博 士 ( 歯 学 ) 村 井 知 佳
学位論文題名
Establishment of stable human glioma cell lines expresslng radionuClidereportergenereSponSlVetohypOXla
(低酸素応答性レポーター遺伝子安定発現ヒトグリオーマ細胞株の樹立)
学位論文内容の要旨
[緒言]
腫 瘍 内 にお け る 低酸 素 領 域の 存 在 は、 化学療 法や放射 線治療に 対する 抵抗性や 癌の 悪性度 と関連す る予後 因子のー っである 。しか し我々が 腫瘍低 酸素にっ いて理解できて い る こ と は未 だ 限 られ て い る ため 、 低 酸素 に さ らさ れ た 癌細 胞 に どの よ う な変 化 が 起こる のかも含 め、in vitroお よびin vivoで分子レベル・遺伝子レベルの研究をさらに 行 う 価 値 があ る と 考え ら れ る 。そ の た め本 研 究 では 、 低 酸素 状 態 に応 答 し て核 医 学 レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 安 定 発 現 す る ヒ ト 腫 瘍 細 胞 株 を 樹 立 す る こ と を 目 的 とし た 。 低酸素 関連遺伝 子のプ ロモータ ー領域 に位置する低酸素応答因子(Hypoxia responsive element; HRE)は、hypoxia inducible factor (HJ[F)‑1が結合する領域である。HIF―laが 低酸素 状態で安 定化す ると、恒 常的に発 現して いるaryl hydrocarbon receptor nuclear translocator (ARNT)とへテロ 二量体 を形成し 、HREに結合し て低酸素 関連遺伝子の発現 を誘導 する。Na+/I. symporter (NIS)は主に甲状腺濾胞細胞でヨードの細胞内輸送を担う 膜貫 通 糖 蛋 白質 で あ り、 核 医 学レ ポ ー ター遺伝 子とし て用いら れてき た。腫瘍 細胞に NIS タンノくクを発現させると、1241を用いたPositron Emission Tomography (PET)や1231 または99 Tc04.を用いたsingle photon emission computed tomography (SPECT)により非侵 襲的 に 繰 り 返し 画 像 化で き る よう に な る。 本 研 究で 我 々 は、 複 数 のHRE制御下に ヒト NISレポーター遺伝子を安定発現するヒトグリオーマ細胞を作製し、由vitr〇で評価した。
[材料と方法]
1.細胞培養:ヒトグリオーマ細胞株U‐87MGは、Dulbecco smodifledEagle smediumにて 370C、5%C02の 条 件 で培 養 し た。 こ の 細胞株 は以降の 安定細胞 株の親 細胞株も しくは 99n1Tcod・取り込み試験での陰性対照として用いた。
2.レポーターベクターの作製:humanvaScularendothelialgrowthfactor(VEGF)遺伝子の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に 存 在 す るm也 を 鋳 型 と して35塩基 対 の オリ ゴ ヌ クレ オ チ ド を 合 成 し た 。12個 のHREを5個 の 塩 基 対 か ら な る り ン カ ー を 介 し てpolymerasechain reaction(PCR) に よ り 作 製 し たNIS遺 伝 子 と 連 結 し 、pGL4vectorに 組 み 込 ん だ
(pGL4―12HRE―NIS)。
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3.安 定導 入:7.5×l05個のU‑87 MG細 胞を100 mmデ ィッ シュ に 播種 した 翌日にりン酸 カル シ ウム 法を 用い てレ ポー ター ベク ター(pGL4―12HREーNIS)の安 定導 入を行った。
pGL4‑12HRE‑NIS(1pg)およびempty vectorとしてのpBluescript (19 yg)をCaCl2溶液に 加え 、2xHBS (pH7.05)と 混ぜ て沈 殿を 作製 、こ れを細胞に滴下して9時間培養し、基本 培地 に 交換 して 後さ らに48時 間培 養し た。 その 後に25 pg/mlのhygromycinを添加した 培地で培養して、薬剤耐性 コ ロニーを分離・選択した。
4.99mTc04.取り込み試験:得られた安定導入細胞株にっい て、常酸素状態および低酸素 状態(1%.02、12時間)にてむぬむ〇での細胞ーの99 Tc04'義積を検討した。細胞を播種 して24時間 後か ら、 低酸素状態(1%02)もしくは常酸素 状態(20%02)にて12時間培養、
その 後3.7 kBq/wellの99mTc04・ を 含む 培地 に置換し30分間培養した。細胞は0.5 mlの O.lN NaOHで溶解した。細胞内に取り込まれた99 Tc04.の 放射能はガンマカウンターで 測定し、分子量に換算し、タン パク濃度で標準化した。
[結果]
選 択 さ れ た 約80個 のU‑87 MG‑12HRE‑NIS安 定ク ロ ーン をス クリ ーニ ング した 結果 、 99 Tc04.取り込み試験におい て最も高い低酸素応答を示した3系統の細胞株を選出し、
系 統C、G、Hと 名 付 け た 。 常 酸 素 状 態 に 比 べ て 低 酸 素 状 態 で 系 統C、G、Hは そ れ ぞれ4914倍、143.4倍、65.8倍と著明な99 Tc04.集積上昇を示した(いずれの細胞株でも 酸素 正 常状 態に 対し てpく0.0001) 。陰 性対 照の 系統Nで はい ず れの 条件 下においても バックグラウンドを大きく上回 る99 Tc04・集積を示すことはなかった。低酸素状態での 系統C、Gの99 Tc04・集積レベルは系統Hより高かった(pく0.0001)が、系統C、Gの間 に有意差は認められなかった。
[考察]
本 研 究 に お い てHRE制 御 下 に ヒ トNISレ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 発 現 す る 安 定 ヒ ト グリ オ ーマ 細胞 株U‑87 MGを 作製 し 、in vitroで低酸素 状態での99 Tc04・集積を確認 し た 。 我 々 は 低 酸素 レ ポー ター 遺伝 子イ メー ジン グに おい て12個と いう 多数 のHREを 初め て 利用 し、 酸 素正 常状 態に 対し て低 酸素 状態 で49.4‑143.4倍 とい う非常に高い 細胞 内99mTc04・集 積を 誘導 する こ とに 成功 した。更に 、高い遺伝子発現レベルを示す 複数 系 統(3系 統) の細 胞を 樹立 し たこ とに より、加vivoに適用した際に、導入された 遺伝 子 の染 色体 上で の位 置に よる 望ま しく ない 影響 を回 避す る 選択 肢が 与えられる。
そ れ に 加 え て 、 ヒ ト 腫 瘍 細 胞 株 を 用 い た 点 も、 臨 床に 即し たモ デル を作 製す る上 で 更なる利点となる。
我 々 の 細 胞 株 の 低 酸 素 状 態 へ の 高 い 反 応 は 、HREの 数 を12個 ま で 増 加 させ たこ と だけ で なく 、リ ン酸 カルシウム法という遺伝子導入効率 の高い手法を用いた結果と考え られる。また、酸素正常状態で の99 Tc04・集積レベルは、陰性対照細胞株よりもわずか に 高 か っ た も の の、 よ く抑 制さ れて いた ため 、minimal promoter自 身が わず か にNIS 遺伝子発現を活性化させたこと が示唆される。系統Hの酸素 正常状態での99 Tc04,集積 レ ベ ル が 系 統C、Gよ り 幾 分 低 か っ た が 、 恐 ら く こ れ は 系 統Hに 組 み 込 ま れ た レ ポ ー タ ー 構 造 物 の コ ピ ー 数 が 少 な い か ら で あ ろ う 。 し か し 、 系 統Hの 低酸 素状 態
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への反応はそれでもまだとても高く(65.8倍)、将来の加vitroやめvivo評価にとって 有望な細胞株であると考えられる。
今後更なる検討として、我々の新しい細胞株を加vivoヘ適用する必要がある。現在 の 組織 低 酸 素の ゴ ール ド ス タン ダ ード は 生 体内 還 元性 低 酸 素マ ー カ ーで ある piinonidazolによる免疫染色が挙げられるが、本研究のような細胞株を用いた低酸素 レポーター遺伝子イメージングの樹立は、低酸素への遺伝子反応の新しいゴールド スタンダードとして価値があり、腫瘍の化学療法や放射線治療への抵抗性について解明 できるかもしれない。加えて、最近の研究で、一部の癌遺伝子(src、ras等)からの信号 により低酸素と同様にHIFーlaが安定化する結果、悪性細胞が酸素正常状態でも低酸素 状態と同様な性格を獲得するということが示されている。我々のHRE−NISレポーター 遺伝子イメージングは、このような分子機構へ光明を投じ、低酸素に関連する癌の 難 治性 に 関 する 遺 伝レ ベ ル での 新 たな 知 見 が得 ら れる よ う にな る で あろ う。
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