博 士 ( 工 学 ) 加 藤 善 大
学 位 論 文 題 名
AFM プロー ブを用い たアルミ ニウムの 表面微細加工 学位論文内容の要旨
現在 、高 度情 報化 社会 の発 展に よ り、パーソナルコンピューター、携帯電話 などの電子機 器 にお いて は、 高速 化、 高性 能化 、 小型・軽量化が求められている。このため 、各種電子部 品 のプ リン ト基 板の 配線 は、 サブ ミ クロ ンか ら数 十nmの加 工精 度が 要求 され るよ うに なっ て きて いる 。ま た、 実装 技術 にお い ては、これまでのはんだホールによる基板 と電子部品の 接 合か らバ ンプ によ る接 合へ と移 行 レており、マイクロパシプの作製法の確立 が急がれてい る 。さ らに 、ハ ード ディ スク など 磁 気記録装置においては、面内記録方式から 垂直記録方式 へ の移 行が 期待 され てい る。 これ ま で、これらの技術を支えてきたのは、フォ トリソグラフ イ ―技 術で ある 。こ の技 術は 、多 段 階に及ぶ製造工程を要し、有害な薬品を使 用するなどの 問 題 点 を 有 し て い る 。 ま た 、 パ タ ー ン の 微 細 化 に は 、 高 価 な 装 置 が 必 要 で あ る 。 この ため 、フ エト マス クを 用い な い、溶液中におけるダイレクトパターニン グの研究が広 く 行な われ てい る。 溶液 中に おい て パ夕一こングを行なうことにより、化学的 および電気化 学 的作 用を 利用 でき るた め、 連続 プ 口セスが可能になる。これまで、溶液中に おいて、レー ザ ーを 照射 する こと によ り、 アル ミ こウム上に化成したアノード酸化皮膜を局 部的に除去し た のち 、エ ッチ ング 、電 気め っき お よび無電解めっきを連続的に行なった報告 例がある。こ の 方法 は、 レー ザー ピー ムを 小さ く 集光することが難しく、サプミクロンのバ 夕―ンを形成 す る こ と は 困 難 で あ る 。 さ ら に、 走査 型ト ンネ ル顕 微鏡(STM)を用 いた 例と して 、金 属イ オンを含む溶液中 において、SrI`Mチップに端子電圧を印加することによ り、チッブ先端部に 金 属を 電析 させ たの ち、 チッ プを 基 板表面にコンタクトさせて金属クラスター を基板上に析 出 させ る方 法が ある が、 この 方法 は 導電性基板を必要とし、絶縁性酸化物を有 する金属およ び有機物基板に適 用できない。
コ
原 子 間 力 顕 微 鏡(AFM)は 、 導 電 性 基 板 の み な ら ず 絶 縁 性 基 板 に お い て も 観 察 お よ び加 工 が可 能で あり 、ま た、 プロ ーブ の チップはピラミッド状の形をしており、そ の先端部の曲 率 半径 は数 十nmであ るの で、 ナノ ヌ ートルスケールの研削・切削加工に適して いる。また、
レ ーザ ーピ ーム 位置 検出 器お よび ピ ェゾ 素子 から なる3次 元走 査 素子 を用 いる ため 、O.lnm 程度の精密な位置 制御を行なうことができる。
そこ で、 本研 究に おい ては 、AFMを用 レゝ 、溶 液中 にお ける 新規なダイレク トパターニン グ 法 の 開 発 を 試 み た 。 こ の 方 法は 、AFMブロ ーブ を用 い、 アル ミこ ウム 基板 上に 形成 した ア ノー ド酸 化皮 膜を 局部 的に 除去 し たのち、除去部のみに金属を析出させるも のである。こ の 方法 は、 連続 プロ セス が可 能で あ るば かり でな く、 加工 部の 形状を1n situ観察できる利 点 を 有 し 、 極 め て 有 効 な ダ イ レ ク ト パ 夕 一 二 ン グ 技 術 と 期 待 さ れ る 。 本 論 文 は 全 5章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。
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第1章は序論であり、材料研究における表面処理の変遷を述ベ、エレクトロニクス産業の 発展にともなう微細表面処理の重要性を述べている。また、気相および溶液中におけるダイ レクトパターニングに関して概説し、AFMを用いた新規なダイレクトノマ夕一二ングの開発 の工学的意義とその目的について述べている。
第2章においては、大気および種々の溶液中おいて、シリコンおよびダイヤモンドチップ のAFMプローブを用しゝ、プローブと試料の間に荷重F=3ー20 vNを印加してスクラッチす ることにより、アノード酸化皮膜を施したアルミニウム表面にサブミクロンの溝を形成する さいの溝の形成速度について検討しており、以下のことを見出している。大気および二回蒸 留水中における溝の形成速度はほぽ等しいが、大気中では溝のまわりに削りくずが堆積する のに対し、溶液中では削りくずが溶液中に飛散する。溝の深さは時間とともにほぽ直線的に 増大するのに対し、溝の幅は初期に急激に増大したのちほとんど変化せず、その値はチップ の幅の5倍程度である。実験結果の解析により、溝はプ口ーブのスクラッチによルアノード 酸化皮膜の除去と再生を繰り返しながら深くなっていくが、プローブの熱的・機械的ドリフ トにより溝の幅はチップの幅よりかなり大きくなるというヌカニズムを提案している。溝の 形成速度は、荷重、溶液組成およびpHに大きく依存し、pH9.2の希釈水酸化ナトリウム水 溶液中においては、ニ回蒸留水中に比べて約、5倍大きいのに対し、pH9.2の無電解銅めっき 溶液中においては、0.5倍程度となる。この挙動は、酸化皮膜の.溶解と銅金属の析出による 溝底部の表面構造の変化により説明できることを述べている。また、ダイヤモンドチップの 研削・切削能は、シリコンチッブのそれに比べて約3倍大きく、耐摩耗性も格段に優れてい ることを述べている。
第3章においては、無電解銅めっき溶液中において、シリコンチップのスクラッチによル アノード酸化皮膜を除去するさい、試料の自然浸漬電位と皮膜除去挙動との関係を調べると もに、生成した溝の内部および周辺に銅がどのように析出・堆積するかを、AFM伽situ観 察した結果、以下のことを見出している。プローブ・試料間にF=25 VN以上の荷重を印加 してスクラッチすると、アルミニウム素地が溶液に露出して溶解するため、試料の自然浸漬 電位は急激に低下し、溝周辺部に銅が析出する。スクラッチ終了後、試料をそのまま溶液中 に浸漬しておくと、銅の析出により溝周囲の析出物の成長および溝の深さの減少が起こるが、
こ の銅 の 析出 は ス クラ ッ チの さ い 生成 す る銅 が 析出核 となるこ とを推論 している 。 第4章においては、鋼析出物の形状の三次元的制御および複数の電析物の形成を行なうた め、チップ先端部以外を有機物被覆したAFMダイヤモンドプローブを用い、アルミニウム 表面上に形成した酸化皮膜を、硫酸銅溶液中で、プ口ーブを対極として試料のカソード分極 を行なうことにより、除去部のみに銅の電析を試みた。このAFMプローブを用いて皮膜を 除去したのち、チップ・試料間距離を己〓2.5ー15 yrnに保持しながらカソード分極するこ とにより、皮膜除去部のみに銅を電析させることができる。銅電析物の高さがチップ・試料 間に等しくなると、チップと銅が接触し、銅電析物の成長は停止するので、チップ・試料間 距離を制御することにより、銅電析物の高さを制御することができることを明らかにしてい る。また、スクラッチとカソード分極を試料上の位置を変えて繰り返し行なうことにより、
銅ドットアレイを連続的に作製することに成功した。
第5章は、本論文の総括である。
本研究により、溶液中において、アルミニウム上に生成したアノード酸化皮膜を局部的に 除去することができ、除去部のみに銅を析出させることができることを明らかとなった。こ
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の技術は、プリント基板の配線、実装技術および磁気記録装置ぬどにおけるマイクロバター ニングに極めて有効であり、マイク口表面処理工学の発展に多大な寄与をもたらすとともに、
電 子 ・ 電 気 デ バ イ ス の 新 し い 作 製 技 術 と し て 用 い ら れ る と 予 想 さ れ る 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
AFM プロー ブを用い たアルミ ニウムの表面微細加工
近 年 の 高 度 情 報 化 社 会 の 発 展 に よ り 、 バ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ ー 、 携 帯 電 話 な ど の 電 子 機 器 は 、 高 速 化 、 高 性 能 化 、 小 型 ・ 軽 量 化 が 強 く 求 め ら れ て お り 、 こ の た め 、 こ れ ら に 使 わ れ る プ リ ン ト 基 板 、 磁 気 記 録 媒 体 、IC配 線 な ど に お い て 、 よ り 一 層 の 微 細 バ タ ー ン が 要 求 さ れ る よ う に な っ て い る 。 現 在 、 微 細 バ タ ー ン 作 製 に は 、 光 リ ソ グ ラ フ イ ー が 用 い ら れ て い る が 、 こ れ は 多 段 階 に 及 ぶ 製 造 工 程 を 要 し 、 有 害 な 薬 品 を 使 用 す る な ど の 問 題 点 を 有 し て い る 。 こ の た め 、 フ ォ ト マ ス ク を 用 い な い ダ イ レ ク ト バ タ ー ニ ン グ の 研 究 が 広 く 行 な わ れ て い る 。
本 論 文 に お い て は 、 原 子 間 力 顕 微 鏡(AFM)を 用 い 、 溶 液 中 に お け る 新 規 な ダ イ レ ク ト バ タ ー ニ ン グ 法 の 開 発 を 試 み て い る 。 こ の 方 法 は 、AFMプ 口 ー プ を 用 い 、 ア ル ミ ニ ウ ム 基 板 上 に 形 成 し た ア ノ ー ド 酸 化 皮 膜 を 局 部 的 に 除 去 し た の ち 、 除 去 部 の み に 金 属 を 電 気 化 学 的 方 法 に よ り 析 出 さ せ る も の で あ る 。 こ の 方 法 は 、 皮 膜 除 去 お よ び 金 属 析 出 の さ い 、 化 学 的 お よ び 電 気 化 学 的 プ 口 セ ス を 適 用 す る こ と が で き 、 連 続 プ ロ セ ス が 可 能 で あ る ば か り で な く 、 加 工 部 の 形 状 をIn‑situ観 察 で き る 利 点 を 有 す る 。
本 論 文 は 全 5章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 各 章 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。 第1章 は 序 論 で あ り 、 材 料 研 究 に お け る 表 面 処 理 の 変 遷 を 述 ベ 、 エ レ ク ト 口 二 ク ス 産 業 の 発 展 に と も な う 微 細 表 面 処 理 の 重 要 性 を 述 べ て い る 。 ま た 、 気 相 お よ び 溶 液 中 に お け る ダ イ レ ク ト バ タ ー ニ ン グ に 関 し て 概 説 す る と と も に 、AFMを 用 い た 新 規 な ダ イ レ ク ト バ タ ー こ ン グ の 開 発 の 工 学 的 意 義 と そ の 目 的 に つ い て 述 べ て い る 。 第2章 に お い て は 、 大 気 お よ び 溶 液 中 に お い て 、 シ リ コ ン お よ び ダ イ ヤ モ ン ド チ ッ プ の AFMプ ロ ー ブ で 、 ア ノ ー ド 酸 化 皮 膜 を 施 し た ア ル ミ ニ ウ ム 表 面 を 、F=3‑ 20 uNの 荷 重 を 与 え て ス ク ラ ッ チ し た さ い の 溝 の 形 成 速 度 に つ い て 検 討 し た 結 果 、 以 下 の 新 し い 知 見 を 見 出 し て い る 。 溶 液 中 で ス ク ラ ッ チ 操 作 を 行 う と 、 , 削 り 屑 が 溶 液 中 に 散 逸 し 、 試 料 表 面 が 汚 染 さ れ な い 。 溝 の 形 成 速 度 は 、 ブ 口 ー プ に か け る 荷 重 、 溶 液 のpH、 化 学 組 成 に よ り 大 き く 依 存 す る の で 、 こ れ ら 条 件 の 適 切 な 選 択 に よ り 溝 の 形 成 速 度 を 自 由 に コ ン ト ロ ー ー ル で きる こ と を明 ら か にし て い る。 ま た 、溝 の 形 成 は、
表 面 酸 化 物 皮 膜 の 研 削 速 度 と 生 成 速 度 と の バ ラ ン ス に よ り 進 行 す る メ カ ニ ズ ム を 提
明 浩
夫 明
英 眞
敏 俊
橋 尾
田 塚
高 瀬
成 大
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
案している。
第3 章においては、無電解銅めっき溶液およびその溶液から還元剤を抜いた溶液 中において、アルミニウム試料表面をF ‑ 25 ptN の荷重を与えてスクラッチしたのち、
その溶液に保持したさいの銅の析出挙動をIn‑situ 観察した結果について述べている。
すなわち、いずれの溶液においても、スクラッチのさい、溝の底部の素地アルミニ ウムが露出し、これが水和酸化物を形成するとともに、Cu2 ゛イオンとの反応により、
銅微粒子を溝の底部および周囲に析出させることを見出すとともに、スクラッチ操 作ののち、試料を溶液中に浸漬しておくと、無電解銅めっき溶液中では、鋼の析出 が、溝の底部および周囲で引き続き起こるのに対し、還元剤を抜いた溶液中では、
銅の析出は停止すること明らかにしている。また、無電解銅めっき溶液中における 銅の析出 は、スクラ ッチのさい生成する銅が析出核となることを推論している。
第
4章 においては 、ブ口ーブのチップ先端部以外を有機物被覆したAFM ダイヤモ ンドブ口ーブの作製法を考案し、これをスクラッチ探針、アノード電極およびAFM 観察探針として用いてアルミニウム上に銅のドットアレイを形成することに成功し ている。すなわち、二ト口セル口ース膜でAFM プ口ープ全体を被覆したのち、電位 をモ二夕ーしながらスクラッチ操作を行い、チップ先端部のニトロセル口ース膜を 再現性良く除去する方法を開発するとともに、このブ口ーブを用いて皮膜を除去し たのち、このプ口ーブを対極として試料のカソード分極を行い、皮膜除去部に半球 状銅ドットを析出させることができることを明らかにしている。また、カソード分 極のさい、チップ先端と試料との距離を3 ‑ 25 ym に調整することにより、銅ドット のサイズを制御すること、およびスクラッチと銅析出の操作を異なる場所で繰り返 すこ と に より 、 最大 九 つの 銅 ドッ ト アレ イ を形 成 する こ とに 成 功 して い る。
第5 章は、本論文の総括である。