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ドイツ・Chemie im Kontext IIの研究 ―基本概念に注目して―

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(1)日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). ドイツ・Chemie im Kontext II の研究 ― 基本概念に注目して ー Study of the German Chemie im Kontext II - Focusing on the basic concepts 寺田光宏 TERADA Mitsuhiro 岐阜聖徳学園大学 Gifu Shotoku Gakuen University [要約]本研究はドイツにおける 2000 年前後の PIAS ショック後の科学教育分野における教育改革を推進した Chemie im Kontext(以下:CHiK)プロジェクトの中でも,後期中等教育用テキスト CHiK II を詳細に整理分析す ることを目的とした。CHiK II は,前期中等教育用テキスト CHiK I の作成の基本原理,科学3教科の教育スタン ダードの策定や大学入学資格のための化学教育スタンダードなどに大きく寄与した。その中で,基本概念は今日 のドイツの各シラバスなど様々なドイツ科学教育の分野で見ることができ,文脈と同様に大きな変革となった。 基本概念はそれぞれの目的により変化しているが基本的な構造は変化がないことが明らかになった。 [キーワード]ドイツ Chemie im Kontext II 基本概念 Ⅰ.はじめに. 要素を確認し選択される。また,文脈を重視しながら. 1.問題の所在. も到達点は,化学における体系的な知識の獲得や方法. ドイツにおける Chemie im Kontext(以下:CHiK)プ. の習得である。これらは基本概念に整理され,文脈と. ロジェクトは,コンテキスト(文脈)を基盤とした学. リンクをさせている。文脈を基盤とした学習は,生徒. 習や革新的な科学教育改革プロジェクト(寺田,2012. にとって重要なトピックを中心に構成されているた. など)として,またコンピテンシー志向のドイツの教. め,化学カリキュラムの通常の体系的構造はなくなっ. 育スタンダードとの関連(遠藤,2013 など)などで近. てしまう。生活世界の内容を支離滅裂に扱うことは学. 年我が国でも知られている。. 問的な概要の喪失につながるため,学習内容をカリキ. CHiK プロジェクトの基本的な目的は,前期後期中. ュラムに意味をもって結びつける基本概念が必要で. 等教育における「化学授業の質の改善」である。具体. あることが明らかになった(Huntemann, H. et al. ,1999) 。. 的に教科教育研究者は理論と実践の溝を埋め,学習者. 状況的および体系的な累積学習の組み合わせを可能. はサイエンスリテラシーの獲得,学習意欲の喚起,教. にするために,基本概念を背景構造とした。基本概念. 師は化学授業の改善が可能な力量をつけると共にサ. は本プロジェクト開始当初,文脈ほど魅力的ではなく. イエンスリテラシーの獲得である(Demuth,et al.,. 注目されていなかったが 2004 年に完成したドイツ科. 2008a) 。本プロジェクトは①から③の3つ概念から構. 学教育スタンダードへと繋がった。基本概念は今日の. 成されている。①化学的概念の学習の枠組みとしての. ドイツの各シラバス等の多くの科学教育の分野で見. 文脈②体系的な背景やネットワークとしての基本概. ることができ文脈と同様に大きな概念になっている. 念③アクティブでインタラクティブな学習を可能に. (Parchmann, et al,.2018)。. する方法論である。これ. 前期中等教育用 CHiK I は教育スタンダードとの関. らは,状況学習・構成主. 係で分析がされている。後期中等用 CHiK II は CHiK I. 義に基礎理論をおき,学. より前に開発されスタンダードの基礎となっている. 習意欲を重視している。. にもかかわらず,CHiK プロジェクト終了後,あまり. 文脈を志向する授業内. その成果が分析されていない。今後の資質・能力の育. 容は,教育目的,生徒,. 成を志向する科学教育を考える上でも CHiK II の基本. 文脈の視点より,重要な. 概念のあり方を分析や再評価は非常に大切と考える。. ― 25 ―.

(2) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). となる(図2) 。. 2.研究目的 本研究は,Chemie im Kontext II の基本概念を整理し. また,CHiK プロジェクトの報告書(Parchmann, et al.,. 詳細に分析し,日本の科学・化学教育や文脈に基づく. 2008)において,基本概念の機能を次の2つあげてい. 学習に示唆を得ることを目的とした。. る(寺田,2016:訳改) 。 ①基本概念は,体系的で累積的な知識や理解力を構築. Ⅱ.研究の方法. するための基礎. 後期中等教育のテキストである Chemie im Kontext II (Demuth, et al.,2006) ,化学授業の詳細な情報が提供. 基本概念は秩序と機能的原理として,多様な専門的 内容に構造を与え,体系的で累積的な知識や理解力の. された教授用資料(Demuth, et al.,2007) ,本プロジェ クトの報告書(Demuth,et al., 2008)及び論文を基本 資料として分析した。. 構築のための基礎である。同じ基本概念が,異なる例 や文脈で何度も言及され,適用されることで,ただそ れらの概念が互いを補強し合うだけではなく,拡大さ. Ⅲ.結果. れ結びつけられる。この知識構造は,教科化学の中心. 1.知識の構造化及び体系化としての基本概念. となる少数の概念に焦点を当てて知識を構成するた. CHiK II の授業用資料(Demuth, et al., 2007)において,. め,多くの概念の断片が不明確に結びついているよう. 科学的概念は,現象の基本的なプロセス,規則性や理. な従来の教育制度の学校で伝統的に教えられてきた. 論を説明するために使用され,相互に関連する用語,. 単元よりも,多くの下位概念を明確にまとめているの. 定義,説明用モデルの概念のスペクトラムによって特. で相互関係を見失ってしまう危険性が少ない。基本概. 徴付けられるとしている。ただ,科学的概念は複雑で. 念は,化学の歴史的発展と学生の概念の研究の両方に. 重層的で遠大なものであることが多いため,中等教育. 基づいて学習者の体系的な概念の構築をしている。. の授業には直接使えないとしている。そのため学習者. ②新たな問題提起,発見に関わる. は主体的に科学的概念の基本的な内容や記述,基本概. 基本概念によって習得した内容は構造を与えられ,. 念の選択と再構築をする必要がある。したがって,基. それによってますます関係性を与えられる。それとは. 本概念は教科の科学的概念の一部であり,その解釈を. 反対に,基本概念によって新たな問いや問題提起,そ. 表しているとした。基本概念は,多くの異なる教科教. して現象の発見などにも役に立つ。そのため,学習者. 育の文脈における特定. に,事象の観察への視点(たとえば,化学の眼鏡や化. の説明力と使いやすさ. 学の窓など)を提供し,それによって解決策を見出す. を特徴としている。こ. ための出発点を示すことを理想としている。. れにより,科学的な問. 文脈とそれに基づいた授業は,学習者によって構築. 文脈4. 題を多様な視点から扱 うことが可能になる。. させられる学習構造である。それら構成要素は,無差 別な化学的な内容ではなく,基本概念に基づいて構築. 文脈3. 授業での使用に限定さ れているため,生徒に. された体系的なものである。基本概念を介することに より特定の視点から観察することができることが期. 文脈2. とっては教科ごとの科 学的概念が理解しやす. 待されている。 さらに,KMK 一般的な大学入学資格のための化学. 文脈1. くなっている。基本概 念は,教科に関連する 内容を強く結びつける ことができる。複数の 基本概念を同時に扱う らせん型カリキュラム による教育内容の体系 化は,生徒にとって明 確で理解しやすいもの. の教育スタンダードにおける基本概念(KMK, 2020) 概念C 概念D 概念B 概念E 概念A. は,化学的事実の記述は教科固有の共通点に基づき, それを基本概念の形で構造化することができる。この. 図2 複数の基本概念を同時. ように,教科化学の基本概念は,教科ごとの内容を相. に扱うらせん型カリキュラ ムによる教育内容の体系化 モデル(Demuth ら(2007)を 参考に著者が作成). 互にリンクさせ,異なる視点から考察することを可能. 凡例:らせん状の青い部分が各 概念を扱う部分である。. にしている。基本概念は,すべての分野のコンピテン シーに関係している。それらは,累積的な学習,構造 化された知識の構築,新しい内容の理解を促進するこ とができると他と同様なことが述べられている。. ― 26 ―.

(3) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). D 動力学と化学平衡 概念. 2.基本概念の構成 CHiK II の基本概念は,A 物質-粒子 概念,B 構. 物質は互いに異なる速度で反応し,しばしば完全に. 造-性質 概念,C エネルギー 概念,D 化学平衡 概. は反応しない。これらの側面は,物質の非常に基本的. 念概念,E 供与体-受容体の5つからなり,次の様な. な性質や挙動でもあるため,それらを説明するための. ものである。. 概念である。通常の環境下で反応が起こらないのは,. A 物質-粒子 概念. 活性化エネルギーが非常に大きく,そのため反応速度. 化学における基礎はすべての物質は小さな粒子,原. が非常に小さいからである。反応の過程では,熱力学. 子で構成されている考えに基づいている。本概念は巨. 的変数と同様に動力学的変数が重要である。これらの. 視的な経験(物質レベルでの現象)と微視的なモデル. 現象を支えるのが本基本概念である。. (粒子レベルでの解釈) の両方を考慮し結合できるよ. また,化学反応が完全に進行するかどうかという問. うにする。. 題に関するものである。原則として,化学反応は進行. ・原子・分子・簡易な化学結合の仕方 などを扱う。. 中に動的な平衡状態に陥る。しかし,多くの反応は「ほ ぼ」完全に進行する。化学反応とその平衡状態を支配 する法則を解明することで,反応の進行を意図的に操. B 構造-性質 概念 観察可能な物質の特性と微視的なレベルの粒子の. 作することが可能になる。これは,科学と工業化学に. 配列との間に密接な相関関係をもつ概念である。原子. 多大な影響を与えた。化学平衡の法則の取り扱いは,. と電子の配置である物質の構造と,これらの物質観 察可能な特性の間に確立できる関係を説明する。 例えば,分子間・分子内相互作用の知識は,物質レ ベルでの物質の性質を説明するために利用できる。物 質の性質とその用途との関連性を示す。最も重要な 物質の典型的な構造と性質について説明される。 ・化学結合の種類・官能基を持つ化合物・選択された 有機・無機物質の構造・天然高分子化合物と合成高分 子化合物 などを扱う。. 学校での運動学的考察と密接に関連しているため,こ の基本概念では両方のトピックを組み合わせている。 ・化学反応の速度・衝突理論と反応力学・反応速度の 影響・化学平衡・質量作用の法則・化学平衡の移動・ 触媒 などを扱う。 E 供与体-受容体 概念 化学反応はエネルギー的な視点に加えて,新しい物 質の生成としても特徴付けられている。化学反応は, ある粒子(供与体)が放出する水素イオンや電子を別. C エネルギー 概念. な粒子(受容体)が受け取ることにより可能となる。. 本概念はエネルギーの変数を変化させることに より反応過程に影響を与えることで,化学および物 理化学プロセスにおける熱力学的原理,化学反応の 過程における運動論的原理である。ここでは,反応 の過程も力学的に考慮している。そして,どのよう な条件下で化学反応が起こるかをエネルギーで見 ることができる。 例えば,エネルギー的な考察は,個々の粒子(イ オン化エネルギーなど)だけでなく,化学反応(活 性化エネルギーなど)に関連し,プロセスを説明す るために使用することができる。 ・エネルギーの形態・変換・循環・活性化エネルギ ー・触媒作用・化学結合・相互作用のエネルギー・ 反応速度論・エンタルピー/エントロピー などを扱 う。. 化学反応を物質相互の粒子の放出と吸収という観点 は新しいことではなく約 50 年前からドイツの伝統的 な化学教育に導入されてきた。本概念は,化学反応を 理解する大切な2つの点を提供する。1点目は,物質 は単独で反応することはなく,反応相手や分子内の過 程の結果反応する。2点目は,自由な陽子や自由な電 子などの自由な粒子は存在せず,化学反応によって分 離・放出され,直ちに受け入れる反応相手が存在する ときのみ反応する。 「供与体-受容体 概念」と「構造-性質 概念」の 間には密接な関係があり,酸や塩基の性質は分子レベ ルでの特定の構造に起因するものであり「構造-性質 概念」で扱うことも可能であったとしている。ただ, 酸と塩基を粒子の直接的な交換によって反応が起こ る,授業で関連する物質をできるだけ多く取り上げ,. ― 27 ―.

(4) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). 表2 CHiKⅠ(前期中等教育化学)の4つの. 表1 CHiKⅡの5つの基本概念とその内容 (Demuth, et al., 2006 を著者が翻訳) A 物質ー粒子 概念 A-1 物質の考察から原子モデル ①科学史における物質概念②化学法則の発見 ③ドルトンの原子モデル④原子核・電子殻モデル ⑤ボーアの原子モデル⑥軌道モデル A2 原子構造と元素の周期表 ①元素の周期表②元素の周期性③原子核変換 A-3 化学結合のモデル: ①共有結合②電子対結合③電子対反発モデル ④イオン結合⑤金属結合⑥物質の化学結合 A4 分子間力 B 構造ー性質 概念 B-1 構造と無機物質の性質 ①希ガス②金属③イオン結晶④分子結晶 B-2 構造体と有機炭素化合物の特性 ①飽和・不飽和炭化水素②芳香族炭素化合物 ③官能基を有する有機化合物 ④アルコールとエステル⑤アルデヒドとケトン ⑥カルボン酸とエステル⑦油脂 ⑧アミンとニトロ化合物⑨単糖類と二糖類 ⑩アミノ酸とペプチド B-3 構造決定法 ①クロマトグラフィー ②有機物質の定性的および定量元素分析 ③質量分析④赤外分光法⑤NMR 分光法 B-4 有機化学反応機構 ①付加反応②置換反応③脱離反応 B-5 構造と高分子物質の性質:①多糖類②ポリ ペプチドとタンパク質③核酸 DNA と RNA④プ ラスチック⑤石英,ガラス,シリコン B-6 構 造および界面活性剤の性質:①石鹸および界面活 性剤②清浄添加剤 B-7 構造と染料の性質:① 電磁放射②呈色反応③繊維の染色 B-8 構造と 複雑な化合物の特性 C エネルギー 概念 C-1 エネルギーの現象 C-2 熱力学の第一法則 C-3 化学反応におけるエネルギー的考察 C-4 化学結合のエネルギー的考察 C-5 熱力学の第 2 法則 C-6 エンタルピー,エントロピー,化学反応 D 化学平衡 概念 D-1 反応速度 D-2 衝突理論と遷移状態 D-3 反応速度への影響 D-4 化学平衡 D-5 質量作用の法則 D-6 化学平衡の移動 D-7 自然と技術プロセスに平衡 D-8 自然と技術の触媒作用および触媒反応 E 供与体ー受容体 概念 E-1 酸化・還元反応 E-2 ブレンステッドの酸・塩基反応 E-3 数学的に検出される電子移動 ①電極電位②セル電圧 E-4 電池 E-5 水素イオン(プロトン)移動 ①強酸,弱酸と強塩基,弱塩基②酸解離定数と 塩基解離定数③pH は④滴定 E-6 緩衝系. 基本概念とその内容(Demuth,et al., 2008b を著 者が翻訳) A 原子とは 科学は,物質が非常に小さな原子によって構成 されていることを基本原理とする。そのため,空 気や水,そして砂糖までもが,原子の組合せによ って構成されている。現在では 100 種類以上もの 原子が確認されている。また科学者は,目に見え ない非常に小さな原子を説明に使い,原子を表す ための原子模型を生み出してきた。原子の間に存 在するものはなにもなく,宇宙のすべては原子で あるか,そうでないかのどちらかである。 B 原子はお互いに結合できる 小さな炭の破片は,数えきれないほどの多くの 炭素原子が互いに結合し合ってできている。この ような多くの原子が結合することで,固形で,眼 で見ることのできるようになり,小さな炭の破片 となる。空気中の酸素もまた,原子から構成され ている。しかし,この場合,2 つの酸素原子が構 成要素として結合して1つの酸素分子として存 在している。この分子には,気体の中において流 動性があり,互いに分離して存在している。だか ら,私たちはその気体の大半を見ることができな い。したがって,さまざまな物質の特徴は,その 原子が互いにどのように結合しているかによっ て,決定的に異なる。 C 物質は変化できる 酸素があれば,炭を燃やすことができる。燃焼 は,原子の結合を分解し,新たな結合をつくると いう現象の 1 つの例である。ある物質から,新た な物質が生じるのである。炭の例について次のよ うに考えることができる。 「炭素原子が酸素原子 と結合し,二酸化炭素という新たな分子をつくっ た。 」二酸化炭素もまた,室温では気体の状態であ る。 D 化学の現象はエネルギーに変化される 化学の現象はそのほとんどが,エネルギーと関 係がある。たとえば,炭を燃やすときには最初に 火をつけるエネルギーが必要である。そして,炭 が燃焼すると同時に,それによって光や熱として 多くのエネルギーが放出される。だから,私たち は,炭に蓄積されたエネルギーを利用することが できる。あるいは逆に,植物が,二酸化炭素と水 からブドウ糖をつくるように,エネルギーは,化 学の現象によって物質に蓄積されることもある。. ― 28 ―.

(5) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). この一般原則を実証すべきだという考えに基づいて. 質は変化できる」の4つとなった(Demuth et al. 2008b). いる。酸化還元反応についても同様である。. (表2) 。 これは,日本の学習指導要領解説編(文部科学省,. ・ 酸化還元反応は電子遷移である。 ・ブレンステット による酸塩基反応は水素イオンの遷移である。 ・電気. 2018)における理科の科目の分類とも非常に類似して. 化学反応としての電子遷移・電気化学反応に影響を与. いることが分かる(表3) 。ただ,各項目の定義も正確. える・・水素イオンの遷移を定量的に考える。 ・緩衝系. には同じではなく,その扱う内容も日本とドイツでは. などを扱う。. 異なる点には注意が必要である。. さらに,無機化学や有機化学の反応機構や化学反応 を展開できるようにするために,プロトンや電子の遷. Ⅴ.おわりに 基本概念に対応する内容がそれぞれ異なり,日本で. 移を説明できる。. は非常に丁寧に扱われるモル概念等は,CHiK II では 非常に簡単に扱われていたり,有機化学が構造-性質. 3. 基本概念とコンピテンシー KMK 一般的な大学入学資格のための化学の教育ス. 概念で扱われていたりしている。. タンダードにおける基本概念は,コンピテンシー分野. ドイツにおいても,それぞれの目的に応じて組み合. に関係付けられ,主題に関連する基本概念の命名によ. わせを変えているが,基本的な枠組みは変化していな. って補完されている。これにより主題に関連する内容. い。これは,概念が,世界を理解するために人類が創. を関係付けたり,異なる視点から見たりすることを可. 造した認識のための道具で,より良いものを求めて議. 能にする。基本概念は,すべての分野のコンピテンシ. 論,批判,作り替えが可能である(白水ら,2016)と. ーに横断的に関連している。. 考えと同じで,CHiK II の基本概念も今後も検討を続 けることが重要である。. 4.様々な基本概念の比較. それぞれの基本概念を知ることで,内容をネットワ. 後期中等教育化学における基本概念は,当初,a)物. ーク化し,さまざまな角度から考察を可能とする。累. 質-粒子 概念 b)構造-性質 概念 c)供与体-受容. 積的な学習,構造化された知識の開発,新しいコンテ. 体 概念 d)平衡 概念 e)エネルギー 概念 f)反応速. ンツの開拓を促進できることが非常に重要である。. 度 概念 の6つの概念(Parchmann, 2000 : Bünder, 2003). 今後,資質・能力の育成を志向する学習において,. からなった。その後,CHiKⅡでは,d)と f)を結合し,. 多様は授業形態を受け入れるために,学問的な系統性. 最終的には表1のA〜Eの5つの概念となった. と生徒の認知面を考慮した基本概念の作成は化学だ. (Demuth et al., 2005) (表1) 。. けでなく理科全体としても必要だと考える。今後,物. そして,その後,開発された前期中等教育化学用の. 理,生物も考慮しつつ,小学校,中学校理科の基本概. CHiKⅠや教科化学の教育スタンダード(表現は異なる) 念を作成していく予定である。 では,d)と f)に加え,c)も結合され「化学変化」概念 としてまとめられ, 「原子とは」 「原子はお互いに結合 できる」 「化学の現象はエネルギーに変化される」 「物 表3. CHiK II,CHiK I,学習指導要領,大学入学資格のための化学教育スタンダードの基本概念の比較 CHiK Ⅱ. 高等学校学習指導要領. CHiK I. 解説理科編 理数編. 大学入学資格のための 化学教育スタンダード. A 物質-粒子 概念. A 原子とは. 粒子の存在. B 構造-性質 概念. B 原子はお互いに結合できる. 粒子の結合. 物質 -構造-性質 概念. 粒子のもつエネルギー. エネルギー 概念. 粒子の保存性. 化学反応 概念. C エネルギー 概念 D 供与体-受容体 概念 E 化学平衡 概念. D 化学の現象はエネルギーに 変化される C 物質は変化できる. ― 29 ―.

(6) 日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 35 No. 7(2021). Aktivierung. 付記・謝辞. fachsystematischer. lebensweltorientierten. 本論は寺田(2012) ,寺田(2015)寺田(2016a)寺. Strukturen. Fragestellungen.. in Der. 田(2016b)Parchmann, I., Herzog, S., Terada, M. (2018). Mathematisch ‐ Naturwissenschaftliche Unterricht. の一部を大幅に加筆修正したものである.. [MNU], 53(3), 132 -137.. 本研究の一部は JSPS 科研費 16H03069 及び. Parchmann, I. (2007).Basiskonzepte – Ein geeignetes. 19H01740 の助成を受けたものである.. Strukturierungselement für den Chemieunterricht? Unterricht Chemie Naturwissenschaften im Unterricht – Chemie, 18(100+101), 6-10.. [主な文献] Bünder, W., Demuth, R.,Parchmann, I. (2003). Basiskonzepte. Parchmann,I., Ralle, B., Di Fuccia, (2008). Entwicklung und. – welche chemischen Konzepte sollen Schüler kennen. Struktur der Unterrichtskonzeption Chemie im Kontext,. und nutzen?. Praxis der Naturwissenschaften – Chemie. in Demuth, R., Gräsel, C., Parchmann, I.,. [Chemie in der Schule], 52(1), 2‐7.. (Hrsg.). Chemie im Kontext Von der Innovation zur. Ralle, B.,. 遠藤,優介(2013) 「評価」コンピテンシーの育成を志向. nachhaltigen Verbreitung eines Unterrichtskonzepts,. した化学教材―Chemie im Kontext の前期中等教育. Wazmann. Parchmann, I., Herzog, S., Terada, M. (2018). Formation of Basic Concepts of Chemistry Education in Germany, Journal of Science Education in Japan, 42(2), 65-72. Prenzel, M., Parchmann, I., (2003). Kompetenz. 段階用教材に焦点を当てて―,教材学研究,24,179 - 186. Demuth, R., Ralle, B., Parchmann, I. (2005). Basiskonzepte – eine. Herausforderung an. den. Chemieunterricht,. entwickeln - Vom naturwissenschaftlichen Arbeiten. CHEMKON, 12(2), 55-60.. zum naturwissenschaftlichen Denken.. Demuth, R., Parchmann, I., Ralle, B. (Hrsg.) (2006). Chemie. Chemie, Naturwissenschaften im Unterricht – Chemie,. im Kontext Sekundarstufe II, Cornelsen. Demuth, R., Parchmann, I.,. Ralle, B. (Hrsg.) (2007).. Handreichungen für den Unterricht - Chemie im Kontext Sekundarstufe II, Cornelsen. Demuth, R., Gräsel, C., Parchmann, I., Ralle, B. (Hrsg.) (2008a). Chemie im Kontext Von der Innovation zur nachhaltigen Verbreitung eines Unterrichtskonzepts, Wazmann. Demuth, R., Parchmann, I.,. Unterricht. 14(76+77), 15-21. 文部科学省(2018)高等学校学習指導要領(平成 30 年 告示)解説理科編 理数編,実教出版. 白水始,後藤顕一,松原憲治(2016)なぜ 21 世紀に求 められる資質・能力を育成することが必要なのでしょう か?, 71-187,国立教育政策研究所編:資質・能力 理論編,東洋館出版. 寺田光宏(2012)実社会・実生活と理科授業をつなぐ. Ralle, B. (Hrsg.) (2008b).. 教科書における文脈の選択と形態 -日本におけ. Chemie im Kontext Sekundarstufe I Die Chemie ersetzt. る「科学と人間生活」とドイツにおける"Chemie im. den Vorkoster, Cornelsen.. Kontext"の比較を通して-,日本科学教育学会第 36. Huntemann, H., Paschmann, A., Parchmann, I., Ralle, B.. 回年会論文集,143-144.. (1999). Chemie im Kontext - ein neues Konzept für den. 寺田光宏(2015)ドイツ Chemie im Kontext プロジェク. Chemieunterricht? Darstellung einer kontextorientierten. トに関する研究 ―全体像に注目して―,日本科. Konzeption für den 11.Jahrgang. CHEMKON, 6(4), 191. 学教育学会第 39 回年会論文集,77-78.. - 196.. 寺田光宏(2016a) 「資質・能力」と「授業実践」との 関係についての一考察-ドイツ Chemie im Kontext. KMK(2020)Bildungsstandards im Fach Chemie für die Allgemeine Hochschulreife(https://www.kmk.org/. プロジェクトを例として-,理科の教育,65,26-. fileadmin/Dateien/veroeffentlichungen_beschluesse/. 29.. 2020/2020_06_18-BildungsstandardsAHR_. 寺田光宏(2016b)中等教育化学における文脈を基盤と. Chemie.pdf:2021 年 5 月 24 日確認 ). した学習プログラムの構築 -基本概念に注目し. Parchmann, I., Demuth, R., Ralle, B. (2000). Chemie im Kontext : Eine Konzeption zum Aufbau und zur. ― 30 ―. て-,日本科学教育学会年会論文集,39,153-156..

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