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博士学位申請論文審査報告書

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Academic year: 2021

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2015年1月6日

博士学位申請論文審査報告書

大学名 早稲田大学

研究科名 スポーツ科学研究科 申請者氏名 江間 諒一

学位の種類 博士 (スポーツ科学)

論文題目 Muscle- and exercise-specific architectural plasticity of the quadriceps femoris

(トレーニングによる大腿四頭筋の形状変化の筋間差とその動作依存性) 論文審査員 主査 早稲田大学教授 川上 泰雄 博士 (教育学) (東京大学)

副査 早稲田大学教授 彼末 一之 博士 (医学,工学) (大阪大学) 副査 早稲田大学教授 矢内 利政 Ph.D. (アイオワ大学)

副査 鹿屋体育大学教授 金久 博昭 博士 (教育学) (東京大学)

本論文は第1章から第6章までの本論と文献リストから構成されている。

大腿四頭筋は多くの身体運動で主要な役割を果たす。その筋量とスポーツパフォーマン スとの関連性や、加齢による顕著な萎縮が報告されている。大腿四頭筋は羽状筋であり、

その筋束配列は筋の力発揮能力に影響を及ぼす。したがって、トレーニングによって大腿 四頭筋の筋量を増加させることに加え、トレーニングによる筋束配列の変化をとらえるこ とが重要となる。本論文では筋形状を、筋量と筋束配列の両者を含むものとして定義した。

筋量とスポーツパフォーマンスとの関係や、不活動による筋萎縮の程度には、大腿四頭 筋を構成する 4 筋(外側広筋、内側広筋、中間広筋、大腿直筋)で筋間差があることが報 告されている。それにもかかわらず、トレーニングによって大腿四頭筋の筋形状がどのよ うに変化するのかに関しては、大腿四頭筋全体あるいは単一筋のみを対象とした研究が極 めて多く、筋形状の変化に筋間差があるのかは不明である。

大腿四頭筋を対象とした主なトレーニングとして、膝関節伸展動作と脚伸展(膝関節と 股関節の同時伸展)動作トレーニングの 2 種類が挙げられる。これまで、両者が大腿四頭 筋の形状に及ぼす影響が同様であるのか、それとも異なるのかは分かっていない。そこで

本論文は 1)トレーニングにより大腿四頭筋各筋の筋形状がどのように変化するのか、2)観

察された変化はトレーニングの動作に依存するのかどうか、3)変化の筋間差・トレーニング の動作依存性をもたらす要因は何か、という 3 点を明らかにすることを目的とした。本論 文の概要と主な知見は以下の通りである。

第 2 章では、膝関節伸展トレーニングが大腿四頭筋各筋の筋形状に及ぼす影響を明らか

(2)

にすることを目的として実施された研究について述べられている。12 週間の膝関節伸展ト レーニングの前後に、超音波法により筋厚、筋束長および羽状角を計測した。磁気共鳴画 像法により、筋横断面積を算出した。筋形状パラメータは、大腿四頭筋各筋・複数部位を 対象として算出された。その結果、筋横断面積、筋厚および羽状角の変化率には筋間差お よび筋内部位差があった。特に大腿直筋における変化が他の 3 筋と比較して大きいことが 明らかとなった。加えて、本結果は、筋形状パラメータの変化について、先行研究間で一 貫した知見が得られていない理由を説明し得るものであった。

上記の研究は、下記の学術論文として国際誌へ掲載済みである。

Ema R, Wakahara T, Miyamoto N, Kanehisa H, Kawakami Y. Inhomogeneous architectural changes of the quadriceps femoris induced by resistance training. Eur. J.

Appl. Physiol. 2013 113(11): 2691-2703.

第 3 章では、脚伸展動作を繰り返すスポーツ選手の量的特徴を検討することを通じて、

脚伸展トレーニングが大腿四頭筋各筋の筋量に及ぼす影響を検討した。この目的を達成す るために、第1節では 4年以上の競技歴を有するボート選手を対象とした横断研究、第 2 節では 4 年以上の競技歴を有する自転車選手を対象とした横断研究と、初心者を含む自転 車選手における縦断研究について記述されている。第 1 節の研究の結果、一般人と比較し て、ボート選手は約 30%広筋群(外側広筋、内側広筋、中間広筋)の筋体積が大きかった にもかかわらず、大腿直筋の筋体積は両群間で有意差はなかった。第 2 節の横断研究の結 果、第 1 節の結果と同様に、自転車選手の広筋群の筋体積は一般人よりも有意に大きかっ たのに対して、大腿直筋には有意差がみられなかった。6ヶ月間の日常のトレーニングの影 響を調べた縦断研究の結果、広筋群の筋体積は有意に増加したが、大腿直筋の筋体積に有 意な変化はみられなかった。以上のことから、脚伸展動作を繰り返すことによるトレーニ ング効果は広筋群のみに表れ、大腿直筋には生じないことが示された。

第 1節については下記国際誌へ掲載済みである。第2節については現在国際誌で査読中 である。

Ema R, Wakahara T, Kanehisa H, Kawakami Y. Inferior muscularity of the rectus femoris to vasti in varsity oarsmen. Int. J. Sports Med. 2014 35(4): 293-297.

第 4 章では、股関節伸展を付加することにより、膝関節伸展動作中の大腿直筋の筋活動 レベルが低下するという仮説が検証された。この仮説は、第2章と第 3章の結果から導き 出されたものである。一定強度の等尺性股関節伸展トルクを維持しながら膝関節を伸展さ せる課題(課題Ⅰ)と、一定強度の等尺性膝関節伸展トルクを維持しながら股関節伸展ト ルクを徐々に発揮させる課題(課題Ⅱ)の 2 種類を実施した。課題中における大腿四頭筋 と大腿二頭筋の筋活動レベルを計測した。課題Ⅰにおいて、維持した股関節伸展トルクが 大きいほど、大腿直筋の筋活動レベルは小さく、他の 3 筋については逆の結果であった。

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課題Ⅱにおいて、股関節伸展トルクを発揮し、その強度を高めていくにつれて、大腿直筋 の筋活動レベルは低下し、逆に他の 3 筋では増加した。以上の結果は、上記仮説を支持す るものであり、股関節伸展の有無および発揮トルクの強度が大腿四頭筋の筋活動レベルに 影響することが示された。

第5章では、運動の種類と強度が大腿四頭筋各筋の筋活動レベルに及ぼす影響について、

筋間差および動作間差の観点から検討された。1回最大挙上重量(1RM)の20、40、60、80%

の負荷で膝関節伸展動作およびレッグプレス(脚伸展動作)を行い、そのときの外側広筋、内 側広筋および大腿直筋の筋活動レベルを計測した。筋間差について、膝関節伸展動作時の 筋活動レベルに筋間差はみられなかった、一方、レッグプレス時の筋活動レベルは、外側 広筋および内側広筋が大腿直筋よりも有意に大きかった。動作間差に関して、外側広筋お よび内側広筋の筋活動レベルには動作間差は存在しなかった。大腿直筋の筋活動レベルに ついて、何れの強度においても顕著な動作間差が観察され、膝関節伸展動作時のものがレ ッグプレス時のものよりも有意に大きかった。加えて、80%1RMでレッグプレスを実施し たときの筋活動レベルと20%1RMで膝関節伸展動作を行ったときの筋活動レベルに有意差 はなかった。以上のことから、脚伸展動作時の筋活動レベルは広筋群が大腿直筋よりも大 きいこと、たとえ筋肥大を目的とするような高負荷であっても、脚伸展動作時の大腿直筋 の筋活動レベルは極めて低いことが示された。

本論文の一連の研究から、以下のことが導き出される。第 2 章の結果、膝関節伸展トレ ーニングによる筋形状の変化は大腿直筋で顕著であった。一方、第 3 章の結果、脚伸展動 作を繰り返すことによるトレーニング効果は広筋群のみに生じ、大腿直筋には生じないこ とが示された。すなわち、それぞれの動作に着目すると、筋形状の変化に協働筋間差があ ることが明らかとなった。この協働筋間差をもたらす要因として筋活動レベルの筋間差に 着目すると、第5章の結果から、第2章の結果を説明することはできなかった。したがっ て、筋活動レベル以外の別の要因が第2章の結果と関連していると考えられる。一方、第3 章の結果は第 5 章の結果と対応したことから、脚伸展動作を繰り返すことによるトレーニ ング効果の結果は、筋活動レベルの筋間差の観点から説明可能である。また、大腿直筋に 着目すると、第2章および第3章の結果から、筋形状の変化に動作間差があるといえる。

これは、股関節伸展を付加することにより、膝関節伸展動作時の大腿直筋の筋活動レベル が低下したという第4章の結果から説明することができる。同時に、第4章の結果は、第5 章における脚伸展動作時の筋活動レベルの筋間差の結果を説明し得る。加えて、第 5 章に おいて、脚伸展動作時の大腿直筋の筋活動レベルは高負荷であっても非常に小さかった。

したがって、第 3 章ではスポーツ選手を対象としたが、筋肥大を目的とするような高負荷 で脚伸展トレーニングを実施したとしても、第3章と同様の結果が得られると期待できる。

以上の結果をまとめると、動作に股関節伸展を含むか否かが筋活動レベルの筋間差・動作

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間差と関連し、結果的に筋形状の変化における筋間差・動作間差をもたらしたと結論され る。

さらに第 6 章において、追加実験により、一連の結果の一般化の可否と、筋萎縮に対す るトレーニング方策の具体的な提案、ならびに関連領域に対する問題提起がなされた。加 えて、申請者が既に国内誌へ発表済みである知見を総合することにより、筋形状の変化に 関する機能的な意義についての考察が行われ、今後の研究への発展が期待される。

本研究によって、大腿四頭筋としてひとくくりにされることが多い大腿部前面の筋群は、

特に二関節筋とそれ以外においてその活動やトレーニングの応答性が異なることが示され、

異なる機能や適応性を有する筋の複合体として大腿四頭筋を捉える必要性が強く示された。

得られた知見はスポーツ科学のみならず、医学や健康科学等、幅広い分野における意義を 有するものである。本申請者の今後の研究上の活躍が大いに期待できる。

上記のような評価を得て、本審査委員会は、江間諒一氏の学位申請論文が博士(スポー ツ科学)の学位を授与するに十分値するものと認める。

以 上

参照

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審査員(主査) 早稲田大学教授 工学博士(早稲田大学 ) 中江 秀雄 早稲田大学教授 工学博士 ( 東京大学 ) 酒井 潤一 早稲田大学教授 工学博士 ( 早稲田大学 )

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