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青年期後期における見通し力と気晴らしに対する認知との関連の検討

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(1)

佐藤 凜奈 *・明翫 光宜 **・池田 浩之 ***

青年期後期における見通し力と気晴らしに対する認知との関連の検討

 本研究は,大学生の見通し力が気晴らしに対する認知に及ぼす影響を調べることを目的とし,さらに見 通し力と精神的健康の関係についても検討した。大学生121名を対象に,見通し力を調査する尺度( 時間 的予測力 場の理解力 感情推察力 ),気晴らしに対する認知を調査する尺度( 気晴らしへのためらい 依 存状態 有効性認知 ),精神的健康を調査する尺度(GHQ12)の3つの尺度を用いて質問紙調査を行った。  見通し力を,高群,中間群,場理解優位群,低群の4つのクラスタに分類し分散分析を行った結果,気 晴らしに対する認知のすべての下位尺度とGHQ12において有意な主効果が認められた。その後の多重比 較の結果,見通し力が高ければ有効性認知が高く,気晴らしへのためらい・依存状態が低いことが示され, 見通し力,特に場の理解力と気晴らしに対する認知との関連が示された。また,精神的健康において高群 と中間群,高群と低群の間に有意差が認められ,見通し力,特に場の理解力が高いと精神的健康が促進さ れることが示された。 キーワード:見通し力,気晴らしに対する認知,精神的健康 1. 問題と目的 1-1. 気晴らしに対する認知と認知形成の要因  私たちは1日の中で多くの気晴らしを行う。そ して誰しも一度は気晴らしをした後に後悔した経 験があるだろう。例えば作業の合間に少し息抜き をするつもりがついテレビに熱中してしまったり, 集中力をあげるために気晴らしを始めたつもりが かえって集中力が落ちてしまったりと,その理由 は人によって様々である。また,人によって後悔 した経験が多い人もいればそんな経験はほとんど ないという人もいるかもしれない。これらの経験 から我々は皆それぞれ異なる気晴らしに対するイ メージのようなものを持っている。これを 気晴 らしに対する認知 と呼び,気晴らしに対する認 知は, 気晴らしへのためらい 依存状態 有効性 認知 の3つからなる(櫻庭, 2010)。そもそも気晴 らし(distraction)とは,他のことを考える,また は何かの活動に従事することにより,問題から注 意をそらすこと(Stone & Neale, 1984)である。さ らに,Nolen-Hoeksema & Morrow(1993)によれ ば,気晴らしは始めに不快な情動を和らげること で効果的な問題対処を促進する方法であるとされ ている。しかし仮に気晴らしを行う前はこのよう な効果を期待して行ったとしても,前述したよう に気晴らしの結果が必ずしも効果的な問題対処を 促進するものであるとは限らない。  及川(2002)によれば,気晴らしの結果( 目標明 確化 気分緩和 気分悪化 )は気晴らしの意図( 目 標明確化志向 気分緩和志向 無目標 )および気 分調節の自信が気晴らしへの集中を介することで 規定されるとしている。考えをまとめようと意図 して気晴らしを行う 目標明確化志向 とストレッ サーから注意を逸らし,気晴らし対象に注意が向 けられる気晴らしへの集中とが気晴らしの結果で ある 目標明確化 と 気分緩和 の双方を促進する ことが明らかにされた。そこで筆者は個人の特性 によってもたらされた気晴らしの結果の蓄積によ *  兵庫教育大学大学院学校教育研究科 ** 中京大学心理学部心理学科 ***兵庫教育大学発達心理臨床センター

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 前述したとおり,先延ばしパターンは気晴らし の結果を決定づけ,気晴らしの結果は気晴らしに 対する認知を決定づける。そして先延ばしパター ンは見通し力の影響を受けると考えられる。そこ で筆者は,見通し力が気晴らしに対する認知を決 定づける個人的特性要因となり得ると推測した。 1-3. 見通し力と精神的健康  もともと見通し力は,肥田他(2016)によって, 学校現場において対人関係能力が低く,場の理解, 時間的組み立てに困難を示す一群を発見し,適切 な支援を行えるよう配慮する装置として尺度作成 に伴って命名された能力である。そのため,精神 的健康とも関連があると推測される。  見通し力と精神的健康に関する先行研究は行わ れていなかったが,見通し力と関連のある能力と 精神的健康に関する研究は数多くなされている。 その中のひとつにAutism-Spectrum Quotient (以 下AQ)が挙げられる(肥田他, 2016)。AQとは,ス クリーニングを目的として作成された自閉症スペ クトラム指数を測定する質問紙尺度である(若林・ 東條・Simon Baron-Cohen・Sally Wheelwright, 2004)。伊勢・北口・十一(2015)によれば,AQ 得点が高く自閉性傾向が高いほど心身のストレス 反応が高いことが報告されている。見通し力はも ともと学校現場で困り感を抱えている学生を支援 するための尺度として作成された概念であり,直 接その能力と精神的健康について調べることは非 常に意義があることであると考えられる。見通し 力尺度とAQは類似項目も多い尺度であるが,本 研究では自閉性傾向ではなくあくまで個人的特性 を取り扱うことを目的としているため,見通し力 尺度を採用する。 1-4. 本研究の目的  本研究の意義として,筆者は以下のように考え た。気晴らしに対する認知に影響を及ぼす要因と して個人的特性が明らかになれば,多くの人が自 分の特性に合わせた気晴らしを行い,良い気晴ら しの結果を得ることができる。継続して良い気晴 る学習が気晴らしへの認知に影響を与えると考え た。  気晴らしの結果を左右する要因に関する研究と して,小浜(2012)の気晴らし方略と先延ばしパ ターンについての研究が挙げられる。この研究は 気晴らしと先延ばしにおける 当座のなすべき行 動ではなく別の行動を行う という類似点に着目 して行われ,計画的な先延ばしは事態を楽観視し て無計画に行われる先延ばしよりも気晴らしの結 果を良好にし,気晴らしへの依存も伴いにくいこ とが示された。  しかしこれらの先行研究では気晴らしの結果が 気晴らしに対する認知に与える影響,および気晴 らしの結果に先延ばしが与える影響については議 論がなされているものの,気晴らしそのものに対 する認知と個人が持つ特性との関連についての議 論は見られなかった。そこで本研究では気晴らし に対する認知に影響を与えると考えられる個人的 特性が気晴らしに対する認知に及ぼす影響につい て検討する。 1-2. 気晴らしに対する認知と見通し力  先延ばしパターンを決定づける個人的特性とし て 見通し力 が推測される。見通し力とは,肥田・ 堀・鈴木(2016)によって命名された時間的流れ や現在の状況を推察する力である。この能力は学 力とは関係なく,対人関係能力や場の理解力,時 間的組み立てなどを指し,具体的には 時間的予 測力 場の理解力 感情推察力 の3つからなる能 力である。 時間的予測力 とは時間的経過の中で 全体を把握し,将来を見通し,自分の役割ややる べきことを考える能力である。 場の理解力 とは, 俗に 空気を読む と言われるような,会話などで 対人関係場面を構成する能力である。 感情推察 力 とは,他者の気持ちを推察しようとする意欲 や推測する能力である(肥田他, 2016)。先行研究 では先延ばしパターンと自己統制能力の関係につ いては明らかになっているが,筆者は先延ばしパ ターンには自己統制能力に加えて,見通し力が大 きく影響していると考えた。

(3)

し力が低ければ,気晴らしへのためらいが高くな り,精神的健康が阻害されると予測される。一方, 見通し力が高ければ,精神的健康は促進されるこ とが予測される。 2. 方法 2-1. 研究の対象  A大 学 の 学 生 を 対 象 と し,121名(男性41名, 女性80名。平均年齢19.77歳,SD=.67)の回答が 得られた。調査時期は2017年9月・10月で,無 記名の集合形式による質問紙調査を実施した。 2-2. 材料・装置 (1)フェイスシート  学年と年齢,性別について回答を求めた。 (2)大学生のための「見通し力」尺度;以下見通 し力尺度  肥田他(2016)によって開発された時間的流れ や現在の状況を推察する力からなる「見通し力」 を測定する尺度である。この尺度は大学生の学生 生活への適応と将来の展望に焦点を当てて開発さ れており, 時間的予測力(8項目) 場の理解力(6 項目) 感情推察力(7項目) の3つの下位尺度から なる。 普段のあなたについて伺います。最もあ てはまる番号に○を付けてください。 と書面に て教示を行い,その後 1.そうである 2.わり とそうである 3.あまりそうではない 4.そう ではない の4件法で回答を求めた。 そうである を1点とし, そうではない を4点とした。いずれ も得点が高いほど各下位尺度が示す見通し力に問 題を抱えていることを示す。 (3)気晴らしに対する認知尺度;以下気晴らし尺 度  櫻庭(2010)によって開発された気晴らしに対 する認知を測定する尺度である。この尺度は 気 晴 ら し へ の た め ら い(14項 目) 依 存 状 態(9項 目) 有効性認知(8項目) の3つの下位尺度で構成 されている。 あなたの気晴らしについて伺いま す。最もあてはまる番号に○を付けてください。 らしの結果が得られれば,気晴らしに対する認知 をポジティブなものに変化させることができ,精 神的健康の促進および精神的健康の阻害防止に繋 げることができる。  そこで本研究では気晴らしに対する認知に影響 を与えそうな個人的特性要因を見通し力とし,大 学生の見通し力(時間的予測力,場の理解力,感 情推察力)が気晴らしに対する認知(気晴らしへの ためらい,依存状態,有効性認知)に及ぼす影響 を調べることを目的とする。さらに,見通し力と 精神的健康の関係についても検討する。 1-5. 仮説  仮説 1)見通し力が全体的に低ければ,計画的 な課題の先延ばしが難しく気晴らしの結果が悪く なることで,気晴らしへのためらいや依存状態が 高くなり,有効性認知が低くなることが予測され る。反対に,見通し力が全体的に高ければ,課題 の計画的な先延ばしが継続して行われ気晴らしの 結果が良くなることで,気晴らしへのためらいや 依存状態が低くなり,有効性認知が高くなること が予測される。  仮説 2)小浜(2010)の研究において先延ばし方 略が気晴らしの結果に大きく影響すると報告され ていることから,見通し力の中でも先延ばし方略 に大きく関わると考えられる時間的予測力が気晴 らしに対する認知に特に影響を及ぼすことが予測 される。時間的予測力が低い場合,気晴らしの結 果の行動要因である先延ばしにおいて無計画な先 延ばしがなされ,依存状態が高くなり気晴らしへ のためらいも高くなることが予測される。  仮説 3)伊勢他(2015)の研究において,見通し 力との負の相関が認められているAQ得点が高い ほど心身のストレス反応が高いことが報告されて いる。さらに,櫻庭(2010)の研究において,気 晴らしへのためらいが高いと情動調節方略である 気晴らし方略を活用できず抑うつの程度が強まる ことが報告されている。これらの研究から,見通

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3. 結果 3-1. 性差の検討  性差を検討するために,各下位尺度について平 均値と標準偏差値を男女ごとに求めt検定を行っ た。その結果,各下位尺度とも有意な性差は認め られなかった。よって,以降の分析は男女を合わ せた集団を用いて行うこととする。 3-2. 各尺度間の相関分析  つぎに,各下位尺度間の相関関係を調べるため にPearsonの相関係数を求めた(Table 1)。その結 果,感情推察力―気晴らしへのためらい,依存状 態―有効性認知を除くすべての下位尺度間で有意 な相関関係が認められた。 3-3. クラスタ分析による見通し力の分類  見通し力を分類するために見通し力尺度に対し てWard法による階層クラスタ分析を行い,結果 から解釈可能性を考慮して4クラスタを採用した。 と書面にて教示を行い,その後, 1.全くあては まらない 2.あまりあてはまらない 3.どちら ともいえない 4.少しあてはまる 5.非常にあ てはまる の5件法で回答を求めた。いずれも得点 が高いほど各下位尺度が示す心理傾向が強いこと を示す。

(4)日 本 語 版 The General Health Questionnaire 12;以下GHQ12  中川・大坊(1985)によって日本語版に標準化 されたGHQ-60の短縮版で,精神的健康度を測定 する尺度である。2 3週間前から検査当日までの 健康状態について尋ねる質問紙で,精神的・身体 的問題に関する12項目の質問で構成されている。 4件法で回答を求め,得点が高いほど精神的健康 が低いことを示す。 2-3. 手続き  大学での講義後に被験者に調査への協力を依頼 し,手渡しにて質問紙を配布した。その後口頭に て教示を行い,回答が終了した者から質問紙を提 出して退室するよう求めた。 2-4. 倫理的配慮  本調査は大学の講義後に行われたため,被験者 はいつでも回答を止めて退出することができるこ とに合わせて,それによって講義の成績評価を含 めて不利益を被ることがないことを説明した。原 本はデータ入力後にシュレッダーにて破棄された。

5.非常にあてはまる”の 5 件法で回答を求め

た。いずれも得点が高いほど各下位尺度が示す心

理傾向が強いことを示す。

(4)日本語版 The General Health Questionnaire

12;以下 GHQ

中川・大坊

(1985)によって日本語版に標準化さ

れた

GHQ-60 の短縮版で,精神的健康度を測る尺

度である。

2~3 週間前から検査当日までの健康状

態について尋ねる質問紙で,精神的・身体的問題

に関する

12 項目の質問で構成されている。4 件法

で回答を求め,得点が高いほど精神的健康が低い

ことを示す。

2-3. 手続き

大学での講義後に被験者に調査への協力を依頼

し,手渡しにて質問紙を配布した。その後口頭に

て教示を行い,回答が終了した者から質問紙を提

出して退室するよう求めた。

2-4. 倫理的配慮

本調査は大学の講義後に行われた為,被験者は

いつでも回答を止めて退出することができる事に

合わせて,それによって講義の成績評価を含めて

不利益を被ることがない事を説明した。原本はデ

ータ入力後にシュレッダーにて破棄された。

3. 結果

3-1. 性差の討

性差を検討するために,各下位尺度について平

均値と標準偏差値を男女ごとに求め

t 検定を行っ

た結果,

各度とも有意な性差は認められなかった。

よって,以降の分析は男女を合わせた集団を用い

て行うこととする。

3-2. 各尺度間の相関分析

つぎに,各下位尺度間の相関関係を調べるため

Pearson の相関係数を求めた(Table 1)。その結

果,感情推察力―気晴らしへのためらい間,依存

状態―有効性認知間以外を除くすべての下位尺度

間で有意な相関がみられた。

3-3. クラスタ分析による見通し力の分類

見通し力を分類するために見通し力尺度に対し

Ward 法による階層クラスタ分析を行い,結果

から解釈可能性を考慮して4クラスタを採用した。

各クラスタの下位尺度得点の平均値と標準偏差を

Figure 1 に示す。

5.非常にあてはまる”の 5 件法で回答を求め

た。いずれも得点が高いほど各下位尺度が示す心

理傾向が強いことを示す。

(4)日本語版 The General Health Questionnaire

12;以下 GHQ

中川・大坊

(1985)によって日本語版に標準化さ

れた

GHQ-60 の短縮版で,精神的健康度を測る尺

度である。

2~3 週間前から検査当日までの健康状

態について尋ねる質問紙で,精神的・身体的問題

に関する

12 項目の質問で構成されている。4 件法

で回答を求め,得点が高いほど精神的健康が低い

ことを示す。

2-3. 手続き

大学での講義後に被験者に調査への協力を依頼

し,手渡しにて質問紙を配布した。その後口頭に

て教示を行い,回答が終了した者から質問紙を提

出して退室するよう求めた。

2-4. 倫理的配慮

本調査は大学の講義後に行われた為,被験者は

いつでも回答を止めて退出することができる事に

合わせて,それによって講義の成績評価を含めて

不利益を被ることがない事を説明した。原本はデ

ータ入力後にシュレッダーにて破棄された。

3. 結果

3-1. 性差の討

性差を検討するために,各下位尺度について平

均値と標準偏差値を男女ごとに求め

t 検定を行っ

た結果,

各度とも有意な性差は認められなかった。

よって,以降の分析は男女を合わせた集団を用い

て行うこととする。

3-2. 各尺度間の相関分析

つぎに,各下位尺度間の相関関係を調べるため

Pearson の相関係数を求めた(Table 1)。その結

果,感情推察力―気晴らしへのためらい間,依存

状態―有効性認知間以外を除くすべての下位尺度

間で有意な相関がみられた。

3-3. クラスタ分析による見通し力の分類

見通し力を分類するために見通し力尺度に対し

Ward 法による階層クラスタ分析を行い,結果

から解釈可能性を考慮して4クラスタを採用した。

各クラスタの下位尺度得点の平均値と標準偏差を

Figure 1 に示す。

尺度得点︵点︶

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GHQ12(F =6.62, P<.01)のすべてにおいて有意な 主効果が認められた。  続いて,各クラスタにおける気晴らしへのため らい,依存状態,有効性認知,GHQ12の差を検 討するため,Tukey法による多重比較を行った (Figure 2)。気晴らしへのためらいについては, 高群が中間群,低群よりも有意に低いことが認め られた。依存状態については低群が高群,中間群, 場理解優位群と比較して有意に高いことが認めら れた。有効性認知については,高群が低群と比較 して有意に高いことが認められた。GHQ12につ いては,高群が中間群,低群と比較して有意に低 いことが認められた。 4. 考察  本研究の目的は,見通し力が気晴らしに対する 認知に及ぼす影響を調べること,さらに,見通し 力と精神的健康の関係について検討することで あった。 4-1. 性差の検討  本研究では性差の検討の結果において,どの尺 度についても有意差が見られなかった。よって, 各尺度の得点に性差はなかったとして考察を進め ることとする。 4-2. 見通し力と気晴らしに対する認知との関連  仮説に基づいた結果については以下の通りであ る。  仮説 1)見通し力が全体的に低ければ,気晴ら しへのためらいや依存状態が高く,有効性認知が 低くなり,反対に,見通し力が全体的に高ければ, 各クラスタの下位尺度得点の平均値と標準偏差を Figure 1に示す。  Figure 1から各クラスタを命名した。第1クラ スタはすべての見通し力得点が低い,つまり見通 し力が高かったことから 高群 と命名した。第2 クラスタはすべての見通し力得点が平均的で,見 通し力が中間であったことから 中間群 と命名し た。第3クラスタは場の理解力得点が低く他の下 位尺度得点は高かった。つまり,場の理解力が高 く,それ以外の見通し力が低かったことから, 場 理解優位群 と命名した。第4クラスタはすべての 見通し力得点が高い,つまり見通し力が低かった ことから, 低群 と命名した。 3-4. 見通し力別による気晴らしへの認知とGHQ の比較  見通し力と気晴らしに対する認知との関連を調 べるため,見通し力別による4つのクラスタを独 立変数,気晴らしへのためらい,依存状態,有効 性認知とGHQ12を従属変数として一元配置の分 散分析を行った(Table 2)。その結果,気晴らし へ の た め ら い(F =5.09, p <.01), 依 存 状 態(F =13.62, p <.01),有効性認知(F =3.62, p <.05),

Figure 1 から各クラスタを命名した。第 1 クラス

タはすべての見通し力得点が低い,つまり見通し

力が高かったことから“高群”と命名した。第

2

クラスタはすべての見通し力得点が平均的で,見

通し力が中間であったことから“中間群”と命名

した。第

3 クラスタは場の理解力得点が低く他の

下位尺度得点は高かった。つまり,場の理解力が

高く,それ以外の見通し力が低かったことから,

“場理解優位群”と命名した。第

4 クラスタはす

べての見通し力得点が高い,つまり見通し力が低

かったことから,

“低群”と命名した。

3-4. 見通し力別による気晴らしへの認知と GHQ

の比較

見通し力と気晴らしへの認知との関連を調べる

ため,見通し力別による

4 つのクラスタを独立変

数,気晴らしへのためらい,依存状態,有効性認

知と

GHQ を従属変数として一元配置の分散分析

を行った

(Table 2)。その結果,気晴らしへのため

らい

(

F

=5.09,

p

<.01),依存状態(

F

=13.62,

p

<.01),

有効性認知

(

F

=3.62,

p

<.05),GHQ(

F

=6.62,

<.01)の全てに有意な主効果が認められた。

続いて,各クラスタで気晴らしへのためらい,

依存状態,有効性認知,

GHQ における違いを検

討するため,

Tuekey 法による多重比較を行った

(Figure 2)。気晴らしへのためらいについては,高

群が中間群,低群よりも有意に低いことが認めら

れた。依存状態については低群が高群,中間群,

場理解優位群と比較して有意に高いことが認めら

れた。有効性認知については,高群が低群と比較

して優位に高いことが分かった。

GHQ について

は,高群が中間群,低群と比較して優位に低いこ

とが認められた。

4. 考察

本研究の目的は,見通し力が気晴らしに対する

認知に及ぼす影響を調べること,さらに,見通し

力と精神的健康の関係について検討することであ

った。

4-1. 性差の検討

本研究では性差の検討の結果において,どの尺

度についても有意差が見られなかった。よって,

各尺度の得点に性差はなかったとして考察を進め

ることとする。

4-2. 見通し力と気晴らしに対する認知との関連

仮説に基づいた結果については以下の通りであ

る。

仮説

1)見通し力が全体的に低くければ,気晴ら

しへのためらいや依存状態が高くなり,有効性認

知が低くなり,反対に,見通し力が全体的に高け

れば,課題の計画的な先延ばしが継続して行われ

気晴らしの結果が良くなることで,気晴らしへの

Figure 1 から各クラスタを命名した。第 1 クラス

タはすべての見通し力得点が低い,つまり見通し

力が高かったことから“高群”と命名した。第

2

クラスタはすべての見通し力得点が平均的で,見

通し力が中間であったことから“中間群”と命名

した。第

3 クラスタは場の理解力得点が低く他の

下位尺度得点は高かった。つまり,場の理解力が

高く,それ以外の見通し力が低かったことから,

“場理解優位群”と命名した。第

4 クラスタはす

べての見通し力得点が高い,つまり見通し力が低

かったことから,

“低群”と命名した。

3-4. 見通し力別による気晴らしへの認知と GHQ

の比較

見通し力と気晴らしへの認知との関連を調べる

ため,見通し力別による

4 つのクラスタを独立変

数,気晴らしへのためらい,依存状態,有効性認

知と

GHQ を従属変数として一元配置の分散分析

を行った

(Table 2)。その結果,気晴らしへのため

らい

(

F

=5.09,

p

<.01),依存状態(

F

=13.62,

p

<.01),

有効性認知

(

F

=3.62,

p

<.05),GHQ(

F

=6.62,

<.01)の全てに有意な主効果が認められた。

続いて,各クラスタで気晴らしへのためらい,

依存状態,有効性認知,

GHQ における違いを検

討するため,

Tuekey 法による多重比較を行った

(Figure 2)。気晴らしへのためらいについては,高

群が中間群,低群よりも有意に低いことが認めら

れた。依存状態については低群が高群,中間群,

場理解優位群と比較して有意に高いことが認めら

れた。有効性認知については,高群が低群と比較

して優位に高いことが分かった。

GHQ について

は,高群が中間群,低群と比較して優位に低いこ

とが認められた。

4. 考察

本研究の目的は,見通し力が気晴らしに対する

認知に及ぼす影響を調べること,さらに,見通し

力と精神的健康の関係について検討することであ

った。

4-1. 性差の検討

本研究では性差の検討の結果において,どの尺

度についても有意差が見られなかった。よって,

各尺度の得点に性差はなかったとして考察を進め

ることとする。

4-2. 見通し力と気晴らしに対する認知との関連

仮説に基づいた結果については以下の通りであ

る。

仮説

1)見通し力が全体的に低くければ,気晴ら

しへのためらいや依存状態が高くなり,有効性認

知が低くなり,反対に,見通し力が全体的に高け

れば,課題の計画的な先延ばしが継続して行われ

気晴らしの結果が良くなることで,気晴らしへの

尺度得点︵点︶

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4-3. 見通し力と精神的健康との関連  仮説に基づいた結果については以下の通りであ る。  仮説 3)見通し力が高ければ精神的健康が促進 され,見通し力が低ければ精神的健康が阻害され ることが予測された。相関分析の結果,GHQ12 とすべての見通し力得点において正の相関が認め られた。よって,見通し力が低いほど精神的健康 は阻害されることが示され,仮説3が支持された。  さらに仮説に含まれない新たな知見として,見 通し力の中でも特に場の理解力が精神的健康に大 きな影響を及ぼすことが示唆された。クラスタ分 析によって分類された 高群 中間群 場理解優位 群 低群 の4群に対して精神的健康の多重比較を 行ったところ, 高群 と 中間群 , 高群 と 低群 の間に有意差が認められたが, 高群 と 場理解 優位群 の間には有意差が認められなかった。こ のことから,精神的健康には場の理解力が大きな 影響を及ぼし,時間的予測力や感情推察力が一定 値以下であっても場の理解力が優れている場合は 精神的健康を阻害されにくい可能性が示唆された。 4-4. 本研究の限界と今後の課題  本研究では気晴らしに対する認知に個人的特性 である見通し力が大きく影響を与えることが示さ れた。中でも場の理解力は気晴らしに対する認知, 精神的健康の双方に対して大きな影響を及ぼすこ とが示唆された。その理由として(1)本研究は研 究の都合上A大学の学生からのみ質問紙調査の回 答を得ているため,データに偏りのある可能性が あること,(2)被験者が謙 して全体的に低い得 点を付けたが,他の人から指摘されるか否かとい う項目が比較的多い場の理解力に関する質問は謙 のしようがなく,結果場の理解力がその被験者 の本来の見通し力を示している可能性があること, (3)場の理解力が気晴らしに対する認知および精 神的健康を促進する可能性があることの3点が考 えられる。  今後は様々な大学から幅広いデータを得て調査 を行う必要があると考える。さらに,場理解優位 課題の計画的な先延ばしが継続して行われ気晴ら しの結果が良くなることで,気晴らしへのためら いや依存状態が低く,有効性認知が高くなること が予測された。各尺度の相関分析の結果,見通し 力の下位尺度である 時間的予測力得点 は 気晴 らしへのためらい と 依存状態 との間に正の相 関関係が, 有効性認知 との間に負の相関関係が 認められた。 場の理解力得点 は 気晴らしへの ためらい と 依存状態 との間に正の相関関係が, 有効性認知 との間に負の相関関係が認められた。 感情推察力得点 は 依存状態 との間に正の相関 関係が, 有効性認知 との間に負の相関関係が認 められた。これらの結果から,見通し力が高いと 気晴らしへのためらいと依存状態が低く,有効性 認知が高いことが示された。一方で,見通し力の 中でも感情推察力は気晴らしへのためらいとの間 に相関関係が認められなかったため,気晴らしへ のためらいは,感情推察力の影響を受けにくいと 考えられる。よって,仮説1が支持された。  仮説 2)見通し力の中でも特に時間的予測力が 気晴らしに対する認知に大きな影響を及ぼしてい ることが予測された。クラスタ分析によって分類 された 高群 中間群 場理解優位群 低群 の4群 に対して 気晴らしへのためらい 依存状態 有効 性認知 の多重比較を行った結果,見通し力が高 ければ高いほど,特に一定の基準以上の見通し力 を有する者は気晴らしへのためらいおよび依存状 態が低く,有効性認知が高いという結果が得られ た。特に,依存状態は場の理解力が優れている場 合を除いて,見通し力が一定値以下になると急激 に高まった。場の理解力は時間的予測力と感情推 察力とも有意な正の相関関係が認められたが,ク ラスタ分析では時間的予測力と感情推察力が低く, 場の理解力のみが優れた群が見られた。この 場 理解優位群 は総合的な見通し力がより優れてい る 中間群 よりも気晴らしへのためらい,依存状 態が低かった。有意差こそ出なかったものの,場 の理解力は気晴らしへのためらいおよび依存状態 を低減する要因として大きな役割を担うことが示 唆され,仮説2は支持されなかった。

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要因―プロセス視点からの検討―, 教育心理 学研究, 50, 185-192

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The Relationship between the Cognition of Distraction

and the Ability to Estimate the Future.

Rinna SATOU*, Mitsunori MYOGAN**, Hiroyuki IKEDA*** * Graduate School of Education, Hyogo University of Teacher Education

**Chukyo University

***Center for Development and Clinical Psychology, Hyogo University of Teacher Education

The purpose of this study is to examine the effect of cognition of distraction on the ability to estimate the future among college students. In addition to that, the study also looks at the relationship between the ability to estimate the future and their mental health. A survey questionnaire was consisted of three scales. The first scale is to measure the ability to estimate the future based on past experiences (“mitoshi-ryoku” in Japanese) which has three subscales of “the ability to temporally forecast”, “the ability to read the room”, and “the ability to speculate emotions”. The second scale is to measure the cognition of distraction which is consisted of three subscales- “the hesitation to distraction”, “the state of dependence”, and “the cognition of effectiveness”. And final scale is to the General Health Questionnaire 12 (GHQ12) to measure overall mental health. 121 college students completed the survey.

An analysis of variance was performed, and the ability to estimate the future was classified into four clusters: “high ability to estimate the future group: high group”, “middle ability to estimate the future group: middle group”, “low ability to estimate the future group with high ability to read the room: high-high group”, and “low ability to estimate the future group: low group”. The results indicated the main effects of all subscales was observed between the cognition of distraction and the score of GHQ12. A significant difference was shown between “high group” and “middle group”, and “high group” and “low group”. The results suggested that those subjects who have high ability to estimate the future, especially the ability to read the room, tend to score higher on GHQ12. After conducting a multiple comparison test, the results showed that those who had high ability to estimate the future, especially the ability to read the room have higher scores on “the cognition of effectiveness” while and lower scores on “the hesitation to distraction” and “the state of dependence”.

参照

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