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ディシプリンとトゥール (巻頭エッセイ)

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Academic year: 2021

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ディシプリンとトゥール (巻頭エッセイ)

著者

加藤 博

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

186

ページ

1-1

発行年

2011-03

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004279

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.186 (2011. 3)

1

エ ッ セ イ

アジ研ワールド・トレンド 2011 3

加 藤   博

ディシプリンとトゥール

かとう ひろし/一橋大学大学院経済学研究科 教授 1948年生れ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。 専攻は、アラブ社会経済史。 近著に『イスラム世界の経済史』 NTT出版、2005年、『イスラム経済論 イスラムの経済倫理』書籍工房早山、2010年がある。   私は方法論的オポチュニストを任じてきた 。 実際、 これまでの私の研究生活は、 幸か不幸か、 偶然が重なった多くの﹁出会い﹂のなかで、歴 史書、 法令、 文書、 聞き取り情報、 統計データ、 地理情報と、異なる種類の資料を渡り歩くもの であった。そして、その結果として、次の二つ に確信を持つようになった。   ひとつは、こと学際的な研究のうえでは、ど の種類の資料も一長一短があり、その強みは同 時に弱みであるため、資料の研究上の優越を競 い合うことは生産的ではないということであ る。もうひとつは、そのため、学際的な研究の ためには、異なる種類の資料の突合せを必要と するが、 それは諸科学のディシプリンではなく、 語学 、現地調査 、数学 、統計 ・地理情報処理 ・ 解析などのトゥールの共有によって可能となる ということである。   このように述べると 、﹁それはお前が特定の ディシプリンに習熟しないディレッタントだか らだ﹂という批判が返ってくるに違いない。こ のような場合、私は歴史学徒であり、先の主張 は、資料がいつ、どこで、誰が、何を目的に作 成され、 なぜ今日まで残されたのかを検証する、 歴史学で言うところの﹁文献考証﹂に基づくも のだと答えるようにしている。   私が﹁地域﹂にこだわるのも、地域研究がひ とつのディシプリンであると考えるからではな く、空間が時間と並んで、学際的な研究対象た らざるを得ないと思っているからである。そし て、学際的な研究を目指す以上、先に述べたよ うに、異なる種類の資料に基づく研究成果の突 合せを不可欠とするであろう。   学際的研究の必要が叫ばれて久しい。 しかし、 それは、ディシプリンにこだわっている限り不 可能であろう。重要なのは、さまざまな種類の 資料の収集であり、ディシプリンを異にする研 究者に利用可能な形で資料を処理する専門的技 術である。そこには、高度なデータ・情報処理 のトゥールのほか、図書館、文書館の運営方法 も含まれる。現在では、 文献や統計のみならず、 地図や写真などの映像資料や音楽も、重要な研 究対象となっている。また、それらの資料のデ ジタル化も驚くほどの速いスピードで進められ ている。   データのデジタル化は、研究者の研究姿勢や 研究方法の変化をももたらしている。学術論文 やワーキングペーパーはネット上の検索で容易 に入手できるため、研究者は時間の多くをその サーヴェイに割かざるを得ない。また、 彼らは、 生のデータ・情報を自ら収集し、処理する時間 を持てず、何らかの形で﹁加工された﹂データ や情報に依存せざるをえなくなっている。   いまや、データや情報をどう所蔵するかの時 代から 、どう利用するかの時代に移っている 。 一体、この先、研究環境と研究方法はどのよう に変わっていくのだろうか。 IT に弱く、アナ ログ世代の私には想像もつかないが 、日本が データ・情報の管理において、欧米に比して大 きな遅れをとっているのではないかということ は、 この私でも分かる。発想を転換し、 がんばっ てもらいたいものである。

参照

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