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幼保一体化に対する保育者の意識に関する研究 : 認定こども園に対する全国調査に基づいて

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Academic year: 2021

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(1)幼保一体化に対する保育者の意識に関する研究  一認定こども園に対する全国調査に基づいて一 学校教育学専攻 幼年教育コース  下里 里枝. M10015F 【問題と目的】.  筆者は幼保一体化園の園長として所管の違う. 作成した項目にどの程度同意するのか、より多く. ままの運営には随分苦労した。幼稚園と保育所を. のデータから基本的な分析を行っていく。そうし. 物理的に一緒にしただけで上手くいくものでは. た結果が得られた背景について考察をすること. ない。就学則施設でありながら、根拠となる法律. を第二の目的とする。さらに、幼保一体化のメリ. が違うので、保育所は「児童福祉法に基づく保育」、. ットやデメリットについての意識は、認定こども. 幼稚園はr学校教育法に基づく教育」を提供する. 園の設置者(公立か私立か)、運営方式(幼保連. 施設であるといった紋切り型で実態に即さない. 携型か幼稚園型か保育所型か)、保育者の主な職. 運営になっている。幼保一体化の園に勤務する幼. 歴(主なキャリアが幼稚園教諭か保育士か)、経. 稚園教諭や保育士は、やりがいと誇りをもって保. 験年数等により異なってくるのだろうか。これら. 育しているのだろうか。所管の違いや今までの職. の相違については、従来、定量的な分析がほとん. 歴が影響して、満足感を得られないしんどいこと. ど行われていないことから、実証的に検討するこ. も多々あるのではないだろうか。システムについ. とを第三の目的とする。最後に本研究の動機は、. ての議論や、教育史的、制度論的なアプローチが. 幼保一体化された施設で、保育者が職務にやりが. 主流で、現場の保育者の意識を取り上げた研究は. いや誇りをもって働けるのかという疑問であっ. 数少ない。一体化園での保育の理念や保育者の意. た。そこで、保育者の職務に対する認識が、幼保. 識についてはあまり言及されていないと筆者は. 一体化のメリットやデメリットについての意識. 感じている。幼保一体化の課題は、教育と保育と. にどのように影響するのかを探ることを第四の. いう理念、幼稚園と保育所という実践の場等、. 目的とする。以上、幼保一体化に対する保育者の. 様々なr分断」をいかに埋めていくかに懸かって. 意識を明るみに出しその結果を踏まえ、保育の展. いるように思われる。それは、一気に成し遂げら. 望について考察をしていく。 【方法】. れるものではなくて、現場にあっては、当面目の. 前にあるrメリット」とrデメリット」を自覚し.  筆者を含む現場の保育者2名と保育研究者1名. た上で、メリットを生かしデメリットを緩和する. で協議を重ね、幼保一体化のメリットとデメリッ. という営みを一歩ずつでも成し遂げていくこと. トを表した35項目を独自に作成した。調査対象. が重要である。. 者には、メリットやデメリットとして「とてもそ.  本研究では、ます予備調査を行い、現場の保. う思う(5)」から「全くそうは思わない(1)」まで. 育者の意識を反映させるかたちで、幼保一体化の. の5段階評定で、幼保一体化に対する意識を尋ね. メリットとデメリットをまとめた。さらに、そこ. た。さらに、保育者の職務に対する認識を問う10. での分類を踏まえて、それらのメリットやデメリ. 項目を作成し、5段階で評定を求めた。 【結果と考察】. ットについての項目作成を行うことを第一の目.  項目についての基礎的分析のため、回答率の分. 的とし、次に、現場の保育者の意識として、今回 1.

(2) 布から、次の5つのタイプを設定し項目を分類し. と保育期間の拡大により、保育準備や職員がそろ. た。一致型、高同意型、中同意型、同意分散型、. っての会議がもちにくいことを感じていた。幼稚. 低同意型(計35項目)であった。項目について、. 園は短時間保育なので、子どもが全員いない時間. タイプ別に考察を行った。次に項目評定値につい. や期間がある園が多い。その中での会議や保育準. ての比較分析を行った。幼保一体化に対する保育. 備はスムーズであるが、そうでない一体化園では. 者の意識で、公立と私立の比較が一番顕著な違い. かなりの工夫を必要とするだろう。. が出た。公立の保育者は主として一体化園のデメ.  保育者の意識に関する因子分析を行った。四つ. リットを意識しており、私立の保育者はメリット. の因子が抽出された。「幼保一体化のメリット」、. を感じていた。なぜこうした結果が導かれたのだ. 「幼保一体化のデメリット」、『小学校等との連. ろうか。3つの理由を考えてみた。第1に、新築. 携」、「職員間の協同性」である。保育者の意識を. や改築等の園の施設の改善が、公立より私立で進. 最も説明する第一因子が、幼保一体化のメリット. んでいる可能性が考えられる。第2に、園長のリ. であったということに今後の展望が開けたよう. ーダーシップが、公立よりも私立で発揮されやす. に感じる。保育者の「職務への認識」については. いからではないだろうか。私立の園長は公立と違. 二つの因子が抽出された。r実践に対する自信」. って異動がなく、一貫した保育理念のもとでリー. と「専門職としての自覚」である。さらに保育者. ダーシップを発揮して、継続的に国運営を行うこ. の「職務への認識」が、幼保一体化のメリットに. とができる。私立ならではのぶれない国運営が、. ついての保育者の意識をどの程度説明できるか. 保育者がメリットを感じる背景にあるのではな. を検討するため、重回帰分析を行った。その結果、. いだろうか。第3に公立の保育者は、保育所また. r実践に対する自信」を有する保育者、r専門職. は幼稚園にいわばr本籍」があると感じているケ. としての自覚」を有する保育者は、幼保一体化の. ースが多いのではないか。人事異動という自分の. メリットを感じていることがわかった。また「実. 意思とは関係のない配置換えで認定こども園に. 践に対する自信」を有する保育者は、幼保一体化. 勤務しているので、以前の職場との比較でデメリ. のデメリットを感じにくいことがわかった。. ットを感じるのだろう。. 【総合考察】.  次に保育者の職歴に着目して比較を行った。保.  アンケートをいろいろな角度から分析し、考察. 育士が幼稚園教諭を上回った項目は、保育時間や. をして見えてきたことを、これからは現場や研究. 保育期間の違いからくる子どもへのデメリット. 者、行政をも巻き込み検討していく必要がある。. や、施設の不整備の問題であった。一方、保育カ.  今後、就学前の子ども達は、所管が違うまま、. の向上や小学校との連携につながるメリットを. 保育所、幼稚園、認定こども園などの施設で過ご. 意識していた。一体化したことで従来の保育所よ. すこととなるだろう。子どもがどの就学目11施設に. りは、小学校との連携が進んだためではないだろ. 在籍しても、個々の二一ズに配慮した質の高い保. うか。逆に幼稚園教諭が保育士を上回った項目は、. 育が受けられ、職員間の同僚性のある園で楽しく. 子どもが親の就労の有無にかかわらず、同じ就学. 過ごすことができるようにしていきたい。また、. 前教育を受けることができることや、異年齢を経. そんな就学目11施設こそが、保育者にとってもやり. 験できるメリットを感じていた。幼稚園教論が未. がいと誇りを感じる職場になるのではないか。. 満児保育を経験できることをメリットとして意 識していることが立証されだといってもよい。保. 育士との協力によりメリットを活かしていくべ きだろう。デメリットとしては、保育時間の延長. 主任指導教員  樹11和章. 指導教員 石野秀明.

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