改訂によせて
WHO Classification of the Tumours of the Digestive System 2010で は、膵・消化管に発生する神経内分泌細胞を起源とした腫瘍を神経内分泌新生物 (neuroendocrine neoplasm:NEN)と総称し、増殖能によってNET G1、NET
G2、NECに分類した。以来、早くも5 年が経過しており、臨床医および病理医の間 で、その名称は充分に浸透してきたと思われる。 その間には、膵・消化管神経内分泌腫瘍の診療ガイドラインが出版され、臨床およ び病理診断に関して多くの情報が共有されている。診療ガイドラインに明記されたよ うに、病理診断には2010年WHO分類を用い、病理診断報告書には2010年WHO 分類、形態学的および免疫組織化学的な特徴、TNM 分類、転移の有無、手術例で は切除断端での腫瘍細胞の有無などの記載が要求されている。また、ガストリノー マ、インスリノーマなどの特徴を表す用語を追加することが望ましいが、Carcinoid という名称は、膵・消化管では病理診断名ではなく、カルチノイド症候群のように臨 床症状を記載する場合にのみ用いられる。 本分類の利点が認識されると同時に、いくつかの問題点も指摘されている。その 中で特に注目されているのは“NET G3”の提唱であろう。組織像が典型的な高分化 型神経内分泌腫瘍を示し、Ki-67 指数が20%を超える症例に遭遇することは稀では ない。2010 年 WHO 分類では分類名として定めておらず、このような場合には、 NET G3という表現が提唱されている。 本改訂では、この5 年間に培われた情報および NET G3の考え方など内容を updateし、日常の診療により有用となるように配慮して出版の運びとなった。本改訂 版が初版にも増して大いに活用されることを期待している。
神経内分泌腫瘍
(
Neuroendocrine Tumor
:NET
)
2010 年 WHO分類による
病理組織学的分類・病理診断
監修
長村 義之
改訂によせて
WHO Classification of the Tumours of the Digestive System 2010で は、膵・消化管に発生する神経内分泌細胞を起源とした腫瘍を神経内分泌新生物 (neuroendocrine neoplasm:NEN)と総称し、増殖能によってNET G1、NET
G2、NECに分類した。以来、早くも5 年が経過しており、臨床医および病理医の間 で、その名称は充分に浸透してきたと思われる。 その間には、膵・消化管神経内分泌腫瘍の診療ガイドラインが出版され、臨床およ び病理診断に関して多くの情報が共有されている。診療ガイドラインに明記されたよ うに、病理診断には2010年WHO分類を用い、病理診断報告書には2010年WHO 分類、形態学的および免疫組織化学的な特徴、TNM 分類、転移の有無、手術例で は切除断端での腫瘍細胞の有無などの記載が要求されている。また、ガストリノー マ、インスリノーマなどの特徴を表す用語を追加することが望ましいが、Carcinoid という名称は、膵・消化管では病理診断名ではなく、カルチノイド症候群のように臨 床症状を記載する場合にのみ用いられる。 本分類の利点が認識されると同時に、いくつかの問題点も指摘されている。その 中で特に注目されているのは“NET G3”の提唱であろう。組織像が典型的な高分化 型神経内分泌腫瘍を示し、Ki-67 指数が20%を超える症例に遭遇することは稀では ない。2010 年 WHO 分類では分類名として定めておらず、このような場合には、 NET G3という表現が提唱されている。 本改訂では、この5 年間に培われた情報および NET G3の考え方など内容を updateし、日常の診療により有用となるように配慮して出版の運びとなった。本改訂 版が初版にも増して大いに活用されることを期待している。
神経内分泌腫瘍
(
Neuroendocrine Tumor
:NET
)
2010 年 WHO分類による
病理組織学的分類・病理診断
監修
長村 義之
神経内分泌腫瘍と 2010 年 WHO分類
2010年WHO分類では、内分泌系の性質と表現型を有する膵・消化管腫瘍を“Neuroendocrine
Neoplasms(NEN)” と総称し、高分化型の NET(神経内分泌腫瘍)と低分化型の NEC(神経
内分泌癌)に大別され、NET は増殖能に基づきG1 とG2 に識別されます。
消化管 NET(neuroendocrine tumor)は、1907 年に Oberndorfer により “Carcinoid” と命名されて以降、良性腫 瘍と考えられる時代が続いていたが、現在では悪性腫瘍と認識され、2000 年の WHO 分類では、高分化型内分泌腫瘍・ 癌、低分化型内分泌癌に分類された。さらに、2010 年の WHO 分類の改訂により、内分泌系の性質と表現型を有する 膵・消化管腫瘍は “Neuroendocrine Neoplasms(NEN)” と総称され、臨床予後と生物学的動態の異なる NET と NEC (neuroendocrine carcinoma)に大別された(表 1)。2010 年の WHO 分類は腫瘍の増殖動態すなわち核分裂像数およ び Ki-67 指数を中心とした分類であり、NET は G1(Grade1)と G2(Grade2)の 2 つに識別される(表 1)。NET は高 分化型腫瘍であり、異型度および悪性度は比較的低い(表 2)。一方、NEC は低分化型であり、増殖能および悪性度が総 じて高く、予後不良である(図 1)。このような NET の分類は、患者の予後予測や治療選択などに非常に重要といえる。
表 1 WHO 分類の変遷と新規 grading
2000 年 WHO 分類 2010 年 WHO 分類
1. Well-differentiated endocrine tumor(WDET)a
高分化型内分泌腫瘍
2. Well-differentiated endocrine carcinoma (WDEC)a
高分化型内分泌癌
3. Poorly differentiated endocrine carcinoma/small cell carcinoma(PDEC)
低分化型内分泌癌
1. Neuroendocrine tumor:NET G1(carcinoid)b
神経内分泌腫瘍 G1
2. Neuroendocrine tumor:NET G2
神経内分泌腫瘍 G2
3. Neuroendocrine carcinoma:NEC (large cell or small cell type)b, c
神経内分泌癌 (大細胞癌あるいは小細胞癌) 4. Mixed exocrine-endocrine carcinoma (MEEC)
複合型内分泌 - 外分泌癌 4. Mixed adenoneuroendocrine carcinoma (MANEC)複合型腺神経内分泌癌
5. Tumour-like lesions(TLL)
腫瘍様病変 5. Hyperplastic and preneoplastic lesions過形成、前腫瘍病変
2010 年 WHO 分類 Grading
Grade 核分裂像数(/10HPFd) Ki-67 指数e(%)
NET G1 G1 <2 ≦2%
NET G2 G2 2~20 3~20%
NEC G3 >20 >20%
G: grade, NEC: neuroendocrine carcinoma, NET: neuroendocrine tumor
a WDET と WDEC の相違は WHO 2000 分類に従い定義された。G2 NET は WHO 2000 の WDEC に必ずしも一致しない。 b カッコ内は International Classification of Diseases for Oncology(ICD-O)のコード
c NET は高分化型と定義されるため、このカテゴリーで使用されてきた “NET G3” という表現は推奨されない。 d 核分裂像数:少なくとも高倍視野 2mm2を検討し、10 視野当たりの核分裂像数を計測
e Ki-67 指数:最も核の標識率が高い領域で 500 ~ 2,000 個の腫瘍細胞中に占める MIB-1 抗体の陽性率(%)
Pape UF, et al. Cancer 2008; 113: 256–265
Jann H, et al. Cancer 2011; 117: 3332-3341
1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 累積生存率 0 50 100 150 200 250 生存期間(月) G1 vs. G2 p=0.04 G1 vs. G3 p<0.001 G2 vs. G3 p<0.001 Log-rank 検定 G1 G2 G3 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 累積生存率 0 50 100 150 200 250 300 生存期間(月) G1 vs. G2 p=0.027 G1 vs. G3 p<0.001 G2 vs. G3 p=0.008 Log-rank 検定 G1 G2 G3 (B)中腸および後腸 NET
表 2 NET および NEC の病理組織学的特徴(2010 年 WHO 分類の NET および NEC の定義より)
図 1 Grade 別生存率 (A)前腸 NET 2010 年 WHO 分類 病理組織学的特徴 NETa 神経内分泌腫瘍 NET G1 NET G2 ・高分化型 ・正常な消化管内分泌細胞に類似した細胞で構成 ・神経内分泌マーカーの発現 (一般的に、クロモグラニン A やシナプトフィジンをびまん性に強発現) ・ホルモン産生 (一般的に、強発現であるが、必ずしもびまん性には発現しない) ・軽~中等度の核異型性 、低増殖能(Grade: G1, G2) NECb 神経内分泌癌 ・低分化型、高悪性度 ・小細胞癌~大細胞癌を含む ・NET に類似した組織構造を示す場合もある ・神経内分泌マーカーの発現 (シナプトフィジンをびまん性に発現、クロモグラニン A を弱くあるいは局所的に発現) ・著しい核異型性 、多巣性壊死、高増殖能(Grade:G3) a 旧分類のカルチノイド腫瘍を含む b 旧分類の小細胞癌、大細胞癌、低分化型神経内分泌腫瘍に相当する
神経内分泌腫瘍の TNM 分類
Grading と原発巣別の TNM 分類により、より精度の高い予後予測が可能です。
2010 年の WHO 分類は、(1)腫瘍の heterogeneity、(2)腫瘍の分化度、(3)悪性度という観点で改訂された。すな わち、NET は発生部位および腫瘍の分化度で腫瘍の性質が異なり、NET は長期経過観察から悪性腫瘍に分類される点が 強調された。他の癌腫と同様に、NET の grading に加えて、原発巣別の TNM 分類(staging)を行うことによって、よ り精度高く予後を予測することが可能である。
TNM 分類は、ENETS やUICC/AJCC からそれぞれ分類が提唱されている。2009 年に公表されたUICC/AJCC TNM 分類の第 7 版では、Neuroendocrine tumors(胃・小腸・虫垂・膵・肺)の分類が新たに追加された。UICC/AJCC TNM 分類は NET を対象としており、NEC に関しては通常の癌腫の中で分類することから、NET および NEC を含んで分 類する ENETS の TNM 分類とは異なる点が指摘される。また、膵 NET は UICC/AJCC TNM 分類では膵癌(外分泌癌) と同様の分類で扱われており、T分類がENETSとは異なる(表1)。このような差異があるため、TNM分類を行う際には、 どの TNM 分類を用いたかを明記する必要がある。すでに、それぞれの TNM 分類を用いて、膵 NET 患者の予後が stage ごとに異なることが示され(図 1)、また、ENETS の TNM 分類を用いて消化管 NET 患者の予後が stage ごとに異なるこ とが示されているが(図 2)、TNM 分類に関しては、さらなるエビデンスの蓄積と今後の改良が期待される。 ENETS UICC/AJCC T -原発腫瘍 TX 原発腫瘍の評価が不可能 T0 原発腫瘍を認めない T1 膵内に限局、< 2 cm T2 膵内に限局、2 ~ 4 cm T3 膵内に限局、> 4 cm あるいは十二指腸 または胆管に浸潤 T4 周囲臓器(胃、脾臓、結腸、副腎)あるいは 大血管(腹腔動脈や上腸管膜動脈)に浸潤 *腫瘍径を問わず、多発性腫瘍には(m)を付記する TX 原発腫瘍の評価が不可能 T0 原発腫瘍を認めない T1 膵内に限局、≦ 2 cm T2 膵内に限局、> 2 cm T3 膵外に進展、大血管(腹腔動脈幹または 上腸間膜動脈)に浸潤を伴わない T4 大血管に浸潤 N -所属リンパ節 NX 所属リンパ節転移の評価が不可能 N0 所属リンパ節転移なし N1 所属リンパ節転移あり M -遠隔転移 MX 遠隔転移の評価が不可能 M0 遠隔転移なし M1a 遠隔転移あり M0 遠隔転移なしM1 遠隔転移あり Stage 0 T0 N0 M0 I T1 N0 M0 IA T1 N0 M0 IB T2 N0 M0 IIa T2 N0 M0 IIA T3 N0 M0 IIb T3 N0 M0 IIB T1~3 N1 M0 IIIa T4 N0 M0 III T4 すべてのN M0 IIIb すべてのT N1 M0 IV すべてのT すべてのN M1 IV すべてのT すべてのN M1
表 1 ENETS および UICC/AJCC の膵 NET に対する TNM 分類
Kulke MH, et al. Pancreas 2010; 39: 735-752
膵の T 分類において、特に T2 と T3 で、ENETS 分類と UICC/AJCC 分類で違いがある。ENETS 分類では T2 および T3 は膵内 に限局した腫瘍であり、それぞれ 2 ~ 4cm、4cm を超える場合と腫瘍径により分類されている。それに対して、UICC/AJCC 分 類では T2 に 2cm を超える膵内に限局した腫瘍がすべて含まれ、T3 には膵外に進展した腫瘍が含まれる。
NET、NEC の予後予測において、Ki-67 指数のほか TNM 分類が重要である。図 1、図 2 のように、膵、消化 管ともに TNM 分類と予後は相関が認められる。TNM 分類には、ENETS と UICC/AJCC があり、いずれの分 類を使用したかを明記する必要がある。病理診断には、2010 年 WHO 分類に準拠した NET G1、NET G2、 NEC の他に TNM 分類を併記することにより、予後のより正確な推定が可能となる。
COMMENT
図 1 膵 NET 患者 891 例における TNM 分類を用いた stage ごとの予後
図 2 消化管 NET 患者 134 例における ENETS の TNM 分類を用いた stage ごとの予後
患者背景 ENETS stage ごとの生存率
(A)ENETS stage ごとの生存率 (B)UICC/AJCC stage ごとの生存率
Rindi G, et al. J Natl Cancer Inst. 2012; 104: 764-777
Dolcetta-Capuzzo A, et al. Cancer 2013; 119: 36-44
TNM stage n(%)n(%)女性 年齢 平均 (±SD) 原発巣 前腸 n(%)n(%)中腸 n(%)後腸 0 (2.2)3 (1.5)1 66.3 歳 (9.0) (7.1)3 (0)0 (0)0 I (11.9)16 (13.4)9 (22.7)54.1 歳 (14.3)6 (11)8 (10.5)2 II (30.6)41 (34.3)23 (21.3)49.1 歳 (21.4)9 (41.1)30 (10.5)2 III (24.6)33 (25.4)17 (13.3)64.9 歳 (26.2)11 (20.6)15 (36.8)7 IV (30.6)41 (23.9)16 (10.8)63.2 歳 (31)13 (27.4)20 (42.1)8
I IIA IIB IIIA IIIB IV IA IB IIA IIB III IV
1.00 0.75 0.50 0.25 0 期間(月) 1.00 0.75 0.50 0.25 0 生存率 期間(月) 生存率 0 24 48 72 96 120 144 168 192 216240 0 24 48 72 96 120 144 168 192 216240 I 症例数 248 182 128 95 64 47 29 23 16 12 6 IIA 134 106 75 60 53 36 20 16 12 5 1 IIB 65 54 44 31 22 17 8 5 1 0 0 IIIA 38 25 21 15 6 4 1 1 0 0 0 IIIB 156 117 66 66 41 29 18 8 3 1 0 IV 250 156 97 62 34 23 12 7 4 1 0 症例数 IA 258 192 136 98 67 49 30 24 16 12 6 IB 141 113 84 69 59 42 25 18 12 5 1 IIA 70 54 41 30 17 12 2 2 1 0 0 IIB 125 90 68 50 29 20 13 7 3 1 0 III 47 35 25 20 14 10 6 2 0 0 0 IV 250 156 97 62 34 23 12 7 4 1 0
95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI 95%CI
I vs. IIA p=0.02 IIA vs. IIB p=0.05 IIB vs. IIIA p=0.002 IIIA vs. IIIB p=0.004 IIIB vs. IV p<0.001 IA vs. IB p=0.04 IB vs. IIA p<0.001 IIA vs. IIB p=0.84 IIB vs. III p=1.0 III vs. IV p=0.001 論文中に検定方法に関する記載なし 論文中に検定方法に関する記載なし 1.0 0.8 0.5 0.3 0.0 期間(年) 生存率 0 5 10 15 20 II 症例数 39 29 21 16 3 III 32 13 7 5 0 IV 41 9 4 1 0 II III IV II vs. III p=0.003 II vs. IV p<0.0001 III vs. IV p=0.002 Log-rank 検定
神経内分泌腫瘍の病理診断の役割
NET の病理診断は臨床指針の決定に不可欠であり、的確な記載内容が求められます。
NET の臨床指針を決定するためには、腫瘍の病理診断とその内容の的確な記載が必須である。 NET の病理診断に記載 すべき最低限の情報については、2010 年の WHO 分類において項目が挙げられている。また、NET の病理診断に関す るコンセンサスレポートが欧州と米国を中心とした病理医と外科医により発表されている。 まず、WHO 分類に従った病理組織診断名、病変部位、組織学的グレード(grading)、TNM 分類を分類法とともに記 載することが推奨されている。細胞型や機能性は臨床上必要な場合は記載し、旧 WHO 分類名を付記する場合もある。病 理所見としては、腫瘍径や断端からの距離、核分裂像数およびKi-67指数を記載する。内分泌機能は必要性に応じて記載 する。また、ホルモンによる臨床症状が認められる機能性腫瘍の場合にはガストリノーマ、ソマトスタチノーマというよ うに記載し、免疫染色でホルモン産生は認められる “ 非機能性 ” の腫瘍とは区別する。 本邦の膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン(第 1 版、2015 年)においては、発生する臓器名、組織 形態的および免疫組織化学的な NET の特徴、2010 年 WHO 分類、TNM 分類を分類法とともに記載することが推奨され ている(表 1)。さらに、転移や腫瘍の切除断端についての記載も推奨されている(表 1) 。これらが的確に記載された病 理診断は治療選択に重要であり、適切な病理組織学的分類を病理医と臨床医が共有することが重要である。 病理診断の記載については、WHO の提唱する項目に加えて、脈管浸潤の有無をはじめとする項目を記載する 必要があると考えられる。特に脈管浸潤は、2004 年の旧 WHO 分類の指標の1 つであり、特筆すべき腫瘍細 胞の生物学的特徴である。また、これまでは海外とは異なり、ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(SRS)が 臨床使用できなかった本邦においては、SSTR2 の免疫組織染色が治療方針の決定に重要な情報となるため、 検討が必要な項目であると考えられてきた。 現在では、2015 年 9 月に SRS の一つであるオクトレオスキャンが本邦で承認となったことにより、オクトレ オスキャンと SSTR2 免疫組織染色の役割の理解とそれぞれの有効な活用方法の検討が求められている。 COMMENT 表 1 病理診断に記載が必要な項目 日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS) 膵・消化管神経内分泌腫瘍 診療ガイドライン作成委員会編 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン 2015 年【第 1 版】 金原出版 ●発生する臓器名(グレードA) ●組織形態的および免疫組織化学的なNETの特徴(グレードA) ●2010 年 WHO 分類(グレードA) ●TNM 分類(グレードA) *ENETSとUICC/AJCCのいずれの分類を用いたかを明記 ●リンパ節転移の有無、転移リンパ節の数、遠隔転移(グレードA) ●腫瘍の切除断端;腫瘍露出の有無、断端までの距離(グレードB) 推奨グレード A:強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる 推奨グレード B:科学的根拠があり、行うよう勧められる病理診断名
膵(原発巣)NET(Neuroendocrine tumor)G2 T2, N1, M0, Stage Ⅲb (ENETS TNM)
(Well-differentiated neuroendocrine carcinoma) 膵癌取扱い規約 内分泌腫瘍(高分化内分泌癌) 病理所見 腫瘍径は3.5cm 組織学的には比較的均一な円型の細胞から構成されている 増殖動態 核分裂像数 5/10HPF Ki-67 指数 6~7% 免疫染色 クロモグラニン A びまん性に陽性 シナプトフィジン びまん性に陽性 SSTR2a スコア 3 細胞膜に陽性 リンパ節転移(+) 血管浸潤(-)、神経浸潤(-) 断端 陰性 非機能性 日本における病理診断例 病理医が臨床医に確認するポイント 発生する臓器名 TNM分類 (ENETS or UICC/AJCC) 転移リンパ節の数 転移巣か原発巣か? ・ 特に転移性の場合は、手術時期、手術時の 病理組織診断、可能であれば手術時の標本 を入手する。 腫瘍最大径は? ・切除標本の場合には外科医に確認し、切除 標本がない場合はCTとMRIから想定される 最大径を確認する。 家族歴は? ・NET は多発性内分泌腫瘍症 1 型(MEN1)な どの遺伝性腫瘍に合併して発症することが あるので留意する。 腫瘍の切除断端 ・腫瘍露出の有無と断端までの距離 内分泌症状や血中ホルモン値は? ・インスリノーマを除き、これらの結果から治 療法が変わることは少ないが、参考情報と して確認する。
癌取扱い規約上では “ 神経内分泌腫瘍(膵や胆道)” の他に
“ 悪性上皮性腫瘍(胃)” や “ 内分泌細胞腫瘍(大腸や肛門管)”
に記載されています。
コラム
本邦の癌取扱い規約では、NET は部位によって神経内分泌腫瘍や悪性上皮性腫瘍、内分泌細胞腫瘍に分類されて いる。このため、癌取扱い規約における分類名と WHO2010における分類名を併記することが望ましい。 表 本邦の取扱い規約における NET の名称・分類と WHO 分類との対応 部位 取扱い規約上の NET の分類(2010 年 WHO 分類との対応関係a) 食道 内分泌細胞腫瘍 カルチノイド腫瘍(記載なし) 内分泌細胞癌(記載なし) 膵 神経内分泌腫瘍 神経内分泌腫瘍(NETs G1/G2) 神経内分泌癌(NECs) 胃 悪性上皮性腫瘍 特殊型カルチノイド腫瘍(WDET と WDEC) 内分泌細胞癌(PDEC)
胆道 神経内分泌腫瘍
神経内分泌腫瘍(NET G1/G2) 神経内分泌癌(Large cell NEC/Small cell NEC)
大腸 内分泌細胞腫瘍 カルチノイド腫瘍(NET G1/G2) 内分泌細胞癌(NEC) 虫垂 カルチノイド腫瘍(NET G1/G2) 腺癌(記載なし) 杯細胞型カルチノイド(記載なし) 肛門管 内分泌細胞腫瘍 カルチノイド腫瘍(NET G1/G2) 内分泌細胞癌(NEC) a 胃癌取扱い規約のみ2000年WHO分類との対応関係 2015年9月現在の癌取扱い規約
NETの病理診断においては、HE染色にてNETを疑う特徴的な組織像がみられた場合には、神
経内分泌細胞マーカーを用いた免疫組織化学的な検索を実施することが重要である。また、
gradingに必須であるKi-67指数および核分裂像数に加えて、脈管浸潤も悪性度の指標となる。
NET は、特徴的な所見として、carcinoid pattern として知られている組織構築である索状、リボン状、ロゼット状などの 多様な増生パターンを呈す。NET の組織像は比較的均一であり、一般的に円形ないし多稜形で、類円形の核と淡明な胞体を 有する単調な細胞像を示す。また、核クロマチンが粗である点などの特徴がある。
【特徴】439 個のアミノ酸からなる糖タンパクで内分泌顆粒成分。NET では強く発現しているが、NEC では、内分泌顆粒が少な く陰性になる場合もある。
~例~
【抗体】抗ヒト クロモグラニン A(clone: DAK-A3)・マウスモノクローナル抗体、ダコ・ジャパン株式会社(Code No. M0869) 【染色の注意】前処置:pH6.0 クエン酸緩衝液、オートクレーブで 15 分間熱処理による抗原賦活化、希釈倍率:50 倍
【診断のポイント】腫瘍細胞質内に顆粒状に染色される場合を陽性と判定する。
NET の分化度の指標として、クロモグラニンAやシナプトフィジンなどの代表的な神経内分泌細胞マーカーが挙げられる。 また、神経細胞に発現する細胞接着因子であるCD56(neural cell adhesion molecule:NCAM)もマーカーとなる。な お、細胞膜上のソマトスタチン受容体(somatostatin receptor:SSTR)サブタイプの発現を確認することは、治療指針を 決める上でも有用である。さらに、Ki-67 指数はNETの悪性度の評価にきわめて重要な指標であり、優れた予後予測因子で あるため、核分裂像数とともにNETをgrading するために必須である。 また、高分化型のNETでは、クロモグラニンA や特異的マーカーであるホルモンが強く発現しているのに対し、低分化型の NECでは一般的にはクロモグラニンA の発現は弱いが、シナプトフィジンやPGP 9.5 が強く発現しているという特徴がある。
NET(Neuroendocrine tumor)の病理診断
HE 染色
NET の分化度や悪性度をはかる上で重要なマーカー
神経内分泌細胞マーカーの免疫組織化学的な検索
直腸NET G1 リボン状などNETの 典型像 膵神経内分泌腫瘍(PNET) 膵消化管の神経内分泌腫瘍を総合して Gastroenteropancreatic neuroendocrine tumor(GEPNET)と称される。クロモグラニン A
クロモグラニンA シナプトフィジン Ki-67指数 CD56(Neural cell adhesion molecule:NCAM) 内分泌顆粒 高 高 低 シナプス小胞 高 高 高 細胞膜 高 高 高 細胞膜 高 中~高 低 核 低 中 高 直腸NET G1(陽性) 肺カルチノイド(陽性) 肺カルチノイド(強陽性)
直腸NET G1 胃NET G2肝転移 胃NEC(small cell)
マーカー 細胞内分布 陽性率
NET G1 NET G2 NEC
神経内分泌細胞マーカー Synaptophysins CSPs Rab 3’s Rab 5’s Synaptogyrins SV2s Synaptobrevins Chromogranins Secretory granules PC1/3,PC2 SNAP25 Syntaxin NCAM
NEUROENDOCRINE PROTEINS RELATED WITH SECRETORY GRANULES, CELL MEMBRANE AND NUCLEI
TTF-1* CDX-2* NUCLEUS PLASMA MEMBRANE Somatostatin receptor type 2:SSTR2 *肺(TTF-1)と消化管(CDX-2)のNET、NECの鑑別に有用とされている。
Srivastava A, Hornick JL. Am J Surg Pathol. 2009; 33: 626-632 Lin X, et al. Appl Immunohistochem Mol Morphol. 2007; 15: 407-414
NETの病理診断においては、HE染色にてNETを疑う特徴的な組織像がみられた場合には、神
経内分泌細胞マーカーを用いた免疫組織化学的な検索を実施することが重要である。また、
gradingに必須であるKi-67指数および核分裂像数に加えて、脈管浸潤も悪性度の指標となる。
NET は、特徴的な所見として、carcinoid pattern として知られている組織構築である索状、リボン状、ロゼット状などの 多様な増生パターンを呈す。NET の組織像は比較的均一であり、一般的に円形ないし多稜形で、類円形の核と淡明な胞体を 有する単調な細胞像を示す。また、核クロマチンが粗である点などの特徴がある。
【特徴】439 個のアミノ酸からなる糖タンパクで内分泌顆粒成分。NET では強く発現しているが、NEC では、内分泌顆粒が少な く陰性になる場合もある。
~例~
【抗体】抗ヒト クロモグラニン A(clone: DAK-A3)・マウスモノクローナル抗体、ダコ・ジャパン株式会社(Code No. M0869) 【染色の注意】前処置:pH6.0 クエン酸緩衝液、オートクレーブで 15 分間熱処理による抗原賦活化、希釈倍率:50 倍
【診断のポイント】腫瘍細胞質内に顆粒状に染色される場合を陽性と判定する。
NET の分化度の指標として、クロモグラニンAやシナプトフィジンなどの代表的な神経内分泌細胞マーカーが挙げられる。 また、神経細胞に発現する細胞接着因子であるCD56(neural cell adhesion molecule:NCAM)もマーカーとなる。な お、細胞膜上のソマトスタチン受容体(somatostatin receptor:SSTR)サブタイプの発現を確認することは、治療指針を 決める上でも有用である。さらに、Ki-67 指数はNETの悪性度の評価にきわめて重要な指標であり、優れた予後予測因子で あるため、核分裂像数とともにNETをgrading するために必須である。 また、高分化型のNETでは、クロモグラニンA や特異的マーカーであるホルモンが強く発現しているのに対し、低分化型の NECでは一般的にはクロモグラニンA の発現は弱いが、シナプトフィジンやPGP 9.5 が強く発現しているという特徴がある。
NET(Neuroendocrine tumor)の病理診断
HE 染色
NET の分化度や悪性度をはかる上で重要なマーカー
神経内分泌細胞マーカーの免疫組織化学的な検索
直腸NET G1 リボン状などNETの 典型像 膵神経内分泌腫瘍(PNET) 膵消化管の神経内分泌腫瘍を総合して Gastroenteropancreatic neuroendocrine tumor(GEPNET)と称される。クロモグラニン A
クロモグラニンA シナプトフィジン Ki-67指数 CD56(Neural cell adhesion molecule:NCAM) 内分泌顆粒 高 高 低 シナプス小胞 高 高 高 細胞膜 高 高 高 細胞膜 高 中~高 低 核 低 中 高 直腸NET G1(陽性) 肺カルチノイド(陽性) 肺カルチノイド(強陽性)
直腸NET G1 胃NET G2肝転移 胃NEC(small cell)
マーカー 細胞内分布 陽性率
NET G1 NET G2 NEC
神経内分泌細胞マーカー Synaptophysins CSPs Rab 3’s Rab 5’s Synaptogyrins SV2s Synaptobrevins Chromogranins Secretory granules PC1/3,PC2 SNAP25 Syntaxin NCAM
NEUROENDOCRINE PROTEINS RELATED WITH SECRETORY GRANULES, CELL MEMBRANE AND NUCLEI
TTF-1* CDX-2* NUCLEUS PLASMA MEMBRANE Somatostatin receptor type 2:SSTR2 *肺(TTF-1)と消化管(CDX-2)のNET、NECの鑑別に有用とされている。
Srivastava A, Hornick JL. Am J Surg Pathol. 2009; 33: 626-632 Lin X, et al. Appl Immunohistochem Mol Morphol. 2007; 15: 407-414
【特徴】神経細胞のシナプス小胞、副腎髄質細胞や下垂体細胞などの分泌顆粒に局在する糖タンパク。 クロモグラニン A に比し特異性は低いとされるが、内分泌顆粒が少なくても陽性を示すことが多い。 ~例~ 【抗体】抗ヒト シナプトフィジン・ウサギポリクローナル抗体、ダコ・ジャパン株式会社(Code No. A0010) 【染色の注意】前処置:0.1% トリプシンで 37℃、30 分処理による抗原賦活化、希釈倍率:50 倍 【診断のポイント】腫瘍細胞質内に染色される場合、陽性と判定する。副腎皮質細胞にも陽性となることが知られ、副腎腫瘍の判 定には注意を要する。 肺カルチノイド(弱陽性) 直腸NET G1(陽性) 肺カルチノイド(陽性) 【特徴】免疫グロブリンファミリーに属する細胞接着因子であり、NK細胞との関係が深い。 肺の NET で有用性が高いことが知られている。 ~例~
【抗体】抗ヒト CD56・マウスモノクローナル抗体、Novocastra Laboratories Ltd.(Product Code: NCL-CD56-1B6) 【染色の注意】前処置:pH6.0 クエン酸緩衝液、オートクレーブで 15 分間熱処理による抗原賦活化、希釈倍率:30 倍 【診断のポイント】腎尿細管上皮、甲状腺濾胞上皮、腎癌、副腎皮質癌、横紋筋肉腫なども陽性を示すことがある。 子宮頚部神経内分泌癌(陰性) 肺カルチノイド(陰性~弱陽性) 肺カルチノイド(陽性) 【特徴】 ペプチドホルモンであるソマトス タチンの 受 容 体 のサブタイプ SSTR1、2、3、4、5 の 1 つ。 NET の多くは、SSTR2 を発現 しており、分化度が低くなるにつ れて発現頻度は低下する。 ~例~ 【抗体】 SSTR2 antibody、ラビットモノ クローナル抗体EP149(UMB-1)、 Epitomics(#3582-1) 【染色方法】 抗原賦活:
Target Retrieval solution (DAKO)、オ ートクレ ー ブ (121℃)、10 分 ブロッキング: 3%過酸化水素水、10 分 第一次抗体: SSTR2 antibody、4℃、 overnight 酵素標識第二次抗体: ヒストファイン シンプルステ イン MAX-PO(R)、30 分 発色: 3,3'-diaminobenzidine、 5 分 【診断のポイント】 陽性細胞の割合、染色強度など 症例によって異なるが、必ず細 胞膜の染色を陽性と判定する。 Score 0 SSTR2のスコアリングの指標 NETにおける SSTR2aの免疫組織化学染色の判定
染色濃度や部位などにより、Score 0、Score 1、Score 2、Score 3 に大別される(下図) Score 1 Score 2 Score 0 Score 3 【特徴】細胞増殖関連抗原 Ki-67 に対するモノクローナル抗体 MIB-1 による標識率。優れた細胞増殖能の指標。 高悪性度の NEC で高い。 ~例~
【抗体】抗ヒト Ki-67 抗原 (clone: MIB-1)・マウスモノクローナル抗体、ダコ・ジャパン株式会社(Code No. M7240) 【染色の注意】前処置:pH6.0 クエン酸緩衝液、オートクレーブで 15 分間熱処理による抗原賦活化、希釈倍率:50 倍
【診断のポイント】対物×20で5視野での核をカウントする。総核数1000個以上カウントし、陽性核の比率を出すことが推奨されている。
直腸NET G1 胃NEC
Score 1 Score 2 Score 3
Volante M, et al. Mod Pathol. 2007; 20: 1172-1182
Score 0:陰性 Score 1:細胞内のみ、局所性あるいはびまん性 Score 2:細胞膜の一部 (陽性腫瘍細胞<50%) Score 3:細胞膜の全周囲 (陽性腫瘍細胞>50%)
シナプトフィジン
CD56(Neural cell adhesion molecule:NCAM)
Somatostatin receptor type 2:SSTR2
【特徴】神経細胞のシナプス小胞、副腎髄質細胞や下垂体細胞などの分泌顆粒に局在する糖タンパク。 クロモグラニン A に比し特異性は低いとされるが、内分泌顆粒が少なくても陽性を示すことが多い。 ~例~ 【抗体】抗ヒト シナプトフィジン・ウサギポリクローナル抗体、ダコ・ジャパン株式会社(Code No. A0010) 【染色の注意】前処置:0.1% トリプシンで 37℃、30 分処理による抗原賦活化、希釈倍率:50 倍 【診断のポイント】腫瘍細胞質内に染色される場合、陽性と判定する。副腎皮質細胞にも陽性となることが知られ、副腎腫瘍の判 定には注意を要する。 肺カルチノイド(弱陽性) 直腸NET G1(陽性) 肺カルチノイド(陽性) 【特徴】免疫グロブリンファミリーに属する細胞接着因子であり、NK細胞との関係が深い。 肺の NET で有用性が高いことが知られている。 ~例~
【抗体】抗ヒト CD56・マウスモノクローナル抗体、Novocastra Laboratories Ltd.(Product Code: NCL-CD56-1B6) 【染色の注意】前処置:pH6.0 クエン酸緩衝液、オートクレーブで 15 分間熱処理による抗原賦活化、希釈倍率:30 倍 【診断のポイント】腎尿細管上皮、甲状腺濾胞上皮、腎癌、副腎皮質癌、横紋筋肉腫なども陽性を示すことがある。 子宮頚部神経内分泌癌(陰性) 肺カルチノイド(陰性~弱陽性) 肺カルチノイド(陽性) 【特徴】 ペプチドホルモンであるソマトス タチンの 受 容 体 のサブタイプ SSTR1、2、3、4、5 の 1 つ。 NET の多くは、SSTR2 を発現 しており、分化度が低くなるにつ れて発現頻度は低下する。 ~例~ 【抗体】 SSTR2 antibody、ラビットモノ クローナル抗体EP149(UMB-1)、 Epitomics(#3582-1) 【染色方法】 抗原賦活:
Target Retrieval solution (DAKO)、オ ートクレ ー ブ (121℃)、10 分 ブロッキング: 3%過酸化水素水、10 分 第一次抗体: SSTR2 antibody、4℃、 overnight 酵素標識第二次抗体: ヒストファイン シンプルステ イン MAX-PO(R)、30 分 発色: 3,3'-diaminobenzidine、 5 分 【診断のポイント】 陽性細胞の割合、染色強度など 症例によって異なるが、必ず細 胞膜の染色を陽性と判定する。 Score 0 SSTR2のスコアリングの指標 NETにおける SSTR2aの免疫組織化学染色の判定
染色濃度や部位などにより、Score 0、Score 1、Score 2、Score 3 に大別される(下図) Score 1 Score 2 Score 0 Score 3 【特徴】細胞増殖関連抗原 Ki-67 に対するモノクローナル抗体 MIB-1 による標識率。優れた細胞増殖能の指標。 高悪性度の NEC で高い。 ~例~
【抗体】抗ヒト Ki-67 抗原 (clone: MIB-1)・マウスモノクローナル抗体、ダコ・ジャパン株式会社(Code No. M7240) 【染色の注意】前処置:pH6.0 クエン酸緩衝液、オートクレーブで 15 分間熱処理による抗原賦活化、希釈倍率:50 倍
【診断のポイント】対物×20で5視野での核をカウントする。総核数1000個以上カウントし、陽性核の比率を出すことが推奨されている。
直腸NET G1 胃NEC
Score 1 Score 2 Score 3
Volante M, et al. Mod Pathol. 2007; 20: 1172-1182
Score 0:陰性 Score 1:細胞内のみ、局所性あるいはびまん性 Score 2:細胞膜の一部 (陽性腫瘍細胞<50%) Score 3:細胞膜の全周囲 (陽性腫瘍細胞>50%)
シナプトフィジン
CD56(Neural cell adhesion molecule:NCAM)
Somatostatin receptor type 2:SSTR2
NET の病理診断アルゴリズム
本邦の膵・消化管 NET 診療ガイドラインにおいて、病理診断アルゴリズムが示されています。
COMMENT
Ki-67 の算定方法として、ENETS は Hot spot の 2,000 個を対象として%で表記することを提案している* 3。
長谷川らも、EUS-FNA 検体でも 2,000 個カウントできれば Grading に用いることができると報告している (Hasegawa T, et al. Endoscopy 2014)。本邦ガイドラインでは、膵 NET 生検組織における Ki-67 指数は 手術標本の Ki-67 指数と相関し悪性度因子となるが、腫瘍内 heterogeneity により生検検体では過小評価さ れる場合があると示されており、小組織片、細胞診などでは慎重に対処するよう記載されている。一方で、実 際の病理診断の際には、必ずしも Hot spot を 2,000 個数えることが叶わない場合にも遭遇する。これまでの 報告では、Hot spot で 400 個以上(The Scientific World J 2012)とする報告もあり、2010 年 WHO 分類 でも 500-2,000 個が採用されている。私は、エビデンスは示されていないものの、極端に癌細胞が少ない場 合を除いて(たとえば 100 個以上)、患者の治療を考慮して “ カウントした腫瘍細胞数を述べた上で「参考値」 として臨床サイドに報告する ” 場面もあるのではないかと考えている。 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン 病理診断アルゴリズム 日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS) 膵・消化管神経内分泌腫瘍 診療ガイドライン作成委員会編 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン 2015 年【第 1 版】 金原出版 EUS-FNA 細胞診 組織診断またはセルブロック*1 手術検体 切り出し 組織学的にNETを疑う 免疫染色 クロモグラニンA、シナプトフィジン 陰性 陽性*2 NET以外 NET 細胞量少ない 細胞量多い*3 WHO分類の 評価は不適*3,4 核分裂、Ki67指数によるWHO分類の推定*3,4 検体不適 検体適正 組織型診断 検体不適 検体適正 EUS-FNA:超音波内視鏡下穿刺吸引生検法 *1 固形成分が十分に採取されない場合にはセルブロック標本を 作製する。 *2 内分泌マーカーのうち、シナプトフィジンのみ陽性の場合は、その 他の免疫染色を追加し、solid-pseudopapillary neoplasm、 acinar cell carcinoma/neoplasm、serous cystic neoplasm、 転移性腫瘍など、他腫瘍の可能性がないか検討する。
*3 腫瘍細胞数 2,000 個を目安とする(Rindi G, et al. Virchow Arch. 2006; 449(4): 395-401)。
NET の病理診断の流れ
HE 染色を行い NET が疑われる場合には、神経内分泌細胞マーカーを用いた免疫組織化学的な検索を行う。クロモグ ラニン A、シナプトフィジンなどの発現を確認し、その腫瘍が NET であると確定診断が可能である核分裂像数、Ki-67 指数により grading を行う。電子顕微鏡では神経内分泌顆粒が確認できる。 神経内分泌腫瘍の病理診断は、以下のような手順で行われる。1.HE 染色にて NET の組織パターンを認識す る、2.神経内分泌細胞マーカー(クロモグラニン A、シナプトフィジン、CD56)の免疫組織化学的解析、これ によって確定診断がなされる。その際に Ki-67 の測定も重要である。また、確定診断がついたら、SSTR2 の染 色を行いサンドスタチン治療の指標とする。 確定診断―治療指針が上記フローチャートとなる。 COMMENT
NET G2 のHE 染色像 NET G2 のクロモグラニンA 染色
NET G2(小腸原発) ※原発腫瘍、★リンパ節転移 ★ ※ NET G2 のSSTR2a 免疫組織化学染色 細胞膜に陽性所見を認める ×100 ×150 ●
肉眼診断
●顕微鏡診断
NET 様の病理組織像:索状、リボン状、 ロゼット状などの増生パターン ●免疫組織化学
神経内分泌細胞マーカーの検索 ・クロモグラニンA ・シナプトフィジン ・CD56(NCAM)・Somatostatin receptor type 2 ・Ki-67 指数 ※悪性度評価に重要
●
分子標的治療
・ 免疫組織化学的に Somatostatin receptor Type 2(SSTR2a)陽性の 場合、ソマトスタチンアナログによる治 療効果が期待できる
2010 年 WHO 分類が抱える課題
NEC を単一の疾患と捉えてよいか、との問題点が提起されています。
2010 年 WHO 分類は腫瘍の増殖動態(核分裂像数および Ki-67 指数)に基づく分類であり、膵・消化管 NET は、組織 学的に高分化型(NET G1/G2)と低分化型(NEC)に大別される。この NEC の中には、Ki-67 指数は 20%を超えるが 形態は高分化型を呈し、典型的な低分化型の NEC とは異なる臨床像を示すものが存在する。図 1 に示すように、NEC は病理形態学的所見から、① NET G1/G2 と類似した組織像を呈する病変(高分化型 NEC)、②肺の大細胞神経内分泌 癌(LCNEC)に類似した大細胞型、③肺小細胞癌に類似した小細胞型の 3 つに大別される。病理診断の際には、組織型 と Grade を記載することが重要である。さらに、NEC 患者(表1)を対象としたNORDIC NEC studyにおいて、Ki-67 指数が 55%未満の症例は 55%以上の症例に比べて化学療法への反応性が低いが(表 2)、その一方で生存期間は有意に 長いこと(図 2)が示されている。このような結果を受け、2010 年 WHO 分類には、NEC を単一の疾患と捉えてよいか という問題点が提起されている。
神経内分泌腫瘍の診断は、形態学的な特徴(neuroendocrine pattern)と増殖マーカー(核分裂像、Ki-67) にゆだねられる。現行の 2010 年 WHO 分類では、増殖能を重視し NEC を組織学的に Large cell と Small cell のみに分けたところに無理があることがその後の検討で判明した。結果として増殖能は NEC の定義に合 致するが、neuroendocrine pattern を保持している腫瘍群を NET G3 として区別することが提案された。 NEC に比して NET G3 は増殖能がより低く、SSTR2 の発現が高いことが報告されている。
COMMENT NEC と NET G3
図 1 NEC の病理形態学的所見 高分化型 〈NET G3〉 Ki-67 30% Ki-67 80% 低分化型 〈NEC〉 大細胞型 小細胞型 HE 染色像 Ki-67 30% SSTR2 Score 3 HE 染色像 Ki-67 70% SSTR2 陰性 HE 染色像 Ki-67 80% SSTR2 Score 2 HE 染色像 Ki-67 90% SSTR2 Score 2
表 1 NORDIC NEC study 患者背景
表 2 NORDIC NEC study NEC における Ki-67 指数別化学療法の効果
図 2 NORDIC NEC study 化学療法を施行した NEC における Ki-67 指数別の生存曲線
Sorbye H, et al. Ann Oncol. 2013; 24: 152-160 Sorbye H, et al. Ann Oncol. 2013; 24: 152-160 Sorbye H, et al. Ann Oncol. 2013; 24: 152-160 SRS :ソマトスタチン受容体シンチグラフィ a 中央値(範囲) b 主な転移巣は消化管 a 論文中に検定方法に関する記載なし *論文中に検定方法に関する記載なし 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 期間(月) 60 累積生存率 Ki-67<55% Ki-67≧55% 6 12 18 24 30 36 42 48 54 30ヵ月時における生存率 Ki-67<55%群 23% Ki-67≧55%群 7% p<0.001* 全例 n(%) 化学療法 施行例 n(%) 最良支持 療法施行例 n(%) 総数 305 252(82%) 53(18%) 年齢a(n=305) 60(24-89) 58(24-82) 70(42-89) 原発巣 303 252 51 食道 12(4%) 9(4%) 3(6%) 胃 20(7%) 16(6%) 4(8%) 膵臓 71(23%) 65(26%) 6(12%) 結腸 61(20%) 48(19%) 13(26%) 直腸 21(7%) 18(7%) 3(4%) 不明b 98(32%) 78(31%) 20(39%) その他 20(7%) 18(7%) 2(4%) Ki-67 290 248 42 < 55% 136(47%) 115(46%) 21(50%) ≧ 55% 154(53%) 133(54%) 21(50%) 全例 < 55%Ki-67 ≧ 55%Ki-67 p 値a PR/CR (%) 31 15 42 < 0.001 SD (%) 33 47 24 PD (%) 36 38 34 PFS中央値(月) (95%信頼区間) (3.4~4.6)4 (3.2~4.8)4 (3.1~4.9)4 OS 中央値(月) (95%信頼区間) (9.4~12.6)11 (10.7~17.3)14 (8.4~11.6)10 0.001 全例 n(%) 化学療法 施行例 n(%) 最良支持 療法施行例 n(%) クロモグラニンA 303 252 51 強陽性 138(45%) 123(49%) 15(29%) 陽性 148(49%) 121(48%) 27(53%) 陰性 17(6%) 8(3%) 9(18%) シナプトフィジン 304 252 52 強陽性 231(76%) 194(77%) 37(71%) 陽性 60(20%) 48(19%) 12(23%) 陰性 13(4%) 10(4%) 3(6%) SRSで肝を超える 強度の取り込み (n=182) 68(37%) 64(39%) 4(20%)