私的領域における著作権の複製等に関する今後のあり方について
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(2) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). かんによっては、著作権者の利益を著しく害するにいたることも考えられると ころであり、この点について再検討の要があろう」1)と指摘しているとおり、 著作物利用手段の開発普及が現行法制定時の考え方の見直しを迫る場合がある ことを予言していた。 現実には、その後 30 条は数度の改正を経ており、また特別法により 30 条の 適用を狭めることも行われている。 本稿では、私的領域における著作物の複製に関する権利制限の変遷やその改 正理由の概要、またデジタル化・ネットワーク化という最近の大きな流れの特 徴などを説明した上で、今後この問題をどのような視点で考えていくべきかを 明らかにしようとするものである。. 2 私的使用のための複製(30 条)の制定とその変遷について (1)著作権の制限の意義 現行法では、その第 1 条において、この法律は、 「これらの文化的所産の公 正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄 与することを目的とする」とし、著作権保護にあっては、著作物等の利用の円 滑化にも配慮することを求めている。このことは、文化の発展というものが先 人の文化的所産の継承の中で実現できるものであり、著作物等の円滑な利用に 配慮することが、次の文化の発展につながることを明確にしたものである。そ のため、著作権法では、保護の対象物から除外すること(例 工業デザイン等 の意匠法による保護) 、権利の対象とならない著作物を定めること(例 法令、 判決文等) 、権利の内容を限定すること(例 譲渡権における権利の消尽) 、著 作権の保護期間を定め期間経過後の自由利用を認めること(原則的保護期間は 著作者の死後 50 年まで)などのほか、本来著作権が及ぶ行為であるが、公益 その他の理由により権利者の利益を不当に害しない範囲で、権利者の権利行使 を制限する方法が採られている。これを定めた規定を「著作権の制限規定」と 2.
(3) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 呼んでいる。私的使用のための複製(30 条)もこの制限規定の一つである。 この著作権の制限については、公共の利益又は社会的利益との調整の一言で 説明されることも多いが、その理由は多岐にわたる。平成 13(2001)年に公 表された文化審議会著作権分科会の審議経過の概要では、次のとおり整理され ている 2)。 (1)著作物の性質(利用されることが当然期待されている場合)例 32 条 2 項 (2)利用行為の性質 ①私的領域等で行われるため権利者による介入が不適当である場合 例 30 条 ②著作物の創作に関連して必要不可欠である場合 例 32 条 1 項 ③公益の実現のため必要不可欠である場合 例 42 条 ④事前に許諾を得ることが不適切である場合 例 36 条 ⑤他の利用行為に通常随伴する利用である場合 例 44 条 ⑥著作物の原作品・複製物の所有者が自ら利用する場合 例 45 条 これを見ればわかるとおり、結局のところ、著作物の利用行為が権利者の利 益を不当に害しないかどうかである。 著作権の制限は、著作権の国際条約であるベルヌ条約においても一定の範囲 内で認められているが 3)、私的領域における著作物の利用も含め、どのような 場合に権利制限を行うかは、各国の立法政策にゆだねられている 4)。. (2)旧法における取扱い 旧法では、一般国民に複製手段が普及していなかったこともあって、発行す る意思がないこと(私的な利用であること)及び器械的又は化学的方法によら ないこと(具体的には、事実上文書等の筆写、講演等の筆記、絵画・彫刻等の 模写、模造などの手写に限られている)の 2 つの要件を満たした場合は、出所 の明示を条件として、 著作権侵害にならないとされていた(旧法 30 条 1 項 1 号、 3.
(4) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 同条 2 項)5)。 この私的使用目的の複製については、旧法の解説書を読んでも、複製手段が 事実上手写に限られていたこともあり、また、その後普及しつつあった複製機 器の性能等も現在に比べるとはるかに劣っていたこともあって、権利制限を否 定する見解は見当たらず、むしろ公共の利益又は社会的利益の実現の観点から 当然のこととして受け止める意見がほとんどである 6)。. (3)著作権制度審議会での検討 旧法制定後、複製手段の普及は目覚ましいものがあり、タイプライターのよ うなものに始まり 7)、複写機器やテープレコーダーのような録音機器に至るま で様々なものが私的領域に普及している状況を勘案し、著作権制度審議会は、 複製手段で限定する方法をやめ、 「発行する意思がないこと、営利の目的を有 しないこと、もっぱら私的な利用に供する目的であること等の条件を具備する 場合」8)は、権利を制限することを答申した。. (4)現行法制定当時(昭和 45(1970)年)の 「私的使用のための複製」 (30 条)の内容 現行法制定当時の 30 条については、著作物の複製手段が私的領域にも普及 してきたことを踏まえ、著作権制度審議会の答申に沿った形で制定された。 制限規定に該当するかどうかの要件は、私的使用目的の複製であること、複 製物の使用者本人が複製することの 2 つだけであり、著作物が公表されたもの かどうか、複製の手段、態様、部数等などについては限定がなかった。 これは、一般に家庭内で行われる著作物の複製については、閉鎖的な場所で 行われているところから、権利者の権利行使が事実上困難であるので、複製方 法等の限定は設けなかったとされている 9)。 なお、この 30 条の解釈については、現行法制定後の複写複製機器の普及を 踏まえ複写問題について審議した著作権審議会第 4 小委員会報告書(昭和 54 4.
(5) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. (1979)年公表)において整理されている 10)。同報告書では、著作権の制限規 定は、 「本来認められるべき著作権を制限するものであるという条文の性質上、 厳格に解釈しなければならない」としたうえで、企業等における従業員の業務 用の複製やコピー業者に委託して行う複製は 30 条の適用がないこと、コイン 式複写機器により使用者本人が著作物を複製する場合は、規定の趣旨から、自 己の支配下にある機器を用いて行うことが要請されていると解すべきであるな どの見解を示した。. (5)現行法制定後の 30 条の見直しと改正内容 ①権利制限の範囲の縮小 私的使用の場合、具体的な使用目的は、調査研究目的から娯楽目的まで、ま た一時的な使用目的(例えば、論文執筆のための参考資料として複写、別の時 間帯に見るための録画(タイムシフト録画) )から長期間にわたる保存目的(例 えば 購入資料、テレビ番組等のライブラリー化)まで様々である。権利制限 は、公共の利益や社会的利益の実現と言われるが、先述の文化審議会著作権分 科会における整理のとおり、個々の規定の制定理由は様々である。30 条の場 合、プライバシーで守られた閉鎖的な場所で行われる行為であり、実質的に権 利者の権利行使が困難であるという著作物利用の性質を権利制限の根拠にする とすれば、これは権利者側の利益と利用者側の利益すなわち私益と私益の調整 にほかならない。すなわち、私益と私益の調整という観点から、利用者の行為 により権利者の利益が不当に害されているかどうかの評価により規定の内容が 決まってくると考えればよいことになる。 このことから、複製機器の普及状況やそれを用いて行われる複製の質又は量、 機器に内蔵された複製制限機能など権利者の権利行使が及ぶ範囲の変化、違法 サイトの拡大など複製する対象物の供給方法の変化などにより、権利制限の範 囲や条件が拡大又は縮小することになる。 権利制限規定は、現在 30 条から 47 条の 10 まで多数あるが、著作物利用手 5.
(6) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 段の普及に伴い、30 条以外の権利制限については、規定が新設され又はその 適用範囲を拡大している規定が多いにもかかわらず、30 条だけが制定当初の 無許諾・無償で複製できる範囲を縮小する傾向にある。例えば、福祉目的や教 育目的の利用についていえば、最近のデジタル化・ネットワーク化の普及状況 を踏まえ、これらを積極的に活用することが、福祉や教育の質の向上に繋がる として、権利制限の範囲は拡大しているし、更なる制限を求める改正要望も強 い。 現行法制定以後の 30 条の改正は、改正ごとにその理由は異なるが、複製機 器の開発普及が密接に関係していることは間違いない。これは、デジタル化・ ネットワーク化の進展により加速した。権利制限の範囲が縮小された理由は何 か、そこを中心に、縮小の理由を検証していくことにする。 ②公衆の使用に供する自動複製機器を用いて行う複製の制限 (昭和 59(1984)年改正による 30 条 1 項 1 号の制定) ア 経緯と改正理由 先述したように、30 条制定当時の規定では、使用目的と複製主体の 2 つの 要件を満たせば、複製の手段を問わず、著作物を複製することができることに なっていた。また、これも先述したとおり、著作権審議会第 4 小委員会の見解 では、複製は「自己の支配下」にある機器を用いて行うべきであると複製手段 について限定的な解釈を示していたが、もちろんそのことは条文上明らかでな かった。 このような状況の中で、昭和 55(1980)年から貸レコード業が普及し始め、 それが急速に普及したことから、著作権審議会では、著作者、実演家及びレコー ド製作者に貸与に関する権利を認める必要があるかどうかの検討を開始した。 それと並行して、昭和 56(1981)年から店頭に音楽テープの高速ダビング機 器を設置し、レコードを借りた顧客に、当該機器の使用を有償で認め(もちろ 6.
(7) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. ん録音テープも店内で販売している) 、音楽の録音をさせる業者が出現した。 業者側の主張は、業者の行為は録音機器の提供だけであり、複製行為は使用 者自らが私的使用のために行っているので、30 条の適用があり適法だという ものである。この主張に対して、レコード会社(レコード製作者の権利を保有) や日本音楽著作権協会(音楽著作権の集中管理団体)は、音楽の録音の利用主 体は、業者であるとして、営業停止等の訴訟を行った。昭和 58(1983)年には、 レコード会社 20 社が訴えた営業停止等を求める仮処分申請が認められ、また、 貸レコードに関する円満な秩序形成を強く希望していた日本レコードレンタル 商業組合(現日本コンパクトデイスク・ビデオレンタル商業組合)が市場浄化 に取り組んだため、音のコピー業は消滅した。 以上のような経緯を踏まえ、昭和 58(1983)年に公表された著作権審議会 第 1 小委員会報告では、30 条は、 「一般に拡大解釈されるおそれがあることに 鑑み、これらについて規定上明確化することが望ましい」として、30 条に複 製手段の限定を加えることとを求めた。また、同時に利用者に複製をさせる業 者の法的責任を明確化することも提言した 11)。 イ 法改正の内容 昭和 59(1984)年の法改正により、複製手段は規定上も限定されたことに なるが、このことは同時に複製できる場所を家庭内等の限られた範囲内に限定 しようとする試みでもある。例えば、自動複製機器は、 「公衆の使用に供する ことを目的として設置されている」かどうかだけであり、営利性、事業性など を問わない。しかも著作権法上、公衆には「特定かつ多数の者を含む」 (2 条 5 項)ので、会員しか入れない場所における同様の複製も権利制限の対象外にな りうる。そうすると、反対に、30 条の適用が認められる範囲というのは、使 用者本人の家か、友人・知人の家のように特定少数の人しか複製機器を使わな いような場所に事実上限定されることになる。 ただし、コンビニエンスストアーや大学の生協等に設置された、文献複写機 7.
(8) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 器( 「専ら文書又は図画の複製に供するもの」 )については、集中権利処理体制 が整っていないことを理由 12)に、当分の間の措置として、複製手段の限定の 適用はないこととされた(附則 5 条の 2) 。 なお、罰則については、個々の利用者の行為は違法性としては軽微であるこ とから、罰則を適用しないこととした(119 条 1 項) 。一方、営利目的で自動 複製機器を権利侵害になる複製に使用させた者は、罰則が適用されることに なった(同条 2 項 2 号) 。これは、自動複製機器を設置し違法な複製に使用さ せている業者を社会正義に反する行為として使用者とは別に処罰することとし たものである。 ③私的録音録画補償金制度の導入 (平成 4(1992)年改正による 30 条 2 項等の制定) ア 経緯と改正理由 法改正当時、家庭内に最も普及していた機器は、録音録画の機能を有してい る機器である。当時はパソコンのような多機能の汎用機器は普及しておらず、 録音又は録画の専用機器であり、当該機器を用いて専用の記録媒体(テープ、 ディスク等)に録音録画していた。また最初はアナログ方式であったが、徐々 にデジタル方式に転換していく過渡期の時代でもあった(録画のデジタル化は もう少し後になる) 。 家庭内録音又は録画は、機器等の普及ともに、必然的にわが国全体としてみ れば大量の複製物が作成されることになり、権利者の利益を害しているのでは ないかと指摘されるようになってきた。 1965 年に当時の西ドイツが新たな著作権法を制定するのを契機に、利用者 が私的使用目的の録音録画を権利者に無許諾で行うことを認める代わりに、当 該行為により被る権利者の不利益を補填するために、権利者に一定の補償金を 支払う制度を導入した。これをわが国では、 「私的録音録画補償金制度」 (以下 8.
(9) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 「補償金制度」という」と呼んでいる。 この西ドイツの補償金制度が、画期的であったのは、家庭内における録音・ 録画については、一般に権利者がその利用実態を把握することができず、まし て利用者が個別に権利者に使用料を支払うのは不可能であることから、機器及 び記録媒体のメーカ等に補償金の支払い義務を課したことである。 この補償金制度が導入されたことを契機として、各国の権利者はこの制度の 導入を政府に求めるようになった。わが国においても、昭和 52(1977)年か ら著作権審議会で検討が開始されたが、当初は権利者、利用者、機器・記録媒 体のメーカ等の関係者間の合意が得られず、補償金制度の導入が見送られた ものの 13)、その後の諸外国の補償金制度の導入状況や国民のこの問題に対す る理解度の高まりなどを踏まえ、昭和 62(1987)年に審議は再開され、平成 3 (1991)年に至り関係者間の合意を得て、補償金制度の導入が決まった 14)。 補償金制度導入の意義は、それまでの 30 条が前提としていた無償の利用か ら有償の利用に変えることにより、複製物の品質の向上及び大量複製による不 利益を被る権利者側の利益と、録音録画機器の普及による恩恵を被る利用者側 の利益を調整したことである。しかも、家庭内という権利者が直接権利行使し にくい場所の利用について、機器等を提供している機器等のメーカが、補償金 の徴収に協力することを認めたことも画期的であった。 これは、著作権審議会の検討の場において、利害関係者の間で、 「私的録音・ 録画は、総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予 定していたような実態を超えて著作者等の利益を害している状態に至っている ということができ、 さらに今後のデジタル化の進展によっては、 著作物等の「通 常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうるところである。この ようなことから、現行法立法当時には予測できなかった不利益から著作者等の 利益を保護する必要が生じていると考える。 」15)との合意の形成が実現できた ことによる。. 9.
(10) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). イ 法改正の内容 わが国の補償金制度とドイツ、フランスなどの制度(日本以外の国の制度) の決定的な違いは、機器等のメーカの立場が、わが国では利用者が補償金を支 払うことに協力する「協力義務者」 (104 条の 5)であるのに対し、その他の国 は、補償金の「支払義務者」であることである。 わが国の場合、補償金の支払義務者はあくまでも利用者であり、政令対象の 機器と記録媒体を用いて私的使用目的で複製する場合、権利者に補償金支払わ なければならないことになっている(30 条 2 項) 。しかしながら、利用者が個 別に補償金を支払うことは事実上不可能であるので、補償金請求権を一括して 行使する団体が文化庁長官により指定されると(104 条の 2) 、当該団体は、利 用者が機器等を購入する際に、当該利用者に対し補償金一括請求をすることが でき(104 条の 4) 、その際の支払いにメーカが協力をしなければならないこと になっている(104 条の 5) 。すなわち、事実上は、メーカが補償金相当額を指 定団体に支払い、当該メーカは卸売価格に当該補償金額を上乗せし、販売店に 提供することによって、利用者が間接的に補償金を支払ったことになるという 仕組みである。 ④技術的保護手段を回避して行う複製の制限 (平成 11(1999)年改正 に よ る 30 条 1 項 2 号 の 制定、平成 24(2012)年改 正による同号の改正) ア 経緯と改正理由 技術の進展する中で、権利者とメーカが話し合った結果、複製機器に著作権 保護技術を組み込むことにより、権利者側が音楽 CD や映画ビデオに挿入した 信号に反応し、記録メデイアへの複製を禁止又は制限する機器が出てきた(い わゆる「フラッグ型)と呼ばれている) (平成 11(1999)年改正での対象) 。 例えば、音楽 CD には、SCMS 方式 16)という仕組みが採用されているが、音 10.
(11) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 楽 CD から記録媒体(CD-R等)にデジタル方式で複製する場合は、機器が音 楽 CD に挿入されている信号に反応して、第一世代の複製はできるが、複製物 からの複製、すなわち複製の複製はできない。ビデオのマクロビジョンやCG MS 17)方式もフラッグ型である。 更に技術の進展により、著作物等を暗号化したうえで複製物や送信の方法に より公衆に提供・提示し、利用者の機器等の中で、その暗号を解除し視聴でき るという仕組みを活用し、複製を禁止又は制限する方式が主流になってきた (いわゆる「暗号型」と呼ばれている) (平成 24(2012)年改正で対象に追加) 。 例えば、DVD には、一般に映画が暗号化され複製されているが、市販の DVD 機器には、通常暗号を解除する仕組(CSS18))が内蔵されているので、当該機 器を用いれば正常な再生はできるし、その仕組みを活用して複製制限ができる ことになっている(商業的映画は一般に複製禁止) 。また、地上波デジタル放 送も B-CAS カードが内蔵されている機器では正常に視聴できるが、それに加 えて、HD 装置に録画した放送番組を DVD などの記録媒体に録画するときは、 技術的保護手段が働き、複製が制限されている(これを一般に「ダビング 10」 と呼んでいる) 。 一方、技術的保護手段を通じて権利者側が私的領域における複製を制限でき るようになると、その仕組みを回避して複製を行うことができる回避装置が販 売され、また同様の機能を持つプログラムがネット上で出回った。 そこで、こうした回避装置等を用いた複製や回避装置等の普及を阻止するた めの法的仕組みの必要性が増してきた。この必要性に呼応して、世界知的所有 権機関(WIPO)で 1996 年に作成された「著作権に関する世界知的所有権機 関条約」では、 「技術的手段の回避を防ぐための適当な法的保護及び効果的な 法的救済について定める」 (同条約 11 条)とされた 19)。この条約の作成を踏 まえ、わが国では、著作権審議会マルチメデイア小委員会で検討が行われ、平 成 10(1998)年に改正提言が行われた。 この技術的保護手段に関する重要な点の 1 つは、一般に複製制限の仕組みが 11.
(12) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 権利者側とメーカ側の話し合いに基づき行われていることである 20)。補償金 制度と同様、技術的保護手段の導入については、メーカ側の理解が不可欠であ る。2 つ目は、権利者側の複製制限に関する意思を尊重する制度である。もっ とも、権利者側の意思といっても音楽、映画、放送番組等の作品の製作者から そこに複製・翻案等されている著作物の著作者や実演家まで、権利者の範囲は 広いが、基本的には、コンテンツビジネスの主体である作品の製作者の意思に 集約されているということになる。 このように、技術的保護手段は、権利者側にとっては、プライバシーで守ら れた私的領域における利用者の複製行為を事実上規制できるようになったこと になるが、利用者側から見ると、今まで 30 条によって守られていた家庭内複 製に係る品質、量、編集等の自由が技術的保護手段の導入により大きく制限さ れることになった。 イ 法改正の内容 まず、利用者の行為制限であるが、技術的保護手段で複製が禁止又は制限さ れていることを知りながら、技術的保護手段を回避して複製をした者は、仮に 私的使用目的であっても、30 条の適用はないことになった(30 条 1 項 2 号) 。 なお、利用者に対する罰則の適用は無い(119 条 1 項) 。 また機器規制であるが、回避装置又はプログラムの公衆への譲渡又は貸与、 頒布目的の製造・輸入等、及び回避行為を業として行う者については、罰則の 適用があることになった(120 条の 2) 。 ⑤違法に公衆送信された著作物をダウンロード(録音録画)することの制限 (平成 21(2009)年改正 に よ る 30 条 1 項 3 号 の 制定、平成 24(2012)年改 正による 119 条 3 項の制定). 12.
(13) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. ア 経緯と改正理由 ネット時代の著作物の流通の特徴は、ネット上においては、違法か適法かど うか、業者か一般市民が送信しているかどうかにかかわらず、ありとあらゆる 著作物が流通していることである。そこで流通している著作物の中には、商業 的に利用されている音楽、映画、ゲームソフトなどの著作物(以下「商業利用 著作物」という)も多く、ビジネスとしての有料配信も行われているが、商業 利用著作物が、ネット上の掲示板等のサイトに無許諾でアップロード(送信可 能化)されたり、Winny,Share などのファイル共有ソフトを通じて無許諾で公 衆送信されたりすることにより、違法流通が看過できない状況になっていると いわれている 21)。 これを無許諾で公衆送信された商業利用著作物をダウンロード(複製)する 利用者側から見ると、違法な送信可能化や公衆送信は他人が行っているのであ るから、利用者側に責任はない。また、改正前の 30 条は、複製対象物が違法 に公衆送信されたものかどうかも問わないので、当該ダウンロードは 30 条で 適法であるということになる。 確かに、違法なアップロードがなくなれば、そこからのダウンロードはなく なるのだから、違法アップロードをなくす努力を最優先で行えばいいという意 見はもっともな意見である。しかし、現実には、 ・一般に違法アップロードの主体は営利目的の業者ではなく、一般市民であ ること、 ・電子掲示板等へのアップロードについては、必ずしも掲示板等の管理者が 権利侵害者とは限らず、多くの場合、掲示板への投稿者が権利侵害者であ ること、 ・ファイル共有ソフトによる違法流通については、一般に利用者が違法に アップロードされた商業用著作物をダウンロードすると、当該利用者が意 図するかどうかにかかわらず、同時に利用者のパソコン上にアップロード され、当該利用者が違法発信源になるので、最初にネット上にアップロー 13.
(14) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). ドした者を特定しにくいこと、 ・ネット上の違法サイトはわが国に設置する必要はなく、ネット環境が整っ ていればどこでもよいこと、 などから、違法アップロード者を特定し、警告、民事訴訟、刑事告訴等の法的 措置を行うことが難しい場合も多く、しかも 1 つのサイトを閉鎖に追い込んで も、また同じようなサイトが出現するなど、アップロード対策だけでは違法流 通が縮小できないとの指摘があった。 また、補償金制度との関係で、仮にパソコン等が当該制度の対象になったと して、先述したように、30 条は複製対象物の作成が適法に行われたかどうか、 適法に公衆送信されたものかどうかを問わないので、違法公衆送信を受信して 行われるダウンロードや、ダウンロードしたものから行われる録音録画につい て、30 条で適法だとすると、権利者側としては、ネット上の違法流通を撲滅 したいと主張しているにもかかわらず、私的使用目的の録音録画については、 権利者が被る不利益を補償金で調整するということになってしまう。 このようなことから、文化審議会著作権分科会では、私的録音録画問題と並 行して 30 条の適用範囲の見直しを検討し、平成 21(2009)年に公表された同 分科会報告書において、ネット上の違法流通対策として、違法に公衆送信され た著作物を受信して行う録音録画について、一定の範囲で 30 条から除外する よう提言した 22)。 イ 改正の内容 まず、平成 21(2009)年の法改正の内容であるが、文化審議会の提言に沿っ た形で、違法な自動公衆送信(インターネット送信)であることを知りなが ら、当該送信を受信して行うダウンロード(録音録画)を 30 条の対象外とし た。複製を録音録画に限定したのは、ダウンロードによる被害の実態が明らか になっていたのが、法改正当時音楽や映像作品に限られていたからであり、当 時コンピュータのソフトウエアーなどについても被害の訴えがあったが、客観 14.
(15) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 的資料が不足していたところから継続検討とされた。 また、平成 24(2012)年の改正では、それまでの 30 条の改正においては、 私的使用目的の複製行為者への罰則の適用は見送られてきたが、違法ダウン ロードへの抑止効果をより高めるとの観点から、有償で公衆へ提示・提供され ている著作物をダウンロード(録音録画)する場合は、罰則が適用されること となった(119 条 3 項) 。この改正は、政府部内の検討を経て行われたもので はなく、権利者側が罰則適用のための改正を国会議員に働きかけた結果、政府 提案の著作権法改正法案を議員修正するという形で改正が行われた。 ⑥「映画の盗撮の防止に関する法律」 (盗撮防止法)による映画館等の内部 における 30 条の不適用(平成 19(2007)年制定) ア 経緯と制定理由 映画(特に劇映画)は、放送される映画を除き、複製をさせないというのが ビジネスモデルの基本である。映画は、音楽などとは異なり、何度も繰り返し て視聴するという性質のものではないので、一回視聴すればそれで満足である という人も多い。また、映画のビジネスモデルは、一般に映画館における上映 を手始めに、DVD 等によるレンタルや販売、有料・無料放送、VOD サービス など多様な流通ルートを順次活用して全体として収益を確保するというもので ある。したがって、早い段階で当該映画がネット上に無断でアップロードされ ると映画会社にとっては大きな損害を被ることになる。 映画会社が最も恐れるのは映画の公開前又は公開直後にネットに流れること である。例えば、公開前の試写会や公開初日の映画館で、携帯用の録画機器を 用いて盗撮されると、その日又はその翌日にはネット上にアップロードされる ので、これから映画館に行って視聴しようと考えている人がネット上で視聴し てしまうと、映画館へ足を運ばなくなるおそれが生じる。映画館側は、それを 防ぐために、盗撮者の監視を強め、盗撮を発見すると施設管理権に基づき撮影 15.
(16) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 者に撮影を中止させたり、場合によっては退場を命じたりすることになる。し かし、撮影者によっては、当該行為がネット上にアップロードするために行わ れているものであり 30 条の適用がない違法行為であったとしても、自分の行っ ている行為は私的使用目的であり 30 条で適法な行為であると強行に主張する 人もおり、他の鑑賞者への影響を危惧して、注意以上の強引な手段を行うこと ができない場合もあったようである。そのため、映画会社は、映画館内の盗撮 が利用目的の如何を問わず違法行為になれば、盗撮者に反論の余地を与えず、 場合によっては、警察官を呼んで刑事事件にすることができると主張し、著作 権法の改正要望を行った。 盗撮防止法は、映画会社のこれらの主張を踏まえ、議員立法により制定され た法律である。 イ 制度の内容 映画館等における盗撮(最初の有料上映から 8 月以内のもの(4 条 2 項) ) については、30 条の適用がなく、権利侵害には罰則も適用される(4 条 1 項) 。 ⑦規範的利用主体論による事実上の 30 条の適用の縮小 カラオケスナックにおけるお客の歌唱行為の利用主体は当該スナックである と認定したいわゆるクラブキャッツアイ最高裁判決(昭和 63(1988)年 3 月 15 日)23)を契機として、著作物を利用するための機器や場を提供している者 (間接的行為者)が管理支配している場所で、顧客等(直接的行為者)が著作 物を利用する行為は、その関与(管理支配、利益の帰属等)の程度によっては、 間接的行為者の行為としてとらえることが可能であり、その場合、間接的行為 者は直接的行為者と同視しうるものとして、直接著作権侵害の責任を負うとい う、いわゆる規範的利用主体論が台頭してきた。現在では、政府において立法 的解決も模索されているが、多くの判例により、この考え方は定着していると 考えられる。 16.
(17) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. この規範的利用主体論は 30 条の問題に限ったものではないが、30 条との関 連でいうと、例えば、事業者から借り受けた録画機器を用いて顧客が放送番 組を録画した行為を事業者の行為として認定したロクラクⅡ最高裁判決(平 成 23(2011)年 1 月 20 日)24)、事業者が集合住宅の共用部分に設置すること を目的として居住者に販売した録画機器を用いて当該居住者が録画した行為を 事業者の行為として認定した選撮見録(よりどりみどり)大阪高裁判決(平成 19(2007)年 6 月 14 日)25)などの事例がある。 このように、30 条 1 項 1 号では「公衆の使用に供する自動複製機器」とい う限定があったが、複製機器の設置形態がどうか、自動か手動か、附則 5 条の 2 の適用があるかどうかにかかわらず、間接的行為者(通常は事業者)が管理 支配する場所で行われている複製は、30 条の適用が排除されることがありう ることになり、その意味では、ますます、30 条の適用のある場所は限定され るといえる。. 3 今後のあり方について (1)権利者の利益と利用者の利益 先述したとおり 30 条は権利者利益と利用者利益の調整の上に立って、利用 者の行為が権利者の利益を不当に害さないかどうかで権利制限の範囲を決めて いる。30 条は複製機器の家庭内への普及やデジタル化・ネットワーク化社会 の進展により、その範囲を縮小してきているが、これは放置しておけば、権利 者の利益を不当に害するだけでなく、パッケージ流通や有料配信などのビジネ スにも大きな影響を与え、ベルヌ条約のスリー・ステップ・テスト 26)でいう 著作物の通常の利用(流通)を妨げる可能性が大きいと判断されたからである。 したがって、30 条の範囲を縮小された分野については、権利者側は、利用 の禁止を求めて、違法状態をできるだけ解消するための法的措置を含めた施策 を展開し、政府もそれを支援することになる。 17.
(18) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). それでは、範囲外にされた分野について、例えば著作権等の集中管理システ ムの導入により、許諾権の存在を前提として、使用料を徴収して今までどおり 利用を認めるという状況にならないのだろうか。 確かに、貸レコード問題に対処し関係権利者に貸与に関する権利を付与した 昭和 59(1984)年改正、大手のレンタル店がコミックレンタルを始めたこと に対処するため貸本業について貸与権の付与を猶予していた附則 4 条の 2 の 廃止を行った平成 16(2004)年改正、更には、録音物による音楽の演奏の再 生について権利が働かないことを認めていた附則 14 条の廃止を行った平成 11 (1999)年改正などにおいては、 関係者間で、 同時に事業を継続させるためのルー ル作りが行われた例がある。 しかし、このように両者の協議によりルール作りができるのは、原則とし て利用者が事業者である場合 27)又は利用者の行為に事業者が介在している場 合 28)に限られている(事業者団体があれば、よりルール作りが容易になる) 。 30 条の範囲の縮小の場合は、権利者側が、利用者側の行為を放置しておけば、 著作物の流通に悪影響を与え、コンテンツ事業の存続が危ういと考えているか らであり、当該縮小の代償措置として、使用料を徴収して利用者の行為を認め るという状況にはなりにくい。 以上のとおり、基本的に 30 条の範囲の縮小は、著作物の正規の流通を脅か す利用について実施されてきたものである。しかし、一方では複製手段の家庭 内への普及が進み、著作物を複製して個人的に楽しむという状況を止めること ができないという現実もある。 利用者利益について、最近では著作権の制限から生じる反射的利益ではなく、 これを利用者が著作物を複製して楽しむ権利ととらえ、利用者利益を積極的に 主張していこうとするとする意見もあるが、利用者利益をどうとらえるかはと もかくとして、30 条の範囲内の行為が、著作物の正規の流通を脅かすと判断 されれば、その縮小を阻止することは難しいと考える。また、反対に家庭内に おける複製手段の普及状況を考えれば、現在の 30 条の範囲を拡大することに 18.
(19) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. はならないと考えられる。 私見では、このことが 30 条のあり方を考える場合の出発点であり、今後の 議論の展開もこれを前提にして進めることとする。. (2)30 条の範囲から外れる可能性のある複製 ② 公衆の使用に供している自動複製機器から文献複写機器を除外している 附則 5 条の 2 の縮小又は廃止 ア いわゆる自炊業者が設置した機器を用いて行われる出版物等の複製 附則 5 条の 2 については、これはあくまで当面の暫定措置であり、法律の 構成としては、将来的には廃止されるべきものである。制定当時の解説では、 廃止の条件は、文献複写に係る集中管理制度が整うことであるとされている が 29)、当時、コンビニや大学生協等に設置された機器で行われる文献複写が 出版物の正規の流通を阻害するとする強い主張はなく、その状況は現在も変わ らない。集中管理制度が整うという廃止条件も、当初からこのような複製をや めさせることを目的としていない証拠でもある。 しかしながら、最近事情が変わりつつあるのは、電子書籍の普及とそれに伴 う i-Pad、Kindle などの電子端末の普及に伴って、紙媒体の書籍等を裁断する 機器と裁断した書籍等の各ページをスキャナーで読み取り電子化する複製機器 を店頭に設置し、利用者に使用させている業者(以下「自炊業者」という)が 出現し、著作者・出版社と業者の間で法的な紛争が発生している。 自炊の場合は、利用者が持参した出版物を電子化するために複製機器等を使 用させているだけでなく、裁断した出版物を入手し利用者に繰り返し複製対象 物を提供している場合も多いと聞く。またコンビニ等の複写の場合と異なり、 多くの場合は複写するのは既刊の出版物からであり、しかも複製は著作物全部 の場合がほとんどである。もっとも自炊業者の関与の程度によっては、規範的 利用主体論により、仮に利用者自らが複製機器等を使用していたとしても、利 19.
(20) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 用主体は自炊業者であると判断される可能性がある。そうすると利用形態とし ては昭和 59(1984)年改正の際に問題になった音のコピー業者の場合と同じ 状況ということになる。 すなわち、著作物の利用主体が業者か利用者かに関係なく、著作物の利用行 為がビジネスの一環で行われているところから著作権を及ぼすことが妥当と判 断されたその状況である。自炊事業は、附則制定当時には想定していなかった ことでもあり、今後、この分野について 30 条の範囲から除外してほしいとす る要求が強くなってくると予想される。 この場合、附則の制定当初の集中管理体制が整うという廃止条件をそのまま 適用するのが妥当かどうかの問題が生じてくる。現在、自炊業者と権利者側の 間で自炊に関し一定のルール作りのための協議が行われていると聞く。これは 許諾権を前提としているが、その条件は利用者の所有する出版物等を用いて行 う複製に限定することや裁断した出版物は破棄することが交渉の前提条件の ようだ。権利者側に立てば、権利者が裁断された出版物の再使用を認め、1 つ の出版物から多数のデジタル複製物を作成することを許諾するとは思えないの で、現在の協議の内容はおおむね妥当なものと考えられる。 したがって、この協議の結果如何では、少なくとも自炊関係の利用について は、附則 5 条の 2 の廃止の条件が整うことになるので、その際は法改正を検討 すべきではないかと考えられる。 なお、コンビニ等における文献複写については、権利者側であまり問題視さ れていないようなので、附則の廃止までにはまだまだ時間がかかると思われる。 イ クラウド業者の提供したサーバー上の記憶領域への著作物の複製 この問題は音楽の利用にかかる問題として社会的に注目されているが、出版 物においても、自炊業者の設置した機器により複製するのではなく、家庭内で 裁断機とスキャナーを用いてデジタル化した著作物をクラウド業者が提供した サーバー上の記憶領域に自らが複製して、著作物を読む際は自分の電子端末に 20.
(21) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 一時的にダウンロードしで利用するような方式が考えられる。 このような利用形態については、規範的利用主体論の観点からクラウド業者 が複製主体ではないか 30)、サーバー上の記憶領域への複製は自動複製機器を 用いた複製といえるのかどうか、30 条に該当し適法ではないかなどの議論が ある 31)。また、出版物からの複製については附則 5 条の 2 との関係もある。 この場合、大量の音楽等をサーバー上に送信可能化し、利用者の電子端末に 複製を伴わないストリーム形式で配信するビジネスが我が国でも普及する可能 性があり 32)、また出版物においても電子出版事業の一環で過去の定期刊行物 の記事や単行本を配信する事業が拡大すると予想されているので、このような ビジネスとの競合を危惧する意見も見られる。 このような議論の内容はともかく、現況では関係者の考え方に相違点が多く、 かつ今後この分野で事業展開が見込まれるということであれば、法改正による 適法か違法かの明確化は検討する価値があると考える。しかし先述したように、 30 条の変遷から考えて、現在 30 条の範囲外の疑いが強い利用を 30 条の範囲 と認めるような明確化は困難である。仮にこのような利用について権利制限を 認めるとしても、別の観点から規定を設ける方法をとらざるを得ないと考える。 なお、先述の権利者側と自炊業者との協議によるルール作りのように、権利 者側とクラウド業者の協議により、集中管理方式を採用して、使用料の支払い を条件に一定範囲の利用を認めることはありうることである。 ② 違法な公衆送信を受信して行うダウンロード(複製)を 30 条から除外 する範囲の拡大(30 条 1 項 3 号の範囲の拡大) 30 条 1 項 3 号は、複製の形態をデジタル方式の録音録画に限定しているが、 これは改正当時被害の状況が明らかであった音楽及び映像作品に限定して行っ た措置である。改正当時、ゲームソフト、ビジネスソフトなどのプログラムの 著作物についても被害が大きいと権利者側は主張したにもかかわらず、文化審 議会著作権分科会での検討では、被害の実態に関する検証が不十分であるとし 21.
(22) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). て継続検討とされた経緯がある。 30 条においては、同条の制定から同条 1 項 2 号の制定に至るまで、基本的 には複製対象物の適法・違法を問わないことにしていた。これは閉鎖的な場所 で複製が行われるため権利者側の権利行使が事実上不可能であるからと説明さ れるが、ネット時代の到来前は、複製対象物は、ほとんどの場合は適法な著作 物の複製物であり、また適法な放送からの複製である。 違法に提供されたものからの複製は、いずれの段階においても権利者に対価 が一切支払われていないので、当該複製が正規の流通を脅かしているという因 果関係が明らかになれば、利用者利益を考慮する余地はなく、これは 30 条の 範囲から除外されてもやむを得ないと考える 33)。 したがって、立法論としては、一旦権利制限を認めた行為を 30 条の対象外 にすることは慎重でなければいけないが、プログラムの著作物に限らず、被害 実態の調査結果により被害状況が明らかになった著作物については、権利制限 の対象から外していくとことになると考える。. (3)30 条の範囲内における利益調整 著作物の正規の流通を脅かす著作物の利用については、30 条の範囲から外 すのもやむを得ないが、仮に権利者の利益を一定程度害しているとして、消費 者が私的使用目的の複製をして著作物を楽しむことが定着している利用につい ては、30 条の範囲内での解決策を考える必要がある。 ① 私的録音録画問題 ア 補償金による調整 補償金制度は、平成 4(1992)年の著作権法改正で導入されたが、それまで は無許諾・無償の利用しか認めていなかった 30 条に、無許諾・有償の考え方 を導入したことに大きな意義がある。家庭内における音楽 CD や放送からの録 音録画は、違法な公衆送信からのダウンロード(録音録画)と比較して、権利 22.
(23) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 者に与える影響は相対的に少ないものの、制度導入時とは比較できないほど複 製の量が増大しているという事実は誰も否定できない。そういう状況の中で平 成 4(1992)年に導入された補償金制度が現状の録音録画の形態と適合しなく なっており、この補償金制度をどうするかが制度上の課題となっている 34)。 制度導入当初と現状とでは、複製の質や量の違いがあるほかに、機器の汎用 機器化・小型化や機器と媒体の一体化など機器や記録媒体の変化も大きいが、 根本的な問題としては、現状における補償の必要性に関する関係者の認識の違 いが制度のあり方に関する議論の進展を阻害していると考えられる。 認識の違いの問題については後述するが、家庭内の録音録画は 30 条の制定 以来、音楽や映像作品を楽しむ方法として社会に定着しており 35)、今までほ ぼ自由に複製できたものを、今後複製禁止にすることは困難である。また、複 製の制限(例えば、複製できる回数の制限や質の制限)についても、消費者の 利便性に反するような制限は事実上難しいと考えられる 36)。 また、利用の都度、利用者から補償金を徴収する方法が一番公平であるので、 そのような方法の実行を主張する者もいるが、理論的可能性は別として、現状 では実現可能性が低い。また、録音録画対象を提供しているレコード会社、 レンタル業者、放送局から通常の著作権料に複製使用料を上乗せして徴収す べきであるとの意見も聞かれるが、これを法律上実現するためには、娯楽目 的の複製を 30 条の範囲から外した上で、許諾権が及ぶということを前提に した集中管理方式による仕組み作りが必要であり、これも事実上実現の可能 性は低い 37)。 こうしてみると、家庭内の録音録画について権利者利益と利用者利益の調整 の方法としては、補償金制度が今日においてもなお有効であると考えられる。 もっとも、この補償金制度は、関係者間の合意の形成を前提とした制度であり、 特に権利者側とメーカ側の協力関係は不可欠である。したがって、補償金制度 の内容を議論する前に、補償の必要性に関する共通認識の醸成がやはり一番重 要となってくる。 23.
(24) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). イ 補償の必要性 (ア) 複製の質及び量 補償金制度について議論した著作権審議会第 10 条委員会においては、私的 使用目的の複製といってもその目的や形態は様々であり、権利者に与えている 影響も様々であるとしつつも、複製の総体としては、権利者の利益を害してい るとした。また、法律の制定過程で、デジタル方式の複製に限定されたのは、 複製の品質の点に注目されたからである。 もちろん、技術的保護手段の導入拡大やネットによる著作物の流通の拡大な どその後の事情の変化もあるが、複製機器の性能の急速な向上を考えれば、補 償金制度導入時と比べて、少なくとも複製の量は圧倒的に拡大していることに 異論はないと考える。複製の量が飛躍的に増大したにもかかわらず、過去に関 係者が合意した補償の必要性が変化したのであろうか。第 10 小委員会や私的 録音録画小委員会でも指摘されたプレイスシフト 38)やタイムシフトについて、 権利者に与える不利益は軽微であることに異論がないが、総体としての複製の 量という第 10 小委員会の際に関係者が合意した基準に照らせば、当時より不 利益は深刻になっていると考えざるを得ない。 (イ) 技術的保護手段による複製の制限との関係 平成 11(1999)年改正により、複製機器に組み込まれた技術的保護手段に より著作物の複製が制限されているのを、回避装置又は回避プログラムを用い て、技術的保護手段を回避して複製することが、原則として 30 条の範囲外に なった。 この技術的保護手段は、 「著作権等を有する者の意思に基づくこと」 (2 条 1 項 20 号)が前提になっているところから、技術的保護手段による複製制限は 権利者側の意思に基づく制限だといえる。そして、この技術的保護手段は、複 製機器に組み込まれるところから、現実的にはメーカ側の協力なしには有効に 機能しない。 24.
(25) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. この技術的保護手段による複製の制限と補償の必要性については、文化審議 会著作権分科会における議論においても中心的な課題であった 39)。すなわち 複製制限の範囲内の複製について補償の必要性があるかどうかである。権利者 側は複製が行われている限り補償の必要性があると主張し、メーカ側は権利者 の意思により複製を認めているのだから補償の必要性はないと主張した。更に 消費者側は、メーカ側の意見に加えて、技術的保護手段の経費に加えて補償金 まで消費者が負担するのは納得できないと主張し、議論は並行線のまま終わっ た。 関係者間における補償の必要性に関する合意の形成は補償金問題を前進させ るために避けては通れない課題と考えられる。それでは、この問題についてど のように考える必要があるのか。 先述したとおり、私的録音録画について 30 条の範囲の外に置くことは事実 上不可能であるので、権利者側から見れば、利用者のプライバシーを犯さず、 利益調整を実現できるのは、今のところ補償金制度か技術的保護手段の導入か 又はその両方かに絞られることになる。 私見では、技術的保護手段と補償金制度は両立すると考えるが、技術的保護 手段の内容によっては、どちらか一方を選択すべき必要があると考える。すな わち複製の回数でいえば、ごく限られた回数制限の場合は、利用者側の利便性 を大きく損なうことになり、利用が大きく制限されるにもかかわらず、補償金 を支払うことに関係者の合意は得られないであろう。30 条の制定・改正の経 緯を踏まえ、両者の利益調整の観点から考えても、一方的に利用者に不利な調 整と考えられる。しかし、そうすると何回までならいいという議論になってし まい、不毛な論争が続くことになる。 したがって、現実的には、補償金制度の導入時に既に存在し、複製制限が あるにもかかわらず関係者が補償の必要性があると合意した音楽 CD の SCMS 方式、すなわち第一世代の複製は認めるが、複製の複製は認めないという方式 を参考にして、例えば、複製機器の HD 装置に複製したものからの複製は可能 25.
(26) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). だが、複製の複製は認めないというような基準で考えるしかなく、それ以上の 複製制限を選択するのであれば、補償の必要性はないと考えるしかない。 なお、複製したものの品質の低下については、これもどこまでならよいのか という議論が続くことにもなるので、純粋に技術的な問題による場合は別にし て、品質の低下を恣意的に行う場合は原則として補償の必要性はないと考える。 また、有料配信事業者と利用者との関係などのように、事業者と利用者が直 接契約を行い、複製に関する制限については技術的保護手段により担保してい る場合は、補償の必要性はないと考えられる。 しかしながら、最近状況が変わりつつあるのは、特に音楽の場合、様々な 理由から技術的保護手段を施さないで複製自由にせざるを得ない状況がみら れる 40)。このような場合においても補償の必要性はないと言い切れるのか疑 問の残るところである。 ②その他の問題 私的領域における複製については、 録音録画だけに限らないところから、 ゲー ムソフトや出版物などの複製など録音録画以外の複製もある。しかしながら、 録音録画問題のように無許諾・無償の複製から無許諾・有償の複製への転換を 考慮すべき利用は現在のところ見当たらない。 . 4 おわりに これまで見てきたように、30 条については、複製機器の発展と普及、ネッ トワーク社会の進展の中で、その範囲を縮小してきた。30 条 1 項 1 号の制定 や盗撮防止法の制定により複製できる場所は事実上家庭内等の限られた範囲内 に制限される一方で、規範的利用主体論により更にその範囲は狭められた。更 に 30 条 2 項等、30 条 1 項 2 号の制定により、権利者と機器等のメーカの協力 関係の下、家庭内の複製まで制限等が行われた。更に、30 条 1 項 3 号の制定 26.
(27) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. により、著作物の正規の流通を脅かすという理由により、家庭内におけるダウ ンロードを実際に制限する有効な方法がないにもかかわらず、30 条の範囲か ら除外された。 これからも、社会の変化に応じ、30 条は縮小するものと考えるが、先述し たとおり、30 条以外の著作権の権利制限規定については、例えばネットワー ク社会の利点を活かすために、その範囲を拡大し、また新たな規定が新設され てきた経緯がある。例えば平成 24(2012)年改正で新設されたいわゆる写り 込みを認めた 30 条の 2 においては、例えば遊園地で家族と一緒に撮影した写 真やビデオに漫画キャラクターが写りこむこと、またその写真等を個人のHP で紹介することが漫画キャラクターの権利者の許諾なしにできるようになっ た。このように別の理由から設けられた制限規定が、結果として私的領域やそ の周辺の利用にも及ぶことはありうることである。 したがって、今後 30 条は必要に応じ縮小されるものの、他の制限規定の範 囲の拡大や新設が行われるので、私的領域等の利用においても、実際はその範 囲が縮小される部分と拡大される部分が交錯するような状況になるのではない かと考えている。. (参考)著作権法 30 条 (私的使用のための複製) 第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著 作物」という。 )は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内 において使用すること(以下「私的使用」という。 )を目的とするときは、次 に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。 一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製 の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されてい る機器をいう。 )を用いて複製する場合 二 技術的保護手段の回避(第二条第一項第二十号に規定する信号の除去若し 27.
(28) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). くは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は 改変を除く。 )を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよ う変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係 る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われる ものを除く。 )を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止され る行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結 果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第 二号において同じ。 )により可能となり、又はその結果に障害が生じない ようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合 三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、 国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。 )を受 信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場 合 2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器 (放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性 能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能 として録音又は録画の機能を有するものを除く。 )であつて政令で定めるもの により、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体 であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著 作権者に支払わなければならない。 1) 「著作権制度審議会審議記録(一) 」文部省 1966 年 70 頁 2)文部科学省 HP http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/011201.htm 3)ベルヌ条約では、①特別の場合であること、②著作物の通常の利用を妨げないこと、③ 権利者の利益を不当に害しないことの 3 つの条件を満たす場合には、複製権を制限でき ることになっている(9 条(2) ) 。また、 権利制限が可能かどうかの検証を、 スリー・ステッ プ・テストと呼んでいる。 28.
(29) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. 4)立法方法としては、我が国のように私的領域の利用に特化して権利制限を定めている国 もあるが(これを個別制限規定という。例 独国、仏国) 、英米法系の国のように、特に 私的領域に限定せず、包括的な基準を定めた権利制限規定(権利制限の一般規定)によ り対処している国もある(例 米国(fair use 規定) 、英国(fair dealing 規定) ) 。また、 各国とも権利制限の要件は異なっている。 5)萼優美「条解著作権」港出版社 1961 年 254 頁 6)例えば、榛村専一著「著作権法概論」厳松堂書店 1933 年 211 頁 小林尋次著「現行著作権法の立法理由と解釈」文部省 1958 年 205 頁 7)昭和 12(1937)年 10 月 11 日大審院判決により、タイプライターによる複製は旧法 30 条 1 項 1 号の適用がないとされた(前掲「条解著作権」254 頁 8)前掲「著作権制度審議会審議記録(一) 」70 頁 9)加戸守行著「著作権法逐条講義(五訂新版) 」著作権情報センター 2006 年 225 頁 10)著作権情報センター HP http://www.cric.or.jp/db/report/s51_9/s51_9_main.html 11)著作権情報センター HP http://www.cric.or.jp/db/report/s58_9/s58_9_main.html 12)板東久美子著「著作権法の一部改正について」 (コピライト NO280 1984 年 7 月 著作 権資料協会刊) 13)著作権審議会第 5 小委員会(昭和 56(1981)年報告書公表)では、 「現在のところ関係 者の間でその対応策について合意の形成にまでは至らず、かつ、この問題に対する国民 の理解もいまだ十分ではないこと、また、この問題の対応策について国際的なコンセン サスの方向をなお見定める必要があること等から、現在直ちに特定の対応策を採用する ことは困難であるとの結論に達した。 」としている。 著作権情報センター HP http://www.cric.or.jp/db/report/s56_6/s56_6_main.html 14)著作権審議会第 10 小委員会(平成 3(1991)年報告書公表) 著作権情報センター HP http://www.cric.or.jp/db/report/h3_12/h3_12_main.html 15)前掲第 10 小委員会報告書 16)Serial Copy Management System の略称 17)Copy Generation Management System の略称 18)Content Scramble System の略称 19)同じ年に「実演及びレコードの関する知的所有権条約」も作成されており、本条約にも 同様の規定がある(同条約 18 条) 。 20)平成 14(2002)年に大手レコード会社から発売された CCCD(Copy Control CD)は、 29.
(30) 横浜法学第 22 巻第 1 号(2013 年 9 月). 音楽 CD からパソコンへの録音することを制限する目的で発売されたが、これはレコー ド会社側がメーカとの協議を経ないで一方的に販売したものあった。しかし、誤作動や 音質の劣化が指摘され、消費者の反発も大きかったので、その後販売中止となった。 21) 「違法配信に関する利用実態」 (日本レコード協会 2010 年調査)では、違法ファイル等の 推定ダウンロード数は年間 43.6 億ファイルと推定されている。 日本レコード協会 HP http://www.riaj.or.jp/release/2011/pr110309.html 22)文化審議会著作権分科会報告(平成 21(2009)年公表)第二編私的録音録画小委員会 文化庁 HP http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2101.pdf 23)民集 42 巻 3 号 199 頁 24)判時 2103 号 128 頁 25)判時 1991 号 122 頁 26)脚注 3 参照 27)貸レコード、レンタルコミック、飲食店等での録音物の再生などについては、利用者が 事業者であり、かつ事業者団体が存在していた。 28)例えば日本音楽著作権協会と動画投稿サイト事業者との協定は、著作物の利用主体は事 業者か投稿者かを棚上げにした上で、事業者が投稿者の音楽利用について許諾を受け、 使用料を支払うという形式になっている。 29)脚注 12 参照 30)例えば、顧客の好きな音楽を事業者が提供するサーバ上に当該顧客が蓄積し当該顧客の 携帯電話に配信する事業について、音楽の利用主体は事業者であると判断した MYUTA 事件東京地裁判決(平成 19(2007)年 5 月 25 日。判時 1979 号 100 頁)がある。 31)文化庁調査研究事業「クラウドコンピューティングと著作権に関する調査研究」に整理 されている。 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/pdf/cloud_computing_houkoku.pdf 32)例えば、わが国でも定額制の音楽配信サービス「Music Unlimited」が営業しており、顧 客は 1300 万曲以上の楽曲から聴きたい曲を選択できる。 33)外国の著作権法を参照すると、例えばドイツ著作権法では、わが国と同様の規定が整備 されているが、複製手段を録音録画に限定してはいない。米国等では判例で違法性が確 認されている。 34)前掲文化審議会著作権分科会報告(平成 21(2009)年 1 月公表)第二編私的録音録画小 委員会参照 35)反対に映画については、放送からの録画を除き、ビデオが発売された初期の段階から技 術的保護手段により複製禁止を実施してきたところから、国民の間では原則複製はでき 30.
(31) 私的領域における著作物の複製に関する今後のあり方について. ないとの意識が定着している。 36)最近では、特に有料配信事業において、複製機器の規格の多様化による技術的保護手段 に係る経費の増大、消費者の要望等の理由から、複製制限が実行しにくくなっている。 37)英国著作権法では、 娯楽目的の私的複製は、 放送番組を別の時間に視聴するための複製 (い わゆるタイムシフト複製)を除き、権利者の許諾権が働くようになっているが、このよ うに当初からこのような法制度になっていれば、実現の可能性はある。 38)例えば、購入した音楽 CD から、様々な環境で音楽を楽しむため、携帯用オーディオ機 器やカーナビなどへ複製することをいう。なお、複製対象物は、利用者の所有している ものに限られる。 39)特に、地上波デジタル放送が技術的保護手段による複製制限(いわゆるダビング 10)を 採用したことから、放送の録画に関する補償に必要性について関係者の意見が対立した。 前掲文化審議会著作権分科会報告(平成 21(2009)年 1 月公表)参照 40)脚注 36 参照. 31.
(32)
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