博士(工学) 日景 学位論文題名
太陽発電衛星送電アンテナ用キャビテイ付 スロットアンテナに関する研究
学位論文内容の要旨
隆
本論 文 は,21世 紀に おけ るクリーンエネ ルギー源のひとっとして有 カな太陽発電衛星SPSシステ ム に 関して,送電 アンテナに適したキャビテ ィ付スロットアンテナの設計 法を数値解析ならびに実験 を 通 して明らかに した研究成果をまとめたも のである,終端短絡プローブ 給電素子を適用することに よ り ,従来困難で あったキャビティ体積の大 幅な低減を可能にしている. これにより,送電アンテナ 素 子 の 薄 形 化 を 実 現 し ,SPSの 軽 量 化 , 現 実 化 に 大 き く 寄 与 す る こ と が 期 待 で き る . 現在,温暖化 ,環境破壊等に対して,で きるだけ早い対応が求められ る状況となっている,また , 化 石燃料の枯渇 が懸念される.このような ことから,太陽エネルギーを 主とする再生可能エネルギ ー の利用 が注目されている.太陽発電 衛星はP.E. Glazer博士によって提案された概念であり,人工衛星 お よび地上設備 から構成される大規模発電 システムである.日本におい ては宇宙科学研究所を中心 と した太 陽発電衛星ワーキンググルー プにより,「ストローマン モデルSPS2000」と題された研究が進め られて きた.
本論 文 にお いて は, 太陽 発電衛星SPS送 電アンテナの仕様を満足する アンテナ素子として,キャ ビ テ ィ付スロット アンテナを提案し,そのア ンテナ設計法を確立する.素 子の寸法は,輸送用ロケッ ト の 搭載能カやマ イクロ波回路部あるいはビ ーム走査特性などにより制限 される.特にアンテナ高さ へ の 要求 は ,回 路部 分の 寸法 を考慮し,10分 の1波長以下とされ,波長に 比べかなり小さい.したが っ て ,従来の実験 的検討では,希望する周波 数において十分な特性を実現 するアンテナ素子の設計が 困 難であ る.
本論文では所 望のキャビティ高さを実現 できるアンテナ素子を提案し ,素子パラメータの設計法 を 明 らか に して いる .提 案し た設計法を用い ,キャビティ高さを40分の1波長程度まで薄形化したア ン テ ナ素 子 の開 発に 成功 した . 今後 ,MMIC化 の進 展 により回路の小形化 が実現された場合は,建設 時 の 輸送コスト低 減に一層大きく寄与するも のである.さらに,大規模ア レーの製造法を考慮したア ン テ ナ構造にっい ての提案を行っている,送 電アンテナは大規模なフェー ズドアレーアンテナであり , 製 作の容易性お よび十分な信頼性を有する アンテナ素子の開発は必要不 可欠である.アンテナの設 計 および 特性解析には時間領域解析手 法を用いた.
従来,アンテ ナ等の電磁界解析は,周波 数領域で行われている.しか し,周波数領域での解析は 特 定 のモデルに限 定され,また,キャビティ 内部に設置された任意の給電 モデルについて,入カイン ピ ー ダンス等の評 価が困難である,近年,大 規模なメモりを必要とする計 算が可能になり,電磁界解 析
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についても大規模シミュレーションによる電磁界の解明が注目を集めてきている.本論文では,キャ ビティ付スロツ卜アンテナ素子の提案,薄形化および給電素子構造の単純化を実現するため,時間領 域解 析 手 法 を適 用 し ,キ ャ ビ ティ 付 ス ロッ ト ア ンテ ナ 設 計に 適 し た 解析 法 を確立し た.
以下,本論文の構成と概要を述べる.
第1章 は 序 論 で あ り , 研 究 の 背 景 と 目 的 , 検 討 課 題 お よ び 本 論 文 の 概 要を 述 べ た,
第2章におい て,マ クスウェ ルの方程式に基づく時間領域解析(FDTD)法を詳細に解説した.
第3章において,FDTD法をキャビティ付スロットアンテナの解析に適用する際の問題点を明らか にし,その解決法について提案を行った,すなわち,時間領域データに対して時間窓を適用すること である.時間窓を適用したときのパラメータ設定法について明らかにした.さらに,放射指向特性に ついて評価・推定に必要な計算周期,実験結果との比較検討を行い,FDTD法を用いたキャビティ付 スロットアンテナの解析法の有効性を明確にした.
第4章において,太陽発電衛星用送電アンテナ素子の仕様および寸法条件を満足するキャビティ付 スロットアンテナを提案し,その設計手法を明確化した.給電素子として終端短絡プローブ給電素子 および逆F給電素子を提案し,それぞれの給電素子を用いた場合の設計パラメータを明らかにした.
第5章において,キャビティ付ス口ットアンテナの解析に同軸線路モデルを導入することによって,
ギャップ電圧モデルの場合と比較して飛躍的に少ない解析データで入力特性を推定可能であることを 示した,さらに,同軸線路モデルおよび正弦波励振源を使用した絶対利得の評価法を確立した.
第6章において,素子間相互結合評価法について議論した.終端短絡プローブ給電キャビティ付スロ ットアンテナを,2素子または4素子配列したアレーアンテナの入力特性および放射指向特性評価法に ついて検討した! FDTD法を用いた素子間相互結合の解析においては大きな解析空間を必要とする理由 を数値解析により示した.一方,解析空間を大きくすることは大容量の記憶装置と長い計算時間を必 要とすることから実用的ではない.少ない計算機メモりで正確な素子間相互結合の解析評価を実行す るため,アンテナアレーのブロードサイド方向のみ解析空間を大きくし,それ以外の方向では解析モ デル表面から解析空間境界までの距離は一定のセル数とする,このような解析空間を用いることによ り,全方向に解析空間を拡大した場合と同様な結果が得られることを計算機シミュレーションにより 示した.さらに,素子間相互結合を評価するために必要な解析空間の寸法にっいて明確にした.
第7章において,送電アンテナ素子の薄形化を目的として検討を行った.送電アンテナ素子として,
終端短絡プローブ給電キャビティ付スロットアンテナを使用する.このアンテナ素子は,キャビティ 高さを低くした場合,キャビティ内部のプローブ位置,スロット幅および長さを適当に設定すること により,送電周波数2.45GHzにおいてインピーダンス整合を実現可能であることを示した.本章では,
高さを12mm以下としたキャビティにっいて,インピーダンス整合を実現する設計法とアンテナパラメ ー タ を 示 し た . さ ら に , ア ン テ ナ 薄 形 化 に よ る 特 性 変 化 に っ い て 明 ら か に し た . 第8章において,ポスト側壁構成キャビティ付スロットアンテナを提案した.キャビティ付スロツ 卜アンテナでは素子およびアレーアンテナの製作時,キャビティ上下二枚の導体板と側面の導体板と の完全な接続が必要となり,大規模アレーアンテナの製作には複雑かつ高精度な製作が必須である.
そこで,容易なアレーアンテナ製作を実現するため,キャビティ側壁をポストにより近似する,側壁 を細径ポストで構成する利点は次のとおりである.すなわち,(1)電気的な接続はポストの両端で保 証するため製作が容易,(2)十分な機械的強度を保ちつつ軽量化可能である.アンテナ素子の構造を 明らかにし,側壁を構成するポスト間隔と入力特性の関係について検討した.さらに,アンテナ素子
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単 体お よび アレーア ンテナ の設計法 を明ら かにした . 第9章において,8章までの本研究成果の全体を要約した.
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学位論文審査の要旨
主査 教授 野島俊雄 副査 教授 宮永喜一 副査 教授 小柴正則 副査 教授 小川恭孝 副査 助教授 山本
学
副査 名誉教授伊藤精彦(苫小牧工業高等専門学校校長)
学 位 論 文 題 名
太陽発電衛星送電アンテナ用キャビテイ付 スロットアンテナに関する研究
近年,高速・大容量計算機の発達により大規模なシミュレーションが可能にな り,電磁界解析についても大規模シミュレーションによる電磁界の解明が注目を 集めてきている.電磁界はマクスウェルの方程式により記述される.このことか ら,マクスウェルの方程式を時間領域において直接解くことにより電磁界現象を 推定することができる.
多機能アンテナ素子としてキャビティ付ス口ットアンテナの実験的な検討が行 われている,素子の小形化および給電素子構造の単純化を実現するためには,ア ンテナ素子に関する電磁界現象を明確にする必要がある.本論文では,時間領域 解析法をキャビティ付ス口ットアンテナに適用することにより,要求される寸法 条件と特性を満足する放射素子の設計を行うことを目的として研究を行っている.
太陽発電衛星送電アンテナ素子として,キャビティ付ス口ットアンテナ素子を提 案し,設計法を確立するとともに,時間領域における解析手法の開発について検 討した成果をまとめたものであり,第
1章から第
9章までの全9 章で構成されて いる.
第1 章では,本研究の背景であるエネルギー無線送電、太陽発電衛星SPS2000 および送電システムについて説明している.さらに,送電アンテナの諸元,アン テナ素子に対する要求事項について説明し,送電アンテナ素子としてキャビテイ 付 ス 口 ッ ト ア ン テ ナ が 優 れ て い る 理 由 を 明 ら か に し て い る .
第2 章では,マクスウェルの方程式に基づく時間領域解析法について詳細に解 説を行い,時間領域差分法
(FDTD法)を使用する場合の基本的な事項として,セ
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ル 寸 法 ,時 間 ス テ ップ 間 隔 , 入射 電 磁 界 の定 義 , 吸 収境 界 条 件 ,ワ イ ヤ の 定式 化 , 入 カ イ ン ピ ー ダ ン ス , 構 造 の 対 称 性 の 利 用 お よ び 放 射 指 向 特 性の 評 価 法 につ い て 説明している.
第3章 で は ,FDTD法 を キ ャ ビ テ ィ 付 ス ロ ッ ト ア ン テ ナ の 解 析 に 適 用 す る 際 の 問 題 点 を 明 ら か に し , そ の 解 決 法 に つ い て 提 案 し て い る . す なわ ち , 時 間領 域 デ ー タ に 対し て 時 間 窓を 適 用 す るこ と で あ る, さ ら に ,放 射 指 向 特性 に つ い て評 価 ・ 推 定 に 必 要 な 計 算 周 期 , 実 験 結 果 と の 比 較 検 討 を 行 い ,FDTD解 析 法 を 用 い た キ ヤビテイ付ス口ットアンテナの設計法を明らかにしている.
第4章 で は , 太 陽 発 電 衛 星 用 送 電 ア ン テ ナ 素 子 の 仕 様 お よ び 寸 法 条 件 を 満 足 す る キ ャ ビ テ ィ 付 ス ロ ッ ト ア ン テ ナ を 提 案 し ぃ そ の 設 計 手 法 を 明 確化 し て い る. 給 電 素 子 と し て 終 端 短 絡 プ 口 ー ブ 給 電 素 子 お よ び 逆F給 電 素 子 を 提 案 し , 給 電 素 子 の 設計バラメータを明らかにしている.
第5章 で は , キ ャ ピ テ ィ 付 ス 口 ッ ト ア ン テ ナ のFDTD解 析 に 同 軸 給 電 モ デ ル を 導 入 す るこ と に よ って , ギ ャ ップ 電 圧 モ デル の 場 合 と比 較 し て 少な 。 ゝ 解 析デ ー タ で 入 力 特 性 を 推 定 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る . さ ら に, 同 軸 線 路モ デ ル と 正 弦 波 励 振 源 を 使 用 し た 絶 対 利 得 評 価 法 に つ い て 提 案 し て い る , 第6章 で は ,FDTD法 を 用 い た 素 子 間 相 互 結 合 評 価 法 に つ い て 議 論 し て い る . FDTD法 を 用 い た 素 子 間 相 互 結 合 の 解 析 に お い て は 大 き な 解 析 空 間 と し な け れ ば な ら な い 理 由 を 数 値 解 析 的 に 示 し ,少 な い 計 算機 メ モ1」 で 正 確な 素 子 間 相互 結 合 の 解 析 評 価 を 実 行 す る た め の 解 析 空 間 設 定 法 を 提 案 し て い る ,解 析 結 果 を実 験 結 果 と 比 較 す る こ と に よ り , 提 案 を 行 っ た 解 析 法 の 有 効 性 を 示 し て い る . : 第7章 で は , 送 電 ア ン テ ナ 素 子 の 薄 形 化 に つ い て 検 討 し て い る . 送 電 ア ン テ ナ 素 子 と し て , 終 端 短 絡 プ 口 ー ブ 給 電 キ ャ ビ テ ィ 付 ス 口 ッ ト ア ンテ ナ を 使 用し , キ ヤ ビ テ イ 高 さ を 低 く し た 場 合 で も , キ ャ ビ テ ィ 内 部 の プ 口 ー ブ位 置 , ス 口ッ ト 幅 お よ び 長 さ を 適 当 に 設 定 す る こ と に よ っ て , 送 電 周 波 数2.45 GHzに お い て イ ン ピ ー ダ ン ス 整 合 を 実 現 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し て い る , 高 さ を12 mm以 下 と し た キ ャ ビ テ イ に つ い て , イ ン ピ ー ダ ン ス 整 合 を 実 現 す る 設計 法 と ア ンテ ナ パ ラ メ ー タ を 示 し , 解 析 結 果 と 実 験 結 果 と の 比 較 検 討 を 行 い , 設計 法 の 有 効性 を 示 し て い る . さ ら に , 薄 形 化 に よ る 特 性 変 化 に つ い て 明 ら か に し て い る . 第8章 で は , 容 易 な ア レ ー ア ン テ ナ 製 作 を 実 現 す る た め , キ ャ ピ テ ィ 側 壁 を ポ ス ト に よ り 近 似 す る , ポ ス ト 側 壁 構 成 キ ャ ビ テ ィ 付 ス 口 ッ ト アン テ ナ を 提案 し て い る . ア ン テ ナ 素 子 の 構 造 を 明 ら か に し , 側 壁 を 構 成 す る ポ スト 間 隔 と 入力 特 性 の 関 係 に つ い て 検 討 し て い る . さ ら に , ア ン テ ナ 素 子 単 体 お よび ア レ ー アン テ ナ の設計法を明らかにしている.
第9章は結論であり,本論文の成果を要約している.
これ を要す るに, 著者は ,本論 文にお いて, マイクロ 波エネ ルギー 伝送送電アンテ ナとして,キャビティ付スロットァンテナを提案し,アンテナの特性評価法に関する有益な新 知 見 を 得た も の で あり , ア ン テナ 工 学 の 分野 に 貢 献 する と こ ろ 大な る も の があ る . よ っ て著 者 は , 北海 道 大 学 博士 ( 工 学 )の学 位を授 与され る資格 あるも のと認 める.
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