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乳幼児の身体発育並に精神発達に関する逐年的研究(第2報) 栄養方法別に見た満2年児の発育状況について

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(1)

斎   藤   マ   サ    〔研究紀要 第15巻〕  105

乳幼児の身体発育並に精神発達に関する逐年的研究(第2報)

栄養方法別に見た満2年児の発育状況について

斉  藤  マ  サ

Follow up Study on the Physical and Mental Development (2)

Growth of full Two Years old Infanths in each Nutritionnal Method

Masa Saito Ⅰ ま え が き 1 私は乳幼児の身体発育と,精神発達の相関を知る手がかりとして,第1報の如く,栄養方法別に見 た満1年児の発育状況を発表した。その結果を概略すれば,身体発育のうち,頭園をのぞけば,身 長,体重,胸囲等の発育は,人工,混合群は母乳群より比較的良好であったが,精神発達において は,母乳,混合群は人工群に優れていた。しかし以上の結果が必ずしも普遍的なものと断定はできな いし,又,成長の発達段階の一現象とも考えられたので,その後引続き同一資料につき,同じ冒約・ 方法を以て継続的調査を試みてきた。今回は満2年児の発育状況の一部をまとめ得たので,資料,分 析,内容に不足の点はあるが,第2報として,調査結果の概観を報告する。 Ⅰ 研 究 方 法 1 対象児について 対象児は第1報にのべた。即ち研究目的のためには,対象児の環境を可能な限り整理する必要を感. じたので,鹿児島市中央保健所の協力を得,次の規準を設けて対象児の選出を行った。その規準は(1) 市内在住であること, (2)第1子であること, (3)生下時の体重に未熟児を省く, (4)正常分娩であるこ と, (5)サラリーマン家庭で,母親は家庭にいること, (6)栄養方法別に男女児数を揃える等であった が,結果は必ずしも完全に望ましい資料となり得ず,数の不揃をはじめ,異常分娩6例,第2子以上 31例,共稼ぎ5例等好ましくない例数をも含めて,母乳男32,女23混合男21,女22,人工男23,女9 計130名の対象児を得でいたが,滞2年児においては,男児に他県転宅のため4名減となり,女児は 人工群が少例にすぎたので,新しく8名を追加した。以上の対象児は,昭和36年1月生れが最年少児′ で,昭和34年9月生れが巌年長児である。 2 調査期と計画 昭和35年7月頃より,予備調査をはじめ,生後6カ月を第1回の本調査とし,以降6カ月毎に調査

(2)

106      乳幼児の身体発育並に精神発達に関する逐年的研究 を行う事とした。従って今回は第4回目の調査結果である。継続調査の計画は対象児の満5年を以て 完了の予定である。 3 調査方法と内容 調査の方法や内容は殆ど第1報と同じであるが,新しく坐高と,栄養擾取状況の調査を満2年児に 加えた。調査は凡て対象児の家庭で行った。従って身体各部の測定や,精神発達検査は対象児に直接 実施し,その他の必要事項については,主として母親との面接質問により,その資料を得た。精神発 達検査は,今回も引続き愛育研究所の乳幼児精神発達検査を使用した。 Ⅱ 調 査 結 果 1 満2年児の身体発育状況について 満2年児の身長,体重,胸囲,頭囲, ,等身,上樽囲,腹囲の測定値につき, の第1表-第7表の通りである。 (1)満2年児の身長 満2年児の身長平均値は第1表の通 りである。即ち,男児の母乳,混合, 人工の3群の身長平均値 82.9cm, 83.3cm, 84.2cmの間にはF検定の結 栄,有意差はなく,女児の3群の身長 平均値 81.1cm, 82.4cm, 81.8cm の間にも有意差は認められない。 (2)満2年児の体重 満2年児の体重平均値は,第2表の 通りである。即ち,男児の母乳,混 令,人工の3群の体重平均値, ll.262 kg, ll.690kg, ll.577kgの間にはF 検定の結果,有意差はなく,女児の3群 の体重平均値, 10.554kg, ll.349kg, 10.983kgの間には有意差が認められ る。この女児の3群については,母: 混合の間に有意差があり,温:人,母 :人の間には有意差は認められない。 坐高 R下肢長,胸廓前後径,胸廓左右径,頭幅,頭長,頭高 これを男女児別,母乳,混合,人工の栄養方法別に示すと次 第1表  満 2 年 児 の 身 長

三三

-

人(剤 TL(認

S . D

(cm ) M^ 讃

(cm ) ㌔君

-母 乳

混 合

人 工

30

20

21

4.日

2.

3.

6g , 22

24

i- i

.:蔓

仁 一

計 7 1 8 3 .4 ! 6 1 (ー 8 1 .8 - F - 2 .9 6 くF o= 3 .17 自 由度 ( 2 , 58 ) 差 な し J 検 定 F = 2 .6 6 < F 0= 3 .14 自由度 ( 2 , 68 ) 差 な し 注 今度の検定にあたっても,凡て有意水準0.05とし,標本からの 値はF,或はt, x2等を用い,表から得た値は> Fo> tn, X呂等 で表わす。 第2表  満 2 年 児 の 体 重 男児

: テ 二-; S-D

女    児 S. D 30  11.262! 1.8 令 人 工 計 検 定

;;:…謁‡'.;

ll.617 F-0.05 <F0-3.15 差なし 20 24 16 60 10. 554 ;三.349 .9830。:≡ 10.985 F-4.05> F0-3.17 差あり 渇-母T-2.88>T0-2 混-人T- 1.3<T0-2 檀-人T- 1.4<T0-2

(3)

eb 請 (3)満3年児の胸囲 満2年児の胸囲平均値は第3表の通 りである。即ち,男児の母乳,混合, 人工の3群の胸囲平均値, 49.2cm, 48.8cm, 48.7cmの間にはF検定の結 莱,有意差はなく,女児の3群の胸囲 平均値, 47.2cm, 47.7cm, 47.8cm の間にも有意差は認められない。 (4)満2年児の頭囲満2年児の頭問 平均値は第4表の通りである。即ち男 児の母乳,混合,人工の3群の頭開平 均値, 49.3cm, 49.3cm, 48.83mの 間にはF検定の結果,有意差はなく, 女児の3群の頭囲平均値, 47.4cm, 48.0cm, 47.9cmの間にも有意差は認 められない。 (5)満2年児の坐高 満2年児の坐高平均値は第5表の通 りである。即ち,男児の母乳,混合, 人工の3群の坐高平均値 50.2cm, 50.0cm, 50.3cmの間にはF検定の結 莱,有意差はなく,女児の3群の坐高 平均値 49.3cm, 49.5cm, 49.1cm の間にも有意差は認められない。 (6)満2年児の下肢 長満2年児の下肢長平 均値は第6表の通りで ある。即ち男児の母乳, 混合,人工の3群の下 肢長平均値 32.7cm, 33.6cm, 34.0cmの間 にはF検定の結果,育 意差が認められる。こ 藤   マ   サ    〔研究紀要 第15巻〕  107 第3表  満 2 年 児 の 胸 囲 男 渇 ∠ゝ 仁コ 児 第4表  満 2 年 児 の 頑 固

鹿

雪 讃

・ (c題

s(bm? . 人+甘

5│Z(C凱

S定諾

30 - 49.3

1.5 !

22 】47.4

i

48

47‥

:

‡ 1●

5

+三

混 合

l

22三 は

11‥

3-f 7 1 4 9 .2 l 63 4 7 .8 ) I F = 1 .5 < F o= 3 .1 5 差 な し 検 定 F = 0 .6 < F 0= 3 .14差 な し 第5表  滴 2 年 児 の 坐 高 母 渇 乳合 男    児

人(剤・(c題

人 工1 20 2   0   3 ●                   ●                   ● 0   0   0 5   5   5 F-0.ll <F0-3.14 差なし 児 人(月5pm (cm)S.D (cm) 49.3   1.3 1.7 1.7 F-0.38くF0-3.18 差なし 第6表  満 2 年児の下肢長と 坐高/下肢長比 坐高/ /下肢長 男    児 !三Yr _旦二\ヽ 母 乳 混 合 人 工 人it・ (A)(c題 衣 児 S. D 男 児t女 児 比 比 34.0   1.6 計   69  33.3 検定i昌書…14=Fo-=3 T-2.45 T=1.7塞… 20 24 13 57 ∵ 32.1  1.7 F-1.39くF0-3.18 差なし 5   5   5 ●                 ●                 ● 1 1 1

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108 乳幼児の身体発育並に精神発達に肉する逐年的研究 の3群については母乳:人工の間に有意差があり,母:梶,温:人の間には有意差はない。女児の下 肢長平均値, 32.1cm, 32.9cm, 32.9cmの間には有意差はない。坐高/下肢長の比については,男 女児ともに3群間に差はなく, (7)満2年児の胸廓前後径, 1.5-1.6の平均値である。

仝左右径,頭幅,頭長,頭高,等身,上縛囲,腹囲。

満2年児の上記の平均値は, 第7表の通りである。即ち,男 児並に女児の母乳,混合,人工 の3群の胸廓前後径平均値は, ll.7cm, ll.6cm, ll.5cm並に ll.0cm, ll.4cm, ll.2cmであ り,胸廓左右径平均値は15.8 cm, 16.3cm, 16.1cm並に15.2 cm, 15.7cm, 15.8cmである。 頭幅平均値は, 14.4cm, 14. 第7衰 満2年児の胸前後径,胸左右径,頭幅, 頭長,頭高,等身,上博問,腹囲 男 児 女 児 7cm, 14.4cm並に13.8cm, 13.8cm, 13.9cmであり,頭長平均値は16.4cm, 16.1cm, 16.2c町並に 16.0cm, 16.2cm, 15.6cmであり,頭高平均値は, 19.9cm, 20.0cm, 20.0cm並に19.5cm, 19.5cm 19.4cmであり,身長/東商の等身平均値は, 4.16, 4.16, 4.21並に4.16, 4.21, 4.21である。 上拷問平均値は, 15.7cm, 15.3cm, 15.3cm並に15.0cm, 15.3cm, 15.1cmである。 腹囲平均値は, 45.0cm, 44.0cm, 44.9cm並に44.5cm, 45.0cm, 44.8cmである。 以上何れの発育においても,男女児ともに, 3群間に有意差は認められない。 2 満2年児の乳歯の生歯状況について 満2年児の乳歯のうち, ①報の内切歯を除ぎ,外切歯,犬歯,乳臼歯の所出状況について示すと, 第8表-第11表の通りである。 (1)満2年児の外切歯新出状況 満2年児の外切歯所出月平均値は,第8表の 通りである。即ち男児の母乳,混合,人工の3 群の上顎右は, 10.3月, 10.1月, 10.3月で,仝 左は10.1月, 10.1月, 10.1月で,右左ともに3 群間の値は接近している。下顎右は, 10.6月, ll.9月, ll.2月で,仝左は10.5月, ll.9月, 10 .9月であり,混合群にややおくれる傾向が見ら れるが, F検定の結果, 3群間に有意差は認め られない。 女児の外切歯新出月令平均個は,上顎右は, 第8衰  満2年児の外切歯前出月令 \--\性 栄 養 上 顎 下 男    児 人 員 右人左入 新出月令 右月 左月 女    児 人 員 所出月令 右人左入極月左月 28 28 18 18 20 20 66 66 28 28 17 17 20 19 65 64 10.3 10.1 10.1 10.1 10.3 10.1 10.3 10.1 10.6 10.5 ll.9 11.9 ll.2 10.9 ll.1 ll.0

輿++宰十㌍1 ・ 1竺o=3. 15

22 22 21 21 77 77 50 50 21 21 21 21 7  7 49 49 ll.0 11.0 10.4 10.4 10.9 10.7 10.8 10.7 12.0 12.0 12.0 12.0 12.5 12.3 12.1 12.0

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斎   藤 マ   サ    〔研究紀要 第15巻〕  109 ll.0月, 10.4月, 10.9月で,仝左は11.0月, 10.4月, 10.7月であり,下顎右は12.0月, 12.0月, 12.5 月で,仝左は12.0月, 12.0月, 12.3月であり,上下,右左ともに, 3群間に差は認められない。 外切歯の前出は,男女児ともに生後6月∼1年が最も多く,次いで1年∼1年半であるが,上顎は 下顎より男児群で0.8月,女児群で1.3月早く,男児群は女児群より,上顎で0.5月,下顎で1月早く 蔚出している。 (2)満2年児の犬歯所出状況 満2年児の犬歯新出月令平均値は,第9表の 通りである。即ち男児の母乳,混合,人工の3 群の上顎右は, 16.1月, 16.4月, 16.4月で,仝 左は16.1月, 16.5月, 16.6月であり,下顎右は 16.4月17.0月16.8月で,仝左は16.4月, 17 .0月, 16.8月であって,上下,右左ともに差は 認められない。 女児の上顎右左ともに, 18.0月, 16.7月, 17.7月で,混合群は早い傾向に見られるが, F 検定の結果,有意差はなく,下顎右は18.0月, 17.2月, 17.8月で,仝左は18.2月, 17.4月, 第9表 満2年児の犬歯の新出月令 男 児 所出月令 女    児 人 員 新出月令 右月 左月 上 顎 24 24 12 12 18 18 54 54 16.1 16.1 16.4 16.5 16.4 16.6 16.3 16.3 下 上顎検定 ;42 ;芸l;67:芸;冒:芸 19 18 55 54 16.8 16.8 16.7 16.7 21 21 18 18 7  7 46 46 19 20 18 18 7  7 44 45 :喜 F-l 18.0 18.0 16.7 16.7 17.7 17.7 17.5 17.5 18.0 18.2 17.2 17.4 17.8 18.1 17.7 17.9 ,-3.21 差なし 18.1月であって, 3群間に差は認められない。 犬歯の所出は,男女児ともに生後1年-1年半が最も多く,次いで1年半-2年であって,上下顎 の差はないが,男児群は女児群より,上顎で2.3月,下顎で2.4月早く朝出している。 (3)満2年児の第1臼歯新出状況 満2年児の第1臼歯所出月令平均値は,第10 表の通りである。即ち男児の母乳,混合,人工 の3群の上顎右は, 15.2月, 15.1月, 15.1月で 仝左は15.1月, 15.1月, 14.8月であり,下顎右 は, 15.3月, 15.4月, 15.1月で,仝左は15.3月 15.7月, 15.5月であって,上下,右左ともに3 群間に差は認められない。 女児の上顎右は, 16.8月, 14.8月, 15.0月で 仝左は16.3月, 14.8月, 15.0月であって, F検 定の結果3群間に有意差を認め,混合群と母乳 群間に有意差があり,母:人,混:人の間に有 意差は認められない。下顎右は16.0月, 15.0月 15.2月で,仝左は16.1月15.0月, 15.0月であ り, 3群間に差は認められない。 第10表  満2年児の第1臼歯の新出月令 性 栄 養 上 顎 下 戟 検定上顎 男    児 人 員 右人左入 28 28 13 13 17 17 58 58 27 27 12 13 17 17 56 57 所出月令 右月 左月 s 児 人 員!所出月令

三高序言1」右

C O N I T )   " * ● ● ● ● LO LO in LO rH i-I r-H i-I o o x h C O ● ● ● ● LO LO LO LO T -I t -H r -(     r -( 16.8 16.3 14.8 14.8 15.0 15.0 15.9 15.5 rH O O LD ● ● ● ● C O L O L T D L O r -I     サ ー I r -I r -H o o   < m i r > ●               ●               ●               ● to 10 lo m T -f T -I T -I T -I i -i O i h -  t ^ 2   1         4 i -H   < y >   t > -  t > -2   1         4 F-4.5> F0-3.21 差あり 檀:渇 T-2.56> T0-2 母:人 T-1.9<T0-2

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110      乳幼児の身体発育並に精神発達に関する逐年的研究 第1白歯の所出は,男女児ともに,生後1年-1年半に最も多く,その後2年までに所出を見たも のは, 1-5例にすぎない。上下,男女児間の差は認められない。 (4)満2年児の第2臼歯所出状況 満2年児の第2白歯は,未だ所出を見ないも のが多いために,第11表は新出状況のみにとど めた。即ち,満2年までに新出したものは,男 女児ともに,上顎は約半数以下であり,下顎は 半数-半数以上である。従って下顎は上顎より やや早いが, 3栄養群間にはⅩ2検定の結果有 意差は認められない。 3 満2年児の精神発達状況について_ 第11表  満2年児の第2日歯の新出状況 男    児 上  顎l下  顎 +人 一人I+人 ∴ 人 女    児 上  顎 下  顎 蝣 < s s * a 母  乳 混  合 人  工 計 12  15 10  10 8  11 30  36 14  13 11  9 8  11 33  33 9  11 6  13 7   4 22  28 r H i -H t > -  0 2 1 1     2 注 満2年までに蔚出した者は+, 顔出しなかった者は-で表わした。 満2年児の精神発達を知るために,愛育研究所の乳幼児精神発達検査による発達指数の算出を試み た。今回のテストは,第105問∼第120問の範囲で,その内容には,社会性(S) ,学習(L) ,材料 処理(M) ,精神的生産(P)の四分類を含んでいる。その結果は第12表の通りである。即ち,男児 の母乳,混合,人工の3群のD ・Q平均値127.8, 127.4, 124.1の間には, F検定の結果,有意差 はなく,要素分類のいづれの項にも, 3群間に差は認められない。 女児の3群のD ・ Q平均値, 122.9, 127.8, 127.2の間にはF検定の結果,有意差はなく,要素分 類のいづれの項においても, 3群間に有意差は認められない。 第12衰  満 2 年 児 の 発 達 指 数(D.Q) 栄 検 t定 児 6   9   5 ●                 ●                 ● 6   2   6 1   1 F-0.41くF。-3.14 差なし 122.9 127.8 127.2 125.9 児 備   考 S. D I.Qの発達段階 Fニ-1.07くF0-3.15 差なし 最 高145以上 優 秀130-144 佳 良115-129 平均上100-114 平均下 85-99 不 良 70-84 4 満2年児の習摩・睡眠・排尿予告時期 (1)満2年児の就眠時における習癖 生後1年前後の離乳完了の頃から,就眠時に,その児特有の習癖が出現し,満2年現在も尚継続し ている。主な習癖は,指しやぶり,タオル,ガーゼ,毛布,おくるみ玩具等を抱いて眠るなどである が,その他,家族の耳たぶや腕の軟かい部分に触れたり,自分の勝をいじるなどもある。これらの習 癖に対する愛着は極めて強度であって,時には母親以上に愛着を示すものもいる。第13表には,出現 数のみを示した。即ち,男児の習癖の出現数は, 3.-7名で,人工児に多く見られるが,有意差はな い。しかし女児は4-15名で,人工児は極めて高率である X2-22.76>X20-5.99の検定の結果,

(7)

斎   藤   マ サ    〔研究紀要 第15巻〕  111 3群間に有意差が認められる。 (2)満2年児の睡眠時間 満2年頃の1日の睡眠時間は,第13表の通りであって,男女児ともに12時間以内で,そのうち午睡 は1時間半前後である。 (3)満2年児の排尿予告時期 満2年児になれば,排尿予告の能力は,全員出現しており,第13表によれば,男女児ともに1年半 -1年9月で,人工男は比較的おくれる傾向がみられる。 第13表  満 2 年児の習癖・睡眠・排尿予告時期 威 香 性 母  乳 混  合 人  工 児 睡 眠(午睡)I 女 児 人 員l習癖児l 睡 眠 (午睡) 人l 人(%) \ ) .   )     )     ) N O 00 00 ●                 ●                 ●                 ● 05 ID H N 1   3   1 相                       川 p 時・分(時・分)i年・ )     )     )     \ 、 I ノ t* O N G1 1   パ 7   3   2 r -4   r -I t -I r -I . / . . \     (     . / し ー     ( 0   0   0   0 4                 5 t -H   ( N I C N l i -I r-t rH r-I i-H 1 1 1 1 CD N O3 N 人I 人(%) 時.分 (時.分) 一 Ⅳ n u p n u 一   1 1 m 川 一 h i n n   ^ ● ● ● ● oo t>- oo ^h H M O O   ^ 一 u d Z q )     )     )     \ -ノ IO N CO N n e n i n o o t -I r -W r -I r -I /_\ t H O   < 」 >   O lo in in in t -4     r -I i -I I -1 T -(     T -(     1 -I T -I 予 告 年.月 5   3   2 ● ● ● r ^   r > -  h -  t > , r -1   r -i i -I t -I 5 満2年児の疾病躍患状況 対象児の疾病曜愚状況は,満1年以 降2年に至る, 1年間のものであっ て 2-3日位の軽度のかぜ,下痢等 の母親の訴はこれを省いた。第14表に よれば,男女児の母乳,混合群に水痘 2 : 4,はしか2 :2で,人工群にジ フテリア1の急性伝染病の梶愚があっ た以外は, 3群間に特記すべき疾病は なく, 1年間何の異常も見ないものの 数においても, 3群間に差は見られな い。 樵 女 第14表  満 2 年児の疾病曜患状況 疾 病 名 と 構 患 児 数 偏桃腺炎2,水痘2,はしか1, じんま疹1,脱腸1 /N」両&2, I,諏藤炎1,微衷加療1 , ‥ はしか1,ストロフルス1,とぴひ1, 中耳炎1,紳畷炎1      __  =_ 水痘2,届桃腺炎1,はしか1,気管支炎1 水痘2,はしか1,湿疹1 とびひ1,小児噂息1,ストロフルス1, 腫癌1 小児嘱息1,ジフテリア1,微熱1, 食中毒入院加療1 注 軽度のかぜ,下痢は表より省く。 6 満2年児の1日の栄養摂取状況 満2年の調査日にあたり,対象児の食餌について母親から質,量等を聞いたもので,栄養の正確な 数は計上し難いし,又, 1日の食餌で全般を評価することは妥当ではないが,一応の食生活の概観を 知る参考として,第15表にのべる。これによって1日の栄養必要量と摂取量を比べると,男児は熱量 以外は充分に摂取しており,女児は熱量,カルシウムにおいて幾分不足勝であるが,ビタミンA, Blは充分である。ビタミン類は男女児ともに過剰の傾向さえ見られたが,これは約半数にビタミン 剤投与があったためと思われる。混合女は発育大の割に熱量,蛋白質が小量であることや,人工児に

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112      乳幼児の身体発育並に精神発達に関する逐年的研究 牛乳ざらいの子を見受けた以外は, 3栄養群間に特記すべきものは見出せなかった。家庭の栄養に対 する関心は高く,牛乳は1日1合かそれ以上,玉子は1日1個平均の摂取で,その他子どもの好むも のはつとめて食べさせている。ソ-セ-ジ,バタ-,チーズ,豆腐,鉄など,口あたりの軟い食品を 好み,バターはそのまま大量に慾Lがるという母の訴も多かった。又白飯よりも味つけ飯か麺を好 み,飯よりも副食を多く慾する傾向も見られ,これは必然なことと思われるが,おやつは家庭にも社 会にも多くの問題を残している。偏食については強度なものは見られなかった。 第15表  満 2 年 児 の 栄 養 摂 取 量

\ 、二二三

\、必要量 栄\、摂取量 養\-一・一一\ー 母    乳 男児(母26人,混19人,人20人) (1,126) 1 ,054 混    合 人    工 (1,169) 1,042 女児(母19人,混24人,人17人) 3,021 1.02 VA iu 1,000  0.6 3 6 ● 0 配れq75 ●■95 33 mⅦ川u (1,158) 1,093 00 09 ナ1 旧しp 1,006 射′ ●38 ( 36.4

「∴丁…  三二二二 言3-5..二手二∴・。き室

(注) 表中( )は体重1kg当り熱量は100カロリーで,蛋白質は3.5gで計上したもので,これを 各群の必要量とした。その他の必要量は科学技術庁資源調査会の基準による。 Ⅱ 考 察 乳幼児の身体発育と,精神発達の相関を知るために,第1報として,栄養方法別に見た満1年児の 発育状況を発表した。その結果は,身体発育においては,母乳群は,渇,人工群より比較的劣り,精 神発達においては,母,混合群は人工群より優れていた。しかし1部の資料や, 1回の統計結果のみ で結論を出すことは,まことに危険である。そこで今回は引続き同一資料を以て,同一目的,方法に よる調査を試み,満2年児の調査結果を報告する。 ①報の資料より,男児は4名の減となり,女児は8名の増となり計,男71,女61名である。 身体発育における男児の身長は,人>混>母で,女児の身長は,混>人>母の順ではあるが,男女 児ともに3群間に有意差は認めなかった。 体重においては,男児は混>人>母で,女児は混>人>母の順であって,女児の混合群は有意差を 以て母乳群より優れていた。 胸囲においては,男児は母>混>人で,女児は人>混>母で,男女児ともに3群間に有意差は認め なかった。

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斎   藤   マ   サ    〔研究紀要 第15巻〕  113 頑固においては,男児は母-混>人で,女児は混>人>母で,男女児ともに3群間に有意差は認め なかった。 坐高においては,男児は人>母>混で,女児は混>人>母で,男女児ともに3群間に有意差は認め / なかった。 下肢長においては,男児は人>混>母で,人工群は有意差を以て母乳群に優れていたが,女児は温 -人>母で, 3群間に有意差は認めなかった。坐高/下肢長の比は,男女児ともに1.5が多く,男児 の母乳群は1.6でやや胴長の傾向が見られた。 以上の結果と,胸廓前後径,仝左右径,頭長,頭幅,頭高,等身,上博囲,腹囲等の結果を考慮の 上で, 3群の身体発育を概評すれば,男児の母乳群は,人工群より身長,下肢長は劣る傾向にあった が,胸囲,頭囲,頭長,胸の厚み,上樽囲,腹囲等においては却って上位にあるため,体型としては 比較的短厚な発育を示しているようである。これに比べて人工群は比較的痩身型の傾向を示し,混合 はその中間と考えられる。 女児の母乳群は,凡ての発育が混・人に比べて良好とは思われず,これに反して混合群は体重はも とより,その他の発育においても上位を占めていた。従って混合女児は均整のとれた良好な発育を辿 りつつあるように思われる。人工児は母・泥の中間にあると言えるのではなかろうか。 今回の満2年児の身体発育の特徴は, ①報の満1年児の特徴と,ほぼ同じ傾向と言える。本資料の 身体発育の結果を,昭和35年厚生省乳幼児発育表と比較すれば,身長は男女児の3群ともに, 「申」 の軍関内であり,体重は混合女はr大」で,その他は「申」であり,胸囲は全群「申」であり,東園 は男児の母・泥と,女児の混合群は「二ヒ」で,その他は「申」である。各発育を通じて「下」は皆無 であった。 乳歯生歯状況のうち,外切歯の所出は,生後6月-1年が最も多く,次いで1年-1年半である が,上顎は下顎より,男児群は女児群より,早く新出する傾向が見られた。犬歯の所出は,男女児と もに生後1年-1年半が最も多く,次いで1年半∼2年で,上下顎の差は見られなかったが,男児群 は女児群より早く所出の傾向が見られた.1 第1臼歯の新出は,男女児ともに生後1年-ノ1年半に殆ど完了し,上ド顎,男女児間の差は認めな かったが, 3栄養群間においては,女児の第1臼歯のみにおいて,混合群は母乳群より,有意差を以● て早く所出していた。 第2臼歯の所出が,満2年までに完了したものは,男女児ともに,上顎で半数以下,下顎で半数以 上であり,下顎は上顎よりやや早く廟出の傾向が見られたが, 3栄養群間に有意差は認めなかった。 1.2 以上乳歯生歯の所出については, 1部栄養群間に差を生じた個所もあったが,全般的には,斉藤並に 3 岩波と同じく, 3栄養群間の差は少いのではなかろうか。乳歯の歯牙別所出月令で,岩波より本資料 は,上顎で男児は0.5-1.4月,女児は0.-0.7月,下顎で男児は2.4-2.8月,女児は1.5-2.2月早く 所出しているが,これは本資料が特定の選出法をとったためであろうか。母親の乳歯所出月に対する 関心の度は,生後1年頃までは高いが,それ以後はやや積極性を欠ぎ,第2臼歯に至っては失念のも のが多く,従って正確な記録は求め難いと思った。第2臼歯は口腔の奥であるばかりでなく,舌や内

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114 乳幼児の身体発育並に精神発達に関する逐年的研究 頬がかぶきっていて非常に見難く,対象児の母と経も蔚出しかけの状況は見落し勝になることが了解 できた。それだけに在来の第2臼歯の所出月令は確実性が低いのではなかろうか。 発達指数(D Q)において男児は,母>混>人で,女児は混>人>母で3群間に有意差は認めな かった。要素分類による社会性,学習,材料処理,精神的生産の項においても同様であった。満1年 児のD・Qにおいては,人工群のおくれが目立っていたが,前回に指摘した如く,その原因の1つと して考えられることは..人工群の発語,歩行自立が他群よりおくれる傾向にあったために,これらに 関するテスト問題は得点できず,その結果, D -Qの不振を招いたと思われたが満2年児になれば, 言語,歩行も発達したために満1年児の如き差は生じなかったものと考えられる。栄養方法と精神発 4 達の相関に対する意見は,前回の如く,甲論乙駁であるが,更に加藤は,乳児の発達偏差値は母>混 >人の噸であるが,有意差は認めないと報告している。今回の男児のDQにはこれに似た傾向が見ら れたが,女児は異っていた。本資料について栄養方法と身体発育並に精神発達の関連をみるに,女児 にあっては殆どの身体各部の発育においても又, DQにおいても,混>人>母の順で,身心の一致の 傾向を見たと言えるが,男児にあってはDQの母>混>人の順に対して.頭関と胸囲は一致の順を示す が,身長は全く反対の順を示すなど,栄養:身体発育:精神発達の三者の間には決定的な方向を見出 すことは困難なことと思われた。 就眠時の習癖は,離乳完了の生後1年前後から出現し,現在尚継続している,指しやぶり,湯上タ オル類えの愛着の行為は,その児の環境に応じて独特に表現されたもののようである。その出現率は 人工児に高く,特に女児にあっては r/Oの出現率を示しているが,この点については,その原因や乳 幼児えの影響力など今後あらためて検討したいと思っている。 睡眠時間は,男女児ともに,午睡1時間半前後を含めて, 12時間以内であり, 3栄養群間に差は認 めない。 1年児より,午睡が約1時間短縮しているい 排尿予哲の時期は,いづれも1年半∼1年9月で完了しているが,比較的人工男はおくれている。 生後満1年より満2年に至る, 1年間の疾病状況は,人工女のジフテリア1例の外は, 3栄養群間 5 に特記すべき差は認められなかった。森田はじめ多くの発表が,梶病,死亡ともに,母乳群が少い、こ とを述べているのは妥当な事と思われるが,本資料には現在のところ栄養群間の差は明らかでない。 参考として対象児の1日の栄養摂取量を計上したが,熱量,蛋白質,カルシウム,ビタミンBl, ビタミンAの摂取量は,いづれも全般的に良好で, 3栄養群間に特記すべきものも見出さなかった。 IY 結 章E nn 栄養方法別に見た満2年児の身体発育並に精神発達の結果を符合すれば,身体発育の上にも, 3栄 養方法の間には一部の差は見られたが,全般的には著しい差は見出し得なかった。今回の満2年児の 結果と,前回の満1年児の結果を比較すれば,男児の身長において人工群が母乳群に優れている傾向 や,混合女児が,身心ともに他群より良好であったことなどは, 2年を通じて一致した点であった が, DQにおいて1年児に見られた人工群の不振が,今回は見られなかった事は注目すべき点と思わ

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斎   藤   マ   サ    〔研究紀要 第15巻〕  115 れた。又人工群に就眠時の習癖が高度に出現した点など,今後の発育過程について継続調査研究を得 たねば評価もできない問題も生じたので,今後更に同じ資料について継続的研究をすすめる計画であ る。本調査研究に際し,引続き御指導頂きました,寺脇教授,英田教授をはじめ,木下,浅地雨助教 授に,深く感謝申します。 文     献 1.斉藤マサ 家政学会誌 第14巻 64号 昭38 2.斉藤マサ 慶大教研究紀要 第11巻 昭34 3.岩波文明 小児科臨床 第12巻 6号 昭34 4.加藤道子 小児保健研究 第19巻 2号 昭35 5.森田 清 小児保健研究 第21巻 3号 昭38

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