た研究もある(Gui Xue, Qi Dong, Zhen Jin, and Chuansheng Chenc, 2004)。

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響

リンガルで育ったグループと、10歳頃から第2言語を習得したグループを対象にfMRIを用いて比較 した研究の中で、バイリンガルの被験者は2つの言語による脳の活動領域がブローカ野の中で同 じである一方、後から第2言語を習得したグループでは2つの言語による脳の活動領域がブローカ 野の中で異なるという報告である(K.H.S.Kim, N.R.Relkin, K.M.Lee and J.Hirsch, 1997)。さらに、 韓国語と英語のバイリンガルで、韓国語をL1とし、英語を12歳以降で習得した後期バイリンガル24 人を被験者としたfMRI研究では、L1タスクよりもL2タスク実行時の方がより右脳が賦活するという 結果がある。また、左楔前部、右側上頭小葉、左中央後頭回、左小脳においてはL1とL2ともに同 じ場所が賦活することも明らかとなった。これらの研究により、第2言語の学習開始年齢が脳の活動 領域に深く関係することが示唆されているが、活動の程度にどれほどの差があるかは未解決である。 ただ、モノリンガル被験者とバイリンガル被験者を対象にした言語流暢性課題研究の中で、英語学 習開始年齢が早いほど英語の単語タスクではより多くの単語を想起するという結果は出ている。し かし、意味カテゴリータスクに関しては、バイリンガル被験者はモノリンガル被験者よりも得点が低い という報告もある(Jos´e S. Portocarrero , Richard G. Burright, Peter J. Donovick, 2007)。第2言語 接触開始年齢によって脳の賦活部位が異なるかどうかを調べた研究に、中国語と英語バイリンガ ルを対象にしたものがある(Weber&Nerille, 1996)。1歳から3歳、4歳から6歳、7歳から10歳、11歳 から13歳、16歳以降のグループに文法診断テストを行い、ERP(event-related brain potentials)と行 動データを分析した結果、11歳以降の第2言語接触だと左脳以外(前頭前野中央部、右ブローカ 相当部位)での第2言語処理が大きくなることがわかった。つまり、11歳までに左脳での言語処理に 関する側性化が完了することが示唆された。 以上のように、第一言語や第 2 言語使用時の脳活動に関する研究はこれまでに多く行われてき た。本研究ではこれらの研究を踏まえ、日本語と英語の両方を第一言語とするバイリンガル被験 者、日本語優勢日英バイリンガル、優勢英日バイリンガルを対象に、第 2 言語との接触開始年齢 が日本語と英語使用時の脳の活動領域や活動程度にどのように関係するかについて、fNIRS(近 赤外分光法)を用いて明らかにしていく。fNIRS は fMRI のように大きな音が出ないため、実験タス クに被験者が集中しやすい上、被験者の体の位置や向きに制約を課さないため、小学校低学年 の被験者から成人の被験者まで幅広い年齢層の被験者を対象にした実験が実行可能である。 1.2 リサーチクエスチョン 本研究では、第一言語を日本語とする日本語母語話者、第一言語を英語とする英語母語話者、 日英両言語を第一言語とするバイリンガルを対象に、次のリサーチクエスチョンを明らかにしてい く。 (1) 言語流暢性課題実行時に、日本語と英語使用時ではどちらの方が脳の fNIRS 値が高く なるのか。 (2) 両言語使用時の fNIRS 値は、英語接触開始年齢によって異なるのか。 (3) 言語流暢性課題の文字タスクと意味カテゴリータスク実行時を比較して、両タスク間には fNIRS 値に差があるのか。 (4) 言語流暢性課題の文字タスクと意味カテゴリータスクはどちらのタスクの方が想起語彙数

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 は多いのか。

第2章 実験手順

本章では、被験者・データ収集方法及び分析方法を記載する。 本研究は、立命館大学研究推進プロジェクトとして 2010 年度に立命館大学大学院・言語教育 情報研究科が採択された「脳科学による言語処理メカニズム解明研究: 言語習得と保持・喪失」 (研究代表者は同研究科教授の田浦秀幸)の一環として行われた fNIRS を用いた3研究の中の1 実験であるので、倫理審査及び被験者の募集はすべて研究代表者により行われた。 2.1 被験者 本研究の主たる研究対象者である出生前・出生直後から日英両語に接触しているバイリンガル 被験者をできるだけたくさん確保できるように、大阪の某国際学校で研究協力者の募集を行った。 募集に先立ち立命館大学「人を対象とする研究倫理審査委員会」による審査を経た(2010 年 9 月 1 日付けの承認番号は衣笠-人-2010-10)。その後、国際学校長(日本人校長及びインターナシ ョナルスクール校長)から許可を得て、1 年生から 12 年生(日本の一条校の小学 1 年生から高校 3 年生に相当)の各担任教員を通して研究目的・実験方法を記載した研究協力申し込み用紙を 配布した(補遺 3 参照)。全員未成年である為に保護者の同意を示すサイン或いは捺印のある申 し込み書を回収した結果、129 人からの応募があった。学校から指定された期間内にこなせる人 数に限りがあるために、99 人に実験協力依頼を行った。ただし 10 人は諸事情の為に参加できず、 合計 89 名の被験者からデータ収集を行った。時期は 2010 年 9 月 20 日から 10 月 3 日まで及び 10 月 23 日から 31 日(30 日を除く)までの 22 日間で、平日は放課後・週末は終日同校内で行った。 統制群としては、(1)国際学校在校生であるが海外生活体験の無い一般中高生、(2) 日本語ま たは英語を母語として第2言語を思春期以降に習得したが非常に高いレベルまで達し、日常的 に2言語を使用している同校の教職員、(3) 英語圏滞在経験に関して多様な某私立大学(院)生 の合計 45 名を被験者として含めた。尚、学生対象の実験は、2010 年 10 月 18 日から 22 日の 5 日間にわたり研究代表者の勤務先大学の個人研究室で行われた(研究参加同意書は未成年者 には上記と同様の方法で、成年の場合は本人から同意書を取った)。 データ収集後分析に取り掛かる前に、実験時撮影したビデオ・写真データと実験実施者による 実験ノート(fNIRS 機操作者・行動記録者のメモ)を検証し、タスク遂行時の不具合及びプローブ 装着ミスが発見された場合と、右脳にブローカがある可能性のある左利きの被験者は分析から除 外した。その結果、実験群 89 名・統制群 45 名の合計 134 名から 3 名を除外し、実験群 88 名と 統制群 43 名の合計 131 名を分析対象者とした。 分析対象者は、下記基準により6グループに分けられた(表1)。出生前に母親の体内で既に 2 言語接触を始め、本研究の実験時にもその言語環境が継続されていたバイリンガル(両親の母 語が異なるようなケース)のみ第1グループとし、1 歳の誕生日以前に第2言語との接触を始めた がその言語環境が本研究実施時まで継続しなかった(日本人の両親のもとにアメリカで生まれた が、その後帰国したようなケース)バイリンガルは第2グループとした。第2言語との接触開始が3 歳以降で公教育開始前であれば第3グループ、小学校時代(6 歳∼12 歳)であれば第 4 グループ、

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 16 歳以降であれば第5グループとした。尚、グループ定義に用いた「言語接触」には「学校教育 における外国語」との接触は含まれず、両親や地域社会の人々との大量のインターアクションを 伴う言語接触のみを含めた。 表1 被験者グループの定義 年齢 第2言語圏滞在 開始年齢 第2言語接触 期間 グル ープ グループ定義 人 数 平均 標準 偏差 平均 (年齢) 標準 偏差 平均 (年) 標準 偏差 1 出生前から 2 言語接 触開始 25 12.70 3.70 0.00** 0.00 12.28** 3.85 2 出生時から 2 言語接触 したが、実験時まで言 語環境継続せず 20 16.75 6.21 0.75** 0.91 11.00** 4.05 3 第2言語接触開始が 3歳から小学校入学 前までの間 21 15.88 3.89 4.40 0.79 7.06 2.56 4 第2言語接触開始が 小学生時代(6歳∼ 12 歳) 21 15.53 2.60 7.57 1.72 4.43 1.63 5 第2言語接触開始が 16 歳以降 18 33.11** 13.46 20.06 7.69 6.68 8.75 6 第2言語圏滞在経験 が皆無か数カ月以内

26 21.67** 6.40 N/A N/A N/A N/A

** p<.01 各グループの第2言語接触背景を見ると、実験時の平均年齢は 16 歳以降に第2言語圏滞在 体験のある第5グループ(平均 33.1 歳)が他のグループよりも年齢が高い一方で、第2言語圏滞在 歴の無い第 6 グループ(平均 22.7 歳)は第2(平均 16.8 歳)・3(平均 15.9 歳)グループと差は無い が、第 5 グループより低く、その他のグループ(12.7∼15.5 歳)よりも高かった。第2言語圏滞在開 始年齢は、第1・2 グループ間に差は無く他のグループよりも若い年齢(1 歳前)であった。第2言語 接触期間については、第1・2グループが 11 年以上と他グループよりも長く、第3∼5グループは 4 年∼7 年半で群間差が無かった。この第2言語接触開始年齢による群分けは概ね、Web-Fox et al.(1996)の研究手法に従った。尚、実験タスク遂行時の fNIRS 値の差がこのグループ(第2言語接 触開始年齢)差に起因するのではなく、実験時の年齢に起因する可能性があるので、その確認の

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 ために次のデータ比較を行った。被験者全員に右手で30秒間のタッピング動作を行ってもらい (左脳の運動野を賦活させ)、その間の fNIRS データを収集した。先ず第1∼4グループから無作 為に4名、第5・6グループからも無作為に4名抽出し、下 2.4 の本実験収集生データの分析方法 と全く同様の手法で、左脳のブローカ部位の fNIRS 値を8被験者について算出した。t 検定の結 果 、 第 1 ∼ 4 グ ル ー プ の 4 名 と 、 第 5 ・ 6 グ ル ー プ の 4 名 と の 間 に は 差 が 無 か っ た (t(153)=1.497,p>.05)。この数値を根拠に、年齢の低いグループと高いグループ間に VFT 中の fNIRS 値に関して差がある場合、実験時の実年齢の影響を排除して本研究ではデータ解釈を進 めることにする。 2.2 データ収集方法 実験群の被験者からは、通学先の国際学校内の空き教室を利用した急造実験室でデータ収 集を行った。統制群の被験者も、同校在籍の一般生と教職員は同じ部屋でデータ収集を行った。 大学(院)生は、研究代表者の研究室でデータ収集を行った。実験場所にかかわらず全被験者か らは個別に約 40 分(入室から退出まで)かけてデータ収集を行った。 タスク開始前に、(1)氏名確認, (2)被験者番号を含む顔写真撮影・頭部プローブ位置確認用左・ 中央・右からの写真撮影, (3)頭中特定と頭周計測, (4)フレキシブルプローブホルダーの頭部への 設置と 27 プローブの装着, (5)タスク説明ビデオ聴視を行った。(3)∼(4)実施中に言語背景やエジ ンバラ利き手アンケート調査を実施した(補遺 3)。タスク開始に先立って、ホルダー装着の違和感 やタスク中の気分の変化等に際しては実験を即刻中止する旨を伝えた。タスク自体は約 20 分か ら 25 分間で、終了後は謝礼の図書カードを渡し、質問等あれば事後にできるよう研究主担者の 連絡先も渡した。 図1 プローブホルダー図

実験には機能的近赤外分光装置(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)とし て、 FOIRE-3000(島津製作所)と OMM-3000(島津製作所)を用いた。両機は全く同一の機器であるが、 後者は医療機器としての薬事承認を受けており(製造販売承認番号 21600BZZ00195000)、ビデ オカメラ等の周辺機器を一切接続できない仕様になっている為に、被験者の実験時の様子を記 録するに後者使用時のみ別途外部ビデオカメラ(SONY HDR-XR500V)を設置した(前者使用時

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 には付属のビデオカメラを使用した)。両機とも、入射光用 13 光ファイバー・プローブ(図1の赤丸 数字)と受光用 14 光ファイバー・プローブ(同青丸数字)が、縦 3 列・横 9 列に 3 センチ間隔で長 方形状に並べられた 42 チャンネルからなるホルダーを、被験者に装着して 780±5nm, 805±5nm, 830±5nm の波長の近赤外光を使用して血中のヘモグロビンの変化量を計測する。プローブ及び プローブホルダー装着に当たっては、最下列が脳波記録国際 10-20 法の T3-Fp1-Fz-Fp2-T4 のラインに一致するように注意し、頭周及び正中線に沿って Cz-Nz(鼻根点)と Cz(最頭頂部)間の 距離を記録した。 図2 頭部装着イメージ図 (左ブローカ部位、前頭前野中央部、右ブローカ相当部位の場所は被験者によって異なる) タスク遂行中は、fNIRS 機・被験者の顔の様子を記録するためのビデオカメラ・行動データを記録する ための IC レコーダー(SONY PCM-D50)による計測を行った。fNIRS 機は、前頭葉の 42 部位における 「血液成分のヘモグロビンの濃度変化(mM)と光路長(cm)の積」を酸化ヘモグロビン(oxy-Hb)、脱酸化 ヘモグロビン(deoxy-Hb)、総合ヘモグロビン(total-Hb)値としてモニター上に 3 色のトレンドグラフとして 瞬時に提示する。この内で fNIRS 研究は代表値として oxy-Hb を用いることが多いので(福田、2009)、 本研究も前例に従った。

fNIRS 機内で oxy-Hb は 42 チャンネル別に fNIRS データとして数列として記録されるのでそのデータ を統計ソフトで処理しやすいように Excel file として、音声データは mp3 ファイルとして、ビデオデータは AVCDH(CPI)ファイルとして、頭部写真は JPEG ファイルとして分析用に保存した。またアンケート回答 内容、エジンバラ利き手テスト結果、行動データは実験中は所定用紙に手書きで書き込み、その後 Excel にデータ入力を行った。 2.3 使用タスク 実験は、レスト 30 秒とタスク 60 秒が交互になるブロックデザインを組んで行った。これにより、 前 頭 前 野 中央部 左ブローカ 部位 右ブローカ 相当部位

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 文字タスクやカテゴリータスク直前のレストタスクをベースラインと捉えることができた。レストタスク は、日本語では「あ、い、う、え、お、あ、い、う」と、あ行を、英語では'a, b, c, d, e, a, b, c'と、アル ファベット最初の 5 文字をゆっくりと口頭で言い続ける指示を出した。タスクは 2 タイプ 4 種類行っ た。1 文字だけ提示して、その文字から始まる単語をできるだけ沢山言ってもらう文字タスク(「き」 なら「きせつ」等)と、範疇を示す語を提示してその範疇に属する語をできるだけ沢山言ってもらう 意味タスク('job'なら'teacher'等)を日英語で行った。各文字・単語はコンピューター(Apple 社 MacBook Pro 17")のモニター上に 20 秒ずつ提示されるようマイクロソフト社のパワーポイントでタ スクを作成した。提示文字・単語及び提示時間は下表の通りである。使用言語順による不要な媒 介変数を取り除くために、日英版と英日版を作成し、カウンターバランスを取った。 表2 : VFT タスク

タスクに使用した「き」「し」「あ」「どうぶつ」「スポーツ」「いろ」'F' 'A' 'C' 'food' 'job' 'country'は 先行研究(村井他, 2004、安井他, 2004)を参考に作成した。 2.4 データ分析方法 fNIRS データは、タスク遂行中の 42 チャンネルそれぞれの酸化ヘモグロビン・脱酸化ヘモグロ ビン・総合ヘモグロビンの変化量として 130 ミリセカンド(0.13 秒)毎に本体に記録される。この生デ ータは、130 m.s.前の血液中のヘモグロビン濃度の変化量と比較した光路長の積であり、そのま ま被験者間及び被験者内比較に用いることはできず、必ずベースラインデータとの差分を求める 必要がある。即ち、ブロックデザインのタスク生データ(の数列)からレスト生データ(の数列)を引 いた差分を全タスクの全 42 チャンネルについて算出し、それを被験者内・被験者間比較するのが 理想的である。但し、例えば VFT 実験ではタスク開始から終了まで 390 秒かかるので、被験者1 人の生データを Excel に書き出すだけでも、3,000 行× 42 (チャンネル)列× 3 (oxy-Hb, deoxy-Hb, total-Hb)列の膨大なデータ量となる。本研究では、これをすべてを分析対象とするの でなく、(1) 先ず oxy-Hb だけを先行研究に従い分析対象とし、次に(2) 42 チャンネルの中で本研 究目的に合致する脳部位を特定し、そのデータを分析対象とし、最後に(3) 6 群それぞれから各 4 名を無作為抽出し、そのレスト平均値をグループのベースラインデータと設定し、群構成員全員 の差分データを算出後、グループ平均値を求めて、グループ間(タスク及び脳部位)比較を行っ レスト (日) 動物 スポーツ 色 food job country レスト (英) レスト (日) レスト (日) き し あ F A C レスト (英) レスト (英) food job country 動物 スポーツ 色 F A C き し あ レスト (日) レスト (日) レスト (英) VFT (日→英) VFT (英→日) レスト (英)

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 た。この(2)、(3)の手法は fMRI 実験データ処理に関する苧阪(2010)の手法を踏襲した。但し、 fNIRS に最も適した研究デザインであり、且つ言語研究には不可避である「個人差」を見るために、 各群から抽出した 4 名だけは、それぞれのベースラインデータを基にした差分データを算出し、 個人内比較も行った。以下に、分析対象の脳部位の特定方法とその理由、群間及び群内分析方 法を記載する。 2.4.1 分析対象 3 脳部位の特定 各被験者毎に、実験時の頭部写真(左・中央・右)とビデオ映像を参考にして、(i)左ブローカ部 位周辺の 3∼4 チャンネル(17, 25, 34 チャンネル付近)、(ii)前頭前野中心部周辺の 3∼5 チャンネ ル(21, 22, 30 チャンネル付近)、(iii)右のブローカ相当部位周辺 3∼4 チャンネル(9, 18, 26 チャン ネル付近)を実験担当者 2 名で特定した。但し、oxy-Hb/deoxy-Hb/total-Hb のトレンドグラフから 明らかに外的要因(プローブ外れや頭部の大きな動き等)でドリフトしていると判断できるデータは、 そのチャンネルデータを分析対象から除外した。左右ブローカ部位を分析対象とするのは、本研 究目的として第2言語接触開始年齢と言語賦活部位の関連性を見るためである。一方、前頭前 野中心部に関しては未だに局在機能が解明されていないが、注意や計画性・創造性に関わる可 能性を示唆する研究報告があるので、均衡バイリンガルと優勢バイリンガルの差を見るのに適切 な部位であると判断し分析対象とした。 2.4.2 グループ間比較 (1) ベースラインデータの特定:第 1 グループからランダムに 4 名を抽出し、30 秒間レストタスク 5 回の平均値を、脳左・中央部・右部位別に算出しプロット化した。タスク開始直後と終了直前の 5 秒間を含めないよう留意して、ピークを含む 10 秒間を 3 部位別に特定した。このレスト代表値とな る 10 秒間の fNIRS データを第 1 グループ全員から抽出し、各被験者の(タスク種類とは無関係に) ベースラインデータとした。 (2) タスクデータの分析対象時間部分の特定:第 1 群からの抽出被験者 4 名の 4 タスクデータ に関しても、平均値を 3 脳部位別に求め、12 (4 タスク× 3 部位)プロット図を作成した。各タスクは 60 秒間であるが、1 単語またはカテゴリー語提示は 20 秒間継続するので、タスク開始当初の 5 秒 間と終了直前の 5 秒間を含まない点以外に、タスク開始後 20 秒と 40 秒データをまたがないよう に留意して、ピークを含む 10 秒間を 4 タスク遂行中の脳 3 部位について特定した。この 12 代表 値となる 10 秒間の fNIRS データを、第 1 グループ全員から抽出した。 (3) 変化量の算出:上記(2)で求めたタスク代表値から(1)で求めたベースラインデータを引いた 差分を、4 タスク別・3 脳部位別に各被験者毎に算出した(図3と図4を参照)。 (4) グループ平均値の算出:上記(3)で求めた 25 人(第 1 グループ)の平均値を、4 タスク別・3 脳部位別に算出した。 (5) 全グループの平均値の算出:上記(1)∼(5)の手順をグループ2∼6についても踏んで、グル ープ平均値を 4 タスク別・3 脳部位別に算出し、3 元配置の分散分析(6 グループ× 4 タスク× 3 脳部位)で差を統計分析した。主効果が見られた場合は、多重比較(Bonferroni)を行い、具体的 に有意差のあるグループ・タスク・脳部位を特定した。

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 図3 左ブローカ部位のタスク10秒 図4 左ブローカ部位のベースライン10秒 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0 10 20 30 40 50 60 70 系列1 左ブローカ部位のタスク10秒(グループ平均)から左ブローカ部位のベースライン10秒(各グル ープの抽出被験者4名の平均)を引く」 タスク レスト ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― 2.4.3 各被験者内比較 6グループ合計 131 人それぞれの fNIRS データを整理(タスクデータからベースラインデータを 引いた差分を出)して、被験者内比較をし、グループ内で平均値を求めるのは膨大な作業量を伴 うので、各群から無作為に4名抽出し、個人内タスク比較を行った。尚、無作為抽出の結果、群間 0.010198 0.00431 -0.00088 -0.00442 -0.00648 -0.00372 0.002483 0.006999 0.000944 -0.00746 0.000346 -0.00914 -0.00862 -0.0015 0.030219 0.00573 0.025061 0.029094 0.029931 0.071376 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0 10 20 30 40 50 60 70 系列1 ― 10秒 10秒

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 比較時の 4 名とは全く異なる被験者が各群から抽出された。 手順としては、先ず、各被験者毎に5回のレストタスク時の fNIRS データ平均値を脳の 3 部位別 に求めてベースラインデータとした。次に、3部位別に各4タスクとベースラインデータの差分を算 出して各タスクデータとした。差分算出時に、タスクは 60 秒であるのに対してレストは 30 秒である ので、レスト平均値数列を乱数を用いて 60 秒の数列に変換した後、差分を出した。このようにして 求められた 4 タスク・3脳部位別データ(12 列)を繰り返しのある分散分析にかけて、個人内タスク 比較を行った。有意差があれば、引き続き多重比較(Bonferroni)を行い、具体的に有意差のある タスク・脳部位を特定した。この作業を 24 人分(6 群から 4 人ずつ)繰り返した。 2.4.4 行動データ ひらがな 3 文字とアルファベット 3 文字(単語課題)及び日本語3単語と英語3単語(カテゴリー 課題)がモニター上にそれぞれ 20 秒間提示され、被験者は刺激文字で始まる単語や、刺激語に より想起される語をできるだけ沢山言うことが求められた。例えば'F'提示なら'family' 'food'など、 「動物」なら「きりん」「ゾウ」などと答えるが、20 秒間に答えることができた単語を全て書きとり行動 データとして集計し、fNIRS データ解析時に参考にすることにした。音声データを基にこの行動デ ータは集計された。

第3章 結果

本章では、グループ・タスク・脳部位に差があったかどうかに関する全体結果、言語流暢性課題 のグループ1∼グループ6のグループ間比較結果、グループ内比較結果、行動データ結果を順 に提示する。 3.1 グループ・タスク・脳部位間の差 6グループ(対応無し)・4タスク(対応有り)・脳の3部位(対応無し)の3元配置の分散分析を行 った結果、6グループ間に主効果があり(F(3,5599)=439.871, p<.001)、4タスク間に主効果があり (F(2,5599)=180.651, p<.001)、脳の3部位間にも主効果があり(F(5,5599)=332.523, p<.001)、か つタスクと脳部位間に交互作用(F(6,5599)=83.615, p<.001)があることが判明した。これより、6グ ループ間、4タスク間、3脳部位間に差があることがわかった。さらに、多重比較(Bonferroni)を用 いて調べた結果、4タスク間に全て有意差があり(英語文字タスク平均.015>英語意味タスク平 均.01>日本語文字タスク平均 .007>日本語意味タスク平均.004)、脳3部位間にも全て有意差 があり(前頭前野中央部平均.012>左ブローカ部位平均.008>右ブローカ相当部位平均.006)、 グループ間ではグループ2とグループ4、グループ2とグループ6、グループ4とグループ6以外全 てに意差があることがわかった。次に、グループ間、タスク間、脳部位間の差をさらに詳しく見るこ とにする。 3.2 グループ間比較 三元配置の分散分析で6グループ間に主効果があることがわかったので、次にグループ間 の差異をタスク・脳部位別に提示する。 多重比較の結果(表3)、日本語文字タスクの全部位に関して、グループ3(第2言語接触が3歳

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 から小学校入学前までのグループ)が最も fNIRS 値が高く、左ブローカ部位ではグループ1(出生 前から2言語接触開始のグループ)とグループ6(第2言語圏滞在皆無あるいは数カ月以内のグ ループ)に差がなかった。前頭前野中央部では、グループ2(出生時から2言語接触したが、実験 時まで言語環境が継続しなかったグループ)とグループ6に差がなかった。右ブローカ相当部位 では、グループ1とグループ6、グループ2とグループ4(第2言語接触開始が6歳から12歳のグル ープ)にそれぞれ差がないという結果になった。 表3 日本語文字タスクの脳部位別結果 日本語文字タスク 左ブローカ部位 日本語文字タスク 前頭前野中央部 日本語文字タスク 右ブローカ相当部位 グループ 平均 値 標準偏差 N 平均値 標準偏差 N 平均値 標準偏差 N 1 .0031 .00268 78 .0125 .00289 78 -.0058 .00678 78 2 .0083 .00301 78 .0172 .00180 78 .0056 .00408 78 3 .0135 .00146 78 .0314 .00141 78 .0175 .00248 78 4 -.0152 .00519 78 .0046 .00237 78 .0050 .00275 78 5 -.0008 .00232 78 .0032 .00464 78 .0019 .00307 78 6 .0043 .00361 78 .0160 .00145 78 -.0043 .00390 78 総和 .0022 .00956 468 .0141 .00971 468 .0033 .00868 468 F (5,462)=709.522, p<0.01 F (5,462)=1142.198, p<0.01 F (5,462)=325.731,p<0.01 次に、英語文字タスクの脳部位別多重比較結果(表4)より、左ブローカ部位では日本語文字タ スクとは反対にグループ4(第2言語接触開始が6歳から 12 歳のグループ)が最も fNIRS 値が高く、 グループ1とグループ5(第2言語接触開始が 16 歳以降のグループ)、グループ3とグループ6に 差はなかった。前頭前野中央部と右ブローカ相当部位は共通してグループ3が高く、逆にグルー プ1が最も fNIRS 値が低いことがわかった。 表4 英語文字タスクの脳部位別結果 英語文字タスク 左ブローカ部位 英語文字タスク 前頭前野中央部 英語文字タスク 右ブローカ相当部位 グループ 平均 値 標準偏 差 N 平均値 標準偏差 N 平均値 標準偏差 N 1 .0132 .00190 78 .0094 .00300 78 -.0007 .00586 78 2 .0033 .00458 78 .0107 .00316 78 .0137 .00569 78

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 3 .0170 .00132 78 .0287 .00117 78 .0205 .00234 78 4 .0282 .01575 78 .0189 .00529 78 .0143 .00213 78 5 .0109 .00266 78 .0117 .00113 78 .0104 .00295 78 6 .0167 .00458 78 .0196 .00142 78 .0248 .00381 78 総和 .0149 .01032 468 .0165 .00735 468 .0138 .00902 468 F (5,462)= 104.908, p<0.01 F (5,462)= 493.380, p<0.01 F (5,462)= 363.910, p<0.01 日本語意味タスクに関しては多重比較の結果(表5)、左ブローカ部位ではグループ4の fNIRS 値が明らかに高く、グループ6が最も低かった。前頭前野中央部と右ブローカ相当部位は共通し てグループ3がグループ全体を通して高い値となった。 表5 日本語意味タスクの脳部位別結果 日本語意味タスク 左ブローカ部位 日本語意味タスク 前頭前野中央部 日本語意味タスク 右ブローカ相当部位 グループ 平均 値 標準偏差 N 平均値 標準偏 差 N 平均値 標準偏 差 N 1 .0058 .00256 78 .0042 .00659 78 .0004 .01243 78 2 .0034 .00536 78 .0071 .00204 78 -.0048 .00568 78 3 .0034 .00129 78 .0245 .00100 78 .0111 .00183 78 4 .0179 .01677 78 .0035 .00197 78 .0004 .00350 78 5 .0063 .00289 78 .0026 .00208 78 -.0106 .00274 78 6 -.0059 .00201 78 .0038 .00242 78 -.0078 .00237 78 総和 .0051 .01015 468 .0076 .00835 468 -.0019 .00923 468 F (5,462)= 82.396, p<0.01 F (5,462)= 531.145, p<0.01 F (5,462)= 129.306, p<0.01 一方英語意味タスクの脳部位別多重比較の結果(表6)、左ブローカ部位では、グループ5の fNIRS 値が最も高く、日本語意味タスクとは反対にグループ4の値は最も低かった。前頭前野中央 部では他のタスク同様グループ3が最も高く、グループ1が最も低い結果になった。右ブローカ相 当部位はグループ5が最も高く、グループ1が最も低いことがわかった。 表6 英語意味タスクの脳部位別結果 英語意味タスク 左ブローカ部位 英語意味タスク 前頭前野中央部 英語意味タスク 右ブローカ相当部位 グループ 平均 値 標準偏差 N 平均値 標準偏差 N 平均値 標準偏差 N

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 1 .0004 .01243 78 -.0019 .00439 78 -.0065 .01850 78 2 -.0048 .00568 78 .0042 .00226 78 .0039 .00429 78 3 .0117 .00131 78 .0258 .00179 78 .0203 .00171 78 4 -.0128 .00619 78 .0090 .00252 78 .0134 .00227 78 5 .0316 .00274 78 .0106 .00136 78 .0236 .00368 78 6 .0051 .00181 78 .0046 .00137 78 .0093 .00223 78 総和 .0052 .01540 468 .0087 .00897 468 .0107 .01288 468 F (5,462)= 467.323, p<0.01 F (5,462)= 1105.546, p<0.01 F (5,462)= 147.654, p<0.01 全タスクを通して、前頭前野中央部ではグループ3の fNIRS 値が最も高くなり、右ブローカ相当 部位では英語文字タスクを除いた全タスクに関してグループ1の fNIRS 値が一番低くなる傾向が あることがわかった。 3.3 グループ内比較 三元配置の分散分析結果より4タスク間・脳の3部位間に主効果があることがわかったので、次 に、各グループ内で Task と部位ごとに比較をした結果をグループごとに提示する。 3.3.1 グループ1 グループ1(出生前から2言語に接し実験時までに同じ言語環境が続いたグループ)の左ブロ ーカ部位では、文字タスクも意味タスクも、英語の方が fNIRS 値が高くなったが、前頭前野中央 部では日本語の方が高くなった。また、全タスクとも共通して、右ブローカ相当部位はほとんど 賦活しなかった(表7と図5)。 表7 タスク・部位別結果 図5 タスク・部位別の平均値比較 グループ1 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 mMcm 系列1 .0031 .0125 -.0058 .0132 .0094 -.0007 .0058 .0042 .0004 .0081 -.0019 -.0065 日文字 左 日文字 中 日文字 右 英文字 左 英文字 中 英文字 右 日意味 左 日意味 中 日意味 右 英意味 左 英意味 中 英意味 右 F (11,67)=169.016, p<0.01 タスク N 標準偏差 平均値 日文字左 78 .00268 .0031 日文字中 78 .00289 .0125 日文字右 78 .00678 -.0058 英文字左 78 .00190 .0132 英文字中 78 .00300 .0094 英文字右 78 .00586 -.0007 日意味左 78 .00256 .0058 日意味中 78 .00659 .0042 日意味右 78 .01243 .0004 英意味左 78 .00258 .0081 英意味中 78 .00439 -.0019 英意味右 78 .01850 -.0065

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 3.3.2 グループ2 グループ2(出生時から2言語に接触したが実験時まで同じ言語環境が続かなかったグループ) の左ブローカ部位では、文字タスクは日本語の方が、意味タスクは英語の方が、fNIRS 値が高くな るという結果になった。前頭前野中央部では,文字タスクも意味タスクも日本語の方が賦活し、右 部位では英語の方が fNIRS 値が高くなった(表 8 と図 6)。 表8 タスク・部位別結果 図6 タスク・部位別の平均値比較 グループ2 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 mMcm 系列1 .0083 .0172 .0056 .0033 .0107 .0137 .0034 .0071 -.0048 .0130 .0042 .0039 日文字 左 日文字 中 日文字 右 英文字 左 英文字 中 英文字 右 日意味 左 日意味 中 日意味 右 英意味 左 英意味 中 英意味 右 3.3.3 グループ3 グループ3(第2言語接触開始年齢が3歳から小学校入学前までの間のグループ)の左ブローカ部 位と右ブローカ相当部位では、文字タスクと意味タスクともに英語の方が日本語より fNIRS 値が高か った。前頭前野中央部では文字タスクの場合、日本語の方が英語より fNIRS 値が高く、逆に意味タ スクでは英語の方が高い結果となった(表 9 と図 7)。 図7 タスク・部位別の平均値比較 グループ3 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 .0350 mMcm 系列1 .0135 .0314 .0175 .0170 .0287 .0205 .0034 .0245 .0111 .0118 .0258 .0203 日文字 左 日文字 中 日文字 右 英文字 左 英文字 中 英文字 右 日意味 左 日意味 中 日意味 右 英意味 左 英意味 中 英意味 右 F (11,67)=779.100, p<0.01 タスク N 標準偏差 平均値 日文字左 78 .00301 .0083 日文字中 78 .00180 .0172 日文字右 78 .00408 .0056 英文字左 78 .00458 .0033 英文字中 78 .00316 .0107 英文字右 78 .00569 .0137 日意味左 78 .00536 .0034 日意味中 78 .00204 .0071 日意味右 78 .00568 -.0048 英意味左 78 .00357 .0130 英意味中 78 .00226 .0042 英意味右 78 .00429 .0039

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 表9 タスク・部位別結果 3.3.2 グループ4 グループ4(第2言語接触開始が6歳から12歳までのグループ)の左ブローカ部位では、文字タス クは英語の方が日本語より fNIRS 値が高くなったが、意味タスクは日本語の方が高くなった。前頭前 野中央部と右ブローカ相当部位では、文字タスクも意味タスクも、英語の方が日本語より高い結果 になった(表 10 と図 8)。 図8 タスク・部位別の平均値比較 グループ4 -.0200 -.0150 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 .0350 mMcm 系列1 -.0152 .0046 .0050 .0282 .0189 .0143 .0179 .0035 .0004 -.0128 .0090 .0134 日文字 左 日文字 中 日文字 右 英文字 左 英文字 中 英文字 右 日意味 左 日意味 中 日意味 右 英意味 左 英意味 中 英意味 右 F (11,67)=2800.265, p<0.01 タスク N 標準偏差 平均値 日文字左 78 .00146 .0135 日文字中 78 .00141 .0314 日文字右 78 .00248 .0175 英文字左 78 .00132 .0170 英文字中 78 .00117 .0287 英文字右 78 .00234 .0205 日意味左 78 .00129 .0034 日意味中 78 .00100 .0245 日意味右 78 .00183 .0111 英意味左 78 .00122 .0118 英意味中 78 .00179 .0258 英意味右 78 .00171 .0203

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 表10 タスク・部位別結果 3.3.3 グループ5 グループ5(第2言語接触開始が16歳以降のグループ)では、全タスクの全部位に関して、英 語の方が日本語より fNIRS 値が高くなる傾向が見られ、統計的に有意な差があった(表 11 と図 9)。 表11 タスク・部位別結果 図9 タスク・部位別の平均値比較 グループ5 -.0150 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 .0350 mMcm 系列1 -.0008 .0032 .0019 .0109 .0117 .0104 .0063 .0026 -.0106 .0316 .0106 .0236 日文字 左 日文字 中 日文字 右 英文字 左 英文字 中 英文字 右 日意味 左 日意味 中 日意味 右 英意味 左 英意味 中 英意味 右 F (11,67)=534.154, p<0.01 タスク N 標準偏差 平均値 日文字左 78 .00519 -.0152 日文字中 78 .00237 .0046 日文字右 78 .00275 .0050 英文字左 78 .01575 .0282 英文字中 78 .00529 .0189 英文字右 78 .00213 .0143 日意味左 78 .01677 .0179 日意味中 78 .00197 .0035 日意味右 78 .00350 .0004 英意味左 78 .00619 -.0128 英意味中 78 .00252 .0090 英意味右 78 .00227 .0134 F (11,67)=1385.282, p<0.01 タスク N 標準偏差 平均値 日文字左 78 .00232 -.0008 日文字中 78 .00464 .0032 日文字右 78 .00307 .0019 英文字左 78 .00266 .0109 英文字中 78 .00113 .0117 英文字右 78 .00295 .0104 日意味左 78 .00289 .0063 日意味中 78 .00208 .0026 日意味右 78 .00274 -.0106 英意味左 78 .00274 .0316 英意味中 78 .00136 .0106 英意味右 78 .00368 .0236

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 3.3.4 グループ6 グループ6(第2言語圏滞在経験が皆無あるいは数カ月以内のグループ)では、左ブローカ部位 と右ブローカ相当部に関して、全タスクで英語の方が日本語より fNIRS 値が高くなる傾向が見られ た。 表12 タスク・部位別結果 図10 タスク・部位別の平均値比較 グループ6 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 mMcm 系列1 .0043 .0160 -.0043 .0167 .0196 .0248 -.0059 .0038 -.0078 .0051 .0046 .0093 日文字 左 日文字 中 日文字 右 英文字 左 英文字 中 英文字 右 日意味 左 日意味 中 日意味 右 英意味 左 英意味 中 英意味 右 以上の結果をまとめると、出生前から第2言語に接触していたグループ1、出生時から2言語に 接触したが実験時まで同じ言語環境が続かなかったグループ2、第2言語接触開始年齢が3歳か ら小学校入学前までの間のグループ3、第2言語接触開始が6歳から 12 歳のグループ4に関して は、全体を通して共通した傾向は見られなかった。しかし、第2言語接触開始が16歳以降のグル ープ5、第2言語圏滞在経験が皆無あるいは数カ月以内のグループ6では、英語の方が日本語よ り fNIRS 値が高い傾向が見られた。 3.4 行動データ結果 日本語文字タスク、英語文字タスク、日本語意味タスク、英語意味タスクの各タスクの想起語数 のグループ間比較をクラスカル・ウォリス検定を用いて行った結果、日本語文字タスクに関しては 6 グループ間に差がなく (p >.05)、英語文字タスクに関しては 6 群間に差があり(χ二乗=12.65, df=5, p<.05)、日本語意味タスクに関しては 6 群間に差がなく(p >.05)、英語意味タスクに関しては 6 群間に差がない (p >.05)ということがわかった。(下表13参照) F (11,67)=4357.345, p<0.01 タスク N 標準偏差 平均 値 日文字左 78 .00361 .0043 日文字中 78 .00145 .0160 日文字右 78 .00390 -.0043 英文字左 78 .00458 .0167 英文字中 78 .00142 .0196 英文字右 78 .00381 .0248 日意味左 78 .00201 -.0059 日意味中 78 .00242 .0038 日意味右 78 .00237 -.0078 英意味左 78 .00181 .0051 英意味中 78 .00137 .0046 英意味右 78 .00223 .0093

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 表13 4タスクの想起語彙数結果 χ二乗= 6.576, p>.05 χ二乗=12.65, p>.05 χ二乗= 3.198, p>.05 χ二乗= 8.423, p>.05 英語文字タスクに関しては 6 グループ間に差があったので、更にマン・ウィットニー検定を全て の組み合わせについて行った結果、グループ 5(第2言語接触開始が 16 歳以降のグループ)がグ ループ 3(第2言語接触開始年齢が3歳から小学校入学前までの間のグループ)、グループ 4(第 2言語接触開始が6歳∼12歳のグループ)、グループ 6(第2言語圏滞在経験が皆無あるいは数 カ月以内のグループ)よりも想起語数が有意に多いことが判明した。さらに、タスク間想起数に差 があるかを明らかにするために、フリードマン検定を行った。その結果、4 タスク間に差があること が判明した。(χ二乗=224.25, df=3, p<.001)そこで、全てのタスクの組み合わせに関してウィルコ クソン検定を行った結果、日本語意味タスクと英語意味タスクの想起語数が日本語文字タスクと英 語文字タスクの想起数よりも有意に多いことが判明した(図11参照)。 図11 4タスクの想起語彙数比較 0 5 10 15 20 25 30 語 系列1 15.2672 15.0687 23.374 23.8244 日本語文字タスク 英語文字タスク 日本語意味タスク 英語意味タスク

4章

考察

本章では、第3章で示したデータ分析の結果をもとにグループ全体、グループ間、グループ内 の順に考察を行う。 4.1 グループ全体のグループ・タスク・脳部位間の差の考察 グループ全体の中で、タスク別の脳血液中の fNIRS 値をグラフにしたのが図 12∼14 である。 N 平均値 標準偏差 日本語文字タスク 131 15.2672 5.15875 英語文字タスク 131 15.0687 4.95082 日本語意味タスク 131 23.374 6.30425 英語意味タスク 131 23.8244 7.32486

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 図12 全被験者のタスク別の結果(左ブローカ部位) 左 平均値 .0000 .0020 .0040 .0060 .0080 .0100 .0120 .0140 .0160 mMcm 左 平均値 .0022 .0149 .0051 .0095 日文字 英文字 日意味 英意味 図13 全被験者のタスク別の結果(前頭前野中央部) 中 平均値 .0000 .0020 .0040 .0060 .0080 .0100 .0120 .0140 .0160 .0180 mMcm 中 平均値 .0141 .0165 .0076 .0087 日文字 英文字 日意味 英意味 図14 全被験者のタスク別の結果(右ブローカ相当部位) 平均値 標準偏差 N 日本語文字タスク .0043 .04705 469 英語文字タスク .0191 .09224 469 日本語意味タスク .0115 .13866 469 英語意味タスク .0180 .18476 469 平均値 標準偏差 N 日本語文字タスク .0162 .04655 469 英語文字タスク .0208 .09188 469 日本語意味タスク .0140 .13843 469 英語意味タスク .0172 .18452 469 平均値 標準偏差 N 日本語文字タスク .0054 .04683 469 英語文字タスク .0181 .09216 469 日本語意味タスク .0045 .13892 469 英語意味タスク .0192 .18466 469 右 平均値 -.0040 -.0020 .0000 .0020 .0040 .0060 .0080 .0100 .0120 .0140 .0160 mMcm 日文字 英文字 日意味 英意味 前頭前野中央部 平均値

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 この結果より、脳の部位に関わらず英語文字タスク実行時に最も fNIRS 値が高くなることがわか り、また文字タスクも意味タスクも日本語より英語の方が高くなる傾向にあることがわかる。すなわ ち、日本語のタスクよりも英語のタスクの方がより脳が賦活し、アルファベットから英単語を作る英 語単語タスクの課題が最も脳を活性化させるものであったことがわかった。 さらに、グループ全体で、各タスク実行時に脳のどの部位が最も fNIRS 値が高くなる傾向にある かという結果をグラフにしたのが図 15∼18 である。 図15 全被験者の脳部位別の結果 図16全被験者の脳部位別の結果 (日本語文字タスク) (英語文字タスク) .0000 .0050 .0100 .0150 mMcm 日文字 .0022 .0141 .0033 左 中 右 .0100 .0150 .0200 mMcm 英文字 .0149 .0165 .0138 左 中 右 図17 全被験者の脳部位別の結果 図18 全被験者の脳部位別の結果 (日本語意味タスク) (英語意味タスク) -.0050 .0000 .0050 .0100 mMcm 日意味 .0051 .0076 -.0019 左 中 右 .0000 .0050 .0100 .0150 mMcm 英意味 .0095 .0087 .0107 左 中 右

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 この4つのグラフより、英語意味タスクを除いて日本語文字タスク、英語文字タスク、日本語意味 タスクについては脳の中部位が最も賦活することがわかった。英語文字タスクに関しては、他のタ スクに比べて左・中・右部位全てが 賦活しており、前頭前野の全範囲を使って課題に取り組んでいることがわかる。左部位について は、英語タスクの方が日本語タスクよりも fNIRS 値が高い傾向にあることもわかった。全体で見れば、 本実験の被験者は英語タスクの方が日本語タスクよりも脳に負担をかけてタスクを行っていると言 える。 4.2 グループ間のデータ分析結果の考察 グループ間のデータ分析結果から、特に共通の傾向が見られたグループ1(出生前から日英両 言語に接触し、実験時まで同じ言語環境が続いていた群)、グループ2(生後から2歳まで日英両 言語に接触したが、実験時まで同じ言語環境が続かなかった群)、グループ3(3歳から6歳まで 日英両言語に接触した群)を比較した。その結果、脳の中部位と右部位で共通した傾向があり、 それをまとめたのが図 19∼図 26 である。 この結果より、日本語意味タスクの左ブローカ部位を除いて、前頭前野中央部位と右ブローカ相 当部位に関してはグループ1(出生前から日英両言語に接触し、実験時まで同じ言語環境が続 いていた群)、グループ2(生後から2歳まで日英両言語に接触したが、実験時まで同じ言語環境 が続かなかった群)、グループ3(3歳から6歳まで日英両言語に接触した群)の順に fNIRS 値が高 くなる傾向があることがわかった。日本語と英語を第一言語とする被験者に関して、日英両言語の 接触開始年齢が早いほど両言語のタスク実行時にかかる負担は減り、英語接触開始年齢が一番 遅いグループ3でより賦活したと考えることができる。Weber & Nerille (1996)の研究では 11 歳以降 に第2言語の接触をした被験者は、左脳以外(前頭前野中央部と右ブローカ相当部位)での第 2 言語処理が大きくなるという結果が出ているが、本研究ではさらに第2言語接触開始が出生前、 出生時、3歳から6歳の被験者にも当てはまることが明らかとなった。つまり、3歳から6歳の頃に第 2言語に接触し始めた被験者は、出生前から第2言語に接触し始めた被験者よりも明らかに前頭 前野中央部と右ブローカ相当部位が賦活していることがわかる(図 27 参照)。これは、言語習得 過程における記憶が関係すると考えられる。3歳頃までの幼児は、自分の経験を記憶再生する際 に言語をうまく使えないと言われているが、3歳に記憶能力が発達し、非言語記憶と併せて言語 記憶を利用し、過去のことをことばで表現できるようになると考えることができる(フロイト、2004)。し たがって、3歳から6歳の頃に第2言語に接触し始めた被験者グループは、記憶能力が発達する 頃に2言語に接触したことになり、この時期に2言語に接触するとその後も両言語を左ブローカだ けでなく、前頭前野中央部や右ブローカ相当部位を使って処理するということが言える。

(24)

第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 図19 日本語文字タスク 前頭前野中央部 図20 日本語文字タスク 右ブローカ相当部 日本語単語タスク 前頭前野中央部 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 .0350 mMcm 系列1 .0125 .0172 .0314 グループ1 グループ2 グループ3 日本語文字タスク 右ブローカ相当部位 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 mMcm 系列1 -.0058 .0056 .0175 グループ1 グループ2 グループ3 図21 英語文字タスク 前頭前野中央部 図 22 英語文字タスク 右ブローカ相当部位 英語文字タスク 右ブローカ相当部位 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 mMcm 系列1 -.0007 .0137 .0205 グループ1 グループ2 グループ3 図 23 日本語意味タスク 前頭前野中央部 図 24 日本語意味タスク 右ブローカ相当部位 日本語意味タスク 右ブローカ相当部位 -.0060 -.0040 -.0020 .0000 .0020 .0040 .0060 .0080 .0100 .0120 mMcm 系列1 .0004 -.0048 .0111 グループ1 グループ2 グループ3 英語文字タスク 前頭前野中央部 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 .0350 mMcm 系列1 .0094 .0107 .0287 グループ1 グループ2 グループ3 日本語意味タスク 前頭前野中央部 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 mMcm 系列1 .0042 .0071 .0245 グループ1 グループ2 グループ3

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 図 25 英語意味タスク 前頭前野中央部 図 26 英語意味タスク 右ブローカ相当部位 英語意味タスク 右ブローカ相当部位 -.0100 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 mMcm 系列1 -.0065 .0039 .0203 グループ1 グループ2 グループ3 図 27 英語文字タスク実行時の右ブローカ相当部位賦活比較 (青→緑→黄→赤の順に賦活が大きい) 4.3 グループ内のデータ分析結果の考察 グループ5(第 2 言語接触開始が16歳以降)とグループ6(第 2 言語圏滞在皆無あるいは数カ 月以内)では、グループ6の中部位を除いた全タスクの全部位に関して、日本語より英語の方が fNIRS 値は高くなるという傾向が見られ(図 28 参照)、統計的に有意な差があった。このことから、 第 2 言語接触開始年齢が16歳以降のグループ5、そして第 2 言語圏滞在経験がないあるいは数 カ月のグループ6の被験者については、英語使用時の方が日本語使用時よりも前頭前野中央部 を除いて、脳全体を通して賦活するという結果となった。つまり、本研究では、第 2 言語接触開始 年齢が16歳以降だと英語タスクの方が賦活するということが明らかとなった。 さらに、行動データ分析結果より、英語文字タスクではグループ5(第 2 言語接触開始が16歳 以降)が最も想起語数が多いことがわかった。英語文字タスクの想起語数と fNIRS 値の関係につ いて、英語文字タスクの想起語数の方が日本語文字タスクの想起語彙数よりも多い一方、英語文 字タスクの方が日本語文字タスクよりも fNIRS 値が高くなったことから、想起しやすいタスクで fNIRS 値が低くなり、想起しにくいタスクで fNIRS 値が高くなるとは必ずしも言えないことがわかる。 英語意味タスク 前頭前野中央部 -.0050 .0000 .0050 .0100 .0150 .0200 .0250 .0300 mMcm 系列1 -.0019 .0042 .0258 グループ1 グループ2 グループ3 グループ1 グループ2 グループ3

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 図 28 英語文字タスク実行時と日本語文字タスク実行時の脳部位賦活比較 (上:グループ 5、左ブローカ部位 下:グループ 6、右ブローカ相当部位) また、行動データ分析結果より、日本語意味タスクと英語意味タスクの想起語数が日本語文字 タスクと英語文字タスクの想起数よりも有意に多いことが判明した。つまり、日本語も英語も意味の つながりで言葉を想起する方が簡単であったと言える。文字タスクと意味タスクの差についても想 起語彙数と fNIRS 値が、無関係なのかどうかを調べるために、文字タスクと意味タスクの fNIRS 値 の統計結果をまとめたのが表 14∼表 16 である。その結果、左ブローカ部位、前頭前野中央部位、 右ブローカ相当部位の3部位全てにおいて、文字タスクの方が意味タスクより fNIRS 値が高かった。 想起語彙数の多い意味タスクは容易であるという理由から fNIRS 値が低く、文字タスクに比べて脳 が賦活しなかったと結論づけることができる。逆に、想起語彙数の少ない文字タスクは、タスクの 難易度が高く脳がより賦活し、fNIRS 値が高くなったということがわかる。この結果は、第一言語タ スク実行時の前頭前野で、文字タスクは意味タスクより fNIRS 値が高くなるという先行研究に合致 している(Hatta et al, 2009)。 表14 左ブローカ部位の文字タスクと意味タスクのfNIRS値比較 (p < .05) 平均値 N 標準偏差 平均値の 標準誤差 文字タスク 1.5000 1872 .50013 .01156 左ブローカ 部位 意味タスク .0079 1872 .01198 .00028 英語文字タスク 日本語文字タスク

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第2言語習得開始年齢が言語流暢性課題に及ぼす影響 表15 前頭前野中央部位の文字タスクと意味タスクのfNIRS値比較 (p < .05) 平均値 N 標準偏差 平均値の 標準誤差 文字タスク 1.5000 1872 .50013 .01156 前頭前野 中央部位 意味タスク .0117 1872 .00940 .00022 表16 右ブローカ相当部位の文字タスクと意味タスクのfNIRS値比較 (p < .05) 平均値 N 標準偏差 平均値の 標準誤差 文字タスク 1.5000 1872 .50013 .01156 右ブローカ 相当部位 意味タスク .0065 1872 .01182 .00027 4.4 総合考察 本章では、第 2 言語接触開始年齢が3歳から6歳の被験者は、左脳以外(前頭前野中央部と右 ブローカ相当部位)での fNIRS 値が高くなることがわかった。これにより、Weber & Nerill (1996) の 研究で第 2 言語接触開始年齢が 11 歳以降の被験者に加えて、記憶能力が発達する3歳から6 歳の頃に第 2 言語に接触し始めた被験者についても前頭前野中央部と右ブローカ相当部位での 第2言語処理が大きくなるということが明らかとなった。フロイトが幼年期健忘と呼んだように(ブル ーム、2004)、長期記憶が形成されるのは 5 歳までかかると言われ、記憶能力の発達が左ブロー カ部位だけでなく前頭前野中央部や右ブローカ相当部位での言語処理に関係すると言える。 また、グループ5(第 2 言語接触開始が16歳以降)とグループ6(第 2 言語圏滞在皆無あるいは 数カ月以内)では、グループ6の中部位を除いた全タスクの全部位に関して、日本語より英語の 方が fNIRS 値は高くなるという傾向が見られた。グループ5には英語を第 2 言語とする被験者と日 本語を第 2 言語とする被験者がいるが、英語を第 2 言語とする被験者の方が多く、第2言語であ る英語のタスクの方が fNIRS 値は高くなる傾向にあることがわかる。 さらに、言語流暢性課題の想起語彙数では、グループ5(第 2 言語接触開始が16歳以降)は英 語文字タスク実行時に最も想起語数が多く、また、日本語意味タスクと英語意味タスクの想起語 数が日本語文字タスクと英語文字タスクの想起数よりも有意に多いことがわかった。

第5章 結論

5.1. 結論 第一言語を日本語とする日本語母語話者、第一言語を英語とする英語母語話者、日英両言 語を第一言語とするバイリンガルを対象に

図 25  英語意味タスク  前頭前野中央部        図 26  英語意味タスク  右ブローカ相当部位  英語意味タスク 右ブローカ相当部位 -.0100-.0050.0000.0050.0100.0150.0200.0250mMcm 系列1 -.0065 .0039 .0203グループ1グループ2 グループ3                                                                           図 27  英語文字タスク実行時の右ブローカ

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