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密教研究 Vol. 1927 No. 26 003月輪 賢隆「小乗典籍に於ける阿頼耶 P39-75」

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(1)

唯 識 家 が 第 八 阿 頼 耶 識 を 建 つ る 理 由 こ し て 、 諸 經 論 に 其 證 據 を 求 め た 中 に 、 小 乗 經 典 中 に 既 に 異 門 の 密 意 こ し て 其 名 稱 が あ る こ て 、 増 一 阿 含 經 の 愛 ・ 樂 ・ 欣 ・ 喜 の 四 阿 頼 耶 を 説 い た 文 を 引 用 し て ゐ る 。 即 ち 無 著 菩 薩 が 其 著 ﹃ 攝 大 乗 論 ﹄ に 之 れ を 論 じ て か ら 、 世 親 ・ 無 性 等 が 其 釋 論 に 於 て 此 れ を 解 釋 し 、 成 唯 識 論 で は 此 等 本 論 ・ 釋 論 を 合 糅 し て 阿 頼 耶 識 證 の 一 つ こ し て 掲 げ て ゐ る 、 そ こ で 支 那 ・ 日 本 の 唯 識 學 徒 が 此 増 一 阿 含 經 の 験 査 に 着 手 し た 、 験 査 の 結 果 、 此 れ に 類 似 し た る 文 を も 見 な か つ た 、 で 研 究 の 手 は 外 の 阿 含 部 に も 及 ん だ 、 倶 舎 論 の 中 に 一 個 庭 阿 頼 耶 の 語 が 見 ね る 、 そ れ が 契 經 に 曰 く と し て 引 舟 せ ら れ て あ る 故 、 倶 舍 學 徒 は そ れ を 便 り に 又 四 阿 含 を 捜 索 し て 雜 阿 含 の 中 に 類 文 を 登 見 し た 、 然 し 肝 心 の 阿 頼 耶 ご 云 ふ 語 が な か つ た 、 其 内 に 唯 識 學 徒 は 又 佛 傳 の 中 に 偶 然 、 四 阿 頼 耶 の 文 を 登 見 し た 、 然 し 無 著 が 引 用 し た も の で は な か つ た 即 ち 其 れ は ﹃ 佛 本 行 集 経 ﹄ で あ る 、 又 倶 舎 學 徒 は ﹃ 大 毘 婆 沙 論 ﹄ の 中 に 阿 頼 耶 ご 云 ふ 語 を 見 出 し た 、 此 れ も 無 論 、 印 度 の 論 師 等 が 引 き 合 ひ に 出 す そ れ で は な か つ た 、 結 局 彼 等 古 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 三 九

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 〇 論 師 の 指 す 文 は 見 出 す こ ご が 出 來 な い 。 そ こ で 慈 恩 大 師 が 法 華 玄 賛 に 漢 譯 の 四 阿 含 は 大 衆 部 の 所 傳 だ と 云 う 陀 事 を 楯 と し て 、 無 著 等 の 引 く 所 は 是 れ 有 部 の 經 と 云 ふ か ら 到 底 今 の 漢 譯 で は 見 出 し 得 な い も の と し て 探 求 の 手 を ひ そ め た 。 此 れ が 近 い 過 去 ま で の 事 實 で あ る 。 其 研 究 素 材 は 悉 く 龍 谷 大 學 編 纂 の ﹃ 佛 教 大 辭 彙 ﹄ 阿 頼 耶 識 の 項 下 に 載 せ て あ る ( 此 頃 は 龍 大 の 杉 教 授 の 執 筆 で あ つ れ か "、 思 ふ )今 、 吾 人 が 研 究 の 出 發 鮎 は こ 、 に 在 る 、 そ し て も う 一 度 、 斯 う し 陀 事 を 稱 々 形 を 愛 へ て 研 ら べ 反 へ よ う こ す る 、 で 其 順 序 こ し て 攝 大 乘 論 か ら 吟 味 し て お か う 。 先 づ 玄 奘 譯 攝 大 乘 論 本 巻 上 (縮 、 來 九 ) に は 次 の 如 く 云 う て あ る o 復 た 次 に 聲 聞 乘 中 、 亦 た 異 門 の 密 意 を 以 て 已 に 阿 頼 耶 識 を 説 け り 、 彼 の 増 壹 阿 笈 摩 に 説 く が 如 し ﹁ 世 間 の 衆 生 、 阿 頼 耶 を 愛 し 、 阿 頼 耶 を 樂 ひ 、 阿 頼 耶 を 欣 び 、 阿 頼 耶 を 喜 ぶ 。 是 の 如 き 阿 頼 耶 を 断 せ ん が 爲 め の 故 に 、 正 法 を 説 き た ま ふ 時 、 恭 敬 し て 耳 に 攝 し 、 解 を 求 む る 心 に 佳 し て 法 に 随 ひ 法 を 行 す 如 來 世 に 出 で ま せ ば 是 の 如 き 甚 だ 奇 に し て 稀 有 な る 正 法 世 間 に 出 現 す ﹂ ご 。 聲 聞 乘 に 於 て 如 來 出 現 四 徳 經 中 、 此 の 異 門 の 密 意 に 由 り て 已 に 阿 頼 耶 識 を 顯 は せ り 。 ご あ る 。 此 讀 み 方 に 就 て 南 都 相 傳 で は 、 阿 頼 耶 を 喜 ぶ ま で を 増 壹 阿 笈 摩 の 引 文 こ し 、 如 來 出 現 四 徳 經 は 又 別 の 經 こ し て 居 る 、 そ れ で は 此 一 聯 の 文 が 支 離 滅 裂 に な る 、 少 く こ も 三 段 に 分 裂 す る 、 前 は 増 一 阿 笈 摩 、 後 は 四 徳 經 、 中 は 無 著 の 添 加 と な る で あ ら う 。 そ れ で は 不 可 で あ る 、 や は り 今 の や う に 讀 む

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の が 正 し い と せ ね ば な ら の 、 そ の 事 は 追 々 述 ベ る 。 今 の 讀 み 方 は 増 一 阿 笈 摩 の 如 來 出 現 四 徳 經 と 見 て 前 は 総 名 、 後 は 別 名 、 中 間 は 引 文 と 見 做 す の で あ る (南 都 相 傳 の 讀 み 方 は 國 譯 大 藏 經 論 部 第 十 帙 の 四 参 照 ) 無 著 が 更 に 此 阿 頼 耶 を 説 明 し て 先 づ 餘 師 の 説 を 擧 げ て ゐ る 、 そ れ で 見 る と 或 は 五 取 蘊 の 事 と し 、 或 は 貪 と 倶 な る 樂 受 の 事 と し 、 或 は 薩 迦 耶 見 と す る 、 此 等 を 一 々 吟 味 し て 結 局 第 八 識 で な く て は な ら ぬ 事 を 論 證 す る が 彼 れ の 任 務 で あ る 。 さ て 無 性 菩 薩 の 攝 大 乘 論 釋 巻 二 に 此 文 を 釋 し て 増 一 阿 笈 摩 と は 説 一 切 有 部 の 所 説 で あ り 、 如 來 出 現 四 徳 經 と は 此 經 の 中 に 如 來 が 世 に 出 現 す れ ば 四 種 の 稱 讃 す べ き 徳 が あ る 事 を 説 い た も の だ と し て あ る こ れ で 一 往 問 題 の 出 發 點 が 明 か に な つ だ 、 次 に は 攝 論 の 異 譯 を 吟 味 し て お か う 、 眞 諦 譯 の 攝 論 (來 九 ) に は 、 復 た 次 に 此 識 を 聲 聞 乘 に 於 て は 別 名 に 由 つ て 如 來 曾 つ て 顯 し た ま へ り 、 増 一 阿 含 經 に 言 ふ が 如 し ﹁ 世 間 に 於 て 阿 黎 耶 を 愛 し 、 阿 黎 耶 を 習 ひ 、 阿 黎 耶 に 著 す 、 阿 黎 耶 を 滅 せ ん が 爲 め に 、 如 來 正 法 を 説 き た ま へ ば 、 世 間 が 樂 ん で 聽 く が 故 に 耳 に 屬 し 意 を 住 め て 知 ら ん と 欲 し 、 正 勤 を 生 起 し て 方 に 阿 黎 耶 を 滅 盡 す る こ と を 得 、 乃 至 如 來 の 正 法 及 び 似 法 を 受 行 す 、 如 來 の 出 世 に 由 り て 是 の 第 一 希 有 不 可 思 議 の 法 、 世 間 に 顯 現 せ り ﹂ と 。 本 識 の 如 き は 此 の 如 來 出 世 四 種 功 徳 經 に 別 義 に 由 り て 聲 聞 乘 に 於 て 此 識 巳 で に 顯 現 せ り 。 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 一

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 二 と あ る 。 玄 奘 が 譯 し て 愛 樂 欣 喜 と せ る を ば 眞 諦 は 喜 樂 ・ 愛 ・ 習 ・ 著 と 譯 し て ゐ る 、 又 此 譯 で 見 れ ば 増 一 阿 舍 と 四 種 功 穂 經 と の 総 別 關 係 が 一 層 彷 彿 と し て 來 る 、 又 笈 多 譯 の 世 親 攝 論 で 本 文 を 見 れ ば (往 九 摩 ) 然 る に 聲 聞 乘 中 に 於 て 、 亦 た 別 の 道 理 を 以 て 阿 黎 耶 識 を 説 け り 培 一 阿 舍 經 中 に 説 く が 如 し 、﹁ 衆 生 、 阿 黎 耶 を 喜 び 阿 黎 耶 を 樂 ひ 、 阿 黎 耶 を 集 め 、 阿 黎 耶 を 求 む 、 阿 製 耶 を 滅 せ ん が 爲 め に 正 法 を 説 き た ま ふ 時 、 聽 聞 の 爲 め の 故 に 應 に 耳 に 攝 す ベ し 、 知 ら ん と 欲 す る が 爲 め に 應 さ に 意 を 作 す べ し 、 阿 黎 耶 を 滅 せ ん こ と を 願 ふ が 故 に 法 を 受 け て 法 に 順 ふ 。 如 來 出 世 し 給 ふ が 故 に 此 の 希 有 難 得 の 法 、 世 間 に 顯 現 せ り ﹂ と 、 如 來 出 生 四 種 可 讃 經 中 に 、 是 の 如 き 別 名 を 以 て 阿 製 耶 識 を 聲 聞 乘 中 に 已 に 顯 現 せ り 。 と あ る 、 玄 奘 が 異 門 の 密 意 と せ る を 眞 諦 は 別 名 と 云 ひ 、 笈 多 は 別 の 道 理 と し て ゐ る 、 又 日 阿 頼 耶 を ば 喜 ・ 樂 ・ 集 ・ 求 と 譯 し て 居 る 、眞 諦 譯 と 甚 だ 相 近 い 。 固 よ り 同 一 原 本 の 異 譯 で あ る か ら 大 差 あ ら う 筈 が な い 尚 ほ 攝 論 に は 佛 陀 扇 多 の 譯 が あ る 、 扇 多 は 傳 記 が 甚 だ 簡 單 で あ る か ら 明 か で な い 、 然 し 翻 譯 上 の 力 量 は 確 か な も の で あ つ た に 違 い な い 、 傳 記 に も ﹁ 特 に 方 言 を 善 く す ﹂ ( 開 元 録 六 。 結 四 ) と あ る 程 だ か ら 又 彼 れ が 所 譯 の 十 法 經 や 無 畏 徳 菩 薩 經 の 如 き は 菩 提 流 志 が 大 寳 積 經 翻 譯 の 當 時 、 原 典 と 封 照 し て 譯 が 正 確 で あ る と し て 其 儘 彼 の 第 九 會 と 第 三 十 二 會 と に 取 う 入 れ ら れ た の だ か ら 、 謂 は や 譯 經 壇 上 の 試 練 に 通 過 し た わ け で あ る 、 そ れ だ の に ざ う し た も の か 此 攝 論 の 譯 ば か り は 甚 だ 意 を 得 な い 、 即 ち 、

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然 る に 復 た 異 名 を も て 小 乘 經 に も 彼 の 識 を 説 け り 、 増 一 阿 含 經 は 説 く が 如 し 、 喜 樂 阿 黎 耶 世 間 、 及 著 阿 黎 耶 阿 黎 耶 所 成 、拜 求 阿 黎 耶 滅 阿 黎 耶 故 。 説 法 時 親 近 正 聽 、 起 随 順 心 許 取 法 及 次 法 如 來 出 世 間 時 、 世 間 説 此 希 有 法 故 。 と 如 來 出 思益 經 中 に 説 け り 、 此 義 を 以 て の 故 に 小 乘 經 に も 亦 た 異 名 を 以 て 此 の 阿 黎 耶 識 を 説 け る な り 。 と あ り 、 此 喜 樂 阿 黎 耶 世 間 は 當 然 ﹁ 世 間 喜 樂 阿 黎 耶 ﹂ と す ベ き で あ る が 元 か ら か う あ つ た の で 後 人 の 篤 誤 で は な い 。 何 と な れ ば す ぐ 次 の 文 に 、 如 來 阿 舍 中 所 説 、 喜 樂 阿 黎 耶 世 間 、 如 是 等 句 者 云 々 と 云 つ て ゐ る か ら 或 は 是 れ 直 譯 か ら 來 た 形 で あ ら う 。 然 し 如 來 出 思益 經 だ け は 四 と 思 と の 音 通 か ら 來 た 寫 誤 と 思 は れ る 、 兎 角 攝 論 諸 譯 中 最 も 難 解 の 譯 で あ る 、 已 上 攝 論 の 四 阿 頼 耶 の 文 を 諸 譯 對 照 し た が 此 れ に 依 つ て 成 唯 識 論 巻 三 に は 、 餘 部 の 經 の 中 に も 亦 た 密 意 を も つ て 阿 頼 耶 識 に 別 の 自 性 あ り と 説 け り ⋮ ⋮ 説 一 切 有 部 の 増 一 經 の 中 に も 亦 た 密 意 を 以 て 此 れ を 説 い て 阿 頼 耶 と 名 け た り 、 謂 く 愛 阿 頼 耶 、 樂 阿 頼 耶 、 欣 阿 頼 耶 、 喜 阿 頼 耶 な り 云 々 と 云 う て あ る 。 此 れ で 四 阿 頼 耶 の 文 は 増 一 阿 舍 に 是 非 な く て は な ら な い 筈 と な つ た 、 少 く と も 類 文 だ 小 乘 耶 典 籍 に 於 け る 阿 頼 四 三

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 四 け で も つ き と め な く て は な ら な い 、 尚 ほ 先 哲 が 擧 げ た 雜 阿 含 の 文 の 吟 味 、 佛 本 行 集 經 の 吟 味 、 兎 角 一 般 小 乘 典 籍 に 阿 頼 耶 の 語 が め る か な い か 、 あ れ ば 何 と あ る か 、 何 と 使 用 さ れ て 居 る か 、 其 意 味 は ざ う か 、 果 し て 然 る か 等 の 問 題 を 解 か う と す る の が 此 一 篇 の 試 み で あ る 。 二 増 一 阿 含 經 の 阿 頼 耶 先 哲 も 既 に 屡 々 考 證 し た や う に 増 一 阿 舍 に は 明 か に 四 阿 頼 耶 を 説 い た 文 は な い 、 だ が 吾 人 は 無 著 所 引 の 文 を 以 て 壇 一 阿 含 霧 十 七 、 四 諦 品 第 三 經 (大 正 藏 二 、 三 ) と 同 類 の も の と 見 た い 、 此 經 に は 四 未 曾 有 法 を 説 か れ て 居 る 、 此 四 未 曾 有 法 と は 所 謂 如 來 出 現 の 四 徳 に 當 る も の で 、 若 し 如 來 世 に 出 現 し 給 ふ 時 に は 、 便 ち 四 未 曾 有 法 あ う て 世 に 出 現 せ ん 、 云 何 が 四 と す る や 、 此 の 衆 生 類 、 多 く 所 著 あ り 、 若 し 不 染 著 の 法 を 説 き 給 ふ 時 に は 亦 た 復 た 承 受 し て 之 れ を 修 行 し 、 心 に 遠 離 せ す 、 若 し 如 來 世 に 出 現 し た ま ふ 時 に は 此 四 未 曾 有 法 あ り て 世 に 出 現 す 、 是 れ を 初 未 曾 有 法 、 世 に 出 現 す と 謂 ふ 。 と あ り 、 此 れ を 第 一 の 未 曾 有 法 と し て 、 第 二 は ﹁ 輪 縛 し て 住 ら す 恒 に 五 道 に 在 る ﹂ に 就 い て 、 第 三 は ﹁ 恒 に 僑 慢 を 懐 き て 須 叟 も 去 て ざ る ﹂ に 就 い て 、 第 四 に は ﹁ 無 明 に 覆 は れ た る ﹂ に 就 い て 、 説 法 教 化 し 、 衆 生 が そ れ に 随 順 す る を 四 未 曾 有 法 と し て あ る 、 即 ち 、 是 れ を 阿 難 よ 、 若 し 如 來 世 に 出 現 し た ま ふ 時 に は 、 便 ち 此 の 四 末 曾 有 法 あ り て 世 に 出 現 す と 謂 ふ ﹂

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と あ る 。 此 文 だ け で は 阿 頼 耶 を 見 難 い が 、 前 後 の 文 勢 は 全 く 彼 の 攝 論 の 所 引 に 一 致 す る こ と を 注 意 せ ね ば な ら な い 、 而 し て 之 れ を 巴 刑 文 増 一 阿 舍 經 四 法 品 の 第 百 二 十 八 經 (學 者 、 往 々 第 一 二 七 經 と 對 應 さ せ て ゐ る が 、 そ れ は 蓋 し 數 字 の 錯 誤 で あ ら う ) と 對 照 す る に 全 く 一 致 す る 、 即 ち 彼 の 經 に 比 丘 等 よ 、 如 來 應 供 等 正 覺 の 出 現 し 給 へ る に は 四 種 の 不 可 思 議 な る 未 曾 有 の 法 が 顯 現 す 、 何 等 を か 四 種 と す る 、 謂 く 比 丘 等 よ 、 人 々 は 阿 頼 耶 を 欣 び 阿 頼 耶 を 愛 し 阿 頼 耶 を 樂 し む 。 如 來 が 阿 頼 耶 な き 注 を 教 示 せ ら る 、 時 、 聽 聞 し 傾 聽 し 智 解 心 を 起 す 、 比 丘 等 よ 、 是 れ 如 來 應 供 等 正 畳 の 出 現 に よ り て 第 一 の 不 可 思 議 な る 未 曾 有 法 が 顯 現 す と な す 。 と あ る 、 而 し て 第 二 は 惰 慢 に 就 い て 、 第 三 は 輪 轉 に 就 い て 、 第 四 は 無 明 に 就 い て 前 後 同 様 の 廣 説 が あ つ て 其 最 後 に 、 又 最 初 の 如 く 、 比 丘 等 よ 、 是 等 を 如 來 應 供 等 正 畳 の 出 現 に よ り て 四 種 の 不 可 思 議 な る 未 曾 有 法 が 顯 現 す と 謂 ふ と 結 ん で 居 る 。 其 原 文 は 左 の 通 り 。 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 五

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 六 之 れ に よ つ て 見 れ ば 玄 奘 が 愛 樂 欣 喜 の 四 阿 頼 と し た も の が 、 巴 喇 で は の 三 阿 頼 耶 と な り 、 漢 譯 で は ﹁ 多 有 所 著 ﹂ と 略 さ れ て ゐ る 、 此 れ は 意 譯 の 結 果 で あ ら ね ば な ら

(9)

ぬ 、 何 と な れ ば 巴 利 で は 第 二 に 僑 慢 に 就 て も ﹁ 衆 生 僑 慢 を 欣 び 、 僑 慢 を 愛 し 、 僑 慢 を 樂 し む ﹂ と 同 じ や う な 事 を く り 返 し て 居 る が 漢 譯 で は ﹁ 此 衆 生 、 恒 に 橋 慢 を 懐 き て 須 里 も 去 て す ﹂ と 意 譯 し て 居 り 、 又 第 三 に 輪 縛 に 就 て も 巴 利 で は ﹁ 輪 廻 を 欣 び 、 輪 廻 を 愛 し 、 輪 廻 を 樂 し む ﹂ と あ る を 、 漢 譯 で は ﹁ 輪 轉 し て 住 ら ず 恒 に 五 道 に 在 り ﹂ と 譯 し て 居 る か ら 、 又 愛 樂 欣 喜 は 殆 ん ど 皆 同 じ 意 義 の 異 語 で あ る 如 く も 同 義 異 語 で あ る 、 唯 に は 奮 勵 努 力 す る 義 や 激 揚 す る 義 な ご も あ る 故 、 集 む 、 求 む な ど の 譯 が 出 で 來 た の で あ ら う 。 又 次 に ﹁ 若 し 不 染 著 の 法 を 説 き 給 ふ 時 に は ﹂ 等 の 、 こ の 不 染 着 法 と は 今 云 ふ ﹁ 阿 頼 耶 な き 法 ﹂ の こ と で 、 阿 頼 耶 は こ 、 で 染 着 と 譯 さ れ た 事 が わ か る 、 此 れ か ら 逆 観 す る と ﹁ 多 有 所 著 ﹂ は 明 か に 愛 樂 し 悦 樂 す る 阿 頼 耶 の 該 攝 譯 に 違 ひ な い 。 尚 ほ 此 經 は 無 著 の 所 引 で あ る 事 を 明 か に す る 爲 め に 次 下 の 文 句 に 就 い て 研 べ よ う 。 玄 奘 が 恭 敬 攝 耳 と せ る は 。 に 善 く 會 つ て ゐ る 、 直 譯 す れ ば ﹁ 善 く 聽 い て 耳 を 傾 く ﹂ と な る か ら 、 此 耳 を 生 か す 爲 め に 攝 耳 や 屬 耳 な ご の 譯 が 出 て 來 た の で あ る 、 又 扇 多 が 親 近 正 聽 と 之 れ を 譯 し た の は 。 に 陪 侍 す る 義 も あ る か ら で あ る 、 又 玄 奘 が 住 求 解 心 、 眞 諦 が 住 意 欲 知 、 笈 多 が 爲 欲 知 故 應 作 意 な ど 、 譯 し た の は に 善 く 符 つ て ゐ る 、 又 彼 等 が 甚 奇 希 有 正 法 と か 希 有 不 可 思 議 法 と か 希 有 難 得 法 と 云 つ た の は 今 の で あ つ て 増 一 阿 含 に 未 曾 有 法 と 譯 し た も の と 相 應 す る 、 斯 う し て 見 る と 無 著 が 云 ふ 所 の 増 一 經 の 如 來 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 七

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 八 出 現 四 徳 經 は 、 全 く 此 巴 利 文 の 増 一 經 や 漢 譯 の そ れ と 同 種 類 の 經 で あ る こ と が 肯 か れ る 、 但 し 同 種 類 と は 云 は れ 得 る け れ こ も 全 く 此 れ で あ る と は 云 ひ 得 な い 、 何 せ な ら 無 著 所 引 の 經 は 漢 譯 や 巴 喇 の 經 よ り も 少 し 廣 い か ら 。 又 此 阿 頼 耶 は 僑 慢 、 輪 廻 、 無 明 な ど い 一 組 に 見 ら れ 得 る も の で あ る 事 も 、 三 阿 頼 耶 を 意 譯 す れ ば 多 有 所 著 と 該 攝 せ ら れ 得 る 事 も 明 か と な つ た 、 結 局 阿 頼 耶 は 愛 著 の 事 で あ り 貪 愛 の 想 ひ で あ る 、 佛 音 が 此 文 を 註 し て 愛 欲 と 我 見 と に 依 つ て 執 着 す る こ と で 、 つ ま り 五 欲 の 煩 惱 の 事 だ と 云 ふ て ゐ る 、 其 事 は 又 後 に 詳 し く す る で あ ら う 。 爾 ほ 増 一 阿 含 を 巴 漢 相 互 に 對 照 す る と 阿 頼 耶 と 云 ふ 語 が ま だ 二 三 出 て 來 る 、 次 に そ れ を 吟 味 し よ う 漢 譯 増 一 阿 含 巻 十 二 、 三 寳 品 の 初 め の 經 に 、 法 に 歸 依 す る 事 を 明 し て 居 る 中 、 所 謂 諸 法 と は 有 漏 、 無 漏 、 有 爲 、 無 爲 、 無 欲 、 無 染 、 滅 盡 涅 槃 な り 、 然 る に 涅 槃 法 は 諸 法 の 中 に 於 て 最 尊 最 上 に し て 能 く 及 ぶ 者 な し (大 正 藏 二 、 三 、 六 〇 二 ) と あ る 、 之 れ を 巴 喇 文 増 一 阿 含 四 法 品 の 第 三 十 四 經 で 見 る と 、 比 丘 等 よ 、 す べ て 諸 法 の 有 爲 法 や 無 爲 法 の 中 に て 離 欲 は 最 尊 第 ﹁ な り 、 是 れ 即 ち 傲 慢 を 解 脱 し 、 渇 愛 を 止 息 し 、 阿 頼 耶 を 遠 離 し 、 輪 廻 を 截 斷 し 、 愛 着 を 消 滅 し た る 、 離 欲 滅 盡 の 涅 槃 な り 、 比 丘 等 よ 此 の 最 極 清 淨 の 法 を 信 樂 す る 者 は 結 果 も 亦 最 極 清 淨 な り 。

(11)

と あ る 。 こ ゝ で は 阿 頼 耶 の 遠 離 を 以 て 僑 慢 の 解 脱 や 、 渇 愛 の 止 息 や 、 輪 廻 の 截 斷 な ご ゝ 一 處 に 離 欲 の 中 に 該 括 せ ら れ 得 る も の と し て 其 究 竟 す る 所 は 離 欲 滅 盡 涅 槃 の 境 地 と し て ゐ る 。 此 離 欲 乃 至 涅 槃 の 數 句 を 漢 譯 で は 前 掲 の 如 く 無 欲 無 染 滅 盡 涅 槃 と 略 攝 し て 居 る 、 即 ち 離 欲 の 内 容 た る 傲 慢 解 脱 已 下 愛 着 消 滅 ま で を 唯 無 染 の 一 句 に 攝 在 し た 、 扨 又 佛 音 は 淨 道 論 随 念 行 門 に 此 全 文 を 引 用 し て 一 句 一 句 解 釋 し て お る が 、 阿 頼 耶 の 遠 離 に 就 て は 五 欲 の 貪 著 を 遠 離 す る 事 で あ る と 云 う て ゐ る 、 即 ち 前 の 未 曾 有 經 の 場 合 と 全 く 同 意 見 で あ る 、 此 れ も 後 に 一 束 し て 書 く 事 と す る 。 今 の 文 と 全 く 同 じ 事 が 巴 喇 増 一 阿 含 五 法 品 の 第 三 十 二 經 に 教 誡 の 文 と し て 出 て ゐ る 。 又 巴 利 文 廣 律 の 第 一 、 波 羅 夷 罪 章 の 初 婬 戒 の 説 明 の 中 に も 出 て 來 る ( 此 れ は 巴 利 文 善 見 律 か ら 見 た の で は 手 元 に な く て 未 見 ) そ れ を 四 分 律 五 分 律 の 漢 譯 で 見 る と 、 四 分 律 で は 、 如 來 清 浄 法 中 に 於 て は 、 欲 に 於 て 欲 な く 垢 に 於 て 垢 な く 、 能 く 渇 愛 を 斷 じ 巣 窟 を 破 壊 し 、 衆 の 結 縛 小 典 乘 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 四 九

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 五 〇 を 除 き 、 愛 盡 き て 涅 槃 す (巻 一縮 、 列 三 、 ) と あ る 。 阿 頼 耶 の 遠 離 を ﹁ 巣 窟 を 破 壊 す ﹂ と 譯 し た の は 面 白 い 、 成 程 阿 頼 耶 に は 烏 の 集 と か 塒 と か の 意 も あ る か ら 。 又 次 の 句 に ﹁ 衆 の 結 縛 を 除 く ﹂ と あ る は 吾 人 が ﹁ 今 輪 廻 の 裁 断 ﹂ と 譯 し た も の で 雨 方 の 意 味 は あ る が 矢 張 り 佛 陀 耶 舍 の 譯 が よ り 多 く 公 明 正 大 で あ ら う 、 此 れ も 又 後 に 出 す 。 五 分 律 で は こ 、 が あ ま り 戚 心 し な い 。 能 く 渇 愛 を 斷 じ 、 有 爲 法 を 離 れ 、 無 學 離 欲 に し て 無 爲 の 道 に 向 ふ 、 人 に 示 す の 正 要 は 畢 竟 泥 疸 な り (縮 、 張 一 、 ) と あ る 。 こ 、 の 離 有 爲 法 と あ る の に 一 括 し た も の と 見 へ る が 、 或 は 原 文 が 全 く 別 で あ つ た か も 知 れ な い 〇 五 分 律 の 外 の 所 で は 阿 頼 耶 に 矢 張 り ﹁ 窟 宅 ﹂ の 譯 語 を 用 ひ て ゐ る か ら 。 此 外 に 巴 刑 増 一 經 四 法 品 の 第 五 十 一 經 と 五 法 品 の 第 四 十 五 經 と の 各 最 後 の 偶 に 、 際 ほ と り な き わ だ つ み の い と 恐 ろ し き 海 原 ぞ 寳 千 種 の 棲 家 な れ 群 れ 人 集 ひ あ こ が れ て 流 れ く て 行 末 は 小 川 の 如 く わ だ つ み へ

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と あ る 、 こ ゝ で は 佛 音 が 註 し て 阿 頼 耶 は 棲 家 の こ と だ と あ る 、 欲 求 の 事 と 解 し て ﹁ い と 恐 ろ し き 海 原 に 千 種 の 寳 、 求 め ん と ﹂ と 譯 し て も 然 る べ き だ と 思 ふ が -で 阿 頼 耶 に は 棲 家 や 巣 窟 や 窟 宅 な ど の 義 も あ り 、 随 つ て 唯 識 學 徒 が 能 藏 の 義 と 稱 す る も の も 字 義 だ け で は 大 小 乘 共 許 の 説 で あ り 、 執 藏 の 義 も 唯 識 獨 特 の 説 明 を さ し 措 い て は 無 論 共 通 し た も の で あ る わ け だ 。 増 一 阿 含 に 於 け る 阿 頼 耶 の 語 句 と し て は 大 概 此 の 如 き も の と 思 ふ 。 三 中 阿 含 經 の 阿 頼 耶 巴 喇 文 中 阿 含 經 第 二 十 六 經 ( 聖 尋 求 經 ) に 、 釋 尊 が 菩 提 樹 下 に 成 道 し て か ら 其 所 得 の 法 を 説 く べ き か 否 か に 就 い て 思 考 し 給 ふ 一 段 に 、 比 丘 等 よ 、 其 時 に 我 は か く の 如 く 思 へ り 、 我 が 證 得 し た る 此 法 は 甚 深 に し て 難 知 難 見 微 妙 寂 静 な り 俗 智 の 企 て 及 ぶ べ き 所 に 非 す 、 唯 賢 聖 の み あ つ て よ く 理 解 す べ き 所 た り 。 然 る に 世 の 有 情 は 阿 頼 耶 を 欣 び 、 阿 頼 耶 を 愛 し 阿 頼 耶 を 樂 し む 。 阿 頼 耶 を 欣 び 阿 頼 耶 を 愛 し 阿 頼 耶 を 樂 し む 有 情 は 、 此 の 因 縁 生 起 の 道 理 を 理 解 す る こ と 難 し 。 又 此 の 諸 蘊 の 寂 静 、 諸 依 の 棄 捨 、 愛 欲 の 清 滅 、 離 欲 寂 滅 涅 槃 の 道 理 を 理 解 す る こ と 街 ほ 難 し 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 五 一

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 五 二 と あ る 。 こ 、 に は 阿 頼 耶 の 語 を 屡 々 使 用 し て ゐ る け れ ざ 、 其 用 法 は 増 一 阿 舍 の 四 未 曾 有 法 經 の と 全 く 同 様 で あ る 。 之 れ を 漢 譯 の 中 阿 舍 に 對 照 す る と 此 經 の 前 後 は 同 經 巻 五 十 六 の 第 二 百 四 經 ( 羅 摩 經 ) と よ く 劃 應 す る け れ ど も 今 引 用 す る 一 段 は 缺 け て ゐ る 、 反 つ て 律 文 や 佛 傳 に 其 對 應 文 が 出 て 來 る 、 尤 も 長 阿 含 の 大 本 經 に 照 應 す る 文 が あ る が そ れ は 釋 尊 の 思 惟 行 で な く て 毘 婆 戸 佛 の に な つ て 居 る 、 其 の 事 は 後 に 一 項 を 設 け て 述 べ る こ と 、 し て 、 今 は 先 づ 漢 譯 の 佛 本 行 集 經 の 文 と 比 較 し て 見 よ う 。 即 ち 該 經 巻 一ご 十 ご 一 (梵 天 勘 請 品 ) に 、 爾 時 世 尊 、 是 の 如 き の 念 を 作 し 給 ふ 、 我 が 所 證 の 法 は 、 此 法 甚 深 に し て 難 見 難 知 な り 、 微 塵 等 の 如 く 豊 察 す ベ か ら す 、 思 慮 な き 處 な り 、 思 議 の 道 に あ ら す 、 我 れ に 師 あ る こ と な く 、 巧 み な る 智 の 匠 み を も て 能 く 我 れ に 此 法 を 證 せ ん こ と を 激 ふ べ き も の あ る こ と な し 。 但 し 衆 生 の 輩 は 阿 羅 耶 に 著 し 阿 羅 耶 を 樂 み 阿 羅 耶 に 住 し 、 樂 著 處 を 喜 べ り 、 心 に 貪 多 き が 故 に 此 の 處 は 見 る こ と 難 し 、 そ の 處 と は 所 謂 十 二 因 縁 な り 、 十 二 因 縁 に は 處 あ り て 相 ひ 生 す 、 此 處 は 一 切 の 衆 生 、 覩 見 す る と 能 は す 、 唯

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佛 の み 能 く 知 れ り 、 又 一 切 處 の 疑 道 は 捨 て 難 し 、 一 切 の 邪 道 を 滅 盡 し て 餘 り な く 、 愛 の 染 處 盡 き て 皆 な 慾 を 離 れ た る は 寂 滅 涅 槃 な り 。 と あ る 。 此 文 の 如 微 塵 等 の 數 句 と 、 後 の 疑 道 難 捨 邪 道 滅 盡 の 句 と は 少 し の 字 の 轉 説 で さ う な り 得 る 可 能 性 が あ る 、 大 膿 に 於 て 善 く 巴 喇 の 聖 尋 求 經 の 文 と 一 致 し て ゐ る か ら 定 め し 此 雨 者 の 第 一 原 典 で は 同 様 で あ つ た ら う 。 又 此 本 行 集 經 で は 阿 羅 耶 に 細 註 し て ﹁ 階 に 所 著 處 と 言 ふ ﹂ と あ る か ら 是 れ 衆 生 が 貪 著 す る 對 象 で 所 謂 樂 著 處 と 譯 し た の が 矢 張 り 阿 羅 耶 の こ と で あ ら う 。 此 一 聯 の 文 と 全 く 同 様 の 文 が ま た 巴 利 律 文 大 會 部 第 一 受 戒 腱 度 に 出 で 居 る (此 れ も 原 典 が 手 元 に な く て 國 譯 大 藏 經 の 中 の 大 品 で 見 た ) 之 れ を 四 分 律 巻 三 十 一 に 對 照 す る と 、 爾 時 世 尊 ⋮ ⋮ 是 の 念 を 作 し て 言 は く 、 我 れ 今 已 で に 獲 た る 此 法 は 甚 深 に し て 難 解 難 知 な り 、 永 寂 体 息 微 妙 最 上 な り 、 智 者 能 く 知 る 、 愚 者 の 所 習 に 非 す 、 衆 生 は 異 見 、 異 怨 、 異 欲 、 異 命 な り 、 異 見 に 依 り て 模 窟 を 樂 し む 衆 生 是 を 以 て 樔 窟 を 樂 し む が 故 に 縁 起 法 の 甚 深 な る に 於 て は 解 し 難 し 、 復 た 甚 深 難 解 の 處 あ り 、 諸 欲 を 滅 し 愛 盡 き た る 涅 槃 な り 、 是 の 處 亦 た 見 難 し (縮 、 列 、 五 ) と あ る 、 此 處 に は 阿 頼 耶 を 樔 窟 と 譯 し た 、 前 の 巣 窟 と 全 く 同 じ 意 味 で あ る 、 こ れ ま た 矢 張 り 本 行 集 經 の 所 著 處 や 樂 著 處 と 同 意 で あ る 。 但 し 異 見 、 異 忍 等 の 句 に 當 る も の は 外 に な い 。 又 五 分 律 巻 十 五 に も 我 が 所 得 の 法 は 甚 深 微 妙 に し て 、 難 解 難 見 な り 、 寂 寞 無 爲 な り 、 智 者 の 知 る 所 に し て 愚 の 及 ぶ 所 に 小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 五 三

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 五 四 非 す 、 衆 生 は 三 界 の 窟 宅 に 樂 著 し イ・ 此 の 諸 業 を 集 む 、 何 に 緑 り て か 能 く 十 二 因 縁 の 甚 深 微 妙 な る 難 見 の 法 を 悟 ら ん や 、 又 復 た 一 切 の 行 を 息 め 諸 流 を 截 斷 し 恩 愛 の 源 を 盡 く し た る 無 餘 泥 恒 の 盆 々 復 た 甚 難 な る を や (縮 , 張 、 一 ) と あ る が 甚 だ 巧 妙 な 譯 し ぶ り で め る 。 此 處 に 阿 頼 耶 を 三 界 の 窟 宅 と し て あ る も の は 頗 る 意 を 得 た も の と 云 は ね ば な ら ぬ 。 全 體 の 繰 り 返 し を ﹁ 三 界 の 窟 宅 に 樂 著 し て 此 の 諸 業 を 集 む ﹂ と し た の は 。 の 義 が あ り に の 義 が あ り 、 兩 者 が 互 に 交 渉 し て 或 は と 同 じ 意 に 用 ひ ら れ て 愛 樂 欣 喜 の 同 義 異 語 と な り 、 或 は 成 る べ く 別 々 に 見 て 阿 黎 耶 を 集 む (笈 多 ) 、 阿 犁 耶 の 所 成 ( 扇 多 )、 諸 業 を 集 む な ど 、 譯 し た も の で あ ら う 、 随 つ て 此 時 に は 阿 頼 耶 は 業 の こ ゝ と な る 、 佛 音 が 中 阿 含 の 此 文 に 註 し た 中 に 、 恰 も 大 王 が 園 林 に 遊 戯 享 樂 し て 歸 る を 忘 れ る が 如 し と 云 ふ て あ る が 、 さ う し て 様 々 の 意 義 を 総 合 し て 、 如 何 に も 衆 生 が 三 界 に 執 着 し て ゐ る 光 景 を 如 實 に 展 開 し た の が 此 で あ る 所 か ら 、 譯 者 に 色 々 の 翻 じ 方 も 出 て 來 る 所 以 で あ る が 、 今 の ﹁ 三 界 の 窟 宅 に 樂 著 し て 此 の 諸 業 を 集 む ﹂ と し た の が 、 な か く に 捨 て 難 い 趣 き を た ゴ よ は し て 居 る 。 又 巴 喇 文 中 阿 含 經 第 二 十 八 經 ( 大 象 跡 喩 經 ) に 、 世 尊 は 又 實 に 是 の 如 く 説 き 給 へ り 。 因 縁 生 起 を 見 る は 即 ち 法 を 見 る な り 。 法 を 見 る は 即 ち 因 線 生 起

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を 見 る な り と 。 蓋 し 此 の 諸 の 因 縁 生 起 は 即 ち 五 盛 陰 な れ ば な り 。 此 五 盛 陰 に 於 て 希 望 し 貪 著 し 随 順 し 愛 著 す る は 即 ち 悪 の 生 起 な り 。 此 五 盛 陰 に 於 て 愛 欲 を 止 息 し 情 欲 を 棄 捨 す る は 即 ち 悪 の 消 滅 な り 、 此 の 處 に 達 し て こ そ 方 に 大 に 爲 す あ る 長 老 の 比 丘 と は 云 は め 。 と あ る 。 此 處 に 貪 著 と 譯 し た る は 原 文 の 阿 頼 耶 で あ る 、 即 ち 悪 縁 起 の 流 轉 門 を 説 明 し て 五 蘊 に 於 け る ⋮と 欲 望 や 親 近 や 執 着 と 一 様 に 阿 頼 耶 を 用 ひ て ゐ る か ら 、 五 薀 に 貪 著 す る 煩 惱 妄 念 を 意 味 す る 。 之 れ を 漢 譯 中 阿 含 巻 七 の 象 跡 喩 經 ( 第 三 十 ) と 對 照 す る に 大 膿 は 相 應 す る け れ ど 部 分 的 に は 違 つ て ゐ る 、 漢 譯 で は こ 、 を 、 世 尊 は 亦 た 是 く の 如 く 説 き た ま へ り 、 若 し 縁 起 を 見 れ ば 便 ち 法 を 見 る な り 、 若 し 法 を 見 れ ば 便 ち 縁 起 を 見 る な り 、 所 以 は 何 ぞ 、 諸 賢 よ 、 世 尊 は 五 盛 陰 を 説 き て 因 縁 よ り 生 す と せ り 。 色 盛 陰 、 覺 、 想 、 行 、 識 盛 陰 な り 。 彼 れ 此 過 去 未 來 現 在 の 五 盛 陰 を 厭 ひ 、 厭 ひ 巳 り て 便 ち 欲 な く 、 欲 な け れ ば 巳 に 便 小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 五 五

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 五 六 ち 解 脱 せ る な り 、 解 脱 し 巳 り て 便 ち 解 脱 を 知 り 生 巳 に 盡 き 、 梵 行 巳 に 立 ち 所 作 巳 に 辨 じ て 更 に 有 を 更 け す 如 眞 を 知 る 、 諸 賢 よ 、 是 れ を 比 丘 の 一 切 大 學 と 謂 ふ 。 と あ る 、 漢 譯 の 方 は 巴 利 文 よ り 遙 か に 詳 細 で あ る が 阿 頼 耶 等 に 對 應 す べ き 句 が な い 。 又 巴 利 文 中 阿 含 第 四 十 四 經 ( 小 方 廣 經 )に 、 毘 舍 怯 と 法 樂 尼 と の 問 答 が あ る 、 毘 舍 伎 が 問 う て 曰 ふ 、 人 我 の 消 滅 と は 何 で あ る か と 。 法 樂 尼 が 答 へ て 日 ふ や う 、 毘 舍 怯 尊 者 よ 、 彼 の 渇 愛 を 悉 く 滅 し て 清 淨 寂 滅 棄 捨 遠 離 解 脱 し 、 阿 頼 耶 な き 境 地 、 こ れ ぞ 毘 含 怯 尊 者 よ 、 人 我 の 清 滅 と 世 尊 は 説 き 給 ふ 。 と あ る 、 此 れ を 漢 譯 の 中 阿 含 巻 五 十 八 法 樂 比 丘 尼 經 ( 第 二 百 十 經 ) と 對 照 す る に 、 彼 れ に は 、 色 盛 陰 斷 無 餘 、 捨 吐 盡 不 染 感 息 没 也 、 覺 、 想 、 行 、 識 盛 陰 斷 無 餘 、 捨 吐 盡 不 染 滅 息 没 也 、 是 謂 自 身 滅 と あ る 、 即 ち 巴 利 文 の 渇 愛 を 擴 張 し て 五 薀 に 就 い て 斷 無 餘 、 捨 吐 盡 、 不 染 滅 息 と し て ゐ る 、 こ ゝ の 不 染 が に 相 當 す る で あ ら う 。 又 此 巴 利 文 と 全 く 同 様 な 筆 法 で 第 百 四 十 一 經 の 諦 分 別 經 に は 滅 諦 の 説 明 に 用 ひ て ゐ る 、 即 ち 、

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尊 者 よ 、 是 く の 如 く 渇 愛 を 悉 く 滅 し て 清 淨 寂 滅 棄 捨 遠 離 解 脱 し 阿 頼 耶 な き 、 こ れ を 苦 滅 聖 諦 と 説 く 之 れ を 漢 譯 で は 中 阿 含 巻 七 の 第 三 十 一 經 ( 分 別 聖 諦 經 ) に 、 ⋮ ⋮ 解 脱 、 不 染 、 不 著 、 斷 捨 、 吐 盡 、 無 欲 、 滅 止 没 者 、 是 名 苦 滅 ⋮ ⋮ と 譯 し て ゐ る 。 尚 ほ 巴 利 文 中 阿 含 の 第 九 十 八 經 の 中 の 第 四 十 二 偈 に も 阿 頼 耶 の 語 が あ る が 、 此 偈 だ け は 法 句 經 の 第 四 百 十 一 偈 に も 出 て ゐ る し 、 又 此 經 の 全 文 は の 大 品 第 九 に も 出 て 居 る か ら 後 節 に 於 て 其 等 を 一 括 し や う ( 巴 利 佛 典 刊 行 會 出 版 の 中 阿 含 で も 此 經 は つ て 居 る ) 四 雜 阿 含 經 の 阿 頼 耶 巴 利 文 雜 阿 含 で は 第 六 梵 天 篇 の 第 一 章 、 第 一 段 請 問 品 に 釋 尊 成 道 後 の 思 惟 行 の 一 段 が あ る 、 此 れ は 全 く 前 に 引 い た 中 阿 含 の 文 と 同 様 で ﹁ 我 が 所 得 の 法 は 甚 深 に し て 難 知 難 見 な り ⋮ ⋮ ﹂ と あ る 、 其 中 に 三 阿 頼 耶 を 述 べ る こ と も 又 全 く 中 阿 含 や 、 乃 至 増 一 阿 含 の 未 曾 有 法 經 と 同 様 で あ る 。 漢 譯 の 方 で は 此 れ に 相 當 す る 文 を 未 だ 見 な い 。 又 巴 利 文 で は 第 五 十 五 の 預 流 篇 第 五 勝 徳 伽 陀 章 、 第 一 果 報 品 に 増 一 阿 含 の 海 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 五 七

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 五 八 原 の 歌 が 出 て ゐ る 、 又 第 五 十 六 の 諦 篇 、 第 二 轉 法 輪 章 、 第 一 世 尊 説 法 品 に は 中 阿 含 の 分 諦 聖 諦 經 の 同 様 の 記 載 が あ る 。 又 第 四 十 三 の 無 爲 篇 、 第 二 章 、 第 三 十 九 に 無 阿 頼 耶 の 事 が あ る 。 無 阿 頼 耶 比 丘 等 よ 、 我 は 汝 等 に 無 阿 頼 耶 と 無 阿 頼 耶 に 至 る 道 と を 説 く と あ る 、 無 阿 頼 耶 と は 涅 槃 で 、 其 れ に 至 る 道 と は 八 正 道 等 で あ る 、 即 ち 滅 諦 と 道 諦 と の 事 を 云 ふ 。 是 く の 如 く 巴 利 文 の 雜 阿 含 に は 屡 々 阿 頼 耶 の 語 が 出 て 來 る け れ ど も 漢 譯 の 方 で は そ れ に 相 當 す る 文 を 見 な い 。 倶 舍 論 に 雜 阿 含 を 引 い て 阿 頼 耶 の 語 を 出 し て 居 る も の 、 吟 味 は 後 で す る で あ ら う 。 五 長 阿 含 經 の 阿 頼 耶 巴 喇 文 長 阿 含 で は 第 十 四 篇 大 施 經 の 第 三 章 毘 婆 尸 佛 と 大 梵 と の 章 の 初 め に 毘 婆 尸 佛 が 初 成 道 の 思 惟 行 を 叙 す る 一 段 が あ り て 、 そ れ が 全 く 中 阿 含 や 雜 阿 含 や 律 文 等 の 文 と 一 致 す る 之 れ を 漢 譯 の 長 阿 含 巻 一 大 本 經 で は 、 毘 婆 戸 佛 、 閑 静 處 に 於 て 復 た 是 の 念 を 作 し た ま は く 、 我 れ 今 巳 に 得 た る 此 の 無 上 の 法 は 、 甚 深 微 妙

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に し て 難 解 難 見 な り 、 息 滅 清 淨 な り 、 智 者 の 知 る 所 に し て 是 れ 凡 愚 の 能 く 及 ぶ 所 に 非 ざ る な り 、 斯 れ 衆 生 は 異 忍 、 異 見 、 異 受 、 異 學 な る に 由 る 。 彼 の 異 見 に 依 り て 各 々 求 む る 所 を 樂 し み 、 各 々 習 ふ 所 を 務 む 、 是 の 故 に 此 の 甚 深 の 因 縁 に 於 て 解 了 す る こ と 能 は す 、 然 も 愛 盡 き た る 涅 槃 は 倍 々 復 た 知 り 難 し 。 と あ り 、 こ ゝ に 異 怨 、 異 見 等 の 句 を 挿 ん で 居 る こ と は 四 分 律 と 同 様 で あ る か ら 斯 う し た 一 傳 も あ つ た こ と 、 思 は れ る 。 こ ゝ に は 例 の 三 阿 頼 耶 を ﹁ 各 樂 所 求 、 各 務 所 習 ﹂ と し て あ る 、 之 れ を 五 分 律 の ﹁ 樂 著 三 界 窟 宅 集 此 諸 業 ﹂ と 兩 々 相 對 し て 蓋 し 三 阿 頼 耶 意 譯 の 雙 壁 と 云 へ や う 。 六 小 阿 含 經 其 他 巴 利 文 小 阿 含 經 に て は 、 先 づ 法 句 經 の 第 四 百 十 一 偈 に 、 阿 頼 耶 な く て 自 覺 あ り 疑 な く て 甘 露 の 道 に 入 れ る 彼 れ を 我 は 婆 羅 門 と 日 ふ と あ り 、 此 れ を 漢 譯 の 法 旬 經 に は 、 小 乘 典 籍 に 於 は ろ 阿 頼 耶 五 九

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 〇 身 を 棄 て ゝ 猗 る な く 異 音 を 誦 せ す 甘 露 の 滅 を 行 す 是 れ を 梵 志 と 謂 ふ と 譯 し て 居 る 、 こ ゝ に は 阿 頼 耶 を 身 と 見 て ゐ る 身 と は 依 身 で 依 處 、 窟 宅 な ど の 譯 語 を 用 ふ る 學 者 も あ る 、 併 し 佛 音 は ﹁ 此 處 に 阿 頼 耶 と 云 ふ は 愛 著 な り ﹂ と 註 し て ゐ る 、 何 れ も 通 す る か ら 取 捨 任 情 だ ら う 。 又 巴 利 文 本 事 經 に は 増 一 阿 含 に 於 け る ﹁ 阿 頼 耶 遠 離 ﹂ と 同 様 の 文 が あ る 。 修 多 尼 波 多 に は 蛇 品 第 百 七 十 七 偈 に 、 雪 山 の 夜 又 が 悦 山 の 夜 又 に 樹 し て 世 尊 を 讃 嘆 し た 言 葉 が あ る 、 即 ち 、 よ み て 二 よ な き 御 名 、 妙 き 義 の 見 者 て 智 の 施 し 者 、 欲 の 阿 頼 耶 に 捉 は れ す す べ て 明 る き 智 者 、 聖 り の 道 を 歩 み ま す 大 仙 を 、 を う が み ま う せ

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と あ る 、 こ ゝ に は 欲 阿 頼 耶 と あ る 、 佛 音 は 之 れ を 愛 著 と 妄 見 と に 依 る 五 欲 の 耽 著 と 解 し て 居 る 。 又 此 經 の 大 品 第 五 百 三 十 五 偶 に は 、 世 尊 が と 云 ふ 遊 行 外 道 に 對 す る 教 誡 が あ る 。 有 漏 と 阿 頼 耶 を 斷 ち 切 れ る 智 慧 者 は 胎 に 堕 つ る な し 三 つ の 想 ひ を 却 け て 汚 泥 に 染 ま ぬ 人 を こ そ 聖 者 と 人 は た ゝ ふ ら め 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 六 一

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 二 胎 に 堕 す と は 生 々 死 々 し て 流 轉 す る こ と 、 三 想 と は 欲 想 、 瞑 想 、 害 想 の こ と 、 此 處 に 云 ふ 阿 頼 耶 も 欲 貪 の こ と で あ る 。 又 第 六 百 三 十 五 偈 は 法 句 經 の 偶 と 全 く 同 じ で 、 即 ち 中 阿 含 の で あ る 。 扨 倶 舍 論 巻 十 六 に 見 聞 覺 知 を 論 す る 中 、 或 る 契 經 を 引 證 し て 、 契 經 に 説 か く 、 佛 、 大 母 に 告 げ た ま は く 、 汝 が 意 に 於 て 云 何 、 諸 の 所 有 の 色 は 汝 が 眼 見 に 非 ず 汝 が 曾 見 に 非 す 、 汝 が 當 見 に 非 す 、 見 ん と 希 求 す る に 非 す 、 汝 、 此 れ に 因 り て 欲 を 起 し 貪 を 起 し 、 親 を 起 し 、 愛 を 起 し 、 阿 頼 耶 を 起 し 、 尼 延 底 を 起 し 、 耽 著 を 起 す と せ ん や 否 や ⋮ ⋮ と あ る を 、 先 哲 が 考 證 し て 是 れ 漢 譯 雜 阿 含 巻 十 三 の 第 三 百 十 二 經 で あ ら う と 云 ふ 、 其 經 に は 、 佛 , 摩 羅 迦 舅 に 告 げ た ま は く 、 若 し 眼 、 未 だ 曾 て 色 を 見 す ば 、 汝 當 に 見 ん と 欲 し て 彼 の 色 に 於 て 欲 を 起 し 、 愛 を 起 し 、 念 を 起 し 、 染 著 を 起 す べ き や 否 や ⋮ ⋮ と あ る 、 な る 程 此 れ は 倶 舍 所 引 の 對 應 文 で あ ら う 。 併 し 阿 頼 耶 と 云 ふ 語 は ど の 句 に 當 る で あ ら う か 。 染 著 を 起 す と あ る に 當 る と 先 哲 は 見 て 居 る が 、 今 の 場 含 は 甚 だ 不 確 實 に 思 は れ る 、 む し ろ 耽 著 を 起 す と あ る 句 と 相 應 す る の か も 知 れ な い 、 依 て 之 れ を 念 の 爲 め に 巴 利 の 對 應 文 と 對 照 し て 見 る に 、 そ れ で は 、 よ 、 汝 は 云 何 に 思 ふ や 、 眼 識 、 色 を 見 す 、 又 已 前 に も 見 す 、 又 見 ん と も 思 は ざ る も

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の に 、 欲 或 は 貪 或 は 愛 を 起 す こ と あ り や 。 と あ る 、 漢 譯 雜 阿 含 よ り も 却 つ て 簡 單 に な つ て 居 る 、 又 阿 頼 耶 の 語 も 見 わ な い 、 け れ ど 吾 人 は 是 れ に 依 つ て 段 々 増 加 し た 同 義 異 語 か ら 阿 頼 耶 に も そ う し た 一 聯 の 概 念 を 持 つ と 云 ふ こ と を 想 定 さ れ る 、 少 く と も 阿 頼 耶 の 語 が 此 等 の 句 の 間 に 介 在 し て 、 其 の 爲 め に 前 後 の 思 想 を 亂 す も の で な い と 云 ふ 事 は 明 か で あ る 。 又 佛 音 の 淨 道 論 、 根 諦 品 第 十 六 に は 四 諦 を 説 明 す る 中 に 、 愛 着 す る 物 、 愛 着 、 愛 着 の 消 滅 、 愛 着 を 消 滅 す る 方 便 阿 頼 耶 、 阿 頼 耶 を 愛 樂 す る こ と 、 阿 頼 耶 の 遠 離 、 阿 頼 耶 遠 離 の 方 便 と 兩 々 相 對 し て あ る 、 此 場 含 は 阿 頼 耶 を 以 て 苦 諦 に 當 て 、 居 る か ら 貪 著 の 對 象 即 ち 前 行 の 小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 三

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 四 に 契 當 す る も の で 、 彼 の 三 界 の 窟 宅 や 棟 窟 に 當 る 。 元 來 阿 頼 耶 の 語 は で 粘 着 、 纒 綿 、 凭 倚 、 座 居 、 應 匿 等 の 義 の 動 詞 に 近 く に 、 方 に 等 の 義 あ る 接 頭 辭 が 加 は り て 成 り た る 名 詞 で あ る 故 粘 着 、 纒 綿 等 の 義 か ら 愛 著 、 貪 著 、 執 着 、 欲 貪 等 の 意 味 と な り 、 凭 る 、 座 す 、 隠 る な ど よ り 家 、 住 所 、 隠 居 所 、 貯 藏 所 等 の 意 味 と な り 、 塒 、 宿 り 木 な ど ゝ な る 、 大 毘 婆 沙 論 巻 百 四 十 五 に 、 阿 頼 耶 と は 愛 を 謂 ふ (縮 、 収 、 六 ) と 云 へ る は 佛 音 の と 同 じ く 愛 著 や 愛 欲 を 意 味 し た の で あ る 、 此 れ は 又 能 所 兩 様 に 用 ひ ら れ 、 愛 著 そ れ 自 身 を 指 す こ と あ り 、 愛 著 の 對 象 を 指 す こ も あ る 、 又 爾 者 を 分 別 せ す に 見 る こ と も あ る 。 共 の 内 、 眞 諦 譯 の 世 親 攝 論 に は 愛 著 處 に 就 い て 小 乘 諸 家 の 阿 頼 耶 観 を 概 説 し て 精 細 を 極 め て 居 る 、 即 ち 、 小 乘 の 諸 師 、 阿 黎 耶 の 名 に 約 し て 執 を 起 す こ と 同 じ か ら す 。 阿 黎 耶 と は 何 の 義 を 顯 は さ ん と 欲 す る や 。 愛 著 の 境 界 を 阿 黎 耶 と 名 く 、 此 愛 著 の 境 は 其 義 同 じ か ら す 、 或 は 執 す ら く 是 れ 五 取 陰 な り 、 取 は 是 れ 貪 愛 の 別 名 な り 、 貪 愛 の 所 縁 は 自 の 五 陰 な り 、 名 け て 取 陰 と な す 、 此 取 陰 は 是 れ 衆 生 の 愛 著 處 な る が 故 に 説 い て 阿 黎 耶 と 名 く 。 と 、 是 れ は 阿 頼 耶 を 五 取 蘊 と す る 義 に 就 て 説 明 し た の で あ る 、 又 貪 欲 と 倶 な る 樂 受 と す る 説 に 就 て は 前 説 を 批 評 し て 、

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此 五 陰 は 愛 著 處 に 非 す 、 若 し は 樂 受 な く 、 樂 受 に 於 て 若 し は 顛 倒 な く ば 、 云 何 が 五 陰 に 於 て 愛 著 を 生 せ ん 、 是 の 故 に 樂 受 中 に 於 て 欲 の 顛 倒 心 未 だ 滅 せ ざ る に 由 る が 故 に 、 此 樂 受 は 是 れ 愛 著 處 な り 、 五 陰 が 樂 受 と 相 應 す る が 故 に 五 取 陰 を 説 い て 愛 著 處 と な す 、 是 の 故 に 樂 受 を 正 し く 愛 著 處 と な す 。 と 云 う て あ る 。 次 に 身 見 を 阿 頼 耶 と す る 説 で は 、 若 し 人 、 樂 受 は 是 れ 愛 著 處 と 説 か ば 是 の 義 然 ら す 、 此 受 は 能 く 自 我 を 安 樂 な ら し む る に 由 つ て 、 自 我 を 愛 す る が 故 に 此 樂 受 を 愛 す 、 譬 へ ば 人 、 壽 を 愛 す る が 故 に 壽 の 資 糧 を 愛 す る が 如 し 、 此 の 如 く 我 を 愛 す る が 故 に 我 の 資 糧 を 愛 す 。 と 云 う て ゐ る 、 叉 其 他 の 説 と し て 、 有 が 説 か く 、 壽 命 は 是 れ 愛 著 處 な り と 、 有 が 説 か く 、 道 は 是 れ 愛 著 處 な り と 、 有 が 説 か く 、 六 塵 は 是 れ 愛 著 處 な り と 、 有 が 説 か く 、 見 及 び 塵 は 是 れ 愛 著 處 な り と 、 (縮 、 往 , 八 ) と 云 う て あ る 、 但 し 斯 う し た 詳 し い 説 明 は 玄 奘 譯 に も 笈 多 譯 に も な い 、 獨 り 眞 諦 譯 に の み 出 て あ る 。 七 佛 音 の 解 釋 吾 人 は 巳 上 に 小 乘 經 典 を 中 心 と し て 、 そ れ に 直 接 關 係 し て ゐ る 律 文 や 論 文 を 参 照 し 乍 ら 、 其 中 に 顯 小 乘 典 籍 に 於 け ろ 阿 頼 耶 六 五

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 六 は れ る 阿 頼 耶 の 語 の 使 ひ 方 や 意 味 を 考 へ て 來 た 、 今 度 は 其 等 に 註 し た 佛 音 の 註 釋 書 か ら 再 度 の 吟 味 を し て 此 一 篇 を 結 ぶ 事 と し や う 。 先 づ 増 一 阿 含 の 如 來 出 現 四 徳 經 に 就 て は 、 彼 れ が 斯 う 註 し て 居 る 、 第 八 に 阿 頼 耶 と 云 ふ は 、 愛 欲 と 見 解 と に よ り て 執 著 せ ら る ベ き が 故 に 、 是 れ や が て 五 欲 の 事 を 云 ふ な り 。 此 處 に 欣 悦 す る が 故 に 欣 な り 、 此 阿 頼 耶 を 欣 ぶ は 欣 阿 頼 耶 な り 、 阿 頼 耶 を 愛 す る は 愛 阿 頼 耶 な り 、 阿 頼 耶 を 樂 し む は 樂 阿 頼 耶 な り 、 阿 頼 耶 な き 法 と は 阿 頼 耶 に 背 き 輪 廻 に 依 止 せ ざ る 聖 法 な り 、 聽 聞 と は 聞 く 作 用 な り 、 樂 聽 と は 耳 を 傾 く る な り 、 智 解 心 を 起 す と は 智 解 の 爲 め の 故 に 心 を 警 覺 す る な り 、

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字 版 ) こ 、 に 第 八 と 標 し た は 、 此 經 が 怖 畏 品 の 第 八 に 位 す る 故 で あ る 。 阿 頼 耶 に 就 て こ 、 の 意 味 は 愛 阿 頼 耶 と 見 阿 頼 耶 と の 二 種 を 立 て る 、 愛 阿 頼 耶 は 愛 着 に 依 り て 五 欲 を 執 す る こ と 、 見 阿 頼 耶 は 我 見 に 依 り て 五 欲 を 執 す る こ と 、 言 ひ 換 へ れ ば 三 論 家 が 常 に 云 ふ 愛 論 と 見 論 と で あ る 、 又 此 處 の 欣 阿 頼 耶 は 阿 頼 耶 の 樂 園 と 云 ふ 意 に 佛 音 は 見 て ゐ る 、 即 ち で は な く し て と し て あ る 其 事 は 中 阿 含 の 註 に 至 り て ま す く 著 る し く な る 、 こ ゝ も 此 文 の 如 く な ら ば ﹁ 此 處 に 享 樂 す る が 故 に 樂 園 な り 、 此 阿 頼 耶 の 園 を 阿 頼 耶 阿 羅 摩 と 云 ふ ﹂ と 譯 す べ き で あ る 、 但 し 經 文 で は 皆 一 様 に 欣 阿 頼 耶 と な つ て ゐ る 、 漢 譯 も 皆 同 機 で 一 箇 處 と し て 阿 頼 耶 の 公 園 と 云 ふ 意 に 解 し た も の は な い 、 併 し 佛 音 の 如 く 阿 頼 耶 の 樂 園 と 見 て 、 迷 妄 の 有 情 が 三 界 の 園 林 に 遊 戯 す る と 解 す る も の が 、 却 っ て 經 典 の 意 志 に 適 切 す る か も 知 れ ぬ 。 小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 七

(30)

小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 八 次 に 増 一 經 三 寳 品 の 文 に 就 て は 、 佛 音 が ﹁ 夫 れ 離 欲 は 涅 槃 入 門 の 名 稱 た り 何 と な れ ば 一 切 の 汚 染 を 捨 て 、 一 切 の 欲 望 我 慢 等 の 慢 心 を 解 脱 し て 虚 無 に 達 し 、 一 切 渇 愛 の 止 息 を 得 、 一 切 阿 頼 耶 の 根 絶 に 到 り 、 輪 廻 を 滅 却 し 、 愛 著 を 遠 離 し 、 輪 廻 の 悪 を 破 し 、 一 切 の 情 熱 を 滅 盡 し た る が 故 に 名 を 得 た り

)

と あ る 、 是 れ 漢 譯 に 所 謂 ﹁ 無 欲 無 染 、 滅 盡 涅 槃 ﹂ の 説 明 で 阿 頼 耶 の 遠 離 乃 至 根 絶 は 、 一 面 に 於 て は 無 論 離 欲 の 内 容 を 成 し 、 他 面 に 於 て は 涅 概 究 竟 地 の 展 開 と な る こ と を 説 明 し た も の で あ る 、 佛 音 の 淨 道 論 随 念 行 門 品 第 八 の 第 四 念 休 息 章 ( 念 寂 々 ) に は 、 前 に も 一 言 し た 如 く 此 三 寳 品 の 經 文 を 引 用 し て 精 釋 す る 所 が あ る 、 其 中 今 特 に 必 要 の 部 分 を 抜 き 出 せ ぱ 、 若 し 人 一 切 の 僑 慢 我 慢 等 の 慢 心 を 滅 除 し 解 脱 し て 無 慢 と な れ る 、 是 れ を 慢 解 脱 と 稱 す 、 若 し 人 一 切 の 欲 望 渇 愛 を 止 息 し 滅 盡 し た る 、 是 れ を 愛 止 息 と 稱 す 。 若 し 又 人 あ り て 五 欲 の 貪 著 を 遠 離 し た る を ば 、 是 れ を 阿 頼 耶 の 遠 離 と 稱 す 。 若 し 又 三 有 の 繋 縛 を 斷 除 し た る を ば 、 是 れ を 縛 斷 と 稱 す 。 若 し 又

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一 切 の 愛 著 を 滅 盡 し 、 離 欲 無 欲 た る を ば 是 れ を 愛 盡 離 欲 無 欲 と 稱 す 。 涅 槃 那 と 云 ふ は 、 槃 那 は 四 生 五 趣 、 七 識 住 、 九 有 情 居 に 生 死 流 轉 し 、 繋 縛 纒 綿 す る 義 な り 、 涅 は 取 得 の 因 た る 愛 著 を 遠 離 し 、 除 去 し 解 脱 す る 義 な り 。

小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 六 九

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小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 七 〇 以 下 二 巻 ) と あ る 、 こ ゝ に は 阿 頼 耶 を 五 欲 阿 頼 耶 即 ち 五 欲 の 貪 著 と し て あ る 、 此 註 と 全 く 同 様 の 解 釋 は 巴 利 文 善 見 律 の 波 羅 夷 篇 第 一 不 淨 行 初 結 品 . 暹 羅 字 版 第 一 巻 二 五 一 頁 ) の 下 に も 出 て 來 る 、 之 れ を 漢 譯 の 善 見 律 と 對 照 す る に 、 其 第 六 巻 に 於 て 、 ﹁ 佛 種 々 説 法 令 離 迷 惑 と は 佛 、 衆 生 の 爲 め に 説 法 し た ま ふ 所 以 は 迷 惑 を 除 か し め ん と な り 。 斷 渇 愛 と は 一 切 の 衆 生 、 五 欲 に 渇 す る が 所 以 に 、 佛 説 法 し て 衆 生 を し て 渇 愛 を 斷 除 せ し む る 故 な り 。 斷 種 と は 佛 説 法 し て 三 界 の 種 を 斷 せ し む る な り 。 愛 霞 涅 槃 と は 、 愛 は 三 界 の 愛 欲 な り 、 衆 生 、 出 つ る こ と を 得 ざ る 所 以 は 愛 欲 に 纏 縛 せ ら れ て な り 。 盡 と は 滅 な り 、 は た 愛 盡 き て 涅 槃 を 得 と は 、 三 界 中 の 四 生 、 五 道 、 七 識 住 、 九 衆 生 居 を 此 れ よ り 彼 れ に 至 り 、 彼 れ よ り 此 れ に 還 り 、 猶 ほ 緋 の 衣 を 繍 す る に 、 孔 更 に 相 ひ 貫 き 穿 ち 、 纒 縛 し て 解 け ざ る が 如 し 。 愛 は 即 ち 纒 縛 な り 、 盡 は 即 ち 滅 な り 、 愛 蓋 と は 即 ち 涅 槃 な り 、 又 涅 槃 と は 、 涅 を ば 不 と 言 ひ 、 槃 を ば 織 と 言 ふ 、 謂 は く 不 織 の 義 な り ﹂ と あ る 。 此 涅 槃 を 不 織 と せ る を 宋 元 明 の 三 本 に は 不 生 に 作 る 、 大 般 涅 槃 經 等 に て は 涅 槃 を 不 生 と 解 し て ゐ る け れ ど 、 今 の 場 合 は 不 織 の 方 を 正 し と 見 ね ば な ら な い 、 巴 利 文 の 即 ち 繋 縛 纒 綿 す る が 故 に 槃 那 と 云 ふ と あ る を 譯 し て 居 る の で あ る か ら 。 又 此 繋 繊 纏 綿 を 針 の 糸 が 衣 に 縫 ひ 附 く 意 に 見 て 居 る の も 面 白 い 、 又 今 、 離 迷 截 と あ る は 即 ち 吾 人 が 慢

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解 脱 と 譯 し た も の で 此 に は 醉 狂 の 義 と 高 慢 の 義 と あ る か ら 、 醉 狂 の 義 に 依 つ た も の で あ る 、 そ し て 此 れ が 此 字 の 當 面 の 義 で あ る か ら 離 迷 惑 と す る 方 が 却 つ て 正 し か ち う 。 斷 渇 愛 と は 今 の 悪 止 息 で を 譯 し た も の で あ る 、 毘 奈 耶 に 滅 の 譯 も あ れ ば 渇 愛 の 斷 滅 と 見 た 方 が 意 味 が 徹 底 す る 此 中 に 多 分 今 云 ふ 阿 頼 耶 の 遠 離 を 入 れ こ ん だ の で あ ら う 。 次 の 斷 種 と は 今 の 縛 斷 即 ち で あ る に 種 々 の 義 が あ る 、 元 來 此 語 は 梵 語 の と 云 ふ 動 詞 の 過 去 受 動 分 詞 の 轉 訛 だ か ら 、 圓 く と か 、 起 る と か 、 成 る と か ゞ 本 義 で 、 そ こ か ら 或 は 出 生 す る も の と も な り 、 輪 廻 す る こ と 、 も な り 、 繋 縛 の 事 と も な る 、 吾 人 は 時 に は 輪 廻 と 譯 し 、 時 に は 繋 縛 と 譯 し て 前 後 一 致 し な い の は 其 時 の 氣 分 次 第 に 依 つ た も の で 甚 だ 譯 語 の 選 練 を 缺 く 次 第 で あ る 、 善 見 律 に 種 と 譯 し た の は 出 生 す る も の 、 義 に 依 つ た の で あ る 。 扨 増 阿 含 の 海 源 の 歌 の 所 で は 前 に も 一 言 し た 如 く 佛 音 は ﹁ 阿 頼 耶 と は 棲 み 家 な り ﹂ ( 暹 羅 字 版 ) と 云 ふ て あ る 、 此 場 合 は 阿 頼 耶 に 少 し も 愛 著 處 と 云 ふ 意 味 を 含 ま せ て は 居 な い 、 大 海 は 七 質 の 棲 家 と 云 ふ 意 味 で あ る か ら 依 止 處 と 云 ふ 位 の 義 で あ る 、 雪 山 が 即 ち 雪 の 依 止 處 で あ る 如 く 、 大 海 は 寳 の 依 止 處 で あ る 。 そ れ が 群 集 の あ こ が れ の 的 と な つ た 時 に 一 轉 し て 愛 著 處 と な る 、 唯 識 家 が 立 つ る 第 八 阿 頼 耶 識 に も 雨 面 が あ る 、 種 子 五 根 器 界 の 依 止 處 で あ り 一 切 諸 法 の 所 依 處 で あ る 一 面 と 、 第 六 第 七 識 に 執 せ ら れ て 自 の 内 我 と さ れ る 一 小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 七 一

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小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 七 二 面 と が そ れ で あ る 。 次 に 中 阿 含 の 釋 尊 思 惟 行 の 文 に 就 い て 、 佛 音 は 左 の 如 く 註 し て 居 る 。 欣 阿 頼 耶 と は 、 有 情 、 五 欲 に 貪 著 す る が 故 に 阿 頼 耶 と 云 ふ 、 又 種 々 の 愛 著 が 百 般 の 事 物 を 欲 求 す る が 故 に 阿 頼 耶 と 云 ふ 此 等 の 阿 頼 耶 を 以 て 欣 悦 す る が 故 に 欣 阿 頼 耶 と 云 ふ 。 諸 の 阿 頼 耶 を 愛 す る は 愛 阿 頼 耶 な り 、 諸 の 阿 頼 耶 に 於 て 満 足 し 喜 樂 す る は 樂 阿 頼 耶 な り 。 譬 へ ば い と 麗 は し き 華 や 、 枝 も た は 、 な る 果 實 の 林 の 妙 な る 園 に 臨 御 ま し く た る 大 王 は 、 御 機 嫌 愈 々 麗 は し く 、 御 威益 々 斜 な ら ず 日 も 既 に 晩 景 に 及 ん で 尚 ほ 還 御 の 御 思 召 な き が 如 し 、 是 の 如 く 我 等 有 情 も 亦 欲 阿 頼 耶 、 愛 阿 頼 耶 を 欣 悦 し 流 轉 の 所 作 を 愛 樂 し 、 反 省 す る こ と も な く て 安 住 す 、 是 を 以 て 世 尊 は 二 種 の 阿 頼 耶 は ( 三 ) 有 の 園 の 如 し と 示 し て 先 づ 欣 阿 頼 耶 と 日 へ り 。

(35)

( 暹 羅 字 版 ) こ ゝ の 欣 阿 頼 耶 は 一 様 に で あ つ て 、 欣 阿 頼 耶 と 見 做 し て 然 る べ き で あ る に も 關 ら す 、 一 體 の 註 し ぶ り が 阿 頼 耶 の 園 で な く て は な ら な い 、 殊 に 園 と 云 ふ 語 に は で な く を 使 つ て を 説 明 し て ゐ る か ら 阿 頼 耶 の 耶 が 長 音 で な く て は な ら な い 、 こ れ は 長 音 符 が 脱 落 し た と 見 る よ り も 、 無 く て も 有 る 意 味 に 取 る の が 佛 音 の 意 志 ら し い 、 恰 も 乾 闥 婆 が 闥 が 長 音 で な く て は な ら な い の に 短 か く て も 長 い 意 味 だ と 倶 舍 の 光 寳 二 師 が 云 っ て る と 同 じ で あ る 。 又 こ ゝ で は 阿 頼 耶 に 欲 阿 頼 耶 と 愛 阿 頼 耶 と を 立 て る 、 前 者 は 五 欲 に 對 す る 耽 著 で 、 後 者 は 百 般 の 事 物 に 對 す る 愛 著 で あ る 、 此 等 が 三 有 の 園 生 に 繁 茂 す る 稠 林 で 、 貪 婪 の 華 の 下 、 愛 執 の 果 の 中 に 享 樂 し て 厭 く 事 を 知 ら ぬ 大 王 は 凡 愚 の 我 等 で あ る と 云 ふ 。 天 親 菩 薩 が 淨 土 の 菩 薩 は 煩 惱 の 林 に 遊 ん で 神 通 を 現 じ 、 生 死 の 園 に 入 っ て 應 化 を 示 す と 云 う て ゐ る が 、 こ れ は 聖 者 の 園 林 遊 戯 地 を 喩 示 し た も の で あ る 。 佛 音 の 今 の 意 は 闇 盲 の 吾 等 が 流 轉 運 動 を 生 死 の 園 、 煩 惱 の 林 に 遊 戯 す る に 譬 へ た が 阿 頼 耶 の 樂 園 で あ る 。 一 は 淨 化 の 園 林 遊 戯 地 と し て 、 一 は 想 化 の 園 林 遊 戯 地 と し て 喩 顯 し た 、 頗 る 巧 妙 な 適 切 な 譬 喩 で あ る 、 斯 う 見 來 れ ば こ れ は ど う し て も の 積 り で あ る 、 少 く と も 佛 音 は こ う 見 た 、 此 の 解 釋 は 獨 り 此 處 ば か り で は な く 雜 阿 含 梵 天 請 問 篇 の 註 ( 暹 羅 字 版 ) に も 又 長 阿 頼 經 の 毘 婆 尸 佛 思 惟 行 の 一 段 の 註 ( 暹 羅 字 版 ) に も 亦 全 く 今 と 同 様 の 説 明 を 小 乘 典 籍 に 於 は る 阿 頼 耶 七 三

(36)

小 乘 典 籍 に 於 は ろ 阿 頼 耶 七 四 し て ゐ る 、 文 ま で も 全 く 一 致 す る 。 次 に 修 多 尼 波 多 の 百 七 十 七 偶 に あ る ﹁ 欲 阿 頼 耶 に 執 ぜ ず ﹂ の 句 に 註 し て は 、 欲 阿 頼 耶 に 執 せ す ゼ は 、 諸 欲 に 於 て 愛 と 見 と の 力 に 依 り て 二 種 の 阿 頼 耶 あ り 、 今 こ れ が 無 く な り し を 云 ふ 。 と あ る 、 こ ゝ は 彼 の 如 來 出 現 四 徳 經 に 於 け る と 同 様 の 意 味 で め る 、 又 同 じ く 第 五 百 三 十 五 偏 の 註 で は 四 種 の 有 漏 と 二 種 の 阿 頼 耶 と を 、 般 若 の 力 に 依 り て 切 斷 た る 賢 明 な る 四 道 慧 の 賢 者 は 、 流 轉 の 力 に 依 り て 胎 に 入 る こ と な し 。 と あ る 、 こ 、 の 四 種 の 有 漏 と は 、 欲 、 有 、 見 、 無 明 で 、 二 種 の 阿 頼 耶 と は 愛 と 見 と の 阿 頼 耶 で あ る 。 又 四 道 と は 預 流 、 一 來 、 不 還 、 阿 羅 漢 の 四 果 に 向 ふ 道 で あ る 、 又 第 六 百 三 十 五 偶 の 阿 頼 耶 の 註 は 法 句 經 の 註 と 同 様 ﹃ 阿 頼 耶 と は 愛 著 な り ﹂ と し て ゐ る 、 此 れ は 中 阿 含 の 此 偈 の 註 ( 暹 罹 字 版 )

(37)

で も 全 く 同 様 で あ る 。 巳 上 を 總 合 す る に 阿 頼 耶 に 二 種 の 見 方 が あ る 、 一 は 能 動 の 阿 頼 耶 で 貪 著 し 愛 執 す る 阿 頼 耶 、 他 は 所 動 の 阿 頼 耶 で 、 愛 著 處 依 止 處 の 義 で あ る 。 其 能 動 の 阿 頼 耶 に 就 て 佛 音 は 兩 様 の 説 明 を し て ゐ る 。 一 に は 愛 と 見 と の 二 種 阿 頼 耶 、 二 に は 欲 と 愛 と の 二 種 阿 頼 耶 、 或 は 又 一 に は 唯 欲 阿 頼 耶 で 、 二 に は 唯 愛 阿 頼 耶 で 説 明 す る 。 其 所 動 の 阿 頼 耶 の 方 に も 一 に は 貪 著 處 、 愛 著 處 と し て 執 著 の か ゝ つ た 場 含 、 二 に は 依 止 處 , 所 依 處 の 義 で 貪 著 の か 、 ら ぬ 場 含 、 斯 う 分 け て 見 ら れ る 。 そ し て 無 著 菩 薩 が 攝 論 で 問 題 に し た 所 は 實 に 其 貪 著 處 と し て の 阿 頼 耶 の 究 明 で あ つ た 。 そ し て 何 物 が 果 し て 眞 の 愛 著 處 で あ る か の 推 論 で 結 局 彼 の 第 八 識 建 立 の 所 由 を 齎 ら し た 。 こ れ で 吾 人 が 最 初 豫 期 し た 小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 の 言 葉 其 用 例 、 意 味 等 を ほ や 穿 鑿 し 終 つ た 。

(聲

)

小 乘 典 籍 に 於 け る 阿 頼 耶 七 五

参照

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