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(3) 佐藤 眞杉. 巻 頭 言. さとう ますぎ. ● (社) 日本病院会 副会長 ●医療法人美杉会 佐藤病院 理事長. 大きくなった民間病院の 役割―20年間を振り返って ちょうど2 0年前(平成元年)の日本病院学会 で『中小病院の今日と明日』と題するフォーラ. 価や指摘が適確に行われている。そして,病院 数,病床数はその後かなり大きく変わった。. ムが行われ,私もシンポシストとして参加した。. 最大の変化は,全病床に占める民間病院(医. この時期は,日本の高度成長がとうに終わり,. 療法人+個人)の割合が9 7年の3 7. 3%から0 7年. 平成大不況に突入する直前にあった。医療費抑. に5 5. 5%へ増加したことである。民間病院の役. 制策が厳しさを加え,病院冬の時代の到来を実. 割がこの2 0年間でかなり大きくなったと考えて. 感する重苦しい時代だった。当時を振り返り,. よいであろう。. 民間病院の変遷と,今後について考えてみたい。 このフォーラムで出された意見を要約すると 次のようになる。 ●. ●. 中小病院をとりあえず2 0 0床未満とすると,. ●. した。病院の整理・統合が進んだと見られる。 では,民間病院は今後も活力を保ち続けられ るだろうか。残念ながら急性期病院については. 日本の国民医療費の対 GDP 比が先進国中で. 暗雲が立ち込めていると言わざるを得ない。 急性期病院は,患者さんが溢れるほどいっぱ. 国民の大多数が皆保険制度を享受しているの. いになっても経常収支が黒字になるところは少. は,医療機関が小規模でありながら比較的高. ない。現に民間病院が融資を受けている福祉医. 機能を保持し,きめ細かな地域密着型医療を. 療機構の一般病院600の経常利益は,平成15年. 行ってきたところにあるのではないか. から平成1 9年の5年間,直線的に下降し,平成. 急性期,慢性期,中間施設など医療機能分化. 1 9年度にはついにゼロになっている。. の政策が進められようとしている ●. たり病床数は83床から144床となり規模が拡大. 中小病院は全病院の7 2%を占める. もっとも低く,国民の平均寿命は世界一長く,. ●. 一方,民間病院数は1 2. 6%減少し,1病院当. 医療機能の集約化・高度化は必要に違いない. 今後は,護衛船団方式の見直し,超高齢化社. が,地域のヘルスケアもそれに劣らず重要であ. 会の到来,国民の権利意識の高まりなどにし. る。その核として中小の急性期病院の存在は不. っかりと対応しなければならない. 可欠である。. 中小病院は二極分化が顕著になる一方,統合. 民間病院は資金面,人材面などに多くの経営. 化の時代へ突入し,本格的な生存を賭け,熾. 上の脆弱性を背負い続けている。次回診療報酬. 烈な競争を強いられる. 改定は,民間の活力を殺ぐことなく,汗を流す 者が報われる仕組みになることを願って止まな. ここでは,今日の民間病院にも当てはまる評 日本病院会雑誌. い。 《2009 年 7 月号》 3(767). 大 き く な っ た 民 間 病 院 の 役 割 ︱ ︱ 20 年 間 を 振 り 返 っ て.
(4) 病院紹介. 医療法人社団 ス ズ キ 病 院. スズキ 記 念 病 院. 当院の理事長兼病院長,鈴木雅洲(東北大学名誉教授)のグループが,東北大学医学部産婦人科において我 が国で初めてヒト体外受精児の妊娠・出生に成功したのは昭和57年(1982年)のことです。鈴木雅洲は教授退 官後,自由な発想のもと医療技術の開発・研究に取り組むため,昭和61年7月に,日本初の体外受精の高度不 妊治療専門の医療施設として,宮城県岩沼市に「スズキ病院」を開設しました。 開院後,当院では,体外受精を応用して,より難治な不妊症の新治療法開発に努め,平成4年4月には日本 初の顕微授精胚の妊娠出生に成功,さらに平成13年4月には日本初の成熟卵子の凍結解凍後の受精・妊娠・分 娩に成功するなど,国内はもとより国際的にも評価される不妊症の新治療の実績を確立し,その普及に貢献し てきました。 また,日本における不妊症診療及び周産期医療に携わるスタッフの教育と人材育成のため,「スズキ病院」 を生殖補助医療の,新技術の公開及び発表の場として位置づけています。さらに,助産師の教育・養成の重要 性を認識し,年間の分娩件数が1, 000件を超える本院を,助産学生に対する教育・実習の場として提供し,全 国でも数少ない民間が運営する助産学校を平成4年に開設,毎年優秀な助産師を全国に送り出しています。 平成18年5月1日には20周年を迎え,高度医療の技術開発・提供並びに教育を実践した記念すべき医療施設 を,「スズキ記念病院」と改名しました。 鈴木雅洲のグループが,日本で最初のヒト体外受精児・出生に携わってから20数年。その後,生殖医療技術 は進歩を続けるとともに,その治療を受ける患者も年々増加しています。スズキ記念病院は,民間初の生殖医 療専門病院として,豊富なノウハウと高い医療技術をもって,患者さまの妊娠管理にも万全を期すことができ る専門病院として,全職員が一丸となって日々研鑚しております。 ■ 病 院 外 観. 4(768) 《2009 年 7 月号》. 日本病院会雑誌.
(5) ■ スズキ記念病院■. 高度不妊治療専門病院として ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. ■ 受付・待合ロビー 不妊症に対して最新の医療機器を備えて検 査・診断・治療を行っています。また,IVF 学級(体外受精を望まれる患者さまのための 学級),排卵誘発学級,ベルクラブ(不妊治 療を受けている患者さまの集まり)を設置す るなど,さまざまなサポートをしています。 ■ 婦人科(生殖医療)外来待合. ■ 超音波検査待合室 ベルクラブの会場としても 使われています。. ■ お薬の相談室. ■ 個人面談室. IVF 学級. 日本病院会雑誌. ■ 婦人科(生殖医療)防音説明室. 排卵誘発学級. 《2009 年 7 月号》 5(769).
(6) 不妊治療に使われる医療機器と設備 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. ■ エアコン・バスルーム完備の採精室. ■ I C S I ︵ 顕 微 授 精 ︶ ■ マニピュレーター. ■ 精子検査を行うマクラーチャンバー. ■ 胚の観察 ■ 体外で発育した受精卵. ■ 培 養 ク リ ー ン ベ ン チ と イ ン キ ュ ベ ー タ ー 6(770) 《2009 年 7 月号》. 受■ 精冷 卵 を凍 マタ イン ナク ス 1 2 0 ℃ で 半 永 久 保 存 で き る. ■ 生 理 機 能 検 査 室 日本病院会雑誌.
(7) ■ スズキ記念病院■. 充実した産科施設 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. ■ 分娩室 昭和61(1986)年の産科の開設 から昨年12月までの出産件数は2 万1, 679件。地域の大勢の妊婦さ んから支持を受けています。 ■ 分娩室シャワールーム. 分娩室は5室あり,それぞれに分娩台・監視装置が設置されています。. ■ 家庭血圧測定 当院の産科では妊娠中と産後の家庭血 圧測定を実施しています。. ■ シャンプーサロン室 頭皮のマッサージ効果もある自動洗髪 機を設備しました。また,自動マッサ ージ機もあり,妊産婦の方にお産の疲 れをいやすひとときを提供しています。. 日本病院会雑誌. ■ 2階病室(ペールライム). ■ 2階病室(ベビーピンク). 一般病室は全室個室で,冷暖房,バストイレ, 冷蔵庫,テレビ,DVD プレイヤーなどが設備 されています。部屋のカラーはベビーピンク とペールライムの2種類があります。. ■ アロマ室. 《2009 年 7 月号》 7(771).
(8) 小児科―子どもを持つ喜びの応援を ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. ■小児科外来待合. ■小児科外来診察室. ■小児科病室. ■小児科病棟ラウンジ・プレイルーム. ■キッズルーム(授乳室). ●産科病棟ナースステーション. ■「マザーリーフ」 「幸せの葉」などと呼 ばれている「子宝べんけ い草」を職員が育ててい ます。その芽を患者さま に無料配布しています。. 8(772) 《2009 年 7 月号》. 日本病院会雑誌.
(9) ■ スズキ記念病院■. 婦人科―生涯にわたって女性を健康に ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●. ■ 手術 婦人科では,女性の生涯を通じての健康問題 の予防と治療を包括的に行う女性病院を目指し, 特に,腹腔鏡,子宮鏡,卵管鏡などを使った内 視鏡手術に力を入れています。年間約200件の 腹腔鏡下手術は東北でもトップクラスです。こ れらの手術により,女性の体への負担が軽減さ れ,入院期間も短縮できるので,小さな子ども を持つ女性や働く女性に歓迎されています。ま た,婦人科がん検診も行っています。. ■ 造影剤注入装置 X 線テレビ撮影装置. ■ MRI 装置(磁気共鳴断層撮影装置). ■ 婦人科外来待合 ■ X 線 CT 撮影装置・ X 線軟線撮影装置. ●本院の設備・医療機器 ■ 画像診断装置 X 線 CT 撮影装置,造影剤注入装置 X 線テレビ装置,ポータブル X 線撮影装置,X 線軟線撮影装置,超音波式骨密 度測定装置,デジタルカラー超音波断層診断装置,超音波断層診断装置1 0台 ■ 新生児関係 保育器4台,呼吸自動診断装置2台,経皮電極酸素分圧装置3台,サーモコントロール哺育器3台,インファント ウォーマー4台,その他の哺育器3台 ■ 手術室関係 手術台2台,閉鎖循環式吸入麻酔器2台,手術用顕微鏡2台,内視鏡テレビカメラ装置,内視鏡下腹腔骨盤腔内手 術装置,レーザー光線手術装置,ヒステロスコープテレビカメラ,その他 ■ 培養室関係 倒立顕微鏡2台,実体顕微鏡2台,特殊孵卵器6台,超純水製造装置2組,プログラムフリーザー2台,クリーン ベンチ2台,マイクロマニュピレーター一式,ガラス電極作成装置一式,生物学顕微鏡4台,蛍光顕微鏡,オートクレーブ,加熱 滅菌装置,浸透圧測定装置,その他 ■ 検査室関係 自動血球計算機,血液ガス,電解質測定器ホルモン測定器,血液凝固機能検査装置,自動解析心電計,C −反応性 蛋白測定装置,その他. 日本病院会雑誌. 《2009 年 7 月号》 9(773).
(10) 医療法人社団スズキ病院. 病 院 紹 介. スズキ記念病院 「女性のための病院」を目指しています。 当院院長である東北大学名誉教授・鈴木雅洲のグループが,日本で最初のヒト体外受精. 医 療 法 人 社 団 ス ズ キ 病 院 ス ズ キ 記 念 病 院. 児の出生に携わってから2 0年余り。その後,生殖医療技術は進歩を続けるとともに,その 治療を受ける患者さまも年々増加しています。鈴木雅洲が開院したスズキ記念病院は,民 間初の生殖医療専門病院として,豊富なノウハウと高い医療技術をもって,患者さまの妊 娠管理にも万全を期すことができる専門病院です。. 病院の概要 ● 名 ● 所. 在. ● 電. 称. 医療法人社団スズキ病院 スズキ記念病院. 地. 〒989-2 481 宮城県岩沼市里の杜3丁目5番5号. 話. tel. 0223−23−3111. fax. 022 3−23−3123. ● ホームページ. http://www.suzukihp.or.jp/. ● 院. 鈴木 雅洲. 長. ● 開設年月日. 昭和61年4月2 1日. ● 診 療 科 目. 産科,婦人科,婦人科(生殖医療),小児科,小児外科. ● 病. 床. 数. 10 3床. ● 職. 員. 数. 12 7名(うち助産師46名). ● 建 物 概 要. 地上4階(一部6階):鉄筋コンクリート造 敷地面積:1 0, 765. 42㎡. ● 駐. 車. 場. 延面積:1 0, 17 2, 01㎡ 建設面積:2, 92 5, 72㎡. 103台(無料). ● 付 属 施 設. スズキ病院附属助産学校. ● 各 種 指 定. 特定不妊治療費助成事業指定医療機関,母体保護法指定施設,日本臨床細胞学会認定施 設,助産師養成学校. 6階 5階 4階 3階. (院内専用). 2階. 手術室・分娩室・集中治療室 産科病棟 (20 1号室∼25 2号室). 1階. 総合受付窓口・薬局・売店 中央待合室・喫煙所 多目的スペース 産科外来・婦人科外来 A ・ B 眼科外来・小児科外来 小児外科外来. (院内専用) 大ホール・中ホール・小ホール 検査室・シャンプーサロン 婦人科・眼科病棟・小児科病棟 (30 1号室∼33 8号室). 10(774) 《2009 年 7 月号》. 日本病院会雑誌.
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(12) 総会特別講演 平成2 1年3月・東京都. 経済学者から見た日本の医療 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療. 東京大学大学院 経済学研究科・経済学部 教授 総合研究開発機構(NIRA) 理事長. 伊藤 元重. 山本会長 皆さん,伊藤元重先生のお名前はご存. だき,大変光栄です。ただ,少し不安な気持ちでま. じだろうと思います。新聞でも,経済評論その他を. いりました。今,過分のご紹介をいただいたのです. おやりになっていますが,現職は東京大学の大学院. が,実は,私はこういう大勢の方の前で医療の問題. 経済学部研究科の教授で,同じ研究科の科長,そし. についてお話しするのは初めてです。少し宣伝を兼. て東大の経済学部長です。. ねてお話をさせていただきますと,先ほど紹介して. 1974年3月に東京大学経済学部をご卒業され,. いただきましたが,私が理事長をやっている,一昨. 1978年7月,アメリカのロチェスター大学大学院,. 年の11月に民営化した総合研究開発機構というシ. 経済学研究課程博士課程を修了されています。. ンクタンクがあります。ここでは,いろいろな政策. 1978年にはヒューストンで経済学部助教授となら. などの課題について議論をしたり,あるいは情報を. れ,1979年 に ロ チ ェ ス タ ー 大 学 で 経 済 学 博 士 号. 集めることをやっています。医療問題については,. Ph.D.を取られました。日本に帰られ,1982年4月. 当然のことながら多くの人が関心をもっていますが,. から東京大学経済学部の助教授,1993年12月には同. 残念ながら専門性が高いということもあり,一般の. 大教授になられました。この経済の分野に対しては. 人には非常にわかりにくい分野だというのが,私だ. 大変な識見を持たれております。私もある機会に,. けではなくて,恐らく多くの人の共通の認識だろう. 先生のお話を聞いたり対談をやらせていただいたり. と思います。. したことがあるのですが,とても尊敬している先生. しかし,一般の人にわかりにくいからといって,. です。医療分野に対しても大変深く関心をおもちと. 専門家の方だけにお任せしておくということではな. いうこともありまして,この世界的な経済不況のな. いのかもしれない。そこで,どちらかというと一般. かで,これから医療というものをどう考えていった. 国民というかユーザーの立場から,医療についてい. らいいだろうかというところでの示唆をいただくと. ろいろ情報を集めてみようということで,手始めに. いうことで,今日お願いしたわけですが,快くお引. いろいろなところで面識を得ることができた専門家. き受けいただきました。. の方にお話をうかがいました。私から質問を投げか. 2007年からは,総合研究開発機構(NIRA)の理事. けるインタビューとして,今までに約12∼13本,ま. 長も兼任なさっていまして,現在,内閣府の税制調. とめております。お名前を挙げますと,例えば,五. 査会委員,あるいは財務省関係の仕事,外務省関係. 反田にある関東病院の落合院長,前の東大病院院長. の仕事と,幅広く活躍をされています。皆さまよく. の永井良三先生,あるいは黒川清先生,横浜市立大. ご存じの吉川洋先生と同期だそうですが,宇沢先生. 学医学部の石川義弘先生などです。もしお時間があ. のセミナーには入っていなかったというお話も先ほ. ればNIRAのホームページを見ていただきますと出. ど聞かせていただきました。では伊藤先生,どうぞ. ています。山本会長にもお話をしていただきました。. よろしくお願いします。. この1年くらいですがお話を聞かせていただいて いろいろ考えてきました。今日はそういうことのな. 伊藤 伊藤です。今日はこういう場にお呼びいた 12(776)《2009年7月号》. かで考えてきたことを,少し乱暴にぶつけてみよう. 日本病院会雑誌.
(13) と思っております。ひょっとしたら失礼なことも申. すから,そういう意味で見ると大変な経済活動であ. しあげるかもしれませんが,後でご指摘いただけれ. ることも事実です。こういう大きな規模の分野が,. ばと思います。. 国民の生活に好ましいかたちで運営されることが,. 今日は, 「経済学者から見た日本の医療」というテ. 日本にとっても,あるいは1人ひとりの国民にとっ. ーマですが,私は経済学者を代表しているわけでは. ても大変重要なことです。経済学の立場から医療を. ありませんから,医療の外にいる人間から見たとき. 見るというのは,医療に使われている人材,お金,. にどう見えてくるのだろうかというお話をさせてい. あるいは設備などさまざまなものが,本当に有効に. ただきたいと思います。. 利用されているかどうかを検証するということだろ. 私は大学で学部長をやっているものですからよく. うと思います。ちょっと持って回った言い方で申し. 感じることなのですが,例えば経済学部あるいは学. わけないのですが,我々の世界ではそれを資源配分. 者の世界というのは,世の中からいろいろご批判を. の問題と呼んでいます。資本や労働,あるいはお金. いただくことがあります。その批判のなかには痛い. がどういうかたちでどう使われているだろうかと。. 批判もあればとんちんかんだと思う批判もあるので. 医療の問題は特に規模が大きいということもあり. すが,我々がとんちんかんだと思っている批判でも,. ますので,それをさらに整理して,便宜上の分け方. 外から見ると意外と正しいこともあります。ですか. で恐縮なのですが,2つの問題に分けて考えると考. ら,失礼なことを申しあげても,ぜひ後でまたおしか. えやすいかもしれません。. りとともにいろいろ教えていただければと思います。. 1つはマクロの問題です。トータルとして,医療. ■医療を経済学の視点から考える――規模 の大きさから見ても医療は重要な分野. の規模はどうあるべきか,あるいは医療の財源的な 手当て(ファイナンス)をどうしたらいいのか。そ れをどうやって集めたらいいのかなどといった医療. なぜ医療の問題を考えるかということは,我々の. 全体をとらえていくという問題です。もう1つはミ. 生活にとって非常に重要な分野であるからという当. クロの問題です。なぜ救急車のたらい回しが起きて. たり前のことなのですが,そういう意味での重要性. しまうのか,日本の薬価は適正な価格でできている. を横に置いて,単に規模だけを見ても非常に重要な. のだろうか,あるいは医師の供給体制──トータル. 分野です。いろいろな統計の取り方があると思うの. としての医師の数だけでなく例えば地域の配分とか,. ですが,日本での国民の医療に対する支出額は40兆. あるいは医師だけではなくて看護師の方々や海外に. 円という数字がよく出てきます。恐らく公的な保険. はもっと多いのかもしれませんがいわゆるコメディ. の部分以外に,個人が自主的に支払う例えば歯の治. カルといわれている補助的な医療行為をする方々の. 療などいろいろなものも入っているのだと思います. 配分が正しいかどうかなどのような問題。このよう. が,これはGDPの8%に当たります。日本のGDPは. にマクロ,ミクロの問題の両方があると思います。. 大体500兆円ですから,500兆円のうち8%を,今, 医療に使っているということです。これは小さ過ぎ. ■財政問題から日本の医療を見る. ると私も思いますし,皆さんもそのようにお思いで. マクロの問題については,私が申しあげるのも釈. はないでしょうか。. 迦に説法だと思いますが,極めて深刻な状況にある. ちなみに,経済論議をよく引き起こす食糧分野で. だろうと思います。多くの医療機関が財政的に非常. すが,日本の農業の生産高はGDPの1. 4%です。こ. に厳しいわけです。そしてまた,すごいスピードで. れは1. 4%にすぎないのか,すぎるのか。実はアメ. 高齢化が進んでいけば,いろいろな医療のサービス. リカの農業はアメリカのGDPの1%にすぎません。. を今のペースで受けていくとしても,高齢化した方. 日本の農業がアメリカよりも国民全体の規模のなか. の割合が増える分だけ,当然医療のコストは上がっ. で大きいのは,農産物の価格の高さが反映されてい. てきます。はたして財源が大丈夫かどうかというこ. る部分もあるかもしれません。しかしそれを含めて. とが問題になるのだろうと思います。. みても,医療というのは大変な分野だと言えます。. 世の中に出ている統計を見てみるといろいろなこ. GDPの8%というのは,そこに当然,人材,お金,. とを考えさせられます。先進国のなかで,日本の国. あるいはもろもろの経済資源が使われているわけで. 民が医療に使う金額は非常に少ないという状況です。. 日本病院会雑誌. 《2009年7月号》13(777). 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療.
(14) 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療. アメリカが多いのにはいろいろな問題があるので,. 民の医療に対する支出を増やしていくとすると,乱. アメリカと比較するのは適切でないかもしれません. 暴にいえば,多分,道は3つしかないと思います。. が,アメリカは17%くらいです。記憶で申しあげて. 1つは,今のままの状態で行ってどんどん厳しく. いるので数字の誤差があるかもしれませんが,ドイ. 切り詰めるので安かろう悪かろうの医療に向かい,. ツやフランスのような欧州の大陸の国だと1 0∼. 現場の方々の犠牲で多少はそれを食い止めることが. 12%くらいの間です。イギリスは日本と同じで低. できるかもしれませんが劣化の道をたどる。2つめ. いのですが。. は,何らかの方法で財源をきちんと確保して,今の. なぜこれほどギャップが出てきてしまったのだろ. 仕組みを何とか維持するか良くしながら医療を拡大. うか。これは恐らく経済学者がいうところのファイ. していく。そして3つ目がいちばん論点になると思. ナンスの問題だろうと思います。公的な仕組みのな. うのですが,もう政府に全部頼るのは難しいかもし. かで医療を財源的に支えようとすると,結局は財源. れないということで──もちろん国民の基本的な医. の手当てがないとだめだということです。それは税. 療については公的な部分はとても大事ですが──,. 金をきちんと取れるかどうか,あるいは公的な医療. それ以外に民間のお金をこの分野に投入していく仕. 保険で財源をきちんと取れるかどうかということで. 組みを考える。この3つのどれかだろうと思います。. す。皆さんもご存じのように,日本の財政はほとん. もしこれ以外にあれば教えていただきたいのですが,. ど破綻しかかってきているわけです。. 劣化の道を歩むか,財政的な基盤を何とか政治的に. ちなみに日本の財政赤字は,この1 0年以上,毎年. 勝ち取って規模を拡大させるか,あるいは,仮にそ. 2 5兆円から3 0兆円くらい出ています。財政赤字と. の努力をしたとしても限界があるとすると,それ以. いうのは,要するに税金で入ってくるよりも余分に. 外の民間のお金をどうやって入れるかということで. お金が出ていくということです。25兆円から30兆. す。. 円とはどれくらいの規模かを理解していただくため. ●医療費が増えて喜ばれないのは!?. に申しあげますと,GDP500兆円の約5%の財政赤. 社会保障の話をするとき,僕は学生に冗談でこう. 字が毎年出ているということです。日本の経済成長. いう質問をします。 「皆さん,命を失うのと財産を. 率が1%上がったとか下がったとか,景気が良いと. 半分にするのとどっちが嫌ですか」 。もちろん両方. か悪いとかと一喜一憂しているときに,日本はこの. とも嫌なのですが,財産を半分失っても命が助かっ. 10年間ずっとGDPの5%が赤字で,カンフル注射を. たほうがいいに決まっているわけです。. 打ち続けてきたわけです。こういう経済をドラッグ. 国民の潜在的な医療に対するニーズというのは間. 経済とか麻薬経済とか呼べるかもしれないなどとど. 違いなくあるのですが,ある意味では不思議な現象. こかで失言してしまったのですが,毎年GDPの5%. で,医療費が増えてもみんなあまり喜ばないわけで. のカンフル剤を打っていないと体が動かないわけで. す。例えば住宅需要が増えると住宅産業は自分の産. す。今起こっていることは,景気がこんなに悪いも. 業が大きくなり,雇用が増え生産が拡大して住宅の. のですからもっとドラッグをくれという状況になっ. 市場が膨らむからよかったと言います。ところが,. ているわけです。これは医療には直接関係ないので. 国民の医療に対する需要が増えて医療が拡大してい. すが,財政的に手当てができていないということは,. く──より高度でより手厚いより多い医療――,そ. やはり結果的に医療にも非常に大きな負担を強いて. れは本来良いはずなのですが,今の医療制度のなか. いるわけです。. で医療に対する需要が増えるのは,医療費が増えて. 結局,医療費を引き上げるのは非常に難しいから,. 財政負担が増えるだけだという話に変わっていって. 薬価を下げるとか,あるいは診療報酬を厳しく見る. しまう。そこが医療とほかの産業とが違うところに. とか,あるいはその他もろもろ医療にとって必要な. なるかもしれません。ただ先ほど申しましたように,. 歳出ができない,ということだろうと思います。. 民間のお金をどうやってこの分野に入れていくのか. ●3つの道. ということはきちんと議論していかなければならな. ですから,この先の大きな問題は,これから高齢. い話だろうと思います。. 化が進むわけですし,また医療技術が進んでくれば. ●不安が内需不足につながっている. 当然国民の医療に対する期待も高まるわけです。国. 財政の話について,実は医療を超えたところに大. 14(778)《2009年7月号》. 日本病院会雑誌.
(15) きな問題が起きているということは,皆さんに申し. だろうと思います。結局,安心・安全,特に安心と. あげるまでもないと思います。日本の社会が大きく. いうものをどうやって社会で醸成していくかという. 崩れてきていてみんなが不安になってきているわけ. ことになるわけで,恐らくこれは,好むと好まざる. です。. とにかかわらずこれからの政策論争のなかで大きな. 先ほど紹介させていただいた私が理事長をやって. 問題として出てくるのだろうと思います。. いるNIRAで昨年の秋にあるレポートを出しました. ●消費税の活用を考える人は増えている. が,それが大変評判になっています。どういうレポ. この前,総理が88人くらいの有識者を次々にお呼. ートかというと,ちょっと大ざっぱな計算方法なの. びになって話を聞かれました。山本会長も行かれた. ですが,我々の計算方法によるとどうも日本の中高. と聞いたのですが,私が出席した会合のときに,最. 年の方々は,常識的に貯めておいたらいいだろうと. 近「懺悔の書」を出して「自分は新自由主義を誤っ. 思うお金よりも100兆円から150兆円余分に貯め込. た」ということで話題になった中谷巌さんが話した. んでいるという結果になるのです。例えば日本の国. ことが非常に面白かったのです。中身が面白いとい. 民は可処分所得に対して,ネットで平均して約4倍. うよりも,学生に話すときに教育効果があるような. の金融資産を持っている。こう話すと,ご自分で計. 言い方をしたのです。. 算して私は4倍はないから平均以下かと暗い顔をす. どういう議論をしたかというと,いろいろな人が. る人がいるのですが,これはあくまでも平均です。. 言っていますが還付金付き消費税というのを考えた. ドイツとフランスは2倍,アメリカとイギリスは3. らどうかということです。例えば,ヨーロッパ並み. 倍です。国際比較がどこまで意味があるかはわかり. に20%の消費税を取るとします。簡単に計算する. ませんが,少なくとも日本の国民は,ほかの先進主. と,今日本で2 0%の消費税を取ると大体5 0兆円く. 要国に比べると多くの金融資産を持っています。. らいの税収が入る計算になりますが,仮にそれを全. 我々はこれをどう解釈したかというと,要するに. 部,国民に返したらどうなるか。日本の人口は1億. 日本の国民は不安なんだということです。医療費は. 2, 500万人ですから,50兆円を1億2, 500万人で割る. どうなるかわからないし,長生きのリスクはあるし,. と大体40万円くらいになります。4人家族だと160. 年金も不安だ,あるいは子どもも当てにしてはいけ. 万円入ってくるわけです。つまり消費税は20%に. ない,というのでみんな一所懸命貯めて貯蓄が増え. なるが黙っていても毎年1 60万円入ってくるという. ていく。そして,少なくともこれまでの経過を見る. 仕組みはどうか,というのが還付金付き消費税のメ. とどうもほとんどの方が使わないでお亡くなりにな. ッセージです。それをやるということではないので. ってしまう。. す。消費税を2 0%取られるというと何となく景気. これは,今日本のマスコミで騒いでいる内需不足. が悪くなって,搾取されるというイメージになるの. ということです。お金を使わないで貯め込むという. ですが,消費税を2 0%取るかもしれないがそれを全. ことは,結局,内需が足りないわけです。それが景. 部還付金で戻したら4人家族で毎年1 60万円入って. 気の足を引っ張って,しかも結果的にさらに不安を. きますよと。北欧型の制度は,もちろんもう少し複. あおって,みんながますます貯め込んでいく。みん. 雑なのでしょうが非常に単純化していけば,4人家. なが自己防衛に走っていることが日本の景気を悪く. 族で1 60万円を現金で返すのではなくて,例えば医. しているのではないだろうか。少し前まではアメリ. 療とか年金とか教育とか,あるいは育児支援とか介. カが世界中から物を買ってくれたものですから,日. 護とか,国民生活に必要なものとして戻すという制. 本からもいろいろな物が輸出できて何となくそうい. 度かもしれない。そう考えると,これはアンケート. う問題が表に見えてこなかったのですが,アメリカ. 調査をしたわけではないのですが,それもいいので. が少し正気に戻って世界中から物を買いまくること. はないかという見方をする人が非常に増えてきてい. をやめてしまったところに,この日本の弱さが見え. ることも事実です。今の政治状況を見たときに,こ. てきた。これをどうするのかということも考えるべ. ういうものの考え方をしていかないと,特に高齢化. きであろう,というのがNIRAのレポートの主張で. が進んでいるという事実のなかではなかなか社会で. す。. 需要を満たすことができないのではないだろうか,. これは多分小手先で片づけられる問題ではないの. ということはあると思います。. 日本病院会雑誌. 《2009年7月号》15(779). 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療.
(16) 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療. ●サプライサイドに民間の役割を考えてみては. うと思います。皆さんのほうがお詳しいと思います. 私が少し心配しているのは,こういう議論をする. が,今のデータで見ても,65歳以上の方の1人当た. とすぐに竹中・小泉批判になってしまうのです。い. りの医療費は6 5歳以下の方の医療費の約4倍から. ろいろな問題がありますからその批判はいいと思う. 5倍くらいになっています。年齢を重ねればそうい. のですが,どうも日本のマスコミは,私も反省を込. う需要が増えるのは当然のことですが,問題はだれ. めて考えるのですが,0か1かの議論をしてしまう。. がそれを負担するのかということです。. 竹中・小泉内閣の時代にやったことは全部駄目だ,. 私が非常に深刻だと思っているのはこの問題に限. 元に戻ればいいと。中谷さんの書いた本を見ると,. りません。あらゆる問題がそうなのですが,今の日. 新自由主義か社会民主主義かという,我々が3 0年,. 本の制度を見ると,どんどん次の世代に負担を押し. けんけんがくがく. 40年前に学校で喧々諤々泡を飛ばして議論したよう. 付けるかたちになっている。財政赤字がそもそもそ. な何か古き良き時代の議論で,世の中,そんなに単. うです。財政赤字が増えるということは,要するに. 純ではないだろうと思います。1年前に朝青龍がい. 将来,次の世代が税で負担するということです。ほ. ろいろ物議を醸した。そうするとマスコミが朝青龍. かにもいろいろありますがそうかといって,高齢者. を全否定してしまう。存在そのものが悪だ,朝青龍. の医療を若者以外に負担してもらうのは難しいとい. は駄目だと。しかしよく考えてみたらそんな簡単な. うことになってくるとすると,ここはひょっとした. 話ではなくて,朝青龍には良いところも悪いところ. ら高齢化時代であるからこそ,大胆に改革をすると. もあるわけです。. いうことが考えられるかもしれません。. そう考えますと,例えば還付金付き消費税の問題. ●相続税の活用で高齢者の医療費を得るのも1案. も,ここが大きなポイントになると思うのですが,. 私は次のようなアイデアを新聞に書きました。だ. 仮に消費税を上げて財源を手当てして医療や介護,. いぶおしかり受けたのですが。先ほど言いましたよ. 年金,あるいは教育をしっかりやるとしても,だれ. うに,マクロで見ると日本の高齢者の方はお金をい. がそれをやるのだろうか。厚生労働省と社会保険庁. っぱい持っていらっしゃる──持ってない方も大勢. と各自治体に全部お金をばらまいて,あるいは今の. いらっしゃいますが――。日本の個人金融資産は. 規制をそのまま残してやるのかどうか,ここはやは. 1, 500兆円くらいあるといわれているのですが,そ. り慎重に議論しなければいけないところだと思いま. の約75%は60歳以上の方がお持ちです。今までの. す。答えがないものですから,私は最近書いた本で,. 経緯を考えますと,これらの方々がいずれはお亡く. 言葉が適当かどうかわかりませんが,デマンドサイ. なりになるわけですが, (金融資産を)使う可能性は. ドで公的役割が非常に重要になってきていると同時. 非常に少ない。資産をお残しになると“争続”が起. にサプライサイドで民間の部分をどうするかという. こる。ここでは“争う”という字です。しかも日本. ことを考えなければいけないのだろうと思う,と書. で相続した国民の9 3%は相続税を払っていません。. きました。. 控除がありますから払う必要がない。お子さんが何. いずれにしても財源は非常に大きな問題です。皆. 人いるとか,奥さまがいるとか,いろいろなことに. さんの日々の活動とは関係ない外の話かもしれませ. よりますが,控除は5, 000万円,場合によってはそ. んが,しかし日本の医療にとってみるといちばん大. れ以上になります。こういうのが本当によいのだろ. きな問題です。それをこれからどう決断し選択して. うか。例えば今は5%の消費税を払っています。. いくかということです。. 100円のチョコレートを買っても5円の税金を払っ. ●誰が高齢者の医療費を負担するのか. ているわけです。ところが2, 000万円,3, 000万円の. マクロの財源の問題でもう1つ深刻なのは,高齢. 相続を受けても1銭も税金を払わなくていいわけで. 化のなかでの高齢者医療の問題です。この前,デー. す。. タを見てあらためて思ったのですが,75歳以上の方. それがよいかどうかはいろいろな議論があるので. の医療費は,今約1 0兆円を超えているそうです。. すが,仮に100万円だろうが1, 000万円,2, 000万円,. 10兆円か11兆円か,わかりやすい言い方でいうと日. 3, 000万円だろうが,例えば5%か10%の税金を取. 本の国防費の倍です。恐らくこのペースでいきます. るとしてみます──それ以上の高額相続については. と,高齢者の医療費がどんどん上がっていくのだろ. 従来どおり累進的な相続税でいいと思いますが──。. 16(780)《2009年7月号》. 日本病院会雑誌.
(17) これはかなりの税収になるかもしれません。それを. ●世の中の変化にそぐわなくなっている. 全部,75歳以上の方の医療費に使ったらどうだろう. それをさらに整理してみました。なぜ医療に問題. かということです。これを言うと, 「また高齢者か. が出てきたのだろうかというと,世の中がそれだけ. ら税金取る話か」としかられますが,生きているう. 大きく変化しているわけです。世の中が変化してい. ちは取らないのです。亡くなられてから頂くわけで. るにもかかわらず,医療の現場は30年前,50年前の. す。高齢者から税金を取るわけではないですし,. 状態を想定しているケースが多いわけです。変化は. “争続”を当てにしないその遺族の方から税金を頂. たくさんあります。例えば,まず高齢化。高齢化す. くということです。例えばそれくらいのことを考え. れば当然医療費が増えていく。2つめは医療の高度. ないと,我々の世代はこれからの次の若い世代にど. 化です。技術の向上,専門化です。私は血圧が多少. んどん付けを残していくようなことになります。. 高めなのですが,血圧の本を読んでいたら,昔は血. そういう意味では消費税は良い制度なんです。老. 管を切ってそこから血圧を測ったと出ていました。. いも若きも,男性も女性も,東京に住んでいようが. 昔は薬を飲んで血圧が下がるかどうかということに. 地方に住んでいようが,消費をする人が税金を払う. ついてもいろいろな議論がありましたが,今は良い. わけです。. 薬がいっぱいあります。いずれにしても医療が高度. 最初に一般的な医療の財源の問題,それから俗に. 化しているが,それに今の医療の仕組みが合ってい. 後期高齢者といわれている高齢者の方々の医療費の. るかどうかということです。3つめは,環境の変化. 財源の問題を申しあげたのですが,税制あるいは財. のなかでも情報化の影響が非常に大きいということ. 政の問題というのは,やはり相当ドラスティックに. です。これはほかの産業もそうです。政治も教育も,. 考えなければいけないだろうと思います。. あるいはマスコミも,流通も金融もみんなそうなの. ■医療は複雑で難しく,問題が多い分野. ですが,情報システムが非常に高度化しているとい うことが,良い意味でも悪い意味でもいろいろな影. それから,ミクロの医療の現場の話ではいくつか. 響を及ぼしています。4つめは国際化です。人が国. 感じることがあります。実は先ほどご紹介しました. 境を越えてどんどん動くようになってきて,海外の. ように,私は医療の専門家の方,12人か13人にイン. 医療機関も使えるし,海外の人が日本に来る可能性. タビューさせていただいて,いろいろな面白いお話. も増えています。ちなみに,タイとの自由貿易協定. を聞きました。このままインターネットでウェブに. をやったときに,医療の問題で,日本の方がタイで. 載せておくだけではもったいないし,今インタビュ. 治療を受けたとき日本の保険を使わせてほしいとい. ーを整理して本にまとめているところです。その序. うことで,私は現地の外務省の方と随分議論しまし. 章を書くために,少しだけですが勉強をしました。. た。その時にデータを見てびっくりしました。1年. 私はこういう仕事をしていて,いくつかの産業に. 間にタイの医療機関で治療を受ける日本人は延べ7. ついて今まで勉強させていただいたのですが,ある. 万5, 000人だそうです。恐らくその半分は現地に出. 産業を見るときに最初にやることがあります。それ. ている日本の企業の方々やご家族でしょうが,半分. は何かというと,世の中のいろいろな議論を拾って. くらいは日本から行っています。国際化が確実に進. 問題と思われることを全部,表にしてみることです。. んでいるわけです。. 1年くらい前には「日本の空を問う」ということで, 航空の問題を議論しました。当然いろいろな問題が. ■市場の失敗と政府の失敗. 出てきますのでそれを列挙していきます。今回もや. こういうことを考えてみると,いろいろな実情と. ってみました。救急問題,医師不足の問題,薬の薬. 医療の現場の間に,要するに世の中の動きとこれま. 価の問題,実はやってみてびっくりしました。ほか. での制度の間に,大きな齟齬が出てきている。経済. の産業に比べてその数たるや5倍から1 0倍ありま. 学的に議論すると,こういうのを市場の失敗と政府. す。そこで2つの印象を持ちました。1つは,医療. の失敗というかたちで扱うことが多い。市場も政府. というのは複雑だ,難しいと。もう1つ,医療には. も失敗するわけです。. 問題が多いということです。. 医療が何で特別かというと,放っておいたら,つ まり普通のマーケットメカニズムに任せたら大変な. 日本病院会雑誌. 《2009年7月号》17(781). 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療.
(18) 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療. ことになってしまう。お医者さんと患者さんでは情. コストが安い物がつくられる。これはある意味で経. 報量が圧倒的に違います。それから,医療が保険制. 済の1つの流れです。もちろん全部の分野に規模の. 度に乗らなければいけないとすると,保険を導入す. 経済性があるとは申しませんが,普通の市場では,. るときはきちんとした制度設計が必要だろうと思い. 適正規模でないところは結局淘汰され,あるいは合. ます。救急医療などは地域の公共財的な側面を持っ. 併・吸収されて,その方向にいくということだと思. ている。ただ,見ていると,市場も政府も両方失敗. います。. するのではないだろうかと懸念されます。. 日本ではなぜそうならないのか。これをぜひ教え. ●失敗の1例――なぜ規模の経済を生かさないのか. ていただきたいと思うのですが,でも何となく想像. 政府の失敗かどうかわかりませんが,市場の失敗. がつきます。すべての市町村に病院がある。すべて. ではない失敗の例を1つご紹介します。最近あると. の大学の医学部はもちろん付属病院を持っている。. ころで聞いて問題意識を持っているので,また教え. あるいは厚生会病院,済生会病院,労災病院,自治. ていただければと思いますが,皆さんのよくご存じ. 体病院とかがあります。防衛庁も持っています。そ. の方でしょうが,ドイツでずっとやってこられた心. れぞれの組織があって,ほかと一緒になるとか集約. 臓外科の医師で南和友さんという方がいらっしゃい. 化するということに対して,皆さん非常に抵抗があ. ます。この方の話を間接的に聞いて,それからウェ. る。これは制度の仕組みですから,それを集約化す. ブでいろいろなことが書いてあるのを読んでびっく. るようなメカニズムはないのかもしれないですね。. りしました。. しかし,医療がどんどん高度化していくなかで本当. ドイツに渡って,世界最大の心臓病センターで. にこういうことでいいのだろうか。. 20年以上働いていて,そこでは1年間に6, 000件く. 救急施設についても,地域差はあるでしょうが仮. らいの心臓手術を行うと書いてある。日本からも心. に3分の1に集約して,1カ所に3倍平均の医療ス. 臓移植で行かれた方が何人かいるそうです。ドイツ. タッフがいたらどうなるでしょうか。距離のある遠. 全体の1医療施設当たりの心臓外科の年間の平均手. くの過疎地のようなところでまとまったら大変です. 術件数が1, 400件だそうですから,もちろん6, 000件. から,そういうところよりは大都市部分だと思うの. というのは圧倒的に多いのです。. ですが。そうなると施設の数が3分の1になって,. 彼が日本に戻ってきて調べてみた結果,日本には. (扱う件数が)3倍になるだけだから変わらないだ. 心臓の外科手術をする施設が少なくとも5 00はあり,. ろうという議論はあるのですが,しかしそれだけ増. 1カ所当たりの手術の件数は年間に平均で8 0件だ,. えれば夜間のスタッフも無理なく置けるかもしれな. とも書いてありました。つまり週に2回以下しかや. いし,分業もできるようになるかもしれません。. らない。. かつては非常に意味があったような制度が,時代. 素人にはそこから先はわかりませんが,週に2回. が経って医療が高度化すると,高度化に合った分業. しか行わない病院で手術してもらったらどう切られ. 体制とか専業体制をつくらなければいけない。それ. るかわからないかもしれない,と思ってしまいます。. をだれがつくるのだろうか。もし,厚生労働省の方. 6, 000回切ればスキルが上がるというものではない. がいたら失礼な言い方で申しわけないのですが,日. のでしょうが,でも場数を踏めば,やはりいろいろ. 本の制度の非常に面白いところは,官が管理して規. な経験をするし,そこにはいろいろな人が集まって. 制しているように見えていて実は何もやらないこと. きてやるということが,お互いに技術を向上させる. です。ですから,一方ではそういう仕組みができて. ことになるのではないだろうか。非常に乱暴な言い. いながら,必要であればどんどん集約化していくと. 方ですが,これは経済学の世界でいう規模の経済性. か,あるいは再構築していくということができなく. ということだと思います。. なってきている。. 江戸時代には全国に刀鍛冶がいて,キンコンカン. ●アメリカの医療に見る市場の失敗の例. コンやっていた。これが鉄の加工だった。技術が向. 市場の失敗はたくさんあります。アメリカの医療. 上していろいろなことができるようになってくると,. の問題。私もあまり詳しくないのでいろいろな文献. どんどん工場が収斂していって,巨大な設備のなか. を読んでみて思ったのですが,国民皆保険ではなく. で鉄をつくることによって,より品質が高くてより. ていくつかの保険会社が違った体系でやっている。. 18(782)《2009年7月号》. 日本病院会雑誌.
(19) どうも膨大な管理コストがかかってしまうので,ア. るので「そうか」と思ったのですが,日本の薬価は. メリカの医療費はGDPの1 7%になる。もちろん国. どんどん下がっています。ここから先の話は,しっ. 民が17%の医療費を払っているということのなか. かりインタビューや調査をしなければいけないと思. にはアメリカの医療の良いところもたくさんありま. うのですが,どうも今後,日本の国内からは画期的. す。全部マイナス面ではないのでしょうが,いろい. な薬はあまり出てこないかもしれない。武田や第一. ろな文献を見るとやはり管理コストが非常に大きい. 三共のような日本の代表的な開発力のある薬品メー. のではないか。そういう意味では,我々の持ってい. カーもみんなアメリカに行ってしまっているわけで. る国民皆保険というものを大事にすることは非常に. す。それはある意味では予想できることで,アメリ. 重要だと思いますが,ここでの話は市場の失敗とい. カのほうが医療費が高いし薬価も高いですから,結. うことです。. 果的に開発したときの成功が高いわけです。それ以. この前,オバマ大統領の演説を聞いて面白いと思. 外の理由もあるかもしれません。例えば日本の臨床. ったのは, 「アメリカは医療費がGDPの2 0%になる. 試験が厳しいとか,いろいろなことがあるのかもし. ことを恐れてはいけない」と言ったんです。ここか. れません。もちろん極論とわかっていて言うのです. ら先は私の解釈です。17%の医療費は比較的裕福. が,このままいくと日本の薬の市場はアフリカと同. な方に対する医療費です。アメリカには6 5歳以上. じになってしまうのではないか。パテント料を払う. の高齢者,それから非常に貧しい方に対しては別の. というところがアフリカとは違うかもしれませんが,. 医療システムがあります。ですから今の医療費を縮. 安いということを良しとして,自分のところでは開. 小しよう,壊そうというよりも,今の医療は民間で. 発しないで外国で開発されたものをありがたく頂く。. そのままやらせていいではないか。あと3%か4%. 本当にこのような薬の制度でいいのだろうかと考え. を公的に付け合わせて,今のアメリカの医療からい. ていかなければやはり駄目だと思います。産業とい. わば疎外されているというか医療にアクセスができ. うのは,今ある技術・資源を使って,最も効率的に. ないような人たちにしっかり手を差し伸べるべきで. 良い物を提供するというだけではなくて,次の時代. ある,とそういうメッセージだろうと思います。. のために新しい技術,新しい製品,新しい物を開発. アメリカはアメリカで独自にやっているわけです. していくという連鎖のなかにあるわけです。ですか. から,アメリカが医療費を高くしているということは. ら,特に医療のように技術あるいは科学的な知識が. あまり批判することではないのでしょうが,安易に. どんどん進化していくところでは,将来に向かって. 民間に移すというのは問題だろう。そういう市場の. 投資ができなければいけない。そのお金の投資をだ. 失敗と政府の失敗のようなものをどうするのかとい. れがやるのかということになります。もう1回真剣. うことが非常に大きな話になるのだろうと思います。. に薬の価格とか医療機器の価格とか,そういうこと. ■医療を産業として捉える. を考えていく。これは産業としての医療を考えると いうことです。医療の現場にどこまで関係があるか. そういうことを申しあげたうえで,しかし,もう. は別の問題として,経済学者として見たらそこは非. ちょっと産業的な視点から医療を考えていくことが. 常に関心のあるところです。. できないだろうかというのが,今日,皆さんのお手. もし,そういうかたちで産業活性化ができれば,. 元にありますが(25ページ参照) ,いくつか考えてい. そこに雇用を生むことができます。そしてそれが産. ることなのです。. 業活動になっていきます。これまで日本を支えてき. もちろん,全部マーケットに任す,市場メカニズ. たといわれている輸出産業の国内におけるウェイト. ムに任すとうまくいかないということはよくわかっ. が下がっていくときに,日本がこれからどちらの産. ているのですが,今の日本の医療の仕組みはあまり. 業で国民の所得を生み出していくのか,将来につな. にもマーケットの力を使わないために,おかしな問. がるような持続的な産業をつくっていくのか,こう. 題がいくつか出てきているのではないか。. いうところで産業的な視点を入れるということは非. ●1例として――市場は医薬品の開発力を育てる. 常に重要なのかもしれません。. その1つが,医薬品の世界だと思います。前述の. ●インセンティブをうまく利用した仕組みに. 対談のなかで何人かそういうことをおっしゃってい. もう1つ申しあげたいのは,大学の経済学の授業. 日本病院会雑誌. 《2009年7月号》19(783). 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療.
(20) 総 会 特 別 講 演. 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療. でも学生によく言うのですが,人間はインセンティ. あるいは,これは後期高齢者医療制度という評判. ブに動かされる動物だということです。ですから,. の悪い制度のなかで問題になった議論だと思います. 制度のあり方が非常に大きな鍵になります。もちろ. が,例えば高齢者に関して,体調が悪かったらでき. ん保険料は払っているわけですが,医療費が現場で. るだけ頻繁に来てもらって診てもらうということが. ただであれば,それを過剰に使うインセンティブを. 良いとすれば,ある一定額をあらかじめ払っておけ. 持っているわけです。私もいつも反省するのですが,. ば年間に何回来ても構いません,という仕組みが必. バイキングを食べに行きます。2, 000円均一で食べ. 要です。. 放題だと,食べ過ぎないことは1回もないです。人. いずれにしても,私のような素人が思いつきでい. 間は卑しい,2, 000円は払っていますがやはり食べ. ろいろ申しあげるのは大変危険ですので,専門家の. 過ぎてしまいます。もし許されるのなら食べる代わ. 方に聞いてみたいと思います。ただ1つ申しあげた. りにお弁当箱を持っていって詰めて持って帰るかも. いのは,人間というのはインセンティブに動かされ. しれません。医療も別ではないのかもしれません。. る動物であるとすると,市場メカニズムを使うのは. 乱暴な比較で恐縮ですが,例えば,日本人にとって. 儲け主義を考えるとか自己採算性を考えるというこ. 米が非常に重要だと思うのなら,国民から税金を取. とではなくて,このインセンティブをうまく利用し. って米をただにする。そうすればみんな米を食べる. て,結果として医療が最も好ましい方向に行くよう. かもしれない。しかしそういう制度は必ずしも正し. にするべきだろうと思います。これは実は大変重い. い方向に行かないのだろうと思います。. 問題です。. インセンティブで動くとすれば,残念ですが医療. ●病気予防にインセンティブがあれば. というのはモラルハザードが起きる可能性がありま. 例えばこれからの医療を考えるときには,病気に. す。人間がもう少し賢明に考えて動けば別ですがそ. なった後の診療や治療も大事ですが,病気になる前. うじゃないとすると,この医療保険の問題は難しい. の予防が大事です。これは黒川先生がおっしゃって. だろうと思います。今,いわゆる免責制ということ. いましたが,国民皆保険ができた頃は栄養が悪いか. で,病院に行くと3割でしたか払うということに対. ら圧倒的に感染症が多かった。感染症になったとき,. していろいろな論争があります。そういう制度をど. 例えば結核になれば抗生物質を投与して治してもら. うするかということは非常に重要な気がします。. うという日本の医療は素晴らしい成果を上げた。し. ただこういう話をすると,すぐ0か1かの議論に. かし今はどうかというと,私もそうなので自戒の念. なってしまいます。去年ある会議で,かぜでも何で. を込めて言いますが,圧倒的に生活習慣病が多い。. も病院に来てもらうことが大事だ,とある高名な医. 肉を食べて酒を飲みまくり,野菜を食べずに運動を. 師の方が発言していました。そうするとそこから思. しないで,タバコまで吸って,血管がぼろぼろにな. わぬ疾病が見つかるかもしれない。だから免責制度. る。そして病院に行って,薬を飲んで治しましょう. を付けるとかぜを我慢して薬局でかぜ薬を買ってす. というのではまずいだろう。そうすると,どうやっ. ませてしまうという人がいたらそれは良くない,と。. てそうなる前に予防や治療をするかということが大. そういう面があることはよくわかります。だからと. きな社会的な問題になるのだろうと思います。釈迦. いって,免責制度をやるのはおかしいという話にい. に説法ですが,例えば糖尿病も初期であれば治療費. きなりいっていいのかということです。. が非常に安いですが,インシュリンを使うようにな. 恐らくこういうことだと思います。免責制度があ. ったら高くなり,最悪になって透析をしたらものす. って3割払うのだったら病院に行く回数を減らそう. ごく医療費がかかるわけです。. とする人と,3割くらいだったら病気のときに病院. 難しいのは人間はインセンティブの動物だという. に行く人がいる。そこはきちんと分けて考えなけれ. ことです。これは正しいかどうかわかりませんが,. ばいけない。免責制度を付けて3割取ったら病院に. わかりやすいので1つの例として見ますと,例えば. 来なくなるという人たちが,例えば高齢者とか非常. タバコを吸えば病気になる可能性が増えるのだった. に所得状況が芳しくないような方であれば,その人. ら,タバコを吸う人の税金を上げてしまう。例えば. たちだけを分けてサポートする仕組みをつくればい. 保険料を上げてしまう。この前そう言ったら,タバ. いのだろうと思います。. コを吸う方からすごくしかられました。でもイメー. 20(784)《2009年7月号》. 日本病院会雑誌.
(21) ジで言うとそういう話です。あるいはメタボリック. ういう手術をやって,失敗したか成功したかという. シンドロームが増えないようにするためにはどうい. ことまではわからないかもしれませんが,全部オー. うインセンティブが必要か。ひょっとしたらそこに. プンになっているそうです。個別のお医者さんの名. も,何かそういうことが必要かもしれない。. 前を挙げることがよいかどうかは別の問題ですが,. 非常に難しい問題だと思うのですが,そういうこ. 例えば肝臓がんの第Ⅲ期について,全国に何例くら. とを考えていかないと,日本で医療をトータルに解. いケースがあって,その治療を受けた人の年齢が何. 決することにならないのかもしれない。経済学者が. 歳で,男性か女性か,あるいはどういう治療を受け. こういう話をするとすぐしかられるのですが,結局. て,そして1年後にどういう状況になっているか。. すべての問題で経済に帰着するものがある。. もちろん個人名を出す必要はないのですが,そうい. ●目標だけでは無理,民間がやれる部分もあるので はないか. う情報が統計の専門家の手に渡っていろいろな分析. 例えば地球温暖化の問題で,今日本はCO 2につい. 発されてマーケットに出回っているときに,その新. て何をやろうとしているのか。業界が目標を立てて,. 薬をどこでだれが何件くらい投薬されて,その人が. これだけ削減するために努力しましょうとやってい. 1月後,半年後,1年後にどういう状況になったか. ます。でも自己努力と計画と目標でうまくいくのだ. というデータならどうだろうか。情報というのは,. ったら社会主義でうまくいきます。しかしこれは多. そういう意味では,今世の中を変えつつあって,こ. 分無理です。最終的には炭素税のようなもので,し. れを全く利用しない状況がいいのかどうかというこ. っかり国民にCO 2 のコストを理解してもらわない. と。個人的には非常に問題ではないかと思います。. と多分難しいだろう,と私は門外漢ですが思います。. 町の名医だとか,何とかさんが薦める病院だとかと. 医療も同じだと思います。これだけの規模で,こ. いう本を,本屋へ行って買ったりする。それはまだ. れだけの人間がかかわっているわけです。膨大な数. 良いほうです。週刊誌に出ている記事を見て病院を. の人がかかわっているわけで,それを羊の群れを正. 選び,お医者さんを選ばなければいけないというの. しい方向に導くように,みんながしっかり体を管理. は非常に不幸だと思いませんか? このようなとこ. して,できるだけお医者さんの世話にならないで健. ろの情報は多分非常に不正確だと思いますし,皆さ. 康に生きて,日本の医療費高騰を下げていくという. んから見ても,名前が出ても出なくても非常に不愉. ことになってくると,そこはやはりインセンティブ. 快な思いをするのだろうと思います。学者の世界も,. が重要です。その場合大事なのは,健康の維持とか. ピアレビューとよくいわれるのですが専門家が専門. 検査とか,いろいろな,民間が入ってきてもいい部. 家をお互いに評価する,それを外部の人間が見られ. 分です。全部を民間がやらなくていいのですが,民. るという方向に動いています。今回のレセプトの電. 間がやれる部分が多いわけで,それが前述しました. 子化については良いとか悪いとかいろいろな問題が. 産業としての話だと思います。. ありますが,この情報化の問題についてどうやって. ■医療情報の提供をどうするか. ができたら何ができるだろうか。あるいは新薬が開. 社会全体で取り組んでいくのかということは決して 軽い問題ではありません。非常に重要な問題だと思. 最後に,今大きな政治問題になっているレセプト. います。. あるいはカルテの電子化の話について申しあげます。. かなり散発的にお話ししましたが,後で,よろし. 私もあまり詳しくありませんから個別のことについ. ければNIRAのホームページに来ていただいて,皆. てお話しすることはできませんが,今回,いろいろ. さんのお仲間や,あるいは外部の医療の専門家の方. インタビューして思ったことですが,海外で今起こ. と私との対談を読んでいただければありがたいと思. っていることを見たときに,我々が真剣に考えなけ. います。ご清聴どうもありがとうございました。. ればいけない議論があります。それは何かというと, 医療の現場について国民がもっと知ってもいいので. ■質疑応答. はないだろうかということです。 今,例えばニューヨークの心臓外科医のだれだれ. 山本会長 伊藤先生,大変貴重なご講演をありが. はどういう経歴で,どういう技能を持っていて,ど. とうございました。医療をマクロとミクロという世. 日本病院会雑誌. 総 会 特 別 講 演. 《2009年7月号》21(785). 経 済 学 者 か ら 見 た 日 本 の 医 療.
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施設 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 10年比 松島海岸 㻟㻘㻠㻝㻥㻘㻜㻜㻜
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