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米国のバイオ燃料の現状及び課題

ドキュメント内 (1)2008年農業法制定に至る背景・経緯 (ページ 51-59)

1.エタノールの需給及び価格

(1)エタノールの生産

① エタノールの生産工場数と生産能力

2010年2月末現在、米国では189 工場が稼動しており、これらの工場の生産能力は118

億7,740万ガロンとなっている(図Ⅱ-1)。工場の一部には、マイロ(ソルガムの一種で家畜

飼料となるもの)、大麦、サトウキビの茎、飲料残さ等を原料とするものもあるが、ほとんどは トウモロコシを原料としている。

このほか、建設・拡張中の工場の生産能力が 14億3,200万ガロンとなっている。仮に、こ れらの工場が全て稼動したとすると、米国のエタノール生産能力は、144億6,040万トンにな ると見込まれている30

図Ⅱ-1 米国のエタノール工場数と生産能力

(注)20102月末現在。

(出所)再生可能燃料協会(RFA) 2010 Ethanol Industry Outlook http://www.ethanolrfa.org/industry/statistics/

30RFA2010 Ethanol Industry Outlookhttp://www.ethanolrfa.org/industry/outlook/)から。なお、稼働中 のエタノール工場の数、生産能力等については、公表媒体、公表時点によって若干のばらつきがあり、エタノー ル業界の専門誌「Ethanol Producer Magazine」も、これらの統計(http://www.ethanolproducer.com/plant-li st.jsp)を公表している。

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

100万ガロン) 工場数

(年)

エタノール生産能力 エタノール工場数

② エタノールの生産量

景気回復に力強さを欠くにもかかわらず、米国の2009年におけるエタノール生産量は、107

億5,800万ガロン(1ガロン=約3.8リットル)と史上最高を更新し、着実な増加を続けてい

る(図Ⅱ-2)。

また、米国のエタノール生産量は、2005 年にブラジルを抜いて世界 1 位となっているが、

09年も2位のブラジルとの差を広げている。

2009年の2位以下は、ブラジル(65億7,789万ガロン)、EU(10億3,952万ガロン)、中 国(5億4,155万ガロン)、タイ(4億3,520万ガロン)、カナダ(2億9,059万ガロン)等とな り、世界全体では195億3,499万ガロンとなっている。世界の生産量に占める米国の生産量の 割合は、約55%となっている31

図Ⅱ-2 米国のエタノール年間生産量

(出所)米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA

http://tonto.eia.doe.gov/dnav/pet/hist/LeafHandler.ashx?n=PET&s=M_EPOOXE_YOP_NUS_1&f=A

また、米国の2009年における月間生産量については、12月に10億2,581万ガロンを記録。

これは、10、11月にそれぞれ史上最高を記録したが、それをさらに更新することになった(図Ⅱ

-3)。年間で最も生産量が少なかった2月(7億6,104万ガロン)と比較すると、12月は34.8% の増加である。生産量の増加は、2008~09 年当初にかけての厳しい経済状況のもと、生産を休 止した工場が生産を再開したほか32、新たな工場が生産を開始したことによるものとみられる。

この背景には、2007年12月に成立したエネルギー自立・安全保障法(新エネルギー法)に基づ

31RFA2010 Ethanol Industry Outlook

32米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が20094月に公表した「消費・電力における再生可能エネルギ ーの消費傾向」によると、0809年の厳しい経済状況により09年初めまでに全米のエタノール工場の9%が破

http://www.eia.doe.gov/cneaf/solar.renewables/page/trends/rentrends.html 0

2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000

1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

(100万ガロン)

(年)

き、再生可能燃料基準(RFS)が改定されてバイオ燃料の使用義務量が従来の約5倍の360億ガ ロンへと大幅に引き上げられたことが大きく影響している。

また、RFAの統計によると、2009年2月末現在、189工場が稼働している一方で、工場その ものは211存在している。すなわち、回復傾向にあるとはいえ、09年2月末でもなお、22の工 場が建設・休止中である(11工場が建設中、11工場が休止中)。

一方、2010年2月時点において最新の農務省のトウモロコシ需給見通しによると、2009/10穀 物年度(2009年9月~10年8月)におけるエタノール需要は、43億ブッシェルとされている。

休止中の11工場が生産を再開し、200工場の生産能力が全て稼働すると年間のエタノール生産量

は130億2,840万ガロンとなる33。仮に、原料全量をトウモロコシに頼ると仮定した場合は、11

億5,100万ガロンのエタノール生産のために、更に4億ブッシェルを超えるトウモロコシを要す

る計算となる。また、建設中の工場の生産能力14億3,200万ガロンも考慮すると、最大で25億

8,300万ガロンの生産のために、9億ブッシェルを超えるトウモロコシを要する計算となる34

図Ⅱ-3 米国のエタノール月間生産量(2009年)

(出所)米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA

http://www.eia.doe.gov/oil_gas/petroleum/data_publications/petroleum_supply_monthly/psm_historical.html

33RFA2010 Ethanol Industry Outlook

34トウモロコシからのエタノール生産の歩留まりを1ブッシェル=2.769ガロンとして計算(2010216 17日、第15回全国エタノール会議(フロリダ州オーランド、RFA主催)におけるThe ProExporter Network 社のビル・フロリダ氏の講演から)

0 200 400 600 800 1,000 1,200

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

(100万ガロン)

③ エタノールの生産工場の分布

ア エタノール工場の偏在と流通インフラ整備

エタノールの生産工場は、主な原料であるトウモロコシの主要産地である中西部に集中し ており、その傾向に変化はみられない。2009/10 穀物年度におけるトウモロコシ生産上位 3 州(アイオワ、イリノイ、ネブラスカ)が、エタノール生産量上位3州となっている(表Ⅱ

-1・2)。

また、生産工場の所在州は、生産量1位から順に、アイオワ、ネブラスカ、ミネソタ、サ ウスダコタ、イリノイとなっている(表Ⅱ-3)。穀物メジャーでもあるアーチャー・ダニエ ルズ・ミッドランド(ADM)が本社を構えるイリノイ州(ディケーター)は1工場当たりの 生産量が多いことが分かる。

このような生産量や工場の中西部への偏在は、東西海岸に大消費地を抱える米国において、

バイオ燃料・エタノールの振興、流通と消費の拡大を図る上で大きな課題となっている。現 在主流となっている鉄道やトラック輸送では、その拡大は難しい。

このため、2008年6月に成立した2008年農業法では、バイオ燃料の国内生産拡大に伴う インフラニーズの調査、09年2月に成立した米国景気対策法(米国再生・再投資法)ではイ ンフラ整備に対する税額控除措置等を認めている35。また、10年2月現在でも、連邦議会に は再生可能燃料向けのパイプラインを中西部から他の地域へ敷設するに際し、融資保証

(80%まで)をする法案が提出されている36。エタノール推進団体のグロース・エナジー

(Growth Energy)は、政府の融資保証のもとで民間企業が敷設するエタノール向けパイプ ラインは、国内生産されたエタノールの選択・利用の拡大につながるとして、これを強く支 持している37。米国最大のエタノール企業ポエット(POET)とパイプライン会社Magellan は、共同事業により中西部のエタノール工場から東海岸ニュージャージー州リンデンまで、

1万8,000マイルのパイプライン敷設の可能性調査を実施し、早ければ14年にも稼働させる

計画を明らかにしている38。Magellanは、Buckeye Partnersとも、アイオワ州北西部から ニューヨーク港へ1万7,000マイルのエタノール向けパイプラインの敷設の可能性調査を行 っている。

この他、パイプライン会社のKinder Morgan も、フロリダ州のタンパ~オーランドの約 110 マイル、変性エタノール輸送のパイプラインを敷設し、米国初の商業輸送を既に行って

いる。Morgan のフロリダ州内の顧客需要は、ほぼ全量このパイプライン輸送で賄われてお

り、今後の拡大についても検討が進められている39

35平成20年度(20093月発行)日本貿易振興機構(ジェトロ)「食料価格をめぐる米国の現状および関係政策 の概要」93138ページ参照。

36ボスウェル下院議員提出、H.R.4674

37http://www.growthenergy.org/2009/news/showItem.asp?id=139

38 http://www.magellanlp.com/news/2010/20100113_2.htm

39http://www.kindermorgan.com/business/products_pipelines/central_florida.cfmhttp://www.kindermorgan.

表Ⅱ-1 米国の州別トウモロコシ生産量

(単位:1,000ブッシェル)

順位 州 生産量

1 アイオワ 2,438,800

2 イリノイ 2,065,000

3 ネブラスカ 1,575,300

4 ミネソタ 1,251,250

5 インディアナ 933,660 6 サウスダコタ 791,100

7 カンザス 598,300

8 オハイオ 546,360

9 ウィスコンシン 448,290

10 ミズーリ 446,760

総合計 13,151,062

(注)年度は2009/10穀物年度(200991日~10831日)。

(出所)米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)(20102月末時点)

http://www.nass.usda.gov/QuickStats/PullData_US.jsp

表Ⅱ-2 米国の州別エタノール生産量

(単位:100万ガロン)

順位 州 生産量

1 アイオワ 3,183.0

2 イリノイ 1,383.0

3 ネブラスカ 1,311.0

4 ミネソタ 1,112.6

5 サウスダコタ 1,016.0

総合計 11,877.4

(注)20101月末現在。

(出所)ネブラスカ州政府 http://www.neo.ne.gov/statshtml/121.htm

表Ⅱ-3 米国の州別エタノール工場数

順位 州 工場数

1 アイオワ 40

2 ネブラスカ 25

3 ミネソタ 23

4 サウスダコタ 15

5 イリノイ 14

総合計 211

(注)20102月末現在。建設・休止中の工場を含む。

(出所)再生可能燃料協会(RFA) http://www.ethanolrfa.org/industry/locations/

イ エタノールの工場の所有

新エネルギー法の前身に当たる 2005 年エネルギー政策法においては、連邦貿易委員会

(FTC)に対して、バイオ燃料に関する年間報告書の作成が求められている。

2009年12月1日に公表された第5回目の報告では、エタノール工場の生産能力、生産量 の寡占化は進んでいないことが明らかにされている。これによると、09年9月の時点で、160 の企業がエタノールを生産しているが、これは前年と同じであった。また、大企業の生産能 力シェアも11%となり、これも前年と変わらなかった。経年でみると、07年の16%、06年 の21%、05年の26%と、2000年の41%以後下落している40

2008~09 年の景気後退、信用悪化により、エタノール工場の新規建設の中止や延期が相

次ぎ、保有資産の劣化は既存工場の買収を招いた。通常は、大企業が中小企業を買収するた め、このような事象は企業の寡占化につながる。しかし、買収を重ねてエタノール業界2位 の生産能力を有していたベラサン・エナジーが破綻するなど大手の破綻も発生。既存企業に よる再分配が寡占化率を下落させ、寡占化の進捗に歯止めをかける結果となった。

報告書では、単体の生産者・流通業者、一部の企業グループが価格操作や反競争的行為を 行うことは困難な業界構造が保たれているとしている。なお、新規工場の建設はほぼ終息に 向かう一方で、建設・拡張中の工場は今後12~18カ月、すなわち2010年にはほぼ全てが稼 働する予定となっている。

従来は、地元の農家出資による形態も多かったが、これが減少傾向にあり、大企業(ア ーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)、ポエット(POET)、バ レロ(Valero)、カ

ーギル(Cargill)等)と中小企業が比較的バランス良く参入しているということができる。

この中で顕著な動きを示すのが、エタノール生産に参入した最初の大手原油生産・精製業 者のバレロである。独立系大手であるバレロは、破綻したベラサン・エナジーの工場の買収 に始まり、その後も3つのエタノール工場を2億7,200万ドルで買収。さらに、ネブラスカ、

サウスダコタ、ミネソタ、ウィスコンシン、オハイオの各州と広い範囲で買収を手掛けてい る。10 番目の工場となるウィスコンシン州の工場は、チャプター11 入りしたリニュー・エ

ネジー(Renew Energy)社から7,200万ドルで買収した。この工場の年間生産能力は1億

1,300万ガロンであり、10工場の合計年間生産能力は11億3,000万ガロンとされ、米国最

大級のエタノール企業の1つに躍進している。

2010年1月27日のバレロの公表によると、09年第4四半期及び09年通年の原油精製部 門は不振で赤字であったが、エタノール部門は好調であり、09年第4四半期は9,400万ドル、

09年通年では1億6,500万ドルの利益を出すなど好調な業績を示している41。トウモロコシ 等穀物由来エタノール生産には批判も強いが、バレロの積極的な投資の背景には、安価な工 場の買収、新エネルギー法に基づく新たな再生可能燃料基準(RFS2)の順守戦略のほか、

40http://www.ftc.gov/os/2009/12/091201ethanolreport.pdf

41http://www.valero.com/NewsRoom/Pages/PR_20100127_1.aspxhttp://media.corporate-ir.net/media_files/ir

ドキュメント内 (1)2008年農業法制定に至る背景・経緯 (ページ 51-59)

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