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(1)2008年農業法制定に至る背景・経緯

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2009-AFC 2

平成

21 年度

米国のバイオ燃料政策の現状と課題

2010 年 3 月

日本貿易振興機構(ジェトロ)

農林水産部

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はじめに

2008 年初夏までの穀物価格の高騰を契機として、世界的に「食糧危機」が叫ばれ、食 料安全保障が大きな課題となった。しかし、その後の農産物市場からの投機資金の流出、 世界的な景気後退による需要減少、世界の主要生産国の生産回復等により、穀物の需 給・価格は落ち着きを見せつつある。 広大かつ肥沃な土壌、高い技術力等に裏付けられた世界最大の食糧生産国・米国の生 産能力は圧倒的に高い。また、手厚い振興・保護策のほか、市場動向に的確に反応する 米国農家の優れた経営感覚、再生産が可能な農業の特性等を考慮した場合、食糧供給そ のものに深刻な事態が生じることは考えにくい。 しかし、中長期的な食糧需給の逼迫傾向が、価格や貿易へ与える影響についての懸念 は依然として払拭されていない。景気低迷が長引く中、穀物価格の高止まりは、今後の 食料価格や個人消費、ひいては景気回復の行方にも影響を与える可能性がある。 穀物価格の高止まりには、世界的な人口増加と食生活の高度化・多様化、投機筋の影 響、エネルギー価格の上昇、生産国の農産物輸出規制等極めて多くの原因がある。この うち、食糧需給逼迫の構造的要因の一つとして、各国のバイオ燃料政策の推進による穀 物需要の増加が指摘されている。 米国では、エネルギー自給、地域雇用の維持・拡大、農業振興、地球温暖化問題への 対応等の政策目的の下、オバマ政権・民主党議会によって、バイオ燃料政策の推進が強 力に図られている。米国のバイオ燃料政策は、2007 年 12 月に成立した新エネルギー法 に基づく再生可能燃料基準(RFS)の使用量義務付け、各種優遇税制措置など多岐に渡 る。直近では、地域雇用対策の色彩も濃くなり、厳しい財政赤字の状況にもかかわらず、 その強力な推進姿勢に陰りはみえない。世界最大の食糧供給国・米国におけるバイオ燃 料の動向は、今後の穀物価格等の動向を占う上でも重要であると考えられる。 このような観点から、本報告書では、農畜産物の需給・貿易動向や食料価格の現状の 概要を紹介しつつ、米国政府や関係業界から入手した情報も参考としながら、エタノー ルを中心とするバイオ燃料の需給、関連政策の現状と課題を明らかにした。 なお、本報告書の内容は、2010 年 2 月末までに得られた情報に基づくものである。 関係各位のご参考となれば幸いである。 2010 年 3 月 日本貿易振興機構(ジェトロ) 農林水産部

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【免責事項】 ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、 あるいは懲罰的損害及び利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あるい はその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たと え、ジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。 本報告書は信頼できると思われる各種情報に基づいて作成しておりますが、その正確性、完 全性を保証するものではありません。ジェトロは、本報告書の論旨と一致しない他の資料を発 行している、または今後発行する可能性があります。

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要 約

Ⅰ.農産物及び食料価格の動向 1.農産物の需給及び価格の動向 (1) 農産物販売額 農産物の販売額の上位 5 州と全体に占める割合は、1 位から順にカリフォルニア (11.4%)、テキサス(7.1%)、アイオワ(6.9%)、ネブラスカ(5.2%)、カンザス(4.8%) となっており、上位10 州で全米農産物販売額の 53.6%占めている (2) 穀物の需給及び価格の動向 2008/09 穀物年度の米国の穀物生産については、トウモロコシが史上最高の生産を記 録した前年度から減少に転じるものの、史上第2 位となる生産を記録して堅調に推移。 また、小麦、大豆の生産も大きく増加し、穀物合計では4 億 40 万トン(前年度比 2.8% 減)と高水準の生産を実現するとの見通しである。 また、価格高騰や景気後退に伴う需要減少によって穀物輸出の計が前年度比24.0%減 と大幅に減少するとみられている。 2009/10 穀物年度の米国の穀物生産については、トウモロコシの生産量が史上最高を 記録すると予測されている。小麦は生産が減少するものの、旺盛な需要が続く大豆の生 産が大きく増加したことなどから、4 億 1,760 万トン(前年度比 4.3%増)と再び増加に 転じた。一方、前年度から続く景気後退に伴う需要減少等によって、穀物輸出の計は前 年度比で米国が1.6%減、世界が 6.4%減と減少するとの予測である。 2.農産物貿易の動向 (1) 輸出動向 2010 年度の農産物輸出は、史上最高を記録した 2008 年度には及ばないものの、世界 的な景気と商品価格の回復に伴って、金額ベースでは前年度を上回る1,000 億ドル(前 年度比3.5%増)、数量ベースでも 1 億 2,020 万トン(同 3.9%増)になるとの予測であ る。 (2) 輸入動向 2010 年度の農産物輸入は、775 億ドル(前年度比 5.6%増)となった。原産国表示制 度の施行を受ける生体豚・豚肉を除く全ての品目で輸入金額の上昇が予測されており、 特に、従来通り、園芸作物、砂糖・熱帯製品、そして米国向け輸出需要の増加傾向が続 く油糧種子が主要輸入品目になるものと予測されている。 (3) 対日農産物貿易 2009 年度の対日農産物輸出は、112 億 2,107 万 6,000 ドル(前年度比 14.1%減)とな り、史上最高を記録した前年よりも減少した。一方、同年度の対日農産物輸入額は、前年 度比0.1%増と微増ながらも 4 億 9,820 万 1,000 ドルとなり、史上最高であった前年度

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を上回り、史上最高記録を更新した。 3.食料価格の動向 食品全体の消費者物価指数は、2007~2008 年にかけて 5.5%上昇、2008~2009 年に かけては1.8%上昇しており、2010 年には 2.5~3.5%の上昇が見込まれている。農務省 では、世界経済の回復が商品価格やエネルギーコストの上昇につながり、国内及び世界 の食品需要の増大が2009 年からインフレを加速させると予測している Ⅱ.米国のバイオ燃料政策の現状及び課題 1.エタノールの需給及び価格 (1) エタノールの生産 2009 年 2 月末現在、米国では 189 工場が稼動しており、これらの工場の生産能力は 118 億 7,740 万ガロン(1 ガロン=約 3.8 リットル)となっている。また、2009 年にお けるエタノール生産量は、107 億 5,800 万ガロンと史上最高を更新し、着実な増加を続 けている。エタノール業界の寡占化は進んでいないが、エタノール生産に参入した最初 の大手原油生産・精製業者のバレロは、積極的な投資を展開。米国最大級のエタノール 企業に躍進し、エタノール部門は好調な業績を示している。 (2) エタノールの需要 2009 年におけるエタノール需要量は、108 億 4,700 万ガロンとなっており、前年(96 億3,700 万ガロン)に比べて 12.6%増加している。2009 年 11 月には 9 億 8,450 万ガロ ンとなり、史上最高を記録。同年11 月、12 月は、生産が需要を超過し、12 月の在庫は 7 億 186 万ガロンで前年同月比 27.6%増となり、22 日超の在庫数量を確保している。 (3) エタノールの価格 2008~2009 年にかけてのエタノールの価格(ネブラスカ州政府公表、卸売価格)は、 2008 年 7 月に 2.90 ドル/ガロンを記録した後、同 12 月に 1.61 ドル/ガロンまで下落。 その後、わずかながら上昇し、2009 年 12 月には 2.15 ドル/ガロンまで回復したが、2009 年平均では1.79 ドル/ガロンとなり、前年平均(2.47 ドル/ガロン)を大きく下回ってい る。 2.バイオ燃料政策の現状及び課題 (1) 新たな再生可能燃料基準の最終規則案の提案 2007 年 12 月に成立したエネルギー自立・安全保障法(新エネルギー法)は、再生可 能燃料基準(RFS)を改定し、バイオ燃料の使用義務量を従来の約 5 倍の 360 億ガロン

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へと大幅に引き上げた。この新しい RFS(RFS2)の最終規則案が、環境保護庁によっ て2009 年 5 月に発表された。RFS2 では、4 つのバイオ燃料分類ごとにその使用義務量 が規定される。トウモロコシ由来エタノールを中心とした従来型バイオ燃料は、2015 年までに150 億ガロンへと義務量が拡大された。これに対し、360 億ガロンのうち残り の 210 億ガロンはトウモロコシ由来エタノール以外の次世代バイオ燃料、「バイオディ ーゼル(バイオマス由来ディーゼル)」、「セルロース系バイオ燃料」、「その他の次世代 バイオ燃料」という3 分類からの供給拡大が求められる。また、野心的な 4 分類ごとの 使用義務量と並び、最終規則案では当該分類ごとに再生可能燃料について、温暖化ガス (GHG)の排出基準を合わせて設定。この内容をめぐり、政府・議会と業界の調整が続 いた。 (2) 新たな再生可能燃料基準の最終規則の公表 2010 年 2 月、RFS2 の最終規則が公表された。環境保護庁は、「国境を越える間接的 土地利用変化」等の算定モデルの再検証の結果、温室効果ガス排出基準の見直しを行っ た。内容は農業・エタノール団体の意見を概ね反映したものとなり、公表に至るまでの 経緯や米国の経済状況等から雇用対策の側面も色濃いものとなった。現在、米国内では 約 30 社のセルロース系バイオ燃料を含む次世代バイオ燃料工場が試験生産又は建設中 であり、近い将来の商業生産が期待されている。しかし、資金調達の困難性等から、環 境保護庁は2010 年に 1 億ガロンという RFS を 650 万ガロンへ下方修正した。 手厚い支援策の一方で、景気後退に伴う資金調達の困難性等もあり、短期間でセルロ ース系バイオ燃料の生産が急増する可能性は非常に低いと言える。 (3) エタノールに対する消費税控除措置等 新エネルギー法に基づくRFS2 と並び、米国におけるバイオ燃料振興の中心的要素を 成すのが、2008 年 6 月に成立した 2008 年食料・保全・エネルギー法(2008 年農業法) に基づく各種税制優遇措置・補助金等の支援措置である。2008 年農業法は、バイオ燃料 振興のための各種税制優遇措置・補助金のほか、環境・保全対策の相互作用により、各々 の政策目的に実現を図ることとなっている。 2009~10 年は、これらの支援措置、特に各種税制優遇措置の延長問題が大きな課題 となっており、今後も推進派と反対派の駆引きが激化する様相を示している。 (4) バイオディーゼルの動向 近年、軽油代替燃料として、大豆油を原料とするバイオディーゼルの生産量が大きく 増加し、2004 年に 2,800 万ガロン(1 ガロン=約 3.8 リットル)であった生産量は、2008 年には7 億 7,600 万ガロンに急増した。しかし、2009 年は急落する見通しである。大 豆の需給逼迫と価格の高止まり、景気後退に伴う国内外の燃料需要の減少、資本調達の

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困難性等が要因であるが、EU の対抗措置(関税等)も大きく影響している。また、2009 年 12 月末をもって期限切れとなったバイオディーゼル生産者に対する税額控除措置の 延長は業界の死活問題となっており、2010 年早期の延長措置と 2010 年 1 月からの遡及 施行に向け、議論が継続されている。 (5) エタノール混合率の引き上げ エタノール団体であるグロース・エナジーほか54 のエタノール企業・団体は、2009 年 3 月、環境保護庁に対して、E10(ガソリンへのエタノール混合率 10%)から E15 (同 15%)への引き上げを要請した。エタノールの供給過多と生産の地域偏在の解消、 RFS2 の達成を通じた雇用の維持・拡大、エネルギー自給という目的に基づくものであ る。RFS2 の総義務量拡大とエタノール生産量の増加に伴い、大気浄化法に基づく適用 除外として、その上限枠の拡大が必要となっている。 しかし、業界団体の対立構造は激しく、激化の様相も見せている。エタノール業界の ほか、穀物需要の増加を期待する穀物業界などが E10 の引き上げを支持する一方、石 油・自動車業界は科学的見地に基づく実証が不十分として慎重な姿勢を崩していない。 また、飼料・原料価格上昇につながるとして、畜産・飲食料団体も引き上げには批判的 である。環境保護庁は、E15 への引き上げが自動車等のエンジンや環境・人体に与える 影響についての試験結果が出ていないことを理由として、2009 年 12 月 1 日が期限とさ れていた可否決定の判断について、少なくとも 2010 年半ばまで先送りした。推進派と 反対派のせめぎ合いが激化する中、その反応は複雑に分かれている。また、仮に引き上 げが実現した場合も課題はなお山積している。 (6) E85 をめぐる動向 農業・エタノール業界は、既に規格の存在するE85(ガソリンへのエタノール混合率 85%)の普及を通じたエタノール需要の拡大に期待を示す。しかし、ガソリンや E10 と比較した場合の価格や燃費差の問題、 給油施設の不足や偏在、誤給油の保証問題等、 その普及には課題が多い。政府・議会の手厚い支援策の一方で、その解決の方向性は明 らかではないことから、E15 への引き上げの問題と合わせ、今後のエタノール需要拡大 には依然として懸念材料が多いのが現状である。 (7) ブラジル及びカリブ海沿岸諸国からのエタノール輸入 2009 年の米国のエタノール輸入は 1 億 9,380 万ガロン、前年比 63.4%減と大きく減 少した。2008 年 6 月に成立した 2008 年農業法において、エタノールに関する諸規定が 改廃されたことが大きく影響しているが、カリブ海沿岸諸国からの輸入は堅調に推移し ている。

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一方、2010 年 2 月に環境保護庁が公表した RFS2 の最終規則では、ブラジルのサト ウキビ由来エタノールは、「その他の次世代バイオ燃料」の GHG 排出基準 50%を大き く超える61%の GHG 削減効果があるとされた。世界最大のエタノール輸出国であるブ ラジルは、この恩恵を享受し、自国における次世代バイオ燃料への投資促進のほか、現 在世界で最も有用であり、価格競争力のあるサトウキビ由来エタノールを中長期的に米 国向けに輸出していくことが可能となり得るとの期待を示す。この一環として、ブラジ ルは、2010 年 12 月 31 日で期限切れとなる 54 セント/ガロンのエタノール輸入関税の 撤廃を求めて要請を強めている (8)DDG の動向 エタノールの製造(トウモロコシからスターチを抽出する)過程で生産される DDG (Dried Distillers Grains)の生産が増加しており、再生可能燃料協会によると、2009 年の生産量は2,840 万トンと予測されており、1999 年に比較して 12 倍以上の規模とな っている。生産の増加に比例し、輸出も増加しており、2009 年の輸出量は前年比 24.5% 増の約 565 万トンとなっている。特に、中国向けの輸出が著しく増加している。また、 現在は反芻動物(牛等)への供与が多くを占めるが、用途拡大への研究開発も進んでお り、代替飼料としての更なる活用が期待されている。

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目 次

Ⅰ.農産物及び食料価格の動向 ... 1 1.農産物の需給及び価格の動向 ... 1 (1)農産物販売額 ... 1 (2)農産物の需給及び価格の動向... 1 2.農産物貿易の動向 ... 21 (1)輸出動向 ... 21 (2)輸入動向 ... 24 (3)対日農産物貿易 ... 26 3.米国における食料価格の動向 ... 28 Ⅱ. 米国のバイオ燃料の現状及び課題... 39 1.エタノールの需給及び価格 ... 39 (1)エタノールの生産 ... 39 (2)エタノールの需要 ... 45 (3)エタノールの価格 ... 45 2 バイオ燃料政策の現状及び課題 ... 47 (1)新たな再生可能燃料基準の最終規則案の提案 ... 47 (2)新たな再生可能燃料基準の最終規則の公表 ... 57 (3)エタノールに対する消費税控除措置等 ... 65 (4)バイオディーゼルの動向 ... 67 (5)エタノール混合率の引き上げ... 73 (6)E85 をめぐる動向 ... 81 (7)ブラジル及びカリブ海沿岸諸国からのエタノール輸入 ... 86 (8)DDG の動向 ... 91 単位 1 ポンド = 0.45359 キログラム 1 ハンドレッドウェイト(cwt) = 45.359 キログラム 1 ガロン = 約 3.8 リットル ~ご利用にあたって~ 本報告書に掲載されているURL は、2010 年 3 月時点のものであり、予告なく変更される可 能性があります。

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Ⅰ.農産物及び食料価格の動向

1.農産物の需給及び価格の動向

(1)農産物販売額 広大な国土と農地面積を背景として多種多様な農業が営まれている米国であるが、農産物の 販売額は、中西部、ミシシッピデルタ、カリフォルニア、大西洋沿岸地域の州に集中している。 上位 5 州と全体に占める割合は、1 位から順にカリフォルニア(11.4%)、テキサス(7.1%)、 アイオワ(6.9%)、ネブラスカ(5.2%)、カンザス(4.8%)となっており、上位 10 州で全米 農産物販売額の53.6%を占めている(表Ⅰ-1)。 表Ⅰ-1 米国の州別農産物販売額 (単位:1,000 ドル) 順位 州 農産物販売額 1 カリフォルニア 33,885,064 2 テキサス 21,001,074 2 アイオワ 20,418,096 4 ネブラスカ 15,506,035 5 カンザス 14,413,182 6 イリノイ 13,329,107 7 ミネソタ 13,180,466 8 ノースカロライナ 10,313,628 9 ウィスコンシン 8,967,358 10 インディアナ 8,271,291 総合計 297,220,491 (出所)米国農務省農業統計局農業センサス 2007 http://www.agcensus.usda.gov/Publications/2007/index.asp (2)農産物の需給及び価格の動向 ① 穀物全般(表Ⅰ-2) 2008/09 穀物年度の米国の穀物生産については、記録的となった前年度には及ばないものの、 4 億 40 万トン(前年度比 2.8%減)と高水準の生産を実現するとの見通しである。品目別では、 トウモロコシが史上最高の生産を記録した前年度から減少に転じるものの、史上2 位となる生 産を記録して堅調に推移。また、小麦、大豆の生産も大きく増加したことから、また、価格高 騰や景気後退に伴う需要減少によって穀物輸出の計が前年度比 24.0%減と大幅に減少すると みられている。一方、世界の主要産地での生産増加もあり、期末在庫は世界が前年度比23.3% 増、米国が同21.3%増といずれも増加するとの見通しである。 2009/10 穀物年度の米国の穀物生産については、エタノール需要の堅調な増加に伴う作付面

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積の増加、単収と生産量の大幅な増加によって、トウモロコシの生産量が史上最高を記録する と予測されている。世界の主要産地での生産回復と価格の下落によって小麦は生産が減少する ものの、旺盛な需要が続く大豆の生産が大きく増加したことなどから、穀物合計では4 億 1,760 万トン(前年度比 4.3%増)と再び増加に転じた。一方、前年度から続く景気後退に伴う需要 減少等によって、穀物輸出の計は前年度比で米国が1.6%減、世界が 6.4%減と減少するとの予 測である。また、米国、世界ともに、供給量の増加が需要量の増加を上回ることから、期末在 庫は前年度比で米国が15.9%増、世界が同 4.6%増と、いずれも増加するとの見通しである(表 Ⅰ-2)。 表Ⅰ-2 米国と世界の穀物需給 (単位:100 万トン) 生産 供給計 貿易(輸出) 消費 期末在庫 世界 米国 世界 米国 世界 米国 世界 米国 世界 米国 穀物計 2007/2008 2,121.70 412.03 2,464.07 469.15 275.58 107.61 2,101.52 307.23 362.55 54.32 2008/2009 2,231.58 400.40 2,594.13 461.84 283.52 81.80 2,147.21 314.14 446.92 65.90 2009/2010 2,209.20 417.60 2,656.12 489.86 265.40 80.46 2,188.49 333.01 467.63 76.39 小麦 2007/2008 610.46 55.82 738.05 71.30 117.20 34.36 616.98 28.61 121.07 8.32 2008/2009 682.69 68.02 803.76 79.80 142.89 27.64 639.75 34.29 164.01 17.87 2009/2010 677.44 60.31 841.45 81.31 123.80 22.45 645.60 32.17 195.86 26.69 粗粒穀物計 2007/2008 1,077.86 349.86 1,216.54 389.48 127.13 69.89 1,056.03 274.53 160.51 45.06 2008/2009 1,101.58 325.87 1,262.08 373.98 112.03 51.17 1,072.52 275.75 189.56 47.06 2009/2010 1,095.48 350.26 1,285.04 399.88 110.55 54.78 1,105.77 296.67 179.27 48.43 コメ(精米) 2007/2008 434.38 6.34 509.48 8.37 31.24 3.35 428.51 4.08 80.98 0.94 2008/2009 447.31 6.52 528.28 8.07 28.60 2.99 434.94 4.10 93.34 0.97 2009/2010 436.28 7.03 529.62 8.67 31.05 3.23 437.12 4.17 92.50 1.27 トウモロコシ 2007/2008 791.87 331.18 900.74 364.80 98.61 61.91 771.13 261.63 129.60 41.26 2008/2009 791.50 307.14 921.10 348.74 83.28 47.18 775.22 259.05 145.88 42.50 2009/2010 797.83 334.05 943.71 376.80 84.79 50.80 809.67 282.33 134.04 43.67 大豆 2007/2008 221.14 72.86 284.03 88.75 79.53 31.54 229.67 51.63 52.95 5.58 2008/2009 210.86 80.75 263.81 86.69 76.79 34.93 222.55 48.00 41.64 3.76 2009/2010 255.02 91.47 296.66 95.45 81.39 38.10 235.12 51.64 59.73 5.71 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年は予測。 2 年度は、それぞれの穀物、地域の市場年度。 3 穀物計は、小麦、粗粒穀物、コメ(精米)の合計。 4 粗粒穀物は、トウモロコシ、ソルガム、大麦、オーツ麦、ライ麦の合計(世界は、雑穀、混合穀物を含む。) (出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」

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② トウモロコシ(表Ⅰ-3、図Ⅰ-1) 1)2009/10 穀物年度(2009 年 9 月~10 年 8 月)の需給予測 2009/10 穀物年度のトウモロコシは、単収が前年度比で 11.3 ブッシェル(トウモロコシ 1 ブッ シェル=25.401 キログラム)増と大幅に上昇し、165.2 ブッシェル/エーカー(1 エーカー=0.4 ヘクタール)と史上最高になるとの見通しである。この結果、作付・収穫面積も前年度比で増加 することから、生産量は史上最高であった2007/08 穀物年度の 130 億 3,800 万ブッシェルを上回 る131 億 5,100 万ブッシェルとなり、史上最高を記録するとの見通しである。 一方、需要面では、2009 年 6~8 月に 25 億 8,700 万ブッシェルの需要が記録された。これは、 四半期ごとでは史上最高であり、2009/10 穀物年度の期首在庫を当初よりも下方修正させたほか、 2009/10 穀物年度の需要予測を前年度比で増加させることとなった。結果、同穀物年度の期末在 庫は 17 億 1,900 万ブッシェルとなり、前年度よりも増加するとの予測である。これは、米国ド ル安により競争力が回復し、世界の飼料需要や輸出が増加したことも一因である。しかし、農務 省はカナダの飼料穀物や世界の小麦需給の大幅な緩和により、飼料用米国産トウモロコシの代替 が進むとの見方を示しており、その伸びは限定的なものとなっている。 需要増加の要因はエタノール需要である。2009 年春の低温長雨によってトウモロコシの作付け は大幅に遅れたものの、初夏からの天候回復、授粉・生育期に高温被害を免れたことが今秋の大 豊作期待につながり、トウモロコシ現物・先物価格は大きく下落した。主要市場における現物価 格やシカゴ商品取引所(CBOT)の先物価格(期近 2009 年 12 月限)は、1 ブッシェル当たり 3 ドル台前半から3 ドル割れを伺う展開をみせていた。このトウモロコシ価格の下落に加え、手厚 いエタノール支援策の存在、原油価格の高止まりによって、エタノール工場の経営状況は回復軌 道に乗った。エネルギー省の統計によると、09 年 3 月以降、エタノールの生産は増加傾向で推移 し、同7 月には月間・1 日当たり平均生産量がいずれも史上最高を記録。10 月以降も史上最高を 更新し続けた。2009/10 穀物年度では、生産量の 32.8%がエタノール需要に回る計算である。原 油価格が高止まりし、トウモロコシ相場が弱含みで推移すれば、エタノール工場の利幅は回復に 向かい、採算悪化で休止していた工場も稼働を再開すれば、エタノール需要は更に増加する可能 性がある。 2009 年 9 月以降、主要市場における現物価格や CBOT のトウモロコシ先物相場(期近 2009 年 12 月限)は、米国ドル安、原油価格の高止まり、貴金属先物価格の上昇の影響を受けた。ま た、春のトウモロコシの作付けの遅れに起因する成熟の遅れ、収穫期の降霜、降雨(雪)懸念な どもあり、価格は上昇に転じたが、史上最高の単収・生産量予測が市場に与える心理的影響等も あり、2007~08 年にかけての騰勢を回復するには至っていない。 平均農家受取価格は、年度平均で3.70 ドル/ブッシェルと過去 2 年を下回るものと予測されて いる。

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2)2010/11 穀物年度(2010 年 9 月~11 年 8 月)の需給予測 2010/11 穀物年度の作付面積は、前年度よりも増加し 8,900 万エーカーとなると予測されてい る。価格は下落傾向にあるものの、世界的な景気回復による需要増加への期待、エタノール需要 の増加による国内需要の増加等による価格の下支え予測のほか、作物ローテーションによる大豆 からのシフト、種子や肥料等の生産コストの安定が要因になるものとみられている。単収は趨勢 値予測の160.9 ブッシェル/エーカーとなり、生産量は前年度比 0.1%増とわずかに増加して 131 億6,000 万ブッシェルと予測されている。また、期首在庫の増加もあり、総供給量は前年度比 0.4% 増の148 億 9,400 万ブッシェルと予測されている。 需要面では、飼料用が引き続き伸び悩む一方、2007 年 12 月に成立した新エネルギー法に基づ く新たな再生可能燃料基準(RFS2)の拡大もあり、エタノール需要が 45 億ブッシェル(前年度 比 4.7%増)と堅調に増加するとみられている。輸出も若干の回復が予測されており、総需要量 は132 億 4,000 万ブッシェル(同 1.0%増)との予測である。 エタノール需要や輸出の増加等による需要量の増加が供給量の増加を上回る結果、期末在庫は 16 億 5,400 万ブッシェル(前年度比 3.8%減)、在庫率は 12.5%となり、いずれも若干の減少が 予測されている。平均農家受取価格は、年度平均で3.60 ドル/ブッシェルと 3 年度連続で前年度 を下回るものと予測されている。 2009 年秋の収穫の遅れに伴う未収穫のものが依然として農地に残るほか、09 年冬のコーンベ ルトの中部から北西部における積雪による影響もあり、2010 年春は作付けの遅れが懸念されてい る。今後の価格動向や天候等によって、トウモロコシの作付面積が予測よりも増加すれば、近年 の単収の増加等から、その懸念は相当程度払拭されるものとみられる。しかし、過去2 年のよう に春の長雨と低温による作付けの遅れが再び発生すれば、価格への影響は避けられないとの見方 もある。 なお、農務省は、毎年3 月、6 月に実施する農家への調査に基づき、作付意向・在庫予測を公 表している。2 月時点における次穀物年度の予測との増減比較は、毎月の需給見通しと合わせ、 市場への重要なシグナルとして市場関係者の注目を集めている(2010/11 穀物年度における需給 予測は、2010 年 2 月 18 日の農務省農業観測会議(USDA Outlook Forum)における公表に基づ くものである。以下同じ)。

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表Ⅰ-3 米国のトウモロコシの需給 2000/ 01 年度 2001/ 02 年度 2002/ 03 年度 2003/ 04 年度 2004/ 05 年度 2005/ 06 年度 2006/ 07 年度 2007/ 08 年度 2008/ 09 年度 2009/ 10 年度 2010/ 11 年度 作付面積(100 万エーカー) 79.6 75.8 78.9 78.6 80.9 81.8 78.3 93.5 86.0 86.5 89.0 収穫面積(100 万エーカー) 72.4 68.8 69.3 70.9 73.6 75.1 70.6 86.5 78.6 79.6 81.8 単収(ブッシェル/エーカー) 136.9 138.2 129.3 142.2 160.4 148.0 149.1 150.7 153.9 165.2 160.9 総供給量(100 万ブッシェル) 11,639 11,416 10,578 11,190 12,776 13,237 12,510 14,362 13,729 14,834 14,894 期首在庫 1,718 1,899 1,596 1,087 958 2,114 1,967 1,304 1,624 1,673 1,719 生産量 9,915 9,507 8,967 10,089 11,807 11,114 10,531 13,038 12,092 13,151 13,160 輸入 7 10 14 14 11 9 12 20 14 10 15 総需要量(100 万ブッシェル) 9,740 9,820 9,491 10,232 10,662 11,270 11,207 12,737 12,056 13,115 13,240 国内消費 7,799 7,915 7,903 8,332 8,844 9,136 9,081 10,300 10,198 11,115 11,140 飼料、その他 5,842 5,868 5,563 5,795 6,158 6,155 5,591 5,913 5,246 5,550 5,350 食用、産業用等 1,957 2,046 2,340 2,537 2,686 2,981 3,490 4,387 4,953 5,565 5,790 うちエタノール - - 996 1,168 1,323 1,603 2,119 3,049 3,677 4,300 4,500 輸出 1,941 1,905 1,588 1,900 1,818 2,134 2,125 2,437 1,858 2,000 2,100 期末在庫(100 万ブッシェル) 1,899 1,596 1,087 958 2,114 1,967 1,304 1,624 1,673 1,719 1,654 在庫率(%) 19.5 16.3 11.5 9.4 19.8 17.5 11.6 12.8 13.9 13.1 12.5 農家価格(ドル/ブッシェル) 1.85 1.97 2.32 2.42 2.06 2.00 3.04 4.20 4.06 3.70 3.60 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年以降は予測。 2 トウモロコシの穀物年度は、9 月 1 日~8 月 31 日。 3 トウモロコシ 1 ブッシェル=25.401kg。

(出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」 Grains & Oilseeds Outlook 2010.2」

http://usda.mannlib.cornell.edu/MannUsda/viewDocumentInfo.do?documentID=1194 http://www.usda.gov/oce/forum/index.htm#commodity

図Ⅰ-1 トウモロコシの主要市場における現物価格の推移(2006 年 9 月~10 年 1 月)

(出所)米国農務省経済調査局。「Corn: Cash Prices at Principal Markets. No. 2 yellow, Chicago, IL 3/」 http://www.ers.usda.gov/data/feedgrains/Table.asp?t=12 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 (ドル)

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③ 大豆(表Ⅰ-4、図Ⅰ-2) 1)2009/10 穀物年度(2009 年 9 月~10 年 8 月)の需給予測 2009/10 穀物年度の大豆は、前年度比で作付・収穫面積がともに増加するほか、単収も前年度 比4.3 ブッシェル(大豆 1 ブッシェル=27.216 キログラム)増の 44.0 ブッシェル/エーカーとの 見通しである。中西部主要生産州のうち、イリノイ州では、2009 年 10 月以降の急激な気温の低 下と降霜・降雨の影響による秋の収穫の遅れなどが反映され、前年度比で減少した。しかし、比 較的早く収穫を終えたコーンベルト東部での単収は高く、オハイオ州では13 ブッシェル/エーカ ーと大幅に増加する見通しであるほか、最大の生産州・アイオワ州でも増加するとみられている。 ネブラスカ、カンザス、サウスダコタの各州での大幅な増加見通しもあり、生産量は前年度比 13.3%増の 33 億 6,100 万ブッシェルとなり、これまで史上最高であった 2006/07 穀物年度を上 回り、史上最高を更新するとの見通しである。2009/10 穀物年度の単収は、月を追うごとに上方 修正されてきた。シカゴに本社を置く独立系先物取引会社の首席アナリストは、トウモロコシと 同様、大豆も過去の統計からすると、9~10 月に農務省が単収予測を上方修正した場合には、最 終的な単収は更に増加する可能性が高いことを指摘していたが、同年度の推移はこの傾向を改め て裏付けた格好である。 なお、農務省が公表する四半期ごとの穀物在庫によると、前年度第4 四半期となる 2009 年 6 ~8 月の大豆需要は 4 億 5,800 万ブッシェルとなり前年同期比 3%減となった。これを踏まえて 2008/09 穀物年度の需要が従来予測よりも下方修正されたほか、生産も上方修正され、逼迫感を 強めた同年度の需給もやや緩和に向かった。この結果、2009/10 穀物年度の需要予測は増加する ものの、同年度の生産量の増加に加えて期首在庫も従来予測よりも上方修正されたため、期末在 庫は2 億 1,000 万ブッシェルとなり前年度比 52.2%増と緩和に向かうものとみられている。 史上最高との見通しである生産量の増加もあって、2009/10 穀物年度の需給は市場の強材料と はいえないとの見方が支配的である。また、2008/09 穀物年度、干ばつに見舞われた南米産が回 復に向かうことも市場を冷やす材料となる。同年度の深刻な南米主要産地の干ばつは、アルゼン チン、ブラジルの両国産大豆の生産を激減させたが、これにアルゼンチンの大豆輸出税をめぐる 生産者のストライキも加わり、米国産需要が高まる要因となった。しかし、2009 年 2 月時点で 農務省は、2009/10 穀物年度の南米の生産は回復に向かい、アルゼンチンが前年度比 66%増の 5,300 万トン、ブラジルが同 16%増の 6,600 万トンになるとの見通しを示している。 一方、史上最高と予測される旺盛な輸出(大豆ミールを含む。)、国内搾油の堅調な増加等によ って需要も史上最高になるという需給の引締め要因もある。 今後の大豆需給、価格を見通すうえで最も重要なのは、旺盛な需要が続く中国向け輸出である。 世界的な景気後退にもかかわらず、中国の大豆需要は年々増加。米国政府の中国製タイヤに対す るセーフガード発動に際し、中国政府は米国の自動車部品と鶏肉輸入を差し止める構えも見せた。 しかし、大豆がその対象になる気配はなかった。2009/10 穀物年度の中国の大豆輸入は前年度の 4,110 万トンに続き、史上最高の 4,250 万トンに達するものとみられている。これは世界の輸入

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量の実に 54%を占める。この中国向け輸出が大きく寄与し、2009 年 2 月 25 日までの輸出成約 量の累計も3,588 万 4,000 トンと前年の 2,708 万 9,000 トンを大きく上回るペースで推移してい る。中国需要の急激な増加は、中所得者層の増加に伴う食生活の変化という構造的要因のほか、 中国の施策が背景にある。中国国家穀物・油糧種子情報センター(China National Grain and Oils Information Center)等によると、中国は安定的な大豆供給を図る観点から国家備蓄を増加させ、 これを加工業者に競売。一方で、国内産大豆の増加を図るため、その取引にはプレミア価格が上 乗せされ、国内の先物市場ではシカゴ商品取引所(CBOT)よりも高値の取引が行われてきた。 この結果、中国の加工業者は、国内の先物市場で売値を高値でヘッジする一方で、より安価な米 国産大豆を輸入することによって利幅を大きくしてきた。しかし、2009/10 穀物年度以降は、中 国国内の先物市場での取引が清算されるほか、中国産大豆が加工業者の手に渡るよう、中国政府 は加工業者に対して補助金を与える動きなども一部では報じられている。 このような南米産との競合や中国国内の状況を踏まえ、有力コンサルタントやシカゴの市場関 係者の間では、今後の中国向け需要はやや落ち着くため、現在の農務省の輸出見通しは過大であ るとの見方もある。 他の穀物と異なり、産地が北米と南米にほぼ限定される大豆であるが、中国の急激な需要の増 加は、南米の生産増加でカバーしてきた。しかし南米の生産・輸出の減少が、米国需要の増加に つながり、近年、逼迫感を強める要因となった。これは、年々縮小傾向にあった世界の輸出市場 での米国産大豆の割合が、2007/08 穀物年度の 39.7%から 2009/10 穀物年度は 46%台まで上昇 することにも表れている。 史上最高の米国の生産量のほか、南米産の生産の回復によって供給が緩和へ向かうなか、需要 側の重要な要素を占める中国の動向が、今後の需給、価格を占う上で一層重要となる。 平均農家受取価格は、年度平均で 9.45 ドル/ブッシェルとなり、トウモロコシと同様、過去 2 年を下回るものと予測されている。 2)2010/11 穀物年度(2010 年 9 月~11 年 8 月)の需給予測 2010/11 穀物年度の作付面積は、前年度比 0.6%減とわずかに減少して 7,700 万エーカー、単収 は2010 年 2 月時点では趨勢値の 42.9 ブッシェル/エーカー、生産量は史上最高の前年度に次ぐ 32 億 6,000 万ブッシェルと予測されている。生産コストの安定等によるトウモロコシ生産の収益 改善、トウモロコシと大豆の作物ローテーションによるトウモロコシへの作付けシフト等によっ て、大豆の作付けは微減するとの予測である1。また、生産量の微減が期首在庫の増加に相殺され ることによって総供給量も前年度比0.8%減の 34 億 7,800 万ブッシェルと微減にとどまる予測で ある。 1前年度の天候不順による不作から生産が回復する南米(ブラジル、アルゼンチン)の生産量が1 億 1,900 万トン を超え史上最高になるとの予測もあり、2009/10 穀物年度における世界の期末在庫が 7,100 万トンと史上第 2 位 になる。需給緩和が進むことも農家心理に影響を与えている(2010 年 2 月 18 日の農務省農業観測会議(USDA Outlook Forum)から、http://www.usda.gov/oce/forum/2010_Speeches/Speeches/GlauberJ.pdf)。

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需要面では、南米の生産回復と記録的な生産量によって、搾油と輸出需要の減少が予測されて いる。搾油が大豆ミールの輸出の急減や国内タンパク消費の伸び悩みを反映して、前年度比3.8% 減の16 億 5,500 万ブッシェルとなるほか、輸出も前年度同様、南米産との競合や中国需要の落 ち着きなどから同5.4%減の 13 億 2,500 万ブッシェルと予測されている。 このように、総供給量の増加が総需要量の増加を上回るため、期末在庫は更に回復し、3 億 3,000 万ブッシェル(前年度比57.1%増)、在庫率は 10.5%まで回復すると予測されている。 平均農家受取価格は、年度平均で8.80 ドル/ブッシェルと 3 年連続で前年度を下回るものと予 測されている。 表Ⅰ-4 米国の大豆の需給 2000/ 01 年度 02 年度 2001/ 03 年度 2002/ 04 年度 2003/ 05 年度 2004/ 06 年度 2005/ 07 年度 2006/ 08 年度 2007/ 09 年度 2008/ 10 年度 2009/ 11 年度 2010/ 作付面積(100 万エーカー) 74.3 74.1 74.0 73.4 75.2 72.0 75.5 64.7 75.7 77.5 77.0 収穫面積(100 万エーカー) 72.4 73.0 72.5 72.5 74.0 71.3 74.6 64.1 74.7 76.4 76.0 単収(ブッシェル/エーカー) 38.1 39.6 38.0 33.9 42.2 43.0 42.9 41.7 39.7 44.0 42.9 総供給量(100 万ブッシェル) 3,052 3,141 2,969 2,638 3,242 3,322 3,655 3,261 3,185 3,507 3,478 期首在庫 290 248 208 178 112 256 449 574 205 138 210 生産量 2,758 2,891 2,756 2,454 3,124 3,063 3,197 2,677 2,967 3,361 3,260 輸入 4 2 5 6 6 3 9 10 13 8 8 総需要量(100 万ブッシェル) 2,804 2,933 2,791 2,525 2,986 2,873 3,081 3,056 3,047 3,297 3,147 搾油 1,640 1,700 1,615 1,530 1,696 1,739 1,808 1,803 1,662 1,720 1,655 種子 91 90 89 92 88 93 80 93 95 94 86 その他 78 79 42 17 104 101 77 0 6 83 82 輸出 996 1,064 1,044 887 1,097 940 1,116 1,159 1,283 1,400 1,325 期末在庫(100 万ブッシェル) 248 208 178 112 256 449 574 205 138 210 330 在庫率(%) 8.8 7.1 6.4 4.4 8.6 15.6 18.6 6.7 4.5 6.4 10.5 農家価格(ドル/ブッシェル) 4.54 4.38 5.53 7.34 5.74 5.66 6.43 10.10 9.97 9.45 8.80 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年以降は予測。 2 大豆の穀物年度は、9 月 1 日~8 月 31 日。 3 大豆 1 ブッシェル=27.216kg。

(出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」 Grains & Oilseeds Outlook 2010.2」

http://usda.mannlib.cornell.edu/MannUsda/viewDocumentInfo.do?documentID=1194 http://www.usda.gov/oce/forum/index.htm#commodity

図Ⅰ-2 大豆の主要市場における現物価格の推移(2006 年 9 月~10 年 2 月)

(出所)米国農務省経済調査局。「Soybean price, No. 1 yellow, Chicago, $/bushel」

0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00 2006年 9月 12月 3月 6月 2007年 9月 12月 3月 6月 2008年 9月 12月 3月 6月 2009年 9月 12月 (ドル) 2010 年 2 月

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④ 小麦(表Ⅰ-5・6、図Ⅰ-3) 1)2009/10 穀物年度(2009 年 6 月~10 年 5 月)の需給予測 2009/10 穀物年度の小麦は、冬小麦地帯である南部平原地帯での長引く乾燥や、4 月の降霜被 害、またノースダコタ州、ミネソタ州など春小麦地帯での作付けの遅れや作付面積の減少等から、 前年度比で作付面積、単収が減少。この結果、生産量は前年度比11.3%減の 22 億 1,600 万ブッ シェル(小麦1 ブッシェル=27.216 キログラム)になるとの見通しである。 しかし、前年度の2008/09 穀物年度は、逼迫の度合いを高めた 2007/08 穀物年度に比べて需給 が大きく緩和した。このため、2009/10 穀物年度の期首在庫が前年度比 114.7%増と大きく増加 したことから、総供給量は前年度比1.9%増となった。 また、世界的な生産の増加、世界市場での競争力低下による輸出の大幅な減少、厳しい畜産業 界の状況を反映した国内飼料需要の大幅な減少等により、総需要量は前年度比11.8%減となった。 これらの結果、2009/10 穀物年度の期末在庫は、9 億 8,100 万ブッシェルとなり、1987/88 穀物 年度以来22 年ぶりの高水準となり、期末在庫率も 2 年前の 13.2%という 1940 年代以来の低水 準から48.9%まで一気に膨れ上がることが予測されている。 また、2009/10 穀物年度の春小麦の種類別需給予測については、いずれの品種でも生産予測が 事前の市場予測に近い数値で推移したほか、冬小麦の作付面積予測も従前の予測よりも増加した ことなどから、期末在庫はいずれの品種においても堅調に推移すると予測され、基礎的要因が市 場に与える影響は極めて限定的なものとなっている。 ただし、春から夏にかけての南部の乾燥、コーンベルトや北部平原の長雨と低温は、小麦の品 質に影響を与えている。個別品種ごとに見ると、軟質赤色冬小麦は、堅調な供給に加え、需要は 軟調であり、相場も弱含みで推移。長雨と多湿な土壌がアフラトキシン発生の懸念を生じさせ、 輸出の伸び悩みにもつながった。また、硬質赤色冬小麦はタンパク質の含有量が懸念され、これ が硬質赤色春小麦の需要増に部分的につながった。また、品質の良い硬質赤色冬小麦にはプレミ アムも発生した。しかし、世界的な生産の増加、世界市場での競争力低下による輸出の大幅な減 少に加え、国内飼料需要の大幅な減少と食用の伸び悩みにより、需給の引締め傾向はみられない。 投機資金の買いポジションにより、歴史的にみた場合、需給を反映した価格の水準は高止まって はいるが、冬小麦を取り扱うミネアポリス商品取引所の先物価格のほか、各主要市場の現物価格 も落ち着きを示している。2009/10 穀物年度は、品質が懸念される冬小麦の品質回復と高品質作 物へのプレミアム付与、また、高品質の春小麦の供給動向等、需給よりも天候が品質に与える影 響が市場の主な関心事となって推移した。 平均農家受取価格は、年度平均で4.85 ドル/ブッシェルとなり、史上最高を記録した過去 2 年 から大きく下落することが予測されている。 なお、大幅な供給増加傾向を示している米国産小麦であるが、過去と比較すると、作付面積は 大幅に減少している。2009/10 穀物年度の作付面積は 5,910 万エーカーとの見通しであるが、こ れは、1981/82 穀物年度の 8,890 万エーカーと比較すると約 34%減となっており、作付面積全体

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が当時の3 分の 2 程度にまで落ち込んでいる。農務省は、トウモロコシや大豆との収入比較での 劣後傾向、農業法に基づく農作物プログラムのもとでの他の作物との競合激化の進展が一因と分 析している。同省のデータでも、カンザス、ノースダコタというグレート・プレーンズを代表す る小麦の 2 大生産州においては、1980 年代の初頭までは、小麦・トウモロコシ・大豆の総作付 面積のうちに占める小麦の面積は80~90%となっていたのに対し、近年は約 60%まで減少して いることを示している。 また、ローテーションの変化も一因である。元来、米国の小麦は、ローテーション作物の一つ であり、他の作物と交互に作付けされるのが一般的であった。春小麦の主要産地であるノースダ コタではトウモロコシ、大豆、カノーラ等とのローテーションが続いているが、農務省や冬小麦 の主要産地であるカンザス州の小麦生産者協会によると、同州の西部地域では、「小麦→休耕→ソ ルガム、トウモロコシ」というパターンが増加しており、従来主流であった「小麦→ソルガム、 トウモロコシ」の作物ローテーションが減少しているとしている。このことは、休耕が増え、小 麦の作付けが2 年に 1 度から 3 年に 1 度に変わってきていることを意味する。 2)2010/11 穀物年度(2010 年 6 月~11 年 5 月)の需給予測 2010/11 穀物年度の作付面積は、前年度比 9.0%減の 5,380 万エーカーとの予測である。特に、 2009 年秋の収穫の遅れと降雨によって多くの州で作付けが減少したことが要因となり、冬小麦の 作付面積が3,710 万エーカーとなり 1913 年以来の低水準に落ち込むとの予測である。北部平原 では、春小麦の作付け増加によって冬小麦の作付けの減少を一部相殺するものの、全体としては、 高単収の軟質赤色冬小麦の作付面積の減少や各品種平均の単収の低下によって、生産量は前年度 比12.2%減の 19 億 4,500 万ブッシェルとなることが予測されている。このような生産量の減少 にもかかわらず、需給緩和によって期首在庫が前年度比49.3%増となることから、総供給量は同 1.6%増の 30 億 3,600 万ブッシェルとなるものとみられている。これは、2000/01 穀物年度以来、 10 年ぶりの高水準である。 需要面では、総需要量が前年度比4.4%増の 20 億 9,600 万ブッシェルとなり、総供給量の増加 を上回るものとの予測である。飼料向け等の国内消費のほか、輸出もやや回復に向かうが、世界 的な生産増加によって米国産小麦の競争力は引き続き限定的なものであるとみられている。 これらの結果、期末在庫はやや減少して前年度比4.2%減の 9 億 4,000 万ブッシェル、期末在 庫率も44.8%とやや減少するものの、過剰在庫による価格低下圧力となる水準を保つものと予測 されている。 平均農家受取価格は、年度平均で 4.90 ドル/ブッシェルと前年度比でやや上昇するが、国内価 格は米国、世界ともに供給過剰で推移することから、大きな価格低下圧力を受け続けるものとみ られている。

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表Ⅰ-5 米国の小麦の需給 2000/ 01 年度 02 年度 2001/ 03 年度 2002/ 04 年度 2003/ 05 年度 2004/ 06 年度 2005/ 07 年度 2006/ 08 年度 2007/ 09 年度 2008/ 10 年度 2009/ 11 年度 2010/ 作付面積(100 万エーカー) 62.6 59.6 60.3 62.1 59.7 57.2 57.3 60.5 63.2 59.1 53.8 収穫面積(100 万エーカー) 53.1 48.6 45.8 53.1 50.0 50.1 46.8 51.0 55.7 49.9 45.7 単収(ブッシェル/エーカー) 42.0 40.2 35.0 44.2 43.2 42.0 38.6 40.2 44.9 44.4 42.6 総供給量(100 万ブッシェル) 3,272 2,941 2,460 2,899 2,775 2,726 2,501 2,620 2,932 2,988 3,036 期首在庫 950 876 777 491 546 540 571 456 306 657 981 生産量 2,232 1,957 1,606 2,345 2,158 2,105 1,808 2,051 2,499 2,216 1,945 輸入 90 108 77 63 71 81 122 113 127 115 110 総需要量(100 万ブッシェル) 2,396 2,164 1,969 2,353 2,235 2,155 2,045 2,314 2,275 2,007 2,096 国内消費 1,334 1,201 1,119 1,194 1,169 1,152 1,137 1,051 1,260 1,182 1,246 食用 950 926 919 912 910 915 938 948 927 940 1,036 種子 80 84 84 80 78 78 82 88 75 72 飼料、その他 304 191 116 203 182 160 117 16 258 170 210 輸出 1,062 962 850 1,158 1,066 1,003 908 1,263 1,015 825 850 期末在庫(100 万ブッシェル) 876 777 491 546 540 571 456 306 657 981 940 在庫率(%) 36.6 35.9 24.9 23.2 24.2 26.5 22.3 13.2 28.9 48.9 44.8 農家価格(ドル/ブッシェル) 2.62 2.78 3.56 3.40 3.40 3.42 4.26 6.48 6.78 4.85 4.90 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年以降は予測。 2 小麦の穀物年度は、6 月 1 日~5 月 31 日。 3 小麦 1 ブッシェル=27.216kg。

出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」 「Grains & Oilseeds Outlook 2010.2」

http://usda.mannlib.cornell.edu/MannUsda/viewDocumentInfo.do?documentID=1194 http://www.usda.gov/oce/forum/index.htm#commodity 表Ⅰ-6 米国の小麦の種類別需給 (単位:100 万ブッシェル) 硬質赤色 冬小麦 硬質赤色 春小麦 軟質赤色 冬小麦 白色小麦 デュラム 小麦 合計 2008/09 年度 総供給量 1,174 625 702 300 130 2,932 期首在庫 138 68 55 37 8 306 生産量 1,035 512 614 255 84 2,499 総需要量 919 483 531 236 105 2,275 国内消費 472 273 332 100 81 1,260 輸出 447 210 199 136 24 1,015 期末在庫 254 142 171 64 25 657 2009/10 年度 総供給量 1,174 730 599 311 174 2,988 期首在庫 254 142 171 64 25 657 生産量 919 548 404 237 109 2,216 総需要量 753 458 396 271 129 2,007 国内消費 443 263 291 101 84 1,182 輸出 310 195 105 170 45 825 期末在庫 421 272 203 40 45 981 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年は予測。 2 総供給量には、輸入を含む。

(出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」

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図Ⅰ-3 小麦の主要市場における現物価格の推移(2006 年 6 月~10 年 1 月)

(出所)米国農務省経済調査局。「Wheat: Cash Prices at Principal Markets」 http://www.ers.usda.gov/Data/Wheat/YBtable19.asp ⑤ コメ(表Ⅰ-7・8) 1)2009/10 穀物年度(2009 年 8 月~10 年 7 月)の需給予測 2009/10 穀物年度は、価格上昇に伴う中・短粒種の作付増加、アーカンソー、ミシシッピ両州 等の南部やカリフォルニア州での作付面積の増加から、作付面積は 314 万エーカー(前年度比 4.7%増)となるほか、前年度に南部を襲ったハリケーンの影響の回復、カリフォルニア、テキサ ス両州が好天に恵まれたことなどから単収が2007/08 穀物年度に次ぐ史上第 2 位となる 7,085 ポ ンド(1 ポンド=0.45359 キログラム、1 ハンドレッドウェイト(cwt)=100 ポンド=45.359 キ ログラム)/エーカーへと上向く見通しである。生産量は、全体の単収の増加のほか、中・短粒種 の収穫面積の増加見通しから2 億 1,990 万 cwt(同 8.0%増)となり、2005/06 穀物年度以来の高 水準となるものとみられている。期首在庫は微増に止まったものの、タイ、インド、パキスタン からの長粒種の輸入増加によって、輸入全体が史上最高を記録した2007/08穀物年度に迫る2,100 万cwt(前年度比 9.4%増)となる見通しである。また、長粒種、中・短粒種ともに供給量が増加 し、期首在庫、輸入も増加することから、総供給量は 2 億 7,130 万 cwt(前年度比 7.5%増)と 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 2006年6 月 10月 2月 2007年6 月 10月 2月 2008年6 月 10月 2月 2009年6 月 10月 No. 2 soft red winter, Chicago, IL

No. 1 hard red winter (ordinary protein), Kansas City, MO

No. 1 dark northern spring (13% protein), Minneapolis, MN

2010 年 1 月

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堅調に推移する見通しである。 需要面では、中・短粒種の国内消費が3,100 万 cwt(前年度比 22.5%増)と大きく増加するこ とに伴って、全体の国内消費は1 億 3,050 万 cwt(前年度比 1.6%増)と史上最高になるものと みられている。また、中東向けや南米向けは減少との見通しであるが、メキシコ等の中米諸国向 けの輸出が増加するほか、品種別にみても長粒種、中・短粒種ともに輸出が増加するとみられる ことから、輸出全体では1 億 100 万 cwt(前年度比 7.9%増)との見通しである。 総供給量の増加が総需要量の増加を上回るため、期末在庫・在庫率の増加が続き、期末在庫は 前年度比30.9%増の 3,980 万 cwt、期末在庫率は 17.2%との予測である。 なお、2008 年春の価格高騰など世界的にコメの上昇傾向が続き、2009/10 穀物年度の平均農家 受取価格も14.15 ドル/cwt と依然記録的高水準を維持し、短期融資保証価格(ローンレート)(6.50 ドル/cwt)を大きく上回る見通しである。ただし、史上最高となった前年度からは下落するもの とみられている。この要因について、農務省経済調査局コメ市場首席アナリストのナタン・チャ イルズ氏は、米国産コメの全体の生産や総供給量の増加に加え、品種別の要素について解説して いる。これによると、中・短粒種は国内生産の増加のほか、世界的に需要がほとんど増加してい ないことを指摘。これが大きく作用し、総供給量が微増にとどまるほか、インドやフィリピンの 悪天候、タイの在庫保持による国際貿易価格の下支え傾向によって価格の下げ幅が小幅にとどま るという長粒種の基礎的要素を相殺しているとしている2。 2)2010/2011 穀物年度(2010 年 8 月~11 年 7 月)の需給予測 2009 年 2 月現在、2010/2011 穀物年度は、生産コストの上昇、作付面積の微増、趨勢値予測に よる単収増加、期首在庫の大幅な増加に伴う総供給量の増加、史上最高を更新する国内消費と輸 出の微増による総需要量の増加、そして、期末在庫の更なる増加が予測されている。 作付面積は、長粒種の増加が南部各州における中・短粒種の減少分を相殺し、全体では320 万 エーカー(前年度比 1.9%増)となる予測である。趨勢値予測による単収は、史上最高を記録し た2007/08 穀物年度には及ばないものの、史上第 2 位となった前年度を上回る 7.136 ポンド/エ ーカーへ増加するとみられている。また、生産量は、長粒種の増加によって、2 億 2,600 万 cwt (同 2.8%増)となり、2004/05 穀物年度以来の高水準になるとみられている。さらに、期首在 庫も大きく増加し、総供給量は2 億 8,780 万 cwt(前年度比 6.1%増)と増加し続けるとの予測 である。 需要面では、国内消費が史上最高を更新する 1 億 3,300 万 cwt(前年度比 1.9%増)となるほ か、生産量の増加と価格下落による競争力の回復が要因となり、輸出も1 億 500 万 cwt(同 4.0% 増)と堅調に推移するとみられている。エジプトの輸出制限やオーストラリアの輸出減少によっ て中・短粒種は前年並みの高水準を維持するものとみられるが、生産量と同様、主要市場国にお ける競争力の回復によって長粒種の輸出が増加し、これが全体の輸出増加に寄与するものとみら 2米国コメ連合会年次総会(2009 年 12 月 9~11 日、ルイジアナ州ニューオーリンズ)での講演より。http://ww w.usarice.com/doclib/233/4465.pdf

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れている。 前年度と同様、総供給量の増加が総需要量の増加を上回るため、期末在庫・在庫率の増加が続 き、期末在庫は前年度比25.1%増の 4,980 万 cwt、期末在庫率は 20.9%に上昇するとみられてお り、期末在庫率は1992/93 穀物年度以来の高水準と予測されている。 農家受取価格は、米国の生産量増加と世界的な価格の下落傾向によって、長粒種、中・短粒種 ともに下落し、全体では13.00 ドル/cwt と 2 年連続で下落することが予測されている。 表Ⅰ-7 米国のコメの需給 2000/ 01 年度 2001/ 02 年度 2002/ 03 年度 2003/ 04 年度 2004/ 05 年度 2005/ 06 年度 2006/ 07 年度 2007/ 08 年度 2008/ 09 年度 2009/ 10 年度 2010/ 11 年度 作付面積(100 万エーカー) 3.06 3.33 3.24 3.02 3.35 3.38 2.84 2.76 3.00 3.14 3.20 収穫面積(100 万エーカー) 3.04 3.31 3.21 3.00 3.33 3.36 2.82 2.75 2.98 3.10 3.17 単収(ポンド/エーカー) 6,281 6,496 6,578 6,670 6,988 6,636 6,898 7,219 6,846 7,085 7,136 総供給量(100 万 cwt) 229.2 256.9 264.8 241.7 269.2 278.1 258.2 261.6 252.4 271.3 287.8 期首在庫 27.5 28.5 39.0 26.8 23.7 37.7 43.0 39.3 29.4 30.4 39.8 生産量 190.9 215.3 221.0 199.9 232.4 223.2 194.6 198.4 203.7 219.9 226.0 輸入 10.9 13.2 14.8 15.0 13.2 17.1 20.6 23.9 19.2 21.0 22.0 総需要量(100 万 cwt) 200.7 218.0 238.0 218.0 231.5 235.1 218.8 232.2 222.0 231.5 238.0 国内消費 117.5 123.3 113.4 115.0 122.7 120.2 128.1 127.4 128.4 130.5 133.0 輸出 83.2 94.7 124.6 103.1 108.8 114.9 90.8 104.7 93.6 101.0 105.0 期末在庫(100 万 cwt) 28.5 39.0 26.8 23.7 37.7 43.0 39.3 29.4 30.4 39.8 49.8 在庫率(%) 14.2 17.9 11.3 10.9 16.3 18.3 18.0 12.7 13.7 17.2 20.9 農家価格(ドル/cwt) 5.61 4.25 4.49 8.08 7.33 7.65 9.96 12.80 16.80 14.15 13.00 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年は予測。 2 コメの穀物年度は、8 月 1 日~7 月 31 日。 3 1 ポンド=0.45359kg、1cwt=100 ポンド=45.359kg

(出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」

「Grains & Oilseeds Outlook 2010.2」

http://usda.mannlib.cornell.edu/MannUsda/viewDocumentInfo.do?documentID=1194 http://www.usda.gov/oce/forum/index.htm#commodity 表Ⅰ-8 米国の長/中・短粒種別コメの需給 長粒種 中・短粒種 2006/ 07 年度 2007/ 08 年度 2008/ 09 年度 2009/ 10 年度 2006/ 07 年度 2007/ 08 年度 2008/ 09 年度 2009/ 10 年度 収穫面積(100 万エーカー) 2.19 2.05 2.35 2.27 0.64 0.70 0.63 0.84 単収(ポンド/エーカー) 6,727 6,980 6,522 6,743 7,484 7,924 8,063 8,010 総供給量(100 万 cwt) 194.0 189.4 188.2 190.8 63.4 70.8 61.9 78.1 生産量 147.1 143.2 153.3 152.7 47.5 55.2 50.5 67.1 総需要量(100 万 cwt) 165.4 170.4 168.1 169.5 53.4 61.8 53.9 62.0 国内消費 93.4 91.3 103.0 99.5 34.6 36.1 25.3 31.0 輸出 72.0 79.1 65.1 70.0 18.8 25.7 28.5 31.0 期末在庫(100 万 cwt) 28.5 19.0 20.1 21.3 10.0 9.1 8.0 16.1 (注)1 2008/2009 年は見通し。2009/2010 年は予測。

(出所)米国農務省「World Agricultural Supply and Demand Estimates 2010.2」

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⑥ 畜産物(表Ⅰ-9~11) ア 牛肉 2009 年の生産量は、260 億 6,500 万ポンド(前年比 2.2%減)との見通しである。1 頭当た りの枝肉重量は前年比で増加傾向にあるものの、年前半の主要7 州における大規模フィードロ ットにおける飼養頭数が前年比で減少を続けるなど、フィードロットの飼養頭数が大きく減少。 総飼養頭数も前年を下回って推移して1951 年以来の低水準となったほか、2005 年以降、増加 が続いてきたと畜頭数もほとんどの月で前年を下回った。2010 年 1 月の肉牛在庫も前年比 0.8%減となっている。この背景には、2008 年半ばを境にした価格の急落がある。生産コスト も下落する一方で、牛肉の生産者販売価格、卸売価格、小売価格はいずれも前年を下回って推 移。損益分岐点を下回る厳しい年となったことが、飼養、生産縮小につながった。牛海綿状脳 症(BSE)感染牛確認後の 2004 年以降着実に回復をみせ、業界を牽引してきた輸出も、世界 的な景気後退に伴う需要減少や主要市場国への減少予測等から、09 年は歯止めがかかった。 特に、メキシコ、カナダ向けが大きく減少したことが影響し、輸出量は18 億 7,100 万ポンド (前年比0.8%減)との見通しである。全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、09 年の活 動方針の中で貿易問題を最重要課題に掲げ、韓国、パナマ、コロンビアとの自由貿易協定(FTA) 早期承認を要求。このほか、日本市場での米国産牛の輸入月齢制限の段階的削減を求めていく 方針を示したが、オバマ政権における貿易問題の優先順位は低く、具体的な進展はみられなか った。 2010 年は、去勢牛や未経産牛のと畜頭数の減少によって総飼養頭数が 1951 年以来の水準 に落ち込むとみられるほか、フィードロットへの新規導入頭数が前年並みとみられることから、 生産量は更に減少して257 億 5,200 万ポンド(前年比 1.2%減)との予測である。しかし農務 省は、トウモロコシ価格の下落がフィードロットへの導入を増加させる可能性があり、導入頭 数や1 頭当たりの枝肉重量にもよるが、これが実現すれば、と畜・生産量の増加は図られると の見方を示している。また、米国の生産量の減少もあり、輸入は27 億 7,500 万ポンド(前年 比5.0%増)になると予測されている。 一方、輸出は、世界経済の回復による需要改善を予測し、20 億 4,000 万ポンド(前年比 9.0% 増)と再び増加に向かうとみられている。前年に続いて国内消費や1 人当たりの消費が減少す るものとみられることもあり、依然として輸出依存度を高める傾向が継続。2010 年の生産量 に占める輸出の割合は7.9%と更に増加するほか、BSE 感染牛確認前である 2003 年の輸出量 の80%以上まで回復すると予測されている。 NCBA は、2010 年の活動方針の中でも引き続き貿易問題を最重要課題とする方針を維持し ており、円高ドル安の中で日本市場への関心も依然として高い。日本の大手自動車メーカーの リコール問題との関係に言及し、米国が同社の製品の輸入制限をしていないことと対比して、 日本の米国産牛の輸入月例制限の維持を批判する農業州選出の上院議員の圧力も強まってい る。

(28)

イ 豚肉 2009 年は、飼料価格の低下傾向によって 1 頭当たり枝肉重量は前年比で増加して推移した が、肥育豚や繁殖豚の飼養頭数が減少。と畜頭数もほとんどの月で前年を下回って推移し、近 年一貫して増加してきた傾向に歯止めがかかった。これらの結果、生産量は230 億 1,300 万ポ ンド(前年比 1.5%減)との見通しである。国内消費や 1 人当たり消費はやや持ち直したもの の、輸出が41 億 5,100 万ポンド(前年比 11.1%減)となるなど、景気後退に伴う世界的な需 要減少によって前年に大きく増加(同48.6%増)したものが大きく減少に転じた。前年の需要 減少による期首在庫の大きな増加もあって、生産量の減少による価格の下支え効果を相殺し、 肥育豚価格や豚肉卸・小売価格はいずれも下落して推移することとなった。なお、09 年 4 月に 発生し、豚インフルエンザと称された新型インフルエンザウィルスA/H1N1 騒動の豚肉消費に 与える影響が深刻に懸念された。ミネソタ州、インディアナ州では、ヒトから豚への感染も報 告されたが、豚肉消費との関連性はないことが明らかになっており、市場に影響を与えるには 至らなかった。一方、ロシアが米国産豚肉・豚肉加工品に抗生物質テトラサイクリンが残留し ていることを理由にして、米国内の約 30 工場からロシアへの輸入禁止措置を講じた影響は大 きく、これも輸出の減少につながることとなった。 2010 年の生産量は、淘汰が引き続き進むことなどから、225 億 4,000 万ポンド(前年比 2.1% 減)との予測である。農務省が09 年 12 月に公表した四半期報告では、09 年下半期における 肉豚からの繁殖用雌豚の分娩は前期比約3%減となったほか、10 年上半期も同 2.5%減と減少 傾向が続くとされている。母豚1頭当たりの子豚生産頭数は大きく増加し、これが分娩の減少 を一部相殺するものとみられている。2008 年農業法に基づいて 08 年 9 月に原産国表示制度が 施行された影響から、カナダからの輸入生体豚(肥育素豚、と畜場直行豚)の輸入は引き続き 10%減のペースで減少し続け、市場に出回る豚の頭数は今後も減少するとみられている。一方、 輸出は、牛肉と同様、世界経済の回復による需要改善を予測し、45 億ポンド(前年比 8.4%増) とみられている。ロシア向け輸出についても、高官レベルでの協議、輸出要件の合意を経て、 再開される見通しが立ったことが明らかにされている。このような状況で、国内消費、1 人当 たりの消費が減少に転じるなか、生産量に占める輸出の割合が高まると予測されている。 ウ 鶏肉 2009 年のブロイラー生産は、前年後半からのふ化羽数の減少等から、351 億 900 万ポンド (前年比3.8%減)との見通しである。鶏肉は他の食肉と比較しても、07 年以降の飼料価格高 騰の影響をより強く受けた。養鶏農家の収支は悪化して、米国最大手の鶏肉加工ピルグリムプ ライド社は経営破綻。生産は減少してきたが、09 年は 08 年半ばに始まった生産の減少がより 鮮明になり、前年比での減少は1970 年代初頭以来となった。輸出は、09 年初頭は前年比で増 加して推移したものの、他の食肉同様、通年では減少に転じ、68 億 200 万ポンド(前年比 2.3% 減)と予測されている。最大の輸出国で輸出量の約 30%を占めるロシアとの間では前年に新 規の関税割当に合意したが、やはり割当が制約になったほか、景気後退や輸入国側の信用問題

(29)

もあって減少に転じた。 2010 年のブロイラー生産は、最近のブロイラー価格の持ち直しや世界経済の回復による需 要増加予測等から、四半期ごとに増加に転じて第 4 四半期では大きく増加。通年では 355 億 1,600 万ポンド(前年比 1.2%増)とわずかに回復すると予測されている。生産と供給計の増 加に引っ張られる形で、国内消費と1 人当たり消費も回復するとみられているが、輸出は 2 年 連続で減少し、58 億 2,500 万ポンド(前年比 14.4%減)と大きく減少すると予測されている。 これは10 年 1 月から開始されたロシアによる塩素消毒した鶏肉の輸入禁止措置のほか、米国 政府の中国製タイヤに対するセーフガード発動への中国政府が報復措置の発動を表明したこ とも影響するものとみられている。10 年 2 月現在、中国政府は、米国産の鶏肉輸入に対して アンチダンピング課税(43.1~105.4%)を賦課する構えを示しており、今後の交渉の行方が 注目されている。

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