Title
固体拡散材-BNウエハ-を用いたシリコンへのホウ素拡散にお
ける窒素ガス流中の酸素の影響
Author(s)
田中 秀司
Citation
福岡工業大学研究論集 第40巻第1号 P9-P13
Issue Date
2007-9
URI
http://hdl.handle.net/11478/927
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
Publisher
福岡工業大学 機関リポジトリ
FITREPO
固体拡散材−BN ウエハ−を用いたシリコンへのホウ素拡散に
おける窒素ガス流中の酸素の影響
北
川
興
(電子情報工学科)西
川
正
人
(電気化学工業!*)伏
井
康
人
(電気化学工業!*)田
中
秀
司
(電子情報工学科)Influence of the Oxygen Content in Flowing Nitrogen Gas on the Boron Diffusion
into Silicon Using BN Wafer, the Solid-State Diffusion Source
Hajime K
ITAGAWA(Department of Information Electronics)Masato N
ISHIKAWA(DENKI KAGAKU KOGYO KABUSHIKI KAISYA*)
Yasuhito F
USHII(DENKI KAGAKU KOGYO KABUSHIKI KAISYA*)
Shuji T
ANAKA(Department of Information Electronics)Abstract
The effect of the oxygen gas content included in a flowing nitrogen gas ambient on the boron dif-fusivity is studied for the boron diffusion into silicon at 1050°C using boron nitride (BN) as the solid-state diffusion source. When the oxygen content is higher than about 4%, total amount of diffused-in boron concentration is found to decrease, resulting in higher sheet resistivity and smaller junction depth. In order to obtain high concentration- and reproducible boron diffusion, it is suggested that the oxygen gas content in a flowing nitrogen gas ambient should be kept lower than 4%.
Keywords: boron diffusion, boron nitride, Si, flowing nitrogen gas ambient, oxygen content,
sheet resistivity 1.ま え が き シリコンへ不純物を導入する方法として、大きく分 けて、イオン注入法と熱拡散法がある。熱拡散法は、 加熱した拡散炉の中で、シリコンへ不純物を拡散導入 させる方法である。イオン注入法と比較すると、残留 欠陥が比較的少ない安定したドーピングが実現でき、 かつ高濃度で深い接合が得られる利点があるため、バ イポーラ型の IC や LSI、ディスクリート半導体の製 造に多く使われている1)。 窒化ホウ素(Boron Nitride;BN)ウエハは、熱拡 散のホウ素(B)固体拡散源として優れており、古くか ら用いられている。しかし、BN そのものは、通常の
福岡工業大学研究論集 Res. Bull. Fukuoka Inst. Tech., Vol.40 No.1(2007)9−13
*電気化学工業株式会社大牟田工場
〒836‐8510 福岡県大牟田市新開町1番地 平成19年5月28日受付
シリコン B2O3 BN N2 石英治具 温度 800℃∼1200℃ 1050 600 温度 (℃) 昇温速度 10℃/分 拡散炉より 取り出し 拡散炉へ挿入 O2濃度確認後昇温 拡散炉へ挿入 O2濃度確認後昇温 拡散炉より 取り出し 降温速度 7℃/分 時間 60分間保持 60分間保持 拡散温度である800℃∼1200℃において十分な量のホ ウ素をシリコン表面に供給することは難しい。このた め、気化しやすくシリコン表面にホウ素を供給しやす い B2O3を、あらかじめ BN 焼結体の中に含ませてお くか、BN を酸化し、4BN+3O2→2B2O3+2N2の反 応により B2O3を BN ウエハ表面に生成させておく必 要がある。BN 系拡散材の一般的な使用法は、図1に 示すように、石英の固定用治具に、あらかじめ酸化等 により B2O3を生成させた BN ウエハとシリコンとを 交互にセットする方法である。このとき、シリコンウ エハにホウ素を導入する面を BN ウエハの方へ向け、 800∼1200℃の温度で窒素ガスを流しながら加熱する。 加熱により、BN ウエハの表面にある B2O3がシリコン の表面に供給され、シリコンと反応し、3Si+2B2O3 →3SiO2+4B2)の反応によりホウ素が生成し、シリコ ン内部に拡散する。 一般に、不純物の拡散条件には2種類の条件がある。 一つは、固体表面に存在する拡散成分が一定量に限定 される場合で、この場合の拡散分布はガウス分布にな る。他の一つは、固体内へ拡散する成分が固体表面に 無限に供給され、固体表面における拡散成分の濃度が 常に一定に保たれる(表面濃度一定)の場合で、この 場合は、拡散分布は補誤差関数分布となることが良く 知られている。 シリコンへのホウ素拡散の場合、十分な量、すなわ ち実際上は無限量のホウ素が、常にシリコン表面に供 給され、「表面濃度一定」の拡散条件が満足されてい ることが望ましい、と考えられる。 繰り返し拡散処理(累積拡散時間で数10時間∼数 100時間)を行うと、BN ウエハ表面の B2O3の揮発量 が低下し、シリコン表面への供給量が低下する。その 結果、「表面濃度一定」の条件が保たれなくなり、シー ト抵抗が上昇してくる。このように B2O3の供給量が 低下してきたら、新たに BN ウエハの酸化処理を行っ て、BN ウエハをホウ素拡散源として繰り返し使用す ることができる。 一方、BN ウエハを用いて、窒素ガス気流中に酸素 が存在した状態でホウ素拡散を行うと、シリコン表面 では、シリコンの酸化(Si+O2→SiO2)2,3)と BN ウエ ハ表面からの B2O3供給によるホウ素拡散が同時に起 こり複雑な状況になることが考えられる。そこで、本 研究では、BN ウエハを用いて、シリコンへホウ素を 拡散する時、窒素ガス流中の含有酸素量がホウ素拡散 に及ぼす影響について検討したので、その結果を報告 する。 2.実 験 方 法 あらかじめ酸素中1100℃で1.5時間の酸化処理を行 い、表面に B2O3を生成させた BN ウエハとシリコン ウエハ(n 形、抵抗率約3Ω・cm)とを石英の治具に 3.5mm の間隔で対向に固定し、600℃の拡散炉に挿 入した。ガス出口より採取した窒素ガス中の酸素濃度 をガルバニ電池式酸素濃度測定機4)により測定した。 その後、図2に示すように、10℃/min の速度で拡散 温度1050℃まで昇温し、1時間保持した後、600℃ま で約7℃/min の速度で冷却し、炉外へ取り出した。 拡散実験は、それぞれ0%、1.5%、3.5%、8.0%、 20.0%の酸素を含む窒素ガス流中で行った。 BN ウエハは、電気化学 工 業!製の MBN40(BN 含有率40wt%、拡散使用温度1000℃∼1200℃)を使 用した。 熱処理後、シリコン表面のボロシリケートガラス (Borosilicate Glass)を除去し、乾燥した後、まず四 探針法で20℃におけるシート抵抗を測定した。次に 拡散したホウ素の深さ方向に対する分布を高周波グ 図1 BN 系固体拡散材の一般的な使用状況 図2 シリコンへホウ素拡散時の昇温パターン 固体拡散材−BN ウエハ−を用いたシリコンへのホウ素拡散における窒素ガス流中の酸素の影響(北川・西川・伏井・田中) ―10―
160 140 120 100 80 60 40 20 0 0 5 10 15 20 25 酸素濃度(%) シート抵抗 (Ω/□) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 1 0.1 0.01 0.001 (a) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 1 0.1 0.01 0.001 (b) 拡散深さ(μm) 1 0.1 0.01 0.001 1 0.1 0.01 0.001 (c) (d) B 強度 (任意尺度) B 強度 (任意尺度) B 強度 (任意尺度) B 強度 (任意尺度) ロー放電発光表面分析装置で測定した。さらに、シー ト抵抗値とホウ素の拡散深さ(接合の深さ)より平均 的な抵抗率を算出し、20℃におけるシリコンの抵抗 率とホウ素不純物濃度の関係2)より拡散したホウ素の 不純物濃度を求めた。本研究では、この拡散したホウ 素の不純物濃度を、拡散したホウ素の平均濃度とした。 3.実 験 結 果 3.1 シート抵抗の酸素濃度依存性 シート抵抗の酸素濃度依存性を図3に示す。 拡散時の窒素ガス流中の酸素濃度が約4%までは、 ほぼ一定の抵抗値を示しているが、それ以上の8%、 20%と酸素濃度が高くなるにしたがって、シート抵 抗が大きくなることが分かった。これは、含有酸素が 増加するにしたがって、何らかの原因でホウ素の拡散 が妨げられ、十分な量のホウ素が拡散導入されなくな ることを示している。例えば、含有酸素によってシリ コン表面に SiO2が成長し、SiO2によってホウ素の拡散 が妨げられることなどが考えられる。 3.2 ホウ素拡散分布および拡散深さの酸素濃度依存性 ホウ素拡散分布の酸素濃度依存性を図4に、拡散深 さの酸素濃度依存性を図5に示す。拡散時の窒素ガス 流中の酸素濃度が約4%までのホウ素の拡散分布は、 ほぼ同じ分布を示しているが、それ以上の8%、20% と酸素濃度が高くなるにしたがって、シリコンへ拡散 したホウ素原子によるグロー放電発光シグナルの強度 が低下するとともに、拡散深さが浅くなることが分 図4 ホウ素拡散分布の酸素濃度依存性 酸素濃度:0%(a)、3.5%(b)、8%(c)および 20%(d) 図3 シート抵抗の酸素濃度依存性 固体拡散材−BN ウエハ−を用いたシリコンへのホウ素拡散における窒素ガス流中の酸素の影響(北川・西川・伏井・田中) ―11―
3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0 0 5 10 15 20 25 酸素濃度(%) 拡散深さ (μm ) 1020 1019 1018 0 5 10 15 20 25 酸素濃度(%) ホウ素濃度 (c m − 3) かった。 4.考 察 窒素ガス流中の酸素濃度がある濃度以上になると、 シリコンのシート抵抗値は上昇し、シリコンへ拡散す るホウ素のシグナルの強度低下と拡散深さが浅くなる ことが分かった。このシート抵抗値とホウ素の拡散深 さより拡散したホウ素の平均濃度を求めると、図6に 示すように、拡散時の窒素ガス流中の酸素濃度が約 4%まで拡散したホウ素の平均濃度は、ほぼ一定の 値を示しているが、それ以上の8%、20%と酸素濃 度が高くなるにしたがって、拡散したホウ素の平均濃 度は低下し、ホウ素の拡散量が減少していることが分 かる。 これは、拡散時の窒素ガス流中の酸素ガス濃度が 0%の場合、シリコン表面では、BN ウエハから B2O3 の供給のみが起こり、ホウ素の表面濃度一定の条件が 保たれるが、酸素濃度が増えると酸素とシリコンの反 応により SiO2の生成と BN ウエハから B2O3の供給が、 同時に起こるであろう。シリコン表面に SiO2が増加 すると、マスク効果3)が大きくなり、シリコン表面に 到達する B2O3量が減少し、ホウ素の表面濃度一定の 条件が保たれなくなるためと考えられる。 本研究の結果は、ホウ素拡散条件を決める際の基礎 データとなると考える。ホウ素拡散工程において、拡 散時炉蓋を開けて試料を炉内に挿入する際、大気も同 時に流入することが考えられ、大気混入のまま拡散を 行うとシリコンへのホウ素拡散量のバラツキなどが生 じる原因となる。したがって、ホウ素拡散では、不活 性ガスに含まれる酸素ガス量をある程度に抑制する必 要があることが明らかとなった。 5.ま と め BN ウエハを用いてシリコンへホウ素を拡散する時、 窒素ガス流中の酸素がある濃度以上存在すると、シリ コンへのホウ素の拡散量が減少し、シート抵抗の上昇 とホウ素の拡散深さが浅くなることが分かった。 以上の結果から、BN ウエハを用いたシリコンへの ホウ素拡散において、高濃度で安定した拡散を得るに は、窒素ガス流中の酸素をある濃度以下にする必要が あると考えられる。1050℃での拡散では、酸素濃度 約4%以下にすればよいことが分かった。 拡散時に、窒素ガス流中の酸素量が拡散時影響を及 ぼさない程度存在していると、BN の酸化による B2O3 の生成と、BN 表面の B2O3をシリコン表面への供給す る事象が同時に起こると考えられる。この時、BN 表 面からシリコン表面へ供給される B2O3と同量の B2O3 を拡散時の微量の酸素により生成させれば、再酸化処 理までの拡散可能時間を大幅に伸ばすことが可能にな ると予想される。拡散可能時間が長くなれば、BN ウ エハを固体拡散源として利用する本研究の目的を考え ると、大きな利点となる。したがって、窒素ガス中に 含まれる微量酸素によって、どの程度拡散可能時間が 長くなるか、を定量的に評価することが今後の課題で ある。 図5 拡散深さ(接合深さ)の酸素濃度依存性 図6 拡散したホウ素の平均濃度の酸素濃度依存性 固体拡散材−BN ウエハ−を用いたシリコンへのホウ素拡散における窒素ガス流中の酸素の影響(北川・西川・伏井・田中) ―12―
参 考 文 献 1)傳 田 精 一 郎:最 新 わ か る 半 導 体(CQ 出 版, 2003)p.135. 2)A. S. Grove 著,垂井康夫他訳:半導体デバイスの 基礎(マグロウヒル,1989)p.24,p.46,p.122. 3)S. M. Sze 著,南日康夫他訳 半導体デバイス(産 業図書,1997)p.365,p.418,p.419. 4)中級高圧ガス保安技術(高圧ガス保安協会2005 第3版)p.312. 固体拡散材−BN ウエハ−を用いたシリコンへのホウ素拡散における窒素ガス流中の酸素の影響(北川・西川・伏井・田中) ―13―