四国医誌 35 巻4号 931 ~841 AUGUST ,52 9791 (平9)
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原 著
小児漆出性中耳炎での E
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の関与
立 花 文 寿
徳島大学医学部耳鼻咽喉科学教室(主任:小池靖夫教授) (平成9年4月23 日受付) 小児漆出性中耳炎(以下 OME と略す)でのエンドト キシン,ロイコトリエン(以下 LT と略す)の関わりを 検討するために,小児 OME 症例の中耳貯留液を採取し, エンドスペシ一法によりエンドトキシン濃度を,またラ ジオイミュノアセイにより LT 濃度を測定した。その結 果,エンドトキシンについては, OME の早期の段階で 中耳腔に多量に存在すること 中耳腔でのエンドトキシ ンの濃度は副鼻腔炎の程度に影響されることが考えられ た。次に中耳貯留液中でのエンドトキシンと LT の関係 については,エンドトキシン濃度と LTC4 濃度,エンド トキシン濃度と LTD4 とLTh の合計濃度のそれぞれの聞 に有意な相関を認めた。さらに LT については,中耳貯 留液の粘調度の克進に関わっていること,また OME 非 再発群よりも再発群で LT 濃度が高く,抗 LT 剤の投与 により中耳貯留液中の LT 濃度の低下と OME の再発率 の低下が認められたことから LT は OME の再発に関 わっていることが考えられた。 渉出性中耳炎(以下 OME と略す)の成因については, 従来より耳管機能不全説I- 2),感染・炎症説3),免疫複 合体説4)等が唱えられており 未だ明確には解明されて いないが,感染とそれに伴う炎症が, OME の病態の中 心であると考えられるようになってきた。 S e n t u r i a , te3.la )は, OME 発症における感染・炎症説を 主張したが,論文発表当時は, OME の中耳貯留液は無 菌であると考えられていたため,多くの研究者の支持を 得るには至らなかった5)。しかしその後, L,ui te6.la ), K o k k o 7 > , He 訂,y te8.la )が, OME の中耳貯留液中から細 菌を検出したと報告し,細菌培養陽性例の中ではインフ ルエンザ菌が最多を占めたとする報告,9,7 01)がなされる ようになり, OME の発症や選延化の課程において,細 菌感染,殊にグラム陰性梓菌であるインフルエンザ菌が 重要な役割を果たしていると考えられるようになってき た。さらに, DeM 訂,ai tel11.1a や I,oni te21.la ),巌ら 13 )が, OME の中耳貯留液中にグラム陰性梓菌の菌体成分であ るエンドトキシンが存在することを報告し, OME とエ ンドトキシンの関わりが注目されるようになったが,未 だ解明されていない点も多い。 一方,プロスタグランデイン(以下 PG と略す)やロ イコトリエン(以下 LT と略す)に代表されるアラキド ン酸代謝産物は,アレルギー性の炎症のみならず,非ア レルギー性の炎症にも関わりのある重要なケミカルメ デイエーターとされており, OME の中耳貯留液からも 検出されたとする報告14 )や OME との関わりについて の報告15 ー61)がなされてはいるが, OME での LT の果た す役割について充分に検討されているとは言い難い。ま た By,dskro te71.la )は, OME 中耳貯留液を採取し,同一 検体でアラキドン酸代謝産物の濃度の測定と細菌培養を 行った結果として, OME での LT の産生には細菌感染 が関わっていることを示唆したが OME でのエンドト キシンと LT の関係については,未だに検討されていなし
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そこで著者は, ①小児 OME 症例の中耳貯留液中のエンドトキシン濃度 を測定し, OME でのエンドトキシンの果たす役割につ いて検討すること。 ②同一検体でエンドトキシンと LT の両方の濃度を測定 し, OME でのエンドトキシンと LT の関係について検 討すること。 ③小児 OME 症例の中耳貯留液中の LT 濃度を測定して OME での LT の果たす役割を検討し,さらに抗 LT 作用 を有する薬剤であるオキサトミドの投与により,中耳貯 留液中の LT 濃度がどのように変化し,また LT 濃度の 変化が OME にどう影響するのかについて検討すること。 以上の項目につき定量的検討を行った。140 方 法 対象 OME 未治療症例38 例44 耳( 3歳 0 ヶ月から 12 歳 8 ヶ 月,平均年齢:
5
歳4
ヶ月)を対象とて中耳貯留液を採 取し,エンドトキシン濃度, LT 濃度を測定した。その 内訳は,エンドトキシン濃度のみを測定した症例が6例 8耳, LTD4 とLT &の合計(以下 LTD4+LTh とする) 濃度のみを測定した症例が7例 8 耳であった。また LTC4 濃度と LTD4+LTh 濃度の両方を測定した症例が 2 例 2 耳,エンドトキシン濃度と LTC4 濃度の両方を測定した 症例が 3 例 3 耳,エンドトキシン濃度と LTD4+LTE4 濃 度の両方を測定した症例が9
例9
耳 さらにエンドトキ シンと LTC4 濃度, LTD4+LTh 濃度の 3 つを測定した症 例が11 例14 耳であった。 さらにオキサトミドを8 週間投与した後に中耳貯留液 を採取した症例23 例32 耳( 2歳 2 ヶ月から 8 歳 9 ヶ月, 平均年齢:4
歳6
ヶ月)をオキサトミド投与群とし, OME 未治療例29 例33 耳の対照群( 3歳 2 ヶ月から 12 歳 8 ヶ月,平均年齢: 5 歳 5 ヶ月)との間で, LTD4+LT& 濃度を比較検討した。2
測定方法2
・1
エンドトキシン濃度の測定 鼓膜切開を実施した際に Juhn Tym-Tap (Xomed-Treace社製)を用いて中耳貯留液を採取し,滅菌蒸留水3£m に 溶解した後,エンドトキシンの測定まで- 80 ℃で保存し た。 エンドトキシンの測定は エンドトキシン定量キット であるエンドスッペク- SP テスト(生化学工業社製) を用いたエンドスペシ一法にて実施した。測定操作につ いては,まず保存しておいた検体を遠心分離し,上清と 沈査に分離した。次いで、上清から阻害因子を除去するた めに過塩素酸を加え捜祥し,インキュベーション,遠心 分離の後,水酸化ナトリウムを加え主反応の前の前処理 を行った。主反応については 緩衝液に引き続いて主剤 を加えインキュベーションし ジアゾ試薬を加えた後に 吸光度を測定し,検量曲線よりエンドトキシン量を求め た。尚,今回測定に用いたエンドスッベク- SP テスト の検出限界は, 0.6pg/m£ で、ある。またエンドトキシン の濃度の算出については,検体中の蛋白量を Lowry 法 により測定し,エンドトキシン量を蛋白量で除して得ら れた値をエンドトキシン濃度(単位: pg/mgTP )とした。 立 花 文 寿
2 ・
2
LT 濃度の測定 鼓膜切開を実施した際に Juhn Tym-Tap を用いて中耳 貯留液を採取し,メタノールl£m5. に溶解した後, LT の 測定まで-80 ℃で保存した。 LT の測定の際には,酢酸エチルを加え撹祥遠心し, 上清と沈査に分離した。次いで上清に石油エーテルを加 えて遠心した後に下層を採取し,これに酢酸緩衝液を加 え Bond tulE C 8 ミニカラム(V訂nai 社製)に充填し蒸 留水で洗浄した後,メタノールにて LTC4, LTD4 および LT&をまとめて溶出乾固した。これを高速液体クロマ トグラフィー(以下回LC と略す)の移動層[メタノー ル / 蒸 留 水 / 酢 酸 = 65/35/ 1 , pH5. 6, 流 速 1mt/
m i n . ]に再溶解し, NOVA-PAK C-18 カラム(Warste 社製)を用いた逆相 HPLC で LTC4 LTD4 および LT& に分離した。次いで各分画を採取したが, LTD4 とLT& の分画が一部重なるため LTD4 分画と LIB 分画をまとめ て採取し,ラジオイミュノアセイ(以下 RIA と略す) に供した。 LTC4 の量の測定には, L TC4 cificepS RIA キッ ト(Amersham 社製)を使用し LTD4 お よ び LT &の量 の測定には, LTD4 と も 交 差 す る LIB RIA 系 で あ る P e p t i d yl LT RIA キット(NEN - DuPont 社製)を使用し, LTD4+L1Tu 量を測定した。尚, RIA キットの検出限界 は, LTC4 cificepS RIA キットが40pg/m£ で、あり, Plyditpe LT RIA キットは50pg /似で、あった。また LT の濃度の 算出についても,エンドトキシンの場合と同様に,検体 中の蛋白量を Lowry 法により測定し, LT 量を蛋白量で 除して得られた値を LT 濃度(単位: pg/mgTP )とした。 3 検討項目 3 ・1 OME とエンドトキシン OME でのエンドトキシンの関わりを検討するため, 顕微鏡下に鼓膜切開を実施し,中耳貯留液を吸引する際 の粘調度に基づき,中耳貯留液を seoidomucr epyt と mucoid eypt に大別し,中耳貯留液の粘調度とエンドト キシンの濃度の関係を検討した。次に鼓膜切開孔閉鎖後, 1ヶ月以内に中耳貯留液の再貯留を認めた症例を再発あ りとし, OME の再発とエンドトキシン濃度の関係を検 討した。さらに副鼻腔炎合併症例については,副鼻腔炎 の程度と中耳貯留液中のエンドトキシン濃度の関係を検 討するために,鼻内所見および X 線所見から,副鼻腔 炎の程度を高度,中等度,軽度の 3 段階に分類し,高度 の副鼻腔炎を合併する症例と,軽度もしくは中等度の副 鼻腔炎を合併する症例との間で エンドトキシンの濃度
141 旦三息~ p g / m g T P 1000 小児諺出性中耳炎と,nixotodnE eneirtokueL を比較した。尚,ここでの高度の副鼻腔炎とは,鼻内所 見で多量の膿性鼻汁もしくは後鼻漏を認め,かつ X 線 所見で上顎洞全体に陰影を認めるものとした。
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凶 OME でのエンドトキシンと LT の関係 中耳貯留液中でのエンドトキシンと LT の関係を検討 するために,同一検体でエンドトキシン濃度とLTu 濃 度, LTD4+L 司 4濃度を測定し,エンドトキシン濃度と LTC4 濃度,エンドトキシン濃度と LTD4+LT& 濃度それ ぞれの間での相関を求めた。 3 ・2 -.
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C o r r e l a t i on between media rea noisuffe (MEE) opepr 代y and nxitodoen )tE(.noitartnencoc A b s c i s s a : MEE prope は.y O r d i n a t e : E ctnoitratencon cimhtiragol( .)elacs
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t cEniotratnecno ni each .noisuffe o : Mean ctE.niotartnecno mucoid group seromucoid group 0 . 1 F i g . 1 OME でのLT の関わりを検討するため,顕微鏡下に 鼓膜切開を実施し 中耳貯留液を吸引する際の粘調度に 基づき,中耳貯留液をseromucoid type とmucoid type に 大別し,中耳貯留液の粘調度とLTD4+LT& 濃度の関係 を比較検討した。次に鼓膜切開孔閉鎖後,1
ヶ月以内に 中耳貯留液の再貯留を認めた症例を再発ありとし, O民伍 の再発と LTD4+LTE4 濃度の関係を検討した。さらにオ キサトミド投与群と未治療の対照群との間で, LTD4+ LIB 濃度およびOME の再発率を比較検討した。 OME とLT 3 ・3.
p g / m g T P 1000 統計的検定 有意差の検討には, Mann - Whitney 検定, χ2検定を用 い,相関の検討には, Spearman の順位相関係数fs を利 用した。 4.
I 100.
• o mean )5.31( 0 . 1recurrence group non- recurrence group C o r r e l a t i o n between ecenrrucer fositito media htiw -uffe s i o n (MEE) and nxitodoen )tE(.onitartnencoc A b s c i s s a : OME rceenrrcue nonro .ecen”rrucre O r d i n a t e : E ctnotiarntenco cimhtiragol( .)elacs
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凶 F i g . 2 果 OME とエンドトキシン 中耳貯留液の粘調度とエンドトキシン濃度との関係に ついては, seromucoid 群 で は.115 5±238. lpg/mgTP, mucoid 群では. 1 ± 8 20. 5pg/mgTP であり,両群の間で有 意差(p<O. 05 )を認めた(g.iF 1)。次にOME の 再 発 の有無とエンドトキシン濃度との関係については,再発 ありの群では78. 8±210. 5pg/mgTP ,再発なしの群では 1 3 . 5±30. 3pg/mgTP であり,再発ありの群で平均濃度は 高くなっていたが,この差は統計学的に有意なものでは なかった(g.iF 2)。副鼻腔炎とエドトキシン濃度との関 係については,高度の副鼻腔炎を合併する症例では91.4 土215. 2pg/mgTP ,軽度もしくは中等度の副鼻腔炎を合 併する症例では14.1 土43. 9pg/mgTP であり,両群の間で 有意差(p<O. 05 )を認めた(g.Fi 3。) 結文 寿 立 花
.
旦三息Q§ 1 o mean (1.4)9.
pg/明TP 1000 100 142 OME でのエンドトキシンと LTの関係 中耳貯留液中のエンドトキシン濃度と LTu 濃度の聞 には,正の相関(Spe紅man の順位相関係数Ts=O. 58, p<O. 05)を認めた(g. 4Fi )。また,中耳貯留液中のエ ンドトキシン濃度とLTD4+LτTu 濃度の間でも,正の相 関(Speannan の順位相関係数Ts=Q.44, pく0.05 )を認 めた(ig.F 5。)2
• o mean (1.14 ) 0 . 1 severe group mild or moderate group C o r r e l a t i o n between sehtytrieve pfoalsanara sitisunis and e n d o t o x i n )tE(.onitarntencoc Abscissa yt: ireevs pfolanasaar .sitisunis O r d i n a t e : ctEnoiattnrceon cimhtiargol( .)elacs・
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HC 』 HC @ OCOOH 凶 F i g . 3 OME とLT 中耳貯留液の粘調度とLTD4+L 百4濃度との関係につ いては, seromucoid 群では20. 4 ± 42.1 pg/mgTP, mucoid 群では1.0 5±6. 4pg/mgTP であり,両群の間で有意差 (p<O. 1)を認めた(0 Fig. 6)。次にOME の再発の有 無と LTD4+L1Tu 濃度との関係については,再発ありの 群では. 6 ± 16 .74pg/mgτP ,再発なしの群では. 8±12 12.0 pg/mgTP であり,両群の間で有意差(p<O. 05)を認め た(.Fig 7)。またオキサトミド投与群と対照群とのとの 間でLT濃度を比較すると, LTD4+L1Tu 濃度はオキサ トミド投与群では9.4±6. 5pg/mgTP ,対照群では14.4± 1 0 . 3pg/mgTP であり,両群の間で有意差(p<0.05 )を 認めた(g. 8Fi )。またオキサトミド投与群と対照群の間 でOME の再発率を比較すると,オキサトミド投与群は 18.8% ,対照群は36.4% であり,オキサトミド投与群で のOME の再発率は対照群のほぼ半分であったが,この 差は統計学的に有意なものではなかった(Table 。) 3 r s = 0 . 4 4 p(く5).00 ( p g / m gTP) 50.
r s = 0 . 58 p(< ).050 ( p g /『噌TP) 20 4:c。
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守 にJ ト 」 0 0 . 1 0 0 . 1 1 000 (pg/mgTP) C o r r e l a t i o n bteween onixtdoen )tE( noiatrtnecnco and L TD4+L TE4 cn.otiatrnceno A b s c i s s a : ctEnotirantceon cimhtiragol( .)elacs O r d i n a t e : L TC4+L TE4 cn.otiatrnecno 1 10 100 E t concentration F i g . 5 1000 (pg/mgTP) C o r r e l a t i o n ebtween oixntodne )tE(noirtatnecnoc and L TC4 c o n c e n t r a t i o n . A b s c i s s:a ctEnoiattrnecno cihmtiraglo( .)elacs O r d i n a t e : L TC4 c.niotarntenco 1 10 100 Et concentration F i g . 41
4
3
且三島皇室 p g / r n g l P 50 小児譲出性中耳炎と E,nxitoond Leuko 位enei旦三込山
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pg /『聞lP 50 40 40.
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0recurrence group non- recurrence group C o r r e l a t i o n between ceurrenrec fositito media htwi e f f u s i o
n (OME) and L TD4+L TE. .noitartnceonc Abscissa : OME rcecurrene nroe.rrencn-recuo O r d i n a t e : L TD.+L TE4 n.ioatrtncenoc
・
:
LTD.+L TE4 inotantrcenoc ni each .noisuffe2 :
Mean ±standard oniatvied L TD.+L fo TE. -entraconc t i o n . F i g . 7 Corre 凶noi between elddim ear noisfufe (MEE) yrtopeprand L TD.+L TE4 .ontiartenconc Abscissa: MEE p.yrtepor O r d i n a t e : L TD4+L TE4 .onitartenconc
・
:
LTD.+L TE. ntioraentcnoc nieach .noisfufe2 :
Mean ±standard niotiavde fo L TD4+L TE4 tra-ncenco t i o n . mucoid group seromucoid group。
F i g . 6 群よりも早期の病態であると考えられる seromucoid 群 の方で,エンドトキシン濃度が高かったことから考える と,エンドトキシンは, OME の慢性期よりも OME の 比較的早い時期に中耳腔に多量に存在し, OME の発症 や成立の過程に深く関わっていることが推察された。 また李91)はモルモットの中耳腔にエンドトキシンを注 入し, OME を惹起した後に中耳粘膜を採取して光学顕 微鏡下に観察しているが その所見からエンドトキシン により粘膜上皮下の血管内皮細胞が直接障害される可能 性が示唆されたとしている。また川田02)はモルモットの 中耳腔にエンドトキシンを注入した場合,低濃度では中 耳粘膜の変化は軽度であったが,高濃度では中耳腔に貯 留液や高度の粘膜肥厚を認めたと報告しており,エンド トキシンが直接的かっ濃度依存性に中耳粘膜に障害を与 えることが考えられる。今回の研究では中耳粘膜の組織 学的検討を行っていないので断定はできないが,エンド 察 OME とエンドトキシン 撮ら31)は,2
歳から 84 歳までの OME 患者から得られた中耳貯留液をmucoid type とserous type に大別し, キシカラー法にてエンドトキシンの濃度を比較検討して いるが,今回の研究では
3
歳0
ヶ月から2
1
歳8
ヶ月まで の小児症例を対象としたため, serous type の症例は存在しなかったので, seromucoid type とmucoid type に分け て検討を行った。その結果, mucoid 群より seromucoid 群でエンドトキシン濃度は有意に高かった。 OME を病 期からみると,柴液性中耳炎は比較的急性期の病変であ り,粘液性中耳炎はいわば慢性期の病変である81)とされ ており,実際の診療の場でも小児 OME 症例の場合, OME 発症からの時間経過の長いもの程,中耳貯留液の粘調度 が増しているように思われる。今回の研究でも mucoid ト 考
文 寿 合併はO M E の約80% に認められ, O M E の病勢は鼻・ 副鼻腔炎の病勢と一致すること12)が確認されている。ま た野村22)は慢性O M E 患者の鼻汁菌検査を行い,その88 %からグラム陰性梓菌であるインフルエンザ菌が検出さ れ,小児のO M E は鼻・副鼻腔炎と関連が強いと報告し ている。今回の検討でもエンドトキシン濃度は,軽度も しくは中等度の副鼻腔炎を合併する症例より高度の副鼻 腔炎を合併する症例で有意に高く,中耳腔へのエンドト キシンの供給源のーっとして副鼻腔炎が重要であること が推察される。このことから,副鼻腔炎が改善されない と,鼓膜切開で中耳腔からエンドトキシンを排除したと しても,新たにエンドトキシンが中耳腔に供給され, O M E が容易に再発することも考えられる。よってO加E に副鼻腔炎を合併している場合は,まず副鼻腔炎の沈静 化を図った後に鼓膜切開を行うことが望ましいと思われ た。 立 花 mean(14.4) OME でのエンドトキシンとしT の関係 エンドトキシンと LT の関係について, Bremm, ate)32.l は,ヒト多核白血球を用いたin trovi の研究で,エンド トキシンの刺激によりヒト多核白血球からLTC4 やLTD4 が産生されることを報告し,また榎本ら24)のラットを用 いた実験的O M E モデルでも,鼓室内へのエンドトキシ ンの注入によりアラキドン酸代謝産物が産生されており, LT の産生にはエンドトキシンが何らかの役割を果たし ていることが考えられる。 そこで今回,エンドトキシンと LT の関係を検討した 結果,エンドトキシン濃度と LTC4 濃度,エンドトキシ ン濃度と LTD4+L1Tu 濃度のいず、れの聞にも有意の相関 を認めたが,その相関係数はそれぞれ,85.0 4.40 と必ず しも強い相関ではなかった。この理由として, O M E 発 症から中耳貯留液採取までの期間が各症例で若干の違い があること, LT は細胞における個々のメデイエーター 遊離能の差により0010 倍以上の個人差が生じる場合があ る52)こと,比較的短時間にLTC4 はLTD4 さらにLT &へ と代謝される62)ことから,中耳貯留液の採取から凍結保 存までの聞に代謝されたことも考えられ,これらのこと が影響しエンドトキシン濃度とLT 濃度の聞に必ずしも 強い相関が得られなかった可能性もあると思われる。 一方,エンドトキシン刺激と LT 産生の聞にはサイト カインが介在しているとする報告もある。守27)はエンド トキシンの刺激により,主として単球・マクロファージ を中心とした種々の細胞からサイトカインが遊離される
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10 C o r r e l a t i on between Oxatomide noitatrsinimda and L TD4+ L TE4 .ionattrcenonc
Abscissa : Oxatomide nioattrsnimiad no aor .oniattrsnimid Ordinate : L TD4+L TE4 no.titracennoc
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LTD4+L TE4 nritaotnecnoc ni each .noiusffeQ : Mean ±standard onativide L TD4+L fo TE4 concentra -t i o n . control group
。
O x a t o m i d e -a d m i n i s t e r e d group F i g . 8Table ontilareorC between Oxatomide noitrastniimda and -urcre rence ofositit media thwi noiusffe (OME). The eecndcini fo OME eerncrruce ni the Oxatomide-administered group was about a hfla tfotah nithe lrotnoc ,group tub utithow -gis n i f i c a n t ecenerffdi by 'x.tset O x a t o m i d e -a d m i n i s t e r e d =n( )23 lortnoc proug 33)(n= g r o u p 6 12 r e c u r r e n c e non ce- rnerruce 26 12 i n c i d e n c e fo 818. % 36.4 % OME ecnrerucer トキシンの平均濃度は有意差は認めないものの再発なし の群より再発ありの群で高くなっており,エンドトキシ ン濃度が高い程中耳粘膜に加わる障害の程度が強くなり, 中耳粘膜の修復が遅れる結果, O M E が再発し易くなる 可能性があると考えられた。 O M E と副鼻腔炎の関係については,鼻・副鼻腔炎の
小児議出性中耳炎と,nixotodnE eneirtokueL とともに補体が活性化され,これによりアラキドン酸代 謝の充進が惹起されるとしている。また細胞膜リン脂質 からのアラキドン酸の遊離にはホスホリバーゼ A2 の活 性化が必要であるが Redl te .lasz)は実験的エンドトキ シン血症でホスホリバーゼAz 活性値の上昇を認たこと から,アラキドン酸代謝の充進がうかがえるとし,また ホスホリバーゼ A2 活性値の上昇は,エンドトキシンの 直接作用の他に,エンドトキシンによって誘導される腫 蕩壊死因子や,腫蕩壊死因子によって誘導されるイン ターロイキン
l
やインターロイキン6
と関連するとして おり,エンドトキシン刺激とLT 産生の聞に様々なサイ トカインが介在するために,エンドトキシンと LT の聞 に必ずしも強い相関が得られなかったことも考えられる。 今後の課題として各種のサイトカインとエンドトキシン, LT の関係を分析することがOME の発症や遅延化の過 程を解明する上で重要であると考えられた。 3 OME とLT L T,C4 LTD4, LT &はペプチドLT と総称され,血管 内皮細胞の間隙を開くことによる血管透過性充進,粘液 分泌の充進,粘液クリアランスの低下等の薬理作用を持 つとされている。それらの中でLTD4 は最も強力なペプ チドLT であるが,一方, LTC4 には現在対応する受容体 が存在せず,活性型であるLTD4 の前駆体としての意味 をもっとされており,またLTh は の 作 用 はLTD4 の1 /10
~1 /100
であり, LTD4 から LTh へ の 変 換 は 酵 素的不活化過程と考えられている29)。今回の研究では, HPLC 後のLTD4 とLT &の分画が一部重なることから, LTD4 とLT & の 分 画 の 両 方 を 採 取 しRIA にてLTD4 と LTh をまとめて測定した。しかしLTD4 とLT &の薬理 作用の差や, HPLC 後の分画はLTh に比べてLTD4 が大 きかったことから, LTD4+LTE4 濃度は主としてLTD4 の 濃度を反映していると考えられる。 ¥01 伍と LT の関わ りについて, ,gunJ te .la は,中耳貯留液中のアラキドン 酸代謝産物を測定した結果から, OME の中耳貯留液中 ではnsaeoxygeolcyc 系代謝産物よりesnagexyiopl 系代謝 産物の方が,炎症反応をより強く引き起こすのではない かと推論51)し,さらには,チンチラの中耳腔にLTC4, PGEz, LTC4 とPGEz ,アラキドン酸を注入し, OME を 惹起し分析を行った結果, OME はLTC4 とPGE2 を注入 した群で最も多く発症し,また中耳粘膜の炎症反応は LTu を注入した場合に最も強かったことから, OME で はsegenaooxyclyc 系代謝産物よりもsenagexyipol 系代謝 1 4 5 産物が,より重要な役割を果たしているのではないかと 報告61)している。また岸保ら30)は チンチラの鼓室内に LTC4, LTD4, PGE2 を注入した後,経時的にABR を測 定した結果, LTu, LTD4 を、注入した場合にABR の有意 な関値の上昇を認め,またLTD4 で、は関値上昇の期間が 長かったことから, LTu, LTD4 は中耳腔において貯留 液の停滞をもたらし,特にLTD4 で、はその作用がより強 いのではないかと報告している。 今 回 の 研 究 で は , 中 耳 貯 留 液 を そ の 性 状 に よ り s e r o m u c o i d epty とmucoid peyt に大別し, LTD4+LTE4 濃 度を比較した。前述したごとく,一般的にseromucoid epty はmucoid epty よりも早期の病態であると考えられるが, mucoid 群より OME 発症からの時間経過が短いと考えら れるomucoidser 群で LTD4+LTh 濃度は有意に高値で あった。このことからLT がOME の初期の段階で中耳 腔により多く存在するため,閉鎖腔となった中耳腔内で 粘液の凝縮が起こる結果,粘調度の高い中耳貯留液が形 成される可能性があると考えられた。 次にOME の再発と LT の関係について考えてみたい。 岸保ら30)は,モルモットの耳管粘膜を採取しチャンパー 内で培養の後, LTC4, LTD4 , 問Ez を暴露させ耳管粘膜 の線毛活性を測定した結果 LTC4 LTD4 を暴露させた 場合に線毛活性が低下し LTC4 よりも LTD4 で線毛活性 の低下の割合が大きかったことを報告している。また J u n g, tel61.la は, PGEz, LTu, PGEz とLTC4 ,アラキド ン酸をチンチラの鼓室内に注入しOME を惹起した後, 中耳粘膜を組織学的に検索した結果 LTC4 を注入した 場合に中耳粘膜の炎症の程度が最も強かったと報告して いるが, LTC4 は比較的短時間にLTD4 に代謝される62)こ とから,この結果にはLTu だけでなく LTD4 も関与して いることも考えられる。これらの報告から,中耳腔で産 生されたLT が耳管粘膜線毛運動を低下させ, LT を含 む貯留液の排池が遅れるとともに新たに産生されるLT が蓄積されることでLT 濃度が高くなり,さらに中耳粘 膜がLT に長期間曝される結果 炎症が中耳粘膜に持続 的に加わり OME が遷延化する可能性がある。また岸保 ら30)によると, LTC4, LTD4 は耳管粘膜線毛活性を濃度 依存性に低下させたとしており, LT の濃度が高い程, LT の中耳粘膜に及ぼす障害はより強くなることが考え られる。今回の研究では 再発なしの群より再発ありの 群でLTD4+LTE4 濃度は有意に高値であったが, LT の 濃度が高いと中耳粘膜に加わる障害の程度が強く,鼓膜 切開を実施し中耳貯留液を排准した後も中耳粘膜の治癒
1 46 過程が遅れ,その結果 OME の再発に至ることが考えら れる。以上のような機序で LT は OME の再発に関わっ ている可能性があると思われた。 さらに,オキサトミドの投与による中耳貯留液中の LT の濃度の変化や OME の再発率に及ぼす影響を検討した。 田中ら13)はチンチラを用いた OME モデルにオキサトミ ドを投与し,中耳貯留液中の LT の濃度と OME の改善 状況について報告しているが オキサトミドの投与によ りLTD4 濃度は低下し,また OME の治癒までの期間が 短縮されたと報告している。今回の検討でもオキサトミ ド投与群は非投与群に比べて LTD4+LTh 濃度は有意に 低下しており,また有意差は認めなかったものの OME の再発率もほぼ半分に低下していた。オキサトミドは LT に 対 す る 括 抗 作 用 お よ び LT 合 成 酵 素 ( 5 -l i p o x y g e n a s e )の阻害作用を有する薬剤であり,中耳腔 での LT の濃度の低下は オキサトミドの投与により中 耳腔での LT の産生が抑制された結果であると考えられ るが, LT の産生を抑制することで OME の再発率も低 下したことからも LT が OME の再発に関与している ことが考えられた。 謝 辞 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました徳 島大学医学部耳鼻咽喉科学教室小池靖夫教授,ならびに 御助言を賜りました石谷保夫前助教授に深謝致します。 また様々な御助力を賜りました協和発酵工業株式会社の 皆様にも深謝致します。 本論文の要旨は,第5回日本耳科学会学術講演会(平 成
7
年10 月14 日:東京) ならびに第6
回日本耳科学会 学術講演会(平成 8年10 月19 日:東京)において発表し た。文 献
1 N,enntiuu ,.J,ajraK .J and ,nenialajraK .P : Measurement o f myraiilcocu noitcnuf tfoeh naihcatsue 加.eb h.cAr O t o l a r y n g o l . , 109 : 6672,69- 1983 2 B,enotesul :C.D. anichtasuE eubt :noitcnuf y,gooliyshP P a t h o p h y s i o l o g y , and elor aofygrell pnisiseneoghta o f ositit a.diem .JygrellA .nilC ,.olnIumm 72 : 242 -251,1983 3 S,airutne ,.HB. ,tresseG ,.F.C ,rraC .D.C and Baumann, E . S . s: eidutS dernnceco hitw .sitinapmytobut Ann. O t o l . .lonihR ,.lognyraL 67 : 440-467, 1958 立 花 文 寿 4 Vel 凶,R.W. and ,elknirpS P.M.: yroterceS sitito dia;meAn immune complex .esaesid Ann. .lotO .lonihR L a r y n g o l . , 85 (.lppus 5)2 : 1,95-133 1976 5 茂木五郎:漆出性中耳炎の成因. JOHNS, 1 : 617 -624,1985 6 Liu
ヱ
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1 4 8 立 花 文 寿
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D叩tnemtra O,yfgoloognyralot loohcS Mfo,enicide eTh isrevinU 句o,amihsukoTf aimshuokT ( D i r e c t o r : forP osuaY )ekioK SUMMARYThe inxtodone )tE( and ehteneirtokuel T)(L snoitarntecnoc ni dlemid rae noisuffe (MEE) from c h i l d r e
n gnireffus from sitito media hitw noisuffe (OME) were measured iotetagitsevn ehtnoitalerroc b e t w e e n OME and T.Lt/E S i g n i f i c a n
t noitalerroc was deton between eht cEtnoitartnecno and eht L TC4 noitartnecnoc dna, osla b e t w e e n eht cEtnoitartnecno and eht L TD4+L
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noitartnecnoc MEE (ni .)50.0<p I n eht noitalerroc thiw MEE ,ytreporp eht tEnoitartnecnoc was yltnacifingis reghih ni eht s e r o m u c o i d group ( e訂y slegat OME) fo naht tni eh mucoid puorg .)50.0<p( As rge 紅 白ehtnoitalerroc w i t h alsanarap ,sitisunis eht Etnoitarntecnoc ni MEE was yltnacifingis rehgih ni eht upgro c o m p l i c a t e d thiw ereves p訂 組lasa sitisunis naht ni eht pgrou detaciplmoc htiw ildm ro tederamo p a r a n a s a l sitisunis .)50.0<p( I n ehtnoitalerroc hitw h任 理,ytreporp eht L TD4+L T& cnoiatrtnecno ni eht idmucosero pgrou ( e a r ly egats OME) of was yltnacifingis erhghi ht組 n ti eh mucoid uprog .)10.0<p( As rsdrage eht
c o r r e l a t i o
n thiw OME r,ecnerruce eht L TD4+LT&concentration ni MEE in eht ecnerrucer oupgr was s i g n i f i c a n t l
y rehghi nath ni eht non ucer- 町ceen puorg .)50.0<p( The L TD4+L TE4 noitartnecnoc ni
MEE was yltnacifingis erwol ni eht puorg deretisnimda Oxatomide ngavih -itna LT etceff eht( O x a t o m i d e -a d m i n i s t e r e d )pourg naht ni eht lortnoc proug dna,)5.00p<( eht ecndeicni of OME r e c u 町ceen tni eh erdetsimni-daedimotaxO saw)%8.8Ipuorg( tosmla a hfla tfotah nieht lortnoc pgrou ( 3 6 . 4 % ) .
The bovea stluser detacidni more t eEecnetsix tni eh lemidd rae ytivac ttaeh ylrae egats OME fo and ehtnoitalerroc between stinoiatrtnecnoc and eht ytireves f polasanara sitisunis and osla more LT e x i s t e n c e tni eh leddim e訂ytivac taeht ylrae egats OME and of sti tnemelvvoni nieht ucer 汀・ecne of OME.
Key words: sitito media hitw noisuffe (OME), dledim rae noisuffe (MEE), nixootnde ,)tE( l e u k o t r i e n e (LT)