第7回群馬臨床ウイルス研究会
日 時:平成 19 年 11月 8日 (木) 19 : 00∼ 場 所:マーキュリーホテル 代表世話人:石川 治 (群馬大院・医・皮膚病態学) 当番世話人:石川 治 (群馬大院・医・皮膚病態学) 1.子宮頸癌検診システムにおける自己採取型 HPV-DNA検査の試み 鹿沼 達哉 (群馬大医・附属病院・腫瘍センター) 峯岸 敬 (群馬大院・医・生殖再生 化学) 杉原 志朗,関本 弘 (群馬県 康づくり財団) 家坂 利清,井上 浩 (群馬県産婦人科医会・がん対策部会) 群馬県産婦人科医会と 康づくり財団では, なかなか 検診率の上がらない子宮頸がん検診の受診率向上を目指 して, 平成 17年より自己採取によるハイリスク HPV-DNA 検査の導入について検討を重ね, 簡 性および安 全性を確保し, いたずらに不安をあおらないような対応 ができる体制を作った. 的機関が行う自己検診には県 の期待も大きく, 産婦人科医がフォローアップに全面的 に協力するとともに, HPV-DNA 自己テストを行うこと の有用性についても科学的に検証するシステムを目指し て平成 18年に開始された. HPV-DNA テストを従来の 細胞診による一次スクリーニングにとって替わるものと 位置づけるのか, あくまで細胞診前の検査と えるのか は検討の余地があるが, 細胞診によるスクリーニング受 診率を上げるという目的を達成するためには, 検診と同 時に行う方法では解決策にならないのではないかと え ている. インターネットによる情報収集の機会が若い女 性では高いであろうと予測し, 子宮頸癌−検診−HPV− 自己検診などで, 検索すると, 子宮頸癌を える市民の 会や群馬県 康づくり財団の HPにアクセスでき, 自己 検査キットの入手方法を知ることができるようになって いる. HPV-DNA 自己テストで陽性と判定された方への 結果送付時に, 施設検診を受けるようにお勧めする手紙 と, 結果を 康づくり財団で管理させていただき, 2年後 に陰性化したかどうかの調査結果を医療施設からフィー ドバックしていただくことへの同意書を兼ねた報告書を 送付している. 今後は高 の保 授業などを通じて性 渉と HPV感染子宮頸がんについて啓発活動を行って行 きたいと えている. 数は少ないが, 現在までのフォ ローアップ状況をお示しする.HPVワクチンの開発が進 み本邦にも導入間近であるが, 実効が現れるのはまだま だ先のことであり, 現在のところ子宮頸癌による死亡率 低下のためには, 検診率の向上が第一と えている. 2.パルボウイルスB19の先行感染を認めた特発性血小 板減少性紫斑病の一例 田原 研一,馬渡 桃子,内海 英貴 半田 寛, 島 孝文,塚本 憲 野島 美久(群馬大院・医・生体統御内科学) 症例は 38歳 女性. 2007年 7月下旬頃に次女が 40℃ 台の発熱を認め, その後四肢と両頰部に紅斑が出現した. 8月下旬頃に同様のエピソード が 長 男 に も 出 現 し た. 2007年 8月 15日より本人に 38℃台の発熱が出現. 市販 の感冒薬にて解熱するも全身 怠感は持続した. 8月 23 日頃より下肢を中心とした点状出血斑が出現. さらに 8 月 26日に両手指, 肘, 膝, 足関節痛や腰痛が出現したた め, 8月 27日より近医受診. 血液検査にて血小板 0.5万/ ulと低下を認め, 精査・加療目的に同日当科に緊急入院 となった. 血液検査, 骨髄検査などの各種検査や臨床経 過より ITPと診断. 入院時より, PSL 65mg/day (1 mg/ kg/day) の内服を開始した.現病歴や家族歴から,パルボ ウイルス B19 (PVB19) の先行感染が疑われ血液検査を 実施したところ, PVB19 IgM 抗体や PVB19 DNA-PCR 定量が陽性であった. 低下していた血小板は PSL に良く 反応し, 内服開始 day 8の血液検査では 29.7万/ulと正 常域までに回復し, 四肢や口腔内の点状出血斑も消失し た. また, 入院時に認めた全身関節痛, 下肢の紅斑や掻痒 感も消失した. PSL 65mg/dayの内服を 2週間継続し, そ の後 5日間隔で 10mg ずつ漸減したが, 血小板は正常域 を維持した. PSL の投与量が 30mg/dayまで漸減された 時点で退院となった. 現在も外来通院中である. 小児の 急性 ITPにおける PVB19 の合併感染は高率であるとい う報告もあり, 成人の場合も発症形式が急性 ITPが疑わ 101 Kitakanto Med J 2008;58:101∼102れた際には PVB19 感染を 慮する必要があると えら れた.
3.爪 部 Bowen病 に お け る human papillomavirus 感 染の検討 清水 晶,田村 敦志,安部万理絵 茂木精一郎,永井 弥生,石川 治 (群馬大院・医・皮膚病態学) 中谷 陽子,星野 洪郎 (群馬大院・医・ 子予防医学) 上里 博 (琉球大学皮膚科)
爪部 Bowen病は ま れ で あ り human papillomavirus (HPV) との関連を検討した報告は少ない. 当科で経験し た爪部 Bowen病 5例のウイルス学的, 組織学的, 臨床的 検討を行った. 切除標本から DNA を抽出し, L1領域の コンセンサスプライマーで PCR を行った. 5例中 3例で バンドが検出された. 増幅した 250塩基対の DNA をク ローニングしシークエンスを確認したところ, ハイリス ク 型 HPVに 属 す る HPV56が 検 出 さ れ た. 2例 に は silent point mutation があり, 残りの 1例は HPV56の consensus sequenceと同一であった. さらに HPV56 E 6 領域の特異的なプライマーを用いて PCR を行い, 配列 を 確 認 し た と こ ろ 同 じ 3例 で HPV56が 検 出 さ れ た. Silent point mutation を認めた 2例と残りの 1例は, E 6 領域の配列比較により,別の HPV 56 variantグループに 属し, またこの 2つのグループは系統樹では比較的遠い グループに 類されることが かった. HPV DNA の組 織学的局在については in situ hybridization で検討し,ウ イ ル ス DNA を ケ ラ チ ノ サ イ ト の 核 内 で 検 出 し た. HPV56陽性の 3例とも爪甲色素線条を呈しており,爪母 における HPV56感染を示唆していた. また, HPV56陰 性の 2例は爪甲隆起と爪囲の潰瘍を呈しており, それぞ れ爪床, 爪郭の病変と思われた. ウイルス学的な系統樹 解析により比較的遠い HPV56 variantグループに 類 される 2グループの HPV56がいずれも爪甲色素線条と い う 共 通 の 臨 床 像 を 有 す る 病 変 を 呈 し た こ と か ら, HPV56は爪母上皮に感染して発癌性を現すウイルスで ある可能性が示唆された.