博士(医学)周 絶秋 学位論文題名
サルコイドーシスにおける IL ― 18 と その受容体の遺伝学的・細胞生物学的研究
.学位論文内容の要旨
サ ル コ イ ド ー シ ス は 全 身 に 非 乾 絡 性 類上 皮肉 芽腫 が発 生す る疾 患で 、発 症に 関 する 現在 の見 解は 、遺 伝 素因を有する個体が何らかの 外因の暴露を受けることによって発症するとい うも ので ある 。 近年 は毎 年20%近 くの 増加 率を 示し てお り、 重要 な問 質性肺疾患のーつで ある。
サ ルコ イド ー シス の免 疫病 態は 、CD4+T細 胞と活性化された単球.マクロファージ系細胞 の集 積、 およ び 豊富なサイトカイン産生で特 徴づけられる。特にサルコイドーシスの気管支 肺 胞 洗 浄 液(BALF)に は 、 多 く のCD4+T細 胞 が 回 収 さ れ 、 そ れ はIFN‑vとILー2を 産 生 す ることやケモカイン受容体であるCXCR―3とCCRー5を発現するこ となどから、サイトカインと そ の 受 容 体 の プ ロ フ ィ ー ル は い わ ゆ るThlタ イ プ で あ る と 考 え ら れ て い る 。 いわゆるサイトカインネットワークの中で、ある種のサイトカインは他のサイトカインの上位に 位置 し、 その サ イトカインの誘導や抑制作用 を発揮する指揮者的役割を持つ。サルコイドー シス にお けるIFN‑ツ産生に関しては、IL―12とIL一18がその役割を担う。すなわちIL−18は IL−12共 存下 で、 強カ にIFN‑y産 生を 誘導 する 。実 際サ ルコ イド ーシ スに おい て 、血 清や 気管支肺胞洗浄液(BALF)中のILー12やIL―18濃度が上昇している。
本研 究で は、 わ が国 の研 究者 によ って 発見 され たIL―18のサ ルコ イド ーシスにおける役割 を 、 遺 伝 因 子 と し て の 意 義 と 受 容 体 の 動 向 の ニ つ の 観 点 か ら 検 討 し た 。
研究1:サ ルコ イド ーシ スに おけ るIL−18遺 伝子 多型 の意 義
IL―18遺 伝子 に はプ ロモ ータ ー領 域に‑137 (G/C)、 ―607 (C/A)、 −656 (G/T)の三っ の一 塩 基 多 型 (以 下SNP)、 エ クソ ンに ニっ の同 義置 換SNPが存 在す る。 近年 の報 告に よる と、
−137 (G/C)はILー18の 転写 活性 やIFN‑y産 生と 相関 して いる こと が報 告されている。 我々 はま ず、176名 の健 常対照者と161名のサルコイドーシス患者を対象として、プロモータ ー領 域の 三つ のSNPとサ ルコ イド ーシ スの 発症 や 臨床像との相関を検討した。しかしながら 、い ず れ のSNPの 遺 伝 子 型 頻 度 や 対 立 遺 伝 子 頻 度 も 、 対 照 群 と 患 者 群 で有 意差 を認 めな かっ た。 臨床 経過 と の関 連で は、 ―607 (C/A)、‑656 (G/T)のへテロ個体では、単変量解析 にて
寛解が遅延するとの結果が得られたが、性、発症年齢、罹患臓器数などを含めた多変量解 析では、両多型とも独立した経過因子であるとは言えなかった。
一方、‑607 (C/A)と−656 (G/T)はサルコイドーシス患者の血清IL一18濃度と有意な相関を 認め、 遺伝子型CC、CA、AAある いはGG、GT、TTの順に中央値が高値を示した。健常者 では同様な相関を認めなかった。―607 (C/A)と―656 (G/T)の間にはDs=0.986の強い連鎖 不平衡が存在した。サルコイドーシス患者において三つのSNPのハプロタイプ推定値を求 め た。 そ の 中で 最 も頻 度 の 高い ニ つ のハ プ ロタ イ プ く‑137G/―607C/―656Gお よび
―137G/−607A/―656T)を含む、4種類のルシフェラーゼレポーターベクターを作製し、培養 細胞THP−1を用いて 転写活性を測定した。その結果ハプロタイプG/C/Gを含むプロモー ターの転写活性は、他方のハプロタイプを含むプロモーターのそれより有意に高く、血清 IL−18濃度と遺伝子多型の結果と符合した。
以上よりIL―18プロモーター領域多型のハプロタイプG/C/Gを有しているサルコイドーシ ス患者では、IL−18プロモーター活性が高く、遺伝子転写とさらに蛋白産生量の増強を通し て、サルコイドーシスの病態に影響を与えると推測される。
研究2:サルコイドーシスにおけるIL‑18受容体の発現増強
ILー18受容体はIL―18RaとIL−18Rpのニっのsubunitから構成されており、構造と機能が IL−1受容体と類似している。IL−12はIL一18Rocの発現を誘導し、逆にIL―18はILー12の受容 体発現を誘導すると報告されており、相互増強関係にある。我々はBALFリンパ球と末梢血 リンパ球にっいて、21名のサルコイドーシス患者と8名の健常者を対象に、IL−18Ra鎖の発 現をフローサイトメーターにて検討した。 .
そ の 結果 、 サ ルコイドー シスのBALFと 末梢血のCD4+T細胞では 、対照者 に比して 有意 に高 いIL−18Rocの発 現比率を 示した。 またサルコイドーシスでは、BALF CD4+T細胞は BALF CD8+T細胞 に比べてILー18Raの発現 比率が上 昇してい たが、健常者で同様な現象 はみられなかった。
健常 者末梢血 リンパ球を用いた由vitroの実験で、CD4+T細胞はIL−2、IL―12、TNF‑aな どサルコイドーシスで発現が報告されているサイトカインによりIL−18Raの発現が誘導された が、CD8+T細胞ではIL−2のみにより発現誘導が観察された。一方、サルコイドーシス患者、
対 照 者 と も にBALF中 のCD4+T細 胞 およ びCD8+T細 胞のIL−18Ra発 現 比率 は 、 末梢 血 のそ れらに比 して上昇 していた 。その機 序として、BALFT細胞でのCD45RO+細胞の増加 が考えられた。
結論 としてサ ルコイド ーシスに おけるCD4+T細胞優位のIL―18Raの発現増強は、本疾患 で のIL―18/IL―18R系 に 果 た すThl細 胞 の 重 要 な 役 割 を 強 調 す る も の で あ る 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
サルコイドーシスにおけるIL ―18 と その受容体の遺伝学的・細胞生物学的研究
サ ル コ イ ド ー シ ス は 全 身 に 非 乾 絡 性 類 上 皮 細 胞 肉 芽 腫 が 発 生 す る疾 患で 、そ の免 疫病 態 は 、Thl細胞 と活 性化 され た単 球・ マク ロフ ァー ジ系 細胞 の 集積 、お よび豊富なサイトカイ ン 産生 で特 徴づ けら れる 。近 年 日本 人に より発見されたIL−18は 、IL−12共存下で、強カに IFN‑ッ 産生 を誘 導す る。ILー18遺伝 子に はプロモーター領域に−137 (G/C)、ー607 (C/A)、
‑656 (G/T)の 三 っ の 一 塩 基 多 型 ( 以 下SNP)が 存 在 す る 。 そ こ で176名の 健常 対照 者と161 名 のサ ルコ イド ーシス患者を対象とし て、これらのSNPとサルコイ ドーシスの発症や臨床像と の相関を検討したが、有意な結果は得られなかった。
一 方 、‑607 (C/A)と‑656 (G/T)はサ ルコ イド ーシ ス患 者の 血清IL−18濃度 と有 意な 相関 を 認め(−607:p二ニニ0.021、―656:pニニ0.006)、遺伝子型CC、CA、AAあるしヽはGG、GT、TTのJI頃に 中 央 値 が 高 値 を 示 し た 。 健 常 者 で は 同様 な相 関を 認め なか った 。三 っのSNPで 構成 され る ハ プロ タイ プの 中で 、最 も頻 度 の高 いニ つのハプロタイプ(一137G/―607C/−656Gおよび
−137G/―607A/―656T)を 含む プロ モ ータ ー配 列の 転写 活性 は、 ハプ ロタ イプG/C/Gで他 方 のハプロタイプより有意に高く(p二ニ0.001)、血清IL―18濃度と遺伝子多型の相関と符合した。
IL―18受容 体はIL―18Rcxと、IL―18Rpのニっのサブュニットから 構成されている。21名のサ ル コ イ ド ー シ ス 患 者 と8名 の 健 常 者 を対 象に 、気 管支 肺胞 洗浄 液(BALF)リ ンパ 球と 末梢 血 (PB)リンパ球に ついて、IL―18Ra鎖の発現をフローサイトメーターにて 検討した。その結果、
サ ル コ イ ド ー シ ス 患 者 のBALFとPBのCD4+T細 胞 で は 、 健 常 者 に 比 し て 有 意 に 高 い IL―18Rcxの発現比率を示した(BALF: p=0.0002、PB: p=0.005)。またサ ルコイドーシス患者で は 、BALF CD4+T細 胞 はBALF CD8+T細 胞 に 比 べ てIL―18Ra,の 発 現 比 率 が 上 昇 し て い たが(p 0.001)、健常者で同様な現象は観察されなかった。
健 常 者PBリ ン パ 球 を 用 い た 励wtroの 実 験 で 、CD4+T細 胞 はIL−2、IL−12、TNF‑aな ど サルコイドーシ スで発現が報告されているサイトカインによりIL―18Raの発現が誘導されたが、
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CD8+T細 胞で はILー2の みに より 発現 誘導 が観 察さ れた。一方、サルコイドーシス患者、 対 照 者 と も にBALF中 のCD4+T細 胞 お よ ぴCD8+T細 胞 のIL―18Ra発 現 比 率 | ま 、PBの そ れ らに 比し て 上昇 して いた (サ ルコ イド ーシ スCD4+T細 胞:p=0.0001、サ ルコイドーシ ス CD8+T細 胞 :p=0.023、 健 常 者CD4+T細 胞 :p=0.012、 健 常 者CD8+T細 胞 :p=0.012)。 そ の 機 序 と し て 、BALFT細 胞 で のCD45RO+細 胞 の 増 加 と 並 行 し た 、 肺 と い う臓 器特 異的 な影響 が反映されていると考えられた。
以 上 よ り 、 本 研 究 によ りIL一18遺伝 子プ ロモ ータ ー多 型 はサ ルコ イド ーシ ス患 者の 血清 ILー18濃度の規定因子のひとっであることが明らかとなった。またサルコイドーシスにおける CD4+T細 胞 優 位 のIL―18Ra発 現 増 強 は 、 本 疾 患 で のIL―18/IL−18R系 に 果た すThl細胞 の重要 な役割を、あらためて強調するものである。
審 査に あた り 、副 査上 出教授より1)IL―18遺伝子多型とサルコイドーシス患者血清IL−18 濃 度の 相関 が 、サ ルコ イドーシスの活動性と関連しているか 否か、2)他疾患において同 様 な 相関 が観 察 され る可 能性、3)11―2によるILー18Ra発現増強の機序などについて、副査 清 水 教授 より 、1) 皮膚 病変 のみ のサ ルコ イ ドー シス患者にお ける、肺胞T細胞のILー18Raの 発 現、2)11ー18遺 伝子 多型 研究 の展 望と 今後 の方 向性などについての質問があった。次 い で 主査 の西 村 教授 より 、1)健 常者 とサ ル コイ ドーシス患者 に共通した、肺胞T細胞によ る IL−18Ra発 現 亢進 の意 義に つい て質 問が あっ た。 申請者はこれらの質問に対し、自験デ ー タと文 献を引用し、概ね適切に回答した。
こ の 論 文 は 、IL―18遺 伝子 多型 の意 義を サル コイ ドー シ スに おい て詳 細に 検討 し、 血清 ILー18蛋白との相関の機序を遺伝子転写レベルで解明した点、ILー18Raの発現をサルコイド ーシス で初めて詳細に解析した点で高く評価される。
審査委 員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士( 医学)の学位を受けるのに、
充分な 資格を有するものと判定した。