• 検索結果がありません。

我が国の身体障害者補助犬の繁殖コロニーにおけるダイナミン 1遺伝子の突然変異頻度について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "我が国の身体障害者補助犬の繁殖コロニーにおけるダイナミン 1遺伝子の突然変異頻度について"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

24

我が国の身体障害者補助犬の繁殖コロニーに

おけるダイナミン 1 遺伝子の突然変異頻度に

ついて

原著論文

鈴木 宏志1)、横澤 幸美1)、橋本 友樹2)、伊藤 美咲2)、水上 言2) 高柳 友子2)、諏訪 義典3)、加藤 淳一3)、古橋 博昭4)、和田 孝文3) 1)帯広畜産大学 2)日本介助犬協会 3)北海道盲導犬協会 4)関西盲導犬協会

Genotypic frequency of dynamin 1 mutation in service dog

breeding colonies in Japan

Hiroshi Suzuki1), Sakimi Yokozawa1), Yuki Hashimoto2), Misaki Ito2), Koto Mizukami2),

Tomoko Takayanagi2), Yoshinori Suwa3), Junichi Katoh3), Hiroaki Furuhashi4),and Takafumi Wada3) 1)Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine

2)Japan Service Dog Association 3)Hokkaido Guide Dog Association 4)Kansai Guide Dog Association

要 旨

 【目的】身体障害者補助犬の社会への浸透を促進するためには、人獣共通感染症を含む補助犬の公 衆衛生管理の充実および補助犬の能力に関与する遺伝的疾患の把握は、重要な要素であると考えら れる。2008 年、補助犬に汎用されているラブラドールレトリバーに好発する運動誘発性虚脱症候群 (Exercise-induced collapse: EIC) は、ダイナミン 1 の突然変異による遺伝性の疾患であることが明ら かとなった。補助犬では強い運動付加を求められることがほとんどないことから、特に盲導犬や介助犬と しての使役に対しては、本遺伝子の変異が、その能力に影響を及ぼすことは少ないものと考えられるが、 繁殖計画を立てる上で、コロニーの遺伝子頻度の把握は重要であると思われる。  【方法】そこで、本研究では、補助犬の繁殖に供用および供用予定のラブラドールレトリバーとその雑種を 対象にダイナミン 1 の変異について、その遺伝子頻度を解析した。遺伝子変異の同定は、制限酵素Sml I を用いた制限酵素断片長多型 (RFLP) 解析によって行った。  【結果】合計 162 頭の野生型、ヘテロ、ホモの割合は、それぞれ、66%、30% および 4% であった。  【結論】本結果は、今後の繁殖計画の立案および繁殖・育成に有効に機能するものと思われる。 キーワード: 補助犬、運動誘発性虚脱症候群、ダイナミン 1、ラブラドールレトリバー、繁殖 我が国の身体障害者補助犬の繁殖コロニーにおけるダイナミン1遺伝子の突然変異頻度について

(2)

25

日本補助犬科学研究 Vol.10 No.1  著者連絡先: 鈴木 宏志 : 帯広畜産大学 [ 〒 080-8555 帯広市稲田町西 2 線 13 番地 ] e-mail:[email protected] (受付日:2016 年 8 月 21 日、受理日 :2016 年 9 月 1 日) Abstract

In 2008, it has been reported that the syndrome of exercise-induced collapse in Labrador retrievers, the most common breed for service dog, was associated with a mutation in the dynamin 1 gene. To facilitate the service dog in a society, control of public health including zoonosis and management of genetic diseases which associated with potential as service dogs might be essential elements. In this study, genotypic frequency of dynamin 1 mutation was examined in service dog colonies in Japan. When DNA derived from 162 Labrador retrievers in breeding colonies of service dog were analyzed by restriction fragment length polymorphism for dynamin 1 gene mutation, percentages of wild type, heterozygous mutant and homozygous mutant were 66%, 30% and 4%, respectively. As intense exercises are not requested during their training and/or working in service dogs, homozygous mutation of dynamin 1 may not affect their potential as a service dog. When service dogs are made alterations in their role as career changed dogs, however, the genotype of dynamin 1 may influence their activities. Thus, knowing the degree of density and distribution of the gene mutations in breeding colony is expected to contribute to facilitate service dogs to a society. These results might contribute to make a plan for effective breeding in service dog colony.

Key words: service dog, Exercise-induced collapse, Dynamin 1, Labrador retriever, breeding

(3)

26

 身体障害者補助犬の社会への浸透を促進する ためには、人 獣 共 通 感 染 症 を 含 む 補 助 犬 の ブルセラ抗体検査に代表される公衆衛生管理の 充実および進行性網膜萎縮遺伝子検査などに よる補助犬の能力に関与する遺伝性疾患の把握 は、補助犬事業者にとって重要な要素のひとつ であると考えられる1)。2008 年、我が国でも補助 犬に汎用されているラブラドールレトリバーに好発する 運動誘発性虚脱症候群(Exercise induced collapse: EIC) は、脳と脊髄におけるシナプス末端で発 現 し 、 シナプス小胞のエンドサイトーシス、ニューロン 間 の シ グ ナ ル 伝 達 に 重 要 な 役 割 を 果 た す ダイナミン1(dynamin 1: DNM1)の突然変異に よる常染色体上劣性遺伝の疾患であることが 明らかとなった2)。比較的若い月齢から観察さ れる(中央値12 ケ月齢)この症候群の特徴は、 激しい運動の5~15 分後に歩様が不安定になり 最後には後肢が制御不能となるもので、通常は 5~10 分、ほとんどの場合には 30 分後には回復 するが、発症した個体の3% が死に至ることも報告 されている2, 3)。しかし、ホモ個体の全例が発症す るわけではなく、その発症率は8 割程度である4)。 補助犬ではフィールドトライアル/ ハントテス ト等に用いられるような強い運動付加を求 め ら れ る こ と が ほ と ん ど な い こ と か ら 、 補助犬、特 に 盲 導 犬 や 介 助 犬 と し て の 使 役 に 対 し て は 、 本遺伝子の変異が、その能力に 影響を及ぼすことは少ないものと考えられるが、 繁殖・育成計画を立てる上で、繁殖コロニーの 遺 伝 子 頻 度 の 把 握 は 重 要 で あ る と 思 わ れ る。 そこで、本研究では、補助犬の繁殖に供用および 供用予定のラブラドールレトリバーとその雑種 を対象にDNM1 の変異について、その遺伝子頻度 を解析した。  盲導犬および介助犬の繁殖コロニーのラブ ラドールレトリバー(n=155) およびその交雑種 (n=14) から血液を採取した後、PAX gene Blood DNA Tube (QIAGEN) を使用して DNA を抽出した。 RFLP による DNM1 の遺伝子変異 (G767T) の 解析は、Pettersonら2)およびTakanosuら5)の報告に 準じて行った。10 μℓの PCR 反応液中に 2 5 n g の ゲ ノ ム D N A を 使 用 し た 。 D N M 1 遺伝 子変異部位を含む断片337bp の増幅には TaKaRa Ex Taq (TAKARA) を 使 用 し た。PCR は 10 μℓの 系 で 行 い、10 × Ex Taq Buf f er を 1μℓ、dNTP mixture を 0.8μℓ、Fw および Rv プライマー(各 20 μ M)を 0.1 μℓ、TaKaRa Ex Taq を 0.05 μℓ、 DNA 溶 液 (10ng/ml) を 2.5 μℓ、および 5.45 μℓの 蒸留水を含むものであった。プライマーは、 Fw:5’-GTAGGCTCTCCGACCCACTC-3’お よ び Rv:5’-TGAGGACACTAACCCCTGTTG-3’ を 用 い た 。 PCR 反応条件は、95℃で 5 分間変性させた後、 増幅ステップ(95℃・30 秒、62℃・30 秒、72℃・ 30 秒 )を 35 サイクル 行い、最後に 72 ℃ で 7 分 間伸 長 反 応 を 行 っ た。 予想されるPCR 産物は、 337bp であった。得られた PCR 産物を制限酵素 Sml I (NewEngland Biolabs: R0597L) で 55 ℃、 3 時間処理した後、3% のアガロースゲルで泳動、 分離した。Sml I 処理によって、G/G 遺伝子型 (野生型)は337bp のバンドが 1 本、G/T 遺伝子型 (ヘテロ接合体)は337bp、172bp お よ び 1 6 5 b p のバンドがそれぞれ1 本、T/T 遺伝子型 (ホモ接合体) で は 172bp および 165bp のバンドがそれぞれ 1 本現れる。しかしながら、172bp と 165bp は フラグメントの長さが近似であるため、本実験 条件下における泳動上では2 本のバンドとして 弁別することはできない。尚、電気泳動のサイズ マーカーには100bp ラダーを用いた ( 図 1) Ⅰ . 序論 Ⅱ . 材料及び方法 我が国の身体障害者補助犬の繁殖コロニーにおけるダイナミン1遺伝子の突然変異頻度について 図1 イヌにおけるダイナミン 1 遺伝子変異の制限   酵素断片長多型(RFLP) 解析

(4)

27

日本補助犬科学研究 Vol.10 No.1  Ⅲ . 結果   補 助 犬 の 繁 殖 に 供 用 お よ び 供 用 予 定 の ラブ ラドールレトリバーとその雑種14 頭の合計 169 頭を対象にDNM1 遺伝子の変異について、その遺 伝子頻度を解析した結果、野生型、ヘテロ、ホモ の割合は、それぞれ、66.3%、29.6% および 4.1% であった( 表 1)。  P a t t e r s o n ら は 、 米 国 中 西 部 の 4 0 0 頭 の ラブラドールレトリバーについて、DNM1 遺伝子 変異の遺伝子頻度を調べた結果、ヘテロが37%、 およびホモが3% と存在していたことを報告して いる2)。ま た、Minor らは、より規模の大きい 調 査 ( 9 , 1 2 5 頭 ) に お い て 、 ド ッ グ シ ョ ー 、 フィールドトライアル/ ハントテスト、ペット、 補助犬に供用されているラブラドールレトリバー のDNM1 遺伝子変異のヘテロは 18~38% で、 ホ モ は2~14% で あ り、 こ れ ら ホ モ の 84% が 4 才までに発症したことを報告している4)。我 が国においても盲導犬事業所由来のイヌを含む 133 頭のラブラドールレトリバーについて解析 した結果、ヘテロおよびホモが、それぞれ、38% および5% の割合で存在していることが報告され ているが5)、ペットあるいは補助犬の生産、育成 をコントロールする繁殖コロニーにおけるDNMI 遺伝子変異の実態は明らかではなかった。  本研究により、我が国の補助犬の繁殖コロニー においては、これまでの内外の報告とほぼ同様 な頻度でDNM1 変異が存在することが明らか と な っ た。 盲 導 犬 や 介 助 犬 な ど の 補 助 犬 の 訓 練や実働においては、フィールドトライアル/ ハン Ⅳ . 考察 Ⅴ . 謝辞 我が国の身体障害者補助犬の繁殖コロニーにおけるダイナミン1遺伝子の突然変異頻度について トテストに求められるような激しい運動を付加され ることはほとんどないため、本疾患が問題となるの は、補助犬としての使役よりもむしろ、キ ャ リ ア チ ェ ン ジ に よ る 用 途 変 更 後 の 発 症 へ の 懸 念 で あ る 。 そ の た め、 補 助 犬 の 繁 殖 コ ロ ニ ー に お い て も、 遺伝子変異の実態を把握、管理するこ とは重要な事項であると考える。本成績は、今後 の繁殖計画の立案に有効に機能するものと思わ れる。補助犬ユ ー ザ ー に 対 す る 安 全 ・ 安 心 の 提 供 あ る い は 補助犬のキャリアチェンジによる 用途変更の可 能 性 を 鑑 み た 場 合 、 補 助 犬 集 団 に 関 す る 公衆衛生管理や遺伝性疾患に関する適 切な情報の把握とその提供・開示は補助犬事業の 充実に寄与するものと考えられる。  稿を終えるにあたり、九州盲導犬協会のご協力 に深謝いたします。 1) 鈴木宏志 (2009) 盲導犬の人工繁殖 .日本補助犬   科学研究 , 3, 9-16.

2) PATTERSON, E. E., MINOR, K. M.,   TCHERNATYNSKAIA, A. V. et al., (2008)   A canine DNM1 mutation is highly associated   with the syndrome of exercise-induced collapse.   Nat Genet, 40, 1235-1239.

3) TAYLOR, S. M., SHMON, C. L., SHELTON, G.   D. et al., (2008) Exercise-induced collapse of   Labrador retrievers: Survey results and preliminary   investigation of heritability. J Am Anim Hosp   Assoc, 44, 295-301.

4) MINOR, K. M., PATTERSO, E. E., KEATING, M.   K. et al., (2011) Presence and impact of the   exercise-induced collapse associated DNM1   mutation in Labrador retrievers and other breeds.   Vet J, 189, 214-219.

5)  TAKANOSU, M., MORI, H., SUZUKI, H. et al.,   (2012) Genotyping of exercise-induced collapse in   Labrador retrievers using an allele-specific PCR.   Vet J, 193, 293-295. Ⅵ . 文献 13 3> "4-1*   >8 /(G767T)8< 8 (3.) (',# (%) G/G ()) 112 66.3 G/T ( ) 50 29.6 T/T (2!) 7 4.1 7 169 100 5 12

Table 1 Genotypic frequency of dynamin 1 mutation (G767T) in service dog breeding colonies in Japan.

Genotype (phenotype) No. of dogs (%) G/G (normal) 112 66.3 G/T (carrier) 50 29.6 T/T (affected) 7 4.1 Total 169 100 表1 我が国の補助犬繁殖コロニーにおけるダイナミン   1遺伝子変異(G767T) の遺伝子型頻度

Table 1 Genotypic frequency of dynamin 1 mutation (G767T) in

参照

関連したドキュメント

ADAR1 は、Z-DNA 結合ドメインを2つ持つ ADAR1p150 と、1つ持つ ADAR1p110 が.

マーカーによる遺伝子型の矛盾については、プライマーによる特定遺伝子型の選択によって説明す

教育・保育における合理的配慮

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

 我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図

我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費 等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロス 1 が発生している。食品

わが国の障害者雇用制度は、1960(昭和 35)年に身体障害者を対象とした「身体障害

・逆解析は,GA(遺伝的アルゴリズム)を用い,パラメータは,個体数 20,世 代数 100,交叉確率 0.75,突然変異率は