〔図説〕松輔学28:13∼14,2002 key words:乳歯一ストロー様異物一歯槽骨吸収
乳歯歯頚部に異物を認めた1例
阿久澤信人
アクザワ歯科医院村上由見子 内山盛嗣 園田尚弘 岩崎浩
松本歯科大学 小児歯科学講座A Case of a Foreign Body on the Deciduous Lateral lncisor
MAKOTO AKUZAWA
Aleuzαtva Dental ClinicYUMIO MURAKAMI MORITSUGU UCHIYAMA NAOHIRO SONODA and HIROSHI IWASAKI
Depαrttnent of Pediatric Dentistノッ, MαtSU/noto Dentα1 University SChoot ofDentist/y 乳幼児は生後5か月を過ぎると何でも口に持っ ていくようになり,誤飲・誤嚥・迷入等が生じや すく,問題が生じた場合は,まず医科への受診が ・般的であるが,歯科臨床においても誤飲・誤 嚥・迷入を起こす可能性のある異物に対する認識 とその対応が必要とされる1. 歯科領域における異物迷入の報告では,鼻腔内 に迷人した電池,歯肉溝深くに嵌入した矯IE用エ ラスティックゴム,乳切歯部に嵌入したストロー 様異物などが偶然に発見された事例が多く,発見 の遅れが歯科的な問題を引き起こすことも示唆さ れている:t’. 今回,上顎乳側切歯歯頚部にストロー様異物の 嵌入を認めた1例を経験し,保護者の同意を得た ヒでその写真を供覧する. 症例:3歳11か月の女児. 主訴:口腔内精査 既往歴および家族歴:特記事項なし. 1:]腔内所見:診査からHellman咬合発育段階は llAで、咬合状態に異常所見は認められなかっ た. 上顎左側乳側切歯の歯頚部周囲には帯状に歯石 沈着を呈した様相で,表面は比較的滑沢で歯牙に 比べやや褐色の着色が認められた.その着色部を 触知すると,乳側切歯歯頚部の帯状の着色部分に 僅かな歯牙からの遊離が認められ,触診の際、僅 かに疾痛を訴えた(図1 −A). X線所見:上顎左側乳側切歯の周囲には多量の歯 石沈着様を呈する像や異物を示す像は認められ ず,歯冠部の近遠心隣接面に踊蝕が認められた. また,ヒ顎左側乳側切歯周囲の歯槽骨には水平的 吸収が認められた(図1−B)、 A:ll腔内写真 B:X線写真 写真1 ヒ顎左側乳側切歯の初診時所見 (2002{1三4 月181㍗受イ・1’;2002フ1三4 月2411’受∫qり
1・1 阿久澤他 乳歯歯頚η1に異物を認めた1例 写真2:摘出物所見 1臨床診断:1芳〔i左側乳側切口:i 異物迷人 処置:浸麻ドにてヒ顎左側乳側リリ歯の周囲物質を 摘川し、踊蝕部にはレジン充填を施した. 摘出物所見:直径約4.Dmm.高さ約】.5mmの fSJ筒状で,色は透明に近い乳1’1 tsであり、スト ロー片と推測された.また,円筒状物の辺縁に歯 石様沈着物も認められた(図2L 本症例はストロー片と推測された異物がヒ顎左 側乳側切歯歯ゴ∫{部に迷入し,発見の遅れが歯槽骨 吸収の原因になったものと考えられた.歯槽骨吸 収0)原因としては.慢性的歯周糸ll織への刺激ある いはストロー様異物のモノマーの溶川による刺激 などの影習iが考えられたが,歯槽骨吸収の原因の 究明については摘出物の同定を含め,今後の検討 訳題としたい. 異物迷人の経緯を保護者に問診したところ,ス トロー片と推測された異物は萌出’tG初から認めら れ、先ノ〈的なものかまたは歯石と判断し,放置し ていたという.また.不明確ではあるが,スト ローでジュース類を飲川する頃には,既にヒ顎左 側乳側切歯の異常は認められていたようであり、 その他には思いあたる点はないとのことであっ た.さらに,近年では枕の緩衝剤として短いスト ロー様チューブが使用されており,使用経験を確 認するも,患児の自宅では使用していないとのこ とであった. このように保護者の知らない問に、乳幼リ己が身 の川りにある異物を日腔に人れてしまい.医科的 な症状も含め、発現するか,あるいは偶然に発見 A日腔内写土’( B:X拶λ写真 写真3 1’.顎左側乳{1{1陶」歯び)6か月後の所見 されるまで放置されるケースは/♪後も1’分あり得 る.また,それらを異物と認識するためには他の 疾患との鑑別や川腔領域のみではなく全身への影 響1についても我々は把握しておく必要がある. さらに,保護者に対しても乳幼児期からの異物の 誤飲・誤嚥・迷人やその影響について啓蒙し、安 全対策を試みる必要性が示唆された. なお本症例は6かJ]後にVi:診査を行った結果、 X線所見からは歯槽骨吸収の改曽…が認められたも のの,歯根膜腔の才広大も認められたが、自覚症状 がないため、保護者同意のヒで経過観察を行って いる〔図3). 文 献 川川中龍宏q9981∫’どもの’∬故と1;]」止ls.小児 利’1加1末51:ll1−20. 21加納篤∫’,小笠原榮希,久保川博Ji.鶴田1勝久. 本川 渉(1997) 1川’ド内および鼻腔内に異物を 認めた3例.小児歯誌35:722−7. :引柿沼さおり.桜月二史f・、苅1千i∼洋行、荻原和彦 qggg)上顎乳中LJ」歯歯頚部にストロー状異物を 認めた’症例.小児歯誌37:・「lll.(抄l P ヒ原正た、和!U真澄、渋月:尚武q987い:呉’)た 輪ゴムの使川によるヒ顎11・1 tli離聞の矯1卜治療が 行われた・症例.クインテッセンス6:57〔}−fl. 5)」友川也∫・,丹ド貴司,松本人輔、庄内㌫久∫・、 前山il;i三彦.野呂人輔.廣瀬光枝,1]11・嵐沽治 C20(IU ’1異物嵌人により高度の歯槽’1}’1’吸収を来し た1例.小児歯誌38:255−6り.