について―家族イメージを外生変数とする仮説モデ
ルからの検討―
著者
麻喜 総一郎, 加藤 道代
雑誌名
東北大学大学院教育学研究科研究年報
巻
68
号
1
ページ
143-159
発行年
2019-12-26
URL
http://hdl.handle.net/10097/00126992
本研究では,高校生の「家族イメージ」が,「自己効力感」という自己評価・価値の側面や「学校生 活における対人関係」を介してどのように「対人恐怖心性」に影響を与えているのか仮説モデルを構 成し構造方程式モデリングにより検証を行った。その結果,仮説モデルの妥当性が支持されるとと もに,「家族イメージ」から「自己効力感」「学校生活における対人関係」「対人恐怖心性」それぞれに 対して有意な直接効果がみられ,総合効果として「対人恐怖心性」を少なからず規定している可能性 が示唆された。一方,「家族イメージ」から「自己効力感」に,また「自己効力感」から「学校生活にお ける対人関係」を介して「対人恐怖心性」に影響するという逐次的な因果関係が示唆された。影響の 直接性や大きさという点に注目した場合,「自己効力感」「学校生活における対人関係」のパス係数 からは学校における「対人恐怖心性」の低減に向けた支援の方向性が示唆された。 キーワード:家族イメージ , 青年期における対人恐怖心性,自己効力感,学校生活における対人関係, 構造方程式モデリング
1.問題と目的
教育の現場においては,学級での友人関係がうまく作れずに対人関係場面から回避し,重度の場 合は不登校に陥るなど,いわゆる児童生徒の非社会的問題行動が大きな課題になっている。不登校 といっても原因やきっかけ,態様はさまざまであり一概には論じられないが,一般的には症状とし て対人不安や対人恐怖の特徴が指摘されることが少なくない。このような特徴については,すでに 半世紀以上も前に指摘されており,たとえば佐藤(1968)は登校拒否(不登校)において対人関係にお ける失敗への想像的不安や場面逃避などの感情がみられると述べている。それから四半世紀を経た 坂本 ・ 鈴村(1991)の研究においても,不登校に関連して対人不安による緊張が対人接触回避行動を 生じさせるという特徴が指摘されている。鈴木ら(2011) (注1)は,問題を抱えながら保健室登校を 繰り返す高校生に対人恐怖心性の傾向が多くみられることに注目して大規模調査を行っており,ま た有賀(2013)は高校生の潜在的不登校群の重要な指標のひとつに対人恐怖心性をあげている。笠 原(1977)によれば,病理としての対人恐怖症は背景となる文化の特性を反映して,その文化に特有高校生の「対人恐怖心性」に影響を与えている要因について
―家族イメージを外生変数とする仮説モデルからの検討―
麻 喜 総一郎
*加 藤 道 代
** *教育学研究科 博士課程後期 **教育学研究科 教授の形態をとる代表的な症状といえるものであるが,対人恐怖症という病理までには至らなくとも, そのような傾向性を意味する「対人恐怖心性」は,わが国における正常な発達過程で経験される青年 期の普遍的な心的特性であることも指摘されている(田中ら ,1994;谷 ,1997)。このような 「わが国 特有の文化的背景」を考慮するならば,不登校生徒が呈する 「対人不安」や 「対人恐怖」の症状は,健 常的な高校生にみられる 「対人恐怖心性」との連続体として理解できるものであり,したがって青年 期の「対人恐怖心性」は不登校の問題を理解する場合の有効な指標と考えられるのである。 その規定要因について実証的に検討している研究としては,たとえば青年期の自我同一性や自己 愛といった 「パーソナリティ特性」の側面との関係を検証した研究(谷,1997;福井2001),また青年 期の 「孤独」 という観点から検討している清水(2001)の研究や自己不一致との関係を検討している 相澤(2002)の研究などがあげられるが,これらは 「個人の要因」 に注目した研究と言えるものであ る。一方,発達という観点においては,基本的信頼の獲得や愛着の形成などの初期的経験がパーソ ナリティ形成にとって重要であることが知られており養育にかかわる「家族の要因」に注目した研 究も数多くなされている。とくに近年は,「家族の要因」だけに注目するのではなく,それに加えて 青年期における「自己」の側面の要因や「学校」の要因など,「複数の要因」を想定しながら包括的に 検証する試みがなされるようになってきている。このような観点からの実証的な研究は,生徒指導 上の様々な課題に直面している教育現場にとって,問題を抱える子どもたちの理解や支援の方向性 を定める上で貴重な知見となる可能性が高いものと考えられる。 そのような観点からなされた研究について整理しつつ概観すると,たとえば清水・川邊・海塚 (2005)は青年期における第2の分離個体化という観点からクラスター分析を行っているが,肯定的 な両親像を内在化することで両親からの分離欲求の安定,また適度な自己愛,自我同一性の安定が 促され,そのことによって「対人恐怖心性」を高次に統制している可能性を示唆している。また,胡 麻田(2018)は,親の養育態度および親の期待が 「対人恐怖心性」 与える影響について重回帰分析に より検証しており,母親の 「否定」が対人恐怖心性「集団での不適応」 「視線への過敏」 「対人疲労感」 に正の有意な影響を与え,親の 「苦労への報い期待」 が対人恐怖心性「集団での不適応」 に負の有意 な影響を与えていることを明らかにしている。 仮説的なモデルの構成という観点から検討している研究として,たとえば佐々木 ・ 小林(2007)は, 親の養育態度が青年(大学生)の 「誇大特性」 「過敏特性」という自己愛に影響し,自己愛の傾向を介 して対人恐怖心性に影響を及ぼすという仮説モデルについて男女別にパス解析を行っている。森下 ・ 三原(2015)は,親しい人との愛着関係が内的作業モデルを媒介として「対人恐怖心性」にどのよう に影響しているのかパス解析により検討しており,「母親への愛着」が高いほど青年(大学生)の 「自 己受容」 を高め,また 「父親への愛着」が 「不安定な内的作業モデル」 を緩和し,そのことを介して 「 対人恐怖心性」を低下させることを報告している。 一方,網羅的な社会生活要因という観点から検討している研究もみられる。たとえば,鈴木ら (2011)は保健室登校生徒に対人恐怖心性の強い生徒が多いという養護教諭間の検討会における意見 をふまえて,公立高校の生徒1,756名を対象に 「生活環境」をはじめとして 「心理社会的要因」まで含
めた大規模調査を行っている。それによれば親の養育態度(養護度 :care)とは正の有意ではあるが 低い相関,一方,親の養育態度(過保護度 :overprotection)とは負の有意な中程度の相関がみられる ことを報告している。有賀(2013)の研究は 「対人恐怖心性」そのものをとりあげたものではないが, 身体的心理的社会的要因の一つとしてとりあげている。有賀(2013)は,高校生の登校回避感情に注 目し,網羅的な関連要因との関係を高校1年生3,985人という大規模調査から検証しており,重回帰 分析の結果から 「登校回避感情」との関連において,「生活環境」として 「親の養育態度が養育的では なかった」という特徴,それに付随する 「身体心理的社会的要因」として 「不定愁訴がある」 「対人恐 怖心性が高い」 「自尊心が低い」 「学校内の友人からのサポートがない」といった特徴を明らかにして いる。 さて,これらの研究で注目している 「親の養育態度」は,青年期の「対人恐怖心性」を検討する場合 に重要な観点であることは疑いないが,一方では,たとえば不登校という 「結果」を母親の養育態度 など特定の 「原因」 から捉える直線的因果論として理解することの限界も指摘されていることも事 実である(亀口 ,2000)。岡堂(2000)は 「人間のような生活体に与えられる刺激から,その反応や行 動を直線的には必ずしも把握できないことが明らかになった(p10)」 と述べ,問題行動を誘発する 再起的な相互作用や構造に注目する有効性について述べている。すなわち,親の養育態度が子ども の問題行動に影響するという直線的因果関係ではなく,問題行動が維持され続けている家族成員間 の相互作用,すなわち循環的因果関係の視点から理解することの有効性が理解されるのである。こ のような 「家族の全体性(システム)」の観点から 「対人恐怖心性」との関係を検討している研究とし て,たとえば鈴山 ・ 徳田(2009)は,夫婦関係と家族システムの機能度が青年期の不安に及ぼす影響 を共分散構造分析により検討しており,また児玉(2016)は青年期における 「対人恐怖心性」 「自己愛 傾向」 という従属変数について,家族システムの機能度水準間において差がみられるか検証をして いる。 臨床的な有効性という側面においては,「家族システム」という観点のほかに「イメージとしての 家族」という観点の重要性も指摘されている。馬場(1990)は,家族の捉え方について『現実として の家族』と『心像(イメージ)としての家族』という分類を示しており,「家族をめぐる心像は個人の 内的葛藤の投影から,あるいは実際の家族関係に基づいて,家族成員の内面に形成され,実際の家 族のひずみには,心像のひずみやずれが大きな要因となっている(p6)」と述べ,臨床家にとっては 『心像(イメージ)としての家族』が重要であることを指摘している。この「イメージとしての家族」 (以後「家族イメージ」)という観点から青年期の「対人恐怖心性」との関係を実証的に検証している 内容として,たとえば久保(2000)は回想的動的家族画による親子関係像との関係を内的作業モデル から検討しているが,このような試みはきわめて少ない。臨床的な有効性が理解されつつも,「家 族イメージ」という観点からの実証的な研究が少ない大きな理由としては,測度(尺度)の問題があ げられるのは疑いないことである。「家族イメージ」を記述する場合には,久保(2000)の研究のよう に「動的家族画」など投影法尺度が用いられるのが一般的である。しかし,投影法は定量的な検討と いう点では「スコアリング」や「結果の解釈」の難しさがともない,誰にでも実施できる簡便な尺度
とは言い難い面があるからである。一方,定量的な検討という側面で利点を有する SD 法は,被験 者の多様な反応を網羅できるように “ 幅広い ” 意味尺度から構成されているため,因子分析の結果 から明らかなように,必ずしも有効な「意味次元」が抽出されるとは限らないという問題点があげら れる。すなわち,SD 法尺度は本来的に個々の「刺激概念」についての情緒的意味(イメージ)の「構造」 を記述する尺度なのであって,およそアセスメントという目的には適さないことは明らかである (麻喜,2010)。近年,わが国においては亀口(2000)の「家族イメージ法」(p142)のように簡易図形 を用いた「家族イメージ」の測定ツールが普及したことで,様々な従属変数について「家族イメージ」 との関係が比較的容易に検証できるようになってきている。しかし,そのような状況はうかがえる ものの「複数の要因」を想定し,実証的に「対人恐怖心性」との関係について検討している研究は見 あたらない。 以上「対人恐怖心性」を規定している「家族の要因」を含む「複数の要因」に注目した諸研究につい て概観した。その特徴をあげると,第一に「家族の要因」については「親の養育態度」という親と子 の二者関係に着目した研究が多く,臨床的な有効性が指摘されている「家族の全体性(システム)」, また「家族イメージ」という観点からの実証的な研究がきわめて不十分な状況がうかがえる。加え て,大学生を対象にした研究が一般的であり,青年期中期に該当する高校生を対象にした研究が少 ないことがあげられる。第二には,不登校等の問題行動の理解や支援の方向性を探る上では,青年 期における「自己」の側面や青年がおかれている生活環境における諸要因の影響を含めて検討する ことは重要だと考えられるが,そのような「複数の要因」を想定し「対人恐怖心性」への影響につい て検討している研究が必ずしも十分ではないことである。近年の傾向をみると,「親の養育態度」に 加えて高校生を取り巻く生活要因を想定し「対人恐怖心性」との関係を検討する試みがなされるよ うになってきている。しかし,「家族の要因」がそれら「複数の要因」にどのような影響を与え,さら にはそれらの要因を介して「対人恐怖心性」をどのように規定しているのか「因果関係」の観点から 検証している研究は少ない。したがって,このような観点から実証的に検討することは,問題行動 の深刻さに直面している教育現場にとって生徒理解や生徒支援に資するきわめて意義のある試みだ と考えられるのである。 以上のことから,本研究では高校生の自己評価・価値の側面として「自己効力感」,また学校生活 の側面として「学校における対人関係」に注目し,臨床的な観点において重要と考えられる「家族イ メージ」がそれらの変数にどのように影響しているのか,またそれらの変数を介して「対人恐怖心 性」をどのように規定しているのか仮説的な因果モデルを構成するとともに構成概念間の関係を検 証することを目的とする。 【本研究における仮説モデル】 親の養育態度への評価・イメージがパーソナリティの側面や青年期の「対人恐怖心性」,また心理 的健康に影響を与えていることはすでに知られていることである(清水 ・ 川邊 ・ 海塚 ,2005;大 島 ,2014他)。さらに,佐々木・小林(2007)は「親の養育態度」が「子どもの自己愛傾向」を介して「対
人恐怖心性」に影響を及ぼしているという仮説モデルについて検証を試みているが,分析の結果を みるかぎりモデルとしての妥当性がうかがえる。一方,臨床的な知見として「対人恐怖症」は親しい 関係や見知らぬ人の中では生じにくく,学校における級友や教師との関係など「半知りの関係」にお いて生じやすいことが指摘されている(笠原 ,1977;福島,1992)。以上のことから,本研究において は Figure1のように「家族イメージ」が自己評価 ・ 価値の側面である「自己効力感」および「学校生 活における対人関係」に影響を与え,そのことを介して「対人恐怖心性」を規定していると捉える仮 説モデルを構成した。
2.方法
(1)対象 高校生711名(男子281名,女子430名)1年生240名(男子92名,女子148名),2年生243名(男子 102名,女子141名),3年生228名(男子87名,女子141名) (2)使用尺度及び調査手続き ①対人恐怖心性 堀井・小川(1996,1997b)の「対人恐怖心性尺度」を使用した。堀井 ・ 小川(1997a)は,中学生 ・ 高 校生 ・ 大学生を対象とした調査から,年代の上昇とともに 「集団状況における不安意識」が増大する 傾向,また高校から大学にかけて 「他者の評価に対する不安意識」が減少することを指摘している。 さらに高校生の特徴として 「視線にまつわる悩みを中心とした対他的不安意識が対自的不安意識を 中心とした他の不安意識と混在することなく,分化してとらえられる傾向にある(p452)」 と述べ, 視線恐怖的心性を中心に対他的要因の分化が開始することを示している。そのようなことから本研 究においては,下位6尺度のうち,とくに 「自分や他人が気になる悩み」(自他恐怖心性),「集団に 溶け込めない悩み」(集団恐怖心性),「目が気になる悩み」(視線恐怖心性)の3下位尺度を使用した。 各尺度は5項目7件法(0-6)により構成されている。 家族のきずな感 イメージ 自己効力感 学校生活における 対人関係 対人恐怖心性 しつけの柔軟性 イメージ Figure1 本研究における仮説モデル②自己効力感 成田(1995)による「特性的自己効力感尺度」は Sherer,M.,Maddux,J. et al.(1982)の尺度を翻訳し たものであり,5件法23項目から構成されている。尺度は「生涯発達的な利用」という観点から検討 されているため,調査被験者は13歳から75歳以上まで8つの年齢段階を対象にしている。そこで高 校生に使用するに当たって尺度の内的妥当性をあらためて確認し,最終的に18項目を「自己効力感 尺度」として使用した。 ③学校生活における対人関係 「学校生活における対人関係」については図書文化社「Q-U 楽しい学校生活を送るためのアンケー ト」(田上不二夫 監修 河村茂雄 著)の2つの尺度のうち,「学校生活意欲」(スクールモラール) 尺度の「友人との関係」「教師との関係」「学級との関係」の3つの下位尺度を使用した。尺度は5件 法4項目から構成されており,得点範囲はそれぞれ4-20となっている。 ④家族イメージ 麻喜(2010)によって2003年に作成された家族の全体性についての機能イメージを測定する尺度 を用いた。尺度は2下位尺度から構成され,情緒・愛情機能としての「家族のきずな感」(8項目)は, 得点が低いほど家族の情緒的な結びつきが希薄なイメージ,逆に高いほどそれが強いイメージを表 わす。社会化機能としての「しつけの柔軟性」(8項目)については,得点が低いほど家族としての決 まりやルールなどが厳格なイメージ,逆に得点が高いほどそれが緩やかで統制に欠けるイメージを 表わす。尺度は両極7件法により構成され得点範囲はそれぞれ8-56となっている。 (4) 調査時期および調査校の属性 2003年11月に A 県 B 高校において実施した。B 高校は県北に位置する県立高校であり,出身中 学校の割合としては,C 市内出身生徒が多いものの隣接 D 市からの通学もほぼ同数みられており 合計38中学校からの進学となっている。 (5) 実施手続き及び倫理的配慮について 本研究は,「高校生をとりまく生活意識についての調査」という名目で①「自己に関する意識」②「家 族に関する意識」③「学校生活に関する意識」についての調査として実施した。実施までの手続きと しては,まず原案を B 高校の保健厚生に関わる担当部署で協議してもらい,それをふまえて「校務 運営委員会」及び「職員会議」に諮り内容について審議していただいた。その結果,実施に際しては, 予め「教育相談だより」や「保護者宛文書」にて生徒・保護者に調査の目的を知らせるとともに,個人 情報の保護について特段の配慮を行うことを条件に実施の了承を得た。そのような手続きを経て最 終的に学校長の決裁を得て実施した。 調査は,授業以外の時間を利用して実施したが,被調査者(生徒)には(1)回答は任意であり答え
たくない人は無記入で提出してかまわないこと(2)結果の報告・公表は数値のみの取り扱いとなる こと(3)いかなる形でも個人名が出ることは絶対にないこと等を周知するとともに,回答時間は約 20分程度であることを説明した。実施後は,生徒および保護者に「教育相談だより」等をとおして 個人が特定されない記述統計データおよびそのグラフの形で結果のフィードバックを行い,同時に 調査結果は生徒理解および生徒支援の資料として活用する旨を周知した。(注2)
3.結果
(1)有効回答数および分析対象 調査に協力してもらった711名のうち,本研究においては各変数について欠損値のない580名を 分析対象にした。内訳については Table1のとおりである。なお,分析は統計解析ソフト SPSS 社 SPSS11.5および Amos5.0を用いた。 (2)「特性的自己効力感尺度」の内的妥当性 成田ら(1995)の尺度は「生涯発達的な利用」という観点から検討されており,「高校生年齢」に該 当する被験者数は明示されていない。そこで,高校生を対象とした尺度としての妥当性についてあ らためて確認した。因子分析においては,主因子法により,また因子軸の回転については成田ら (1995)の手続きにしたがって無回転の因子解を求めた。その結果,因子負荷量が低い項目がみられ たことから,因子負荷量の低い項目を順次除きながら再度分析を繰り返したが,本研究においては Sherer,M.,Maddux,J. et al.(1982)と同様,因子負荷量 .40を目安に分析を行った。結果は表2のとお りである。成田ら(1995)は1因子解を採用しているが,本研究においても Table2のとおり第1因子 への因子負荷量が比較的大きい18項目(1因子解)を採用した。この18項目について信頼性係数を 求めたところα =.842であり,十分な内的整合性が確認されたことからこの18項目を「自己効力感 尺度」として使用することにした。第1因子の寄与率は24.2% と低い値となったが, 2因子構造を採 用している Sherer,M.,.Maddux,J. et al.(1982) の研究でも第1因子の寄与率は26.5% と概ね同じよ うな値となっている。 Table 1 有効回答数内訳(度数) 学年 合計 1年 2年 3年 男子 74 80 67 221 女子 120 117 122 359 合計 194 197 189 580(3)基本統計量 各変数についての基本統計量は Table3のとおりである。なお,「自己効力感」については因子分 析の結果を受けて18項目の値となっている。 Table2「自己効力感」因子分析表(主因子法 ・ 因子軸の回転なし)N=580 項目(18項目)α= .842 F1 h2 *22 すぐにあきらめてしまう .634 .470 *13 新しいことを始めようと決めても,出だしでつまづくとすぐにあきらめてしまう .553 .332 *16 難しそうなことは,新たに学ぼうとは思わない .548 .346 *8 困難に出合うのを避ける .541 .533 *6 何かを終える前にあきらめてしまう .529 .390 *5 重要な目標を決めても,めったに成功しない .527 .364 *18 人の集まりの中では,うまく振る舞えない .500 .493 17 失敗すると一生懸命やろうと思う .494 .514 *2 しなければならないことがあっても,なかなかとりかからない .480 .268 *15 思いがけない問題が起こった時,それをうまく処理できない .461 .250 *4 新しい友達を作るのが苦手だ .459 .631 *10 友達になりたい人でも,友達になるのが大変ならばすぐ止めてしまう .454 .288 *9 非常にややこしく見えることには,手を出そうとは思わない .453 .419 *23 人生で起きる問題の多くは処理できるとは思えない .449 .222 21 私は自分から友達を作るのがうまい .445 .670 1 自分が立てた計画はうまくできる自信がある .441 .267 *19 何かをしようとする時,自分にそれができるかどうか不安になる .436 .311 3 初めはうまくいかない仕事でも,できるまでやり続ける .398 .310 *:逆転 因子寄与 4.36 寄与率 24.2% Table3 基本統計量 変数 最小 最大 平均 SD 家族イメージ きずな感 8 56 38.1 8.25 しつけ柔軟性 8 56 34.0 7.31 自己効力感 20 83 54.6 9.85 学校生活 対人関係 友人との関係 6 20 16.5 2.64 教師との関係 4 20 12.5 3.63 学級との関係 4 20 13.5 3.58 対人恐怖心性 0 90 40.6 17.5 自他恐怖 0 30 16.4 6.31 集団恐怖 0 30 12.5 6.39 視線恐怖 0 30 11.7 7.46
(4)仮説モデルの妥当性について 潜在変数「自己効力感」についての測定方程式モデルは1指標となっているため,モデルが識別さ れるために信頼性係数を用いて誤差分散を固定した。仮説モデルについて男女別の多母集団同時分 析を行ったが,手続きとして母集団間での配置不変の確認,その後に母集団間での共分散構造の等 質性についての確認を行った。男女それぞれの母集団についてのモデルの適合度指標は Table4の 上段(男子 :model0,女子 :mode0’)のとおりである。男女いずれのモデルについても,適合度指標の 値は概ね受容できる値となっており,母集団間でのモデルの配置不変は支持された。そこで,つぎ に母集団間での共分散構造の等質性について確認を行った。model1は推定母数に等値制約を課さ ない配置不変モデルである。model2は,母集団間の観測変数に等値制約を課したモデルである。 model3は model2に加えて母集団間の因子の分散・共分散に等値制約を課したモデルである。 model4は model2に加えて母集団間の誤差分散に等値制約を課したモデルである。model5は model2に加えて母集団間の因子の分散・共分散および誤差分散に等値制約を課したモデルである。 model6は因子間のパス係数,因子の分散・共分散,誤差分散に等値制約を課したモデルである。モ デルごとに順次分析を行った結果については Table4下段のとおりである。最終的には強測定不変 まで支持されたことから,本調査における高校生男女での共分散構造は等質であると考えられた。 さて,各モデルについて適合度指標をみると model3は,適合度指標はきわめて高いとは言えな いが受容できる値となっており,加えて AIC はもっとも小さい値となっている。これらの結果と 先行研究の知見をふまえて本研究においては model3を分析対象とした。選択されたモデルの特徴 は,男女の母集団における因子間のパス係数が自由推定,因子パターンが等しく,かつ因子(外生変 数)間の共分散および各因子の分散が等しいモデルとなっている。 推定された母数については Figure2(男子)および Figure3(女子)のとおりである。パス図につい ては有意なパス係数および相関係数のみ記載し,有意でないパス,また「自己効力感」の誤差変数を 除いた誤差変数および撹乱変数は図の煩雑さを考慮して省略した。モデルの各適合度指標は, Table4のとおり十分に受容できる値となっており,あらためて本研究における仮説モデルの妥当性 が支持されるとともに,潜在変数(因子)間のパス係数については男女の母集団間で差異が存在する 可能性が示唆された。 (5)構成概念間の関係について 「家族イメージ」を外生変数とした場合の高校生の「対人恐怖心性」に与えている影響については 男女で異なる特徴がみられている。有意な直接効果としてのパス係数をみると,値としては大きい とはいえないが,男子では「家族のきずな感」(-.135)が,女子の場合は「しつけの柔軟性」(-.147)が 負の有意な影響を与えている。このことから,男子の場合は家族の情緒的な結びつきイメージが高 くなるにつれて「対人恐怖心性」が低減する傾向が示されている。「しつけの柔軟性」イメージにつ いては,女子の場合,柔軟性が増すにつれて,すなわち家族としての統制のないイメージが高まる につれて「対人恐怖心性」が低減するという傾向がみられている。このことは,逆に言えばしつけに
ついて厳格さや統制感のイメージが高まるにつれて「対人恐怖心性」が増すことが示唆されている。 しかし,男子については「対人恐怖心性」への直接的な影響は有意ではなく「自己効力感」の低減を 介した影響であることが示唆されている。 「家族イメージ」から「対人恐怖心性」への影響についての総合効果をみると,男子の場合「家族の きずな感」からの影響については -.313(直接効果 -.135,間接効果 -.178),また「しつけの柔軟性」から の影響については .079(直接効果 -.050,間接効果 .129)となっている。女子の場合は「家族のきずな感」 からの影響については -.251(直接効果 .029,間接効果 -.280),また「しつけの柔軟性」からの影響に ついては -.132(直接効果 -.147,間接効果 .016)となっている。このことから,男子 ・ 女子いずれも,「家 族のきずな感」という情緒・愛情機能イメージは直接的に,また自己評価 ・ 価値および学校生活にお ける対人関係の側面への影響を介して「対人恐怖心性」を少なからず規定している可能性が示唆さ れている。一方,「しつけの柔軟性」イメージの影響に関しては「家族のきずな感」イメージと同様 ではあるが,女子について特徴的な傾向が示唆されている。 さて,男女別に「家族イメージ」からの逐次的な影響についてみると,男子の場合「家族のきずな 感」イメージから「自己効力感」(.177),「学校生活における対人関係」(.166),「対人恐怖心性」(-.135) それぞれに与えている影響は正負同程度となっている。実際,一対のパラメータ間の比較統計量 (Wald 統計量)をみると各パス係数間に有意差はみられない。つぎに,「自己効力感」から「対人恐 怖心性」へのパスと,「自己効力感」から「学校生活における対人関係」へのパスについて比較すると 後者のパスが有意に大きくなっている(7.10)。すなわち,「家族のきずな感」イメージからの直接効 果(-.135)に加えて,「家族イメージ」(家族のきずな感 ・ しつけの柔軟性イメージ)→「自己効力感」 →「学校生活における対人関係」→「対人恐怖心性」という影響の経路の特徴が理解される。 Table4 多母集団における共分散構造の等質性について
モデル GFI AGFI CFI RMSEA AIC model0 男子 N=221 0.925 0.878 0.944 0.050 377.4 model0' 女子 N=359 0.935 0.894 0.946 0.049 405.4 model1 多母集団同時分析 0.936 0.896 0.948 0.048 401.1 model2 0.932 0.898 0.946 0.047 397.6 model3 0.931 0.898 0.945 0.047 397.2 model4 0.926 0.900 0.940 0.047 401.2 model5 0.925 0.900 0.939 0.047 401.7 model6 0.920 0.901 0.936 0.046 400.1
一方,女子の場合は「家族のきずな感」イメージから「自己効力感」へのパスと「学校生活における 対人関係」へのパスを比較すると有意に前者のパスが大きくなっている(-3.76)。つぎに,「自己効 力感」から「対人恐怖心性」へのパスと「自己効力感」から「学校生活における対人関係」へのパスを 比較すると有意に後者のパスが大きい(7.02)。したがって,「しつけの柔軟性」イメージからの直接 効果(-.147)に加えて,男子と同様に「家族のきずな感」イメージ→「自己効力感」→「学校生活におけ Figure2 多母集団同時分析(model3男子) Figure2 多母集団同時分析(model3女子)
る対人関係」→「対人恐怖心性」という逐次的な因果関係にある特徴が示唆されている。「対人恐怖 心性」への直接的な影響性という点においては,男子の場合は「自己効力感」(-.565)が大きく影響し ているのに対して,女子の場合は「学校における対人関係」(-.505)が大きく影響している特徴がう かがえる。とくに「学校生活における対人関係」の影響に関しては,男女間でパス係数の値に差がみ られることからパス係数間の差の比較統計量みたところ(-2.01),有意に女子の方が大きくなってい る。すなわち,「学校生活における対人関係」の影響については,女子特有の傾向である可能性が示 唆されている。
4.考察
本研究においては,分析対象として model3を取り上げた。たとえば,「親の養育態度」が「自己愛」 を介して「対人恐怖心性」にどのように影響しているのか検証している佐々木・小林(2007)の研究, また「親の養育態度」を説明変数,「対人恐怖心性」の下位尺度得点を目的変数とした重回帰分析を 行っている大久保(2012)の研究では「対人恐怖心性」への影響度について男女別に検討しているが, 分析結果を見るといずれも男女で差異がみられる結果が示されている。もちろん二つの研究とも対 象は大学生(2年生相当年齢)であって高校生を対象にした結果というわけではない。しかし,一般 的に青年期被験者を対象にした調査においては性差がみられる場合が多いことから,高校生を対象 にした本研究においても,因子間の因果関係に性差を想定し,かつ AIC の値がもっとも小さい model3を分析対象にすることはきわめて妥当なことと考えられる。 さて,高校生の「対人恐怖心性」への直接的な影響においては男女ともに「自己効力感」(男子 -.565, 女子 -.371)および「学校生活対人関係」(男子 -.260,女子 -.505)が,家族イメージの影響よりも有意 に大きくなっている。このことは,高校生年代においては「家族外生活」の重要性が相対的に増し, とくに日常的な生活の中心が「学校」であることを考慮すれば「自己効力感」や「学校生活における 対人関係」の影響度の大きさは妥当なことだと考えられる。たとえば,男女別にみると,男子の場合 は「自己効力感」が大きく影響しているのに対して,女子は男子よりも有意に「学校生活における対 人関係」が大きく影響していることが示されている。つまり,男子の場合は「自己効力感」という自 己評価 ・ 価値の側面が「対人恐怖心性」の抑制に影響しているのに対して,女子の場合は「学校生活 における対人関係」という「半知りの関係」(笠原,1977;福島,1992)の重要性が示唆されている。 さて,仮説モデルにおけるパス係数の傾向からは,男女ともに高校生の「家族イメージ」が「自己 効力感」「学校生活における対人関係」「対人恐怖心性」それぞれに対して,値は大きいとはいえない が直接的な影響を与えていることが示されている。因果関係の経路については,男女ともに「家族 イメージ」が「自己効力感」に影響を与え,そのことを介して「学校生活における対人関係」に影響を 与えるとともに「対人恐怖心性」を規定するという逐次的な関係にある特徴が示されている。具体 的には男女ともに情緒・愛情機能としての「家族きずな感」イメージが,「自己効力感」「学校生活に おける対人関係」のいずれに対しても促進的な影響を与えている。とくに男子の場合は「対人恐怖 心性」に対して低減させる方向に影響を与えている。大島(2014)は,青年期における親子関係はサポート源であり評価としての親イメージが青年の心理的健康に直接影響を与えると述べており,ま た久保(2000)は「対人恐怖心性」が高いほど親子関係像に肯定的なまとまりがみられないこと,受 容的な親の存在体験の希薄さについて指摘をしている。これらのことや本研究の結果をふまえると, 情緒的結びつきが感じられるような『心像(イメージ)としての家族』は,青年期の心理的健康にとっ て重要であることがあらためて理解される。しかし,男子については「家族のきずな感」イメージが 影響している一方で,女子については影響がみられない。女子の場合,男子に比べて「自己効力感」 への影響度(.289),また「学校生活における対人関係」から「対人恐怖心性」への影響度(-.505)が大 きいことを考慮すると,『心像(イメージ)としての家族』という内的家族像よりも現実状況として の「学校生活における対人関係」に規定されている可能性が考えられる。 一方,「しつけの柔軟性イメージ」からの影響については,男子の場合「自己効力感」を低減させる ように影響している。model3の項目「放任の」「勝手気ままな」「ルールのない」から理解されるよう に,この尺度得点の高さは,親のかかわり方としてしつけが行き当たりばったりで一貫性を欠くイ メージといえる。そのような親のかかわり方においては,「自分が大切にされている」という自己に 対しての肯定的な評価や効力感が育まれ難いものと考えられる。しかし,女子については「自己効 力感」については影響を与えておらず,逆に「対人恐怖心性」を低減させるように影響している。梅 岡(2000)は幼児期における母親の「過保護(overprotection)」が強いほど「対人恐怖心性」得点が高 いことを報告しており,また沖本(2001)は大学生女子の特徴として,幼児期の親の養育態度におい て母親が支配的に接することや父親が過度の期待・干渉を向けることが「対人恐怖心性」を高めるこ とを報告している。いずれの研究も,幼児期における親の養育態度についての想起をもとめた調査 であることから,内的表象としての「親」,すなわち『心像(イメージ)』としての「親」と考えること もできる。本研究結果と併せて考えた場合,青年期女子にとって干渉的・統制的,また過保護とい う子どもを囲い込むような親のイメージが「対人恐怖心性」を高めるように影響している可能性が あるということである。そのような観点から model3をみた場合,この尺度得点の高さはそれとは 逆の親のかかわりになっており,女子にとって「対人恐怖心性」の低減に影響しているという結果に は頷けるものがある。一方,パス係数が「負の符号」になっている点に注目すると,尺度の対極は「厳 しい」「規則にしばられた」などしつけの厳格さや強い統制のイメージにかかわる項目となっている ことから,厳格さ・統制イメージが高まると「対人恐怖心性」が増すという理解も可能になる。そう であるならば,先行研究の報告を支持する内容ということができる。 高校生の「対人恐怖心性」に対する直接的な影響という点では,「自己効力感」および「学校生活に おける対人関係」の重要性が示されているが,その一方で男子では「家族のきずな感イメージ」 (-.135),女子では「しつけの柔軟性イメージ」(-.147)からの直接効果がみられており,また総合効果 をみると少なからぬ影響を与えていることが示されている。清水 ・ 川邊 ・ 海塚(2005)は,「対人恐 怖心性」が高次に統制される過程として肯定的な両親表象の内在化とともに,親密な友人関係の確 立,適度な自己愛の調整能力,自律的な情緒安定による自我同一性の確立をあげている。青年期に おける自己の再構成の過程や心理的健康にとって,情緒的な安定の場としての「家族」が重要である
のは周知の事実である。しかし,model3のパス図が示しているように,現実の家族はもとより『心 像(イメージ)』としての安定的な内的家族像があるからこそ,青年期の課題である自己の再構成に 取り組むことができるのであり,家族内生活から家族外生活への移行という自立への過程が促され ていくものと考えられる。したがって,青年期における問題行動傾向を理解するひとつの視点とし て「家族イメージ」に注目する有効性が理解されるのである。 さて,最後に学校における支援の可能性について言及したい。model3では「家族イメージ」から「対 人恐怖心性」への直接効果がみられていることを考えると,問題を抱える生徒に対する支援の方向 性という点においては,馬場(1990)が述べているように現実の家族とのずれに注目し,必要があれ ばその修正を焦点にした二者面談や保護者との三者面談という支援の仕方が考えられる。一方,影 響の直接性や大きさに注目した場合は,高校生の潜在的不登校群の重要な指標と考えられる「対人 恐怖心性」の低減を図る上で,「個人がある状況において必要な行動を効果的に遂行できる可能性の 認知(p69)」(成田ら,1995)である「自己効力感」や,「学校生活における対人関係」を育む支援の有 効性が示唆されている。すなわち,そのような教育的プログラムの計画および実践による「集団を とおして『個』を育てる」という視点の妥当性があらためて理解されるところとなっている。 本研究は実験計画にもとづいて調査を実施したものの,完成できないまま現在に至ってしまった という経緯がある。しかし,現在に至るまで,本研究のような観点から「対人恐怖心性」との関係を 検討している研究は見当たらないことから,調査実施後に発表された研究を参照しつつ再構成した 内容であることを申し添えたいと思う。本研究は調査の時期から時間を経ているという問題,また 内的家族像に注目しているとはいえ調査校が1校の限定されたデータであるといった問題が指摘さ れるかもしれない。したがって,本研究結果をもって,現在の高校生全般に敷衍することができな いのは言うまでもないことであるが,そのような制約はあるにしろ不登校問題が依然として深刻な 今日の教育現場の状況を考慮すれば,「参考資料」という点で価値はあるものと考える。本研究がそ のような生徒の支援に苦悩している教育現場の一助となることを切に願って止まない。 (注1) 本研究は2003年に実施した調査結果の再分析である。その際,本研究では「問題と目的」に2003年の調査実施後 に公表された諸研究を「先行研究」として引用している。結果の公表が遅れた大きな理由の一つとして,調査当時は 本研究のような共分散構造分析(多母集団同時分析)を個人レベルで行うことは難しかったことがあげられる。し かし,近年分析ツールが格段に進歩し共分散構造分析が比較的手軽に行えるようになったことで再分析への障壁が 低くなった。そのことに加えて,結果として調査実施時期との時間的なずれが生じてしまったことで,本研究テー マに関わる分野においては多くの貴重な知見の蓄積が図られることになった。再分析を試みるにあたっては,その ような諸研究を先行研究として示すことで,あらためて本研究の視点や目的が明確になるのではないかと考えて引 用したものである。
(注2) 2003年の調査結果をデジタルデータとして保管し続け再分析する形になったことは,現在の倫理基準に照らした 場合,データの目的外使用にあたる可能性がある。しかし,当時は現在のようにデータの保存期間について明確な 基準は示されていなかったことから,「個人情報の保護」という観点において紙媒体での被調査者の直接回答につい ては集計後に処分したものの,結果の公表がなかなかできなかったために公表時までという限定で個人が特定され ないような形式に置き換えた「デジタルデータ」として保管していたものである。本研究について再分析の指摘が ないことが確認されしだい直ちに破棄する予定であることを申し添えたいと思う。 【引用文献】 相澤直樹(2002)「青年期の対人恐怖心性と自己不一致の関係について」『神戸大学発達科学部 人間科学研究センター 人間科学研究』第10巻1号 pp.77-88 有賀美恵子(2013)「高校生における登校回避感情の関連要因」『日本看護学会誌』第33巻1号 pp.12-24 麻喜総一郎(2010)「家族イメージと青年期における不適応傾向との関係について-形容詞評定尺度の構成をとおして -」『家族心理学研究』第24巻1号 pp.16-29 馬場禮子(1990)「第Ⅰ章 総論:家族の心理臨床」『臨床心理学体系4 家族と社会』 金子書房 pp5-9 福井康之(2001)「新しく出現したタイプを含む対人恐怖の質問紙調査による分類の試み」『心理臨床学研究』第19巻5 号 pp.477-488 福島 章(1992)『青年期の心』講談社現代新書 堀井俊章・小川捷之(1996)「対人恐怖心性尺度の作成」『上智大学心理学年報』第20号 pp.55-65 堀井俊章・小川捷之(1997a)「青年期における対人不安意識の発達的変化」『心理臨床学研究』第14巻4号 pp.448-455 堀井俊章・小川捷之(1997b)「対人恐怖心性尺度の作成(続報)」『上智大学心理学年報』第21号 pp.43-51 堀井俊章(2002)「青年期における対人不安意識の発達的変化(続報)」『山形大学紀要(教育科学)』第13巻第1号 pp.79-94 亀口憲治(2000)『家族臨床心理学 子どもの問題を家族で解決する』東京大学出版社 笠原 嘉(1977)『青年期 精神病理学から』 中公新書 児玉夏枝(2016)「青年期における自己の葛藤と家族機能との関連についての研究-対人恐怖的傾向・自己愛的傾向に 着目して-」『京都大学大学院教育学研究科紀要』第62号 pp.387-399 胡麻田竜次(2018)「親の養育態度 ・ 期待が青年の対人恐怖に与える影響」 『追手門学院大学心理学論集』第26巻 pp.1-10 久保 恵(2000)「対人恐怖心性と認知的・投影的親子関係像 - 内的ワーキングモデルの観点からの検討」『教育心理学 研究』第48号 pp.182-191 森下正康・三原まどか(2015)「親しい人との愛着関係が対人不安に与える影響 - 内的作業モデルと自己受容を媒介と して -」『発達教育学研究:京都女子大学大学院発達教育学研究科博士後期課程研究紀要』第9巻 pp.31-45 成田健一・下仲順子・中里克治・河合千恵子・佐藤眞一・長田由紀子(1995)「特性的自己効力感尺度の検討-生涯発達 的利用の可能性を探る」『日本教育心理学研究』第43号 pp.306-314 岡堂哲雄(2000)『家族カウンセリング』金子書房
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The purpose of this study is to verify a hypothesis model, how “family image” affect “anthoropophobia tendency in adolescence” of senior high school students through “generalized self-efficacy” and “personal relationships in the school life” by structure equation modeling. Results showed that the validity of the hypothetical model was confirmed and that “family image” affected “anthoropophobia tendency” as the direct effect, at the same time the significant sequential causality from family images to the tendency was also confirmed through the “generalized self-efficacy” and “personal relationships in the school life”. Especially on the total effect, it was indicated that “family image” influenced “anthropophobia tendency” considerably. On the other hand, in terms of the support for the reduction of the tendency, it was suggested the effectiveness focusing on two latent variables, “generalized self-efficacy” and “personal relationships in the school life” from the size of the path coefficient.
Keywords: family image, anthoropophobia tendency in adolescence, generalized self-efficacy, personal relationships in the school life, structure equation modeling
A Structural Equation Model of Factors which is Influencing
High School Students’ Anthropophobia Tendency:
Based on Family Image, Exogenous Variable in A Hypothetical Measurement Model
Soichiro ASAKI
(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)