10m
沈下量 計測器
軌道変状監視範囲
箱根方→
←新宿
小田急線下り線
小田急線上り線
軌道変状監視システム
・計測頻度の設定・変更
・管理値の設定
・計測結果の表示・出力
・計測結果の日常監視及び工事への反映
・計測結果異常時の警報鳴動
・緊急時の連絡・対応
・計測結果の整理・報告
・監視システムの正常確保 計 測 室
(現場事務所内)
ADSL回線
計測結果に異常を通知 計測結果に異常が発生した場合、あらかじめ 登録した小田急電鉄担当者、JV職員の携帯電 話に結果をメール通知する。通知は登録順に 通知し、登録数に制限はない。
NTT電話 一般専用回線
AC100
施工者担当者による監視 日常監視 警報器
計測結果に異常が発生した場合、警告灯(赤・
黄・緑)と警報ブザーが鳴動する。警告灯は管 理値の区分に応じて点灯する。
変換システム 電気信号A/D変換 電話回線による伝送 機器の設定 他
AC100
中継ボックス(作業ヤード
7
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リンク型軌道変状システムを用いた工事桁の自動計測
小田急電鉄株式会社 木村 安孝 正会員 ○新谷 岳 正会員 岩井 隆志
1.はじめに
当工事は小田急電鉄小田原線(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)連続立体交差事業および複々線化事業の内,東 北沢駅〜下北沢駅間の 383m区間に位置し,営業線直下に開削トンネルを構築するものである.営業線の安全 を確保しながら施工するためには,軌道を受けている仮設橋脚の沈下と水平変位を常時計測し,監視する必要 がある.本報では,その計測方法の紹介とその計測挙動について考察を行う.
2.計測システムの選定
工事区間は曲線線形を含み,35‰の勾配がある.また計測器を工事桁下に設置する必要があるため,計測器 には設置の自在性と,環境変化の影響を受けないことが求められる.そこで当工事では「リンク型軌道変状シ ステム」を採用した.下記にリンク型軌道変状システムの特色を示す.
① 軌道の高低(鉛直成分)と通り
(水平成分)の2方向が計測できる
② 雨・雪・陽炎・風等気象環境の
影響を受けない 図1.リンク型軌道変状システム 計測器1個
③ 曲線や高低差があっても 設置は可能である
④ 異常時は警報を発し,
電話回線を通じて携帯電話に 異常をメール通報できる
⑤ 遠隔操作により,システム 設定や状況監視が可能である
3.計測機構
リンク型軌道変状システムは,最端部の 計測器を不動点とし,それを基準に隣接す
る計測器の位置を,距離と角度から特定する. 図2.リンク型軌道変状システム 全ての計測器の位置が特定された後、それ
ぞれの変位を10m弦の正矢法(図3)によっ て求める.
正矢法とは軌道計測に広く用いられる手法 で,レールに一本の糸(弦)を張り,その中 点での糸とレールの距離を計測することで相 対的な変位を求めるものである.ここでは計
測ケーブルをレールと見なし,その糸の長さ 図3.10m 弦の正矢法
を 10m とし,任意の計測器の変位を計測することで仮設橋脚の変位管理を行う.
キーワード 自動計測,工事桁,沈下,リンク型軌道変状システム
連絡先 〒155-0031 東京都世田谷区北沢 3-10-12 下北沢連立2工区作業所 TEL 03-5790-7272 FAX 03-5790-0017 戸 田 建 設 株 式 会 社
戸 田 建 設 株 式 会 社 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)
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Ⅵ‑070
鉛直変位(mm)
水平変位(mm) 計測器
仮設橋脚
鋼材
H-200
4.計測方法
図4〜5の様に,営業線平行方向に鋼材
(H-200)を配置し,その上に計測ケーブル を設置した.これにより,営業線の沈下及 び変位を,間接的に仮設橋脚にて計測する ことが出来る.
計測ケーブルには2.5m間隔で測点(計 測器)を設け,計測は全測点1回/分行い,
その結果を計測室にて受信し,計測管理を 行っている.
計測は,計測器を設置した時点を初期変 図4.計測器設置縦断図 位値(0mm)とし,その後の変位を先に述べた
10m弦の正矢法によって求める.
計測器は感度も良く、その計測精度は 0.1mm と高いため,人が軽く接触するだけ でもその影響を受ける.そのため設置位置 は接触等可能性の低い箇所を選んだ.
また定期的にレベル測量を行い、自動 計測データとの比較確認を行っている。
5.計測結果
図6は計測室パソコンモニターである.常 時,計測結果を確認する事が出来る.鉛直方
向変位は一次管理値を±3.0mm,二次管理値を 図5.計測器設置状況
±4.0mm,三次管理値(限界値)を±7.0mm と し,水平方向変位は一次管理値を±5.0mm,二 次管理値を±8.0mm,三次管理値(限界値)を
±14.0mm として管理を行っている.現状の 計測実績値は鉛直方向に-1.3〜+1.5mm(上向 き+),水平方向に-0.1〜+0.6mm(南向き+)
であり、2010 年 11 月の計測開始以来,計測結 果が一次管理値を超過したことは無く,営業線
の安全を確保しながら施工が行われている.
6.考察
先に述べた様に,計測は 0.1mm の精度で行わ れており、さらに定期的なレベル測量とも整合
しているため信頼が高い.また異常時には警報 図6.計測器設置断面図
を発信する機能を有している.そのため計測管理業務に当たっては常時パソコンモニターを監視する必要が無 く、業務を効率的に行うことが可能である.また計測結果は携帯電話等の端末においても受信,閲覧する事が 出来るため,計測室に不在の時でも計測管理を行う事が出来る.
今後の課題としては,計測を行う瞬間に列車が通過するとその動的な挙動を計測してしまうため,計測デー タについてはそれが動的な挙動か、静的な挙動かを正しく判別する合理的な手法の検討が挙げられる.
土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)