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Active mTOR mutation leads to brain malformation through cell-autonomous migration delay 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 花井 彩江 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博4甲 第211号 学 位 授 与 年 月 日 平成29年 3月 23日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 先進医療科学専攻

学 位 論 文 題 名 Active mTOR mutation leads to brain malformation through cell-autonomous migration delay

(mTOR 遺伝子の活性変異体が自律的な細胞移動遅延を起こし、 脳形成異常をきたす) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 竹田 扇 委 員 准教授 新藤 和雅 委 員 客員教授 星野 幹雄

学位論文内容の要旨

【背景と目的】 難治性てんかんをきたす脳形成異常は、微小皮質形成異常から片側巨脳症(HME)まで広いスペク トラムを有するが、外科的治療が期待できる疾患である。多くは HME と局在性大脳皮質異形成(FCD) であり、大脳皮質層構造の異常や dysmorphic neuron などの病理学的共通点を有する。発生学的に、 神経細胞-グリア細胞の分化異常や細胞の成長障害、移動障害が想定されている。一方、その分子基 盤として PI3K-AKT-mTOR 細胞内シグナル伝達系の遺伝子異常が報告されている。mTOR 分子の活性化 は S6 や 4EBP1 など下流分子のリン酸化を起こし、蛋白合成や脂質代謝の促進や細胞増殖、細胞の肥 大化や過成長など細胞に様々な影響を及ぼすことが知られている。しかし、これら分子機構の障害と 発生形態学的異常が同一平面上で検討されたことはない。そこで、この課題に回答を与えるべく実験 に取り掛かった。 国立精神・神経医療研究センター病院では、てんかん外科治療を行われた症例の多彩な臨床データ と病理標本を系統的に保存、管理している。本研究では、これらの試料から脳病変部に特異的に生じ る遺伝子変異を明らかにし、その分子病態の解明を行った。 【方法】 国立精神・神経医療研究センター病院で、難治性てんかんと診断され、生後 3 か月で半球離断術に よる治療を受けた、HME の女児の患者を対象とした。切除標本は病理診断の後、新鮮凍結脳組織を作 成し凍結保存をした。本研究への参加同意下に以下の実験を行った。①遺伝子解析:新鮮凍結脳組織 と手術時検査の際の余剰血液から DNA を抽出し、ターゲットシークエンス解析を行い、新鮮凍結脳組 織にのみに認められた遺伝子変異を検索した。ターゲットシークエンス解析は、Ion PGM を用いて PI3K-AKT-mTOR 系の主要な 17 遺伝子のエキソン領域とイントロンのスプライス領域の全遺伝子配列

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を対象として分析を行った。得られたデータは、CLC Workbench で既報告 SNP などを除外した後、 Coverage 30 以上で 10%以上の変異検出率を条件に解析した。解析後の遺伝子異常は、ABI PRISM 3130 genetic analyzer によるサンガー法で検証し、PyroMark Q24 advanced system によるパイロシーク エンスで異常遺伝子率を求めた。②発現ベクターの作成と表現型と発現解析:異常遺伝子と正常MTOR 遺伝子について、pCAGで発現ベクターを作成した(異常 MTOR ベクター、MTOR ベクター)。これらと 遺伝子を組み込んでいない空ベクターを HeLa 細胞、マウス胎仔に導入した。マウス胎仔では、E14.5 で経子宮的に脳室内へ作成したベクターと EGFP をエレクトロポレーションにより移植し、E18.5 で 大脳皮質を観察した。発現解析では、免疫組織化学あるいは免疫細胞染色とウエスタンブロットを行 った。HeLa 細胞では、抗体として MTOR、S6、リン酸化 S6、4EBP1、リン酸化 4EBP1 を用いた。マウ ス脳組織では、Ctip2、FOXP1、Vimentin を用いた。③統計学的解析:Hela 細胞では S6、4EBP1 の リン酸化、マウス脳組織では EGFP 陽性細胞の細胞面積、分布を算出し、空ベクター、MTOR ベク ター、異常 MTORベクターの 3 群間比較を Dunnett 試験により有意差検定を行った。 生体試料を用いた遺伝子解析については、当該研究施設の倫理問題検討委員会の承認を得て行 った。また、本研究の生物学的研究は当該施設に設置されている組換え DNA 実験安全委員会およ び小型実験動物倫理審査委員会の承認を得た後、動物の倫理を尊重し、最小限の負担で遂行した。 【結果】

① 遺伝子解析:対象症例で発見された遺伝子異常は、MTOR遺伝子の c.4376C>A; p.Ala1459Asp であ り、脳病変特異的な体細胞変異で、変異率は15.63%であった。また、パイロシークエンス法で は病変の強い皮質部分では約10%のアレル頻度であり、一方で白質ではそれよりも低い頻度であ った。この遺伝子異常は、MTOR遺伝子のキナーゼ領域のミスセンス変異であったため、MTOR 分 子の機能障害が予測された。

② 発現ベクターの表現型解析:この遺伝子異常の発現ベクターを作成し、HeLa 細胞へ導入した。 その結果、巨細胞化、MTOR の下流分子 S6 と 4EBP1 のリン酸化亢進を認めた。さらに、E14.5 に脳室 内エレクトロポレーションを行われた E18.5 マウス胎仔の大脳皮質の観察では、空ベクターに比較し て MTOR ベクターと異常 MTOR ベクターは EGFP 陽性細胞の巨細胞化、方向性の障害がみられた。また、 Ctip2 を大脳皮質第Ⅴ-Ⅵ層の指標として、細胞の移動をみたところ、皮質下層への貯留が見られ、 この変化は、異常 MTOR ベクターを導入したマウス大脳皮質でより顕在化していた。FOXP1 はベクタ ーを導入した時期に発生する細胞で陽性となるが、いずれのベクター導入個体とも EGFP 陽性細胞は Foxp1 と一部で共陽性を示し、MTOR ベクターと異常 MTOR ベクター導入個体では、FOXP1 と共陽性の 細胞は巨細胞化、移動の遅滞がみられたが、Foxp1 のみ陽性の細胞の形態と移動には影響していなか った。また、いずれのベクター導入細胞とも vimentin 上にあり、glial fiber から逸れる移動障害 を起こしていないことが分かった。 【考察】 本研究から、難治性てんかんを伴う脳形成障害には、活性化をもたらすMTOR遺伝子異常があり、 これにより神経細胞の移動障害(遅延)と肥大化が生じていることが分かった。この現象は、すでに 複数の報告あるものの発生病態の解明には至っていない。さらに、我々は新しい発見を行った。それ は、この変化が radial glia 上で生じた神経細胞の移動障害であることと細胞自律的変化であり他細 胞へ影響を及ぼさないこととである。いずれも細胞自身の自己責任によっていることを意味するが、 脳組織の障害が遺伝子異常を有する細胞のみに限定されるということを表している。これは、治療タ

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ーゲットをこの細胞に絞り込めるということであり、新しい治療法開発のヒントを与えるものである。 【結論】 小児難治性てんかんを伴う脳形成障害の遺伝子解析とその病態解明を行った。その結果、新しい MTOR遺伝子異常を病変部のみの体細胞変異としてみつけた。この変異は、MTOR 分子の活性化亢進に 働き、神経細胞の自律的移動障害と肥大化をきたすことが分かった。本研究の成果は、ヒト脳の発生 病態に新たな知見を加えただけでなく、治療法開発への基盤を与えた。

論文審査結果の要旨

1. 本研究の学術的価値: 本研究は小児期から難治性てんかんを発症した皮質形成異常症例 28 例よ り、脳特異的な体細胞変異を発見したものである。半網羅的検索によりこの変異が mTOR 遺伝 子に変異があることを同定し、その遺伝子導入を培養細胞で行ない予想される表現型が得られた。 そこでこれを発生中のマウス脳で再現することが可能か否かの検討を行なった。データの質に問 題があることは否定できないものの、細胞移動が遅滞すること、細胞が大型化することを見いだ した。これらの結果は mTOR の異常が細胞自律的であることを間接的に示唆し、皮質形成異常 の病態解明に多少なりとも貢献した。発見された体細胞変異が皮質形成異常の病態に直接関係し うることが示唆されたことが今後の分子レベル、細胞生物学レベルでの解析の道筋を拓いたとい う点で学術的価値を内包する。 2. 研究内容俯瞰: 国立精神神経医療研究センターに集積された皮質形成異常症例より検体を採取し、 その病理学的検索、遺伝子配列解読を行なった。そのうち一例で脳特異的な mTOR の変異が発 見された。これは先行研究で既に発表された機能領域と近接はするが異なった部位の変異である。 この遺伝子変異の影響をin vitro, in vivo双方の系で検証することを試み、細胞移動や形態形成 異常の原因である可能性を示した。但し細胞機能に関わる解析は行なわれておらず、病因との関 連に関する議論は飽くまでも憶測の域に留まるものである。 3. 実験系並びにデータの信頼性: 本研究の遺伝子解析に関しては標準的手法に基づいて行なわれて いる。また変異遺伝子の同定は半網羅的ではあるが、手法に問題はない。免疫染色、電気的穿孔 法による個体レベルでの変異遺伝子発現データは質が低いため、修正意見に基づき一部は修正す ることとなった。また、全般にデータの信頼性が低いため、ウエスタンブロットのオリジナルデ ータ等も参考資料として掲載することとした。最近、国際誌に受理されたということであるが、 博士論文はこれとは別にできるだけ修正させ、全体として説得力があるものに改訂を指示するこ とで、辛うじて水準を満たすと判断した。 4. 質疑応答: 最終試験結果の要旨に纏めて記載。 5. 今後の展望: 本研究は、データの取扱いや解釈が荒削りではあるが皮質形成異常による難治性て んかんの病態解明や治療法の開発に道標を与える可能性をもっている。 6. 人物評価:花井氏の発表は原稿を読みながら覚束ないものであったが、個別面談では研究に対す る関心が少しはある様に思われた。一方、研究内容の新規性や重要性に説明が不足している上に 周辺領域に関連する知識も十分とはいえず、質疑応答でも返答に窮したり、回答に明瞭性を欠い たりすることが多々あった。現時点で博士の学位を授与するに相応しいか否か判断に迷うところ であるが、今後の発展に期待するより他はないであろう。

参照

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