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博 士 ( 理 学 ) 金 吶 錫 学 位 論文 題 名 Synthesis and stimuli-responsive properties of ionic polythiophenes

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 金    吶 錫

     学 位 論文 題 名

Synthesis and stimuli‑responsive properties     of ionic polythiophenes

(イオン性ポリチオフェンの合成と刺激応答特性)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    導 電性有 機化合物 のーつ であるポ リチオフ ェンは 、長らく 自身の 不溶性に より研究が制限さ れ てきた。 しかし 、最近、 チオフ ェン環の3位置 に置換 基を導入させることによって有機溶媒(ア ル キル基) や水( カルボン 酸ナトリウム)にさえ溶けることが発見されるなど、不溶性が解決され て 以来、多 くの研 究がなさ れてき た。そし てクロ ミズムな どの興味 深い現 象が発見 され、多くの 議 論を呼ん でいる 。

    そ こで木 研究では ポリチ オフェン にカルボ キシル 基を導入 するこ とで、イ オン電導性と電子 電 導性の両 方の特 徴を併せ 持つ新 たな多重 刺激応 答物質の 合成を試 みた。 得られた ポリチオフェ ン は温度、pH、イオ ン強度な どの外 部刺激に よって 応答する ことが 分かった 。また、このような 水 溶性ポリチオフェンはrigidな高分子電解質として他のflexible&semlイigidな高分子電解質と比

, 丶こて特 異な解 離挙動形 態変化 を示すこ とが明 らかにな った。

イオン性ポリチオフェンとそのゲルの合成

    ボ リ チ オフェ ン環の3位置 に側鎖 基として カルポキ シル基 を導入す ること でイオン 性のポ リ チ オ フ ェン を 合成し 、H1 NMRFT‐IR、GPCなど による 構造を確 認した。 また、 グルは架 橋剤と し てAdipoylDihydrazide(ADH)を用しヽ、N,N゛‐Dicvclohexylcarbodiimide(DCC)(縮合剤)によるDMSO 中、常温で縮合反応によって合成された。

解離挙動

    ポリ チオフェ ンは側鎖 にイオ ン性のカ ルボキ シル基を持っているので、rigidな高分子電解質 としてflexibleなpoly(acDrlic acid) (PAA)と比較してuniqueな解離挙動を示す。pH=5〜6で解離挙 動が不連続的に変化し、Henderson‑Hasselbach曲線にニっの傾き(lll,I12)が見られた。このことは ポリチ オフェ ン主鎖のrigidityとhvdrophobicityに起因したためと考えられる。また、粘度測定の 結 果も 、 同 じpH=5〜6のと ころで刀sP/Cが急激 に変化 している ことから 、水溶 液中でイ オン性 ポ リチオフェンはcoil‑like stateからrod‑like stateへconformationが変化していると考えられる。この ようなpH依存性はよく知られているflexible高分子電解質、例えばpoly(acrylic acid) (PAA)のとま ったく違う。

    また 、長鎖ア ルキル基 を有す るモノマ ー(n‑octadecylthiophene)と の共重 合体の場合はホモ

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ポ リ チ オ フェ ン と同 じように だいた いpH=5〜6のとこ ろで解離 挙動が 転移し、 さらにホ モポリ チ オ フェン より112の値は 小さかっ た。こ れはポリ チオフェ ンのconformation変化に対して長鎖アル キ ル基が 妨害した ためと 考えられ る。そ れらの結 果から、 イオン 性ポリチ オフェ ンのrigidity、 11ydrophobicity、及び長鎖アルキル基の立体妨害性が側鎖のカルボキシル基の解離によるポリチオ フ ェ ン 主 鎖 の conformation変 化 に 大 き な 影 響 を 与 え て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。

ク ロミズ ム特性

    クロミズ ム(chromism)とい うのは ポリマー 鎖のコ ンフォメ ーション の変化 に伴う劇的な色変 r匕を 意味し、このことは導電性ポリマー鎖の兀電子の状態変化(共平面型、共非平面型)による共 役 鎖長の 変化に起 因して いる。ポ リチオ フェンは 温度や溶 媒によ るクロミ ズム(thermochromism.

solx‑atochromism)が 現 れ るし 、 ま たカ ル ボ キ シル 基 を 持っ て い るの で 、pHによ るクロ ミズム (ionochromism)も発見 すると考 えられ る。その 結果、 得られた 水溶性ポ リチオ フェンの吸収スペ ク ト ル にpH依 存 性が 見 ら れた 。pHを3か ら‖ まで 上昇さ せ、UV−visible吸収 スペク トルを測 定 し た と こ ろpH5〜6で吸 収波長が 急激に 変化し、pH6以 上のアル カリ領 域ではほ ば一定の 吸収波 長 を 示すこ とが分か った。 これは、 側鎖の カルボキ シル基が 解離す ることに よルポ リチオフェン主 鎖 のコン フォメー ション が変化し 、実効 的な共役 鎖長が変 化する ことによ って起 こると考えられ る 。 ま た 、こ れ ら は解 離 挙 動の 結 果 とよ く 一致 してい る。pH以外 に、温 度依存性 も調ぺ たとこ ろ 、pH=5以 下 の酸 性領 域におい ては温 度変化に より吸 収波長は 少し増 加したが 、pH=6以上の ア ル カリ領 域におい ては、 温度上昇 にっれ て吸収波 長が約30〜40nm低波長 側にシ フトした。ニれは 温 度増加 による水 素結合 の破壊( 酸性領域)と高分子主鎖の運動性が増加(アルカリ領域)し、実 効 的な共 役鎖長が 変化し たものと 考えら れる。

架橋効果

    ゲルに対 してもポ リマー と同様にpH、温度 に対するUV‑visible吸収ス ペクト ルの測定を行っ た。ポリマーは約pH=5.5で吸収波長が急激に変化するのに対して、ゲルの場合はより高いpH=7.5 ぐ らいの ところで は吸収 波長の転 移が起こ るこた が分かっ た。こ れはポリ マーを 架橋することで よ り安定 化された ためと 考える。 また、転 移前後 における 吸収波 長の幅は ポリマ ーよりも少し緩 や かだっ た。この 吸収波 長の差は 架橋密度 が高い ポリチオ フェングル(10mol%)の方が7moI%の ゲ ルより も緩やか で、架 橋密度に 大きく依 存した 。pHに対するゲルの膨潤度(q)の変化を見ると、

吸 収 波 長が 急 激 に 変化 す る とこ ろ で 架橋 密 度 に依 存 し なが らqも大 き くなる ことが分 かった 。

コンプレックス形成挙動

    解離 挙動とクロミズム結果から、高分子電解質のflexibilityが溶液挙動における重要な要因で あるこ とが分 かった。 そこで 、反対電 荷を有す る界面 活性剤と のコン プレック ス形成 挙動を調べ ること で高分子電解質の性質をより深く理解することにした。その結果、seml−rigidな高分子電解 質(NaPS:ポリ スチレン スルホ ン酸ナト リウム )は仕込 みの混合 電荷比 が1を 越える とさらに結晶 性の増加に従う過剰吸着(non‑stoichiometric insoluble complex)が起こったが、スチレンスルホン 酸 ナ ト リ ウ ム(NaSS)の ス チ レ ン(ST)と のsemi‑rigidな 共 重 合 体(copolymerF=0,7、 Fニニニ[NaSS]/([NaSS]十[STl)及びrigidなイオン性ポリチオフェン(P3TAA)は再溶解(non‑stoichiomet「IC     一214―

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soluble complex)する現象が見 られた。この結果からも、コンプレックス形成挙動は高分子電解質 のflexibility及び電荷密度に大きく依存していることが分 かった。

ド ーヒ゜ングと電気伝導度

    イオ ン性 ポリ チオ フェ ンは 、上 記で述べたイオン導電性と関係する性質 以外に、電子電導仕 と い う特 性が ある 。そ こでUV‑visibleと電気伝導度の測定による特性を調ぺ た。イオン性ポリチ オ フェンのドーピングはKI共存下で水溶液中ドーパントと して12を用いておこなった。その結果、

ド ーピングすることによって溶液の色はオレンジからブラックに大きく変化した。また、UVーvisible 吸 収 スペ クト ルを 測定 した とこ ろ、 ドー ピン グ状 態を 示す 新 しい吸収ピークが749nmで現れた。

ゲ ルの場合はポリマーと同じ条件ではドーピングされなか ったが、HC10。(70w%)の強いドーパン ト を 用い るこ とで ドー ピン グが でき た。ゲルの時もUV‑visibleの測定によル ドーピング状態を示 す 新 しい ピー クが794nmで 現れ た 。そ こで ドー ピン グさ れた ゲルとされてな いものの電気伝導度 を 測定した結果、イオン電導性を示さない乾燥状態で3X 10‑4〜IX l0゜S/cmの高い値を示すことと ド ー ビン グさ れて ない もの との 値の 差が4桁ぐ らい 違う こと からグルのドー ピングができたと考 え られる。

電気 応 答特 性

    当 研 究 室 で は す でに イ オン 性ハ イド ログ ル(PAMPS)を用 いて 電場 によ るグ ルの 刺激 応答 を 制御 し てき た。 そこ で、 本研 究で は今までの材料とは違った化 学架橋によって水で膨潤するイオ ン性 ポ リチ オフ ェン ゲル を合 成し 、外部刺激、特に電場による ゲルの刺激応答反応と、電極とし て使 っ た時のゲルの応答反応を調べ た。外部溶液は0.2M Kl溶液にドーパントとしてI,を溶かし た水 溶 液を それ ぞれ 用い た。 得ら れたゲルを電極の聞に置いた 場合には、5〜 7Vで(一)の方に 曲が る ことが分かった。また、この ゲルを電極として使った場合は、(土)15VともPt電極の方ヘ 曲が る こと が分 かっ た。

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学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授

長 田 義 仁 山 岸 晧 彦 西 村 紳 一 郎

坂 入 信夫 伏学 院地 球環 境斗 湖f究 科冫 尭  タ |J萍

     学位論文題名

Synthesis and stimuli‑responslVepropertieS     OfionlCp01ythiopheneS

     (イオン性ポリチオフェンの合成と刺激応答特性)

    導 電 性 高 分 子 の ー つ で あ る ボ リ チ オ フ ェ ン は 、 溶 解 性 が 悪 い た め 長 ら く 研 究 が 制 限 さ れ て き た が 、 チ オ フ ェ ン 環 の3位 に 置 換 基 を 導 入 さ せ る こ と に よ っ て 有 機 溶 媒 や 水 に 溶 け る こ と が 発 見 さ れ て 以 来 、 多 く の 研 究 が な さ れ て き た 。 本 研 究 は ポ リ チ オ フ ェ ン に イ オ ン 性 基 で あ る カ ル ボ キ シ ル 基 を 導 入 す る こ と で 、 イ オ ン 電 導 性 と 電 子 電 導 性 の 両 方 の 特 徴 を 併 せ 持 つ 新 た な 多 重 刺 激 応 答 性 物 質 を 合 成 し た 点 で 意 義 が あ る 。

    本 論 文 は こ の よ う な 水 溶 性 ボ リ チ オ フ ェ ン お よ ぴ そ の ゲ ル の 電 解 質 高 分 子 と し て の 特 性 を 中 和 滴 定 お よ び そ の 解 離 曲 線 を 評 価 し 、 ま た 導 電 性 高 分 子 と し て の 特 性 を 光 吸 収 波 長 のpH、 温 度 、 イ オ ン 強 度 依 存 性 及 び 電 気 伝 導 度 測 定 を 調 べ た も の で あ る 。 一 般 的 に は 固 体 状 態 や 有 機 溶 媒 中 で の 吸 収 波 長 の 変 化 が 知 ら れ て い る ボ リ チ オ フ ウ ン は 本 論 文 で 初 め て 、 水 を 媒 体 と し た 時 に 、pH、 温 度 、 イ オ ン 強 度 な ど の 外 部 刺 激 に よ っ て 応 答 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た 、 こ れ ら の イ オ ン 性 ポ リ チ オ フ ェ ン のrigidな 高 分 子 電 解 質 と し て の 考 え 方 は 今 ま で に な い 。 そ こ で 、 他 のflexible な 高 分 子 電 解 質 と 解 離 挙 動 お よ び そ れ に 従 う 形 態 変 化 を 比 べ る こ と は 大 変 興 味深 く、

今 後 さ ら な る 新 し い 分 野 と し て の 発 展 が 期 待 さ れ る 。

    イ オ ン 性 ボ リ チ オ フ ェ ン は 、 上 記 で 述 べ た イ オ ン 導 電 性 と 関 係 す る 性 質 以外 に、

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電子電導性という重要な特性がある。イオン性ボリチオフェンとゲルのドーピング を水溶液中で行った結果、それそれUV‑visible 吸収スベクトルと電気伝導度の測定 結果からその成功を確認できた。

     以上のように、水溶液ボリチオフェンとそのグルの光学的な特性はpH 、温度、

イオン強度などの外部刺激に大きく依存することであり、今後イオン性ポリチオフ ェンゲルのクロミズムデバイスへの応用が期待できる。さらに、イオン性ポリチオ フェンは高分子電解質でありながら剛直であり、特異な解離挙動とそれに従う形態 変化を示すことが明らかとなった。この成果は新たな有用な研究の発展に対しても 貢献するところ大なるものがある。

     よって著者は北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格ある者と認める。

参照

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