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欠 損型 肝 細胞増殖 因子

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 獣 医 学 ) 有 沢 広 彦

学 位 論 文 題 名

欠 損型 肝 細胞増殖 因子 (dHGF) の熱傷 治療への 応用 学位論文内容の要旨

  肝 細 胞 増殖 因 子(HGF)c‑mefプロ ト オン コ ジ ーン 産 物の り ガン ドであり 、 増 殖促 進、細胞 運動の促 進、形態形 成の誘導 のような 様々な生 物活性を 有する 増 殖 因 子 で あ る 。HGFは 分子 内 に4個 のク リ ング ル 構 造を 持 っが 、 そ の第1ク リ ン グ ル 構 造 の5残 基 欠 損 型 が 欠 損 型 肝 細 胞 増 殖 因 子(dHGF)で あ る 。dHGF は分子量76000 ‑‑‑80000のへパリン親和性を持つ蛋白質で、分子量5200056000の重鎖と分子量30000 '‑‑34,000の軽鎖から構成されている。dHGFはラッ ト 初代 培 養 肝細 胞 や上 皮 細 胞に 対 してHGFより 強い増殖 促進作用 を持ち、dHGFHGFは 標 的 細 胞 に対 す る増 殖 刺 激特 異 性と そ の3次 構造 に より 区 別 され る6 本 研究 は 、 欠損 型 肝細 胞 増 殖因 子(dHGF)の 熱 傷に 対 する 救 命 救急効 果および そ の作 用機序を 検討し、 肝臓機能を 増強する ことによ る、熱傷 治療薬と して可 能性を明らかする目的で実施した。

  1実 験で は 、ラ ッ ト の重 症 熱傷 モ デルを用 い、dHGFの後 処置によ る薬理効 果 にっいて 検討した 。麻酔下 で、ラット に体表面 積の40%に相当するni(deep bum)熱 傷 を 加え た あとdHGF処 置 群と 対 照群 に 分 けた 。 対照 群 の 熱傷ラ ットで は 、 熱 傷後23日目 での生存率 は27%であ った。血 清アルブ ミン値は 熱傷処理 後 に 減 少 し、熱傷 後23日目にお いても回 復しなか った。血 清a2.グロ ブリン分 画 は 増 加 する 一 方、 血 清 トラ ン スフ ェ リン、 総蛋白、 高密度リ ポ蛋白(HDL) ‑コ レ ス テ ロ ー ル 量 は 減 少 し た 。 熱 傷 ラ ッ ト にdHGFlmg/kg133日 間 静 脈 内 投 与 する と 、熟 傷 後23日 目 での 生 存率 は64% ま で上 昇 し た。 熱 傷ラット に dHGFlmg/kg133日 問 あ る い は6日 問 静 脈 内 投 与 す る と 、 血 清al一 丶 a2‐ 、ロ.グ ロブリン 分画は増加した。血清アルブミン、トランスフェリン、総 蛋 白 お よぴHDL‑コ レス テ ロ ール 値 は正 常 レ ベル あ るい は そ れ以 上 まで増加 し た 。 こ れらの結 果から、dHGFに よる適度 な肝蛋白 質合成の アップレ ギュレー シ ヨ ン が 、急性期 反応性蛋白 だけでは なく、ア ルブミン やトラン スフェリ ン等の 他 の 肝 由来蛋白 質の合成を 促進する ことで熱 傷後の生 理的な回 復過程を 加速さ せ 、 熟 傷 に よ る 致 死 率 の 改 善 に 貢 献 す る 可 能 性 が 示 さ れ た 。

(2)

  

第2 実験では、ラットの循環血液量減少モデルを用い、dHGF の前処置による 薬 理効果 につ いて 検討 した。 ラッ トに

dHGFlmg/kg

又は 溶媒 を1 日2 回

5

6

日間静脈内投与した後、体表面積の25 %に相当するm 度

(deep bum)

熱傷ある いはトリプシン処理による急性膵炎の病態を作製した。溶媒処置したラットで は、熱傷後7 日目および膵炎誘発

7

日目での生存率はそれぞれ12 %および5 % であった。両病態モデルにおいて、モデル作製6 時間後におけるへマトクリッ ト値は顕著に上昇し、循環血漿量は減少した。dHGF 前処置したラットでは、熱 傷後7 日目および膵炎誘発7 日目での生存率はそれぞれ40 %および29 %であっ た。dHGF を健常ラットに投与すると、ヘマトクリット値は低下し、循環血漿量 は増加したが、dHGF を病態動物に投与してもへマトクリット値の低下傾向と、

循環血漿量の増加傾向は変わらなかった。これらの結果から、dHGF は、循環血 漿量を増加させることで熱傷あるいは急性膵炎における血漿喪失性ショックの 進行を予防し、両モデルにおける致死率の改善に寄与する可能性が示された。

  

3

実験では、、中心静脈栄養(TPN) を施行したラットにおける、dHGF の蛋 白質代謝に及ばす影響を、熱傷モデルを用いて検討した。麻酔下で、ラットに

20

%熱傷十TPN 施行手術を行った。術後、dHGF 0.5 mg/kg 又は溶媒を1 日2 回

7

日問静脈内投与した。試験期間中、いずれの投与群にも、同カロリー(240

kcal/kg/

日)を供給し、24 時間毎に採尿・採糞を実施した。熱傷十TPN 処置した

dHGF

投与群と溶媒投与群を比較すると、dHGF の

7

日間投与で、血清蛋白・血 清脂質及び肝重量の増加が認められた。蛋白質代謝に関しては、溶媒投与群と 比較し、dHGF 投与群で、TPN 施行3 日目以降、窒素増加量は高値を示し、TPN 施行後6 日間の総窒素出納の増加が認められたが、体重変動及ぴ前脛骨筋の蛋 白質含量は両群で差はみられなかった。以上のことから、dHGF による肝蛋白質 合成の促進が窒素出納を改善し、代謝亢進に伴う敗血症あるいは多臓器不全へ のりスクを軽減することによる、熱傷による致死率の改善に寄与する可能性が 示された。

  

以上の成績から、dHGF は重症熱傷に対して救命救急効果を示すと考えられ、

その作用機序として、@dHGF による適度な肝蛋白質合成のアップレギュレーシ

ヨンが、急性期反応性蛋白だけではなく、アルブミンやトランスフェリン等の

他の肝由来蛋白質の合成を促進することで熱傷後の生理的な回復過程を加速さ

せる。◎dHGF による肝蛋白質合成の促進が、循環血漿量を増加させることで熱

傷における血漿喪失性ショックの進行を予防する。◎dHGF による肝蛋白質合成

の促進が窒素出納を改善し、代謝亢進に伴う敗血症あるいは多臓器不全へのり

スクを軽減する。以上の可能性を示した。dHGF は重症熱傷において、肝臓機能

を増強することで救命救急効果を示すユニークな熱傷治療薬として、今後の応

用が期待される。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

桑 原 幹 典 前 出 吉 光 藤 永    徹 稲 波    修

学 位 論 文 題 名

欠 損 型 肝 細 胞 増 殖 因 子 (dHGF) の 熟 傷 治 療 へ の 応 用

  本 研 究 は 、 欠 損 型 肝 細 胞 増 殖 因 子(dHGF)の 熟 傷 に 対 す る 救 命 救 急 効 果 お よ び そ の 作 用 機 序 を 検 討 し 、 熱 傷 治 療 薬 と し て の 可 能 性 を 明 ら か に し た も の で あ る 。   先 ず 、 ラ ッ ト 重 症 熱 傷 モ デ ル に お け るdHGFの 後 処 置 の 薬 理 効 果 を 検 討 す る た め 、 ラ ッ ト 体 表 面 積 にm度 の 熱 傷 を 加 え た 後 、dHGF投 与 効 果 に つ い て 検 討 し た 。 非 投 与 群 で は 熱 傷 後23日 目 で の 生 存 率 は27% で あ っ た の 対 し 、dHGFlmgg133日 間 静 脈 内 投 与 群 で は そ の 生 存 率 は64% ま で 上 昇 し た 。 血 清 ア ル ブ ミ ン 値 を 調 べ た と こ ろ 、 対 照 群 で は 熱 傷 処 理 と と も に 減 少 し 、23日 後 に お い て も 回 復 は な か っ た が 、 dHGFlmgkgl33日 間 あ る い は6日 間 静 脈 内 投 与 群 で は 正 常 レ ベ ル か あ る い はそ れ 以 上 の 増 加 が 観 察 さ れ た 。 こ の 傾 向 は 血 清 ト ラ ン ス フ ェ リ ン 、 総 蛋 白 、HDLー コレ ス テ ロ ー ル 量 に お い て も 観 察 さ れ た 。 血 清 グ ロ プ リ ン に つ い て は 熱 傷 処 理 に よ り 増 加 した が 、dHGF投与 群 で はさ ら に 増加 す る 傾向 が 見 ら れた 。

  次 い で 、 ラ ッ ト 循 環 血 液 量 減 少 モ デ ル を 作 成 し 、 そ れ に 対 す るdHGFの 前 処 置 に よ る 薬 理 効 果 に つ い て 検 討 し た 。 そ の た め 、 ラ ッ ト にdHGFlmg/kg1256日 間 静 脈 内 投 与 し た 後 、m度 の 熱 傷 あ る い は ト リ プ シ ン 処 理 に よ る 急 性 膵 炎 の 病 態 を 作 成 し た 。 対 照 群 で は 、 熟 傷 後7日 目 お よ び 膵 炎 誘 発7日 目 で の 生 存 率 は そ れ ぞ れ12% お よ び5% で あ っ た が 、dHGF前 投 与 群 で は そ れ ぞ れ40% お よ び29% に ま で 回 復 し た 。 本 病 態 モ デ ル に お い て は 、 い ず れ の 方 法 に お い て も6時 間 後 に へ マ ト ク リ ッ ト 値 の顕 著 な 上 昇 と 循 環 血 漿 量 の 減 少 が 観 察 さ れ た 。 こ れ に 対 し 、dHGF前 投 与 は ヘ マ ト ク リ ッ ト 値 増 加 な ら び に 循 環 血 漿 量 減 少 に 対 し 、 そ の い ず れ に も 抑 制 的 に 作 用 し た 。   最 後 に 、 中 心 静 脈 栄 養 (TPN) を 施 行 し た 熱 傷 ラ ッ ト に お け るdHGFの 蛋 白 質 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 し た 。 ラ ッ ト に 20% 熱 傷 十TPN施 行 手 術 を 施 し た 後 、dHGFO5mgkg127日 間 静 脈内 投 与 した 。 試 験 期間 中 毎 日240kcal/kg供 給し 、24時間毎 に 採 尿 ・ 採 糞 し た 。 そ の 結 果 、dHGF投 与 に よ りTPN施 行3日 目 に 総 窒 素 出 納 の 有 意 な 増 加 が 観 察 さ れ 、6日 間 持 続 し た 。 そ の 他 、dHGF投 与7日 間 で 血 清 蛋 白 ・ 血 清 脂 質 ・ 総 鉄 結 合 能 及 ぴ 肝 重 量 の 増 加 が 認 め ら れ た が 、 体 重 変 動 及 び 前 脛 骨 筋 蛋 白 含 量

(4)

には差はなかった。

  

以上の成績から、dHGF 後投与による重症熱傷ラット致死率の改善が明らかにされ

た。その原因として、

dHGF

による肝由来蛋白質合成の促進、循環血漿量の増加、窒

素出納の改善が考えられた。本研究は、

dHGF

を用いて肝臓機能増強により重症熱傷

を治療するとぃうユニークな治療方法の可能性を示しており、今後の臨床応用を含

め大変意義のある成果と言える。よって、審査員一同は、上記学位論文提出者有沢

広彦氏が博士(獣医学)の学位を授与されるに十分な資格を有するものと認めた。

参照

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