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幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究(1) : 環境設定に着目して

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(1)幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究 (1) : 環境設定に着目して 著者 雑誌名 巻 ページ 発行年 URL. 三浦 乃, 小江 和樹 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 25 61-69 2016-02-26 http://hdl.handle.net/10232/00029393.

(2) Bulletin of the Educational Research and Development, Faculty of Education, Kagoshima University 2016, Vol.25, 61-69. 論 文. 幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究(1) - 環境設定に着目して 三 浦 乃[鹿児島大学教育学部附属教育実践総合センター研究協力員] 小 江 和 樹[鹿児島大学教育学系(美術教育)] A study of the support in formative activity using clay for infants (1) - Focusing on the preferences MIURA Nai・OE Kazuki. キーワード:幼児造形、粘土、環境設定. ③ 道具の使用を表現方法に合わせて選択できる. 1.はじめに 幼児の粘土を用いる立体造形の表現の発達に関. 環境設定や、機能的な使用に向けた支援や指導. する先行研究(1) において、その特徴として以下. 方法の十分な考慮. の5点が明らかとなった。. ②に関しては、活動の場に粘土の水分量を調節. ① 幼児期全般に共通する、基本形や器状の造形. できる設定を行うことも有用であるといえる。東. 物などの普遍性. 山(1999)は、子どもの諸発達、それに伴う造形. ② 平面的な造形物や性差、幼児期全般における. 活動の発達と同時に、体験が充実することでこれ. 感覚的な関わりへの欲求と造形への欲求の存在. らの領域は互いに高めあうことができると述べて. の両存 . いる。よって、このような体験の充実に向けた支. ③ 幼児後期に向かうにつれて造形意図と造形が. 援が、子どもの表現の更なる発達につながると推. 結びつき、感覚的な関わりから創造的な関わり. 察できる。. へと活動の質が変化する、活動の質的転換の存. これらのポイントを踏まえて、活動やその場を. 在. 構築する際、粘土造形自体の取扱いの難しさを示. ④ 粘土の様々な状態の体験による、造形体験の. 唆する先行研究(神谷,2009)に見られるよう. 充実化、粘土との関係性づくり、自己表現との. に、運営や管理などの現実的な問題をもちやすい. 対話の促進の可能性. 可能性は自明である。そのため、そのようなポイ. ⑤ 活動の質的転換に伴う道具の使用方法の変化. ントをもつ活動の実践や、環境などについての具. ⑤に関しては、造形意図と操作が結びつく幼児. 体的な条件付けに関しては、あまり研究がみられ. はその機能を効果的に使用することができるが、. ない。しかしながら、幼児の実態に即した効果的. 感覚的な関わりを楽しむ幼児は操作そのものが主. な造形活動の支援を考える上で、このポイントの. になり、粘土との直接的な関わりが減少してしま. 具体化や普遍性を見出すことの重要度は言うまで. うことが明らかとなっている。. もない。. また、これらのことを踏まえ、幼児の粘土を用. そこで本研究では、幼児の多様な発達や表現の. いた造形活動における支援や指導のポイントとし. 姿に沿い、効果的な支援を行うことのできる粘土. て、以下の3点が挙げられた。. 造形の環境設定について、先行研究の中から、実. ① 幼児の表現の多様性に応じる支援や指導にお. 際に多量の粘土を用いる粘土造形の具体的な活動. ける、多量の粘土を用いる環境設定の有用性. 設定を試みた「粘土場」について調査を行い、そ. ② 幼児の粘土造形への興味や関心、意欲の向上. の支援に関する具体的なポイントを見出し、支援. と自己表現の選択に向けた、状態の変化を体験. や指導の足掛かりにすることを目的とする。. する活動の有意性. − 61 −.

(3) 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第25巻(2016) 2.先行研究に対する見解. 援や指導される点であると考えられる。これらの. 本研究では、先行研究で述べられた支援のポイ. ことより、粘土場における人的環境は、活動にお. ントが包括されている前嶋英輝の「粘土場」の. ける環境を構成する存在の一つとしての役割と、. 研究及びそれに伴う実践に注目した。「幼児造形. 環境を維持し活用するための役割の、二種類の役. 教育のための粘土場による実践」(2007)による. 割を担っていることが推察された。. と、前嶋は 10 年間に及ぶ粘土遊び教室の経験か. 粘土場の環境とそれによる実践がもたらした成. ら、子どもの粘土遊びへの意欲や集中力、大量の. 果として、生育環境の改善、粘土造形に特化した. 粘土への興味を読み取り、砂場のように存在する. 空間による安心感の付与が挙げられている。また、. 粘土場の価値を見出した。そして、2007 年6月. 粘土場による活動が幼児にもたらした効果につい. に岡山県の高梁中央保育園にて、常時使用可能な. て、集中力や対人関係の能力向上、全身で遊べた. 土粘土 500kg、 粘土槽に 200kg の土粘土を用意し、. こと、協力して遊べたこと、幼児の量感の意識に. 幼児が裸足になって一年中自由に大量の粘土を用. よる動勢の表現や身体性に基づく量的な空間認識. いて遊ぶことができる「粘土場」を開設した。. の獲得などが挙げられている。さらに、これらの. 先述した研究は、「内触覚性を伴った造形活動. 結果を先行研究より裏付けし、粘土場の価値を確. ができるための子どもたち自身のプロジェクトと. 固たるものにした。この研究以降にも粘土場に関. して、粘土遊びを実践し、粘土場の観察(ドキュ. 連する研究がなされ、幼児造形教育の発見や発展. メンテーション)をもとに、教育プログラムの開. に寄与した。. (2). 発を行うこと」 を目的とし、レッジョ・エミリア・. 身近に多量の粘土が存在する場を設け、日常的. アプローチを下敷きに、場を構成する目的や内容、. な運営や管理を行い、幼児の粘土による表現の多. 方針や観察方法のポイントを提示した。環境設定. 様性にも柔軟に対応することのできる活動を設定. については、物的環境と人的環境の二つについて. したことは、非常に画期的であったといえる。粘. 示されている。まず物的環境についてであるが、. 土を遊びの一つとして生活空間の中に取り入れる. 上記の粘土の設定に加え、粘土の状態を維持する. ことにより、ワークショップのような単発的で、. ための土練機、クレイカッターや土掻き、延ばし. 作品の完成が目標となりやすい活動ではなく、連. 棒、へらなどの道具も用意したとされる。人的環. 続性のある活動が行える。それにより、幼児の造. 境については、粘土場の実現と維持に向けた園長. 形活動のプロセスを見守ると同時に、内発的動機. の認識と保育者の管理業務を重要視し、保育者へ. づけにつながり、粘土への親しみや自己表現の広. の情報提供、情報共有、観察者や保育者のデジタ. がりを生むことができるのではないかと考えられ. ルコンテンツやノートなどによる活動記録、参観. る。また、経験や環境に起因した、粘土に対する. 日を活用した保護者への理解の促進を要点として. 抵抗感を払拭できる可能性がある。多量の粘土を. いる。また、環境を活用するため、活動中や活動. 用いる点と道具の使用について検討されていると. 以外の時間で土練機を使用し、使用可能な粘土の. 推察できる点は、1で挙げた支援や指導のポイン. サイクルをつくることも、支援者によってなされ. トと共通する点であることが再確認できる。. る管理業務のひとつとされていると推測できた。. 以上のことを踏まえ、先行研究で示された環境. 活動中は、幼児の主体的な表現を阻害せぬよう、. 設定や、その独自の環境の下で行われる活動の実. 言葉掛けを最小限に抑え、したい活動の支援を徹. 態を調査することで、物的環境を中心に、幼児の. 底したことが示されている。その際、プログラム. 発達に沿う造形活動の支援のポイントを具体化で. が用意されたとされ、粘土を対象とする身体遊び. きると考えた。. と、粘土を素材とする造形遊びの二種類の例を提 示している。また活動の最後に、湿度を保つため. 3.研究方法. の片付けや、子どもたち主体となった片付けを行. 先行研究を基に、多量の粘土を用いることので. うことも挙げられており、これも支援者により支. きる造形活動の場である「粘土場」を設置してい. − 62 −.

(4) 三浦 乃・小江 和樹:幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究(1) る岡山県高梁市高梁中央保育園にて、活動内容や. 値を変化させることもできる柔軟な場であること. 環境設定についての調査を行い、調査結果をまと. も分かった。. め考察した。. 粘土場活動の調査結果の詳細については、文末. 調査は、2014 年8月4日9時 30 分から 12 時. の表−1を参照する。. 30 分の5歳児クラスの粘土遊び、同日 13 時 30. 次に、先行研究でも述べられていた人的環境に. 分から 14 時 30 分に行われた粘土場に関する研修. ついてである。活動中の支援者の様子については、. 会、2014 年9月3日 13 時 30 分から約1時間行. 「多量の粘土で園児に自由に遊んでもらう」とい. われた4歳児クラスの粘土遊び、2014 年9月4. う目的の下、活動内容に関して保育者同士でその. 日9時 30 分から約1時間行われた3歳児クラス. 目的やそれに準じた支援の共通理解を図りながら. の粘土遊びへの参加、観察を通して行った。活動. 支援を行っていた。園児たちの主体的な活動、遊. には粘土場を設定した前嶋も参加した。活動中の. びの発展や連続性などを支援する様子が見られ. 様子はビデオカメラで記録した。. た。この詳細についても文末の表−1を参照する。 保育者に向けて調査期間中に行われた研修会で は、主に「粘土場の管理や実践に関する諸説明」. 4.調査結果と考察 (1) 調査結果. と「粘土場を用いた保育や教育」についての内容. まず、先行研究の実態と物的環境について述べ. が取り上げられた。「粘土場の管理や実践に関す. る。粘土場は先行研究で設定された基本的な物的. る諸説明」においては、粘土場の環境設定や活動. 環境を保ち、幼児の「一年中多量の粘土と自由に. の流れ、保管方法や土練機の使用方法について具. 遊べる場所」としての役割を十分に担っているも. 体的なポイントが示された。ここでは、粘土場の. のであった。調査中、活動で実際に見られた幼児. 活用に向けて、やはり保育者の管理や運営が重要. の姿は、先行研究で提言された粘土造形における. となることから、片付け方法や土練機の使い方な. 発達の姿と合致する点が多く、粘土場が幼児の自. どの環境維持に関する、支援の上での負荷をでき. 由な表現を支援していることは明白であった。そ. る限り軽減するためのポイントを紹介する場面も. れに加え、粘土場のその目的や他に類を見ない環. 見られた。記録に関して、先行研究ではデジタル. 境によって、イメージの広がりや、あらゆる表現. コンテンツと紙媒体による記録が設定されていた. や欲求を支えられていることによる安心感、知覚. が、状況によって差が生まれるため、記録の充実. や好奇心の刺激、それに伴う思考や行動の促進、. に向けた記録用紙の検討を行っていることも分. 集中力の持続、粘土と幼児の密接で良好な関係性. かった。物的環境と人的環境の二つの要素の充実. づくり、自発的で発展的な環境の意味や価値の利. によって環境設定が成り立つことや、それぞれの. 用などが生まれている様子が見られた。したがっ. 重要度の高さが改めて示唆された。「粘土場を用. て、幼児の発達の姿を受け止め、発達の中で培っ. いた保育や教育」についての研修では、研修会の. た能力を引き出し、促している様子が読み取れ、. 目的として、「簡易な準備片づけとともに粘土遊. この多量の粘土を用いる造形活動の有意性は確実. びをさらに活発に行うことの推進」、「子どものプ. なものとなった。. ロジェクトを考え継続することの推進」、「活動中. さらに、活動時間内の主体的な遊びの発展やそ. の定点による見守り」、「簡単な記録を行い、子ど. の連続性に重点を置かれていたことから、粘土場. もに見えるようにし、保育者自身が観察と記録を. における活動は、指導的な側面よりも保育的な活. 楽しむこと」の4点が設定された。内容について. 動としての側面が強く表れていた。同時に、粘土. は配布資料と合わせて、「環境による教育」、「多. の最初の配置などの物的環境のバリエーションを. 量の粘土を用いる活動の有用性」、「自己対話・他. 増やすことによって、活動の幅を広げられる可能. 者対話・物質形態・身体運動・道具使用・伝達行. 性も考えられ、幼児の主体性を損なわないかたち. 為の発展」、「粘土場を行った後の園児の絵の変. で導入や環境設定を変えることで、その意味や価. 化」、「マトリクス(3) の設定による園児の主体的. − 63 −.

(5) 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第25巻(2016) な環境利用」、「わかりたい気持ちを大切に、つく. 境の中に具体的な複数の固さの意図的な作り分け. りたい気持ちを、全身を使って自由に開放する. は行われていなかった。先行研究の支援のポイン. 場」、「遊びに始まって遊びに終わる粘土場活動」. トのように、意図的に固さを数種類作り分けてお. の7点などについて取り上げられた。これらは前. くことは、幼児の活動の幅を持たせ、体験を豊富. 嶋の研究を基にした内容が主となっていた。. にする意味では有用であるが、幼児の活動を無意. このような会を通して、保育者同士の粘土場に. 識に誘導する可能性もある。また、粘土の状態に. ついての共通理解を促し、粘土場の更なる活用の. よっては支援者の負担の大きい遊びに成り得る。. 推進と、活動中の人的環境の充実を図っていた。. よって、自由に遊ぶことを重視していた今回の活. これは先行研究でも重視された、設置する場の支. 動においては、時間のサイクルの中で自然に変化. 援者や保育者における粘土場への認識、粘土のサ. する固さを体験することに留まっていた。これは、. イクルや粘土場の状態維持などの物的環境の管理. 生活範囲内の特定の場所にこのような設定をして. や運営、情報共有、研究者との検討などによる保. いる環境ならではの体験となり、そこに十分な価. 育の共同、また、保護者への公開のための記録. 値があったといえる。このことから、粘土の固さ. などに向けた内容であると考えることが可能であ. を作り分けることに関しては、時間による状態変. る。. 化を楽しむことも、活動の変化を視野に入れた、. (2) 考察. 幼児が使用を選択できる意図的な設定も、どちら. まず、物的環境について述べる。. もそれぞれの効果や有用性が考えられるため、更. 先行研究とその実態を踏まえると、多量の粘土. なる検討の余地がある。. の価値は明確である。具体的な量についてである. 最後に道具の使用についてである、粘土の量が. が、調査時、使用可能な粘土はおよそ 800 ㎏用意. 多い場合は、粘土の切り分けなど、道具の使用は. されており、幼児は一人当たり 40 〜 80 ㎏の粘土. 必然となる。よって道具の使用に関しては、手だ. が使用できた。その結果、その量が発達の姿を支. けでは難しい操作を援助する目的で、その機能に. え、安心感を生み、発達の中で培った能力に働き. ついて発達の様子を見ながら教示し、その後の使. かけ、引き出し、自発的で発展性のある活動を支. 用については幼児の要求に応じて支援し、幼児が. えたといえる。また、それは幼児が全身で遊ぶた. 安心して活動に臨むために数には十分な余裕を持. めに不足の無い量であり、集中力を高め、持続さ. たせることが重要となる。発達の度合いによって. せ、一人の遊びや協同的な遊びへの発展、流動的. は、道具の使用を制限することも有用であるとい. な活動の発展、様々な表現や造形物の具現化に確. える。. 実に対応していた。実際に達成感を味わう様子も. 次に、人的環境について述べる。. 見られたことからは、個々の欲求解消につながっ. まず、活動中の支援者の様子についてである。. たことも考えられる。これらのことを考慮する. 幼児の主体性を尊重するため、安全に留意した上. と、幼児一人に対して、少なくとも幼児の平均体. で、指導的な言葉掛けや誘導は行われなかったこ. (4). 重. とほぼ同じ量である 20kg から、その2倍の. とはどの支援者にも共通していた。その中で、複. 40kg 以上の粘土が必要となるといえる。. 数の支援者で定点にいる役割と活動の中に参加す. 次に、物的環境の具体的な設定についてである。. る役割が分担されていたり、保育者が定点にいる. 多量の土粘土を継続的に用いる活動では、粘土槽. 状態と参加する状態を使い分けていたりする様子. や土練機などを使って定期的に粘土を適した固さ. が見られた。保育者が定点の人的環境として存在. にする整備は不可欠であり、それには、そのよう. することの意義として、積極的な介入に比べて、. な設備の充実と連続的な管理が求められる。それ. 活動を見守りつつ幼児の自発的な活動を尊重で. ゆえ、このような活動を日常的に行う場合は、そ. き、主体性をより高めることができることが考え. れに伴う設備は確実に設置する必要がある。粘土. られる。一方で、支援者が活動に参加し、幼児と. の固さの設定に関しては、調査中の活動では、環. ともに楽しむ活動も、調査中に造形的活動の初期. − 64 −.

(6) 三浦 乃・小江 和樹:幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究(1) 段階にいる幼児が他者の模倣によって自分の造形. 難しくない。よって、調査中の研修会でも管理に. 表現を試行錯誤する様子があったことや、粘土に. まつわるポイントの提示があったように、多量の. 対して距離を置きやすい幼児が保育者とともに粘. 粘土を生活空間に配置する場合は、支援者が活発. 土遊びを楽しむことができる様子があったことか. に多量の粘土を扱う場を利用しやすく、かつ支援. ら、その有用性がうかがえる。粘土場では、保育. 者優位の利用にならず、活動の目的に応じた物的. 者も活動に実際に参加し、人的環境として構成さ. 環境の整備のポイントを提示する必要がある。支. れていたため、活動中の幼児は、他の幼児は勿論、. 援者によって活動や管理に違いが生じやすいた. 信頼関係の築けている保育者とも積極的にコミュ. め、条件付けの行える事柄については可能な限り. ニケーションをとり、盛んにフィードバックを求. 普遍的な条件を設定し、それを基に情報共有や検. めたり、そこから発想を得たりする姿もあった。. 討を行うことで、粘土場のより効果的な活用や支. 支援者の影響を強く受けたり、支援者主体の活動. 援に役立てることができると考えられる。. が誘発される可能性も孕んでいるためその在り方. 以上のことから、幼児の粘土造形の効果的な支. には十分な検討が必要だが、幼児の主体性を守り. 援を行う際、有用性があると考えられる環境設定. ながら支援者が一緒に参加して楽しむことで、幼. については、次のようにポイントを具体化し、新. 児がさらに安心して自分の欲求を発散したり、表. たな課題を焦点化することができる。. 現を楽しんだり、もっている力を発揮したりする. 物的環境については、以下の4点が挙げられる。. ことができ、環境を充実させることにつながる可. ① 幼児一人当たり 20kg 〜 40kg 以上の粘土を. 能性は十分に考えられる。この人的環境の二通り の在り方にはそれぞれの利点があるため、明確な. 扱える環境設定 ② 多量の粘土の継続的な使用に際する、粘土の. 支援目的をもってこれらの支援方法を考慮し、人 的環境の在り方を追求することが重要であるとい. 状態維持のための設備 ③ 時間の変化による粘土の状態変化の利用や、. える。. 意図的な固さの作りわけによる、粘土の様々な. 物的環境と人的環境は、ともに環境を構成する. 状態を体験する活動に対応できる環境設定. 重要な要素であることから、その関連性の強さは. ④ 多量の粘土を扱うための十分な道具の用意. 想像に容易い。物的環境の初期設定と活動の導入. と、その効果的な利用のための教示、選択でき. は支援者によって成される。支援者が粘土の設置. る道具の提供方法の設定. や言葉掛けなどをシンプルに設定する場合と、調. 人的環境、特に支援者の支援方法については定. 査中見られたように意図的に粘土の配置や形を設. 義付けなどが難しいため、活動の目的に応じた支. 定する場合では、導入やその後の活動に違いが生. 援者の在り方のポイントをさらに具体化すること. まれると推測できる。したがって、物的環境はそ. が今後の課題と成り得る。. れを利用する人的環境によって効果が変化する可. 物的環境と人的環境については、以下の3点が. 能性があり、それにより、導入や活動の幅を広げ、. 挙げられる。. 活動の目的に合わせた支援の充実を図ることがで. ① 目的に基づいた支援者による物的環境の効果. きると考えることは妥当である。. 的な利用方法の検討. また、粘土場の管理や運営、活動記録などの環. ② 物的環境を設定、管理、運営する際の普遍的. 境づくりにおいて、場の維持や有意義な活動が、 支援者の管理や情報共有によって成り立つことは. で簡潔なポイントの明確化 ③ 活動記録の充実や、それによる活動の検討や. 明白であった。このような造形活動では、幼児の. 改善. 流動的な造形の様子が如実に現れやすいため、幼. 先述したように、多量の粘土を用いることがで. 児の造形活動において重要となる過程を見守るた. きる環境は、指導的な側面よりも保育的な環境と. めには、活動の記録も重要である。しかし、それ. しての側面が比較的強くみられる。同時に、物的. が必ずしも簡易であるとは言い難い現状は想像に. 環境の変化により活動の幅を広げることも可能. − 65 −.

(7) 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第25巻(2016) で、幼児の主体性を尊重しながら導入や環境設定. きな影響を及ぼす重要な存在でありながら、その. を変えることで、その意味や価値を変化させるこ. 構成要素は複雑で、定義付けが難しい。したがっ. とのできる柔軟性の高い場である。また、調査中. て今後の研究では、人的環境のポイントの具体化. の幼児の姿から、このような環境を活用した、幼. に向け更なる追究を行うことが課題となる。併せ. 稚園指導要領で定められている「生きる力」の基. て、幼児の実態把握や伸ばしたい力に応じた目標. 礎となる心情、意欲、態度、それにつながる「健. 設定、それに伴う環境設定の効果的な活用方法の. 康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」、「表現」の5. 検討を視野に入れ、多量の粘土を用いる造形活動. つの領域に関連する幼児それぞれの発達の実態把. における人的支援の在り方を探究したい。. 握や、発達の度合いや個性に沿った発達の支援が 行える可能性が示唆された。このような環境設定. 謝辞. は、幼稚園教育要領において幼稚園教育が「環境. 本研究の調査にあたり、岡山県吉備国際大学文. を通して行うものである」という点にも関連して. 化財学部アニメーション文化学科の前嶋英輝先. いるといえる。したがって、造形活動の目標設定. 生、ならびに、岡山県高梁市高梁中央保育園の皆. と今回見出した環境設定のポイントを相互作用さ. 様にご協力をいただきました。貴重なお時間を割. せ、その充実を図ることで、さらに支援の幅が広. いていただき、心より感謝致します。. がり、造形活動が発展するといえる。 注 (1)三浦乃(2015) ,粘土を用いた幼児の造形活. 5.おわりに 今回の研究では、幼児の多様な発達や表現の姿. 動の発達に関する研究−土粘土による表現に. に沿い、効果的な支援を行うことのできる粘土造. 着目して− 鹿児島大学大学院教育学研究科. 形の環境設定について、実際に多量の粘土を用い. 修士論文(未公刊). た環境設定及び活動を行っている「粘土場」の実. (2)前嶋英輝「幼児造形教育のための粘土場に. 際の環境設定や活動内容について調査を行い、そ. よる実践」順正短期大学研究紀要第 36 号,. の支援に関する具体的なポイントを見出し、支援. 2007,pp.71-77 p.71. や指導の足掛かりにすることを目的とした。その. (3)マトリクスとは、粘土場においては、最初. 結果、多量の粘土の使用ならではの活動の利点や. の粘土の位置のことを指している。配布資料. 成果を検証するとともに、その価値を明確にし、. では、マトリクスと声かけをあわせて、幼児. 物的環境を中心とした環境設定におけるポイント. を感覚的、または造形的関わりに変化させる. を明らかにすることができた。また、このような. ことができるということが示されている。ま. 環境設定を様々な視点から用いることによる、幼. た、様々なマトリクスによる影響の差が追究. 児の発達に沿う支援に向けた、新たな支援方法の. され、実際にそれによる活動の傾向の違いも. 提案の可能性を見出すこともできた。. 明らかとなった。基本的にはシンプルなマト. 調査時の聞き取りより、他の地域においても粘. リクスと導入から生まれるイメージが試行錯. 土場に類する活動が行われていることが分かり、. 誤とともに造形思考につながると考えられて. このような活動の価値に注目が集まっていること. いる。. が読み取れた。このことからも、このような活動. (4) 「厚生労働省. の利点を活かした粘土造形の活動の提案は、幼児. http://www.mhlw.go.jp/index.shtml」,. の造形活動やそれによる発達支援のさらなる発展. 「厚生労働省:21 世紀出生児縦断調査(特別. に寄与できることが推察される。. 報告)結果の概要. しかしながら、人的環境や支援者による支援の. http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/. 在り方のポイントの具体化には更なる研究の余地 がある。環境設定における人的環境は、活動に大. − 66 −. hw/syusseiji/tokubetsu/index.html」 (2015 年 9 月 11 日).

(8) 三浦 乃・小江 和樹:幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究(1). 参考文献 神谷睦代「幼児の粘土造形−基礎的な技能の習得 及び題材(テーマ)についての実践と検証−」 美術科教育学会誌第 30 号,2009. 大学美術指導法研究会 編『新学習指導要領によ る図画工作科指導法 理論と実践』(日本文教 出版株式会社,1999) 前嶋英輝「幼児造形教育のための粘土場による 実践」順正短期大学研究紀要第 36 号,2007, pp.71-77 文部科学省『幼稚園教育要領解説』.(株式会社フ レーベル館,2008). − 67 −.

(9) 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要 第25巻(2016). 

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(13) 三浦 乃・小江 和樹:幼児の粘土を用いた造形活動の支援についての研究(1).  Üňģ-ůD@EŃ&)#§€#% 0 ı¨/Æ.sEź#@ ı¨Eˆ@ †ĸ#@-, ı¨+ه/Şs+/ ůD@EŸD'' &ť3-,.Ġ Å#@ ÜňEŸD&)#@ Aÿº &# ďģ*&# Ò.Ņï/ §€.>Aµ-SeVc(@Ƃ§€ šBAĨÍ/µ* óĴģ.yĽĻ= "/o/yĽĻ<“# ƃ.ĠÅ. µ-ŧßÜEŸDAϐ.-&#  /ϐ0=0@   /ı¨-?*0 A+A   ŢÐģ-ϐEŃ&)#§€#%0. ó‰0هíu A#;/zs/ı¨ Eå% CC-</Eu&#@ ' AŃē"/</EþF$@ A-, )# "/ÒŅï/§€µ-2+ '/_PgZƂĬƃE'A+.ĥāE ½; "B.rÁŖĕ=I^gNĕEŢ Ð)# B<&ť3+ñŤŃ *ŃDBA+<&# óĴģ. % ?<§€  nA+/*Aµ -ŢÐĕ+-@ Ú}E‹đ "BE „Ě‘ AĵŦ+¾Ų/ŢÐĕ/¼ß. ŧßÜEŸDAϐ+-&)# / ϐ/Ų.0 yĽĻĩýģ.ń. _PgZu@EàqÿºŇ?B#  /JbO/§€0"/Ġŧ/¹?. ¨ĹăEĝ#Ų.ˆ@‡Aµ,*ê;)8#; §€/Œ*0Û¥ ģ.vD->.)A+/+* &#  §€#%0ŷÈ.ųj)ϐEþ F*# B0 ı¨ť3"/</5/ łŸ=ÛĄ.Ž) ´ū/ı¨Ev +*A+ě±.<ř£)A +ĺ?B# ´ū/ı¨E¸.vA +ě±.ŸĢ=»ÖÜ@ ¸¶ Öéĭ)?B "/Ķù íu=I^ gNEΆ ĄĊEŊĐ#@ Ú} E?.ŀ?8!#@ A+* A B0ı¨­-?*0/ÿº*A  ı¨­*/ϐ*0 oĻ+/ĩýģL\`UKgMae/ÿº<ʼnÀ*# /JbO*0 ŃĦī.<Ň?B#Ê ŭ€-?*0/ŁĔĠĜģ-ƒť3 Ň?B# "/Ų ŢÐĕ.ž§ €/ų¤.) ŢÐÛ¥=ůD@ð/ Ç=Ũ.>@hñģ.oĻ+śŵŮ )8§€)< §€²*L\ `UKgMaeE+@ óĴģ.'AĎ .9F-*Ń †øi&#ŢÐĕE š)ť4+*)# ´ū/ı¨ +"/›¯Ø0 ŏŃŬŒ-?ŢÐE ѧ€#%.+&)ŷÈ.»Ö*A </*@ Ġŧ=ÿ

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参照

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