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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 村 井 知 佳

     学位論文題名

Establishment of stable human glioma cell lines expresslng     radionuClidereportergenereSponSlVetohypOXla  

(低酸素応答性レポーター遺伝子安定発現ヒトグリオーマ細胞株の樹立)

学位論文内容の要旨

[緒言]

  腫 瘍 内 にお け る 低酸 素 領 域の 存 在 は、 化学療 法や放射 線治療に 対する 抵抗性や 癌の 悪性度 と関連す る予後 因子のー っである 。しか し我々が 腫瘍低 酸素にっ いて理解できて い る こ と は未 だ 限 られ て い る ため 、 低 酸素 に さ らさ れ た 癌細 胞 に どの よ う な変 化 が 起こる のかも含 め、in vitroお よびin vivoで分子レベル・遺伝子レベルの研究をさらに 行 う 価 値 があ る と 考え ら れ る 。そ の た め本 研 究 では 、 低 酸素 状 態 に応 答 し て核 医 学 レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 安 定 発 現 す る ヒ ト 腫 瘍 細 胞 株 を 樹 立 す る こ と を 目 的 とし た 。   低酸素 関連遺伝 子のプ ロモータ ー領域 に位置する低酸素応答因子(Hypoxia responsive element; HRE)は、hypoxia inducible factor (HJ[F)‑1が結合する領域である。HIF―laが 低酸素 状態で安 定化す ると、恒 常的に発 現して いるaryl hydrocarbon receptor nuclear translocator (ARNT)とへテロ 二量体 を形成し 、HREに結合し て低酸素 関連遺伝子の発現 を誘導 する。Na+/I. symporter (NIS)は主に甲状腺濾胞細胞でヨードの細胞内輸送を担う 膜貫 通 糖 蛋 白質 で あ り、 核 医 学レ ポ ー ター遺伝 子とし て用いら れてき た。腫瘍 細胞に NIS  タンノくクを発現させると、1241を用いたPositron Emission Tomography (PET)や1231 または99 Tc04.を用いたsingle photon emission computed tomography (SPECT)により非侵 襲的 に 繰 り 返し 画 像 化で き る よう に な る。 本 研 究で 我 々 は、 複 数 のHRE制御下に ヒト NISレポーター遺伝子を安定発現するヒトグリオーマ細胞を作製し、由vitr〇で評価した。

[材料と方法]

1.細胞培養:ヒトグリオーマ細胞株U‐87MGは、Dulbecco smodifledEagle smediumにて 370C、5%C02の 条 件 で培 養 し た。 こ の 細胞株 は以降の 安定細胞 株の親 細胞株も しくは 99n1Tcod・取り込み試験での陰性対照として用いた。

2.レポーターベクターの作製:humanvaScularendothelialgrowthfactor(VEGF)遺伝子の プ ロ  モ ー タ ー 領 域 に 存 在 す るm也 を 鋳 型 と して35塩基 対 の オリ ゴ ヌ クレ オ チ ド を 合 成 し た 。12個 のHREを5個 の 塩 基 対 か ら な る り ン カ ー を 介 し てpolymerasechain reaction(PCR) に よ り 作 製 し たNIS遺 伝 子 と 連 結 し 、pGL4vectorに 組 み 込 ん だ

(pGL4―12HRE―NIS)。

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3.安 定導 入:7.5×l05個のU‑87 MG細 胞を100 mmデ ィッ シュ に 播種 した 翌日にりン酸 カル シ ウム 法を 用い てレ ポー ター ベク ター(pGL4―12HREーNIS)の安 定導 入を行った。

pGL4‑12HRE‑NIS(1pg)およびempty vectorとしてのpBluescript (19 yg)をCaCl2溶液に 加え 、2xHBS (pH7.05)と 混ぜ て沈 殿を 作製 、こ れを細胞に滴下して9時間培養し、基本 培地 に 交換 して 後さ らに48時 間培 養し た。 その 後に25 pg/mlのhygromycinを添加した 培地で培養して、薬剤耐性  コ ロニーを分離・選択した。

4.99mTc04.取り込み試験:得られた安定導入細胞株にっい て、常酸素状態および低酸素 状態(1%.02、12時間)にてむぬむ〇での細胞ーの99 Tc04'義積を検討した。細胞を播種 して24時間 後か ら、 低酸素状態(1%02)もしくは常酸素 状態(20%02)にて12時間培養、

その 後3.7 kBq/wellの99mTc04・ を 含む 培地 に置換し30分間培養した。細胞は0.5 mlの O.lN NaOHで溶解した。細胞内に取り込まれた99 Tc04.の 放射能はガンマカウンターで 測定し、分子量に換算し、タン パク濃度で標準化した。

[結果]

  選 択 さ れ た 約80個 のU‑87 MG‑12HRE‑NIS安 定ク ロ ーン をス クリ ーニ ング した 結果 、 99 Tc04.取り込み試験におい て最も高い低酸素応答を示した3系統の細胞株を選出し、

系 統C、G、Hと 名 付 け た 。 常 酸 素 状 態 に 比 べ て 低 酸 素 状 態 で 系 統C、G、Hは そ れ ぞれ4914倍、143.4倍、65.8倍と著明な99 Tc04.集積上昇を示した(いずれの細胞株でも 酸素 正 常状 態に 対し てpく0.0001) 。陰 性対 照の 系統Nで はい ず れの 条件 下においても バックグラウンドを大きく上回 る99 Tc04・集積を示すことはなかった。低酸素状態での 系統C、Gの99 Tc04・集積レベルは系統Hより高かった(pく0.0001)が、系統C、Gの間 に有意差は認められなかった。

[考察]

  本 研 究 に お い てHRE制 御 下 に ヒ トNISレ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 発 現 す る 安 定 ヒ ト グリ オ ーマ 細胞 株U‑87 MGを 作製 し 、in vitroで低酸素 状態での99 Tc04・集積を確認 し た 。 我 々 は 低 酸素 レ ポー ター 遺伝 子イ メー ジン グに おい て12個と いう 多数 のHREを 初め て 利用 し、  酸 素正 常状 態に 対し て低 酸素 状態 で49.4‑143.4倍 とい う非常に高い 細胞 内99mTc04・集 積を 誘導 する こ とに 成功 した。更に 、高い遺伝子発現レベルを示す 複数 系 統(3系 統) の細 胞を 樹立 し たこ とに より、加vivoに適用した際に、導入された 遺伝 子 の染 色体 上で の位 置に よる 望ま しく ない 影響 を回 避す る 選択 肢が 与えられる。

そ れ に 加 え て 、 ヒ ト 腫 瘍 細 胞 株 を 用 い た 点 も、 臨 床に 即し たモ デル を作 製す る上 で 更なる利点となる。

  我 々 の 細 胞 株 の 低 酸 素 状 態 へ の 高 い 反 応 は 、HREの 数 を12個 ま で 増 加 させ たこ と だけ で なく 、リ ン酸 カルシウム法という遺伝子導入効率 の高い手法を用いた結果と考え られる。また、酸素正常状態で の99 Tc04・集積レベルは、陰性対照細胞株よりもわずか に 高 か っ た も の の、 よ く抑 制さ れて いた ため 、minimal promoter自 身が わず か にNIS 遺伝子発現を活性化させたこと が示唆される。系統Hの酸素 正常状態での99 Tc04,集積 レ ベ ル が 系 統C、Gよ り 幾 分 低 か っ た が 、 恐 ら く こ れ は 系 統Hに 組 み 込 ま れ た レ ポ ー タ ー 構 造 物 の コ ピ ー 数 が 少 な い か ら で あ ろ う 。 し か し 、 系 統Hの 低酸 素状 態

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への反応はそれでもまだとても高く(65.8倍)、将来の加vitroやめvivo評価にとって 有望な細胞株であると考えられる。

  今後更なる検討として、我々の新しい細胞株を加vivoヘ適用する必要がある。現在 の 組織 低 酸 素の ゴ ール ド ス タン ダ ード は 生 体内 還 元性 低 酸 素マ ー カ ーで ある piinonidazolによる免疫染色が挙げられるが、本研究のような細胞株を用いた低酸素 レポーター遺伝子イメージングの樹立は、低酸素への遺伝子反応の新しいゴールド スタンダードとして価値があり、腫瘍の化学療法や放射線治療への抵抗性について解明 できるかもしれない。加えて、最近の研究で、一部の癌遺伝子(src、ras等)からの信号 により低酸素と同様にHIFーlaが安定化する結果、悪性細胞が酸素正常状態でも低酸素 状態と同様な性格を獲得するということが示されている。我々のHRE−NISレポーター 遺伝子イメージングは、このような分子機構へ光明を投じ、低酸素に関連する癌の 難 治性 に 関 する 遺 伝レ ベ ル での 新 たな 知 見 が得 ら れる よ う にな る で あろ う。

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学位論文審査の要旨

主 査    教 授    北 川 善 政 副 査    教 授    進 藤 正 信 副 査    教 授    戸 塚 靖 則

副 査    研 究 員    犬 伏 正 幸 ( 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 )

     学 位 論 文 題 名

Establishment of stable human glioma cell lines expresslng     radionuClidereportergenereSponSlVetohypOXia

( 低 酸 素 応 答 性 レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 安 定発 現 ヒ ト グ リ オ ー マ 細 胞 株 の 樹 立 )

   審査 は、 全審 査委 員出 席の もと、 学位 申請 者に対して提出論文の内容の説明 を 求 め た 。 学 位 申 請 者 か ら は 以 下 の 内 容 の 論 述 が な さ れ た 。

   腫瘍 内に船 ける 低酸 素領 域の 存在 は、 化学 療法 や放 射線 治療 に対する抵抗性 や 癌 の 悪 性 度 と 関 連 す る 予 後 因 子の ー っ で あ る 。 しか し我 々が 腫瘍 低酸 素に っ い て 理 解 で き て い る こ と は 未 だ限 ら れ て い る た め、 低酸 素に さら され た癌 細胞にどのような変化が起こるのかも含め、in vitro およぴin vivo で分子遺伝手 レ ベ ル の 研 究 を さ ら に 行 う 価 値 があ る と 考 え ら れ る。 その ため 本研 究で は、

低 酸素 状態に 応答 して 核医 学レ ポー タ一 遺伝 子を 発現 する 安定 ヒト腫瘍細胞株 を樹立することを目的とした。

   [材料と方法]

   低 酸 素 分 圧 条 件下 で 転 写 活 性 を 促 進 す る 低 酸 素 応 答 因 子 (HRE) 配 列 を 12 個 と、99 Tc04‑ や放射性ヨードを細胞内に取り込むsodium/iodide symporter (Ms) レ ポー ター遺 伝子 を連 結し 、pGL4 ベ クタ ーに 組み 込ん だ。 作製 したレポーター ベ ク タ ー を ヒ ト グリ オ ー マ 細 胞 U‑87 MG ヘ 安 定導 入 し た 。 得 ら れ た 安 定 導 入 細 胞株 につい て、 酸素 正常 状態 船よ ぴ低酸素状態(1 %02 、12 時間)にて細胞へ の 99 Tc04‑ 集 積 お よ ぴ NIS mRNA の 発 現 レ ベ ル を in vitro で 調 べ た 。    [結果]

   約 80 個 の U‑87 MG‑12HRE‑NIS 安 定 ク ロ ー ン を ス ク リ ー ニ ン グ し た 結 果 、 99 Tc04‑ 取 り 込 み 試 験に 紹い て酸 素正 常状 態に比 べて 最も 高い 低酸 素応 答を 示 し た 3 系 統 の 細 胞 株 を 選 出 し 、 系 統 C 、 G 、 H と 名 付 け た 。 酸 素 正 常 状 態 に 対して低酸素状態で系統C 、G 、H はそれぞれ49 .4 倍、143.4 倍、65 .8 倍の99mTc04.

集 積 上 昇 を 示 し た 。 ま た こ れ ら の細 胞 は 、 定 量 的 リア ルタ イム 逆転 写ポ リメ

ラ ー ゼ 連 鎖 反 応 で も 37.8 倍 、 28.1 倍 、 8.8 倍 と い う高 いNIS m 恥 聡発 現を 示し

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た。

   [考察]

   本研究 に韜いて HRE 制御下にヒト NIS レポーター遺伝子を発現する安定ヒト グリオーマ細胞株U‑87 MG を作製し、加vitro で低酸素状態での99 Tc04‑ 集積を 確認した。我々は低酸素レポータ・ー遺伝子イメージングヘ 12 個のHRE を初め て利用し、酸素正常状態に対して低酸素状態で49.4‑143.4 倍という非常に高い 細胞内99 Tc04‑ 集積の誘導に成功した。更に、高い遺伝子発現レベルの3 系統 を作製したので、将来加 wvo に適用した時に、導入された遺伝子の染色体上で の位置による望ましくない生物学的た効果を回避する選択肢が与えられるであ ろう。それに加えて、ヒト腫瘍細胞株を用いた点も、更なる利点となるはずで ある。

   我々の細胞株の低酸素状態への高い反応は、 HRE の数を 12 個まで増加させた ことだ けでなく、 リン酸カルシウム法により遺伝子導入の効率が高められた 可能性がある。また、酸素正常状態での99 Tc04 .集積レベルは、陰性対照細胞株 よりもわずかに高かったものの、よく抑制されていたため、minimal promoter 自 身が わずかに NIS 遺伝 子発現を活 性化させた ことが示唆 される。系 統 H の 酸素正常状態での 99mTc04̲ 集積レベルが系統C 、G より幾分低かったが、恐らく これは系統 H に組み込まれたレポーター構造物のコピー数が少ないからであろ う。しかし、系統H の低酸素状態への反応はそれでもまだとても高く(65.8 倍)、

将来の in vitro や in vivo 評価に とって有望 な細胞株であると考えられる。

   今後更なる検討として、我々の新しい細胞株をin vivo ヘ適用する必要がある。

現在の 組織低酸素 のゴールドスタンダードは生体内還元性低酸素マーカーで ある pimonidazol による免 疫染色が挙 げられるが 、本研究のような細胞株を 用いた低酸素レポーター遺伝子イメージングの樹立は、低酸素への遺伝子反応 の新し いゴールド スタンダードとして価値があり、腫瘍の化学療法や放射線 治療への抵抗性にっいて解明できるかもしれない。我々の HRE‑NIS レポーター 遺伝子イメージングは、癌の分子機構の解明ヘ光明を投じ、低酸素に関連する 癌の難治性に関する遺伝レベルでの新たな知見が得られるようになるであろう。

   論文審査にあたって、論文申請者による研究要旨の説明の後、本研究ならぴ に関連する研究にっいて口頭試問を行った。主な質問事項は、1 )現在実用化 され て い る低 酸 素PET ト レ ーサ ー の原 理 に ついて、 2)12 個 の HRE を 用いた 根拠にっ いて、 3 )本研究での低酸素暴露時間(12 時間)の根拠について、

4 )複数の安定発現細胞株の中から3 種類の系統を選択した理由について、5 )安定

発現細胞株の定義について、6 )ヒト腫瘍細胞株を用いたことによる具体的な

利点について、7 )本研究で作製した低酸素応答性腫瘍モデルが将来、具体的に

ど の よ う な こ と に 役 立 っ と 考 え ら れ る の か に つ い て 等 で あ っ た 。

参照

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実