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機能性ナノ粒子の液相精密合成に基づく機能性光学薄膜の超音波式ミスト調製

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機能性ナノ粒子の液相精密合成に基づく機能性光学

薄膜の超音波式ミスト調製

著者

西 康孝

学位授与機関

Tohoku University

(2)

士 学 位 論 文

機能性ナノ粒子の液相精密合成に基づく機能性光

学薄膜の超音波式ミスト調製

東北大学大学院環境科学研究科

先端環境創成学専攻

西 康孝

令和2年度

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i 目 次 1 章 諸 論 1.1 湿 式 成 膜 1.2 ナ ノ 粒 子 成 膜 装 置 1.3 目 的 1.4 本 論 文 の 構 成 第 2 章 酸 化 物 半 導 体 粒 子 を 用 い た ミ ス ト 塗 布 2.1 は じ め に 2.2 実 験 方 法 2.2.1 試 薬 2.2.2 合 成 手 順 2.2.3 キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 2.3 結 果 と 考 察 2.3.1 粒 子 サ イ ズ 、 形 態 お よ び 結 晶 構 造 2.3.1.1 LDH含 有 の 抑 制 2.3.1.2 NaOMeに よ る 粒 子 径 制 御 2.3.2 成 膜 用 イ ン ク 作 製 2.3.2.1 水 分 散 イ ン ク の 作 製 2.3.2.2 超 音 波 に よ る イ ン ク の ミ ス ト 化 2.3.3 成 膜 結 果 2.3.3.1 混 合 膜 の 作 製 2.3.3.2 均 一 性 2.3.3.3 付 着 率 2.3.4 膜 物 性 2.3.4.1 電 気 伝 導 度 2.3.4.2 光 学 特 性 2.3.4.3 電 子 物 性 2.3.4.4

フ レ キ シ ブ ル 耐 性

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ii 2.4 本 章 の ま と め 第 3 章 KTaO3 粒 子 を 用 い た ミ ス ト 塗 布 3.1 は じ め に 3.2 実 験 方 法 3.2.1 試 薬 3.2.2 合 成 手 順 3.2.3 キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 3.3 結 果 と 考 察 3.3.1 粒 子 サ イ ズ 、 形 態 お よ び 結 晶 構 造 3.3.1.1 ナ ノ サ イ ズ 化 3.3.2 成 膜 用 イ ン ク 作 製 3.3.2.1 シ ン グ ル サ イ ズ ナ ノ 粒 子 の 分 散 3.3.2.2 ミ ス ト 化 用 分 散 液 の 作 製 3.3.3 成 膜 結 果 3.3.3.1 石 英 ガ ラ ス 基 板 へ の 成 膜 3.3.3.2 曲 面 基 板 へ の 成 膜 3.3.3.3 成 膜 速 度 3.3.4 膜 物 性 3.3.4.1 光 学 特 性 3.3.4.2 フ レ キ シ ブ ル 耐 性 3.4 本 章 の ま と め 第 4 章 ミ ス ト 塗 布 装 置 の 開 発 4.1 は じ め に 4.2 実 験 方 法 4.2.1 装 置 構 成 4.2.2 成 膜 手 順

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iii 4.2.3 キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 4.3 結 果 と 考 察 4.3.1 ナ ノ 粒 子 の ミ ス ト 化 4.3.1.1 供 給 量 の 増 加 4.3.1.2 分 散 性 維 持 機 構 4.3.2 ナ ノ 粒 子 含 有 ミ ス ト の 解 析 4.3.2.1 光 学 顕 微 鏡 に よ る ナ ノ 粒 子 分 析 4.3.2.2 SAXS に よ る ナ ノ 粒 子 分 析 4.3.3 成 膜 に よ る 装 置 評 価 結 果 4.3.3.1 成 膜 均 一 性 4.3.3.2 ミ ス ト 付 着 率 4.3.3.3 成 膜 再 現 性 4.3.4 膜 物 性 4.3.4.1 電 気 伝 導 性 4.3.4.2 光 学 特 性 4.3.4.3 フ レ キ シ ブ ル 耐 性 4.4 本 章 の ま と め 第 5 章 総 括 5.1 本 研 究 の ま と め 5.2 今 後 の 展 望

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1 章

緒論

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2 1.1 湿式成膜 湿式成膜法は、液体原料を用いた成膜方法を指す。低環境負荷かつ低コストな製 造プロセスとして、大気条件下で TCO、金属電極、薄膜を得ることができる。最も 一般的な成膜手法としてはディップコーティング[1,2,3]などが挙げられ、成膜に用 いる原料溶液を目的とする成膜基材に接触させ、溶媒を揮発させることによって薄 膜を形成する。CVD 法など成膜基材上で結晶成長させる方法が多く報告されている。 これらは加熱した基材に 原材料を噴きつけることによって、分解を伴う膜成長を行 っている。このため、基板への負荷が高く、場合によってはガラスなどの高融点基 材においても負荷を与える懸念がある。熱による負荷を避けるための方法としては プラズマを用いることも考えられるが、 前述したとおり大気圧においては平均自由 工程が短くなるためプラズマの持つエネルギ ー小さくなる。またそれらを回避する ための手段として熱プラズマを用いる方法もあるが、熱 CVD 同様に基材への負荷が 懸念点となる。すなわち、基材表面での表面拡散や結晶成長を伴わない成膜方法が 最も熱負荷が小さく、Roll to Roll 成膜においては目標とする項目であるといえる。 1.2 ナノ粒子成膜装置 ナノ粒子の成膜装置は、インク化したナノ粒子原料[4]を用いることで機能性薄膜 の作製を行う。湿式成膜法の一部であり、プリンタブルエレクトロニクスに用いる 製造装置を使用することが可能である。近年、インクジェット[5,6,7]装置による描画 成膜が報告されている。ノズルに用いる溶液の表面張力を調整する必要があること から、インク化に際してはエチレングリコールなどの非水系溶媒を用いることが 多 い。しかしながら、有機系デバイスの作製においては下層を溶解 ・侵食するこれら の溶媒は使用が難しく、水系の成膜方法を開発することが望ましい。近年では水系 溶液に対するインクジェット成膜も行われているが、添加剤の調製によって粘性を 上げているものが多く、これらが不純物となることにより膜物性を低下させる。 す なわち不純物を含まない水分散インクにおいては成膜手法が限られており、成膜装 置の開発が望まれる。水分散インクの利用方法 としては、吹き付け方法としてはミ スト液滴中にナノ粒子を含有させ噴きつける方法も提案されている[8]。しかしなが ら揮発性の高いミストを用いることは表面に凹凸を生じさせやすく、均一膜を作製 する目的においては使用がされていない。

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3 1.3 目的 前述した通り、真空成膜法は、成膜速度・コストパフォーマンスの面で優れた製 造方法である。 そこで本研究では、 機能性薄膜の作製に必要なナノ粒子の作製と成膜方法を確立 することを目的とした。本目的を達成するため、透明導電膜である GZO ナノ粒子の 成膜を行った(第 2 章)。続いて光学薄膜の成膜を行った(第 3 章)。次にこれらの 成膜方法を用い、成膜装置を見据えた開発を行った(第 4 章)。得られた薄膜を評価 し、本成膜法がデバイス作製に必要な要素を明らかにした。 1.4 本論文の構成 本論文の構成を以下に示す。 第 1 章:緒論 第 1 章では本論文の背景と目的について述べた。 第 2 章:酸化物半導体粒子を用いたミスト塗布 第 2 章では透明導電膜として最適な GZO 粒子を用いて、ミストを用いた薄膜作 製を行った。粒子径を制御した GZO 粒子を用いることで、透明導電膜の緻密化を 行った。 第 3 章:KTaO3粒子を用いたミスト塗布 第 3 章では光学薄膜として最適な GZO 粒子を用いて、ミストを用いた薄膜作製 を行った。 第 4 章:ミスト塗布装置の開発 第 4 章ではミスト成膜法のスケールアップを行い、装置開発 における要素技術を 研究した。 第 5 章:総括 第 5 章では、本論文の総括とした。

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参考文献

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[8] Qin, G.; Watanabe, A.; Surface Texturing of TiO2 Film by Mist Deposition of TiO2

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2 章

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6 2.1 はじめに Ga doped ZnO(GZO) 粒 子 に つ い て は 共 沈 法 に よ る 報 告 が な さ れ て い る 。 こ れ は GZO の前駆体を沈澱させ、焼成により不定形および針状粒子を得るものであるが、 薄膜合成の報告はない。 本章ではソルボサーマル合成[1.2.3.4]による粒子サイズを 制御した GZO の合成、および粒子サイズの異なる GZO 粒子を用いた透明導電膜の 緻密化を行った。粒子サイズを制御するための方法として、塩基に NaOMe を混合さ せ合成系における OH-および H 2O の精密制御を検討した。合成した GZO 粒子を水 に分散させ、分散液のミストを混合させることによって、粒子を混合させた。 2.2 実験方法 2.2.1 用いた試薬 合成に用いた試薬を Table 1 に示す。 Table 1 使用した試薬 試薬 化学式 製造会社 塩化亜鉛 ZnCl2 富士フイルム和光純薬工業 塩化ガリウム GaCl3 富士フイルム和光純薬工業 水酸化ナトリウム NaOH 富士フイルム和光純薬工業 ナトリウムメトキシド NaOMe 富士フイルム和光純薬工業 2.2.2 合成手順 合成スキームを Fig. 1 に示す。塩化亜鉛(ZnCl2)と塩化ガリウム(GaCl3)を超脱水メ タノールに溶解させた。テフロン製容器中にて 0.60M の ZnCl2、0.60M の GaCl3を混 合して 10 分間撹拌し、その溶液に塩基(NaOH, NaOMe)を加え 10 分間撹拌した。こ の溶液を 190 ºC で 24 時間熱処理した。反応後オートクレーブを冷水につけて急冷 し、中身を遠沈管に取り出してイオン交換水を加え、18000 rpm で 60 分間遠心洗浄 を 2 回繰り返した、エタノールを加えて 18000 rpm で 60 分間遠心洗浄を 2 回繰り返 した。

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7

Fig. 1 GZO の合成手順

2.2.3 キャラクタリゼーション

結晶構造は粉末 X 線回折測定 (Rigaku Ultima IV) により帰属、解析した。X 線源

は CuKα 線とし、5°/min にて 2θ = 5 ~ 100°の範囲を一回積算走査した。粒子形態は、

透過型電子顕微鏡 ( Hitachi H-7650) により観察した。TEM 観察では、エタノール中

で超音波処理を行った試料分散液を試料台に滴下し、乾燥したものを測定に用いた。 GZO 粒子の平均粒径は、TEM 像の粒子についてその粒径を測定し、それらを平 均、誤差を計算することにより求めた。 ナノ粒子分散液は超音波ホモジナイザによ

って分散させ、粒度分布計(nano Partica SZ-100)を用いた。膜の形態は、FE-SEM 観

察(JSM-7800F) により観察した。試料をカーボンテープ で観察台に固定し、必要に 応じてオスミウム(Os)をスパッタコーティングした。断面観察には Si ウェハーへ の成膜試料を用い、熱酸化膜に UV オゾン処理を行うことで、成膜時には親水化処 理を行った。膜の電気伝導度は、4 端子測定法(ACCENT HL-5500)、透過率は分光 光度計(U-4100)を用いた。光学特性より求めた膜の吸収係数より、光学的バンド ギャップの測定を行った。

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8 2.3 結果と考察 2.3.1 粒子サイズ、形態および結晶構造 2.3.1.1 塩酸添加量と粒径の関係 塩基として NaOH を選択し合成温度 200°C において得られた GZO 粒子の XRD 測定を行った。すべての合成条件において ZnO の回折が確認できるが、合成時間 1 時間のものにおいては、2θ= 11.6、23.3、および 38.8°にて LDH: [Zn2+ 1-xGa3+x(OH)2]x+ [A n-x/n・yH2O]x- が確認された。また、合成時間が長くなるにつれて、粒子の形状は不 定形から楕円形に変化している。オストワルト熟成により、ドーパントである Ga 濃 度は減少し、粒子の導電率は低下するものと考えられる。以上の結果より、GZO 粒 子を合成することは困難であると考えられる。 2.3.1.2 NaOMe による粒子径制御 前項より透明導電膜として粒子を用いるためには LDH の混入を防ぐこととオス トワルト熟成を抑制させ Ga3+のドーピング濃度を向上させることが必要であるそこ

で、NaOH と NaOMe ( R= [NaOH]/ ( [NaOH]+[NaOMe] ))の混合塩基を用いることによ

り、合成系における H2O の精密制御を試みた。 R=0.2 の条件においては、結晶粒系 13nm の不定形 GZO 粒子が得られており、ICP 測定により Ga3+濃度は 2.8mol.%と十分なドーピング量を確認している。R=0.8 の条 件で得られた粒子については 26nm の楕円形が得られた。以上の結果より、R=0.2, R=0.8 の条件で得られた粒子を NP0.2, NP0.8としこれらの粒子を透明導電膜として用 いることにした。 2.3.2 成膜用インク作製 2.3.2.1 水分散インクの作製 合成した GZO ナノ粒子(NP0.2, NP0.8 )をホモジナイザにて純水に分散させた。 分散液の濃度は 3wt.%とし、分散時間を 180 分とした。分散直後は粒子が各々の粒 子が分散しているが、60 分後には凝集していることが示唆されている。よって独自

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9 に分散している溶液を混合させることは成膜時に凝集する可能性があり、膜密度を 低下させる懸念がある。よって最小限の混合で薄膜形成を行うために、各分散液 から原料を別に供給し、基板表面での混合を行うことが望ましいと考えられる。 2.3.2.2 超音波によるインクのミスト化 合成した GZO ナノ粒子(NP0.2, NP0.8 )を各々ホモジナイザにて純水に分散させ た。分散液の濃度は 3wt.%とし、分散時間を 180 分とした。 1.6MHz の超音波にて分散液を霧化し、石英ガラス基板に GZO 粒子膜を作製し た。混合させた条件(mixture)は、NP0.2, NP0.8を各々の霧化ユニットに 3wt.%の分 散液を 50mL ずつ入れた。NP0.2, NP0.8 の条件では、3wt.%の分散液を 50mL ずつ、2 つの霧化器に入れ成膜を行った。Mixture の条件では、NP0.2 50mL, NP0.8 50mL を各 霧化器に入れ、粒子単独で成膜した条件と合わせた。各霧化器には N2ガスを 5L/min ずつ導入し、基板に 10L/min の流量でミストを吹き付けた。 すべての成膜条件において膜厚は成膜時間に比例して増加している。すなわち、導 入する搬送ガスの流量を一定にしている場合、膜厚は成膜時間によって制御するこ とが可能である。 2.3.3 成膜結果 本章では GZO ナノ粒子膜の物性を示す。成膜後の GZO 膜は、室温で自然乾燥し た後、還元雰囲気にて 60 分間焼成した。焼成雰囲気は Ar-H2(4%)で行い、昇温速度 と徐冷速度は、すべての温度において同条件とした。 2.3.3.1 混合膜の作製 前項の結果より、N2流量の制御により基板に付着する粒子量の制御が可能であり、 総流速が一定であれば膜厚は成膜時間により制御可能である。そこで予めマイクロ シートガラス上に堆積させたナノ粒子の重量を測り、NP0.2, NP0.8 の流速比を変える ことで配合比を決定した後 300nm の膜厚となるよう成膜時間を制御した。 膜の比抵抗は NP0.2, NP0.8 で異なり、NP0.8で構成された膜の方が低抵抗である。 NP0.2の混合により、膜抵抗は低下傾向にあり、NP0.2割合がさらに増加すると抵抗 値が上昇する。

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10 2.3.3.2 均一性 前項より NP0.2/NP0.8 =3/2 の配合比において GZO 粒子膜が最小比抵抗値を示した。 以下に膜厚測定によって求めた均一性の式を示す。 𝑈𝑛𝑖𝑓𝑜𝑟𝑚𝑖𝑡𝑦 (%) = (𝑀𝑎𝑥 − 𝑀𝑖𝑛)/(𝑀𝑎𝑥 + 𝑀𝑖𝑛) × 100 設計膜厚を 300nm とし、搬送ガス流量と成膜時間によって制御した。均一性は 5% 以下であり、その際の成膜速度は約 300nm/min であった。 2.3.4 膜物性 2.3.4.1 電気伝導度 得られた GZO 薄膜の電気伝導度を以下に示す。溶媒による抵抗値の違いを明確に するため、バーコーターによるインク成膜の結果を合わせて示す。GZO 粒子はホモ ジ ナ イ ザ で エ チ レ ン グ リ コ ー ル に 12.wt%の 濃 度 で 分 散 さ せ た 。 Mixture の 条 件 は NP0.2/NP0.8 =3/2 を用い、すべての条件において膜厚が 1µm になるように塗布回数を 制御した。水分散液においては抵抗値が 300℃で 10-2Ω・cm 台まで低下する。一方、 エチレングリコール分散においては、温度上昇に対して抵抗値が減少傾向にあり、 低温における導電膜の作製が困難である。 2.3.4.2 光学特性 可視光領域における GZO 膜の透過率を示す。GZO 粒子膜は 80%以上の透過率を 示しており透明導電膜として使用可能な水準にある。また、水分散の GZO 溶液にお ける透過率は、バーコートによる成膜結果に比べて高いことがわかる。これは、膜 厚が 1µm と厚く、成膜回数によって膜設計を行ったバーコートの方が膜厚方向への 界面が多くなったことが考えられる。一方、揮発性の高いミストにおいて成膜時間 での制御を行ったミストでは、このような界面散乱が少なかったと考えられる。

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11 2.3.4.3 電子物性 ミストによって作製した GZO 薄膜(NP0.2/NP0.8 =3/2)の光学的バンドギャップを測 定した。ポリイミド耐熱温度以下で成膜可能な 300℃と、本条件にて最高焼成温度 である 500℃の比較を行った。算出した光学的バンドギャップは増大しており、電 子キャリアの増加によるシフトが確認された。 2.3.4.4 フレキシブル耐性 R5mm,60rpm の条件で折り曲げ試験を行った。膜密度の小さなナノ粒子膜は折 り曲げ耐性があり、真空成膜法で作製した膜に対する利点の一つであるといえる。 2.4 本章のまとめ 本章では粒径を制御した GZO の合成と、透明導電膜において粒径による透明導電 膜としての性能の違いを評価した。合成においては NaOH に NaOMe の混合塩基を 加えることで GZO 粒子の成長制御、および絶縁体副生成物である LDH の混入を阻 害した。最適化した条件では粒径約 15 nm の粒子と 40nm の粒子を混合して薄膜を 作製した。ミストの状態でナノ粒子を混合することにより、異なる分散液の混合が 可能なことを確認した。粒子の混合割合を変化させることによって、薄膜の電気伝 導度が下がることを確認した。得られた薄膜は 300℃の処理温度においても 10-2Ω・ cm 台を示しており、フレキシブル基板へ適用可能であることが確認された。

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参考文献

[1] S. Du, Y. Tian, H. Liu, J. Liu, and Y. Chen, J. Am. Ceram. Soc.,2006, 89, 2440–2443. [2] Pinna, N.; Niederberger, M. Surfactant-Free Nonaqueous Synthesis of Metal Oxide Nanostructures. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 5292-5304.

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[5] Kobayashi, M.; Kato, H.; Miyazaki, T.; Kakihana, M. Hydrothermal Synthesis of Pseudocubic Rutile-Type Titania Particles. Ceramics 2019, 2, 56–63.

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3 章

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14 3.1 はじめに 本章ではソルボサーマル合成によるナノサイズ化を行い KTaO3粒子の合成を行っ た。得られた粒子を溶媒に分散させ、ミスト化させることでフレキシブル基板への 成膜を検討した。 3.2 実験方法 3.2.1 試薬 合成に用いた試薬を Table 1 に示す。 Table 1 使用した試薬 試薬 化学式 製造会社 酸化タンタル Ta2O5 富士フイルム和光純薬工業 水酸化カリウム KOH 富士フイルム和光純薬工業 エチレングリコール C2H6O2 富士フイルム和光純薬工業 3.2.2 合成手順

合成スキームを Fig. 1 に示す。酸化タンタル(Ta2O5) 水酸化カリウム(KOH)を純水

に溶解させた。テフロン容器中にて 25mM の Ta2O5 、5M の KOH 5ml を混合して 30 分間撹拌し、その溶液に 5 M 水酸化カリウム KOH を加えて 10 分間撹拌した。次に エチレングリコールを加えて 30 分撹拌し、この溶液をオートクレーブ内に封じ熱処 理した。合成条件は 200~250 ºC 、合成時間を 1~5 時間とし、反応後オートクレー ブを冷水につけて急冷した。中身を遠沈管に取り出してイオン交換水を加え、18000 rpm で 20 分間遠心洗浄を 4 回繰り返した。溶液洗浄については、2 周波超音波洗浄 機で 30 分間、撹拌を行いながら処理した。得られた沈殿を超音波によって IEW に 再分散させた後、2000rpm で 5 分間遠心分離を行った。底面に生じた沈殿物を除き 分散液を得た。

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Fig. 1 合成手順

3.2.3 キャラクタリゼーション

結晶構造は粉末 X 線回折測定 (Rigaku Ultima IV) により帰属、解析した。X 線源

は CuKα 線とし、5°/min にて 2θ = 5 ~ 100°の範囲を一回積算走査した。

粒子形態は、透過型電子顕微鏡 (Hitachi H-7650) により観察した。TEM 観察では、

エタノール中で超音波処理を行った試料分散液を試料台に滴下し、乾燥したものを

測定に用いた。ナノ粒子分散液は超音波ホモジナイザ(VC-505)によって分散させ、

粒度分布計(nano Partica SZ-100)を用いた。膜の透過率は分光光度計(U-4100)、屈

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16 3.3 結果と考察 3.3.1 粒子サイズ、形態および結晶構造 3.3.1.1 ナノサイズ化 合成系にエチレングリコールを加え ソルボサーマル合成によって粒子のナノサイ ズ化を試みた。合成系におけるエチレングリコールの添加量を REG = EG / (EG + H2O) で定義し、0.1~0.8 の範囲で合成を行った。得られえた TEM 像より、添加割合を 0.2 以上に増加させた場合、KTaO3のナノサイズ化が確認できる。REG =0.5 の条件にて、 合成時間を 1.5~5 時間で制御した。粒子径は合成時間とともに増加傾向にあり、ナ ノサイズ化を確認した。 3.3.1.2 合成再現性向上 回 転 式 の 合 成 炉 を 用い 合 成 収 率 を 向 上 させ た 。 ナ ノ サ イ ズ 化 に お い て 数 µm の KTaO3 が混入することが課題であり、合成時の撹拌は均一性を向上させることが期 待できる。 3.3.2 成膜用インク作製 3.3.2.1 シングルサイズナノ粒子の分散 ミスト成膜を目的とし、前項で得られた KTaO3粒子を H2O、およびエチレング リコール(EG)溶媒に分散させた。分散には冷却を伴う超音波ホモジナイザを用い、 18 時間の処理を行った。1.6MHz の超音波にて分散液をミスト化した。 3.3.2.2 ミスト化用分散液の作製 前項において生じる熱負荷の課題を回避するため効率の良い冷却機構を設けた。 温度測定の結果、振動子稼働における温度上昇は抑制され、溶液温度が室温を超え ないことを確認した。

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17 3.3.3 成膜結果 3.3.3.1 石英ガラス基板への成膜 平面の石英ガラス基板に対し、KTaO3粒子の成膜を行った。得られた粒子膜を N2 雰囲気にて 400℃で 3 時間焼成した。 3.3.3.2 曲面基板への成膜 雰囲気内をナノ粒子含有ミストで充填させ、曲面全体にミストが付着するように 成膜室を設計した。30mm×30mm の PET フィルムに対し、R=3~30mm までの曲率 を持たせたフィルムへの成膜を行った。得られた粒子膜を N2 雰囲気にて 150℃、4 時間焼成した。マスキングにより 5mm 間隔の測定点として段差を設け、針触式の膜 厚計にて膜厚を測定した。R5mm 以上の条件で均一性は 5%以下の値を示しており、 曲面に対する成膜が行われている。 3.3.3.3 成膜速度 エチレングリコール溶媒の分散液は粘性が高いことから 超音波による霧化が生じ にくい。そこで、本項ではより効率的な霧化を行うために超音波の伝搬効率を向上 させた霧化機を開発した。 1.6MHz の超音波振動子は水に最適化されており、下図に実測超音波照射時間に対 する霧化量を示す。従来の振動子配置(1 機)においてはエチレグリコールがほぼ霧 化されず、成膜に対してきわめて遅い速度であると推測される。一方で最密構造に おいては霧化量の増加に成功しており、水溶媒を用いた場合に対して 75%程度の霧 化量を達成している。

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18 3.3.4 膜物性 3.3.4.1 光学特性 石英ガラスに KTaO3粒子の成膜を行った。フィルム基材への成膜を想定し、水分 散についても検討を行った。水に対しての分散性を向上させるため、 分散材を添加 した。ナノサイズ化を行った KTaO3 粒子についてはホモジナイザにて 18 時間超音 波分散を行い、分散液を直ちに成膜した。10nm 以下の値を示しており、TEM 観察 結果と対応する。得られた粒子膜を N2雰囲気にて 400℃, 3 時間焼成を行った。EG 分散および界面活性剤を添加した分散液においては可視光領域では 95%以上の透過 率を示している。n&k Analyzer による光学測定結果から屈折率 2 前後の値が得られ ていることが確認された。 3.3.4.3 フレキシブル耐性 R5mm,60rpm の条件で折り曲げ試験を行った。 透明フレキシブル基板として PEN 基板を選択した。これは、PET 基板に対して 50℃ 程度高い温度での焼成が可能であり、透光性を有するフィルムであるためである。 成膜を行った後、2×10-1Pa 真空雰囲気にて 150℃で 5 時間焼成を行った。これは溶 媒である EG を可能な限り除去することを目的としている。水分散屈折率は回数に 対しては小さくなる傾向にある。折り曲げ回数に対して屈折率が低下した理由とし ては、空乏層の存在が考えられる。屈折率の小さな空気の割合が増加したことによ り、膜全体の屈折率が変化したと考えられる。 3.4 本章のまとめ 本章では粒径を制御しナノサイズ化した KTaO3の合成とそれらを用いたミスト成 膜法について評価した。KTaO3 の分散については十分な分散性を有するエチレング リコールを用い、本章では成膜装置を開発した。

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19

参考文献

[1] G. E. Jellison, Jr., I. Paulauskas, L. A. Boatner, D. J. Singh Phys. Rev. B., 2006.74, 155130.

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20

4 章

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21 4.1 はじめに 本章では Roll to Roll 成膜装置を目的とした装置開発を行った。スリット形状のノ ズルと霧化機を開発することで、搬送された基板に成膜を行った。ナノ粒子の霧化 総量を増加させることで成膜を検討した。 4.2 実験方法 4.2.1 装置構成 合成に用いた試薬を Table 1 に示す。 Table 1 使用した試薬 試薬 化学式 製造会社 塩化インジウム(Ⅲ)無水 InCl3 キシダ化学 (株) 塩化スズ(Ⅳ)無水 SnCl2 関東化学 (株) TMAH(10%)メタノール C4H13NO 富士フイルム和光純薬工業 メタノール(超脱水) CH4O 富士フイルム和光純薬工業 装置は分散液の霧化ユニット、それらを冷却するチラーユニット、基板搬送機構 によって構成されている。また、ナノマテリアルを用いることから成膜室は HEPA フィルタにおける密封の弱減圧環境にある。これにより、有機測、特化測に対応し た装置構成を達成しており、様々な粒子の成膜が可能となる。 搬送機構については、A4 サイズの短編(210mm)に対応するステージを採用して おり、ステージを走査することによって広範囲に成膜を行う。物性評価には 6inch までのガラスおよびシリコンウェハーを用いることが可能である。基板の移動速度

については 1~200mm/min の範囲で制御可能であり、これは Roll to Roll 機構を見

据えたフィルムの搬送に対応している。A4 サイズの長編(300mm)への処理を 5 分

以内に処理するためには 60mm/min 以上で搬送する必要があり、これはより短時間

での処理を必要とする場合にはさらに速くなる。しかしながら成膜後の後焼成を 60 分と考えた場合、オーブンを設計した際の現実的な搬送速度は 200nm/min 以下 である。

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22 4.2.2 成膜手順 合成スキームを Fig.1 に示す。テフロン製容器中にて 0.36M 塩化インジウム溶 液 500ml, 塩化スズを加えて 10 分間撹拌した 1.6MTMAH 500m を混合して 10 分間 撹拌した。 Fig. 1 水分散性 ITO 粒子の合成手順 装置開発に用いたナノ粒子の合成スキームを Fig. 1 に示す。塩化インジウム (InCl3) 塩化スズ(SnCl4)を超脱水メタノールに溶解させた。テフロン容器中にて 0.36M の InCl3、0.06M の SnCl4 500ml を混合して 10 分間撹拌し、その溶液に 1.6 M の TMAH 500ml を加え 10 分間撹拌した。この溶液を室温にて 30 分間撹拌し、そ の後 190 ºC で 24 時間熱処理をした。反応後オートクレーブを空冷し、中身を遠沈 管に取り出してエタノールを加え、12000 rpm で 20 分間遠心洗浄を 2 回繰り返し た。加えて、中身を遠沈管に取り出してイオン交換水を加え、12000 rpm で 20 分間 遠心洗浄を 2 回繰り返した。後に得られた沈殿を IEW に入れ 28kHz,45kHz の 2 周 波印可によって分散液を作製した。

(28)

23

4.2.3 キャラクタリゼーション

粒子形態は、透過型電子顕微鏡 ( Hitachi H-7650) により観察した。TEM 観察では、 エタノール中で超音波処理を行った試料分散液を試料台に滴下し、乾燥したものを 測定に用いた。ナノ粒子分散液は超音波ホモジナイザによって分散させ、粒度分布

計(nano Partica SZ-100)を用いた。膜の形態は、FE-SEM 観察(JSM-7800F) により

観察した。試料をカーボンテープで観察台に固定し、必要に応じてオスミウム(Os) をスパッタコーティングした。膜の電気伝導度は、4 端子測定法(ACCENT HL-5500)、 透過率は分光光度計(U-4100)を用いた。 小角 X 線放射光小角散乱法 (SAXS)は、 SPring-8 BL19 にて 測定を行っ た。 5wt.%の濃度 で水に分 散 させた溶液 につい て 、 1.6MHz の超音波振動子にて霧化させた。生成したミストは Air ポンプにて送付し、 測定室を通過して回収ユニットまで搬送した。測定窓には X 線透過率が高いスペリ オ UT🄬を用い通過するミストを計測した。ミストの生成については、前章で用いた 霧化機を使用した。 4.3 結果と考察 4.3.1 水分散ナノ粒子のミスト化 A4 基板への成膜を目的とし供給するナノ粒子量を増加させた 。水への分散性が極 めて高い ITO 粒子[1]を装置開発に用いた。合成した水分散性 ITO ナノ粒子(凸 ITO) の形態、およびドーパントである Sn の元素マッピング(STEM-EDS)を示す。 Sn は粒子内に均一に分布しており偏析は確認されない。ICP により測定した Sn の 濃度は 10mol.%であった。Sn のドーピングにより ITO 粒子の合成が確認されるとと もに導電性を有する粒子であると考えられる。 4.3.1.1 供給量の増加 フィルムを最大 100mm/min の搬送速度にて搬送させた。しかしながら搬送中の基 板に対しては成膜速度が著しく低下することから、供給するミス量を増加させる必 要がある。搬送速度の増加に対してして成膜速度は減少している。

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24 4.3.1.2 分散性維持機構 前章で記載したとおり、超音波印可時には分子結合の切断による発熱が伴う。凸 ITO 分散液の濃度は 5wt.%、溶液 50mL、1 つの霧化機について超音波振動子は 4 つ を動作させた。溶液温度は 50min で上限まで達し 80℃に達した。一方、本成膜装 置においては供給量増加に伴い複数の霧化機と冷却機構の設置を行った。これによ り分散液の温度上昇は抑えられ、長時間稼働における分散液への影響は回避するこ とができる。 4.3.2 ナノ粒子含有ミストの解析 超音波によって発生するミストの径は数 µm であり、含有されるナノ粒子の径は約 40nm である。これは大気圧での in-situ 観察に最適な光学顕微鏡では測定ができず、 放射光測定が最適である。そこでまず撥水基材に対するナノ粒子含有ミストの in-situ 解析を行いミスト径の計算を行った後、SPring-8 BL19 にて、本装置のナノ粒子 分散評価を行った。 4.3.2.1 光学顕微鏡によるナノ粒子分析 顕微鏡観察により、平面機材に付着するミストの径を測定した。基材は撥水面に なっており、飛来するミストは搬送中に近い形態をしていると考えられる。薄膜形 成の前段階として、付着するミストの継時変化を観察した。飛来直後から 3 秒間に 基板上で発生するミストについては、面内での衝突、結合が最小限である。よって、 成膜 2 秒後の光学顕微鏡による視野観察から 100 個のミストを計測し、ミストの中 心径を求めた。 4.3.2.2 SAXS によるナノ粒子分析 前項で記載した課題を解決するため、放射光測定によるナノ粒子の直接観察を行 った。0.36M 塩化インジウム溶液を用いた作製した水分散性 ITO(凸 ITO)[1]粒子と 0.18M 塩化インジウム溶液で合成した ITO(C ITO)粒子を用いた。C ITO 粒子につい ては水に長時間分散せず数日で沈降するものである。

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25 SAXS による測定結果を示す。H2O ミストと比較し凸 ITO ナノ粒子を含むミスト では q = 0.15 nm-1 付近に差異が確認できる。対応する粒子間距離 d = 40 nm に相 当することから、超音波により分散液から発生したミスト中で、一次粒子の分散状 態にあることがわかる。一方 C ITO については q = 0.03 nm-1 付近に差異が確認され ており、100nm 程度の粒子径に相当することが確認される。これは搬送中のミスト 中において粒子が凝集していることを示唆しており、溶液中での分散状態がミスト 中において維持されていないことがわかる。 4.3.3 成膜による装置評価結果 4.3.3.1 成膜均一性 霧化機 8 機を用い、分散液の濃度を 5wt.%、一機あたりの溶液量を 50mL、搬送ガ スは 10L/min の条件にて成膜評価を行った。マスキングにより 50mm 間隔の測定点 として段差を設け、針触式の膜厚計にて膜厚を測定した。10cm の成膜範囲において、 均一性は 5%以下であった。 4.3.3.2 ミスト付着率 成膜速度より、供給されたミストの付着量と付着率に起因する要因を検証した。 溶液および生成されるミストの温度、成膜機材の温度と膜厚の関係を以下に示す。 ITO ナノ粒子が堆積されはじめる 30 秒後より、膜厚評価を行った。温度による成膜 速度の有意差は確認され、これらを踏まえた設計が必要になると考えられる。 4.3.3.3 成膜再現性 霧化時間に対するミストの発生量を、溶液の減少量計測することによって示す。 溶液使用量が 60%を切るまでは成膜速度のばらつきは極めて少なく、液量による影 響はほぼない。一方残量が全体の 20%まで低下した際には成膜速度が 15%ほど急激 に増えている。これは液量の減少に伴い超音波発生面と水面との距離が近くなるた め超音波による分子構造の切断効果が上がったためだと考えられる。成膜速度を上 昇させるための方法としてもかんがえられるが、全体の液体容量が減少したために

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26 液面が安定しないといったデメリットがある。容量 10ml で霧化を行った条件におい て、30 秒間の成膜を 10 回行った際の膜厚を求めたところ、膜厚誤差は 32.8%であっ た。これは Roll to Roll での連続成膜を想定した場合に、送り方向の膜厚誤差になる ことから、装置安定性が極めて悪いと考えられる。以上の結果より、溶液使用量が 100~40%の範囲内で成膜を行うことが有効であると考えられる。 4.3.4 膜物性 フレキシブル基板への成膜を行うために、耐熱上限 105℃の PET 基板、耐熱 上限 150℃の PEN 基板、耐熱上限 400℃の不透明のフイルム基板であるポリイミド (PI)基板について成膜を行った。得られた膜を以下の項目にて評価した。 4.3.4.1 電気伝導性 PET フィルム上に ITO 粒子を成膜した際の、成長初期形態を観察した結果、凸 ITO 粒子については 基板表面での乾燥時にも凝集することなく密に膜を形成する。 すなわち粒子膜中の空間が少なくなり、面内方向の電気伝導性が向上すると考えら れる。SAXS 測定で記述したように水分散性の凸 ITO 粒子は分散液における分散状 態をミスト内においても維持しており、単分散の状態で基板表面へ到達することが できる。一方で C ITO 粒子においては溶液内での分散状態をミスト中で維持するこ とが困難であり、飛来した時点で平均 100nm 前後の凝集体となっていることが考 えられる。これより粒子膜の形成初期において、空孔生成量に大きな差が生じてい ると考察される。 4.3.4.2 光学特性 透明フィルムへの成膜が可能であった焼成温度 105℃、および 150℃の成膜結果 について、分光光度計による透過率測定を行った。可視光域である 400nm~800nm の測定範囲において、どちらの膜も 90%以上の透過率を示した。

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27 4.3.4.3 フレキシブル耐性 R5mm,60rpm の条件で折り曲げ試験を行った結果を示す。試験回数を 10 万回ま でに設定し、各試行回数の桁において試料を取り外し比抵抗を測定した。抵抗値の 顕著な低下は確認されず、膜構造は維持されていると考えられる。 4.4 本章のまとめ 本章では Roll to Roll 装置を見据えた基板搬送型の成膜装置を開発した。基板搬 送時の課題としては成膜速度が著しく低下することが挙げられる。そこで霧化機を 増設することにより、超音波による発熱の影響を抑えつつ、成膜を行えるようにし た。連続 3 時間の稼働において中の分散液評価を行ったところ、分散状態は維持さ れていることから設計通り動作していることが確認される。霧化機から発生するナ ノ粒子含有ミストについては Spring-8 において SAXS 測定を行った。結果ナノ粒子 は分散状態を維持したまま基板まで搬送されていることが確認されており、 300nm の膜厚に対して導電性を有する。折り曲げ試験によりこれらの膜を評価したところ、 抵抗値は大きく変化せず実用可能な水準にあると考えられる。

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参考文献

[1] R. Suzuki, Y. Nishi, M. Matsubara, A. Muramatsu, K. Kanie, ACS Appl. Nano Mater., 2020,3, 4870.

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29

5 章

総括

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30 5.1 本研究のまとめ 第 1 章では、本研究の背景および目的について述べた。 第 2 章では、透明電膜に関する成膜を行った。ソルボサーマル法による GZO ナノ 粒子の精密合成により、副生成物である LDH の混入を阻害しつつ、15~35nm の作 り分けを実現した。結晶方位の揃ったナノ粒子中では伝導電子の散乱要因が少な い ため電気伝導性が高いが、ナノ粒子膜においては粒子界面での接触抵抗が大きな伝 導性の阻害要因となる。そこで粒子径の大きな GZO ナノ粒子膜中に小粒子径の GZO ナノ粒子を混入させることで膜の緻密化を図った。 第 3 章では、光学薄膜に関する成膜を行った。ソルボサーマル法を用いることに より、KTaO3 粒子の合成を行い、合成溶媒にエチレングリコールを添加させること でナノサイズ化に成功した。ミスト成膜法により、光学硝材 を想定した曲面基板へ の成膜を行った。 第 4 章では、Roll to Roll 工程を目指した装置開発を行った。また、直接観察が困 難なミスト中のナノ粒子状態を解析するため、小角 X 線放射光小角散乱法 (SAXS) による測定を行った。ナノ粒子はミストの中で分散状態を維 持しており、成膜工程 において分散性の高い粒子が成膜に寄与していることがわかる。 5.2 今後の展望 本研究で開発した成膜装置はナノ粒子を原料とした連続成膜を可能にする。装置 は超音波によるナノ粒子の霧化とそれらを噴きつける成膜ユニットによって構成さ れる。冷却により超音波周波数(1.6~2.4MHz)による発熱を抑制し、霧化量の精密 制御を行うことで長時間の稼働を可能にする。H2O に分散させたナノ粒子はガスに よって搬送され、成膜対象に付着することで薄膜を形成する。水系溶媒に適した成 膜方法は少なく、長時間安定した原料供給が可能になるため、Roll to Roll 法への適 用が可能になる。 ZnO 系透明導電膜は低コスト材料として期待できる。本研究により粒子径の制御 が可能になったことで膜密度が上がり、3mol.%以上の Ga3+ドーピングを実現したこ とでキャリア濃度が上昇している。また、KTaO3 膜は光学薄膜としての利用が可能 でありデバイス上面のコーティングとして 適用可能である。ミスト成膜法との組み 合わせにより大面積に対する成膜が可能になり、複数の成膜対象に対して成膜が可 能になる。

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31 謝辞 本研究を遂行するにあたり、東北大学多元物質科学研究所 村松淳司教授には、 終始かわらぬご指導、ご鞭撻、大変有意義なご助言を賜りました。ここに深く感謝 の意を表し、厚く御礼申し上げます。 東北大学工学研究科 長尾大輔教授、東北大学多元物質科学研究所 殷澍教授に は、本論文の審査を担当して頂き、多くの貴重な御助言を頂きました。厚く御礼申 し上げます。 東北大学多元物質科学研究所 蟹江澄志教授には、研究全般において、 懇切丁寧 な御指導を頂きました。ご指導、ご鞭撻に厚く御礼申し上げます。 東北大学多元物質科学研究所 松原正樹講師には、論文執筆にあたり数々の御助 言を頂きました。厚く御礼申し上げます。 株式会社ニコンの方々には本研究を遂行するにあたりご助力いただきました。深 く感謝の意を表します。 令和 2 年 8 月 31 日 西 康孝

Fig. 1 GZO の合成手順
Fig. 1 合成手順

参照

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