アジア・太平洋地域における国際的人権保障の前進のための過程と法制度および国際機構等の在り方に関する研究課題
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(2) う に援 助 す る こと 。L と 明 記 し て い る。 ま た 、 第 五 五条 ﹁協 力 の目 標 ﹂ C項 にお い ても ﹁人 種 、 性 、 言 語 又 は宗 教. によ る 差 別 のな いす べ て の者 のため の人 権 及 び 基 本 的 自 由 の普 遍的 な 尊 重 及 び 遵 守 ﹂ を う た い 、 経済 社 会 理事 会 の. 任 務 と 権 限 を規 定 し た第 六 二条 二項 にお い て ﹁理 事 会 は 、す べ ての者 の たあ の人 権 及 び 基 本 的 自由 の尊 重 及び 遵 守. を 助 長 す るた め に、 勧 告 を す る こと が でき る。﹂ と 明 記 し てお り 、 防 処 に お い て、人 権 と基 本 的 自 由 尊 重 のた め の 国 際 協 力 に つい て規 定 し て いる。. こ のよ う に国 際 連 合 にお い て、 差 別 撤 廃 、 人 権 尊 重 の問 題 が大 き く 取 り 上 げ ら れ る の にと も な って 、地 域 的 人 権. 保 障 の体 制 も 形 成 さ れ 、大 き く 前 進 す る こ と に な った 。 最 初 に作 ら れ た の は ヨー ロ ッパ 人 権 条 約 であ る が 、 そ の. 後 、 米 州 機 構 憲 章 、 米 州 人 権条 約 、 ア フリ カ 人 権 憲 章 な ど が成 立 し て い るが 、 残 念 な が ら 最 も多 く の人 々が く ら す. アジ ア にお い て地 域 的 人 権 保 障 の体 制 が ほと ん ど 形 成 さ れ てい な い。 そ の こと が 、 アジ ア にお け る人 権 の伸 長 と 保. 護 にお い て大 き く 遅 れ を と る こと に つな が って いる 。 そ れ ら の点 を 憂 慮 し て、 これ ま で国連 総会 や 国連 人 権 委 員 会. 周 辺 でも 、 何 ら か の人 権 取 り決 めを 、 アジ ア太 平 洋 圏 です べき とす る考 え方 が 多 く な り 、 多 く の人 権 N G Oも そ の. 重 要 性 を 認 識 す るよ う にな り 、 アジ ア地 域 人 権 審 議 会 や ロー エイ シ アを はじ あ 、 幾 つか のN G O に よ って、 アジ ア. 太 平 洋 人 権 宣 言 ・条 約 な ど の草案 ま で起 草 す る動 き も 出 てき てい る。 し か し 、 アジ ア にお け る 国際 的 人 権 保 障 体 制 は遅 々と し て進 捗 し て いな い。. そう し た 中 で、 一九 九 四年 を 目途 に、 大 阪 にお い て地 方 自 治体 や N G O、 民 間 人 権 団 体 、 財 界 、労 働 界 、 な ど が. 協 力 す る形 で ﹁アジ ア ・太 平 洋 州人 権 情 報 セ ンタ ー ﹂(仮 称 ) が 設立 され る運 び と な って いる こと は 、 ア ジ ア地 域 に お け る人 権 の伸 長 と 保 護 にと って重要 な 役 割 を 果 す と 考 え ら れ る。. 一20一. 第9号 同和研 究資料.
(3) ア ジア ・太平洋地域 における国 際的人権 保障. こ のよう な 動 き を ふ ま え て、﹁アジ ア ・太 平 洋 地 域 にお る 国 際 的 人権 保障 の前 進 のた め の過 程 と 法 制 度 お よ び 国際. 機 構 等 の在 り 方 に関 す る 研 究 課 題 ﹂を 改 め て、 明確 にし てお く こと が 、重 要 性 を お び て い ると いえ る 。. 今 一つは、 人 権 至 上 主 義 と いわ れ る 国際 連 合 の近 年 の動 き や ソビ エト連 邦 の崩 壊 に代 表 さ れ る 国 際 情 勢 の激 変 な. ど を ふま え て の国 際 的 人 権 保 障 や 地域 的 人 権 保 障 の将 来 像 お よ び 今後 の人 権 の概 念 を 明 確 にし て いく 必 要 が あ る 。. 今 日、 国 際 社 会 にお い て ﹁国 際 強 調 ﹂ と ﹁人 権 ﹂が キ ー ワー ド にな ってい ると いわ れ て い るが 、 こ のキ ー ワード. を ふま え るな ら 国 際 的 人 権 保 障 を いか に強 化 ・発 展 さ せ て いく か は 今後 増 々重 要 な 課 題 だ と いえ る 。. 国 際 連 合 の目 的 は 、 憲 章 の第 一条 に明 記 さ れ て い るが 、 概 括的 に いう な ら ﹁平 和 ﹂、﹁開 発 ( 経 済 的 発 展 )﹂﹁人 権 ﹂. であ る。﹁国 際 協 調 ﹂ と ﹁人 権 ﹂ が な ぜ キ ー ワード にな って いる か と いう ことを 国 際 連 合 の歴 史 を ふ り か え り な が ら. 考 え て いく と 、 一九 四五 年 の十 月 二 四 日 に 国際 連 合 憲 章 が 効 力 を 発生 し 、 国際 連 合 が 創 設 さ れ る こと にな った わ け. であ るが 、 一九 四五 年 以 降 、 一九 五 〇年 代 は、﹁平 和 至 上 主 義 ﹂ と い っても よ い ほど 、﹁平 和 ﹂ の問 題 を 至上 課 題 に し. て い る 。 そ れ は 、 第 二次 世 界 大 戦 の直 後 であ った と いう こと と米 ソが 冷 戦 状 態 であ った と いう こ と が そ の背 景 に. あ ったと 考 え ら れ る。 た し か に現 在 にお い ても 国 際 連 合 にと って ﹁平 和 ﹂ の問 題 は 最も 重 要 な 問 題 であ る こと に変. わり はな いが 、 そ の他 の問 題 と の関 係 で相対 的 にみ た 場 合 、 変 化 し てき てい る こと も 現 実 であ る 。. こ の国 際 連 合 の第 一期 と も いわ れ る 時 代 に お い て ﹁平 和 ﹂ を 至 上 課 題 にお い て追 求 し てき た にも か か わ らず 、逆 に核 兵 器 が 世 界 に拡 散 し 、 軍 備 が 拡 大 さ れ た こと も 事 実 であ る 。. 次 に 一九 六 〇年 年 代 に入 って ﹁開 発 ﹂ と い う問 題 が 本 格 的 にと り あ げ ら れ る よう にな る。 国 際 連 合 では 、 一九 六. 一年 に ﹁国 連 開 発 の十 年 ﹂ が 総 会 で採 択 さ れ、 南 北 問 題 が 本 格 的 にと り あげ ら れ る よう にな るが 、 これ は 国際 連 合. 一21一.
(4) 発 足当 初 と 加 盟 国 の状 況 が今 日 で は 一変 し た と いう こと が 背 景 に な ってい る。 国 際 連 合 は発 足 当 初 五 一の加 盟 国 で. あ り 、 当 時 は アジ ア ・ア フリ カな ど の発 展 途 上 国 は 、 五 一ヵ国 中 十 一ヵ国 であ ったが 、 今 日 では 発 展 途上 国 は 一〇. 〇 ヵ国 を こえ 、 ほぼ 三分 の二 を 占 あ る よ う に な って い る。 特 に 一九 六 〇年 代 以降 、 これ ら の国 々 の意 向 を 無 視 し. て、 重 要 な 国 際 法 上 の原 則 や 国際 的 問 題 を 審 議 し 決 定 す る こと は でき な く な ってき て い る。. こう し た 中 で ﹁開 発 ﹂ が 重 要 な テ ー マと し て浮 上 し てき た の であ る が 、 そ の結 果 、 現 在 の極 め て重 要 な 人類 的 課. 題 であ る地 球 環 境 破 壊 のバ ックグ ラ ウ ンド を 形 成 す る こと にな ってし ま った の であ る。. つま り 、﹁平 和 ﹂ を 追 求 し て、 力 足 ら ず し て ﹁核 兵 器 の拡 散 ﹂ を 許 し てし ま い、﹁開 発 ﹂ を 追 求 し て、﹁地 球 環 境 破. 壊 ﹂ へ つな が って し ま った の であ る。 そ し て、 こ の ﹁核 兵 器 の拡 散 ﹂と ﹁地 球 環 境 破 壊 ﹂ は、 第 一に、 放 置 す れ. ば 、 人 類 が と も に滅 亡 す る可 能 性 を持 って い る問 題 であ る と いう こと であ る 。第 二 に、 人 類 土ハ 滅 の可 能 性 を有 す る. 問 題 で はあ るが 、 自 然 の災 害 では な く 、土ハ 滅 の可 能 性 を 持 った 人 類 そ のも のに よ ってな さ れ た と いう 点 であ る 。第. 三 に﹀ 一国 だ け で は 到 底 解 決 す る こと す ら でき な い課 題 であ る と いう 点 であ る 。 こ の三 つの共 通 点 を ふ ま え る な. ら、 第 一の ﹁人 類 共 滅 ﹂ では な し に ﹁生 き 残 り ﹂ のた め には 、 第 二 の人類 によ ってな され た こと であ る な ら 、 限 界. 点 に達 す る前 であ れ ば 、 人 類 によ って是正 す る こと が 可 能 だ と いう こと であ る 。第 三 の 一国 だ け で解 決 不 可能 であ. るな ら 先 に紹 介 し た キ ー ワード であ る ﹁国際 協 調 ﹂す れ ば 、 解 決 可 能 だ と いえ る。 こ の ﹁国 際 協 調 ﹂ は ま さ に、 以. 上 述 べた よう な 人 類 的 危 機 に直 面 し た中 で出 てき た キ ー ワ ード であ り 、 そ れ だ け の重 みを 有 し て い ると いえ る 。 ま. た、 こ の よう な 状 況 の中 か ら 第 三 期 と も い え る国 際 連 合 の中 で ﹁人 権 ﹂ が 最 重 要 テ ー マと な ってき た の であ る 。 要. す る に、 人 間 が 人 間 ら し く 生 き る 権 利 を実 現す る こと が 、 国 際 連 合 の究 極 の目的 であ って、 平 和 も 開 発 も 人 権 の実. 一22一. 第9号 同和研究 資料.
(5) ア ジア ・太平洋地 域におけ る国際的人権保障. 現 のた め の必 要条 件 であ ると いう 考 え 方 が 明 確 に打 ち出 され てき てい る の であ る 。﹁地 球的 課 題 とし て の人 権 ﹂ が ク. ローズ ア ップ さ れ 、 平和 や経 済 の問 題 も 、 科 学 技 術 のめざ ま し い進 歩 や経 済 の発 達 によ って、 国家 は 国民 の安 全 を. 保 障 す る 能 力 を失 い つ つあり 、﹁国 家 の安 全 ﹂ か ら ﹁人類 の安 全 ﹂ へ、﹁国 民 経 済 ﹂ か ら ﹁人類 の経 済 ﹂ へと 変 化 し て. き て い る。 地 球 環 境 を 保 つ開 発 と いう 視 点 に立 ってグ ローバ ルな 協 力 が 必 要 であ る よ う に、﹁国 家 のな か の人 権 保. 障 ﹂ か ら 国 家 を こえ て、 人権 を ど う確 立 し て いく か が 問 わ れ てい る。 日本 国 内 にお い ても 外 国人 労 働 者 問 題 を はじ. あ と し て、 国 際 関 係 を と も な う 人 権 問題 が重 要 な テ ー マにな ってき てい る こと か ら も 明 ら か であ る 。. さ ら に、 今 日 の国 際 収 支 の不 均 衡 や南 北 格 差 、 人 口 の不 均 衡 、経 済 発 展 と 自 然 環 境 保 全 の不 均 衡 な ど に代 表 され. る人 類 的 危 機 を と も な う 国 際 的 不 均 衡 や格 差 を 解 消 し て いく た め には ﹁国際 協 調 ﹂ し か な い こと は 明白 であ る。. 以上 、 そ の背 景 を 明 確 にし た ﹁国 際 協 調 ﹂と ﹁人 権 ﹂ を ふ ま え る な らば 、 国 際 的 人 権 保 障 は 増 々重視 さ れ て いく. と と も に地 域 的 人 権 保 障 の必 要 性 も 増 々高 ま ると いえ る。 し か し 、 アジ ア太 平 洋 地 域 にお い て の地域 的 人権 保 障 体. 制 は確 立 さ れ て いな いし 、 他 の地 域 に比 較 し て困 難 な 問 題 も 山 積 み し て いる。 そ こ で、 こ の拙 稿 にお い て、 アジ ア. 太 平 洋 地 域 にお け る人 権 保 障 体 制 の確 立 へ向 け て、 ど のよ う な 研 究 課 題 が存 在 す るか だ け を 明 ら か にし てい く こ と とす る。. (2 ). 日本 国内 にも部落差別を始あ在 日韓国朝鮮人差 別や近年、急浮上し てきた外 国人労働者問題などさまざまな人権. 一23一.
(6) 問 題 が存 在 し て いる 。 そ れ は アジ ア太 平 洋 地 域 の国 々も 同 様 であ り 、各 国 に さま ざ ま な 問 題 を か か え て いる 。 この. アジ ア太 平 洋 地 域 ほ ど 多 様性 を持 った地 域 は他 にな いと いえ る 。 ま た 、 そ の こと に よ って、 アジ ア太 平 洋 地域 に お. け る国 際 的 人 権 保 障 の 問 題 を 考 え る にあ た って先 にも 記 し た よ う に困 難 さ も 山 積 み し て い る。 そ れ ら の困 難 な 点. を 、 国 連 人 権 担 当 官 でも あ った故 久 保 田洋 氏 が 以 下 のよ う にま と め て いる。 第 一に、 世 界 人 権 宣 言 を 中 心 とす る 国. 際 条 約 等 の説 明 す る 人 権 と は 、 キ リ スト教 の伝 統 と ヨ ー ロ ッパ資 本 主義 の価 値 観 か ら 生 ま れ てき た の であ って、 ア. ジ アは 必 ず し も そ の適 用 が 適当 と は い えな いと いう こと 。 第 二 に、 アジ アにお い て は、 政 治 的 お よ び社 会 的 権 威 、. 特 に国 家 に対 す る 黙 従 の習 慣 があ ると す るも の。 第 三 に、社 会土ハ 同体 の利 益 が、 個 人 利 害 を 超 越 し 、 個 人 間 の信頼. 関 係 が 最 も 重 視 さ れ る と いう考 え方 が あ ると す るも の。 第 四 に、 経済 発 展 と富 国 強 兵 の政 策 を と る アジ ア諸 国 が多. く 、 そ の多 く が 社 会 規 範 の形 成 ・強 化 と 集 団 訓 練 、 そし て秩 序維 持 に力 を いれ 、 人 権 は、 二次 的 、 三次 的 な重 要 性. し か 与 え ら れ て こな か った 点 。第 五 に、 超 大 国 家 の直 接 ・間接 の干渉 は、 国 家 の独 裁 的 あ る いは 権 威 主義 的 性 格 を. 助 長 さ せ る 結 果 と な った 点 。 第 六 に 、 アジ ア諸 国 政 府 は 、 独立 後 これま で人 権 問 題 にあ ま り 大 き な 関 心 を 示 し てこ. な か った こと や 条 約 批 准 ・加 入 状 況 も 非 常 に 低 い点 。 第 七 に、 今 ま で十 分 な 人 権 教 育 も 施 さ れ て いな い点 。 第 八. に、 アジ ア諸 国 は 、 民 族 的 ・歴 史 的 ・文 化 的 ・宗 教 的 に多 様 で、 一つの人 権 基 準 が当 ては ま ると は考 え ら れ な い. 点 。 第 九 に、 アジ ア地 域 には 、 ヨー ロ ッパ審 議 会 、 米 州 機構 、 ア フリ カ統 一機 構 と い った 設 立 母 体 と な り 易 い 、 一. 般 的 地 域 組 織 が 存 在 し な い点 。第 十 に 、多 く の国 が 、 多 民族 、多 宗 教 、多 言 語 、 少 数 者 問 題 な ど を 抱 え て いる点 。. な ど が あ げ ら れ て いる 。 これ ら 以外 にも 国 家 体 制 の明 確 な ち が いな ど多 く の差 異 が あ ると 考 え ら れ る が 、 これ ら の 理 由 も そ れ ぞ れ 互 い に結 び 付 い てい るし 重 複 も し て いる 。. 一24一. 第9号 同和研究資料.
(7) アジア ・太平洋地域 における国 際的人権保 障. 近 年 、 アジ ア では 、国 際 的 な レベ ルか ら み る と 、経 済 発 展 と いう こと では 離 陸 を し始 め た 国 も 多 いが 、 人 権 状 況 は必 ず し も そ れ に伴 って好 転 し て いる と は いえ な い 。. こ のよ う な人 権 意 識 の低 さ や人 権 状 況 の深 刻 さ が常 に語 られ 、 他 の地 域 のよ う に本 格 的 な 地 域 的 協 力 機 構 の設 立. が 先 に述 べた よ う に難 し いと いわ れ て い る アジ ア地域 であ るが 、 そう であ るか ら こそ 、将 来 に向 け て の人 権 お よ び 基 本 的 自 由 の尊 重 と遵 守 への歩 みが 必 要 と いえ る の であ る。. そ う し た 点 を ふ ま え て、 研 究 課 題 の第 一に、 地 域的 な人 権 保 障 の分 野 でと り く み が積 み重 ねら れ 、 一定 の前 進 を. み て い る他 の地 域 、 す な わ ち 米 州 、 ア フリ カ で の状 況 に ふ ま え つ つ、 特 に ヨー ロ ッパ にお け る 成 立 過 程 、 条 約 内. 容 、 現 状 、 成 果 と 問題 点 お よび 課 題 な ど を 明 ら か にし 、 ヨー ロッパ審 議 会 や ヨー ロ ッパ人 権 委 員 会 、 ヨー ロ ッパ 人. 権 裁 判 所 の機 能 や 役 割 お よび 権 限 と 各 国 お よ び 国 連 の諸 機 関 と の関 係 な ど も 設 定 し 、追 求 し ていく 必 要 が あ る。 さ. ら に米 州 機 構 と 米 州 人権 委 員 会 、 お よび ア フリ カ 人 権 委 員会 の成 立 過 程 、 宣 言 、 現状 、成 果 と問 題 点 、 課 題 な ど も ヨ ー ロ ッパ 同 様 、 研 究 課題 と し 、 明 確 にし て いく 必 要 が あ る。. ち な み に ヨ ー ロ ッパ 人権 委 員 会 の組 織 ・手 続 ・活 動 と ﹁ヨー ロ ッパ理 事 会 と 人 権 保 護 ﹂ に 関し て ヨー ロ ッパ 人 権. 条 約 、 保 護 機 関 、 人 権救 済 の手 続 き の流 れ な ど に つい て重複 し て い る部 分 も あ るが 参考 のた め に 以下 に紹 介 す る。. 一25一.
(8) 、. ヨ ー. 組 織 ・手 続 ・活 動. 条 約 と そ の機 関. ロ ッパ 人 権 委 員 会. 1. 人 権 及 び 基 本 的 自 由 の保 護 のため の条 約 (ヨー ロ ッパ人 権 条 約 ) は、 それ が 保 障 し てい る権 利 と 自 由 を 第 1章 で規 定 し て いる 。. 2. 条 約 の下 、 締 約 国 が そ の義務 に従 って行 動 す る ことを 確 実 にす るた め 、 ヨー ロ ッパ人 権 委 員 会 と ヨー ロ ッパ 人. 権 裁 判 所 が 条文 に基 づ き 設立 され た 。 さ ら に条約 は 、 ケ ー スが 裁 判 所 に付 託 さ れ な か った場 合 の裁 定 権 と 付 託 さ れ た 場 合 は そ の判決 の執 行 の監 督 権 を 、 閣僚 委 員会 に全 権 委 任 し て い る。. 1 9 5 3 年 9月 3 日 の条 約 実 施 以 来 、 ハンガ リ ー を 除 く ヨー ロ ッパ 理事 会 加 盟 国 はす べ て条 約 を 批 准 し てき た。. 条約 の8 つの議定 書 も 同様 に順 次 実 施 さ れ てき た。 そ の内 4 つは (第 1、 第 4 、第 6、 第 7) 条 約 に保 障 さ れ て. いる 権 利 や自 由 に追 加 さ れ る権 利 や自 由 を規 定 し てい る。 第 8議 定 書 は 委 員 会 を部 会 に分 け る こと を 可能 にし 、 明. 白 に受 理 不 可能 な匿 名 の申 立 てを 却 下 でき る 最低 3名 の委 員 か ら な る 小 委 員会 設立 を 規 定 し て い る。 ま だ 実施 さ れ. てい な い第 9議 定 書 は、 個 人 が ヨー ロ ッパ人 権 裁 判 所 に直 接 提 訴 でき る 権 利 に 関す るも の であ る。. 一26一. 第9号 同和研究資料.
(9) ア ジア ・太平洋地域におけ る国際的人権保障. 3 .条 約 実 施 以 来 、 あ る締 約 国 の条 約 不 履 行 を 別 の締 約 国 が 委 員会 に提 訴 でき るよ う 、 国 家 の申 請 が 認め られ てお り 、 それ によ り 、 いわ ゆ る ヨー ロ ッパ の公 序 の維 持 に携 わ ってき た。. 4. 締 約 国 によ り 条約 侵害 の犠 牲 者 にさ れ た と 訴 え る 個 人 (も しく は N G Oか 個 人 の集 団 ) か ら 、個 人 の申 立 てを 聞 く 司 法 権 も 委 員 会 は有 す る。. 現 時 点 では 、 全 締約 国 23 力国 が 、 個 人 の申 立 てを 聞 く委 員会 の権 限 を 認 め た 任 意 の宣 言を 行 ってい る。. 委 員 会 の組 織. 5. 委 員 会 は 締 約 国 と 同数 の委 員 か ら 成 り 、 一締約 国 か ら 一名 を こえ る委 員 を 選 出 す る こと は でき な い。. 委 員 会 の委 員 は 、 主 要締 約 国 の各 国 代 表 団 が協 議総 会 に出 し た提 案 を も と に協 議総 会 事 務 局 が 作 成 し た リ スト よ り 、 ヨー ロ ッパ 理事 会 が 選出 す る 。 委 員 の任期 は 6年 であ る。. 委 員会 の委 員 は 個人 の資 格 で行 動 す る 。 委 員 は い かな る国 も 代 表 せ ず 完 全 に独 立 し ていな く て はな ら な い。 委 員 の手当 ては ヨー ロッパ 理事 会 の予 算 で賄 わ れ る 。 6. 委 員会 の仕 事 はす べ て非 公 開 で行 わ れ 、 そ の フ ァイ ル は極 秘 であ る。. 7. 委 員会 は そ の手 続 規 定 を 作 成 し 、 3年 に 1度 、委 員 長 と 2名 の副 委 員 長 の再 選を 行 う。. 8. 委 員会 は常 時 開 か れ な い。 1 9 9 0年 は 、 16会 期 が 開 会 さ れ た 。 1 9 91年 も 同様 に 16会 期 予 定 さ れ て いゐ 。. 9. 委 員 会 の任 務 を 助 け て い る の は 、常 設 の事 務 局 であ り 、 1 9 9 0年 末 現在 、 異 な る 国 籍 を も つ33人 の法 律 ス タ ッフと 20人 の総 務 ア シ スタ ント が 、 事務 局を 構 成 し て い る。. 一27一.
(10) 10 . 以下 に述 べる 手続 は 、条 約 第 25条 に従 って提 出 さ れ た 個 人 申 請 に 適 用 さ れ る。. 個 人申 請 の手 続. 11. ヨ ー ロ ッパ 理 事 会 か ら の資金 で、 わず か な 財 力 の個 人 に対 し て 一定 の条 件 の下 、 無 料 の法 的 援助 を与 え る こと. に て審査 さ れ る。 明 ら か に全 体 会 議 に回 す 必要 がな い ケ ー スに対 し ては 、 部 会 が委 員会 に与 え ら れ て いる 全権 を. れ てい る 。確 立 され た判 例 法 を 基 本 に対処 でき る ケ ー スや 、 条 約 解 釈 に重 大 な 問 題を 提 起 し な いケ ー スは 、部 会. そ の場 合 、 被 告 政 府 は書 面 によ る所 見を 委 員会 より 求 あ ら れ る。 そ の所 見 に対 し申 請 者 は応 答 す る ことを 許 さ. 合 、被 告 政 府 に通 知 せ ず に申 請 を 却 下 でき る。. 13 . 委 員会 ま た は 3人 の小 委 員 会 は、 申請 者 か ら え た情 報 よ り 申 立 てが 受 理 不 可能 であ ると 明 ら か に判 断 さ れ る場. の情 報 を 求 め る こと が でき る。. に 回 され る。 レポ ー タ ーか 委 員 会 は 、被 告 政 府 と 申 立 てを し た 個 人 の両 方 か ら 、 ケ ー ス の状 況 に関 す る事 実 確 認. 12 . レポ ー タ ーと し て委 員 が 予 備 審 査 を行 った後 、 登 録 さ れ た 申 請 は 受 理 審査 の ため に 3名 の委 員 も し く は委 員 会. てき た。. 無 い こと を 公 的 な 書 類 でも って証 明 し なく てはな ら な い。 1 96 4 年 以来 、 5 3 9人 の申 請 者 が こ の援 助 を 受 け. が でき る。 例 え ば 、 当 時 国 と申 請 者 の間 に議 論 が 必 要 と な った 時 に これ が な され る。 そ の場 合 、申 請 者 は財 力 が. せ る必 要 は必 ず し も な い (ただ し 、 代 理 さ せ る方 が 望 ま し い)。. 実 務 上 、 申 請 は 委 員会 事 務 局 に出 され る。 手 続 は 無 料 のた め 、 何 ら費 用 は伴 わ な いし 、 申 請 を法 律 家 に代 理 さ. 第9号. 行 使 す る 。申 請 受 理 可否 に関 し て特 に複 雑 な 問題 が上 が った 場 合 、 委 員 会 ま た は部 会 は審 問 を 行 い そ の場 で両方. 一28一. 同和研究 資料.
(11) アジア ・太平洋地域 にお ける国際的人権保障. の当 事 者 の代 理 人 は 口頭 陳 述を す る 。. 14 .次 に委 員 会 ま た は部 会 は 、適 切 な 条 件 が満 たさ れ て いる か 、 特 に申 請 の対 象 が 条 約 に含 ま れ て いる権 利 に関 係. し て い るか 、 申 請 が 国 内救 済 の終 了 に関 す る資 格 に応 じ て いる か な ど の チ ェックを し た 後 、申 請 の受 理を 決 定 す. る。 国 内 救 済 の終 了 に関す る資 格 と は、 委 員 会 に提 訴 す る 前 に 申立 て本 人 は、 訴 え て いる 条約 違 反 の救 済 の司 法. 権 を持 つ国内 の司法 ま た は行政 当 局す べ てに、 適切 な 手段 で訴 え を起 こし た後 でな いと いけな い こと を意 味 す る。. 申 請 者 が 申 請 取 消 を宣 言 し た場 合 、 ま た は手 続 き を 怠 った場 合 、申 請 を リ スト か ら はず す こと が でき る。 し か し 、 これ は 受 理 の可 否決 定 を 意 味 す るも の では な い。. 全 体 会 議 によ る委 員 会 は 、 最小 10人 の委 員 の出 席 で提出 さ れ た申 請 を 審 査 す る が 、特 定 のケ ー スの場 合 7人 ま. で減 ら す こと が でき る 。 ま た委 員 会 は、 1名 ま た は そ れ 以上 の委 員 に特 別 任 務 を 委 任 す る こと が でき る。 委 員 会 の部 会 は 最小 7人 の委 員 よ り構 成 さ れ る 。. 15. 受 理 を決 定 す れ ば 、小 委 員会 と 部 会 を 含 む 委 員 会 は 、 最終 判 定 を く だ す 。 申 請 受 理を 却 下 し た委 員 会 の決 定 に. 対 し 上 訴 は できな い が 、新 事 実 を 提 出 でき る な ら ば 、申 請 者 は別 件 と し てあ ら た に提 訴 でき る。. 16. 申請 が 受 理 さ れ ると 、委 員会 ま た は 部 会 が 綿 密 な審 査 に入 る。 当 事 者 の助 け を 借 り て事 実 立 証 が 行 わ れ 、 適 切. な ら ば 調査 も も たれ る。 そ の場 合 調 査 を 効 果 的 に 行 う たあ 、 被 告 政 府 は必 要 な便 宜 を す べ て図 ら な く ては な ら な い。. 17.条 約 に規 定 され てい る人 権 尊 重 を 基 礎 に、 事件 の友 好 的 解 決 を 確 保 す る 見地 か ら、 解 決 は当 事 者 の任 意 に 任 さ れ ており 、 委 員 会 は調 停 者 と し て行 動 し な く ては な らな い。. 一29一.
(12) 友 好 的 解決 の条 件 は、 非 常 に簡 潔 な 報 告書 にま とめ られ 公 表 さ れ て いる 。. 18. 友 好 的 解 決 に至 ら な い場 合 、 委 員 会 ま た は部 会 は 報 告 を 作 成 す る (第 31条 )。 報 告 に は 以 下 の こ と が 含 ま れ る。. 1論 争 の土 台 とな って い る事 実 の提 出 。 これ は委 員 会 がす で に確 認 し て いる 。 当 事者 双方 の代 理 人 が 関 与 す る 調. 査 (す な わ ち 、 証人 の審 問 、 書 類 の審 査 、 現場 の視 察 )が 必 要 と な った 場 合 は 、 そ れ らも 含 ま れ る。. ー被 告政 府 の条約 違 反 が、 事 実 によ って明 ら か にさ れ てい るか ど う か の法 的 見 解 。 も し委 員 会 の見 解 が 全 員 一致 でな け れ ば 、少 数 派 の意 見も 別 の意 見 と し て報 告書 に 記載 され る。. 19. こ の報 告書 は 、 ヨー ロッパ 理事 会 の閣 僚 委 員会 と被 告 政 府 に送 ら れ るが 、 申請 者 本 人 に は送 ら れ な い。 裁 判 所. にケ ー スが 付 託 さ れ な い 限 り 、報 告 書 は 閣 僚 委 員会 が決 定 を 下 す ま で極 秘 扱 い にさ れ る。. 報 告書 を 送 付 す る 際 、 委 員会 ま た は部 会 は 適切 と 思 え る提 案 が あ れ ば それ も 同 時 に出 す こと が でき る 。. 20. そ の後 、 ケ ー スは 3 カ月 以内 に委 員 会 ま た は当 該 政 府 に よ って裁 判 所 に付 託 さ れ 、 侵害 があ った か ど う か の点. に つい て判 決 が 下 され る。 第 9議 定 書 が ま だ 実 施 さ れ てい な い の で (第 2 項 参 照 )、 個 人 では ケ ー スを 裁 判 所 に 付 託 でき な い。. 裁 判 所 では 、 委 員 会 は 一般 的 な 弁 護 の役 割 を 果 たす 。申 請 者 個 人 も し く は 被 告 政 府 に訴答 す る よう な 当 事 者 と. し て の行 動 は と ら な い が 、意 見 は出 す 。 条 約 違 反 は な か ったと いう 意 見 にな る こと も十 分 あり う る。 委 員 会 の代 表 は 、 委 員 会 の多 数 派 と少 数 派 の両 者 の意 見 を 実 際 に提 出 す る こと も あ る。 ケ ー スが 裁 判 所 に 付 託 さ れ な い場 合 、 判 定 は 閣 僚 委 員会 が行 う 。. 一30一. 第9号 同和研究 資料.
(13) ア ジ ア ・太 平 洋 地 域 にお け る国 際 的 人 権 保 障. 条 約 24条 の下 、 国 家 が 提 訴 し た場 合 は 、上 記 の個 人 提 訴 と 同 様 の手続 き を 踏 む こと にな る 。. 21 . 国家 申 請 の手 続 き. 委員会 の活動. ギ リ シ ャ に 対 す る 5 件 の 提 訴 。 デ ン マー ク 、 ノ ル ウ ェー 、 ス ウ ェー デ ン、 オ ラ ン ダ 政 府 が 、 ギ リ. も の。. ト レ ン ト 控 訴 院 で 裁 判 を う け た 南 チ ロ ル / ア ル ト ・ア デ ィ ジ ェ の青 年 た ち の 裁 判 の 進 め 方 に 関 す る. オ ー ス ト リ ア が イ タ リ ー を 相 手 に 出 し た 提 訴 。 殺 人 容 疑 で ボ ー ゼ ン/ ボ ル ザ ノ ・ア ジ ス 裁 判 所 と 、. の申 立 てを 行 った 。. 当 時 英 国 統 治 下 にあ った キプ ロ ス島 住 民 に英 国 政 府 が 取 ったあ る措 置 に対 し 、 ギ リ シ ャ政 府 が 2件. 22 .条 約 実 施 以来 、 委 員 会 への国 家 提訴 は こ れま で 18件 あ った 。 1 9 5 6年. 1 9 6 0年. 1 9 6 7年. "コ ロネ ル 独 裁 政 権 " に よ る 一連 の 条 約 違 反 を 1 9 7 0 年 訴 え た 。. 英 国 が北 ア イ ル ラ ンド で実 施 し た措 置 に関 し 、 アイ ル ラ ンド共 和 国 が英 国 を 相 手 ど って提 訴 し た 。. シ ャの 1971年. キ プ ロ スが 提 訴 し た 3 件 の ケ ー ス 。 1 9 7 4 年 以 降 、 キ プ ロ ス島 で起 こ った あ る 1 9 7 7 年 事 件 に. デ ン マー ク 、 フ ラ ン ス 、 オ ラ ン ダ 、 ノ ル ウ ェ ー 、 ス ウ ェ ー デ ン の政 府 が 、 ト ル コ政 府 に 対 し て 5 件. お け る ト ル コの関 与 に関 す る も の。. 19 7 4 年. 19 8 2 年. 一. 3ー.
(14) の提 訴 。 1 9 8 0年 9月 1 2日 か ら 1 9 8 2年 7月 1 日ま で のト ル コ の国内 状 況 に関 す るも の。. これ ら 提 訴 の中 で、 北 アイ ル ラ ンド に関 す るケ ー スだ け が ヨー ロ ッパ 人権 裁 判 所 にも ち こま れ た 。 スカ ンジ ナ. ビ ア 3国 の政 府 と フ ラ ン ス、 オ ラ ンダ 政 府 が ト ル コ政 府 を 訴 え た ケ ー スは解 決 され た 。 そ の他 のケ ー スは、 閣 僚. 委 員 会 で処 理 さ れ た か 、 も し く は 現在 処 理中 であ る (但 し 、 北 アイ ル ラ ンド に関 す る 2番 目 の提 訴 は 、 リ ストか ら はず さ れ た 。). 23. 委 員 会 設 立 の ユ 9 5 4年 7月 か ら 1 9 9 1年 1月 ま で の間 、 1 7 、 5 6 8件 の個 人 提 訴 が あ った 。毎 年 約 5、. 0 0 0件 、 個 人 の訴 え が 委 員 会 に送 ら れ てく るが 、 1 9 9 0年 の場 合 、 そ の内 1、 6 5 7件 が 登録 され 、 8 2 1 件 の個 人 提 訴 が 委 員 会 で受 理 さ れ た 。 そ し て 96件 が 友 好 的 解 決 を み た 。. これ ら 友 好 的 解 決 は、 申 請 の多 様 さ に象 徴 さ れ て いる よ う に、 さ まざ まな 状 況 で行 わ れ る 。 民事 や 刑事 訴 訟 に. 関 す る申 立 て に加 え (例 、 司p罎 9σq9 対 フラ ン ス Ω鍵 ぴΦヨ p弓 対 西 ド イ ツ)、 精 神 病 の人 の拘 留 に関 す るケ ー ス. (例 、諺目 ヨ o鴇 対 スウ ェーデ ン) や市 民 的 身分 ( 例 、qo} 冨 と ピ①げ旨 づ対 ベ ルギ ー)、 外 国人 の追 放 ( 例 、 竃⇔霧 陣. 対 スウ ェーデ ン)、 労 働 組 合 の権 利 ( 例 、 Oo導 o図と Oゴ碧 げpコ対 イギ リ ス) な ど が あ る。 これ ら友 好 的 解 決 の. 多 く は、 国 内 法 や 規 則 の改 正 に影 響 を 及 ぼし た り 、 一定 額 の賠 償 支払 いを 伴 わせ た り し てき た 。. さ ら に、 当 事 者 間 で の非 公 式 な 解決 に至 り 、 取 り 下 げ にな った 申 請 も数 多 く あ った 。. 最後 に、 1 9 9 0年 1 2月 3 1日 現在 で 3 2 3人 の申 請 者 か ら な る 2 5 2件 の ケ ー スが 、 これ ま で ヨー ロ ッパ 人 権 裁 判 所 に付 託 さ れ てき た 。. ヨー ロ ッパ 理事 会 に は、 各 々独 立 し て いる が 連 携 し て動 い て いる 3 つの部 門 が あ り 、 人 権 に関 す る事 項 を 取 り. 一32一. 第9号 同和研 究資料.
(15) ア ジア ・太平洋地域 にお ける国際的人権保障. 扱 って いる 。 委 員会 を 補 助 す る委 員 会 事務 局 旧裁 判 所 を 補 助 す る裁 判 所 書 記 官 事務 所 旧主 に政 府 間 の協 力 促 進 を 任. 務 と し 、 ま た条 約 に基 づ いた 閣 僚 会 議 の機 能 を補 助 す る人 権 理 事 会 の 3部 門 であ る 。 ヨー ロ ッパ理 事 会 の人 権 資料. セ ンタ ー は 、条 約 の適 用 に関 す る資 料 や 情 報 を 提供 し て い る。 委 員 会 事 務 局 も ま た 、申 請 の希 望 者 や 申 請 を す で に し た 個 人 に 、 条約 に 関す る特 定 の法 的 問 題 に関す る情 報 を 提 供 し て い る。. 申 請 受 理 の可否 に 関す る委 員 会 の決 定 、 友 好的 解 決 、 そし て裁 判 所 に付 託 さ れ な か った ケ ー ス ( 但し公表された. も の に 限 る ) の報 告 の抜 粋 が " 決 定 と 報 告 " (現在 ま で 51巻 ) と 題 し て 2 ヶ国 語 で出 版 さ れ て い る。 購 入 希 望 者 は 、 ヨー ロ ッパ 理事 会 の出 版 資 料 セ ン タ ーま で申 し 込む こと にな って い る。. 裁 判 所 にも ち こま れ た ケ ー スで委 員 会 の承 認 を 得 た報 告 の全 文 は、 裁 判 所 刊 行 物 のシ リ ーズ "B" の何 巻 か に掲. 載 さ れ て いる 。 ま た 同 じ 刊行 物 の シ リ ーズ " A " には 、委 員 会 の見 解 が 掲 載 さ れ て いる 。. ヨ ー ロ ッパ 理 事 会 ( 審議 会)と 人権保 護. 人 類 社 会 のす べ て の構 成 員 の固 有 の尊 厳 と 、 平 等 で譲 る こと の でき な い権 利 と を 承 認 す る こと は、 世 界 にお け る 自 由 、 正 義 及 び 平 和 の基 礎 であ る。 (世 界 人 権 宣 言 前 文 、 1 9 4 8年 12月 10 日、 ニ ュー ヨー ク ). ヨー ロ ッパ 理 事 会 の加 盟国 は、 法 の支 配 の原 則 と 、 そ の司 法 権 内 に い るす べ て の人 々 の人 権 と基 本 的 自 由 の享 有. 一33一.
(16) の原 則を 認 め な く ては い け な い 。 (ヨー ロ ッパ 理 事 会 規約 第 3条 、 1 9 4 9年 5月 5 日、 ロンド ン). 基 本 的 自 由 iそ れ は 世 界 の正義 及び 平 和 の基 礎 であ り 、 ま た そ れ は 一方 の真 に民 主 的 な 政 治 制 度 と 、他方 のそれ 自 体 が 依 存 し て いる 人 権 の土ハ 通 の理解 と遵 守 と によ って最 も よ く 維 持 さ れ る 。 (ヨー ロ ッパ 人 権 条 約 前 文 、 1 9 5 0年 11月 4 日、 ロー マ). なぜ人権保護か. 第 二次 世 界 大 戦 の恐 怖 ・死 ・破 壊 の結 果 、 人 類 の永 続 的 な 平 和 を 確実 に し独 裁 や抑 圧 か ら 個人 を守 ろ うと す る新 し い政 治 の潮 流 が 、 国 際 社 会 に出 現 し た。. 1 9 4 5年 に署 名 さ れ た 国 連 憲章 のも と 、 加 盟 国 は 人 権 の無視 が 人類 の良 心 を 踏 み にじ る 蛮 行 に至 った事 実 に鑑. み、 基 本 的 人 権 の尊 重 を 再 確 認 し た。 そし て、 す べ て の人 々と 国家 が切 望 す る よう な 行 動 基 準 の設定 に向 け た新 た な 試 みが 行 わ れ よ う と し た 。. 1 9 4 8年 12月 10 日、 世 界 人 権宣 言 が国 連 総 会 で採 択 さ れ た 。 そ の歴 史 的 文 書 は、 個 人 が も つ譲 る こと の でき な. い権 利 の尊 重 が 、 自 由 、 正 義 そ し て平 和 の基 礎 と な る こと を 認 め た 。人 が独 裁 や抑 圧 に抗 し て反 乱 と いう 手 段 を と. ると こ ろま で追 いや ら れ な いた め に 、法 の支 配 でそ の人 権 を 守 ら なく て はな ら な い こと が 認 あ ら れ た。. す べ て の国 家 と 人 民 が 遵 守 す べき基 準 を 規 定 す る 中 で、 世 界 人権 宣 言 は、 す べ て人 間 は 、生 ま れな が ら にし て自. 由 で、 尊 厳 と 権 利 と に つい て平 等 であ る こと を 宣 言 し た 。 す べ て の人 間 は、 " 人 種 、 肌 の色 、 性 、 言 語 、 宗 教 、 政. 一34一. 第9号 同和研究資料.
(17) ア ジア ・太平洋地域 における国際的人権保 障. 治的 若 しく は そ の他 の意 見 、 民 族 的 若 し く は社 会 的 出 身 、 財 産 、 門 地 ま た は そ の他 の地 位 にか か わ ら ず " 、宣 言 で 規 定 され たす べ て の権 利 と 自 由 を 享 受 す る 資格 を も つと 宣 言 さ れ た 。. 世 界 人 権 宣 言 の採 択 によ り 、 国 連 は 国 際社 会 が目 標 と す べき 理 想 を 規定 し た。 次 に出 てき た 問 題 は 、 そ の実 行 の. た あ の機 構 を 確 立 す る こと であ った 。文 明 国 は 人 権 宣 言 で保 障 さ れ た 基 本 的 権 利 と 自 由 を 尊 重 し な く て は い け な. い。 し か し 、 それ を 怠 た れ ば 、 結 果 的 に被害 を こ うむ った 個 人 には 何 ら有 効 的 な 救 済 の手 段 は 残 さ れ な い こと に な る。. 西 側 ヨー ロ ッパ で は、 半 世 紀 の間 に二 度 起 こ った破 局 的 な 戦 争 によ る破 壊 と荒 廃 が 、 各 国 の指 導 者 や政 治家 に 、. より 固 い統 一と 理 解 の上 に立 った 新 し い ヨー ロ ッパ の建 設 を 目 指 す 必 要性 を 確 信 させ た 。 そう す る こと に よ り 、新 たな 独 裁 の台 頭 を 防 ぎ 、 破 壊 的 戦 争 が 再 び 起 こる危 険 性 を 軽 減 さ せ よ う と し た。. この目 標 が 、 1 9 4 9年 5月 、 ヨー ロ ッパ で初 の政 治 的 機 関 であ る ヨー ロ ッパ理 事 会 の発 足 を も た ら し た 。 そ の. 目的 は、 " 共 通 の遺 産 であ る理 想 と 原 則 を 守 り 実 現 させ 、 社 会 的 そ し て経 済 的 進 歩 を 促 進 さ せ るた め に、 加 盟 国 間 のより 強 固 な 統 一に到 達 す る " こと にあ った 。. さ ら に進 ん だ 重 要 な 目 的 は 、 " 人 権 と基 本 的 自 由 の維 持 とな お 一層 の実 現 " のた め に、 積 極 的 働 き か け を 行 う こ と であ った 。. 設 立 と ほぼ 同 時 に、 理 事 会 は こ の目 的 を 実行 す る任 務 にと り か か った 。世 界 人 権 宣 言 を 参 考 にし て、 人権 に 関す. る規 約 が 起 草 さ れ た が 、 少 な く と も 当 初 は 、 擁 護 し よ う と し た権 利 の範 囲 は そ れ ほ ど 広 く な か った 。 し か し な が. ら、 他 の側 面 を 見 れ ば 、 国 際 法 の発 展 に新 し い道 を 切 り 開 こう と し てお り 、非 常 に大 胆 であ った 。 世 界 で初 め て、. 一35一.
(18) 人 権 保護 の ため に効 果 的 な 地 域 レ ベ ル で の実 施 機 関 が 設 け ら れ た 。 加 盟 国 か ら は 、単 に 一定 の任 務 を 受 け 入 れ る だ け ではな く 、 国 際 法 のも と 個 人 は権 利 を 有 す る こと を 認 め る保 証 が 取 り つけ ら れ た。. こ の ヨー ロ ッパ 人 権 条 約 は 、基 本 的 自 由 、 それ は ﹁世 界 の正 義 及 び 平 和 の基 礎 ﹂ であ り 、 それ は 真 に民 主的 な政. 治 制 度 と ﹁それ 自 体 が 依 存 し て いる人 権 の共 通 の理 解 と 遵 守 ﹂と によ って最 も よく 維 持 さ れ ると いう 信条 のも と に. 作 られ た。 志 を 同 じ く し 政 治 的 伝 統 、 理想 、自 由 、 法 の支 配 にお い て共 通 の遺 産 を 持 つ ヨー ロ ッパ 諸 国 の政 府 は、 こ れ ら権 利 の集 団 的 実 施 に向 け て第 一歩 を 踏 み出 し た。. しか し 市 民 的 ・政 治 的 自 由 の保 障 は 、基 本 的 な 社 会 的 権 利 の促 進 と 保 護 か ら切 り 離 す こと は でき な い ため 、 ヨー. ロ ッパ 理事 会 の加 盟 国 は、 労 働 の権 利 、適 切 な 報 酬 を 受 け る 権 利 、 労 働組 合 の組 織 や参 加 の権利 、 スト ラ イキ 権 な. 1 9 6 1年. 1 9 5 9年. 1 9 5 5年. 1 9 5 4年. 1 9 5 3年. 1 9 5 0年. 1 9 4 9年. ヨ ー ロ ッパ 社 会 憲 章 の発効. ヨ ー ロ ッパ 社 会 憲 章 の署 名. ヨー ロ ッパ 人 権 裁 判 所 の設立. 個 人 の提 訴 権 の実 施. ヨー ロ ッパ 人 権 委 員 会 の設 置. ヨー ロ ッパ 人 権 条 約 の発 効. ヨー ロ ッパ 人 権 条 約 の署 名. ヨー ロ ッパ 理 事 会 の設 立. ど の権 利 に国 際 的 保 障 を 与 え るた め に、第 二 の主 要 な 条 約 と な る ヨー ロ ッパ社 会 憲 章 を 採 択 し た 。. 1 9 6 5年. 36. 第9号 同和研究資料.
(19) ア ジア ・太平洋地域 における国 際的人権保 障. ヨ ー ロ ッパ 人 権 条 約 国際的保障. 1 9 50 年 11 月 4 日 、 ヨー ロッパ ー5 力国 の閣 僚 が ロー マに集 ま り 、 ヨー ロ ッパ 人 権条 約 に 署名 し た 。. 実 際 に効 力 を 発 し た の は 1 9 5 3年 9月 3 日 で、 今 日 に至 るま で ヨー ロ ッパ 理 事 会 加 明皿24 力 国 の内 23 力国 が 批 准 し て いる 。. 国 際 的 な 法 的 手 段 と し て、 そ の範 囲 にお い て前 例 を み な い こ の条 約 は 、 国 際 法 の進 展 に お け る 道 標 と な って い. る。 そ の影 響 力 は 、 ヨー ロ ッパ内 にと ど ま ら ず 、 人 権 擁 護 の確 立 を 試 み てき た あ ら ゆ る 大 陸 、 国 々 で発 揮 さ れ てき た 。 例 え ば 、 1 9 7 8年 に実施 さ れ た米 州 人 権 条 約 の モデ ル にも な ってい る。. 技 術 的 には 、 ヨー ロ ッパ 条 約 は 国際 的 条 約 であ り 、 契約 の下 、各 国 が 一定 の法 的 義 務 を 担 ってい る。. し か し これ ら の任 務 は 、 個 人 は 一定 の権 利 を 有 す る こと で主 に両 立 す ると いう 特 徴 を も つ。 ま た条 約 に より 、 人. 権 を 侵 害 さ れ た と 考 え る個 人 は 、 そ の責 任 を 持 つ政 府 を 相 手 に、 ト スラ スブ ー ル の ヨー ロ ッパ 人 権機 構 に提 訴 でき る。. 国 の司 法 権 内 に い る国 民 に限 ら ず 、 す べて の人 々が 、 条 約 で保 護 さ れ てい る人 権 と 自 由 を 享 受 し てい る こと を 確. か め る義 務 を 、 政 府 は負 って い る。 こ のた め、 条 約 と 国 内 の法 律 が 矛 盾 しな い よう 、 法 律 改 正 を 行 った 国も いく つ か あ った。. 誰 も が国 内 の裁 判 所 や 管 轄 当 局 に申 立 てや上 訴 が でき るよ う 、 条約 を 国内 法 にと り 入 れ た 国 々も あ った 。 ま た、. 一37一.
(20) 条 約 が 国内 法 に組 み こま れ て いな い国 でも 、 国内 法 と 条 約 は 矛 盾 し な いはず であ る。. 条 約 は 、 人 権 保 護 に お い て国 内 法 に と って代 わ る よう に作 ら れ て い る の で は な く 、 各 国 で の救 済 の権 利 に加 え. て、国 際 的 保 障 を 提 供 す る た め に作 ら れ てい る。 さら に、 スト ラ スブ ー ル の機 関 への提 訴 は 、 国 内 で可能 な救 済 を す べ て試 みた 後 でな いと 、 始 め る こと は でき な い。. 条 約 の制 定 後 、 新 し い権 利 や 義 務 は 議 定書 に追 加 さ れ てき た 。 そ の採 択 は各 国 の選 択 にま か さ れ て いる が 、多 く の 国が それ を 採 択 し てい る。. 保 護 され て い る権 利. 条 約 と 議 定 書 に保 護 され て い る権 利 と自 由 の大 半 は 、 市 民的 ま た政 治 的 性 格 を 帯 び て いる 。 主 要 なも のを 下 記 に掲 げ る。 ◇個人 の生命 への権利 、身体的自由と安全 の権利 ◇民事及び刑事 での公平な裁判 の権利 ◇私的 及び家庭生活、住 居や通信 の尊重 ◇思想 、良心、宗教 の自由 ◇表現 の自由 ( 報道 の自由も含む) ◇労働組合加入も含む平和的集会 や結社 の自由. 38. 第9号 同和研 究資料.
(21) ア ジア ・太 平 洋 地域 に お け る国 際 的 人権 保 障. ◇上級裁判所 で再審査を受ける権利 ◇婚姻及び家族形成 の権利 ◇結婚生活 における配偶者間 の平等 な権利と義務 ◇財産 の平和的享受 の権利 ◇教育 の権利 ◇選挙 に関する 一定 の権利 ◇移動 の自由と居住地選択 の自由 ◇自国も含む国を出国する自由 ◇さら に、禁止条項から発生する諸権利とし て ◇拷問、非人道的または屈辱的な処遇や刑罰 ◇死刑 ◇奴隷、苦役、強制労働 ◇刑法 の遡及的適用 ◇条約 で保障された権利や自由 の享受 における差別 ◇自国民 の国外追放や入国 の拒否、また外国人の集 団的追放。. こ れ ら 権 利 の大 半 は、 民 主 的 社 会 にお い て無 限 に 保 障 さ れ う るも の では な い こと 、 そ し て公 共 の安 全 や 国 家 の安 全 の 見. 39.
(22) 地 か ら 、 国 の経 済 的 安 定 、 公 衆 衛 生 や 道 徳 、 他 者 の権 利 や自 由 の保 護 の た め に 、 ま た 、 無 秩 序 や犯 罪 の防 止 のた め に 、 規. 制 が 必 要 と さ れ う る こと を 、 条 約 は 明 確 に認 め て いる 。 ま た 、 戦 時 下 や 社 会 的 緊急 時 に、 国 家 が そ の義 務 を 停 止 でき る こ. と も 、 一定 の条 件 のも と 認 め て いる 。 だ が 、 い つい かな る国 家 も 、 生 命 の権 利 と拷 問 ・死 刑 ・奴 隷 ・刑 法 の遡 及 的 適 用 の 禁 止 の遵 守 義 務 を 回 避 す る こと は 許 さ れ て いな い 。. 保 護 機 関. 条 約 の下 、 人 権 保 護 の任 務 を 担 ってい る の は、 特 別 に設 置 さ れ た 二 つの機 関 であ る ヨー ロ ッパ人 権 委 員 会 と ヨ ー. ロ ッパ人 権 裁 判 所 であ り 、 それ に ヨー ロッパ理 事 会 の意 思決 定機 関 であ り 、 各 加 盟 国 の外 務 大 臣 ま た は そ の代 理 人. か ら構 成 さ れ て い る閣 僚 委 員 会 が 加 わ る。 す べ て の機 関 は スト ラ スブ ー ルを 本 拠 にし て いる 。. ヨー ロ ッパ人 権 委 員 会. ヨー ロ ッパ人 権 委 員 会 ( 以 下 、 委 員 会 と 呼 ぶ ) の役 割 は 、 申立 て の人 権 侵 害 を 審 査 し 、 事 実 を立 証 し、 そ の友 好. 的 解 決 に努 め る こと であ る。 それ に失 敗 し た場 合 は、 条 約 違 反 が あ った か どう か の意 見 を 表 明 す る 。. 委 員会 は、 条 約 を 批 准 し た 国 の数 と 同数 の委 員 で構 成 さ れ る 。 委 員 は 、高 等 司 法 職 の任 命 に必 要 と さ れ る資 格 を. 有 す る か、 有 能 な 法 律 家 でな く ては な ら な い。 そ の選 出 は、 ヨー ロ ッパ 理事 会 の協 議 総 会 で各 国 代表 が提 出 し た候. 一40一. 第9号 同和研究 資料.
(23) アジア ・太平洋地域 にお ける国 際的人権保障. 補 者 リ スト か ら 、 閣僚 委 員 会 が 行 う 。. 任 期 は 6 年 間 で、再 選 され る こと も あ る。 委 員 会 の構 成 委 員 は、 完 全 に独 立 し てお り 、 送 り出 さ れ た 国 の代 表 を 務 め る も の では な い 。. 委 員 会 は 常 時 開 か れ てい る の で はな く 、 申 立 てが起 こる と 開会 され る。 委 員 会 を 機 能 的 に支 え てい る の は、 スト. ラ スブ ー ル に設 置 さ れ た常 任 事 務 局 であ る。 委 員 会 の開会 は非 公 開 で、 記 録 は機 密 と さ れ る 。. ヨー ロ ッパ 人 権裁 判 所. 委 員 会 で友 好 的 解決 を みず 、 委 員会 も し く は関 係 国 が ケ ー スを 付 託 し てき た 場 合 、 審 理 のた あ裁 判 が開 かれ る。. ヨー ロ ッパ 人 権 裁 判 所 (以 下 、裁 判所 と 呼 ぶ ) の裁 判官 の人 数 は、 ヨー ロ ッパ 理 事 会 加 盟 国 と 同数 とな る。 委 員. 会 の委 員 と 同 様 、 裁 判官 は高 等 司法 職 の有 資 格 者 か 、 有能 な法 律 家 でな く て はな ら な い。. 選 出 は ヨー ロ ッパ 理事 会 の協 議 総会 で行 な わ れ 、 任期 は 9年 であ る。 各 加 盟 国 は 3名 の候 補者 を 提出 す る が、 そ. のう ち 少 な く と も 2名 は そ の国 の国 籍 を 持 つも の でな く ては いけ な い。 欠 員 を 埋 め る た め に非 国 籍 者 を 候 補 に た. て、 そ の人 が 裁 判 官 に選出 さ れ る こと もあ る (1 9 8 0年 には 、 カ ナダ 国 籍 の弁 護 士 が 、 リ ヒ テ ンシ ュタ イ ンか ら. の裁 判 官 と し て選出 され た)。 委 員 会 の委 員 と 同 様 、 裁 判 官 は個 人 の資 格 で任 務 に つき 、推 薦 を 受 け た 国 を 代 表 す るも の では な い。 裁 判 官 は任 務 遂 行 に お い て、 国 家 か ら は完 全 に独 立 し てや る。. 1度 に 3分 の ー の数 の裁 判官 が改 選 さ れ、 再 選 も あ り う る 。委 員 会 と 同 様 、 裁 判 所 は 常 時 開 廷 さ れ ていず 、 審 理. す るケ ー スが 付 託 さ れ てく れ ば 開 か れ る。 ケ ー スは 通 常 9名 の裁 判 官 か ら な る裁 判 部 で審 理 さ れ 、 そ の内 1名 が裁. 一41一.
(24) 、. 判 長 ま た は 副裁 判 長 と な る。 裁 判 部 には 、 ケ ー ス当 事 国 の国 籍 を も つ裁 判 官 が 1名 含 ま れ る が、 該 当 者 が いな い場. 合 は 当事 国 が選 んだ 自 国 籍 の裁 判 官 が 送 ら れ る 。残 り の裁 判 官 は、 ケ ー スご と に裁 判 長を 選 ぶ。 ケ ー スが 条 約 の解. 釈上 重 大 な 問 題 を 投 げ か け て い ると 裁 判部 が 判 断す れば 、 裁 判 所 全 体 に委 ね ら れ る 。審 理 は非 公 開 だ が 、 法 廷 で の 審 問 は 一般 に 公開 さ れ、 判 決 も 常 に公 表 さ れ る 。. 機 構 と そ の機 能. 条 約 違 反 の申 立 て は、 ヨー ロ ッパ 人 権 委 員会 に提 出 され る。 締 結 国 が 他 の締 結 国を 訴 え る こと が でき る が (これ. は 国家 間 提 訴 と 呼 ば れ て い る)、 最 も頻 繁 に出 さ れ る のは 、 個 人 ま た は 個 人 の集 ま り 、` また はNGO ( 非 政 府 間組. 織 ) が 、申 し 立 て て い る侵 害 が 起 こ った 司法 管 轄 内 の国 家 に対 し て行 う 個 人 提 訴 であ る。 個 人 提 訴 の前 提 と し て、 あ ら か じめ 当 事 国 は個 人 が も つ提 訴 権 を 認 め る宣 言 を し てお く 必 要 が あ る 。. 条 約 第 25条 に定 あ ら れ た 個 人 の提 訴 権 は 、 国際 法 にお い て重 要 な 前 進 と な った し、 条 約 に よ って設 置 さ れ た実 施 機 構 が持 つ最も 注 目 す べき 特 徴 の 一つと な ってい る。. 受 理決 定 はど の よう に行 わ れ る か. 人 権 侵 害 の申 立 てを 受 け た ら 、 まず 委 員会 は条 約 に沿 って受 理 さ れ る か ど う かを 決 定 す る。毎年委員会 には約 4. 一42一. 同 和 研 究 資 料 ・第9号. '.
(25) ア ジア ・太平洋地域 における国際的人権保 障. 千件 の申 立 てが 届 き 、 そ のう ち約 千件 が受 理 の審 査 対 象 にな るも のと し て登録 さ れ る。 受 理 の可 能 性 が あ ると 判 定. され る に は、 人 権 侵 害 が 起 った 国 であ ら ゆ る 国内 救 済 の手 段 を 使 い つく し た ことを 証 明 しな く ては いけ な いし 、 そ. の国 の裁 判 所 ま た は 当 局 が 出 し た 最終 決 定 の日 より 6 ヶ月 以 内 に提 訴 し な く ては いけ な い。. 申 立 て は匿 名 であ った り 、 そ の内 容 が す で に委 員 会 や 他 の国 際 機 関 で審 理 さ れ た も の であ って は い け な い。 ま た 、条 約 の範 囲 に当 ては ま る も の でな け れ ば な らな い。. 受 理 の決 定 を 下 す 前 に、 委 員 会 は 当 事 者 に情報 や所 見 を し ば し ば 求 め る こと が あ る 。申 立 人 は、 ケ ー ス の提 出 に. 法 律 家 の助 け を 借 り ても よ い。 ま た 、 審 問 で当 事者 の所 見 を 委 員 会 は 求 め る こと も あ る 。受 理 の 以前 に解 決 が 見 い. だ さ れば 、 当 事 者 は それ を 受 け 入 れ る こと が でき る。 次 に、 申 立 てが 、 さ ら な る 審 理 が 必要 と さ れ る よう な 一般 的. 利益 に関 わ る問 題 を 呈 し ていな いと 判 断 さ れ た ら 、 ケ ー スは委 員 会 のリ スト よ り 落 と さ れ る 。. 現 在 、 委 員会 が審 査 し た提 訴 の内 、 約 10% が 受 理 でき ると 判 定 さ れ て い る。 訴 え が却 下 さ れ た ら、 それ は最 終 決 定 であ り 、 そ れ に対 し て上 訴 す る権 利 は認 め ら れ てい な い。. 委 員 会 報 告 書 の作成. 受 理 す れ ば 、 委 員 会 は次 に事 実 の立 証 に入 る。 こ の段 階 で、当 事 者 は それ 以 上 の証 拠 を求 め ら れ た り、 質 問 や説 明 を 求 め ら れ る。 審 査 は 、 証人 や専 門 家 に審 問 す る た あ 、 現地 調査 と な る こと も あ る。. 事 実 の立 証 を 行 って いる 間 でも 、委 員会 は、 条 約 で保 障 さ れ てい る人 権 尊 重 を 基 にし た 友好 的 解決 を 確 保 す ると い う観 点 か ら 、 それ を 当事 者 の処 理 に任 せ る こと を 義 務 づ け ら れ てい る。. 一43一.
(26) 解 決 に至 った ら 、 委 員会 は ケ ー スの要 旨 報 告 書 を 作成 す る 。 こ の報 告 書 は、 当 事 者 と 閣 僚 委 員 会 、 そ し て公 表 の ため に ヨー ロ ッパ 理事 会 事 務 総 長 に送 ら れ る。. 解 決 に至 ら な け れ ば 、委 員 会 は詳 細 な 報 告 書 を 作 成 す る 。 そ こに は事 実 の立 証 と 、 条 約 違 反 の論 点 に対 す る法 的. 見 解 が 述 べら れ て いる 。 委 員会 の各 委 員 に は投 票 権 が あ り 、 異な る意 見 が あ れ ば それ も 報 告 さ れ る 。報 告 書 は当 事. 国 と 閣 僚 委 員 会 にだ け 提 出 さ れ る。 こ の段 階 で は秘 密 事 項 と し て扱 わ れ 、 申 立 人 と 弁 護 士 には 送 ら れ な い。. 委 員 会 報 告 の後. 閣 僚 委 員 会 に報 告 書 が 提 出 さ れ てか ら 3 ヶ月 以 内 に、 ケ ー スは ヨー ロ ッパ 人 権 裁 判 所 に付 託 さ れ る。. 裁 判 所 にケ ー スが 回 さ れ る には 、 提訴 され て いる 当 事 国 が裁 判 所 の強 制 管 轄 権 を 認 め て いな く てはな らな い。 も. し それ が な さ れ て いな け れ ば 、 そ の事 件 に限 り 裁 判 所 の管轄 権 を 認め てお く 必 要 が あ る 。. 委 員 会 か 関 係 国 だ け が 、 裁 判 所 にケ ー スを 付 託 でき る 。 現在 のと こ ろ、 条 約 違 反 を 申 し 立 てた個 人 に は、 そ の権. 利 は 認 め ら れ て いな い 。 し か し な が ら、 第 9議 定 書 を 批 准 し て い る 国 に関 し て は、 そ れ が 実 施 さ れ る よ う にな れ. ば 、 個 人 も 裁 判 所 に付 託 でき る 。 ケ ー スが裁 判 所 に提 出 さ れ れば 、当 事 国 ま た は そ の弁 護 士 は 、審 問 の場 合 で文 書. ま た は 口頭 に よ る弁 論 が 通 常 でき る。 ケ ー ス の提 訴 者 にも 、 証 人 と し て法 定 に出 頭 す る よ う 要 求 さ れ る こと が あ る。 法 的 支 援 も 受 け る こと が でき る 。. 裁 判 所 にケ ー スを 提 出 す る 場 合 、 委 員会 は いず れ の当 事者 の利益 も 代 表 す るも の では な い。委 員会 の役 割 は、 厳. 密 に中 立 で客 観 的 な 結 論 を 出 す こと に あ る。 一旦 ケ ー スが 付 託 さ れれ ば 、 条 約 違 反 が 起 こ った か否 か の 見解 を つけ. 一44一. 第9号 同和研究資料.
(27) ア ジア ・太平洋地域 におけ る国際的人権保障. た委 員 会 の報 告 書 は、 通 常 公 表 さ れ る こと にな る 。. 裁 判 所 の手続 き. 裁 判 所 は 、委 員 会 の報 告 書 と 、 も し あ れ ば 文 書 に よ る 証言 や弁 論 を 基 に審 理 を 行 う 。 ま た通 常 は スト ラ スブ ール. で公 判 が 開 か れ、 委 員 会 の代 表 や 提 訴 さ れ て いる 政府 の弁 護 士 と 提 訴 者 が 、 意 見 陳 述 や補 足 説 明を 行 い、 裁 判 官 よ り 質 問 を 受 け る。. 審 理 の結 果 は法 廷 で公 に言 い渡 さ れ る。 大 抵 、 裁 判長 ま た は副 裁 判 長 が 裁 判 所 の法 的 所 見を 含 め た 判 決 の 一部 を. 読 み上 げ 、全 文 の入 手 は後 日可 能 にな る。 裁 判 所 の判決 は 最終 で、 それ 以 上 の控 訴 は できな い。 判 決 は当 事 国 を 拘. 束 す る が 、裁 判 所 に は執 行 を 強 制 す る権 限 は な い。 閣僚 委 員 会 が、 判 決 の執 行 の監 視 にあ た る。. 公 判 の後 、裁 判 官 たち は非 公 開 審 理 に入 り 、 条約 違 反 があ ったか ど う か の判 定投 票 を そ れ ぞれ 行 う 。 判 定 は 多 数 決 によ る が 、少 数 派 の異 な る意 見 や 反 対 意 見 も 判決 内 容 に付 け 加 え ら れ る こと が あ る 。. 適切 な状 況 と判 断 す れ ば 、 裁 判 所 は人 権 侵 害 の被害 者 に、 公 正 な 満 足 " を 与 え る こと が でき る。 それ は 例 え ば 、 賠 償 金支 払 い の裁 定 や、 経 費 の償 還 命 令 な ど であ る 。. 裁 判 所 に付 託 さ れ な い ケ ー ス. 裁 判 所 に付 託 さ れな い ケ ー スは 、 ヨー ロ ッパ 理事 会 の 閣僚 会 議 で審 議 さ れ 、 条約 違 反 があ ったか ど う か 、 ま た 理. 事 会報 告 に公表 す る か否 か を 、 三 分 の 二 の多 数 決 で決 定 す る。 さら に閣 僚 会 議 は 、被 害 者 に " 公正な満足"を与え. 一45一.
(28) 同和研究資料. 第9号. 人権救済手続 きの流れ 個人 ま たは国 家 によ る申 立て ↓. ヨー ロ ッパ人 権委 員会 に よ る 受理 審査. →. 却 下 ・ケ ー ス 終 了. ↓. 受理 事 実の 立証 ↓. 友好 的解 決 に向 けた試 み. →. 友好 的解 決 ・ケ ース終 ∫. ↓. 友好的解決の失敗 ↓. 申立て られ た条 約違反 に関す る委 員会報 告 、閣僚 委 員会 に提 出 ↓. ↓. 3ヶ 月 内 に、関 係国 ま たは人権 委 員会 によ る裁判 所へ の ケー スの 出訴 ↓. 裁判所 に出訴 され な い ケー ス ↓. ヨーロ ッパ 人権 裁 判所 審 問 と判決. 人権侵害に対する閣僚 委員会の決定公表. ↓. ↓. ケー ス終r 閣僚委 員会 に よ る判 決執 行の 監視. ケー ス終了 閣僚 決定委執員会 に よ る 行 の監 視. 46.
(29) ア ジア ・太 平 洋 地 域 にお け る国 際 的 人 権 保 障. る よ う国 に勧 告 す る 。 そ の内 容 は 閣僚 会 議 と の協 議 で決 め ら れ る 。. 裁 判 所 の判 決 と 同 様 、 閣 僚会 議 決 定 は 最終 であ り 、 締 約 国 は そ れ を 履行 義 務 と し て受 諾 し な く ては いけ な い 。. ケ ー ス の例. 裁 判 所 に付 託 さ れ た 個人 の訴 え は 現在 ま で 2 5 0件 に のぼ り 、 問題 の範 囲 も 徐 々 に広 が ってき て いる 。 顕著. 市 民 的 問 題 にお け る 裁 判 所 利 用 の権 利 法 的 手 続 き の期 間 拘 禁 に関 す る 様 々な 問 題 点 ( 精 神 病 患 者 、 テ ロリ スト容 疑 者 、 放 浪 者 ) 刑事訴訟手続き 体罰 ( 学 校 で の罰 、 ま た は 法 的 処 罰 ) 囚 人 の権 利 電話 " 盗 聴 " と 通 信 監 視 の規 制 ホ モセ ク シ ュアル 行 動 の犯 罪 適 用 社 会 保 障 に関 す る 紛 争 ( 健 康 保 険 、 労 働 災害 ) 非 摘 出 子 の法 的 地 位 ク ロー ズ ド シ ョ ップ を 含 む 労 働 組 合 活 動. 47. な 例 を 以 下 に挙 げ てみ る 。. 00000000000.
(30) 移民と国外追放 の措置 性転換者 の法的立場 報道規制を含む表現 の自由 学校 での強制的性教育 財産所有権 公共施設 に預 けられた子ども への両親 の面会 亡命者、犯罪人 の本国送還. デ ータ保護. 締 約 国 が他 の 国を 相 手 に委 員 会 に出 し た国 家 間 提 訴 のケ ー ス で特 に顕 著 な のは "コ ロネ ル " 政 権 下 のギ リ シ ャ の状 況 、 北 アイ. ル ラ ンド の テ ロリ スト容 疑 者 の尋 問 方 法 ( 現 在 のと こ ろ 、唯 一裁 判 所 に持 ち 込 ま れ た 国 家 間 ケ ー ス)、 キ プ ロス で の ト ル コ軍 事 行 動 の結 果 、 そ し て 1 9 8 0年 か ら 1 9 8 2年 のト ル コの状 況 であ る 。. 48. 情報 の国外流出. 000000000. 第9号 同和研 究資料.
(31) ア ジア ・太平洋地域 における国 際的人権保 障. よ り幅 広 い人 権 保 護. ほ ぼ 40年 間 ヨー ロッパ人 権 条 約 は、 そ の機 構 を 通 し て実 践 的 で友 好 な 人 権 保 護 を ヨー ロ ッパ にお い て提 供 し てき た。. そ れ に よ って利 益 を 受 け てき た の は、 委 員 会 や裁 判 所 にう ま く ケ ー スを 持 ち 込 め た 個 々 の人 々だ け では な い 。締. 約 国 が 条約 に従 って義 務 を 遂 行 す るた あ に、 国 内法 を あ ら た に設 け た り 修 正 し た 結 果 、 社 会 全体 に 利益 が も た ら さ. れ た 。 だ が 、 これ ま で の成 果 に対 し て正 当 な 満 足 は あ るも のの、 も っと や れ ると いう 認 識 も あ る 。. 過 去数 年 間 、 ヨー ロ ッパ 理事 会 は社 会 の進 化 に応 じ て、ど の よう に人 権 保 護 を さ ら に拡 大 す べき かを 検 討 し てき. た 。 一つに は 、 新 し い議 定書 を 作 成 し 、 締 約 国 にそ の署名 と 批 准 を 求 め る こと によ り 、 条 約 で保 護 さ れ てい る権 利 のリ ストを 拡 大 し てき た 。( 例 えば 第 6、 第 7議定 書 のよ う に). も う 一つに は 、 他 の条 約 の発 展 や 発 案 を 通 し た アプ ローチ が あ る 。 例 え ば 、 社 会 的 ・経 済 的 権 利 保 護 の必 要 性 は 、 ヨー ロ ッパ 理事 会 の長年 の重 要 な 目 標 と な って いる。. こ の アプ ロー チ は、 1 9 6 1年 10月 に署 名 、 1 9 6 5 年 2月 に実 施 さ れ た ヨ ー ロ ッパ社 会 憲 章 を 作 成 さ せ る に 至 った 。. 憲 章 と そ の追 加 議定 書 に は 、 23項 目 か ら な る 基本 的 な社 会 的 権 利 と 原 則 が 規 定 さ れ てお り 、締 約 国 は そ れを 自 国. の社 会 政 策 の目 標 と し て受 け入 れ る こと が でき る 。 憲章 で網 羅 され て い る権 利 は 、 労 働 の権 利 、 団体 交 渉 と スト ラ イ キ の権 利 、社 会 保障 と医 療 援 助 の権 利 、 そし て移 民労 働 者 のため の権 利 な ど であ る 。. 一49一. 9.
(32) ヨー ロ ッパ 人 権 条約 が発 展す ると 活 力 と 可 能 性 は、 国 内 の裁 判 所 や ヨー ロ ッパ 理 事 会 そ し て人権 裁 判 所 に よ る そ. の解 釈 よ り 引 き出 さ れ る が 、憲 章 の監 視 機 構 は それ と は 異 な る。 要 約 す れ ば 、 締 約 国 は 憲 章 の様 々な 側 面 に従 う 責. 任 を 負 ってお り 、 そ の過 程 は 、独 立 し た専 門 家 委 員 会 に代 表 さ九 る監 視 機 構 によ り モ ニタ ー さ れ る。. 憲 章 の効 果 は 、 国 が 憲 章 の批准 や新 し い条 項 の容 認 が でき る よ う に国 内 法 を 変 更 し た り 、 監視 シ ステ ム の批 判 に. 続 い て変 化 が 起 き た こと で見 極 め ら れ る。 そ のよ う な変 化 は これ ま で 4 0件 以 上 に及 び 、例 えば 特 定 の形 の強 制 労. 働 (商 船 の船 員 や 、 そ の他 あ ら ゆ る場 所 で ) の廃 止 、自 国 民と 移 民 の平 等 な 処 遇 の促 進 、 児童 や若 年 労 働 者 の保 護 な ど の分 野 で行 わ れ てき た 。. 社 会 憲章 に規 定 さ れ て いる 権 利 のいく つか を カ バ ー でき る よう 、 ヨー ロ ッパ 人 権 条約 を拡 大 す る可 能 性 が 検 討 さ れ て いる 。. ヨー ロ ッパ 理 事会 は ま た 、 外 国 人 の人 権 や 良 心的 兵役 拒 否 の権 利 な ど 特 定 の権 利 を確 立 さ せ る ため に、 幅 広 い活. 動 を 行 ってい る 。ま た 、 オ ンブズ マンや仲 裁 人 を 利 用す る他 の人 権 保 護 の手 段 も 、 理事 会 に より 実 験 的 に行 な わ れ て いる 。. 拷 問 及 び 非 人道 的 で屈 辱的 な処 遇ま た は処 罰 の禁 止 に向 け た ヨー ロ ッパ 条 約 が 、 1 9 8 9年 実 施 さ れ た 。 こ の条. 約 は 、 政府 当 局 に よ り拘 禁 さ れ 、拷 問 や非 人 道的 ま た は 屈辱 的 な 処 遇 や 処 罰 の犠牲 者 に な るか も し れ な い被 拘 禁者. や 、 ま た は す でに な ってい る と 思わ れ る被 拘禁 者 に、 追 加 の保 護 手 段 を 提 供 す る ことを 目的 と し て い る。 拘 禁 場 所. を 視 察 し 、被 拘 禁 者 の状 態 改 善 を 勧 告 す る権 限を も た せ た委 員 会 の設 置 によ り 、 保 護 の手 が 差 し の べら れ る よ う に な って いる 。. 一50一. 第9号 同和研究資料. 、.
(33) ア ジア ・太平洋地域 における国 際的人権保 障. 体 外 受 精 ・胎 児実 験 ・代 理母 な ど に見 ら れ る よ う な 医 学 や生 化 学 の分 野 で の科 学 技 術 の発 達 は 、 人 権 への新 た な 挑 戦 を 生 み出 し てお り、 これ ら も 絶 え ず 監 視 さ れ 研 究 さ れ てい る 。. 条 約 機 構 の合 理化. 条約 機 構 と人 権 保 護 の効 果 が より 知 れ 渡 り 、 個 人 提 訴 の権 利 を 認め る国 が 増 え てき て いる た め 、 委 員会 と裁 判 所. の仕 事 量 は か な り膨 れあ が ってき た。 制 度 はあ る 面 で自 ら の成 功 の犠 牲 者 にな ってお り 、 深 刻 な消 化 不良 と遅 延 の. 問 題 を 抱 え て い る。 委 員 会 と 裁 判 所 の手 続 き が 長 時 間 に な る こ と も あ る た め ( 裁 判 所 で の判 決 ま で に は 最 高 6. 年 )、 条 約 の 最も 重 要 な条 文 の 一つであ る 順 当 な 期 間 内 で裁 判 を 受 け る権 利 が守 ら れ て いる と は 、 は な は だ 言 い難 い。. そ の理 由 は様 々だ 。 複 雑 な 問 題 を 提 起 し 、 よ り 綿 密 な審 査 を 必 要 と す る ケ ー ス の数 が 、 近 年劇 的 に増 え てい る こ. と 。 裁 判 所 によ る審 理 の件 数 は、 当 初 の 10年 間 は 年 に 平均 1件 であ ったが 、 今 では 年 に 20件 以上 にも 昇 る こと 。 同. 様 に、 裁 判 所 に回 さ れな か った ケ ー スの条 約 違 反 を 審 議 し た り、 裁 判 所 の判 決 の履 行 を 監視 す る 理事 会 の仕 事 の量 も 増 大 し て いる 。. 1 9 9 0年 1月 に実 施 され た条 約 の第 8議 定 書 は 、全 体 会 議 の代 り に部 会 を 開 く こと を 認 め たも の で、 委 員 会 の. 負 担 を 軽 減 さ せ る ことを 目 的 と し て い る。 こ の議 定 書 に よ り 、委 員 会 メ ンバ ーが 3人 以 上 な らば 、 明 らか に受 理 で. き な い訴 え は却 下 でき る よう にな った。 7人 以 上 の部 会 な らば 、 既 存 の判 例 法 に基 づ き 処 理 でき た り、 条 約 の解 釈 や 適 用 に重 大 な 問 題 を なげ か け な い訴 え な ら ば 審 査 でき る 。. 一51一.
(34) 抜本 的 で議 論 を よ ぶ 改革 案 と し て、委 員 会 と 裁 判 所 を 単 一の機 関 に置 き換 え、 ヨー ロ ッパ 理 事 会 の 一部 の機 能 を. なく す 提 案 な ど も 出 さ れ てい る 。委 員会 と 裁 判 所 の仕 事 の遅 延 は 、 スタ ッフ不足 と 不 十 分 な オ フ ィ スや 会 議室 や 図. 書 設 備 が 原 因 にも な って いる 。 こ のた め 締 約 国 は 、 スト ラ スブ ー ル に新 し い人 権 資 料 館 を 建 設 す る こと に合 意 し. 4. た。 そ こ には 委 員 会 と 事 務 局 、裁 判 所と 登 録 事 務 所 、 そし て人 権 資料 セ ンタ ーと 人 権 図 書 館 を 含 む 人 権 理事 会 が収 容 さ れ る こと にな る。. 将 来 の展 望. 人 権 保 護 の効 果 的 機 構 を 確 立 し た こと は、 ヨー ロ ッパ 理 事 会 の最も 優 れ た業 績 と し て広 く 認 め ら れ てい る。 こ の. ユ ニーク な シ ステ ム は、 委 員 会 ・裁 判所 ・理事 会 の各 機 能 のバ ラ ン ス の良 さと あ いま って、 締 約 国 よ り広 い支 持 を. 得 てき た し 、 ま す ま す 多 く の個 人 が 権 利侵 害 の救 済 手 段 と し て利 用す る よ う にな った 。 人 権 保 護 ほ (政 府 そし て個. 人 の不 断 の監 視 を 必 要 と す る永 遠 の任務 であ る。 社 会 が 変 化 し 進化 す る に つれ 、 既 存 の人 権 機 構 は新 し い挑 戦 を 受. け る よう にな る。 ヨー ロ ッパ 理 事 会 加 盟 国 は、 ヨ ー ロ ッパ に居 住す る個 人 個 人 に効 果 的 な 保 護 を 提 供 し続 け、 世 界. の注 目 に値 す る先 例 を 作 り 続 け て いく たあ に は、 理 事 会 の人 権 シ ステ ムを 常 に強 化 ・改 善 す る 努 力 を怠 ってはな ら な いと 認 識 し て い る。. 一52一. 第9号 同和研究 資料.
(35) ア ジ ア ・太 平 洋 地 域 にお け る国 際的 人 権 保 障. 人 権侵害 の申 立 てをす る には. ヨー ロ ッパ 人 権 委 員 会 に、 申 立 て内 容 と す でに試 み た救 済 手 段 の詳 し い説 明を つけ た手 紙 を だ す こと 。 そ れ を 受. け た委 員 会 事 務 局 が 、 委 員 会 への申 立 て手 続 き に 関す る必 要 な 資 料 を 提 供 し 、 そ の申 立 てが 条 約 の下 、 問 題 と な る か否 か の通 知 を 行 う 。. 注意点 ". 1委 員会 は、 国 内 裁 判 所 や 当 局 が 出 し た 不 利 な 判決 を 無 効 に でき る上 級 裁 判 所 では な い。. -問題 とな ってい る国 の国 民 でな く ても 構 わ な いが 、申 立 て の侵 害 の被 害 者本 人 でなく てはな ら な い。. 1まず 、苦 情 救 済 のた め に、 国 内 にあ る友 好 な 救済 手 段 を す べ て使 い尽 く し て いな く てはな らな い。. 1委 員 会 への請 願 は 、 国 内 の裁 判 所 か 政 府 が 出 し た 不 服 と す る最 終 判 定 か ら 6 ヶ月 以内 に 行 わ れ な く て は な ら な い。 1可能 な らば 、申 立 て提 出 にあ た り 弁 護 士 の相 談 を受 け る。. 一. 53.
(36) フ ィ ン ラ ンド. デ ン マー ク. キプ ロ ス. ベ ルギ ー. オ ー スト リ ア. ル ク セ ンブ ルグ. リ ヒ テ ン シ ュタ イ ン. イ タリ ー. アイ ル ラ ンド. アイ ス ラ ンド. ハンガ リ ー. スイ ス. ス ウ ェー デ ン. スペ イ ン. サ ン ・マリ ノ. ポ ルト ガ ル. ノ ル ウ ェー. ヨー ロ ッパ 理 事 会 ( 加 盟国 ). フラ ン ス. トル コ イギ リ ス. マル タ オランダ. ドイ ツ ギ リシ ャ. 24 の 民 主 政 体 と 4 億 4 千 万 の ヨ ー ロ ッパ 人. ポ ー ラ ン ド 、 ユー ゴ ス ラ ビ ア 、 チ ェ コ ス ロバ キ ア か ら ヨ ー ロ ッパ 理 事 会 へ の 加 盟 申 請 を 正 式 に 受 け て い る 。. 以 上 のよ う な 内 容 にな ってい る。. 54. 第9号 同和研究資料.
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