水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 .. 二 四 '
水
俣
病
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セ
チ
レ
ン
系
有
機
合
成
化
学
工
業
和
田
俊
二
ま ハ え が 鵬 き わ が 国 経 済 が 敗 戦 の ど ん 底 か ら 立 ち 直 る 過 程 で 、 一、一 五 年 の 朝 鮮 動 乱 が 回 復 助 長 に あ ず か っ た 役 割 は 大 き か っ た 。 二 六 年 忙 は 工 業 生 産 は 戦 前 の 水 準 に 戻 り 、 三 〇 年 代 に は 急 激 な 成 長 発 展 期 に 入 り 、 と り わ け 三 五 年 よ り の 高 度 成 長 政 策 に 支 え ら れ て 、 技 術 革 新 、 生 産 活 動 の 大 規 模 化 の 進 行 と な っ て 、 世 界 に も 驚 異 的 な 発 展 を 遂 げ た の で あ る 。 地 域 的 に こ れ を 見 る と 京 浜 . 阪 神 を 先 端 と す る 既 成 大 工 業 地 帯 へ の 工 業 の 巨 大 な 集 積 が 加 え ら れ た 。 そ れ は 公 共 投 資 の 投 入 に よ る 産 業 基 盤 整 備 が 最 も 行 き 届 い て い み こ と が 集 積 を 高 め る 原 因 で あ っ た ば か り で な く 、 大 企 業 と い え ど も 下 請 関 係 σ 強 い 業 種 は 中 小 企 業 の 存 在 を 考 慮 の 外 に 置 く こ と は で き ず 、 加 え て 夥 し い 群 小 工 場 は 低 賃 銀 労 働 者 を 多 数 か か え て い る 上 で は 労 働 市 場 で も あ り 、 ま た 大 企 業 の 製 品 市 場 で も あ る 、 と い ヶ 関 係 に お い て 、 集 積 は 集 積 を 呼 ん だ 。 そ の う え 、 既 成 工 業 地 帯 の 中 核 を な す 都 市 へ の 第 三 次 産 業 人 口 の 集 中 が 、 さ ち に 工 業 製 品 に と っ て は 新 し い 消 費 地 を 形 成 し た こ と を 看 過 し て は な ら な い 。 こ れ ら の 累 積 は ま す ま す 中 核 都 市 を 巨 大 化 し 、 過 密 の 弊 害 の 根 源 を な す に 至 っ た 。 過 密 の 弊 害 は こ れ を 現 象 的 に と ら え る と 、 生 活 環 境 お よ び 生 産 環 境 の 悪 化 で あ る 。 生 産 環 境 の 悪 化 は 企 業 独 自 の 立 場 で 分 散 を 決 定 し 、 そ の 不 利 益 か ら 逃 避 す る こ と は 可 能 で あ り 、 こ の 意 味 で 過 密 の 弊 害 は 工 業 分 散 要 因 と し て 作 用 す る 。 し かる に 、 生 活 環 境 の 悪 化 は 前 者 以 上 に 重 要 な 問 題 で あ る σ 人 口 の 集 中 は 産 業 の 集 積 に 対 し て 従 属 的 立 場 に あ る か ら 、 独 自 の 立 場 で は 地 域 よ り 逃 避 す る ・こ と は 不 可 能 で 、 そ の も た ら す 弊 害 は 経 済 的 損 失 ば か り で 拙 く 、 人 命 に 関 す る 危 害 に ま で 及 ぶ か ら で あ る 。 現 在 、 公 害 問 題 と し て 世 論 を 浴 び て い る の は 、 実 に 生 活 環 境 の 悪 化 の な か に 含 ま れ て い る 。 わ が 国 経 済 の 求 心 的 構 造 の 頂 点 に 立 つ 京 浜 工 業 地 帯 が 、 い ち 早 く 都 市 機 能 ま ひ 、 生 産 面 の 陸 路 に 遭 遇 し た の は 、 け だ し 当 然 と い わ ね ば な ら な い 。 京 浜 の 過 密 の 弊 害 を 広 域 的 に 打 開 せ ん と す る 地 域 計 画 を 立 法 化 し た の が 首 都 圏 整 備 法 (詔 煎 泥 酔 和 訓 也 で あ る 。 こ れ は 都 市 過 大 化 の 源 泉 を 工 業 集 積 に あ り と 見 て 、 新 規 立 地 を 規 制 す る と 同 時 に 、 適 正 配 置 地 域 、 す な わ ち 過 集 積 の 分 散 肩 替 り 地 域 を 設 定 す る も の で あ る 。 次 い で わ が 国 経 済 高 度 成 長 政 策 が く 国 民 所 得 倍 増 計 画 V 翁 柳 三 阻 鋤 海 窪 . ) と し て 打 ち 出 さ れ た と き ﹂ 実 施 に 当 っ て は 特 に 地 域 開 発 に 留 意 す べ き こ と 、 お よ び 企 業 の 経 済 合 理 性 を 尊 重 す べ き こ と が 強 調 ざ れ た 。 企 業 の 経 済 合 理 性 の 観 点 に 立 て ば 、 企 業 立 地 は 既 成 集 積 地 帯 を 遠 く 離 れ る こ と を 得 ず 、 従 っ て 既 成 大 都 市 周 辺 か 、 大 都 市 の 中 間 地 帯 に 人 口 ・ 産 業 の 集 中 を 是 認 す る ほ か な く 、 そ れ 故 に 、 こ の 地 域 計 画 は 太 平 洋 ベ ル ト 工 業 地 帯 構 想 と し て ' 具 体 化 さ れ た 。 こ の 構 想 に 対 し て 後 進 地 域 側 か ら 、 地 域 格 差 是 正 へ の 配 慮 が 稀 薄 だ と の 理 由 を も つ て 強 い 反 発 が 起 っ た 。 こ こ で 注 目 す べ き は 、 後 進 地 域 側 は 地 域 格 差 是 正 の 手 段 を ︿ 工 業 開 発 ﹀ に あ り と 考 え 、 、産 業 基 盤 を 整 備 し 、 工 場 を 誘 致 せ ん と す る 動 き が 活 発 化 し た こ と で あ る 。 こ の 考 え 方 の 根 抵 に は 、 わ が 国 経 済 が 過 去 に お い て 工 業 を 起 動 力 と し て 発 展 を な し 、 そ の 基 調 は 将 来 と て 変 ら な い 、 と す る 見 解 が あ る こ と は 動 か せ な い 。 延 い て は 、 地 域 間 の 所 得 格 差 は 農 業 と 非 農 業 と の 生 産 性 の 差 に 因 由 し 、 ,格 差 は ま す ま す 増 大 傾 向 に あ る と 考 え 、 従 っ て 後 進 地 域 の 経 済 発 展 の た め に 工 業 を 振 興 し 、 こ れ を 中 心 と し て 他 産 業 の 発 展 を は か ろ う と す る 。 か く し て 太 平 洋 ベ ル ト 地 帯 構 想 へ の 反 発 を 契 機 と し て 、 地 域 計 画 が 工 業 開 発 主 義 的 色 彩 を い っ そ う 強 め た こ と は 否 定 で き な い 。 こ こ に 至 っ て 、 先 進 地 域 側 の ︿ 過 大 都 市 問 題 ﹀ と 後 進 地 域 側 の ︿ 地 域 格 差 是 正 ﹀ は 、 国 が 地 域 計 画 に よ っ 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 ﹂ 二 五
水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 . 二 六 て 解 洗 を 迫 ら れ た 二 つ の 基 本 的 課 題 と な り 、 そ の 実 現 手 段 と し て 工 業 開 発 主 義 が 大 方 の 承 認 を う け る こ と に な っ た 。 か か る 情 勢 の 下 で 、 .地 方 は 実 践 行 動 と し て 、 工 場 誘 致 運 動 を 激 化 さ せ 、 県 単 位 、 ブ ロ ッ ク 単 位 の 地 域 計 画 が 乱 立 し た 。 。 れ 虐 堕 、性 を 量 、 あ わ せ て 前 述 の 二 大 課 題 の 解 決 を は か る た め に 、 策 定 さ れ た の が く 全 国 総 合 開 発 計 画 ﹀ (瑠 柳 ・耗 . 諜 讐 あ . た 。 そ れ と 前 後 し て 制 定 さ れ た 低 開 発 地 域 工 藷 発 促 進 法 (調 和 灘 鯨 三 竃 )、 新 肇 都 市 建 設 促 進 法 (珊 詫 ・ 磁 榊 炉 ) 、 工 業 整 備 特 別 地 域 整 備 促 進 法 (朗 塑 一蹴 か 肚 . 三 ) は い ず れ も 太 平 洋 ベ ル ト 地 帯 構 想 へ の 反 発 な い し は 反 省 乱 し て 現 わ れ た も の で 、 全 国 的 に 工 業 開 発 地 区 を 育 成 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 三 つ の 法 を 貫 く 指 導 理 念 は 工 業 開 発 主 義 で あ っ て 、 地 域 格 差 是 正 を 願 う 後 進 地 域 側 で は 、 工 業 開 発 主 義 が 熱 狂 的 に 迎 え 容 れ ら れ た こ と も 忘 れ る べ き で は な い 。 特 に そ の 熱 狂 振 り は 新 産 都 市 指 定 を め ぐ っ て 、 後 進 地 域 の 関 係 市 町 村 が 陳 情 合 戦 を 展 開 し た 事 実 に よ っ て 代 表 さ れ る 。 ま た 地 方 自 治 体 は 工 場 誘 致 条 例 を 制 定 し て 、 数 々 の 恩 典 を 与 え て 、 企 業 誘 致 に う つ つ を 抜 か し た 一 時 期 が あ っ た こ と も 回 想 さ る べ き で あ る 。 経 済 の 高 度 成 長 政 策 の 究 極 の 目 標 は 国 民 あ 為 い は 地 域 住 民 の 福 祉 の 向 上 に あ ら ね ば な ら ぬ 。 而 し て こ の 政 策 推 進 に 当 っ て 、 地 域 計 画 に 留 意 し な け れ ば な ら ぬ と す れ ば 、 地 域 計 画 も ま た 国 民 な い し 地 域 住 民 の 福 祉 増 進 を 目 標 と し な け れ ば な ら ぬ の に 、 実 際 に 行 わ れ て い る 地 域 開 発 は 産 業 発 展 に 重 点 が 置 か れ る 余 り 、 や や も す る と 地 域 住 民 の 福 祉 町 上 は お ざ な り に さ れ て い る ヶ ら み が あ る 。 そ 分 た め 開 発 が 進 む に つ れ て 、 逆 に 住 民 福 祉 に 多 く の 問 題 が 生 じ て き た 。 が か る 産 業 偏 重 の 考 え 方 を 改 め 、 開 発 の 主 体 が 入 間 で あ り 、 開 発 の 目 的 も 人 間 で あ る と い う 、 人 間 中 心 の 考 え 方 で 地 域 開 発 を 進 め な け れ ば 、 真 の 意 味 に お け る 福 祉 国 家 を 実 現 す る こ と は で き な " で あ ろ う l l と い う 批 判 が 地 域 開 発 政 策 に 投 ぜ ら れ る よ う に な っ た の は 、 三 〇 年 代 も 終 り に 近 い 頃 か ち で あ っ た 。 そ し て 地 域 開 発 と 社 会 開 発 と が 均 衡 の 走 れ た も の で な け れ に な ら ぬ ど い う 点 に 、 政 府 が 気 付 い て 、 社 会 資 本 の 充 実 と い う 形 で 内 高 度 成 長 政 策 の ひ ず み 是 正 対 策 を 打 ち 出 し た と き に は 、 -も う 両 者 の
不 均 衡 よ り 発 生 し た 公 害 問 題 は 既 に 大 き な 世 論 と な っ て 登 場 し 、 後 進 地 域 の 住 民 を 格 差 意 識 と は う ら は ら の 、 公 害 意 識 に 駆 り 立 て て い た の で あ る 。 要 す る に 、 三 〇 年 代 以 降 の 地 域 開 発 政 策 は 既 成 大 工 業 地 帯 の 過 密 の 弊 害 を 救 済 し 、 あ わ せ て 経 済 高 度 成 長 を 続 け る た め に 、 地 方 に 工 業 分 散 肩 替 り 地 域 を 設 定 し 、 地 域 格 差 是 正 の 目 的 を も 果 た さ ん と す る も の で あ っ た 。 だ が 、 結 果 論 的 忙 ﹂ 蛮 書 を 地 方 に ま き 散 ら し た と か 、 公 害 無 防 衛 都 市 を 地 方 に 作 り 上 げ た と か の 批 判 を す る 前 に 、 格 差 意 識 に 駆 り 立 て ち れ た 後 進 地 域 側 で は 、 開 発 拠 点 の 区 域 指 定 を め ぐ る 熱 狂 的 な 要 望 、 工 場 誘 致 条 例 を 餌 に し た 熱 狂 的 な 工 場 誘 致 を 、 後 進 地 域 で は ど れ だ け 望 ん だ こ と か を 静 か に 回 想 し て 、 い ま や 、 わ が 国 の 地 域 開 発 政 策 が 一 大 転 換 期 を 迎 え る に 当 っ て 、 官 民 あ げ て 反 省 を 迫 ら れ て い る こ と を 忘 れ て は な ら な い で あ ろ う 。 前 述 の 如 ぐ 、 既 成 大 工 業 地 帯 の 集 積 の 利 益 を 求 め て 立 地 せ ん と す る 工 業 に 対 し 、 既 成 大 工 業 地 帯 か ら 遙 か に 隔 絶 し た 地 方 に 立 地 せ ん と す る も の が あ る 。 工 業 の 立 地 因 子 は 業 種 に よ っ て さ ま ざ ま で 、 特 に 局 地 性 原 料 . 水 力 電 気 . 巨 星 の 用 水 を 主 要 立 地 因 子 と せ る 、 い わ ゆ る 資 源 立 地 型 、 用 水 型 の 工 業 は 、 た と え わ が 国 経 済 の 地 域 構 造 が 既 成 大 工 業 地 帯 を 尖 端 と せ . る 求 心 的 構 造 を 形 成 し て い る と し て も 、 既 成 工 業 集 積 地 に 立 地 す る こ と は で き な い ρ 戦 後 の 地 域 開 発 政 策 に よ る 分 散 肩 替 り 地 域 設 定 、 一 般 的 産 業 基 盤 整 備 の 充 実 、 政 策 的 な 恩 典 付 与 に よ る 工 場 誘 致 が い か に 行 わ れ よ う と も 、 そ の 地 域 に 資 源 . 用 水 の 賦 存 が な け 池 は 立 地 で き な い の 戦 前 に あ っ て 庵 同 様 で あ る 。 従 っ て こ れ ら の 資 源 立 地 型 工 業 は 古 く は 明 治 大 正 年 間 、 あ る い は 昭 和 初 期 か ら 、 資 源 賦 存 を 求 め て 、 既 成 大 工 業 地 帯 か ら 遙 か に 隔 絶 し た 微 速 の 地 、 九 州 炭 田 地 帯 へ 、 ま た は 北 陸 水 力 電 源 地 帯 へ 指 向 し て 、 そ こ で 地 方 的 な 工 業 集 積 を 高 め 、 あ る も の は 全 ぐ 集 積 を 形 成 す る こ と な し に 現 在 に 至 っ て い る 。 本 論 の 中 心 と な る チ ッ ソ 水 俣 工 場 も 昭 和 電 工 鹿 瀬 ( か の せ ) 工 場 も そ の 類 に 属 す る 。 こ れ ら は そ れ ぞ れ の 地 方 経 済 に 密 着 し て 、 地 域 住 民 に 雇 用 の 機 会 を 与 え 、 久 し き 間 に わ た っ て 、 そ れ な り に 地 域 住 民 の 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 ■ , 二 七 '
水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 . 二 八 福 祉 向 上 に 貢 献 し 、 ま た 国 産 資 源 と 国 産 技 術 に よ っ て 有 機 合 成 化 学 工 業 を 発 展 ざ せ 、 国 民 の 物 的 生 活 を 豊 富 に し 、 外 貨 節 、 約 を 通 じ て も 国 民 経 済 に 貢 献 し て き た 工 場 で あ っ た こ と も 看 過 さ れ て は な ら な い 。 し か る に 、 長 い 経 年 的 操 業 体 験 か ら で は 、 予 想 も で き な か っ た よ う な 原 因 に よ っ て 、 突 如 と し て 、 世 界 を 震 駭 さ せ る よ う な ︿ 水 俣 病 ﹀ を 発 生 さ せ る に 至 っ た 。 公 害 病 の 世 界 的 代 表 ど 見 ら 耽 る 水 俣 病 発 生 は 、 今 日 の 国 民 の ︿ 公 害 意 識 ﹀ の 昂 揚 に 重 大 な 一 つ の 契 機 と も な っ て い る の で あ る 。 こ の 奇 病 の 原 因 究 明 は 長 い 歳 月 を か け で 、 医 学 陣 の 研 究 努 力 の 結 果 、 そ の 全 貌 が 解 明 さ れ 、 既 に 昭 和 四 三 年 九 月 二 六 日 の 閣 議 で 政 府 見 解 の 報 告 が 終 っ た 。 公 害 訴 訟 も 目 下 進 行 中 と 聞 く が 、 本 稿 は 訴 訟 問 題 に 関 与 す る 積 り は 毛 頭 な い 。 か ね て 、 筆 者 は カ ! バ イ ド H ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 の 立 地 論 的 究 明 に た ず さ わ ッ て き た も の で あ る 。 た ま た ま 、 水 俣 病 原 因 物 質 が カ ー バ イ ド " ア セ チ レ ン 系 誘 導 体 製 造 工 程 よ り 副 生 す る 物 質 で あ る 之 の 公 式 見 解 が 発 表 さ れ て い る 現 在 、 な ぜ 水 俣 病 が 熊 本 に 起 り 、 新 潟 に 起 っ た か 、 そ の 他 同 種 工 場 に は な ぜ 起 ら な か っ た か 、 国 産 技 術 に よ ゐ 酢 酸 合 成 の 歴 史 は 昭 和 初 期 に 始 ま る に も 拘 ら ず 、 な ぜ 熊 本 で は 昭 和 二 八 年 に 、 新 潟 で は 昭 和 三 九 年 に 至 っ て 発 生 し た か 、 と い う 点 に 疑 問 を 懐 く に 至 っ た の で 、 本 稿 で は こ れ ら の 諸 点 を 解 明 し よ う と す ●る 。 本 稿 は 医 家 の 領 域 に 触 れ る こ と も あ る が 、 そ れ は 医 家 の 研 究 を 参 考 に す る こ と な し に 、 筆 者 の 疑 問 の 解 明 が で き な い か ら で あ る 。 一 水 俣 病 発 生 な ら び に 医 学 陣 の 原 因 追 求 の 概 要 昭 和 三 一 年 五 月 一 日 、 新 日 本 窒 素 肥 料 ㈱ ( 現 チ ッ ソ ﹀ 水 俣 工 場 附 属 病 院 よ り 水 俣 保 健 所 へ 、 脳 症 状 患 者 四 名 発 生 と 報 告 。 同 月 二 八 日 、 地 元 で 奇 病 対 策 委 員 会 ,( 市 医 師 会 ・ 保 健 所 ・ 市 立 病 院 ・ 工 場 附 属 病 院 ・ 市 役 所 で 結 成 ) が 組 織 さ れ て 、 疫 学 的 調 査 、 か ル テ 再 調 査 か ら 、 三 年 前 の 二 爪 年 末 に 患 者 第 一 号 の 発 生 を つ き と め た 。 同 患 者 は 当 時 原 阻 不 明 と 処 理 さ れ て い た 。 さ ら に 二 九 年 一 己 名 、 三 〇 年 一 四 名 発 生 、 さ ま ざ ま の 病 名 が つ け ら れ て い た こ と が 判 明 。 そ の 後 、 三 五 年 ま で に 一 = 名 ●
第1図 水俣 病患者分布図 ● 磁 嫉 . . . フ 鳴 ゴ ● な ホた チ ッソ 水 俣工 場 双 子 血
麗
., 明神崎笛 恋路畠4
湯堂 樵 ノ木 崎 . ・ . 綿 .踊
備考:津 奈 木 町2名,田 浦,芦 北,湯 浦 町 各 1名,出 水市3名 は本 図に は 示 され て い な い 。 発 病 、 う ち 四 ご 名 死 亡 。 伝 染 性 脳 炎 と し て 細 菌 ・ ビ ー ル ス の 検 出 を 急 い だ が 、 熊 本 大 学 で は 病 原 菌 -は み つ か ら ず 伝 染 性 疾 患 で な い と 確 認 。 三 一 年 一 一 月 、 熊 大 億 ﹁ 魚 介 類 に よ 6 重 金 属 中 毒 ﹂ と 中 間 発 表 。 三 二 年 か ら 熊 大 は 中 毒 原 因 物 質 の 検 索 に か か る 。 患 者 は 共 通 し て 脳 を 侵 さ れ て い る 。 脳 を 侵 す 毒 物 の 数 は 極 め て 多 く 、 そ れ ら か ら 特 定 の 物 質 を 探 し 出 し て 、 動 物 実 験 で 確 定 す る に は 非 常 な 手 間 が か か る 。 水 俣 湾 の 魚 や 泥 の 分 析 か ら 各 種 の 毒 物 が 出 て い る 。 だ が 、 症 状 や 疫 学 的 調 査 か ら 、 物 質 は 六 ・ 七 楚 し ぼ ら れ 、 最 初 に マ ン ガ ン 説 が 浮 か ん だ 。 し か し 水 俣 湾 の 魚 介 中 の マ ン ガ ン 含 量 が 水 俣 病 と 無 関 係 の 海 域 産 の も の と 違 わ な い こ と が 判 明 し て 対 象 か ら 除 外 さ れ た 。 次 い で セ レ ン と タ リ ウ ム が 取 上 げ ら れ た 。 三 三 年 七 月 、 厚 生 省 科 学 研 究 班 は 奇 病 は 新 日 本 窒 素 肥 料 ㈱ 水 俣 工 場 の 廃 棄 物 が 港 湾 を 汚 染 し 、 魚 介 類 が 廃 棄 物 に 含 ま れ て い る 化 学 毒 物 で 有 毒 化 し 、 こ れ を 多 食 し て 起 る と 推 定 、 同 社 の 名 前 を 初 め て 公 表 し た 。 混 迷 を 極 め て い た 水 俣 病 原 因 物 質 の 究 明 に 重 大 な 手 が か り を 与 え る 論 文 が 英 国 の 医 学 誌 ラ ン セ ッ ト に 掲 載 さ れ た 。 三 三 年 春 、 英 国 の 神 経 医 マ ッ ク ア ル パ イ ン が 熊 本 に き て 、 患 者 を 診 察 、 水 俣 病 特 有 の 症 状 で あ る 視 野 狭 窄 な ど は メ チ ル 水 銀 で も 起 っ た こ と が あ る 、 と い う 彼 の 論 文 の 数 行 の 記 述 が ヒ ン ト に な っ た の で あ る 。 熊 大 武 内 教 授 は マ ッ ク ア ル パ イ ン の 所 見 を 引 用 し だ 後 、 、か か る 有 機 水 銀 が 水 俣 湾 に 存 在 す る か 今 後 検 討 す る こ と に し 、 ネ コ の 実 験 的 水 俣 病 と ネ コ の 有 機 水 銀 中 毒 水 俣 病 と ア ガ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 二 九水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 、 . 三 〇 ユ 症 と の 異 同 を 検 討 申 、 と 発 表 し た の は 三 四 年 三 月 で あ る 。 ﹁ ま さ か 水 銀 の よ う な 高 価 な も の が ⋮ ⋮ ﹂ と 、 他 の 研 究 者 は 当 初 は 半 信 半 疑 で あ っ た 。 だ が 、 熊 大 で 繰 返 し 実 験 の 結 果 、 有 機 水 銀 の う ち メ チ ル 水 銀 、 エ チ ル 水 銀 だ け が 水 俣 病 と 同 じ 症 状 を 実 験 動 物 に 起 さ せ る こ と を つ き と め た 。 喜 田 村 教 授 は 湾 内 の 泥 か ら 高 値 の 水 銀 含 量 を 検 出 、 特 に 工 場 排 水 口 附 近 か ら は 二 〇 一 〇 P P m を 示 し て 最 高 で あ っ た っ 魚 の 毒 性 と 水 銀 含 量 も 明 ら か に 相 関 関 係 を 示 し た の で 、 遂 に 熊 大 は 三 四 年 七 月 二 二 日 に 有 機 水 銀 説 を 発 表 し た 心 し か し 最 大 の 謎 は 工 場 側 が 無 機 水 銀 し か 使 用 し て い な い と い う に も 拘 ら ず 、 有 機 水 銀 で し か 水 俣 病 は 起 ら な い 乏 い う 点 に あ っ た 。 一 方 、 工 場 側 は 有 機 水 銀 説 発 表 ( 七 月 二 十 二 日 ) の あ と を ち け て 、 七 月 二 四 日 よ り 猫 実 験 四 〇 〇 号 を 始 め た 。 即 ち 、 毎 日 酢 酸 工 場 排 水 二 〇 離 を 基 礎 食 に か け て 食 わ せ 、 七 十 七 日 目 の 十 月 七 日 に 猫 の 水 俣 病 発 症 を 確 認 。 こ の 実 験 は 酢 酸 、 工 場 排 水 が 有 機 水 銀 を 含 む 証 拠 と な る も の だ が 、 工 場 側 は こ の 結 果 を 秘 匿 し た 。 (四 三 年 八 丹 二 七 日 、 朝 日 新 聞 に て 暴 露 さ れ 、 さ ら に 四 五 年 七 月 五 日 、 元 水 俣 工 場 付 属 病 院 長 細 川 氏 の 証 言 に よ り 、 秘 匿 さ れ た 事 実 が は っ き り し た 。 ) も 七 も 猫 実 験 四 〇 〇 号 の 結 果 、 が 直 ち に 公 表 さ れ て い た ら 、 ど う し て 無 機 水 銀 が 有 機 水 銀 に 転 化 す る か の 究 明 は 不 必 要 で あ っ た 。 熊 大 は そ の 究 明 に 三 年 近 い 歳 月 を 空 費 さ せ ら れ た ひ ヨ 熊 大 瀬 辺 教 授 ( 薬 理 学 ) は 三 七 年 に 至 っ て 、 無 機 水 銀 の 有 機 転 化 と い う 仮 説 を 徹 底 し て 洗 っ た 後 に 、 そ の 可 能 性 が 殆 ん 4 (3 ) ど な い こ と を 確 認 。 工 場 内 で 有 機 水 銀 化 合 物 が 出 来 て い る と 考 え る ほ か な い と の 見 解 を 発 表 。 入 鹿 山 教 授 は 三 七 年 八 月 、 . 酢 酸 工 場 水 銀 澤 ( こ れ は 三 三 年 八 月 お よ び 三 五 年 一 〇 月 に 同 工 場 反 応 管 よ り 直 接 採 取 し 、 冷 暗 所 に 密 封 保 存 さ れ て あ っ た も の 。 ) か ら 有 機 水 銀 を 抽 出 す る に 成 功 、 形 状 は 結 晶 、 構 造 は O = ω匡 σq Ω で 、 .本 物 質 は 水 俣 病 発 生 と 重 要 な 関 係 が あ る と 考 え ら れ る と 結 論 し た 。 ま た こ れ を 毎 日 一 一 二 ㎎ / 塊 ず つ 投 与 し た ネ コ は 二 〇 日 あ ま り で 水 俣 病 類 似 の 症 状 と 病 変 を 呈 し た と い う 。 入 鹿 る 山 教 授 の 研 究 報 告 は 三 九 年 一 〇 月 、 第 六 報 に て 完 結 し 、 O 出 。国 αq Ω が 水 俣 病 の 原 因 物 質 で あ る と め 結 論 に な っ た 。 四 二 年 亀
に 喜 旦 椛 ・ 瀬 齢 教 授 は 酢 酸 工 場 の 反 応 条 件 を 実 験 室 内 に モ デ ル を 作 ・ て 実 験 の 箪 、 ・ セ ・ ア ル デ ・ ド 合 成 工 程 で 蒸 溜 排 水 に 副 産 物 と し て 相 当 量 の メ チ ル 水 銀 が 混 入 す る こ と を 証 明 。 さ ら に 副 生 メ チ ル 水 銀 量 は 合 成 工 程 の 反 応 条 件 で 多 少 の 差 は あ る が 、 損 失 水 銀 量 の 五 % 内 外 で 、 そ れ だ け の メ チ ル 水 銀 が 流 出 す る こ と を 究 明 、 殊 に 蒸 溜 排 水 中 の メ チ ル 水 銀 量 は 生 産 さ れ る ア セ ト ア ル デ ヒ ボ 一 ﹁t 当 り ニ ー 二 〇 紅 と い う 。 こ れ で 水 俣 病 の 原 因 物 質 で あ る メ チ ル 水 銀 が ど の よ う に し て 出 来 て 、 ど こ か ら 流 出 す る か は 明 ら か に さ れ 、 魚 か ら 人 間 へ の 経 路 は 既 に 明 確 で あ る の で 、 幾 る 段 階 は 水 の 中 の ご く 薄 い メ チ ル 水 銀 が ど う し て 魚 の 体 内 に 蓄 積 す る か の 過 程 だ け と な っ た 。 * * ﹁ , * 通 産 省 は 三 四 年 一 一 月 に 、 ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 製 造 し て い る 全 国 の 工 場 に 対 し て 、 工 場 排 水 の 水 質 認 査 を 社 内 外 に 秘 密 ・ で 行 な う よ う 求 め て い る (静 臥 綱 融 酬 謎 峨 棋 詠 振 病 )。 こ の 秘 密 樋 牒 は 三 四 年 七 月 の 熊 大 有 機 水 銀 説 発 表 の あ と を う け て 、 水 俣 工 場 が 猫 四 〇 〇 号 秘 密 実 験 に 着 手 し 、 そ の 成 功 を 見 た 三 四 年 一 〇 月 に 続 く 時 点 で 出 さ れ て い る と こ ろ が ら 、 通 産 省 ば 水 俣 病 の 原 因 が 水 俣 工 場 排 水 に 重 大 な 関 係 が あ る と 知 っ た 結 果 で あ る 、 と 推 測 さ れ る の は 論 理 的 で あ る 。 事 は 人 命 に か か わ る 問 題 で あ る か ら 、 こ の 時 点 で 疑 わ し き も の に 対 す る 早 急 適 正 な 措 置 が と ら れ て い た ら 、 第 二 の 水 俣 病 発 生 億 防 止 し え た こ と で あ 与 う に 、 裁 判 所 が 判 決 申 し 渡 し に 必 要 な ほ ど の 、 徹 底 し た 原 因 究 明 が 出 る ま で 、 荏 苒 ( じ ん ぜ ん ) 手 を 操 ( こ ま ) ね い て い る 間 に 、 遂 に 第 二 水 俣 病 が 発 生 し た 。 新 潟 県 阿 賀 野 川 河 口 に 近 い 部 落 に 、 三 九 年 八 月 下 旬 以 降 四 〇 年 名 月 ま で に 、 二 七 名 の 典 型 的 な 有 機 水 銀 中 毒 患 者 が 発 生 レ た 。 四 〇 年 六 月 に 、 新 潟 大 の 臨 床 所 見 が 熊 本 水 俣 病 の 症 状 に 酷 似 す る こ と か ら 、 有 機 水 銀 中 毒 症 と の 疑 い で 県 衛 生 部 に 報 告 。 新 潟 大 椿 教 授 が い ち 早 ぐ 有 機 水 銀 中 毒 と 診 断 を 下 し た の で 患 者 発 生 は 比 較 的 少 数 に と ど め る こ と が で き た 。 四 〇 年 . 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 . = =
水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 ・ . 三 二 一 〇 月 に 厚 生 省 特 別 調 査 班 ( 疫 学 . 臨 探 .試 験 の 三 研 究 班 ) が 現 地 調 査 、 四 一 年 三 月 に 研 究 班 合 同 会 議 は ﹁ 本 中 毒 症 は メ チ ル 水 銀 を 含 ん だ 魚 介 類 を 多 食 す る こ と に よ り 惹 起 し た も の で 、 汚 染 -源 と し て は 阿 賀 野 川 上 流 の 昭 和 電 工 鹿 瀬 工 場 ( 現 鹿 瀬 電 お エ ) の 工 場 廃 液 に よ る 可 能 性 が 極 め て 大 き い ﹂ と 中 間 報 告 。 四 二 年 四 月 厚 生 省 に 提 出 さ れ た 報 告 書 で 疫 学 班 は 昭 和 電 工 の ﹁ 排 水 が 原 因 と い う 結 論 を 出 し た 。 厚 相 は 食 品 衛 生 調 査 会 に こ の 報 告 を 諮 問 。 四 二 年 八 月 調 査 会 は ﹁ 昭 和 電 工 鹿 瀬 工 場 の 排 水 中 の メ チ ル 水 銀 化 合 物 が 事 件 発 生 の 基 盤 を な す ﹂ と 答 申 、 こ れ が 厚 生 省 見 解 と な り 、 政 府 見 解 の 中 心 点 と な っ た 。 前 述 の 疫 学 班 が 昭 電 排 液 と 本 中 毒 症 事 件 が 明 瞭 に 結 び つ く と 結 論 し た が 、 汚 染 源 の 完 全 追 跡 に は メ チ ル 水 銀 が 排 水 ロ を 通 し て 放 流 さ れ て い た 事 実 の 証 明 が 必 要 と さ れ る の に 、 本 病 発 見 よ り 半 年 も 前 、 四 〇 年 一 月 に 鹿 瀬 工 場 は ア セ ト ア ル デ ヒ ド 合 成 工 場 を 閉 鎖 し て し ま っ て い た 。 そ れ 故 、 過 去 の 汚 染 の あ と を 、 現 在 残 さ れ て い る 事 象 か ら 追 跡 し な け れ ば な ら ぬ 、 ミ と い う 困 難 な 問 題 に 逢 着 し た 。 新 潟 大 滝 沢 助 教 授 に よ る ア セ ト ア ル デ ヒ ド 工 場 排 水 口 の 水 苔 か ら の メ チ ル 水 銀 化 合 物 の 検 出 も そ の た め の 研 究 で あ っ た 。 ま た 従 来 か ら 困 難 と さ れ た 有 機 水 銀 の 単 離 分 析 に は 、 喜 田 村 教 授 ら が 四 〇 年 に 開 発 し た ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ イ コ に よ る 超 感 度 微 量 分 析 法 は 、 患 者 の 毛 髪 、 川 魚 、 血 液 、 尿 、 ア セ ト ア ル デ ヒ ド 製 造 廃 液 な ど よ り 有 機 水 銀 の 定 量 検 出 に 応 用 零 れ た 。 な か で も 椿 教 授 ら は 入 院 女 子 患 者 の 長 髪 の . 一 部 を 根 本 よ り 切 り 、 長 軸 に 沿 っ て 一 ㎝ ご と の 水 銀 濃 度 を 分 析 し た 。 毛 髪 の 成 長 速 度 は 年 令 そ の 他 で 異 る の で 、 個 々 人 の 成 長 速 度 ( 一 一 丁 五 ㎝ /四 〇 日 で あ っ た ) を 求 め 、 こ の 個 人 値 を 用 い て 、 毛 髪 の 根 本 か ら の 距 離 を 時 間 に 換 算 す る と 、 過 去 の 水 銀 摂 取 量 が 推 定 で き る 。 日 本 人 は 平 均 六 P P m 、 最 大 で も 二 〇 P P m 以 下 と い う 成 績 で あ る か ら 、 三 〇 P P m 以 上 は 川 魚 の 汚 染 が そ の 時 点 で 始 ま っ た こ と を 客 観 的 に 立 証 す る 貴 重 な 資 料 と な り 、 ま た 患 者 毛 髪 水 銀 濃 度 が 新 潟 地 震 後 数 倍 に 増 加 し 、 四 〇 年 三 ー 三 月 を ピ ー ク に 減 少 し て い る こ と 、 患 者 の 川 魚 多 食 期 は 三 九 年 八 月 か ら 四 〇 年 三 月 で 、 漁 獲 の 多 か っ た 時 期 と も 時 間 的 に 一 致 す る こ と 、 さ ら に 地 域 住 民 (-o ) . の 川 魚 摂 取 量 と 毛 髪 水 銀 量 に も 明 白 な 相 関 関 係 が あ る こ と を 椿 教 授 ら は 立 証 し た 。
、 か く し て 四 三 年 九 月 二 六 日 両 水 俣 病 に 関 す る 政 府 見 解 が 公 表 さ れ た 。 熊 本 水 俣 病 に つ い て は チ ッ ソ 水 俣 工 場 の 廃 液 が 原 因 と さ れ 、 新 潟 恭 俣 病 に つ い て は 、 メ チ ル 水 銀 に 汚 染 さ れ た 阿 賀 野 川 の 川 魚 を 多 食 し た こ と が 原 因 で あ る と し 、 三 九 年 八 ﹁ 且 か ら 四 〇 年 七 月 に か け て 患 者 多 発 し た の は 、 長 期 汚 染 に 短 期 汚 染 が 加 わ っ た た め と 見 て い る 。 長 期 汚 染 は 昭 電 鹿 瀬 工 場 が ア セ ト ア ル デ ヒ ド 生 産 の 副 産 物 で あ る メ チ ル 水 銀 化 合 物 を 川 に 排 出 し て い た た め 、 薫 れ が 川 魚 の 体 内 に 蓄 積 し 、 多 食 し た 下 流 の 人 た ち の 体 内 の 水 銀 保 有 量 が 異 常 に 高 ま り 、 事 件 発 生 の 要 因 之 な っ た と し 、 患 者 が 一 時 期 に 集 中 し た の は 、 魚 の 体 内 の メ チ ル 水 銀 量 が 急 に 高 ま つ だ た め で 、 そ の 原 因 に 鹿 瀬 工 場 の ア セ ト ア ル デ ヒ ド 生 産 停 止 前 後 の 管 理 不 充 分 や 新 潟 地 震 に よ る 農 薬 流 出 説 が あ る が 、 現 時 点 で は 資 料 不 充 分 で い ず れ ど も 断 定 で き が た い と し た 。 政 府 見 解 が 出 る ま で 、 熊 本 水 俣 病 に つ い て は 十 五 年 、 新 潟 水 俣 病 に つ い て は 三 年 余 の 歳 月 が か か っ た こ と に な る 。 (1 ) ア セ ト ア ル デ ヒ ド 製 造 に 用 い る 水 銀 触 媒 は 高 価 で あ る た め に 、 そ の 消 耗 が 大 き い と き は 製 品 原 価 に は ね か え る こ と に つ き 、 日 本 合 成 化 学 工 業 (株 ) 三 十 年 史 昭 和 三 三 年 一 二 月 刊 九 三 頁 に 次 の 記 述 が あ る の で 、 参 考 に 引 用 す る 。 同 社 は 大 阪 市 立 工 業 試 験 所 の 開 発 せ る 技 術 を も っ て 、 わ が 国 で 切 め て 酢 酸 合 成 を 工 業 化 し た が 、 そ の 合 成 法 が 五 つ の 点 で 諸 外 国 の そ れ に 比 し て 非 常 に 優 越 し て い る と な し 、 そ の う ち (四 ) ﹁触 媒 剤 復 活 作 業 の 優 秀 な る こ と ﹂ に つ い て 、 ﹁ ア セ ト ア ル デ ヒ ド 成 生 に 使 用 す る 触 媒 剤 の 復 活 作 業 の 良 否 は 、 ま た 本 事 業 の 興 廃 に 甚 大 な る 影 響 を 有 す る 程 重 要 な る も の で 、 如 何 に 進 歩 優 越 せ る 設 備 方 法 に よ り 酢 酸 を 合 成 せ ら る る と 難 も 、 該 触 媒 剤 復 活 能 率 の 不 良 な る に 於 て は 、 高 価 な る 触 媒 剤 の 大 な る 消 耗 と 廃 り 、 忽 ち 酢 酸 の 生 産 原 価 を 高 昇 な ら し め 、 本 事 業 の 成 否 に 大 関 係 を 有 す る も の で あ る 。 近 時 欧 米 に 於 て も 合 成 酢 酸 製 造 法 の 特 許 分 譲 を 本 邦 に 申 出 つ る も の 、 ま た 本 邦 に て 本 事 業 の 設 計 を 試 み 之 れ を 吾 人 に 推 奨 せ る 者 二 三 あ れ ど も 、 其 内 容 を 精 査 す れ ば 皆 高 価 な ろ 触 媒 剤 の 使 雨 量 多 く 且 つ 其 消 耗 率 多 き た め 、 到 底 経 済 的 に 工 業 化 し う べ き 見 込 み の も の が な い 。 本 研 究 所 に 於 て は 、 つ と め て 触 媒 剤 の 使 用 量 を 減 じ 、 加 ふ る に 独 特 の 学 理 を 応 用 し て 之 れ が 復 活 作 業 を 完 全 に 操 作 す る こ と が 出 来 た か ら 触 媒 剤 が 製 品 原 価 に 及 ぼ す 程 度 は 極 め て 僅 少 で あ る と い う 特 徴 を 有 し て い る 。 ﹂ へ2 ) 瀬 辺 恵 鎧 、 伊 津 野 吉 亮 、 有 機 水 銀 化 合 物 と 水 俣 病 、 日 新 医 学 四 九 巻 九 号 昭 和 三 七 年 九 月 . (3 ) 入 鹿 山 ら 、 水 俣 酢 酸 工 場 の 水 銀 澤 中 の 有 機 水 銀 、 日 新 医 学 四 九 巻 八 号 昭 和 三 七 年 八 月 、 (4 ) 入 鹿 山 ら 、 水 俣 湾 魚 介 中 の 有 機 水 銀 と そ の 有 毒 化 機 転 に 関 す る 研 究 、 第 六 報 水 俣 湾 魚 介 中 の 有 機 水 銀 の 性 状 と 水 俣 病 原 因 物 質 に 対 す る 考 察 、 日 本 衛 生 学 雑 誌 一 九 巻 四 号. 昭 和 三 九 年 一 〇 月 ( 5 ) 喜 田 村 正 次 ら 、 ア セ チ レ ン 接 触 加 水 反 応 に 伴 う 副 反 応 (1 ) 、 日 本 薬 理 学 雑 誌 . 六 三 巻 二 二 八 -二 四 三 頁. 昭 和 西 二 年 (6 ) 瀬 辺 恵 鎧 ら 、 ア セ チ レ ン 接 触 加 水 反 応 に 伴 う 副 反 応 (皿 ) 、 日 本 薬 理 学 雑 誌 六 三 巻 二 四 四 -二 六 〇 頁 昭 和 四 二 年 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 三 三 . 、
、 . 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 三 四 ( 7 ) 厚 生 省 主 催 、 新 潟 有 機 水 銀 中 毒 研 究 班 報 告 書 昭 和 四 一 年 三 月 (8 ) 松 田 心 一 ら 、 新 潟 県 阿 賀 野 川 沿 岸 部 落 に 発 生 し え 有 機 水 銀 中 毒 症 に 関 す る 研 究 報 告 書 昭 和 四 一 年 三 月 ︹疫 学 研 究 班 昭 和 四 一 年 ︺ (9 ) 滝 沢 行 雄 ら 、 阿 賀 野 川 有 機 水 銀 中 毒 症 の 原 因 探 究 ー ア セ ト ア ル デ ヒ ド 化 学 工 場 排 触 目 の 水 苔 か ら メ チ ル 水 銀 化 合 物 の 分 離 検 出 日 本 衛 生 学 雑 誌 二 二 巻 四 号 昭 和 四 二 年 一 〇 月 (10 ) 椿 忠 雄 、 阿 賀 野 川 流 域 の 有 機 水 銀 中 毒 、 内 科 二 一 巻 五 号 昭 和 四 三 年 五 月 ほ か に 、 宇 井 純 、 公 害 の 政 治 学 l l 水 俣 病 を 追 っ て 、 昭 和 四 三 年 七 月 を 参 照 。 二 水 俣 病 発 生 期 に お け る ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 の 生 産 状 況 へ の 回 顧 一 水 俣 病 発 生 の 背 景 水 俣 病 の 原 因 物 質 は 有 機 合 成 化 学 工 業 の 重 要 な 中 間 体 の 一 つ で あ る 、 ア セ ド ア ル デ ヒ ド 製 造 工 程 よ り 排 出 す る 有 機 メ チ ル 水 銀 で あ る こ と が 、 医 学 陣 の 長 期 に わ た る 究 明 の 結 果 明 ら か に さ れ た が 、 ア セ ト ア ル デ ヒ ド 製 造 の 出 発 原 料 は 、 わ が 国 で 石 油 化 学 工 業 が 稼 動 す 惹 ま で は 、 カ ー バ イ ド 一一 ア セ チ レ ン だ け で あ っ た 。 よ っ て 、 熊 本 水 俣 病 発 生 期 の 昭 和 三 〇 年 前 後 か ら 、 新 潟 水 俣 病 発 生 期 の 四 〇 年 頃 に か け て ( 水 俣 . 鹿 瀬 両 工 場 と も 四 〇 年 に ア セ チ レ ン 法 ア セ ト ア ル デ ヒ ド 製 造 を 廃 止 、 後 述 ) ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 の 生 産 状 況 を 回 顧 し 、 水 俣 病 発 生 の 背 景 を な す 斯 業 の 需 給 関 係 な い し 経 済 諸 事 情 を 明 ら か に し た い 。 - } 、 ﹁ ' ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 北 学 工 業 の 原 材 料 の 大 部 分 は 国 産 品 に よ っ て 賄 わ れ 、 し か も ア セ チ レ ン 源 と な る わ が 国 の カ ー バ イ ド は 生 産 量 ・ 品 位 ・ コ ス ト の 低 廉 な ど の 点 で は 世 界 最 高 の 水 準 に あ っ た 。 そ の 誘 導 品 で あ る 塩 化 ビ ニ ル ・ ビ ニ ロ ン ・ ア セ テ ー ト な ど の 製 造 技 術 は 、 ア ン モ ニ ア 合 成 法 や 石 油 化 学 の 諸 技 術 匙 異 っ て 、 殆 ん ど が 純 然 た る 国 産 技 術 と し て 発 展 を と げ た も の で あ る 。 そ し て 最 終 製 品 た る 合 成 樹 脂 ・ 合 成 繊 維 は そ の 品 質 の 優 秀 性 と 価 格 の 低 廉 性 に お い て 、 国 民 の 物 質 的 生 活 一 般 の 向 上 に 裨 益 す る と こ ろ 極 め て 大 隊 い も の が あ っ た し 、 海 外 市 場 に も 進 出 し て 国 際 収 支 の 改 善 に 寄 与 し 允 こ と は 改 め て 云 う ま で も な い 。 顧 ' 、 ト.
' 戦 前 に 齢 け る カ ー バ イ ド の 用 途 は 肥 料 用 六 〇 % 、 市 販 用 三 〇 % 、 有 機 合 成 用 一 〇 % で 、 主 と し て 石 灰 窒 素 肥 料 の 製 造 に 向 け ち れ 内 さ ら に 戦 後 の 復 興 期 の 二 五 -二 六 年 頃 ま で は 肥 料 偏 重 の 形 を と っ て き た 。 だ が ( 石 灰 窒 素 の 市 場 拡 大 に は 限 度 が あ り 、 ・ か つ 価 格 の 低 水 準 の た め 企 業 収 益 向 上 に 寄 与 し え な い よ う に な り 、 他 方 で は 、 高 分 子 化 学 が 異 常 な 発 展 を と げ 、 加 え て 国 民 所 得 水 準 の 上 昇 に よ る 消 費 水 準 の 向 上 に 伴 な い 、 有 機 合 成 用 原 料 と し て の カ ! バ そ ド 隅 ア セ チ レ ン の 評 価 が い よ い よ 高 ま る と 、 カ ー バ イ ド メ ー カ ー は 競 っ て 有 機 合 成 化 学 の 企 業 化 に 乗 り 出 し 、 二 八 i 二 九 年 以 降 は 、 肥 料 か ら 一 転 し て 有 機 合 成 製 品 を 資 本 蓄 積 の 槓 杆 と し て 急 速 な 伸 長 を 示 し た 。 そ の た め に 、 カ ー バ イ ド の 有 機 合 成 用 需 要 は 激 増 し 、 三 二 年 に は 肥 料 用 需 要 と 明 確 に 地 位 を 逆 転 し て 、 そ れ 以 降 は 高 い 年 率 で 成 長 を 続 け て 四 二 年 の ピ ー グ に 達 す る の で あ る 。 し か し な が ら 、 わ が 国 の 石 油 化 学 工 業 は 既 に 三 二 年 よ り 稼 動 を 始 め て お り 、 ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 は 漸 次 カ ー バ イ ド 盟 ア セ チ (2 ) レ ン 原 料 か ら 石 油 化 学 系 原 料 に 転 換 を 始 め る こ と も 看 過 さ る べ き で は な い 。 カ ー バ イ ド の 有 機 合 成 用 需 要 を 激 増 さ せ た 原 因 は 、 塩 化 ビ ニ ル と 酢 酸 系 譜 誘 導 品 を 主 柱 と せ る 有 機 合 成 製 品 の 需 要 増 で あ る 。 而 し て 前 章 で ア セ ト ア ル デ ヒ ド 製 造 工 程 よ り 副 生 す る メ チ ル 水 銀 が 水 俣 病 の 原 因 物 質 で あ る ど の 医 学 陣 の 結 論 を 述 べ た が 、 こ こ で 云 う 酢 酸 系 諸 誘 導 品 は ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 中 間 原 料 と し て 合 成 さ れ る と い う 関 係 に あ る 。 ア セ ト ア ル デ ヒ ド は 中 間 体 で あ る 。 一 般 に 中 間 体 で 取 引 さ れ る こ と は な く 、 酢 酸 な い し そ れ 以 降 の 誘 導 品 と し て 取 引 さ れ る 。 だ か ら ア セ ト ア ル デ ヒ ド メ ー カ ー と は 呼 ば れ な い 。で 、 通 常 、 酢 酸 メ ー カ ー と 呼 ば れ て い る ℃ 酢 酸 系 諸 誘 導 品 需 要 は 二 八 一 二 九 年 以 降 急 速 に 増 大 す る こ と は 前 述 し た が 、 二 八 一 三 五 年 の 生 産 実 績 の 激 増 の 状 況 は 第 一 表 に 示 し た 。 こ れ だ け の 生 産 量 の 激 増 に も 拘 ら ず 、 酢 酸 メ ﹁ カ ー は 六 社 ( 日 本 合 成 化 学 、 大 日 本 セ ル ロ イ ド 、 新 日 本 窒 素 肥 料 昭 和 電 工 、 霜 気 化 学 、 鉄 興 社 ) に 過 ぎ ず 、 そ の 数 の 増 減 は な か っ た 。 こ の ヶ ち 、 日 本 合 成 大 垣 工 場 を 例 外 と し て 、 前 掲 六 社 六 工 場 は す べ て 同 一 工 場 内 で カ ー バ イ ド を 自 家 生 産 し て い る の は ふ 酢 酸 系 諸 誘 導 侃 の 経 済 性 は 主 原 料 カ ー バ イ ド 価 格 に 左 右 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 三 五
' 第1表 ア セ トアル デ ヒ ド生 産 量:そ の実 績 と指 数(会 社工 場別) *印 歴年(単 位:t) 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 ﹂ 35 *34 45,150 8,278 7,971 22,763 12,518 11,125 2,872 110,677 619 170 210 388 292 542 198 374 32,541 6,922 6,895 18,300 8,943 8,613 2,423 84,637 446 142 181 312 208 419 167 286 *33 19,436 5,840 5,945 14,352 6,207 5,266 1,849 1 58,894' 1 266 120 156 245 145 256 圏128 199 *31 15,919 5,782 6,001 10,251 5,684 32 18,231 5,917 5,929 13,206 6,224
291*30
8,540 4,990 3,809 5,937 3,947 10,634 5,035 3,905 7,633 4,633 昭28 1,757 1,410 2,089 2,479 4,241 1,366 1,7161 1.724 35,296147,831155,472 30,391 7,299 4,873 3,800 5,861 4,293 2,054 1,449 29,1630 新 日 本 窒 素 (水俣) 日 本 合 成(大 垣) 〃 (熊本) :大日本セルロイ ド(新井) 昭 和 電 工 く鹿瀬) 電 気 化 学 (青海) 鉄 興 社(酒 田) 計 250 121 156 225 145 206 119 187 218 119 158 175 132 121 118 161 鵬 m 塒 ㎜ 畑 醜 94 囎 m 競 m m 92 85 97 塒 100 100 100 100 100 100 100 100 ラ 俣 垣 本 井 瀬 海 田 休 伏 憔 噺 傭 情 頓 ド 素 成 イ 工 学 社 窒 合 脚 電 化 計 本 〃 セ 興 本 和 気 日 本 日 新 日 大 昭 電 鉄 カ ーバ イ ド・ア セ チ レ ン産 業 と石 油 化 学工 業,p・52よ り作 成 一s.w・ 三 六 さ れ る こ と に 基 因 し て い る 。 カ ー バ イ ド だ け を 生 産 す る メ ー カ ー は 前 掲 六 社 の ほ か に 数 は 多 い に も 拘 ら ず 、 酢 酸 メ ー 男 工 が 六 社 に 限 定 さ れ て 独 占 度 が 高 い の は 、 酢 酸 業 界 に は 戦 前 か ら 強 力 な カ ル テ ル 組 織 が 発 達 し て い た か ら で あ る 。 六 社 は い ず れ も 戦 前 か ら 酢 酸 を 生 産 し て い て 、 戦 後 に 新 た に 生 産 を 開 始 し た も の は な い 。 そ の 理 由 は 前 述 の カ ル テ ル 組 織 の ほ か に 酢 酸 製 造 技 術 は 他 の 有 機 合 成 化 学 工 業 と 異 っ て 、 六 社 が そ れ ぞ れ 開 発 し て 特 許 を も っ た 国 産 技 術 で あ っ て 、 そ の 償 却 も 終 っ て い た か ら 、 そ こ へ 新 参 メ ー カ ー が 割 り こ む 余 地 は な か っ ヨ コ た か ら で あ る 。 そ の 上 、 酢 酸 生 産 だ け で は 付 加 価 値 性 が 低 い た め に 、 六 社 は 酢 酸 を 基 礎 に し て さ ら に 高 次 加 工 を 加 え て 酢 酸 諸 誘 導 品 を 生 産 す る 高 度 合 成 技 術 を も っ て い る 。 六 社 の 寡 占 体 制 は こ う し て 出 来 上 っ た の で あ る 。 寡 占 体 制 の 下 で 、 戦 後 酢 酸 ビ ニ ル ・ ポ バ ー ル ・ オ ク タ ノ ー ル な ど の 需 要 増 加 に と も な っ て 、 中 間 体 ア セ ト ア ル デ ヒ ド の 生 産 は 逐 年 増 加 (第 一. 表 参 照 ) し た が 、 わ が 国 石 油 化 学 工 業 の 第 二 期 計 画 に よ っ て 、 エ チ レ ン よ り ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 生 産 す る ワ ッ カ ー 法 の 技 術 が 導 入 さ れ る に 及 ん で 、 カ ー バ イ ド " ア セ チ レ ン の ア セ ト ア 'ル デ ヒ ド 製 造 原 料 に お け る 独 占 体 制 は 崩 壊 し 、 ワ ヅ カ ー 法 に よ る 生 産 が 三 七 年 に 三 井 石 油 化 学 、 四 〇 年 に 化 成 水 島 、 大 協 和 石 油 化 学 、 チ ッ ソ 石 油 化 学 、 徳 山 石 油 化 学 に よ っ て 開 始 さ れ て 、 酢 酸 の 寡 占 体 制 は 消 滅 し 、 カ ー バ イ ド H ア セ チ レ ン 法 ` に よ る ア セ ト ア ル デ ヒ ド 生 産 は 四 〇 年 に は 電 気 化 学 一 社 を 残 す だ け と な っ た 。 * * * チ ッ ソ 水 俣 工 場 が ア セ ト ア ル デ ヒ ド の 生 産 を 開 始 し た の は 昭 和 七 年 で あ る 。 そ の 製 法 は 社 員 橋 本 彦 七 氏 が 開 発 し た 。 (特 許 九 一 〇 一 九 号 、 酢 酸 の 合 成 方 法 。 特 許 九 三 四 八 ○ 号 、 ﹁ エ チ リ ヂ ン ・ダ イ ア セ テ ■ ト ﹂ よ り 無 水 酢 酸 お よ び ﹁ ア セ ト ア ル デ ハ イ ド ﹂ る を 製 造 す る 方 法 。 特 許 九 四 六 四 七 号 、 ﹁ ア 七 十 ア ル デ ハ イ ド ﹂ 製 造 方 法 。 ) ,彼 は 後 に 水 俣 工 場 長 と な り 、 さ ら に 通 算 四 期 の 水 俣 市 長 の 地 位 に あ る 時 に 、 彼 の 発 明 に か か る ア セ ト ア ル デ ヒ ド 製 造 装 置 よ り 、 水 俣 病 の 原 因 物 質 が 副 生 し て い た こ と が 確 認 さ れ た 。 奇 し き 因 縁 と い う ほ か は な い 。 も と も と 、 水 俣 工 場 は 日 本 窒 素 肥 料 ㈱ の 発 祥 の 地 で 、 第 一 主 力 工 場 で あ っ た 。 石 灰 窒 素 時 代 ( 明 治 三 九 年 -大 正 四 年 ) 、 合 成 ア ン モ ニ ア 時 代 (大 正 五 年 -一 四 年 ) を 経 由 し て 、 水 俣 で 巨 大 な 資 本 蓄 積 を 得 た 目 塞 は 、 次 の 時 代 は 全 財 産 を 朝 鮮 に 投 資 し て 、 わ が 国 総 合 化 学 工 業 の 最 先 端 を 歩 ん だ の で あ る が 、 敗 戦 に よ っ て 莫 大 な 在 外 資 産 を 、 ま た 財 閥 解 体 に よ っ て 内 地 諸 事 業 を 失 い 、 従 っ て 全 財 産 を 失 っ た と い う も 過 言 で は な い ほ ど の 大 打 撃 を 蒙 っ た 。 残 さ れ た の が 戦 災 で 壊 滅 し た 水 俣 工 場 だ け と な っ た が 、 奇 蹟 的 に 被 爆 を 免 れ た 合 成 塔 を 主 体 と し て 、 ﹂ 戦 後 の 復 興 は こ こ 水 俣 工 場 で も 硫 安 製 造 よ り 始 め ら れ 、 次 い で ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 の 復 興 に 移 行 し た 。 今 日 わ が 国 有 機 合 成 製 品 の 主 柱 の 首 位 に あ る 塩 化 ビ ニ ル を 、 同 社 は 昭 和 一 六 年 に 開 発 し 工 業 化 し 、 戦 後 の 塩 化 ビ ニ ル ブ ! ム の ト ッ プ を 切 っ た 。 ま た 同 社 の 酢 酸 系 諸 誘 導 品 の 種 類 と 生 産 量 は 第 二 表 に 示 す 通 り 、 わ が 国 の 首 位 に あ る 。 な か で も 、 ア セ ト ア ル デ ヒ ド よ り オ ク タ ノ ー ル を 合 成 す る 技 術 を 開 発 し 、 工 業 化 し た の も 同 社 が 最 初 で あ り 、 昭 和 二 七 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 三 七
第2表 昭和33年酢酸系製 品生産実績(単 位t) 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 ポ バ ー ノレ 酢ビ 酸 ニル 酢 酸 繊維素 ト エ 老 醜 ル ア 酢 チ モ ノ ク ロ ー ノレ 酢 酸 酸 ル チ 酢 ブ 酢 酸 エチ ル 水 酸 無 酢 酢酸 ア セ ト ア ル デ ヒ ド 会 社 ・工 場 名 1,771 4、127 ﹁ 1,105 4,534 7,990 2,136 3,209 139 ・890116,239 20,916110,341 616 [ 7,847 8,463 搦 ﹁ 一
網
鵬 ぴの 1,362 2,190 鰯 鰯 一 1,643 2,795 1,936 2,239 1,765 2,265 796 338 i 9,339, 1,073 5,118 一 9,440 15,631 8、695 4,684 5,070 13.937 19,436 5.839 5,945 11 4.352 4,498:::ll
6,290 1 1,849;1,220 58,89444,394 「 新 日本窒 素(水 俣) 日本 合 成(大 垣) 〃 (熊本) 杢ル目イ李(新 井) 昭 和 電 工(鹿 瀬) 電 気 化 学(青 海) 鉄 興 社(酒 田) 他 計 の そ 合 日本 長 期 信用 銀 行 調 査 部:カ ーバ イ ド工 業,p.250よ り作 成 一S.w・ 三 八 年 よ り 水 俣 工 場 に 月 産 一 〇 〇 t の 工 場 を 稼 動 さ せ て 、 オ ク タ ノ ー ル の 国 産 化 を 実 現 さ せ た 。 .そ 航 を 三 四 年 に は 月 産 一 、 ○ ○ O t に ま で 拡 張 し た 、 同 社 の 独 占 的 商 品 で あ る 。 オ ク タ ノ ー ル は 塩 化 ビ ニ ル 用 可 塑 剤 (主 と し て ヂ オ ク チ ー ル ・ 、7 タ レ ー ト 、 略 記 し て D O P ) 製 造 に 重 要 な 原 料 と な り 、 大 部 分 が そ れ に 向 け ら れ る が 、 可 塑 剤 と は 塩 ビ 樹 脂 に 添 加 し フ イ ル ム や 電 線 な ど の 軟 質 ビ ニ ル 製 品 を 造 る に 不 可 欠 の も の で あ る 。 従 っ て 塩 化 ビ ニ ル の 発 展 に 比 例 し て 需 要 は 増 大 し た 。 な か で も 三 一 年 の 旺 盛 な 需 要 に 対 し 、 塩 ビ の 品 不 足 か ら 各 社 は 設 備 増 設 を 急 ぎ 三 二 年 に 増 設 を 完 了 す る と 時 を 同 じ う し て 前 年 ま で の 神 武 景 気 が 国 際 収 支 悪 化 を も た ら し 、 政 府 は . 金 融 引 締 政 策 を 打 ち 出 し た た め に 、 塩 ビ 業 界 も 不 況 は 深 刻 化 し た 。 政 府 は 三 二 年 下 期 に 七 割 操 短 ・ ⋮ 一 葦 上 期 に 五 割 操 短 を 勧 告 す る に 至 つ 寵 ・ そ れ に も 拘 ら ず 、 チ ッ ソ は 独 占 商 品 で か つ 品 薄 の 可 塑 剤 D O P と だ き 合 わ せ に 、 自 社 の 塩 ビ 樹 脂 を 売 レ ま く り 、 他 社 の 操 短 を 尻 目 に フ ル 操 業 を お 維 持 す る こ と が で き た 。 チ ッ ソ の オ ク タ ノ ー ル 独 占 は 三 六 年 に 三 菱 化 励 が 石 油 化 学 方 式 で 、 プ ロ ピ レ ン の オ キ ソ 化 に よ っ て 生 爵 を 開 始 し て 、 破 ら れ た と は い え 、 同 年 チ ッ ソ の 生 産 量 は さ ら に 一 、 六 〇 〇 t / 月 に 拡 張 さ れ た の に 対 し 、 三 菱 化 成 は 五 〇 〇 t / 月 に す ぎ な か っ 解 喋 8 が く の 如 く 、 チ ッ ソ 水 俣 工 場 の ア セ ト ア ル デ ヒ ド 生 産 量 は 諸 誘 導 品 生 産 の 拡 張 に よ ●り 、 二 八 年 よ り 三 五 年 に 至 る 間 に 、 驚 異 的 激 増 を 見 せ て お り 、-こ れ は 時 期 的 に も ピ ッ タ リ 水 俣 病 発 生 期 と 一 致 し 、 水 俣 病 発 生 の 動 か し 難 い 背 景 を な し て い る 、 と い う 事 情 を 指 摘 し た い 。 の ぶ て る 昭 和 電 工 鹿 瀬 工 場 は 、 そ の 前 身 を 昭 和 肥 料 ㈱ と 称 し 、 森 舐 剥 に よ っ て 設 立 さ れ て 昭 和 四 年 よ り 操 業 に 入 っ た カ L バ イ ド 石 灰 窒 素 工 場 で あ る 。 昭 和 二 年 に 始 ま る 恐 慌 に よ り 電 力 会 社 は 莫 大 な 余 剰 電 力 を か か え て 、 未 曽 有 の 難 局 に 立 つ た Q な か で も 東 京 電 燈 の 余 剰 電 力 は 同 四 年 九 億 ㎜ 、 五 年 一 三 億 ㎜ 、 六 年 一 ・四 億 珊 と い う 尨 大 な も の で 、 こ れ を 消 化 す る 目 的 で ^ 東 電 、 東 信 電 気 、 鈴 木 商 店一 の 共 同 出 資 で 鹿 瀬 工 場 を 建 設 、 豊 水 期 に は 皿 四 厘 、 渇 水 期 に は 九 厘 で 出 力 四 万 四 の 阿 賀 野 川 第 一 (9 ) 発 電 所 の 発 電 全 量 を 買 竄 す る 契 約 で 発 足 し た 。 さ ら に 昭 和 一 一 年 一 一 月 に 昭 和 合 成 ㈱ が 昭 和 肥 料 鹿 瀬 工 場 に 隣 接 し て 、 前 者 よ グ カ ー バ イ ド の 供 給 を 受 け て 酢 酸 合 成 を 目 的 と し て 設 立 さ れ 、 ド イ ツ の 技 術 を 導 入 し て ア セ ト ル デ ヒ ド 月 産 八 O t の 工 場 建 設 し 、 そ の 後 三 二 年 に は 昭 和 電 工 に 合 併 さ れ た 。 こ れ が 現 在 、 新 潟 水 俣 病 発 生 源 を 問 題 視 さ れ て い る 昭 和 電 工 鹿 瀬 工 場 ( 現 鹿 瀬 電 工 ) の 生 い 立 ち で あ る 。 鹿 瀬 工 場 は 三 四 年 に 石 灰 窒 素 製 造 を 廃 止 し て よ り 、 酢 酸 誘 導 品 (第 一 . 二 表 参 照 ) の 需 要 増 に 対 応 し て 、 三 四 年 以 降 急 激 に そ の 生 産 量 を 増 大 し て き た 。 し か る に 、 石 油 化 学 方 式 で エ チ レ ン の 直 接 酸 化 に よ っ て ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 製 造 す る 技 術 の 導 入 が 可 能 に な る と 、 昭 和 電 工 は 日 本 瓦 斯 化 学 、 三 楽 オ ー シ ャ ン と 相 た ず さ え て 三 七 年 に ︿ 徳 山 石 油 化 学 ﹀ を 設 立 し 、 む 年 産 六 万 ト ン を 計 画 し 、 四 〇 年 に 徳 山 が 本 格 的 稼 動 に 入 る や 、 鹿 瀬 工 場 に お け る カ ー バ イ ド ← ア セ チ レ ン ← ア セ ト ア ル デ ヒ ド の 、 在 来 法 に よ る 製 造 を 廃 止 し 、 徳 山 よ り ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 鹿 瀬 に 輸 送 し 、 そ れ 以 降 の 合 成 工 程 だ け を 続 け て い る 。 だ が 、 前 述 三 四 年 よ り 在 来 法 廃 止 の 四 〇 年 に 至 る 間 に 、 旧 法 ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 年 産 一 万 八 千 t ま で に 生 産 設 備 を 増 設 し 、 三 九 -四 〇 年 に 新 潟 水 俣 病 の 集 中 発 生 を 見 た 。 鹿 瀬 の 年 産 一 万 八 千 ト ン は 、 三 三 年 当 時 の ア セ ト ア ル デ ヒ ボ 生 産 量 で 首 位 に あ っ た 水 俣 工 場 の 生 産 実 績 一 万 九 千 余 ト ツ に 匹 敵 し 、 水 俣 で は 既 に 同 年 に は 累 計 八 九 名 の 患 者 発 生 を 見 て い た の 水 俣 病 と ア セ チ レ ツ 系 有 機 合 成 化 学 工 業 . ` . 三 九
の 水 俣 病 と ア セ `チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 四 〇 ' \ で あ る 。 . か よ う に 生 産 量 増 加 の 過 程 を 辿 る と 、 ア セ ト ア ル デ ヒ ド の 製 造 を 開 始 し て 、 水 俣 で 二 一 年 後 、 鹿 瀬 で 二 八 年 後 に 患 者 の 発 生 を 見 た 。 生 産 量 増 加 は 患 者 発 生 期 と 一 致 し て 、 患 者 発 生 の 背 景 を な す こ と は 明 ら か で あ る 。 し か し 水 俣 で は 年 産 七 、 二 九 九 ト ン で 既 に 発 生 し 、 他 方 、 他 の 工 場 地 域 で は 年 産 二 万 ト ン を 越 え て も 発 生 を 見 な か っ た 。 だ か ら 生 産 量 と 患 者 発 生 と は 単 純 な 関 係 で は な い こ と は 次 章 で 述 べ る と し て 、 こ こ で 言 い う る こ と は ア セ ト ア ル デ ヒ ド 乃 至 酢 酸 製 造 に は 、 強 力 な カ ル テ ル 組 織 が あ っ て 、 新 参 メ ー カ ー の 進 出 を 困 難 と す る 事 情 に よ り 、 わ ず か 六 社 七 工 場 の 寡 占 体 制 が 実 現 し て い た 。 石 油 化 学 方 式 の 稼 動 す る 四 〇 年 以 降 は こ の 体 制 は 崩 壊 す る が 、 三 五 年 に お い て は 、 六 社 七 工 場 の う ち で 、 年 生 産 量 一 万 ト ン を 越 え る 上 位 四 工 場 に よ っ て 全 生 産 量 の 八 二 % に 及 ぶ 寡 占 状 態 が 見 ら れ た 。 か か る 体 制 に よ る 局 地 的 集 中 生 産 が 四 工 場 周 辺 地 域 に 、 水 俣 病 発 生 の 危 険 可 能 性 を 潜 在 さ せ た こ と は 否 定 で き な い で み ろ う 。 そ の な か で 二 工 場 周 辺 で 遂 に そ の 危 険 は 現 実 化 し 、 他 の 二 工 場 周 辺 で は 幸 い に 顕 現 し な か っ た σ そ れ は ど う い う 訳 か 次 章 に て 検 討 す る こ と に す る 。 ( 1 ) 長 期 信 用 銀 行 調 査 部 ア セ ト ア ル デ ヒ ド ー ア セ ト ア ル デ ヒ ド を 0 9 ωΦ ω ε 畠 と す る 石 油 化 学 工 業 の 諸 問 題 、 調 査 月 報 五 八 号 昭 和 三 七 年 四 . 月 { 二 六 頁 o ﹁ ' ( 2 ) 拙 稿 ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 の 発 達 と そ の 立 地 へ の 回 顧 -合 成 系 力 : パ イ ド 工 業 を 中 心 と し て 彦 根 論 叢 = 一= 号 昭 和 四 三 年 九 月 (3 ) 長 期 信 用 銀 行 調 査 部 、 カ 1 パ イ ド 工 業 昭 和 三 五 年 三 月 二 五 一 卜 二 五 三 頁 ( 4 ) 日 本 窒 素 肥 料 (株 ) 事 業 大 観 (創 立 三 十 周 年 記 念 ) 昭 和 一 二 年 、 四 五 九 頁 (5 ) 塩 化 ビ ニ ル 協 会 、 塩 化 ビ ニ ル 工 業 の 歩 み 、 昭 和 三 九 年 三 月 六 八 -七 〇 頁 ( 6 ) 宇 井 純 、 公 皆 の 政 治 学 ,昭 和 四 三 年 七 月 一 八 頁 ( 7 ) カ ー バ イ ド 工 業 会 、 カ ー バ / ド 工 業 の 歩 み 昭 和 四 三 年 三 月 一 八 五 頁 (8 ) カ ー バ イ ド 工 業 会 ヵ ! パ イ ド ・ ア セ チ レ ン 産 業 と 石 油 化 学 工 業 ・ 昭 和 三 七 年 三 月 二 六 四 頁 ( 9 ) 東 京 電 燈 (株 ) 開 業 五 十 年 史 、 一 九 一 一 一 九 三 頁 拙 稿 、 わ が 国 の カ ー バ イ ド 工 業 の 発 達 と 立 地 変 動 に つ い て 彦 根 論 叢 = 一六 ・ 一 二 七 合 併 号 昭 和 四 二 年 = 月 、 (10 ) 前 掲 、 カ ! パ イ ド 工 業 一 二 五 頁
( 11 ) 拙 稿 、 ピ ニ ロ ソ 合 成 繊 維 工 業 の 原 料 系 列 と 立 地 系 列 の 変 貌 一 わ が 国 a 石 油 化 学 工 業 の 発 展 を 転 機 と し て 、 彦 根 論 叢 一 四 五 号 昭 和 四 五 年 九 月 三 ア セ ト ア ル デ ヒ ド 工 場 周 辺 水 域 の 汚 染 と 地 域 的 諸 条 件 と の 関 係 猫 実 験 四 〇 〇 号 ( 三 〇 頁 参 照 ) で は 酢 酸 工 場 排 水 原 液 で 七 十 七 日 目 に 猫 水 俣 病 発 症 に 成 功 。 ま た 、 醇 酸 工 場 の 水 銀 澤 か ら 有 機 水 銀 O 口 ω国 σq Ω の 抽 出 に 成 功 し た 入 鹿 山 教 授 が こ れ を 猫 に 投 与 し て 二 〇 日 で 発 症 に 成 功 。 一 二 つ の 動 物 実 験 は 発 症 が 工 場 排 液 中 の メ チ ル 水 銀 含 量 と 汚 染 食 物 摂 取 量 に 関 係 あ る こ と を 示 す 。 こ こ で 各 工 場 の 排 液 中 の メ チ ル 水 銀 含 量 を 仮 り に 一 定 と し 、 か つ 無 処 理 放 流 を 前 提 と す る と 、 メ チ ル 水 銀 濃 度 は 稀 釈 水 量 目 環 境 水 域 の 広 狭 と 流 水 の 態 様 に よ っ て 規 定 さ れ 、 汚 染 食 物 摂 取 量 は 地 域 住 民 の 食 習 慣 や 漁 獲 量 の 豊 凶 に 規 定 さ れ る 。 メ チ ル 水 銀 中 毒 は 汚 染 水 域 の 魚 介 類 を 媒 介 と し て 人 体 に 蓄 積 さ れ る こ と は 既 に 明 ら か に な っ て い る 。 か よ う に 考 え る と 、 ア セ ト ア ル デ ヒ ド 生 産 量 の 大 き い 工 場 地 域 が 必 ず し も 水 俣 病 発 生 の 可 能 性 を も つ と 云 う べ き で は な い 。 従 っ て 稀 釈 水 量 1一 環 境 水 域 の 広 狭 と 流 水 態 様 、 食 習 慣 、 漁 獲 量 の 豊 凶 な ど を 考 慮 に 入 れ て 、 各 工 場 周 辺 の 事 情 を 地 域 的 に 検 討 し な け れ ば な ら な い 。 ω 昭 和 電 工 鹿 瀬 工 場 と 阿 賀 野 川 水 域 鹿 瀬 工 場 は 阿 賀 野 川 河 口 よ り 六 〇 ㎞ 上 流 に 位 置 し 、 四 〇 年 に ア セ ト ア ル デ ヒ ド の 製 造 廃 止 ま で 二 八 年 間 操 業 を 続 け 、-生 産 量 は 三 三 年 よ り 四 〇 年 閉 鎖 ま で の 七 年 間 に 三 倍 以 上 に 増 加 し 、 こ ど に 閉 鎖 前 の 三 年 間 に は 月 産 平 均 一 千 五 百 ト ン 。 そ の 生 産 に と も な う 蒸 溜 排 水 は 無 処 理 の ま ま 阿 賀 野 川 に 放 流 さ れ て い た こ と は 、 新 潟 大 滝 沢 助 教 授 に よ る 排 水 ロ 周 辺 の 水 苔 に (1 ) よ る 追 跡 調 査 で 判 明 、 そ の 結 果 を 追 試 し た 喜 田 村 ・ 上 田 教 授 ら に よ り 相 次 い で 確 認 。 瀬 辺 教 授 ら は 蒸 溜 排 水 中 の メ チ ル 水 銀 鼠 は 生 産 さ れ る ア セ ト ア ル デ ヒ ド t 当 り 二 一 二 〇 理 と い う 。 従 っ て 同 工 場 排 水 ロ か ら 長 年 多 量 の メ チ ル 水 銀 化 合 物 が 放 流 さ れ て い た こ と に な る 。 水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 、 四 一
水 俣 病 と ア セ チ レ ン 系 有 機 合 成 化 学 工 業 、 四 二 (3 ) 阿 賀 野 川 の 流 量 を 年 平 均 す る と 四 一 四 ・ 五 ㎡ / 諭 ︹ 観 測 点 は 中 流 の 馬 下 (ま お ろ し ) ︺ で 、 わ が 国 河 川 流 量 で は 最 大 で あ る 。 三 九 一 四 〇 年 の ニ カ 年 の う ち で 最 も 流 量 の 少 な か っ た 月 は 三 九 年 六 月 で 平 均 一 五 五 ・ 九 ㎡ / 舳 、 か つ 最 低 は 同 月 八 日 の 一 二 幽 る 四 ・ 二 ㎡ / 舳 、 同 月 一 四 日 の 一 二 三 ・ 八 ㎡ / 翫 で あ る 。 従 っ て 最 渇 水 日 の 六 月 一 四 日 の 一 月 総 流 量 は 一 、 ○ ○ ○ 万 ㎡ / d と `な る 。 鹿 瀬 工 場 の ア セ ト ア ル デ ヒ ド 日 産 平 均 五 〇 ト ソ ( 年 産 一 万 八 千 ト ソ ) と し て 瀬 辺 教 授 ら の 実 験 値 (注 ( 2 ) 参 照 ) に よ る と 西 メ チ ル 水 銀 量 一 〇 〇 一 一 、 ○ ○ ○ 毅 が 放 流 さ れ る か ら 、 濃 度 は 0 、 ○ ○ ○ 〇 一 -○ 、 O O O 一 p p m と な る 。 而 も て 毎 日 上 流 か ら 一 、 ○ 0 0 万 ㎡ / d 以 上 の 清 水 が 流 さ れ る か ら 、 メ チ ル 水 銀 を 毎 日 前 記 の 同 量 を 放 流 し て も 臆 度 は 変 わ ら な い 。 こ れ ほ ど の 巨 星 の 水 に 稀 釈 き れ た ら 、 メ チ ル 水 銀 の 毒 性 は 浄 化 さ れ て し ま う と 考 え る 人 々 も あ る 。 だ が 、 喜 田 村 教 授 は (5 ) ○ ・ ○ ○ 〇 三 P P m の メ チ ル 水 銀 溶 液 で 金 魚 を 飼 っ て 、 金 魚 に 蓄 積 が 起 る こ と を 知 っ た 。 微 生 物 、 昆 虫 、 小 魚 な ど が 共 棲 す る 天 然 水 域 で は 、 食 物 連 鎖 が 行 わ れ る 。 メ チ ル 水 銀 は 水 中 か ら 微 生 物 に 固 定 さ れ 、 こ れ が 次 に 大 き い 生 物 に 食 わ れ る 段 階 で 数 百 倍 か ら 数 千 倍 に 濃 縮 さ れ 、 さ ら に 次 に 大 き い 生 物 に 食 わ れ る 段 階 で 同 様 に 濃 縮 さ れ る 。 い わ ゆ る ︿ 生 物 濃 縮 ﹀ が 起 る 。 魚 類 の 餌 に な る 生 物 が 豊 富 な 、 河 口 附 近 で メ チ ル 水 銀 は 最 も 濃 縮 さ れ 、 ま た 上 流 か ら 流 さ れ て き て 、 河 口 に 近 い 流 速 の 緩 や か な 河 底 に 集 積 す る こ と も 考 え ら れ 、 ` 追 跡 調 査 に よ っ て 上 流 で さ え 水 苔 や 魚 に 数 P P m の 水 銀 が 発 見 さ れ た 。 最 上 流 の 鹿 瀬 工 場 附 近 に 住 む 老 夫 婦 の 毛 髪 分 析 か ら 、 夫 七 五 P P m 、 妻 一 〇 七 ・ 五 P P m と い う 高 値 が 発 見 さ れ 、 両 人 は 専 ら 釣 を 楽 し ん で 川 魚 を 養 し て い た 箪 と わ か ・ た ・ ・ の よ う に 阿 葺 川 は 上 流 も 下 流 も 一 楚 汚 染 さ れ て い た ・﹂ と が わ か 華 ひ と い ち し か る に 、 な ぜ 下 流 に だ け 愚 老 が 多 発 し た か i 一 日 市 部 落 に で 代 表 さ れ を 、 河 口 に 近 い 部 落 は ニ ゴ イ な ど の 川 魚 を 他 地 区 よ り も 多 食 し た 。 も と も と 、 河 口 附 近 は 魚 類 の 棲 息 数 も 多 く 、 漁 獲 高 も 多 い 場 所 だ が 、 そ の 上 刺 網 、 袋 網 を 用 い て 大 量 捕 獲 を 行 う 部 落 で あ る の で 、 販 売 に 適 し な い 魚 は 自 家 用 と し て 大 量 摂 取 す る こ と に な る 。 そ れ に 対 し て 上 中 流 で は 半 農