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学位論文題名Study on Spin Systems on Scale―free Networks with Tree―like Structures

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 長 谷 川 雄 央

     学位論文題名

Study on Spin Systems on Scale ―free Networks with     Tree ― like Structures

(ツリー構造を伴ったスケールフリーネットワーク上の      スピン系に関する研究)

学位論文内容の要旨

  ネ ット ワー ク は実 世界 に見 ら れる関係性(例えばWWWの構造や人間関係、food‑web)を頂点(ホームペ ージ、人、生物に相当) の集まりと、頂点間を結ぶ辺(リンク関係、友人関係、捕食関係に相当)によって 記述 する 。あ る 頂点 が他 の頂 点 との問に持つ辺の数を その頂点の次数と定義する とき、スケールフリー ネッ 卜ワ ーク(SFN)と は 次数kの 分布がべき分布P(k)ばk―vを満たすようなネット ワークを意味する。近 年SFNは 自然 界、 人間 社 会で 広く 認め られ る ネッ トワ ーク 構造であることがわか り、研究は物理学、生 物 学 から 社会 科 学ま で多 岐に 亘る 分 野で 盛ん に行 な われ てい る。 その な ぢk本 論 文が 行っ た研 究と は SFN上の スビ ン系 、特 に イジ ング モデ ルの 解 析で ある 。SFN上 のス ビン 系 の解 析は 人間社会における意 見形 成の モデ ル とし て扱 うこ と ができる等応用の面で 重要なだけでなく、ネット ワークトポロジーとそ の上 で起 こる 協 力現 象の 関係 を 明らかにするものとし て、統計物理の基礎研究の 側面においても非常に 重要なものといえる。

  SFN上 のス ピン 系の 解 析は これ まで 幾っ か のSFNモ デル 〜SF Bethe lattice (SBL)やgrowing random network(GRN)モ デル 〜を 用い て 行わ れて きた 。こ こ でSBLは谷き分布に従うラン ダムな分岐過程から作 られ る無 限に 延 びた ツリ ーで あ る。GRNモ デ ルと は単 位時 間ごとにネットワーク に一定の本数の辺を携 えた新しい頂点カi追/Jロされ、既存のある頂点が辺 の接続先に選ばれる確率は次数に依存する関数Akに拠 る、 とい うルールで作られ たネットワークである。例 えばAk =1の場合(ランダム 選択)、新規頂点はラ ンダムに相手を選び、結 果次数分布はポアソン分布 を満たす。一方Ak =kの場合(優先的選択)、新規頂点 は 次 数 の 高 い 頂 点 ほ ど 相 手 に 選 び や す い 形 と な り 、 結 果 べ き 指 数 ッ‑3のSFNが 実現 され る 。GRNモ デル の甲 均場 的 扱い 及びSBL上の イジ ング モ デル の解 析か ら 、SFN上の ス ピン 系は 次数分布のべき指数 ッ に 応じ てそ の 振舞 いを 変え 、ッ 冫3では 有 限温 度の 相転 移を 起 こす が、v≦3で はス ピン は常 にオ ー ダー して いる と いう 興味 深い 性 質がこれまでに明らか となった。しかしこれまで の研究で考慮されなか った 性質 の中で、系全体の 振舞いを変えてしまう要素 として本研究が着目したのが 「次数1の頂点(leaf) の効 果」 であ る 。理 論解 析・ 数 値計算いずれの先行研 究においても、解析の不便 のためネットワークに おい てleafはないと仮定し ている。しかし現実に現れ るSFNの多くは膨大なleafを 含んでおり、leafから の寄 与も 考え た ときSFN上の 協力 現象 は既 存 の結 果と は全 く異なった様相を示す ニとが考えられる。本 研究 の目 的は「leaf付SFNにおけるスピン系の振舞いを 調べることでleafのない場 合とどう異なるかを調 べ、 ネッ トワ ー ク研 究に おけ るleafの考慮の必要性を 検討する」ことにある。本 研究では・番簡単なモ デル とし てル ー プの ない ニっ のSFNモ デル を 用い 、leafの 影響を調べた。具体的 には以下の結果が本研 究によって得られた:

    ―1419−

(2)

(1)最初にべき分布に 従うランダム分岐過程で作 られるCayley tree(以後SCT)上のイジングモデル、及 び ポ ッ ツ モ デ ル の 解 析を 行 った 。SCTはSBLに お いて 、根 とな る頂 点 から 一定 の距 離 にあ る頂 点を 全 てIeafに 置 き 換 え た も の に 当 た る 。 我 々 は 規 則 的 な 分 岐 構 造 のCayley treeに お い て 分 配 関 数 の recursion relationか ら磁化を導出したStosicらの 方法をランダムな分岐の場 合に拡張し、SCT上の零磁 場強 磁性 イ ジン グモ デル にお け る系 の磁 化の 厳密 な 表式 を導 出す る ことに成功した 。その結果v≦3に お い てSBLで は 常 に 磁化 する とい う結 果 であ った のに 対 し、SCTで は ッの 値に よら ず 自発 磁化 はど の 有限温度でも存在しな いことが明らかとなった。

  さらに、 recursiveに分配関数を計算する方法を 推し進めることで各世代の スピンの零磁場感受率の厳 密な 表式 を 得る こと に成 功し た 。そ の表 式か ら、SCT上 のイジング系はある温度以下 で感受率が発散し 続ける振舞いをみせるが、(i)ッ冫3においてその発散を始める温度は内奥部(根側)と周辺部(leaf側)で は感 受率 の 発散 を始 める 温度 が 異な るこ と、(ii)ッ≦3では場所の内外に寄らず感受 率は全ての有限温 度で発散していること が明らかとなった。このV≦ ー3における「全ての有限温 度で感受率が発散」はSBL における「常に磁化し ている」という結果と呼応す るものである。また、(i) の結果は系全体のパラメ ータ では 系 内部 の性 質を捉え きれていないことを意味し ている。今回用いた各スピン の感受率の導出法 は、 非常 に 一般 的な もの であ り 、ポ ッツ モデ ルにも拡張 された。その結果、SCTにお けるポッツモデル にお ける 各 スピ ンの 感受率の 厳密な表式が与えられ、そ の振舞いはイジング系と同様 のものであること が明 らか と なっ た。 これらの 結果はネットワークがleafに包まれているか否かで、熱 力学的極限での系 の振舞いが全く異なる 例を提示した点で重要とぃえ る。

(2)次に 我々 はGRNモ デ ルに おけ るイ ジン グ モデ ルの 振舞 いを 調 べた 。考えたのは新 規参入の頂点が携 える 辺 の数 が1本の みの 場合 であ る 。こ の時GRNモデ ルはSCTとは 異な り 、ネ ット ワー ク内 の 様々な場 所にleafが存在す る形のツリー構造をとる。 まず我々はランダム選択の場 合を調べた。行列要素Dijが頂 点iとjの間の最短 パス数を示す行列(distance matrix)を用いて、系の感受率のネッ卜ワークの成長に伴う 変化 を 漸化 式の 形で 記述し、graphrealizationに関する平 均操作後漸化式を解くこと で、任意のネット ワー ク サイ ズに おけ る系の感 受率の厳密な表式を求めるニ とに成功した。さらに得ら れた表式から感受 率発 散 温度 を解 析的 に 求め 、ラ ンダ ム選 択 下のGRNツリー の感受率の発散を始める温 度が有限であるこ とを 明 らか にし た。 次に優先 的選択の場合の系の感受率の 様子を、数値計算を用いて 調べた。結果ラン ダム 選 択の 場合 とは 異なり、 系の感受率はネットワークの 成長に伴い全ての温度で発 散に向かうニとが 明ら か とな った 。加 え て数 値計 算の 結果 は 、優先的選択 を伴った成長過程における系 のサイズNと系の 感 受 率xの 間 に 、 こ れ ま で に 知 ら れ て い な い 関 係 式 が あ る ニ と を 明 ら か に し た :     x(N,T) f(T)L。gIN)

ここ でTは温 度 、ftT) はス ケー リン グ関 数 である。この 関係式はSFNのある種の自己 相似性を意味する ものであり興味深 い。

  以 上 、本 研究 はニ れま で には 着日 され てい な かっ たSFNに おけ るleafの 効 果を 、特 に感 受率の発 散 の振 舞 いか ら明 らか にし た 。

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(3)

学位論文審査の要旨

主 査   准 教 授   根 本 幸 児 副 査   教 授   大 川 房 義 副 査   教 授   網 塚   浩

副 査  准 教 授  矢 久 保 考 介 ( 工 学 研 究 科 )

     学位論文題名

Study on Spin Systems on Scale −free Networks with     Tree ―like Structures

( ツ リ ー 構 造 を 伴 っ た ス ケ ー ル フ リ ー ネ ッ ト ワ ー ク 上 の     ス ピ ン 系 に 関 す る 研 究 )

本論文は 木構造 を持っスケールフリーネットワーク上のスピン系の協力現象を研究対象 としている。スケールフ1Jーネッ卜ワークとは次数が票分布に従っているグラフを指すが、

近年、自然界や人間社会で広く認められるネットワーク構造であることがわかり、その研 究は物理学、生物学から社会科学まで多岐に亘る分野で盛んに行われている。そのような 研究状況にあって、著者が行った研究はこのネットワーク上のスピン系、特にイジング模 型の解析である。これまでは木構造が無限に広がりをもつ場合の統計力学理論しか扱われ ていなかったが、本論文は端点(リーフ)があからさまに存在する有限木上のスピン系の 統計力学理論を構築することによって無限木との著しい相違点を見事に照らし出し、さら に ネ ッ ト ワ ー ク の ハ ブ 構 造 の 影 響 を 浮 き 彫 り に す る 重 要 な 論 文 で あ る 。 著者はま ず、冪 分布に従うランダム分岐木上の強磁性イジング模型の磁化および零磁場 帯磁率の定式化とその厳密な表式を導出することに成功した。その結果によればこの系は 有限温度では自発磁化を持ち得ないということが明らかになった。また、菓分布の指数が 小さいほどハブ構造が出やすいが、その指数が3以下ではどの温度でも局所帯磁率が発散 しており、指数が3を超えると常磁性相が現れるがその温度領域は木の根(ルート)とり ーフで異なっていることが示された。さらに、その厳密解の表式は強磁性ポッツモデルに も拡張され、イジング模型と同様の振る舞いをすることを明らかにした。これらの結果は、

ネットワークがりーフの存在の有無によってその熱力学的極限の振る舞いがまったく異な る特性を持つことを、もっとも見通しのよい形で提示している点でも重要であるというこ とができる。

  次に、成長型ランダムネットワークについても帯磁率の解析を行った。木構造上の相関 関数がその距離だけで計算可能であることを利用して、ランダム接合性成長型ネットワー ク上の帯磁率を厳密に評価することに成功し、熱力学的極限でその発散温度が有限である ことを示した。これは冪分布の指数が無限大の場合に相当する結果として理解される。ま た、幕分布が3に相当する優位接合性成長型ネットワークについて数値解析を行い、その 帯磁率がどの温度でも発散していることを発見した。さらに、帯磁率の大きさはシステム サイズの非自明なべき依存性をもち、その指数が温度に依存しているという特異な性質を もつことを見出した。これは木構造のある種の自己相似性の存在を示唆する結果として興 味深い。  このように、本論文はりーフの有無や木のハプ構造の度合いによって熱力学的極限の振 る舞いが大きく異なることを、ふたつの異なるスケールフリーネットワーク上での帯磁率 の発散的性質から示したという点で重要であり、ランダム系の統計力学理論に新たな知見

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(4)

をもたらす こと大であるということができる。

よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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