• 検索結果がありません。

小売フォーマットと企業戦略

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小売フォーマットと企業戦略"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)
(3)
(4)
(5)

の流通企業の活動範囲も決定することになる。 繰り返しになるが,小売企業の制約要因としては, 店舗立地などの地理が大きく影響する。そして,個別 小売企業が出店しようとする場所を明確にすること は,当該小売企業における戦略の明確化にもつなが る。たとえば,これまで百貨店という小売業態は,一 般に都市市街地の中心地(一等地)やターミナル駅の 隣地に出店してきた。これは多くの国や地域でも同様 である。百貨店が都市郊外や二等地ではなく,このよ うな場所を選択してきたのは戦略でもあったが,他方 では出店場所の制約でもあった。そのために小売業で は,戦略は立地にしたがうという面が強かったともい える。 2)小売業態から小売フォーマットへの飛躍

(6)

2)小売店舗の重層性

齋藤[2003]では,小売店舗業態規定の重層性も指 摘している。そこでは抽象的・一般的レベルの店舗概 念から,具体的レベルの店舗まで抽象度の階層レベル で検討している。そのレベルは,① institution,② store format,③ store である。

まず institution は,「小売機関」である。これらは 小売業態論で使用される用語である。百貨店,スー パーマーケット,コンビニエンスストアなど,安定し ているワン・ストップ・ショッピング機能を有する一 般的レベルであり,基本的な小売業態店である。つま り,基本的な小売業態カテゴリーにおさめられるもの である。また「小売 institution という用語は,基本的 な フ ォ ー マ ッ ト あ る い は 事 業 構 造 ( B e r m a n e t al.[1998]p.103)」という指摘もあるように,基本的 な小売業態分類としてもとらえている。図表3は,食 品と非食品を品揃えする小売業の態様を示しており, それぞれを提供する小売店舗の態様の相違を取り上げ ている。 次に store format は,カテゴリー内で細分化された 小売店舗類型である。基本的な小売業態分類と比較す ると,亜種までを含んでいる小売業態区分である。実 務的にはこのレベルでの小売業態区分が,小売マーケ ティングの競争では重要である。チェーンストアは, 多数の店舗を出店する際には,自社店舗の明確な出店 方針を設定し,計画的に出店しようとする(齋藤 [2003])。そのために各小売企業によって,小売ミッ クスの要素が多様な面で異なっているのは当然であ る。これは各小売企業による戦術・戦略の相違として とらえることもできよう。 最後に store は,小売マーケティングでの商品とし て扱われる。これは各小売業や各時期,地域での競争 条件などによって変化する。format レベルで統一し た小売店舗政策は明確にはされるものの,実際は望む ような店舗立地は実現できず,競合状況に対応したレ イアウト変更を強いられる場合が多い。小売店舗が小 売業の商品であり,消費者が商品調達をする場所とし ての商品である店舗は,この具体的なレベルで存在し ている(齋藤[2003]pp.40-41)。また小売企業間での 競争は,特定地域で展開されるため,小売業態として の競争力は,この store レベルにあることも多い(安 土[1987])。 以上のように3つのレベルでの分類は,多様なレベ ルでの小売業による顧客対応を示す対象を明確にして いる。図表4は,現在から四半世紀以上前のものであ るが,アメリカにおける食品小売の態様を示したもの である。これらの態様を区分する要素には,価格帯, 売場面積,出店場所(立地)がある。現在とはさまざ まな環境は異なっているが,多くの面で示唆に富んで いる。販売する商品の価格帯が異なり,売場面積も多 様である。さらに当該店舗を出店する地域は全く異 食品小売業 Food-oriented 非食品小売業 General Merchandise コンビニエンスストア Convenience store スペシャリティストア Specialty store

スーパーマーケット Conventional supermarket 百貨店 Traditional department store 食品ストア Food-based superstore フルライン・ディスカウント Full-line discount store コンビネーションストア Combination store ストア

ボックスストア Box store バラエティストア Variety store ウェアハウスストア Warehouse store オフプライス・チェーン Off-price chain

ファクトリーアウトレット Factory outlet メンバーシップクラブ Menbership club フリーマーケット Free market 図表 3  基本的な小売業態の分類

(7)
(8)
(9)
(10)
(11)
(12)
(13)

小売店舗に商品を供給する体制などに着目している (Davies[1998],Dawson and Mukoyama[2006],坂 川[2009])。また Goldman[2001]は,小売フォー マットを提供物とノウハウに区分している。ここでの 提供物は,小売ミックスの要素であり,ノウハウは, 提供物を生み出すために必要な技術や組織文化などで ある。つまり,ノウハウと定義される技術や組織文化 が,フォーマットのプロセスである。 これら消費者と小売企業という2つの分析の中心的 視点は,単純にいうと,小売店舗を中心としてあるい は境として,その前後のどちらに重きをおいて観察し ているかで区分される。これら先行研究における フォーマット概念と研究方法の関係を示したのが図表 7である。つまり,消費者を中心とする分析では,顧 客は小売店舗内から当該消費者の家庭まで,小売企業 を中心とする分析では,店舗よりも川上の部分に焦点 を当てている。したがって,1つの事象を観察する際 には,その角度によって見え方は異なっているが,こ のような視角は,小売店舗を正面とその反対の面から 見ているようなものである。 (2)アウトプットとプロセス 小売フォーマット概念の操作化と分析方法の明確化 は,先行研究ではフォーマットをアウトプットとプロ セスの2側面で把握している(坂川[2009])。アウト プットとは,小売企業による品揃え,価格,営業時 間,立地,セルフサービスの採否,提供サービスなど の小売ミックスの要素であり,店舗属性に関するもの である。つまり,小売マーケティングを決定する小売 ミックスである(和田[1986],Lal and Rao[1997], Bell and Lattin[1998],Bell et al.[1998],Solgaard and Hansen[2003])。つまり,先にあげた消費者視点から の分析視角である。これらは消費者(顧客)にとって も可視的であり,すぐに認識可能なものである。 他方,小売フォーマットのプロセスは,研究者に よってその見方(認識方法)が異なっている。プロセ スは,アウトプットを決定するものであり,フロン ト・プロセスとバック・プロセスに分かれている。こ れは小売ミックスを産出するための業務プロセスであ る(和田[1986],Davies[1998],Goldman[2001],

(14)
(15)
(16)

ての言及は,かなり以前から行われていたが,まさに 「戦略の時代」になり,ようやく浮上することになっ たといってもよいであろう。そしてより一層,小売 (企)業が自らの顧客である消費者に向き合う機会と なったととらえることもできる。 そもそも小売(企)業は,消費者にモノを再販売, 提供することがその機能として位置づけられてきた。 しかし,消費者,つまり顧客側は,単に所有権の移転 をしているだけではなく,さまざまな価値を得ている という解釈もされる。しばしば,「消費者はモノを購 買しているのではない。サービスを購入しているの だ」といわれるのは,その適例である。そのように考 えると,小売フォーマットと称されるが,単に消費者 にモノを提供する態様ではなく,いわゆるサービスを 提供する態様として,同時に考慮することもできるは ずである。そのような視野に立つと,「小売フォー マット」ではなく,適切な言葉はまだ見つかっていな いが,「リテール・フォーマット」とし,モノだけで はなく,サービスも取り込んだ態様として「リテー ル・フォーマット研究」としての方向性もあり得るの ではないだろうか。これについては今後の課題とした い。 参考文献 安土敏[1987]『日本スーパーマーケット原論』ぱるす出版 渥美俊一[1990]『チェーンストア 出店と SC づくり』実務 教育出版 渥美俊一[2010]『21世紀のチェーンストア(第2版)』実務教 育出版 石井淳蔵[2012]『マーケティング思考の可能性』岩波書店 石川和男[2016a]「小売業態をめぐる認識と研究展開」『商学 論集』第102号,専修大学学会,pp.1-16 石川和男[2016b]「業態・フォーマット研究の先行研究レ ビュー ― フォーマットとは何か ― 」原田保・三浦俊彦編著 『小売 & サービス業のフォーマットデザイン』同文舘出版, pp.21-36 石原武政[1999]「小売業における業種と業態」『流通研究』2 (2),pp.1-14 石原武政[2000]『商業組織の内部編成』千倉書房 金亨洙[2008]『小売企業のグローバル戦略と移転 ― 小売ノウ ハウの海外移転の理論と実証 ― 』文真堂 斉藤雅通[2003]「小売業における「製品」概念と小売業態論」 『立命館大学立命館経営学』41(5),pp.33-49 坂川裕司[1998]「企業間異質性を起点とした業態革新」『商学 討究』第49巻2・3号 坂川裕司[2009]「小売フォーマット概念の再検討」『経済学研 究』北海道大学大学院経済学研究科,58(4),pp.271-287 坂川裕司[2010]「サプライチェーンの最適化行動と小売業態 の動態 ― 業態ライフサイクルへの延期投機モデルの適用 ― 」 『小売業革新』千倉書房,pp.57-73 坂川裕司[2011]「小売フォーマット開発の分析枠組」『経済学 研究』北海道大学大学院経済学研究科,60(4),pp.61-76 佐藤肇[1974]『日本の流通機構 ― 流通問題分析の基礎』有斐 閣 鈴木豊[1992]「日本における新小売業態成立の可能性」『RIRI 流通産業』流通産業研究所 髙嶋克義[2002]『現代商業学』有斐閣アルマ 田村正紀[2002]『流通原理』千倉書房 田村正紀[2008]『業態の盛衰』千倉書房 田村正紀[2014]『セブンイレブンの足跡』千倉書房 ジョン・ドーソン・向山雅夫[2015]編著『グローバル・ポー トフォリオ戦略 ― 先端小売企業の軌跡』千倉書房 新 倉 貴 士 [ 2014]「 消 費 者 の 業 態 認 識 モ デ ル 」『 J a p a n Marketing Journal』33(4),pp.43-56 南義人[1978]「新しい小売形態」『小売流通入門』有斐閣双書 向山雅夫[2005]「Change of Retail Formula in the Retail

Internationalization Process」『流通科学研究所モノグラム』 第79号,pp.1-19 村上恭一[2010]「小売業革新の要因 ― 「戦略的利益モデル」 による革新の考察 ― 」髙嶋克義・西村順二編[2010]『小売 業革新』千倉書房,pp.27-56 矢作敏行[1981]『現代小売商業の革新』日本経済新聞社 和田充夫[1986]「小売業態の喪失と小売競争の新地図」『季刊 消費と流通』第10巻第4号,pp.40-45

Appel, D. [1972] , The supermarket : Early development of an institutional innovation, Journal of Retailing, 48, pp.39-53 Arrondo, Elvira, Carmen Berne, Jose M. Mugica and Pilar Rivera

[2002] , “Modelling of customer retention in multi-format retailing”, International Review of Retail, Distribution and Consumer Research, 12(3), July pp.281-296

Bell, David. R., Teck-I Iua Ho, and Christopher S. Tang [1998] , “Determining where to shop: fixed and variable costs of

(17)

and consumer preference for store price format: why” Large Basket “shoppers prefer EDLP”, Marketing Science 17(1), pp.66-88

Berman, Barry & Joel R.Evans [1998] , Retail Management, a strategic approach (7th ed., 1998)

Brenda Sternquist [2007] , International Retailing 2nd edition, Fairchild Books(若林靖永・崔容フン[2009]『変わる世界 の小売業 ― ローカルからグローバルへ ― 』新評論)

Davies, K. [1998] , “Applying evolutionary models to the retail sector”, The International Review of Retail, Distribution and Consumer Research, 8(2), pp.165-179

Dawson, John A. and Masao Mukoyama [2006] , “The increase in international activity by retailers”, in J.Dawson, R. Larke & M. Mukoyama (Eds.), Strategic issues in international retailing, pp.1-30, Abingdon: Rutledge.

Goldman, A. [2001] , “The Transfer of retail Formats into Developing Economies : The Example of China”, Journal of Retailing, Vol.77, 221-242, ; J.Zentes, D. Morschett, and H. Schramm-Klein [2007] , Strategic Retail Management : Text and International Cases, Gabler

Coopey, R., O’Connell, S. and Porter, D. [2005] , Mail order retailing in Britain, Oxford : Oxford University Press

De Marco, E. S. [2006] , Reading and riding, Bethlehem : Lehigh University Press

Fisk,G. [1961-62] , A Conceptual Model for Studying Customer Image, Journal of Retailing, Winter, 9-16

Lhermie, C. [2003] , Carrefour ou l’invention de l’hypermarche, Paris : Vuibert

Lal, Rajiv, and Ram C Rao [1997] , “Supermarket competition : the case of every day low pricing”, Marketing Science, 16(1), pp.60-80

Lancaster, B. [1995] , The department store : A social history, London : Leicester University Press

Lewison, Dale. M. [1997] , Retailing (6th international ed.), London : Prentice Hall International (UK) Lomited.

Marseille, J. [1997] , La revolution commerciale en France : Du Bon Marche a L’hypermarche, Paris : le Monde

Solgaard, Hans S. and Torben Hansen [2003] , “A hierarchical Bayes model of choice between supermarket formats”, Journal of Retailing and Consumer Searvices, Vol.10(3), pp.169 -180

Teece, Devid J. [2007] , Explicating dynamic capabilities : The nature and microfoundation of (sustainable) enterprise performance, Strategic Management Jourrnal, 28, pp.1319-1350 Teece, Devid J. [2009] , Dynamic capabilities and strategic

参照

関連したドキュメント

その傘下事業所(本所及び支所)調査票により卸売・小売企業単位の集計をした。 ① 卸売・小売事業所数

小売業のロジスティクス戦略に関する研究 著者 雑誌名 巻

最後に, 消費者余剰について考察すると, ケース 1 は高価格均衡が実現するものの, 小売業者 R

逆に中国の人件費上昇を含む労務環境をリスクとみる日本企業が増えている。帝

世界の小売業ランキング 2017 | 調査手法および情報源 世界の小売業ランキング 2017 | 調査手法および情報源

15)Cf. Davidson, William R., Albert

較する。主な指標の変化は以下のとおりである。  ① 損益計算書の指標については、売上高、営業利益、 経常利益、当期純利益は 60

小売業は, 業態別にみて, 百貨店, 大型月賦店, スーパーマーケット(スーパーストアを含