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幼児初期の歌唱行動について(II)

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Academic year: 2021

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(1)Title. 幼児初期の歌唱行動について(II). Author(s). 伊藤, 勝志. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 38(1): 167-177. Issue Date. 1987-10. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5045. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 1 幼児初期の歌唱行動について 1. 藤. 伊. 1. 勝. 志. は じめ に. 1 歌唱のあらわれまで 1 1 ま 1 1. と. め. は じ め に. 1. 筆者は先に, 一幼児の音声生活を観察し, 誕生後2週間目の泣き声から1歳7カ月頃の, 明確な 歌唱があらわれるまでの様子について検討した, その結果から, 子どもが歌をうたうようになるま での過程は 1 2 3. 音声の模倣をはじめる以前の, 噛語発生を中心とした段階 哨語の流暢さを増し, 語音を中心とした音声の模倣 が活発となる段階 歌唱の一 節を模倣することにはじまり, 比較的長い時間をかけて 一つの曲を学習 し, うたう. ようになるまでの段階. の3つに大きく区分きれる, との見解を報告した, この事例の場合, 第三段階で完全にうたわれた 9ヵ月 であっ た, 従っ て, ここ 曲は「チューリ ッ プ」 (井上武士作曲2/4拍子) で, 対象児は月齢1 ) に言う 「歌」 は一般 的な定義即ち 「ふしをつけてうたうことば」 (旺文社 国語総合辞典 1955 , 「 978 )には当てはまらない, 調音 或いは 歌うための節のついた言葉」 (三省堂 新明解国語辞典 1. も定まらない, 言語獲得以前の音声を中心とするものである, ここでは, 言語発達の水準からすれ ば極めて初期の段階にある幼児でも, 既製の旋律を学習し再現できるものであることを確認した, このことは又, 調音の確立以前に語音のリズムや抑揚を学習すると言う, 言語の発達過程にあらわ. れる現象とも共通するものと思われる.. とは言えここに報告されたことは, 特定の環境のもとに育った一人の幼児の成長過程に生じた, 特殊な事例に外ならず, 一般化するにはなお資料不足であった. 今回知人の協力によっ て, 誕生後 )で 978 間もない女児の音 声を, 長期に亘っ て記録して頂く機会に恵まれたので, 先の報告 (伊藤1 は検討不足だった部分を補う意味も含めて本小論をまとめた,. 1 1. 歌唱の あ らわ れま で. 対象児Y子は, 昭和60年4月 30 日生れ, 父は会社員で一日の大部分は不在. 養育の中心となる のは, うたうことの好きな母親 (M) が中心となる. 生後3カ月目より音声を収録し, 後にこれを再 生しながら, 歌唱があらわれるまでの過程 を確か めた. この場合, 主として聴覚的な印象を中心としたが, 発声された音声の物理的特徴 を確認した 167.

(3) . 伊 藤 勝 志. い時, あるいは刺激と模倣との関連を確かめたい時な どは, 音響分析装置 (サウンドスペク トロ グ ラフ SG- 07 リオ ン社製) を利用し, 音声のリズム や抑揚な どについて言及する際の資料とし た.. 音声の収録はY子のMが担当したが, 子 どもの発声が顕著な時を選ぶよう 依頼したため 録音時 , 刻は不定 である. 周期はほぼ一週間, 一回の収録時間は約10分である 以下に 歌唱 とりわ け既 , . , 製曲の旋律模倣があらわ れるまでの音声的特徴について月齢に従っ て並べる , 1) 音声模倣が顕著になる以前の段階 音声 の収録が始まった3カ月目半ばは, まだ叫換音声が 目立ち 絶えずY子に語りかけるMのこ , とばに対し, 模倣と思われるような反応 は認められない ただ 子 どもを喜ばせよう として発声す , . る つくり声″ には笑い声をあげる 録音だけからでは解らな いが Mの動作 表情などをも見な . , , がらの反応なのかも知れない. 2の時期で 明確な母音も子音も 言語の発達段階からすれば3カ月頃はいわゆる 「アー・ウ一語」注 , 形成される以前である, 「アー・ウー」 のように単発的で抑揚に乏しい声 咽喉を閉じて力を入れた , 「イキミ声」 や 前述のような笑い声 な どが中心となっているが この他にも 喉の力を抜いた , , , , 軟かで高低の起伏に富んだ声も聞かれる.図-1には3カ月前後の2種類の音声を 音響分析装置に , 1250. H. al . 625,. ・ ● 、 人 3 12」- ↑. b. ←. 、 . - 」 脚 ÷に敵 晦. 獅. 初期の嘘語発声. . 5. . ー \ 、. ー . .. ▲ ” -+. ー . も . . . . . . ,,{- ’礼 ” ▲“ ., ▲. r. ー .. . も ム ー + . 1l oom/ s ec .. 図- ー. よる狭 帯域分析の描記 パターンで示す, 何れにおいても, 縦軸には周波数 横軸には時間 描かれ , , た線の濃淡は音声の強さをあらわしている, aは単発的に発声された声 で 持続時間は長く て1秒 , , 次の発声までに は, 1.8~2.3秒の間隔があり, しかも上下方向の揺れがないことから 単調な声で , あることを示している (伊藤1978より転載) bはY子3 5月の録音開始当初に発声されたもので . , ある, 持続時間は1.1秒と比較的短いものの, 高低の変化を示す波のようなうねりが 豊かな抑揚 , をともなっ た音声であることをあ らわしている. 因みに, 周波数は低い音が約260 高い方では390 , 168.

(4) . I 幼児初期の歌唱行動について 1. Hz . これは五線譜上で言えばC,からg,まで, ほぼ完全五度に近い音程である, 4カ月目に入ると泣き声はあまり聞かれない. 略語の発声 が一段と活発となり, 母の話しかけに 対してもはっ きりと反応することが解るようになってきた.イ ントネーショ ンはさらに豊かとなり, 二人のやりとりを聞いていると, まるで会話でもしているように思われることもある, このようなMの話しかけとそれに対するY子の反応と言う パター ンを中心に発声を繰り返すなか で, 音の分化もしだいに進み, ーそう流暢で多彩な略語の発声が確かめられる.. 5カ月目に入っ てからは, Mがうたいかける音声に対しても, 抑揚の豊かな声で反応することも 多くなり, 時には, 高低に変化のないま まではあるが, 歌唱のよう な発声もあらわれてきた. H. 3 l ) のはじまり と思われる, これと同じ頃, 語音に l Moog ( ) に言う 「La 1976 sang」 (哨語うた法 ge 対する模倣の 兆しもようやく みえてきたよう である. 図-2はMの 「イ ナイイ ナイ バー」 に対 し. “ い ・ T f l r. ina i n a i o o o. 図一2. 「バー」の 一音で応じた最初の模倣を, 広帯域分析の描記 パターンで示したものである.0,6秒の刺 激音に対し0.25秒と, 1/2以下の反応で, リズムが全く異なっている, そのうえ調音もまだまだ. 不充分である為, 母音を特徴 づける フォ ルマントや両唇破裂音の特徴である針状線な どは, Y子の 音声パター ンに現われない, 従っ てこの図のみをもって音声模倣の確かな証拠とするにはなお不足. な面が多い, しかし, 母の音声刺激を受けてから僅かの 時間内に, 比較的類似した特徴 (聴覚的に ではあるが) の音を発声 し, しかもこのような行動が同様の文脈中で頻々繰り返される とすれば, さらに明確な音声模倣に発展する初期の 段階として, このような不確かな音声を位置 づけることは 差し支えないもの と思われる,. 哨語初期の発声は単調で単発的なものであったが,5カ月目も後半になると音の数も多くなり,抑 揚も豊かで極めてメロ ディツクなものとなっ てくる. 子 ども自身, 発声することがとて も楽しいよ うで, 時には自分がどんな高い声を出し得るのか確かめてでもいるかのように, かん高い「キーキー 4 声」 を張り上 げることも多い,注 このように, 子 どもの音声生活は急激に豊かさを増し確実に言語の獲得へ向っ ている様子がうか がわれる. ここまでがいわば, .音声模倣が明確になる前の段階″に相当する時期で, 本事例 では生 後6カ月までの間であった. 2) 模倣の段階. 6カ月目になると, 母の 「アーアーアー」の ような3音によるリズミカルな音声パターンに対し, かなりはっきりした模倣 が目立つようになってきた. 図-3にこれを示す. 録音状態が悪く, 低い周 波数領域に雑音が入っ ているが, 刺激音声の0 .8秒に対 し模倣音の0.9秒と, リ ズム的な側面の再 169.

(5) . 伊 藤 勝 志 鴫 ず、. “. ▲ , , .. a:. a: 800mS ec ・. ” . ▼ . . . . 一. . a. ‐. アー. アー. 9 40mS ec ・. ;、. アー. 図- 3. 現性はかなり高いように思われる, 同じ頃, 両唇破裂音の b″ が 分 化 し, .a ba ba″ 或いは ba ba″ な どの 音 に よ る お し ゃ べ り が多く, Mの語りかけに対する返事も又, 極めて明確になっ てきた さらに哨語による自発的な歌 . , La l l sang も頻発し,ある程度旋律らしいものがあらわれてきた,Mがうたいかけると,一緒になっ ge てうたうことも多い, 勿論, ことばも旋律もはっきりしないままである, 6カ月半ばになると, 僅か2週間前には出きなかった 「イ ナイイ ナイ バ ー」 に対して aba″ 2 音 の模倣があらわれている, 絶えざるお しゃ べりと刺激と, そして模倣を僅かずつ繰り返すなかで,. 言語への準備が着々 と進められて いるよう である, Mは常にうたいかけて いるの である が La l ‐ , l. 一 .幸 a. .- ba. b A. 際. . .ゐ. き 韮・ 二 : ー , , 一 卦『 r 膏 一 噸≦ キ. ,. ミ 壕. r ; . ・,.. a a 90om sec .. w. ,. 輯. 一 a ア. ノぐ. 図-4 gesang の 他 に 旋 律 ら しき も の は ま だ あ らわ れ な い,. B. パ. パ I I O0mSe c .. 7カ月目, Mの語りかけに対する模倣や歌唱に対する反応は依然活発で, 単純な音なら確実に再 現する (図-4 ) , このような, 刺激音声とそれに対する反応を繰り返 している中, Mが「鳩ぽっ ぽ」 (文部省唱歌) を一節ずつうた っている途中で, この曲の最初のフレーズと思わ れるパター ンが観 # 察された (7カ月半) t ch か ら う た い は じ . 図-5にこれを示す. 850Hz (g2 ) と, 極 め て 高 い Pi # # めたもので, 音の進行はg 2,c 3,g 2と, 本来の音程構造とはかなり 異なったものであるが, リズム に関しては刺激に大変近いものである, 僅か一節, 唯の 一回きりであったが, 歌唱刺激に対し, 仮 えリズムだけとはいえ類似 の パタ」 ンで反応を示したのは初めてである 勿論, この段階でも調音 .. 170.

(6) . 1 幼児初期の歌唱行動について 1 「ポ ツ ポ ツ ポ」 をうたう. . ・ L ム ー. ,. . 400. ー デ F. 和織 L ▲ ,. . . 36 7. 283. ÷〆; ‐もご. 10 50m S e c ,. 図-5. は出来ていない, Mはそのため, これを歌の 一節として充分認識しなかったようであるが, リ ズム の類似性には気づいたようで, Y子の発声 を引き取り, そのまま 「鳩 ぽっ ぽ」 にしてうたい続けた. 刺激に対する子どもの反 応, それに対する親の受けとり方, この相互のやりとりを通じて, 子 ども は言語を獲得すると同様, 様々 な歌を学習していくのかも知れない, 歌の模倣が始まっ た頃, これまでのおうむ返 しの反応パターンに加え, 学習した音声や行動も, 言語による刺激だけで再現出来る (M: 「アワワしよう /」 に 対 して, Y 子 : 「ア ワ ワ ワ ワ ー」, さ. らに半月後の8カ月目になる とM: 「イ ンディ アンは?」 だけで同じ行動が現れる) ようになっ て き た.. 8カ月目, 声を出さずに玩具のラッパが吹 ける程, 呼吸や筋肉のコ ントロールが可能になる頃, 音声模倣は一段と顕著になってきた. この月齢初期は, 「ba 」 による 三音のパターンが中心である. 母親の発声 . . a; .. . . ba. 43 o. .39o. . . ba 23o. 1 l05 0. 子の模倣音声. . . . . 圏. , .. 、 X. . 一 定 . ,. . 零 γ. ず - -. 4 7 0 1lo om{ SeC ,. 図-6. Mが歌の 一節を 「ba」 の音でスキャッ ト風にうたう と, Y子はこれを 「アバ」 で忠実に模倣する. 図-6にこれを示す が,音の長さがほぼ正確であり,リズムの把握が確実に なってきたことをあらわ している, 同じ 頃 Y子の反応を確かめるためか, Mは 昼 回 猛 爆 ゐのリズムで, c。 g, , f, i t chを変えて追唱している. この と高さを変えて声を出す, これに対しY子は, 不正確ではあるが P とを示すものであろう ことは, 音の高さに対する知覚 的な機能は充分に働いているこ . この為であ ろうか. Mの歌を聞き乍 ら一緒に声を出すことを繰り返している間に, 哨語の発声にも明瞭な高低 171.

(7) . 伊 藤 勝 志. 変化があらわれてきた. 9カ月に入る直前には, 時間的にもかなり長い発声があらわれる 調音も , ,. P, m な どが 加 わ り ba, pa , nma の 音 が 盛 ん に 発 音 さ れ る, 同 じ 頃, M がう た う 「チ ュ ー リ ッ プ」. に近い模倣があっ たが, まだ明確な旋 律とはならない. 9カ月目, 前の月齢に引き続 いて, 当初は 「ba」 音が頻繁に聞かれ, 模倣も活発である 半 ばに . なると, そろそろ明瞭な発音があらわ れ, 「バイ バイ」も聞きとれるよう になり Mの「ハーイ は?」 , にも「アイ」と返事するな ど,話しかけとそれに対する反応とがしだい に言語に近づいていることが. 解るょうになってきた,ニ歳年長の姉が,戯れながら本児に呼びかけたもム ふ も. ばムムメー. に対し, かなり長いフレーズであるにもかかわらずほぼ正確なリズムで模倣するなど記憶の面でも 成長 した様子がう かがえ, 音声の模倣がかなり安定してきたことを示している 又 日常のおしゃ . , べりでも, 晴語そのものが歌唱時の発声に近く, 力が抜けた声であり 声を出すことが自 然な活動 , に な っ て い る, さ ら に Lal lgesang に お い て も, rba」 の 音 や 「pa」 「ma」 な どい く つ か の 音 が あ ら わ れ, こ れ ま で の 単 調 な Gesang か ら Me l i od eと言えるような音の高低変化が目立っ てきた. , このように, 音声をどん どん模倣し, 哨語の発声が滑らかとなり流暢におしゃ べり出来るように なっ てきた9カ月目の半ば, Mのうたう 「クッがなる」の最初のフレーズに対し 〆 多才 域 と模倣 するまでになっ た. この旋律はその後, 手元の録音資料の中に あらわ れてこないが 家人がY子の , 歌唱として認識した最初 のものである.. 流暢な哨語は10カ月目に入っ てさらに変化 し, 気嫌の悪い時な どには あたかも母親に何か を訴 , えるようなイ ントネーショ ンの声を出すようになる.Mの語りかけに対し返事をすることが目立ち , 対話がスムーズ に進行する, 調音はほとんど出来ないとはいえ 抑揚豊かな噸語は「ことばらしさ」 , を一段と増 してきたよう である. 音声の模倣でも 「アーアーア」 のような単純な刺激は卒業し 「バ ,. イ バ イ一 「お ハ ヨ ウ」 な ど の 日 常 語 が 中 心 と な っ て き た .. 月齢9.5カ月にあらわれた模唱はそれ以 後観察さ れないものの Mがうたえば必ずと言って良い , 程, 音声による反応が認められる傾向はなお続 いている これは11カ月目に入って急激に目立っ て .. くるのである. とはいえ, Mの歌唱に対するこのような反応は, 模倣とは決して言い難 いもので , リズム, メロ ディ ー共現在Mがうた っ ている曲と全く異なる形態のものである しかし 子 どもの , . 発声状態からすれば, 哨語のおしゃ べり時のそれとは明らか に別な, まさに 「うたっ ている」 もの なのである. 従っ てこのような 「うたい方」 は, 歌を模倣するというより Mがうたうことによっ , 「うたう」 という行動 発声形態そのものの模倣と言うべきかも知 て誘発された La l l 又は sang ge , , れない.. このような発声を繰り返しながら, うたう時の発声を身 につけ, 聴覚や調音など 感覚的 運動 , , 的, さらには記憶など知的な発達と関連させながらしだいに歌唱へと近づいていくものなのであろ う, 本児の場合, La l l sang のような自発的な発声は別として, 旋律 の模倣として確認され, それ ge が繰り返さ れてやがて一つの曲として完成さ れるに到るよう なものは10カ月 目までには出現して し)た まし).. 3) 旋律の形成ま で 本児の場合, 模倣によることが明確で, しかも完成されるまで繰り返 しうたわれた最初の旋律は 満一歳に入っ た直後の 「鳩 まっ ぽ」 (文部省唱歌) の 一節である (これは7カ月半に一度だけ観察さ. れたが, それ以後はしばらくあらわれなかっ た) 図‐7にこの分析結果を示すが 当初は冒頭J」j . , ヱと思われる部分 のみで Mが どんなに次 の 一節をうたわせようとしても 頑固に同じ旋律を繰 り , , 返すばかり. 時にはMが別な歌をうたいはじめても, これに従うY子 の旋律は 「ポツ ポツ ポー」 に 172.

(8) . 1 幼児初期の歌唱行動について 1. 母親の歌唱. ぜ.. ” ▲-…坤 ←粋1 画一 . ーー. o・ ,. . --, , . 一′ ′ 」ヰ--ん 、. 」t -- ‐. 一. ヰ- - 噌, 一′.▲, ‐中 ” ], ‐ .M 4 ,. 図-7. なることさえ頻々観察された. このような, 一つのフレー ズが長期に亘っ て繰り返され, 時には全く異なる刺激に対しても あら. チュ」リッ プ. 作 詞 者 不 明. 井上武士 作曲. J=9 2. 飯田秀一. さ. い. た. さ. い. た. チュー リッ. プ. の. は. な. 編曲. が. はと ぽっ ぽ 文部省唱歌. 1. ぽつ 2. ぽっ. ぽつ ぽつ. L. ぽ ぽ. ●. は. と. は. と. ぽっ ぽっ. ぽ ぽ. 173.

(9) . . 伊 藤 勝 志. われることはすでに報告したところである (伊藤・197 8 ) . このような傾向が何故生 じるのかは全く 解らないが, 譜例によ れば, 「チューリ ッ プ」 「鳩 ぽっ ぽ一 共に ドレミの三音による上行順次進行 , であり, しかもリズム, 音程全て同一のパターンである Ne l( 1956 )は, 10カ月児の自発的な旋 t t . 律を調べ, 長短二度の優位性を指摘しているが, 音程のうたい易さ リズム テンポな ど 様々 な , , , 要因が, 子 どもの発達水準と深く関わり合っ ているのかも知れない この点はなお 今後の観察を . , 通して検討すべきところである.. ところ で, このような同一フレーズの繰り返 しは, 語音に対する模倣 の場合と同様 当初のおう , 「ポッ ポツ ポは?」 のように ことばそ む返 しに模倣する段 階を経て, やがてはMのことばだけで( , の も の に 歌 の フ レ ー ズ が 含 ま れて い る よ う な レベ ル か ら 「Y ち ゃ ん う た お う か」の よ う な う た , , ,. うという行動を示唆することばのレベルまで変化) うたい始めるまでに発展するための原動力とな るように思う, Y子はその後もMの歌を日常的に耳 にしながら生活するのであるが 明らかに同一旋律の模倣と , 思われるようなもので, しかも継続的に繰り返 されたものはなかった 勿論 「鳩ぽっ ぽ一 以外にも , Y子が1歳8カ 月までにレパートリーに加えた曲は数曲あるが それ等は 「ポツ ポツ ポー」 の繰り , Y子の模唱. . . ◆. . 1 . ¥ず ” t. . .‘ ‐ ・ ; . ・● - ▼ ” ≧ ▲ ‘ t セ 「’ l y . . . ,. ポ. ー軸 一脳. .. . . . ポ. ポ. ◆ th i. . . ★. . . . 図-8 返 しを通し, うたう経験を充分に積み上 げてから獲得した ものである , さて, Y子の最初 のレパートリーはその後, 前述のように繰り返される中 歌詞の 「P」 音が少 , しずつ明瞭になっ てくると共に, およそ 一カ月後には第二のフレーズ 「ハ トポッ ポ一」の 二小 節が , あらわ れてくる(図-8 ) . この図だけでは必ずしも明確ではないが, 「ハ ト」の部分はまだ分離せず, ほ ぼ, a″ に近い一音のみでうた われるので リズムの面からは最初 のフレーズと同一に思われる , のだが, 聴覚的には明らかに異なっている, この「 ノ・トポッ ポ」はその後二カ月程頻繁に繰り返さ れ, Mが別の歌をうた っ ても「ポツ ポツ ポー」 174.

(10) . 1 幼児初期の歌唱行動について 1 とな る こ と が あ っ た. 第 三 の フ レ ー ズ をう た い 始 め た の は さ ら に 1,5カ 月. Y 子 13.5 カ 月 で あ る.. てい この場合も, 二小節目の時と同様, 「マメ」 に相当する部分は 「マ」 に近い音で一拍にうたわ れ. る.. Y子はこのように, 「はとぽっ ぽ一の 一節一 節を自分のものにしながらうたっ ているが, 第四節以 後がどのように, いつ頃加えられていったかは明らかでない. と言うのはこの他にもMは多くの歌 を我が子に模倣させようとする, その結果, Y子はそれらの歌の特徴的なフレーズを, 時には, し. だいに明瞭さを増してきた発音でも模倣するなど, 断片的なものではあるがレパー トリーを増 して 8カ月 目の収録では遂に一度も登場 きた, そのせいか, 「はとぽっ ぽ」 がうたわれる頻度は漸減し1 しな か っ た.. こうして1 9カ月目の初め, 調音もかなりはっきりして, アカ, アオなどのような色の名, ハミガ (キ) , アリ (ガ) ト, オヤ (スミ) ナ (サ) イ, などの日常生活での用語を使えるようになる (生 「 「 活言語の獲得) , さらに,,こんにちわは?」 に対し イ ヤ」 と応えるなど, 知的情緒的な側面とも 関連しながらの顕著な発 達が認められる頃, 大変リズミカルな略語歌や, フレー ズの短い CM ソ ン グなどと共に, 再 び 「鳩ぽっ ぽ」 があらわれる, これはその後ずっ と繰り返しうたわれ, ほぼ一カ ′たうたっ てあげなさい」 に従っ て, ほぼ完全 (最後のフレーズま . 月後の19カ月目後半, Mの 「おう で達したという程度ではあるが) なものを初めてうたう. 勿論, 部分的にはまだリ ズムがあいま い 2小節をとにかく記憶し再現したのである, で音程の変らないところもあるが, 2/4拍子1 た既製曲の学習は こうして生後7カ月目に始まっ , ほぼ一年を費して どうにか完全な旋律を形成 目に入ると直, 「ぞ一さん」何 れも完結し するに到っ たのであるが, 同じ頃「肩たたき」 又, 20カ月・ た旋律として・うたわれている. 勿論, この時点でもなお, 明僚に発音できる音は ごく少なく, こと ばがまだ獲得される以前である点は先の報告 (伊藤1978 ) とも一致するところである.. 1 1壬 ま. と. め. 以上, 一幼児の音声記録を, 誕生後3カ月目から20カ月目までに亘って観察し, 既製曲の旋律が 完全にうたわれるまでの プロセスについて検討したがその結果 1, 幼児初期における歌唱のあらわれは, 豊かな哨語発声から音声模倣を繰り返す中で生じでくる ことが再度確認された. ただ, 旋律 -- 仮えそれが僅か一節であっ たとしても -- を模倣してう たうことが出来るようになるはるかな以前, 哨語発声の中にすでに歌唱と似た状態での発声, いわ. l l ゆる La sang があることからすれば, 幼児にとっ て歌唱は生来的に備わ った発声行動なのかも ge 知れない. それにもかかわらず, ある時期まで模倣があらわれないのは, 聴覚的, 運動的な面での ・い, レディ ネスが必要とされる故なのかも知れな. 2, 模倣初期には音声の時間的な特徴が先ず把握され易いように思われる. もっ とも, 音韻的な側 面や音色などに関する充分な検討は加えられていないので, 何とも言い得ないが, 母音, 子音の全 を考えるなら, 感 ての調音が完成するまでには3~4年の年月 を要する程に複雑な運動であること・. 覚と直結した単純な発声運動の方が早期にあらわれても普通なのであろう, 又’ 音の高低の再生が 調音より前に達成されることも, 言語の獲得においてはイ ントネーショ ンを模倣する方が早いこと と共通する点であり, これもすでに検討した通りである.. 175.

(11) . 伊 藤 .勝 志. 3. 既製の旋律を完全に覚えてうたうまでには, 誕 生後1 8~20ヵ月 を要するようである. Y子の場 合 「鳩ぽっ ぽ」 の最初の 一節は11カ月にあらわれた. これが第三節へ進むま でさらに二カ月を要し ている, その後フレーズの数がどのように増 していったかは不明であるが, この旋律を繰り返しな がら, 最終的に完全な一曲をうたっ たのは1 9カ月目, 最初の 一節から 2カ 月 も か か っ て い る, と は. いえ, このような一つの曲を完全にうたうようになる頃には, 異なった旋律でも ・僅かの期間で覚え てしまうようになっ ていることは, 生後20ヵ月近くにな・ て 既製の曲を覚えて音声で 再生するた っ , めの レディ ネスが出来あがるということになるのであろう. つまり, 模唱の最初の段階, これは感 覚的にも運 動的にも, 或いは知的な面にもまだまだ未分化, 未発達の時代であり, 仮え一節でも旋. 律を模倣することは, 大変な努力, 緊張を伴なうものであろう, 従っ て, うたうこと, 旋律を覚え それを音声で再現するという行動パター ンに習熟するま′でには, 多くの時間を費やさねばならない ものと思われる. こう した比較的長い練習期間を通して歌唱の行動形態にも慣れ, 感覚 運動 知 , , 的諸側面における成長も加わっ て,.やがて最初の曲をほぼ完全 にうたえるようになる頃には それ , 以外の曲でも容易に覚えうたう ことになるのであろう. いわば生後1年半以上もの長い期間という のは, 既 製の旋律を覚えてうたうために必要とされる準備期間なのである. ただこのレディ ネスが . 今後の検討課題である 環境によっ て どのように左右さ れるのかについては, . 4. この程の報告ではこれま で, 二人 の幼児を事例. としてとりあげたが, 最初に覚えた, と言うよ りは歌唱の練習課題として選んだ (呈示したのは何れも親であっ たが’ それに対して反応, 模倣を. はじめたのは明らかに子 どもの自発的な行動の結果だと思う) ・曲は, 共にド・し・ミの三音によ る 上行二度の順次進行形式ではじまるものであった. 旋律やリズム の構造には 年齢に応じた反応の , 容易さな どがあるよう であるが, この点も又 今後検討したいと思う . 5. 最後に, ことばより先に歌を, 調音より先に旋律を獲得する. これも又二例に共通して観察さ れた, これはすでに述べたように, 言語獲得の過程において, 調音より先に語音の抑揚を模倣する ことから推測されたところである. ただ, 全ての子 どもにおいて, 調音以前に既製の旋律が学 習さ れるものか否か, なお不明である. これまでの二例は共に, 子 どもに対しうた いかけの頻度が高い ●ので 事例をさらに多く して確認 環境で育った例である. こう した環境 の影響も充分に考えられる , した い.. 註及び文献 註①. 歌に関する定義としては本文中 に挙 げた国語辞典の他に, 音馨学大辞典では, 音声の音響物. 理的特性に沿っ たものもある,. ② 「 ,アーウ一語」 (ことばの誕生・岩淵悦太郎他1976日本放送出版協会) による. ③ .Lallgesang (独) l l l a enと言う ドイ ツ語は元来, r音を1音にして発音することであり,. この意味の日本語では 「ララ唱」 がこれであろう 桜林 仁 ( 「ララ歌」 の他に 「純粋旋律的歌唱」 を当て 1 9 1 ) は 7 . , はめ, 又大畑祥子 ( 1969 ) は 「ことばのない歌」 と呼んでいる. 何れにしろ歌詞を伴わない, 176.

(12) . 1 幼児初期の歌唱行動について 1. 旋律だけを口ずさむものならば誰がうたってもこの語意内に含まれるであろう.. iker l He lmul l t Moog (1967) は そ の 著, Begin and erste Entwi ebens im ckl ung des Mus l l l i L 語 又 はカ タ コ Ki d l A H V l R ) 中 (哨 ト遊 び) ( の で t t n esa er , a monoogen . enn erag, a ngen. l l に続いて9カ月 ぐらいでLa sang があらわれると述べている. 従って哨語がすっ かり滑ら ge かになった頃の, うたうように発声される音声 を指していると思われるので, ここでは 「哨語. ④. 歌」 と した.. 240に亘っ 因みに, Y子が5カ月の時に発声したこの種の高声を音響分析したところ960~1 #ま で で あ る ていた, これを五線上にあらわすと, 上第一線のa2からその長四度上のd3 ,. i ldevelopment, B.Net l t ca , Notes oninfant mus , 1956. l 2 ) 大畑祥子 ( 1972 ) 幼児における旋律形成の発達的研究 ( .77 , 音楽教育研究, vo り引用,. No.10よ. 伊藤勝志 ( 1 97 6 ) 幼児初期の歌唱行動について 北海道教育大学紀要. 2 8巻第2号, pp 57~170 .1. (本学助教校 函館分校). 177.

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  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

る、というのが、この時期のアマルフィ交易の基本的な枠組みになっていた(8)。

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた