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夫妻の一方が婚姻後に取得した財産性知的所有権の帰属 (原題:論夫妻一方婚後所得財産性知識産権的帰属)

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夫妻の一方が婚姻後に取得した

財産性知的所有権の帰属

張  学軍  

(市川 英一 訳・解説)

【訳者前注・解説】

 婚姻中に夫妻が協力して取得した財産は夫妻共有財産に帰属する。しかし、 いずれか一方の身分と密接にかかわる財産については、当該夫または妻の特 有財産として扱われる。それでは、夫妻の一方が自己の能力と努力により取 得した知的所有権はどのように取り扱われるのであろうか。  この問題につき、「夫婦別産制」*を採用するとされているわが国の法制下 では、夫妻間に別段の約定がない限り、当該夫または妻の特有財産として取 り扱われるであろう。しかし、窪田充見教授が財産一般に関し「比較法的に は、程度の違いはあるものの、婚姻中に取得した財産等について、共通財産 として扱うなど、婚姻を理由として一定の明示的な手当てをしているものが 少なくない」(窪田充見『家族法〔第 2 版〕』〔有斐閣、2013 年〕65 頁)と述 べられているように、海外では、婚姻後に取得した知的所有権ないしこれに 関連する権利を夫妻共有財産と扱う法制が存在する。  中国もそのような国の一つであり、中国の「法定財産制には夫妻共同財産 制を採用し、夫妻個人の特有財産に該当する場合や夫妻双方が別に約定があ

翻 訳

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る場合を除いては、夫妻の婚姻関係存続期間中に夫妻双方または一方が得た 財産のすべてが夫妻の共同所有となる」(加藤美穂子『中国家族法[婚姻・ 養子・相続]問答解説』〔日本加除出版、2008 年〕60 頁)。そして、「知的所 有権か・ら・生・じ・た・収益」(傍点:訳者。以下同じ。)が夫妻共有財産に帰属する ことが、法律の明文をもって定められている(中華人民共和国婚姻法〔以下「婚 姻法」という〕第 17 条 1 項 3 号)。しかし、この規定にはあいまいさが残り、 学説上は、「知的財産権が身分と不可分の特性をもつ場合には、知的財産権 自体は夫妻共有財産ではなく、そこから生ずる経済的利益のみが夫妻共有財 産となる。」(加藤美穂子『詳解 中国婚姻・離婚法』〔日本加除出版、2002 年〕 142 ~ 143 頁)と解されてきた。  この学説の立場を是認したのが、中国の最高裁に相当する最高人民法院の 民事裁判第一法廷による中国婚姻法司法解釈関連規定の「理解と適用」であ る。同法廷 は、『最高人民法院婚姻法司法解釈(二)的理解与適用』(人民法 院出版社、2004 年)という解説書において、同法院が 2003 年に公布した「『中 華人民共和国婚姻法』の適用に係る若干の問題に関する解釈」の関連規定の 解説中で、「婚姻関係存続期間中に夫妻の一方が取得した知的所有権そ・の・も・ の・は当該一方の専有に帰する。」と明確に述べられたのである(本論文参照)。 しかし、このように夫妻の一方が婚姻後に取得した知的所有権を当該一方の 専有財産とすることには学説上異論があり、反論もなされたが、いずれも論 証不足の感は否めなかった。このような状況のなか、「婚姻後取得知財夫妻 共有説」の立場から体系的かつ掘り下げた論証を試みたのが本論文である。  本論文の著者張学軍教授は、中国法律学の名門吉林大学で法学修士号を取 得された後、山西大学法学院で副教授(わが国の「准教授」に相当)に抜擢 された。その後、数多くの優秀な学者を輩出している中国人民大学で中国家 族法研究の大家である楊大文教授に師事し、同大で博士号を取得された後、 南京師範大学法学院に勤務し、同大教授を経て、現在は、浙江工商大学法学 院教授として教育研究の任に当たられている。他方で、中国法学会婚姻法学

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研究会副会長として学界の発展にも尽くされている、中国家族法学界気鋭の 研究者である。  特筆すべきは、張教授が、中国では立法・研究が遅れている分野にも関心 を寄せられ、しかも中国各級科学研究費の助成を受けながら研究を進めてこ られたという事実である。とりわけ張教授が力を入れて研究されてこられた テーマが「事実婚」である。中国では、おそらくマルクス主義や政府が提唱 する社会主義精神文明との関係からだと思われるが、事実婚をめぐる立法・ 研究があまり進んでいない。しかし、張教授は、かなり早い時期から、この 問題に積極的に取り組まれ、比較法的研究を踏まえたすぐれた研究業績を上 げられてきた。張教授がポスドク研究員として中国の政府系シンクタンクで ある中国社会科学院法学研究所に赴任していた当時、受入れ側の同研究所于 敏教授(専門は民法不法行為法・環境法)は、次のように述べられていた(2005 年 11 月、于敏教授と交わした電話会話による)。  「わが国では、様々な理由から、事実婚をめぐる立法や研究が立ち遅れて いるが、現実に事実婚が存在する以上、それに目を背け立法や研究の枠外に 置くのはおかしい。張教授はこの問題に正面から向き合って研究を進められ ており、私は張教授の姿勢を支持する」。  本論文 の 研究 テーマ も、「離婚後知的所有権分割研究」(原文:離婚後知 識産権分割研究)と い う 課題名 で、「司法部(わ が 国 の「法務省」に 相当) 2008 年度国家法治と法学理論研究プロジェクト」(原文:国家法治与法学理 論研究項目)に採用され研究助成を受けており、本論文は、その研究成果の 一部 と し て、『浙江工商大学学報』2013 年第 3 期 に、「夫妻財産制」特集 の トップを飾るものとして発表されたものである。  本論文は、法学・比較法学的アプローチのみならず、哲学・社会学・経済 学的手法も駆使して、「婚姻後取得知財夫妻共有説」の体系的論証に取り組 まれた意欲作であり、また、2013 年 5 月に発表された最新の論文であるため、 中国の家族法学の現状を知るうえでも有益であるばかりでなく、中国人の家

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族観の一端を垣間見ることができる点でも興味深いように思われるので、以 下、全文を翻訳して、ここに紹介する次第である。  末筆ながら、本論文の本誌への翻訳原稿掲載を快く承諾してくださった張 学軍教授に対し、この場を借りて謝意を表したい。 *わが国では、本文にカッコ書きしたとおり、「夫・ ・婦別産制」という言い方 をするのが通例であるが、本稿では、本論文の訳文も含め、わが国や欧米諸 国の法制に関することが明白な場合や論文タイトル・記述内容として使われ ている場合を除き、一貫して「夫妻」という言葉を使用している。これは、 訳者の恩師であり、本論文の著者の恩師である楊大文中国人民大学教授と親 しい間柄にあった加藤美穂子先生(中国人民大学客員教授を務められ、2013 年 10 月逝去)が、この言葉に男女同権思想を込められたその思いを、訳者 が受け継いでいるためである。  (2014 年 1 月 20 日)

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夫妻の一方が婚姻後に取得した

財産性知的所有権の帰属

(原題:論夫妻一方婚後所得財産性知識産権的帰属)

張  学軍  

一 問題提起

 1980 年代、わが国は、相次いで「商標法」〔訳注 1〕、「特許法」〔訳注 2〕および 「著作権法」〔訳注 3〕を制定した。関連規定によれば、夫妻の一方は、婚姻関 係の存続期間中、自己がデザインしまたは他の者にデザインを委託した商 標につき、「登録商標専用権」の取得を出願することができ、完成した非職 務「発明創造」につき、「特許権」の取得を出願することができ、完成した「非 職務作品」につき、「著作権」を自動的に取得することができる。当該配偶 者が取得した権利は、これを「夫妻の一方が婚姻後に取得した知的所有権」 と総称することができ、権利を取得した夫妻の一方は、これを「取得配偶者」 とよぶことができ、その配偶者は、これを「非取得配偶者」とよぶことが できよう。改正後の知的所有権法によっても、状況は依然として変わりが ない。  1993 年から今世紀初めまで、「夫妻の一方が離婚後に取得した知的所有権」 は、ますます明白に夫妻法定財産制の調整を受けてきた。最高人民法院〔訳注 4〕 「人民法院の離婚事件審理に係る財産分割問題処理に関するいくつかの具体的 意見」〔原文:関于人民法院審理離婚案件処理財産分割問題的若干具体意見〕 (1993 年 11 月 3 日公布)(以下 1993 年「財産分割意見」と略称する)第 2 条 3 号は、次のように規定する。「夫妻双方が婚姻関係存続期間中に取得した財産

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は、これを夫妻共同財産とする。これには次に掲げるものを含む。(3)一 方または双方が知的所有権から生じた経済的利益」。2001 年に改正された「婚 姻法」(以下現行「婚姻法」と略称する)〔訳注 5〕第 17 条 1 項 3 号は、上記の規 定と基本的に同一である。ただし、これらの規定は、「夫妻の一方が婚姻後に 取得した知的所有権」が「夫妻共同財産」に該当するかどうかについて明確 に 規定 し な かった(1980 年「婚姻法」第 13 条 1 項、現行「婚姻法」第 17 条 1 項 5 号および第 18 条 5 号)。2004 年、上記のあいまいさは除去された。「最 高人民法院民事裁判第一法廷」は、「理解と適用」〔訳注 6〕というかたちで、「最 高人民法院『中華人民共和国婚姻法』の適用に係るいくつかの問題に関する 解釈〔原文:関于適用〈中華人民共和国婚姻法〉若干問題的解釈〕(二)》(以 下「婚姻法解釈」(二)」と略称する)(2003 年 12 月 25 日公布)〔訳注 7〕第 12 条 の運用につき、「婚姻関係存続期間中に一方が取得した知的所有権そのもの は、一方の専有に帰する。」と明確に宣言したのである〔原注 1〕。「最高人民法院 民事裁判第一法廷」の立場は、相当程度、最高人民法院の立場を代表してい ることに疑問の余地はない。よって、当該立場は、「準司法解釈」の地位を有 するというべきである。  近年、学者 の な か に は、「夫妻 の 一方 が 取得 し た 知的所有権」が 取得 配偶者の単独所有に帰することに対し疑問を呈する者がいる。当該疑問 は、間接のものと直接のものに分かれる。前者は、知的所有権から「生 ずる経済的利益は、現実の経済的利益か期待経済的利益かにかかわらず (後者は、「婚姻関係存続期間中に夫妻の一方が自己の作品につき他の者 と使用契約を締結していない場合の当該知的所有権から生ずる経済的利 益」である)(筆者は、当該利益は、「ある種の期待にすぎず」(justan        1)最高人民法院民事審判第一庭編著『最高人民法院婚姻法司法解釈(二)的理解与適用』(人 民法院出版社、2004 年)122-123 頁

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expectancy)〔原注 2〕、「期待権」には該当しないと考えている)、いずれも「夫 妻双方の共同所有に帰する」と説く〔原注 3〕。後者は、立法機関が、「婚姻関 係存続期間中 に 取得」し た「著作財産権」、「特許権」(「人格権 ( 精神的権 利 ) は存在しないと考えられる」)および「商標権」の取扱いについては、 物権と同様に取り扱って、「夫妻共有」と認定しなければならないと説く〔原 注 4〕。いずれの説も、理由があり、示唆に富んでいるが、論証面において、 なお深化させ体系化する必要があるように思われる。  筆者は、わが国の法定夫妻財産制は、夫妻の一方が婚姻後に取得した登録商 標専用権、著作財産権および特許財産権(これらは「夫妻の一方が婚姻後に取 得した財産性知的所有権〔訳注 8〕」と総称することができよう)は夫妻の共同財 産に帰属すると定めるべきであると考えている。本稿は、この立場を論証しよ うとするものである。至らぬ点は、学兄の叱正を賜りたい〔訳注 9〕

二 基本的属性:財産

 「最高人民法院民事裁判第一法廷」は次のように指摘する。「知的所有権」は、 「財産権」であると同時に「身分権」でもあり、強度の身分性を備え、身分と 密接不可分のものである」。例えば、「作者の配偶者は、作者が自己の著作中に 署名する権利を有さないばかりでなく、作品を発表するかどうかの決定権も有 さない」〔原注 5〕。略言すれば、知的所有権は二重の属性を備えている。このことは、        2)SUSANJPRATHER.Characterization,evaluationanddistributionofpensionsatdivorce. JournaloftheAmericanAcademyofMatrimonialLawyers,1998,15(1):p443-464. 3)陳葦「婚内所得知識産権的財産期待権之帰属探討」『現代法学』2000 年第 4 期所収。 4)鄭其斌「論夫妻財産制中知識産権的権利帰属及分割規則」『婦女研究論叢』2009 年第 4 期 所収。 5)最高人民法院民事審判第一庭編著・前掲書(注 1)122-123 頁

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「知的所有権」を取得配偶者の単独所有に帰せしめることの理由の一つになっ ている〔原注 6〕。しかし、この理由は成立し得ない。

 (一)登録商標財産権の純然たる財産権性

 一般に、「知的所有権」には、著作権、特許権および商標権を含むと考えられ ている。しかし、商標権には「身分権」を含まない。これは、「相続法」〔訳注 10〕 第 3 条が次のように明確に規定しているからである。「遺産とは、公民の死 亡時に残された個人の合法的財産をいう。これには次に掲げるものを含む。 (六)公民の著作権および特許権中の財産的権利」。ここから明らかなよ うに、商標権は、「財産権」と「身分権」から構成されていない。

 (二)著作権および特許権中の身分権と財産権との分離可能性

 比較法的にいえば、ドイツおよびオーストリアの著作権法の理論的基礎は 「一元論」である。すなわち、「著作権中の財産権と人格権は、これを分離す ることも譲渡することもできない」。これに対し、フランスおよびスイスの著 作権法の理論的基礎は「二元論」である。すなわち、「著作権中の財産権は、 これを身分権と分離することができ、よって譲渡も可能である」〔原注 7〕。わが 国の「著作権法」の理論的基礎は「二元論」である。これは、現行「著作権法」        6)ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス学者ブラッドレイ(Bradley)が指摘するように、 1920 年スウェーデン婚姻法が定める夫婦法定財産制は、後得財産分配制(原文:遅延共 同制)である(「後得財産分配制」については訳注 27 を参照─訳者)。同法は、「著作権・ 産業事故賠償金等は、身分的属性を有する権利であり、分割の対象から排除される。」(D. Bradley,Marriage,Family,PropertyandInheritanceinSwedishLaw,39Internationaland ComparativeLawQuarterly370,1990,375.)。北欧のその他の国も同様である。Anders Agel,IsThereOneSystemofFamilyLawintheNordicCountries?3EuropeanJournalof LawReform313,2001(3):p325. 7)許莉「智力成果共有、還是智力成果収益共有──一方智力成果発生之夫妻共有対象探討」 『河北法学』2009 年第 12 期所収。

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第 10 条が次のように明確に規定しているからである。「著作権には、次に掲 げる身分権および財産権を含む」(1 項)「著作権者は、前項(五)号ない し(十七)号に定める権利の行使を他の者に許諾でき」(2 項)「著作権者は、 本条 1 項(五)号ないし(十七)号に定める権利の全部または一部を譲渡で きる」(3 項)。略言すれば、著作権は、著作財産権と著作人格権の機械的 結合体であって、有機的な統一体ではない。  特許財産権と特許人格権(「特許法」第 17 条 1 項〔原注 8〕)も分離可能である。 これは、「特許法」第 10 条 1 項が「特許権は、これを譲渡することができる (「特許権」は、現実には「特許財産権」である)」と規定しているためであり、 同法第 12 条が「いかなる団体または個人も、他の者の特許を実施する場合は、 特許権者と実施許諾契約を締結しなければならない」と規定しているため である。

 (三)「財産性知的所有権」そのものの「財産」帰属性

 1 財産の内容および射程距離  「財産性知的所有権」が法定夫妻財産制にいう「財産」に該当するかどう かを論証する前に、後者の内容と射程距離を明らかにする必要がある。その 内容(すなわち「本質的属性」)には二つある。  (1)財産の「権利の総和」性  ドイツの著名民法学者ラレンツ(Larenz)が指摘しているように、「財産」 とは「各種権利の総和をいう」〔原注 9〕。わが国の法定夫妻財産制が定める「財        8)学者のなかには、現行「特許法」第 17 条 1 項が規定する権利は、「身分的属性を有する ことは明らかであるものの、それは特許権の内容ではない。」と説く者がいる(呉漢東主 編『知識産権法』〔北京大学出版社、1998 年〕195 頁)。ただし、「相続法」第 3 条 6 号は、 特許権には特許人格権を含むことを暗示している。 9)カール・ラレンツ(KarlLarenz)(王暁曄訳)『徳国民法通論(上冊)』(法律出版社、2003 年) 410 頁

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産」も同様である。これは次の理由からである。①財産には債務を含まず権 利のみを指すこと。1993 年「財産分割意見」は、「夫妻共同財産」(第 2 条 ないし第 5 条)と「夫妻共同債務」および夫妻個人債務を明確に区別している。 現行「婚姻法」は、「夫妻共同所有財産」(第 17 条 1 項 お よ び 2 項)と 夫妻 共同債務(第 41 条)を明確に区別している。ここから明らかなように、「夫 妻共同債務」は「夫妻共同財産」に属さない。②財産は各種具体的権利を指 すにとどまらない。現行「婚姻法」第 17 条 1 項によれば、夫妻共同財産は、 「婚姻関係存続期間中に取得した」一切の権利から構成される。同法第 18 条 によれば、「夫妻の一方の財産」は、一切の権利から構成される。  (2)財産の「金銭的価値」性  ラレンツが指摘するように、「正常な関係のもとでは、金銭的価値をもって譲 渡可能または金銭への換価可能な」「権利は、財産に属する」〔原注 10〕。わが国の法 定夫妻財産制が定める「財産」も同様である。これは、「婚姻法」第 17 条 1 項 1 号ないし 4 号および第 18 条 1 号ないし 4 号が掲げる財産ならびに「婚姻法解釈 (二)」第 11 条が掲げる「その他共同所有に帰すべき財産」が金銭的価値を有す ることは、疑問の余地がないためである。「財産」の射程距離は比較的広範であ る。ラレンツが指摘するように、「無体財産権、物権および債権は、通常金銭的 価値を有する場合には」、いずれも「財産」に属する〔原注 11〕。米国では、有体物 を客体とする所有権および無体物を客体とする権利も、財産に属する〔原注 12〕(そ        10)同上 11)カール・ラレンツ・前掲論文(注 9)p410-411. 12)米国では、「ブラックストン(Blackstone)理論から変化してきた伝統的な財産概念は、 物理的に存在し、絶対的に制御・管理可能なものでありさえすれば、財産に属すると説 く」。「産業革命」以降、「裁判所は、営業権・営業秘密・採掘権等の実体のない無形の ものも、財産概念に組み入れ、法の保護を受けなければならないと説き始めた」。Carole S.GailorandMeredithJ.McGill,TheEquitableDistributionofProfessionalDegreesupon DivorceinNorthCarolina,10CampbellLawReview69,1987,p75-76.

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の中には著作権を含む〔原注 13〕)。わが国の法定夫妻財産制が定める「財産」も、 基本的には同様である。夫妻共同財産には、所有権のみならず債権も含む(「婚 姻法解釈(二)」第 11 条 3 号は、「婚姻関係存続期間中」に「男女双方」が「取 得すべき養老年金(原文:養老保険金)および破産配当金(原文:破産安置補 助費)」は夫妻共同財産に属すると規定する)。しかも、「都市・郊外街区国有 土地使用権設定・譲渡暫定条例」〔原文:城鎮国有土地使用権出譲和転譲暫行 条例〕〔訳注 11〕第 3 条は、「個人」は「土地使用権を取得する」と規定している。 よって、夫妻共同財産には、「建設用地使用権」〔訳注 12〕を含み得る。また、「物 権法」〔訳注 13〕第 128 条は、「土地請負経営権」はこれを「譲渡」することができ ると規定する。よって、夫妻共同財産には、「土地請負経営権」〔訳注 14〕を含み得る。 地役権は、上記の二つの用益物権に付属し得る。よって、夫妻共同財産には、「地 役権」を含み得る。  2 財産性知的所有権の「財産」性  財産性知的所有権は「財産」に属する。その理由は次のとおりである。  (1)財産性知的所有権の権利性  これは証明を要することなく自明なことである。  (2)財産性知的所有権の金銭的価値性  現行「著作権法」第 10 条 2 項は、「著作権者は、前項(五)号ないし(十七) 号に規定する権利の行使を他の者に許諾し、かつ、約定または本法の関連規 定に従い、報酬を得ることができる。」と規定する。同法第 10 条 3 項は、「著 作権者は、本条第 1 項(五)号ないし(十七)号に規定する権利の全部また は一部を譲渡することができ、かつ、約定または本法の関連規定に従い、報        13)米国カリフォルニア州弁護士ニムマー(Nimmer)は 1988 年、「著作権は無体の権利であ る」と指摘している。DavidNimmer,CopyrightOwnershipbytheMaritalCommunity: EvaluatingWorth,36UCLALawReview383,December1988,p391.

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酬を得ることができる。」と規定する。現行「特許法」第 12 条は、「いかな る団体または個人も、他の者の特許を実施する場合には、特許権者と実施許 諾契約を締結し、特許権者に特許使用料を支払わなければならない」と規 定する。特許権者は、特許権を譲渡する場合には、当然に報酬を得ることが できる。現行「商標法」第 39 条 1 項は、「登録商標を譲渡する場合、譲渡人 と譲受人は、譲渡契約を締結し、かつ、商標局に対し、共同で出願をしなけ ればならない」と規定する。同法第 40 条 2 項は、「商標登録者は、商標使 用許諾契約の締結を通じて、自己の登録商標の使用を他の者に許諾すること ができる」と規定する。双方当事者は、当然に報酬を約定することができ る(「物権法」第 227 条 2 項を参照)。しかも、「物権法」第 223 条 5 号は次 のように規定する。「債務者または第三者が処分権を有する次に掲げる権利 は、これを質入れすることができる。(五)譲渡可能な登録商標専用権・ 特許権・著作権等の知的所有権中の財産権」。  「財産性知的所有権」そのものは財産に属するものの、夫妻の一方が婚姻 後に取得した当該知的所有権は、「賃金・賞与」または「生産・経営から生 ずる収益」(正確にいえば上記の物品の「所有権」)と同様、夫妻の共同所有 に帰すると確定されるのである。

 (四)特定の「人格権」の他の者への使用許諾または譲渡可能性

 「民法通則」〔訳注 15〕第 99 条 1 項の規定によれば、公民〔訳注 16〕は、「営業目的」 (例えば「他の者の製品を広告するため」)に基づき、自己の「氏名」の使用 を他の者に許諾することができる。同条 2 項は次のように規定する。「企業 法人、個人工商業者および個人によるパートナーシップは、名称権を有する。 企業法人、個人工商業者および個人によるパートナーシップは、法の定め るところに従い、自己の名称を譲渡する権利を有する」。同法第 100 条の規 定によれば、公民は、「営利を目的として」自己の「肖像」の使用を他の者 に許諾することができる」。現行「パートナーシップ企業法」〔原文:合夥企

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業法〕〔訳注 17〕第 16 条 1 項は、パートナーは、「労務をもって出資することも できる。」と規定する。ここでいう「労務」の具体例には、名誉権および栄 誉権を含み得る。  特定の身分権は使用許諾または譲渡の対象となり得るものの、著作権およ び特許権に「身分権」を含み得ることは、それが夫妻の一方に享有されなけ ればならない理由とはならないのである。

三 取得源:夫妻双方の労働の凝縮

 「最高人民法院民事裁判第一法廷」は次のように指摘する。「作者の自筆原 稿・書画・デザイン」等は、「夫妻の一方の精神的財産に属する」〔原注 14〕。例 えば、「一枚の絵」は、「創作者がアイデア構想を練って配置し、筆・硯およ び絵具を用い、線、色彩、図形および筆画のかたちで、運用技法が紙・絹・ 布等の有形物の媒体上に現れることにより、作者の創作意図が反映される のである」〔原注 15〕。ここから明らかなように、いわゆる「精神的財産」とは、 取得配偶者の創造的労働(すなわち「頭脳労働」〔原注 16〕)が凝縮されまたは 体現された事物をいうのである。  夫妻の一方による自己創作は、農業生産への従事と非常によく似ている。 それは主として次の諸点に示される。①いずれも性質上事実行為に属する。 ②いずれも結果的に権利の発生をもたらす。③代替可能性の点で、消費され        14)最高人民法院民事審判第一廷編著・前掲書(注 1)123 頁 15)同上書 124 頁 16)中国共産党黒竜江省委員会党校副教授張青松は、「肉体労働による生産とは、主として 物的生産(例えば工業・農業による食糧・反物・機器の生産)をいうのに対し、頭脳労 働による生産とは、精神的生産(主として科学文化の生産)をいう。」と指摘する(張 青松「脳力労働及其価値的哲学定位」『理論探討』2001 年第 4 期所収)。

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た労働はいずれも、他の雇用労働(職務創作および職務発明を含む)に従事 することにより、「賃金・賞与」(現行「婚姻法」第 17 条 1 項 1 号によれば それらは「夫妻の共同所有に帰する」)を得ることができる。④価値の点に おいて労働製品はいずれも交換価値を有する。⑤組織形態の点においていず れも個人を単位とする。よって、いずれの労働により取得された財産も、同 等の取扱いを受けなければならない。しかし、非職務作品には作者の頭脳労 働が凝縮されているという理由のみにより、著作財産権は、夫妻共同財産か ら排除されているのである。  「知的所有権」には取得配偶者の頭脳労働が凝結されていることは、夫妻 の一方が婚姻後に取得した財産性知的所有権が当該配偶者の単独所有に帰す るもう一つの理由を構成する〔原注 17〕。しかし、この理由も成立しない。

 (一)「頭脳労働」と「肉体労働」との間の本質的区別の欠如

 労働は、主として、頭脳労働と肉体労働に分かれるが、両者の間に本質的 区別は存在しない。それは主として次の諸点に示される。  (1)構成上の交錯性  「いずれの労働も、総じていえば、体力と知能が異なる程度に同時に放出 される。差異は、体力の放出が多いかそれとも知能の放出が多いかだけであ る」〔原注 18〕  (2)結果面での同一性        17)米国でも類似の立場がある。学者のなかには次のように指摘する者がいる。「知的所有 権は、表示された思想に対し享有される一連の権利である。それは、頭脳労働に源を 発する財産である。大半の他の財産は完全に分割可能であるにもかかわらず、知的所 有権は独特の財産であり、区別して取り扱われなければならない」。KristenB.Prout, IntellectualPropertyDistributionindivorceSettlements,18WuinnipiacProbateLaw Journal160,2004,p168-169. 18)張青松・前掲論文(注 16)参照。

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 頭脳労働の結果は、同一(例えば発明創造は同一である)または類似して いるものもあれば、差異が大きいものもある。肉体労働による製品は、同一 または類似しているものもあれば、差異が大きいものもある(例えば、個人 工商業者が生産する手工芸品または特定の農家が生産する果物は、多くの物 と異なる。現実には、いずれも、製品面で、「他の者が持たないものを自己 が保有し、他の者が有するものに自己が精通し」なければ、「必勝の優勢」 に立つことはできない)。  (3)交換法則面での同一性  有形物製品が体現しているのは肉体労働である。無形の精神的製品(例え ば科学研究の成果および作品)(当然ながらそれらには媒体がある)が体現 しているのは頭脳労働である。これらはいずれも、市場に入った時に、価値 規律に基づき、交換が行われる〔原注 19〕  (4)必須の点での同一性  現在、わが国の生産力の発展水準はまちまちであり、農業経済、工業経済 および情報経済が併存している。前二者の領域では、肉体労働が主導的地位 を占め、後者の領域では、頭脳労働が主導的地位を占める。経済・社会の存 続および発展についていえば、いずれの労働も不可欠なものである〔原注 20〕  (5)購買可能性面での同一性  肉体労働にせよ頭脳労働にせよ、いずれも労働契約を通じて市場から購買 し得るものである。労働による製品(例えば職務発明)はいずれも雇用主に 帰する。  (6)承認面での同一性  党の第十六期共産党大会〔訳注 18〕の報告は、「肉体労働・頭脳労働を問わず、 いずれも承認され尊重されなければならない。」と指摘する。総括すれば、        19)李順榮「生産力発展与労働価値論」『思想理論教育導刊』2001 年第 11 期所収参照。 20)宗寒「不要忽視体力労働」『高校理論戦線』2003 年第 4 期所収参照。

(16)

頭脳労働のベールをはがさなければならない。  現在のところ、現行「著作権法」第 11 条 3 項の規定によれば、職務作品 の著作権は雇用主に帰属する。現行「特許法」第 6 条 1 項の規定によれば、 職務発明創造による特許権は団体に帰属する。ここから明らかなように、労 働の属性と労働成果の帰属との間に必然的な関係は存在しないのである。そ うだとすれば、特定の成果が夫妻の一方の頭脳労働の結果であることを理由 に、当該配偶者の所有に帰すると確定することはできない。

 (二)知的所有権が凝縮された頭脳労働の必然的同一性の欠如

 「著作権法実施条例」〔原文:同〕〔訳注 19〕第 2 条 は、「著作権法 に い う 作品 とは、文学、芸術および科学領域における独創性を備えかつ特定の有形の形 態で複製可能な知的成果をいう。」と規定する。現行「特許法」第 22 条 1 項は、 「特許権を付与する発明および実用新案は、新規性、創造性および実用性を 備えなければならない。」と規定する。同法第 23 条 2 項は、「特許権を付与 する意匠は、既存の意匠または既存の意匠の特徴の結合体に比して、明白な 区別がなされなければならない。」と規定する。現行「商標法」第 9 条 1 項は、 「登録を出願する商標は、顕著な特徴を備え、容易に識別され、かつ、他の 者が先に取得した合法的権利に抵触してはならない。」と規定する。上記の 規定に基づけば、次の結論が導き出される。創造性の必要に関しては、発明 特許権および実用新案特許権を取得するための要件が最も厳格であり、意匠 特許権を取得するための要件がこれに次ぎ、商標権を取得するための要件が これに続き、著作権を取得するための要件が最も緩やかである〔原注 21〕        21)米国テキサス工科大学法学教授コクラン(Cochran)は、「著作権の保護を受けるために 必要とされる創造性はわずかであるのに対し、特許権を取得するためには重要な新規性、 実用性および非明白性が必要とされる。」と指摘する。J.WesleyCochran,ItTakesTwo toTango!:ProblemswithCommunityPropertyOwnershipofCopyrightsandPatentsin Texas,58BaylorLawReview407,Spring,2006,p431.

(17)

 さらに指摘しなければならないのは、「商標」は・受託者がこれをデザイ ンする場合には、商標専用権は、同権利者の頭脳労働が凝縮されたものでは ないということである。

 (三) 夫妻の一方が婚姻後に取得した財産性知的所有権の夫妻共同

の労働成果性

 最初に、夫婦所得共同制〔訳注 20〕の本質または根本的特徴について詳述す る。米国連邦最高裁判事ステュワート(Stewart)は 1979 年、次のように 指摘している〔原注 22〕。「夫婦共同財産制の基本的原理は、夫妻が婚姻の平等 なパートナーである点にある」。「夫妻のいずれの一方も、婚姻企業(marital enterprise)に対し、同等の貢献をなすものと認められる。よって、夫妻 のいずれの一方も、平等に婚姻企業の財産を享有するのである」。「一般的 に言えば、夫妻のいずれか一方が労働により取得した財産は、『他方配偶者 が直接に貢献したか、所有権がいずれに帰属するかにかかわらず』、夫妻に 別段の約定がない限り、夫妻共同財産に帰属する。夫妻双方が婚姻中にど のような役割分担をしたかまたは夫妻の一方が形式上財産を『取得』した かどうかにかかわらず、夫妻双方がいずれも財産に対し同等の貢献をなし たと認められるのである」。さらに指摘しなければならないのは、夫妻の 一方が取得した財産には、頭脳労働に基づき取得した財産も含むというこ とである。米国連邦第十巡回裁判所判事フィリップ(Philips)は 1939 年、 次のように指摘している〔原注 23〕。「夫婦共同財産制の根本的仮定は、婚姻関 係存続期間中に、いずれか一方の骨の折れる労働(toil)、才能(talent)、 その他有益な能力(productivefaculty)に基づき取得したいかなる財産も、        22)Hisquierdov.Hisquierdo,439U.S.572,SupremeCourtofUnitedStates,January22,1979. 23)Hammondv.Commissioner,106F.2d420,UnitedStatesCourtofAppealsfortheTenth Circuit,August30,1939.

(18)

共同財産に当たるということである」。英国法律委員会は 1971 年、次のよ うに指摘している〔原注 24〕。「別産制は次の事実を考慮していない。すなわち、 婚姻はパートナーシップの一形態であり、夫妻双方がそれぞれ異なる方法 で婚姻に貢献をなし、各配偶者の貢献は家庭の幸福および社会にとって同 等に重要なものであるという点である」。カナダ法律委員会は 1975 年、次 のように指摘している〔原注 25〕。「夫婦共同財産制という概念は、次の仮定の うえに成り立つものである。すなわち、婚姻は、他の特徴を備えるほか、 経済的パートナーとしての特徴をも有するものである。夫妻共同体は、各 配偶者それぞれの才能(talents)および努力を保有する。それらに基づき 取得した事物はいずれも、共同体の財産として、夫妻双方の共同所有、す なわち夫妻双方に帰属するのである」。スコットランド法律改革委員会も 1984 年、次のように指摘している〔原注 26〕。「大半の『所得共同制』によれば、 共同財産となる唯一の財産は、夫妻双方が婚姻関係存続期間中に取得した 財産である(ただし贈与または相続による場合はこの限りではない)。婚姻 関係が死亡または離婚により終了した場合は、夫妻共同財産は均等に分割 されるのが通例であり、夫妻双方は少なくとも特定の債務につき連帯して 責任を負う。当該制度の長所は、婚姻関係が平等なパートナーシップであ るという思想を表している点にあり、短所は、複雑で融通の利かない点に ある」。総括すれば、夫婦所得共同制の本質は、名義上夫妻の一方が婚姻関 係存続期間中に頭脳労働または肉体労働を通じて取得した財産が夫妻双方 に帰属する点にある(後得財産分配制も、この価値判断のもとに成り立つ        24)DAMEBRENDAHALE.Thefamily,lawandsociety:casesandmaterials.London: Butterworths,2002.p149. 25)同上論文 p155. 26)SCOTTISHLAWCOMMISSION.Familylawmatrimonialproperty.1984.http://www. scotlawcom.gov.uk/download_file/view/341.[2013-4-14download]p6.

(19)

ものである〔原注 27〕)。  それでは、当該財産を夫妻が共同で取得するのはいかなる理由によるの か? 英国学者シモン(Simon)は次のように指摘する〔原注 28〕。「夫は、夫 妻間の役割分担に基づく貢献がなければ、収入を得、財産を蓄えることは できない。妻は、全青年期および中年初期に、子女の養育および家事に労 力を費やす。夫は、これにより経済活動に従事できることを理解している。 もし、妻が自らの役割を果たさなければ、夫は自己の役割を果たすことが できない。オス鳥が自己の利益に専念できるゆえんは、まさしく自己が大 量の時間を雛鳥の保護(sitonbirds)に費やさないですむからである」。米 国ノバ・サウスイースタン大学法学准教授クンダワラ(Kundawala)は次 のように指摘する〔原注 29〕。「夫婦共同財産制の存在目的は、経済的手段によ り、家庭の主婦である配偶者がなす貢献を承認し、同人を仕事に従事する 配偶者と平等の地位に置く点にある。夫婦共同財産制の理論的基礎は、婚 姻共同体が夫妻間のパートナーシップである点にある。パートナーシップ において、夫妻は蓄えた財産を平等に享有しなければならないが、これは 夫妻双方が一方配偶者の取得した財産を利用できることを可能ならしめる ようにするためである」。総括すれば、一方配偶者の家事労働がなければ、 他方配偶者の社会的労働も困難になりひいては成り立たなくなってしまう のである。  新中国〔訳注 21〕も、名義上一方配偶者の労働により取得した財産を現実に        27)JACQUELINEHEATON.Strivingforsubstantivegenderequalityinfamilylaw: selectedissues.SouthAfricanJournalonHumanRights,2005,21(4):p547-574. 28)DAMEBRENDAHALE・前掲論文(注 24)p148. 29)ISHAQKUNDAWALA.Rodriguev.Rodrigue:thefifthcircuitalignswithworth-acceptingcopyrightascommunityproperty.TulaneJournalofTechnology&Intellectual Property,2001,3(1):p165-172.

(20)

は夫妻双方の共同取得とするという価値判断を承認している。1950 年「婚 姻法」第 10 条の規定によれば、「夫妻の労働により取得した財産」は夫妻 共同所有に帰する。ここでいう「労働」には「家事労働」を含む。「中華 人民共和国婚姻法起草過程及び起草理由に関する報告」〔原文:関于中華 人民共和国婚姻法起草経過和起草理由的報告〕(1950 年 4 月 14 日)が 明 確に指摘しているように、「妻による家事および子女の養育労働は、夫に よる生活資料取得労働と同等の価値を有する労働であるとみなさなければ ならない。よって、夫の労働により取得した財産は、夫妻共同の労働によ り取得した財産であるとみなさなければならない」〔原注 30〕。しかも、頭脳 労働は、「生活資料取得労働」から排除されない。よって、夫妻の一方が 婚姻後に取得した財産性知的所有権は、夫妻共同の労働により取得された ものである。  さらに指摘しなければならないのは、「共稼ぎ夫婦」は専業主婦と同等に取 り扱わなければならないという点である。これは、「共稼ぎ夫婦」においては、 農村〔原注 31〕か都市・郊外街区〔原注 32〕かにかかわらず、また、過去か現在かを 問わず、妻は生活資料労働に従事するばかりでなく、家事労働の全部またはそ の主要部分を担っているのが通常であり、その総労働は専業主婦に劣ることが ないからである。さらに言えば、夫のなかには妻の労働所得に生存を依存して        30)劉素萍主編『婚姻法学参考資料』(中国人民大学出版社、1989 年)64 頁 31)「調査結果から明らかなように、農村においては、女性は、自発的に過度の家事労働を 負担していることが多い。」(張学東=江紅芳=張紅霞「社会性別視角下農村婦女的家庭 生活困境──以河北省為例」『石家庄学院学報』2012 年第 1 期所収)。 32)都市・郊外街区においては、女性が収入獲得能力・地位面で男性より弱い立場に置か れていることが多いため」、「たとえ妻の収入獲得能力が夫よりも高くても、女性は依 然として、家庭内では、夫よりもいっそう多くの家事労働を負担させられている。」(付 光偉「城鎮正規就業女性家務労働与工作収入関係研究」『山東女子学院学報』2012 年第 2 期所収)。

(21)

いる者もいるからである〔原注 33〕

四 適切な救済:財産性知的所有権の準共有

 「最高人民法院民事裁判第一法廷」は次のように指摘する〔原注 34〕。「知的所 有権により取得した経済的利益は夫妻共同財産に帰属する。なぜなら、当該 知的所有権の取得は、婚姻関係存続期間中の夫妻の一方の援助および助力と 切り離せないからである」。知的所有権が経済的利益をもたらしていないま ま離婚した場合には、「当該配偶者が共同生活において提供した労働につき、 他の財産から適切な補償を行い、これを考慮することが可能である」。ここ から明らかなように、一方では、夫妻の一方(主として男性)が婚姻後に「取 得」した財産性知的所有権が夫妻双方の労働を凝縮していることを承認し(こ の問題については、同法廷の立場は、「中央政府法制委員会」のそれと異な るところがない)、他方では、非取得配偶者の労働は、「知的所有権から生じ た収益」(その実質は、取得配偶者が収益の 50%を非取得配偶者の労働の補 償に当てる)の共有を通じ、または、おそらくは他の共同財産方式によるこ とを通じて、すでに救済を得られているのである。略言すれば、たとえ夫妻 双方の共同所有に帰さずとも、公平を実現しているのである。ここでいう「知 的所有権から生ずる収益」および「夫妻共同所有」が実質上救済に当たると いうのは、次の理由からである。        33)米国学者 ア マ ン ダ・ト レ フェセ ン(AmandaTrefethen)は 次 の よ う に 指摘 す る。 「人々は、次のような情景を容易に想起することができる。すなわち、非作者配偶者 (nonauthorspouse)はやりくりして一家の生活を支える者である。その収入と努力(effort) により、生活のやりくりの職責を負わないですむ作者配偶者は、創作の機会と自由を得 ることができるのである」。AmandaTrefethen,MaritalProperty:Review:Copyrightas CommunityProperty,11JournalofContemporaryLegalIssues256,2000,260. 34)最高人民法院民事審判第一庭編著・前掲書(注 1)124 頁

(22)

 (1)当該知的所有権の夫妻共同財産への帰属の否定  まず、その基準について詳述する。最高人民法院「『中華人民共和国婚姻法』 の適用に係る若干の問題に関する解釈(三)」(2011 年 7 月 4 日公布)〔訳注 22〕 第 5 条は、「夫妻の一方の個人財産につき婚姻後に発生した収益は、利息お よび自然的価値上昇分を除き、これを夫妻の共同財産と認定しなければなら ない。」と規定する。最高人民法院が認めるところによれば、「利息」には「天 然利息」(「物の自然的性質により発生する収益物」)と法定利息を含む。「自 然的価値上昇」とは、「インフレまたは市況の変化により生じた価値の上昇」 をいう〔原注 35〕。「自然的価値上昇」は夫妻の個人財産に帰属するものの、原 価部分(例えば、販売原価が 5000 人民元の物品を 9000 人民元の代金で取得 した場合は、5000 人民元が「原価部分」であり、4000 人民元が「自然的価 値上昇」部分となる)は個人財産に帰属する。また、「契約法」〔訳注 23〕第 130 条は、「売買契約とは、売主が目的物の所有権を買主に移転し、買主が代金 を支払う契約をいう。」と規定しており、代金は当然に売主の所有に帰する。 次に、「知的所有権から生じた収益」の属性について詳述する。使用許諾に よりもたらされた収益は、準「法定利息」に該当する。「物権法」第 39 条が 規定する「収益」権には、「法定利息」を徴収する権利を含む。「法定利息」 とは、「例えば、家屋の賃料および金銭消費貸借の利息をいう」〔原注 36〕。その実 質は、所有権者が「使用権」を他の者に譲渡して取得する対価である〔原注 37〕 知的所有権者が財産性知的所有権を他の者に使用許諾して取得する「収益」は、        35)奚暁明『最高人民法院婚姻法司法解釈(三)理解与適用』(人民法院出版社、2011 年) 96-97 頁 36)王澤鑑『民法物権(一):通則・所有権』(中国政法大学出版社、2001 年)154 頁 37)王利明先生は、「経営規模が拡大する条件のもと」、「所有者は、自己が直接財産を占有・ 使用する必要はなく、また不可能でもあり、自己の意思に基づき、具体的な占有・使用 権を他の者に譲渡することができる。」と指摘する(王利明『物権法論』〔中国政法大学 出版社、2003 年〕264 頁)。現実には、賃料および利息も、使用権譲渡の対価である。

(23)

「法定利息」と非常によく似ている。それは主として次の諸点に示される。 ①権利者は使用しない。②他の者が使用する。③他の者の使用は権利者の意 思に基づく。④他の者の使用は代金支払事由である。また、知的所有権者が 財産性知的所有権を譲渡することにより取得する収益は、代金ととてもよく 似ている。それは主として次の諸点に示される。①譲渡人は権利を喪失する。 ②譲受人が権利の取得を継承する。③譲受人の権利取得と代金支払いとの間 に因果関係が存在する。よって、前者はこれを準「代金」とよぶことができ よう。ここから明らかなように、当該知的所有権は、これを「夫妻の共同所 有に帰せしめる」べきではない。  (2)婚姻関係存続期間中の「夫妻共同所有への帰属」と離婚後の補償は対 応するものである。  (3)知的所有権の収益が夫妻の共同所有に帰することと他方配偶者による 「援助および助力」との間に因果関係が存在する。  そこで、これに応じて、妻の家事労働は、夫に協力して知的財産所有権を 取得させるケースと夫に協力して他の権利を取得させるケースの二つに分か れる。後者は、名義上夫が取得した財産を夫妻共同所有に帰せしめるための 根拠となり得る。前者は、法定救済を得るための根拠となり得るにすぎない (原理的には、「婚姻法」第 40 条と米国の特定の州における妻による夫の学 位取得への助力後の離婚事件の処理は、完全に同一である〔原注 38〕)。  妻の家事労働は補償済みまたは将来補償されるというのは、「知的所有権」        38)米国では、「大半の裁判所は、向上した収益力(enhancedearningcapacity)および学 位(educationaldegrees)を婚姻財産から除外する」。AliciaBrokarsKelly,TheMarital PartnershipPretenseandCareerAssets:TheAscendancyofSelfOvertheMarital Community,81BostonUniversityLawReview59,Februray,2001,p79.た だ し、米国 ミ ソ ネ タ 州控訴裁判所 は 1983 年、法学学位 を 婚姻財産 と 認定 し た。Woodworthv. Woodworth,337N.W.2d332(Mich.Ct.App.1983).ニューヨーク 控訴裁判所 は 1985 年、 学位は均等に分割すべき婚姻財産であると認定した。O’Brienv.O’Brien,N.E.2d712(N.

(24)

を取得「配偶者の専有」に帰せしめる第三の理由である。しかし、この理由 も成立しない。

 (一)専業主婦の家事労働の夫取得財産の夫妻共同取得への根拠該

当性

 「中央人民政府法制委員会」は次のように明確に指摘している〔原注 39〕。「夫          Y.1985)。「米国の著名マンパワー理論家アレン・パークマン(AllenParkman)」は、「通 常の場合、夫妻の一方のマンパワーがなす投資は、『非本質的』(non-essential)なもの であるため、性質上は負債金融(debtfinancing)(すなわち介入資金)であって、エク イティ・ファイナンス(equityfinancing)(投資者自身またはこれと密接な関係を有す るパートナーの資源である)ではない。エクイティ分割請求権:『企業が取得した利益(も しあれば)の一部を投資者に提供する』、債権請求権:『貸主に提供するのは弁済であり、 借入金を使用する企業が利益を上げているかどうかは不問である』」。「ブラックマンは 次のように説く。援助配偶者(supportingspouse)が享有するのは債権請求権なのかそ れともエクイティ分割請求権なのかを判断する鍵となるのは、他の融資ルートを有して いるかどうかである。換言すれば、投資は本質的なものであり(配偶者の援助がなけれ ば投資もありえない)、さもなければ、配偶者は他のルート(または借入機関)から資 源を取得できるため、『たとえ配偶者の援助がなくても、教育を受けることはできる』。 ブラックマンの結論は、他の資金出所、例えば教育ローンは存続するため、援助配偶者 の貢献は『非本質的』なものであるというものである」。AliciaBrokarsKelly・上掲論文 p102-103.    米国の州のなかには、救済を提供しようとするものがある。救済措置は次のとおりで ある。①「婚姻財産」法。「裁判所は、援助配偶者の労働および犠牲を他の婚姻財産分 割の判断要素とする」。②「伝統的な離婚後扶養費」法(Traditionalalimony)。「裁判所 は、援助配偶者の労働および犠牲を離婚清算後の扶養費の判断要素とする」。③「回復 性離婚後扶養費」法(rehabilitativealimony)。「援助配偶者 は、他方配偶者 が 資金援助 する再教育訓練の一部受入れを通じて、自立の機会を得る」。④「直接の財産的貢献補 償(reimbursement)」法。すなわち、「学費、書籍代金その他の費用」を補償する。⑤ 「コスト」「補償」法。「学費、書籍代金その他の費用」の返還のほか、「生活費」を返還 する。⑥「機会コスト」(opportunitycost)「補償」法。裁判所は、補償金の額の確定に 当たり、経済的貢献のみならず、可能な範囲内で社会的貢献(socialcontribution)を考 慮する。AliciaBrokarsKelly・上掲論文 p105-106. 39)劉素萍主編・前掲書(注 30)64 ~ 65 頁

(25)

妻は当該家庭財産につき『平等な所有権』を有する」。「すなわち、形式的 か実質的かを問わず」、「夫妻の婚姻後の共同生活において取得した財産」 (「夫妻の労働により取得した財産」、「夫妻の双方または一方が当該期間中 に法の定めるところに従い取得した財産」および「夫妻の双方または一方 が当該期間中に法の定めるところに従い取得した贈与財産」の三つを含む) は、「夫妻間では、これを真正に平等に共同所有することができる」。換言 すれば、「夫の労働所得」はこれを「夫妻共同の労働所得とみなさなければ ならない」ことを法律事実として生ずる法律効果は、夫妻共同所有名義の ものは夫が取得した財産であるということである。1980 年「婚姻法」〔原注 40〕 および現行「婚姻法」は、上記の立場を変更していない〔原注 41〕。よって、夫 が婚姻後に「取得」した財産性知的所有権は、夫妻の共同所有に帰すべき である。

 (二)婚姻関係存続期間中の妻に対する補償の不適切性

 婚姻関係存続期間中に「知的所有権から生じた収益」を「夫妻の共同所有 に帰せしめる」ことにより非取得配偶者の労働を補償することには、次に掲 げる問題点が存在する。  (1)取得配偶者の知的所有権から収益が生じていない場合には(これはしば        40)全国人民代表大会常務委員会法制委員会副主任武新宇 が 行った「『中華人民共和国婚姻 法(改正草案)』に関する説明」〔原文:関于〈中華人民共和国婚姻法(修改草案)〉的説明〕 (1980 年 9 月 2 日第五期全国人民代表大会第三回会議の席上)は、この問題に触れてい ない。当該説明は、劉素萍主編・前掲書(注 30)8 ~ 11 頁に掲載されている。 41)全国人民代表大会法律委員会が第九期人民代表大会常務委員会第 18 回、第 19 回および 第 21 回会議の席上、全国人民代表大会常務委員会に対し行った報告も、この問題には 触れていない。当該報告は、王勝明=孫礼海『《中華人民共和国婚姻法》修改立法資料選』 (法律出版社、2001 年)4 ~ 21 頁に掲載されている。

(26)

しばみられるところである〔原注 42〕)、非取得配偶者の労働は補償されない。  (2)取得配偶者の知的所有権から収益が生じているものの非取得配偶者の 労働(すなわちその市場価値〔原注 43〕。現実には、当該配偶者はなお間 接損失、すなわち、仮に他の労働に従事したとすればより多くの収入 を得られた可能性がある場合における、当該収入が労働の市場価値を 超える部分の損失を被るおそれがある)の補償に満たない場合には、 非取得配偶者の労働は十分に補償されない。  (3)取得配偶者の知的所有権から生じた「収益」が非取得配偶者の労働の 市場価値(ひいては間接損失との和)を超えた場合には、非取得配偶 者の労働は過大な補償を得ることになる。

 (三)離婚時の妻に対する補償の不適切性

 知的所有権から収益が生ずる前に離婚した場合に、夫妻共同財産をもって (1993 年「財産分割意見」第 15 条は次のように規定する。「離婚時にいまだ 経済的利益が生じていない一方配偶者の知的所有権は、当該一方配偶者の所 有に帰する。夫妻共同財産を分割する場合は、具体的な状況に基づき、他方 配偶者に対し適当な配慮をすることができる。」)非取得配偶者の労働を補償 することには、次に掲げる問題が存在する。  (1)「夫妻の共同財産」が存在しない場合には、非取得配偶者の労働は補 償されない。        42)米国では、「推計によれば、取得した収入がコストを下回る特許は 97%を占める」。 AllanWoodworth,Comment:DivorcingIdeas,43McGeorgeLawReview487,2012,509. 中国の状況もこれに類似する。例えば、かなりの割合の学術専門著作者は、出版協力金 を納付することを余儀なくされている。 43)「経済発展が遅れて」いる「ハルピン」では、住込み保母の月給は「2010 年」に「1300 ~ 1500 人民元」であり、しかも「雇用主の家庭での衣食住等の日常の生活費は手当てが 支給されない」(許婕「『保母荒』的女性主義経済学分析」『学術交流』2011 年第 7 期所収)。

(27)

 (2)「夫妻の共同財産」が非取得配偶者の労働の補償に満たない場合には、 当該配偶者の労働は十分に補償されない。

五 社会的効果:全般的視点に基づく優位性

 立法は利益衡量の産物である。良法は積極的な社会的効果を生起し、悪法 は消極的な社会的効果を生ぜしめる。それでは、夫妻の一方が婚姻後に取得 した財産性知的所有権を夫妻の共有に帰せしめることにより生ずる社会的効 果がよいか、それとも取得配偶者の単独所有に帰せしめ、非取得配偶者には 一定の補償を受けさせることにより生ずる社会的効果が好ましいか? 答え は、全般的に考察すれば、前者のほうがいっそう好ましい。

 (一)夫妻の一方の積極性への不損害

 現行「著作権法」の立法目的には、「社会主義精神文明および物質文明に 有益な作品の創作の奨励」(第 1 条)を含む。現行「特許法」の立法目的には、 「発明創作の奨励」(第 1 条)を含む。現行「商標法」の立法目的には、「商 標専用権の保護」(第 1 条)を含む。「商標登録者」につき、現実に使用しな い者が登録商標専用権を享有することにかんがみれば、当該目的には自然人 による商標登録の出願を「奨励」する意味を含むことは、疑問の余地がない。  当該知的所有権を夫妻の共同所有に帰せしめることは、取得配偶者の積極 性に損害を及ぼすものではない〔原注 44〕。その理由は次に掲げるとおりである。        44)わが国においては、「知的所有権は当事者が艱難辛苦の労働を費やさなければ取得でき ないものであり、知的所有権から生ずる収益を夫妻共同財産として取り扱うならば、発 明創造に従事する当事者の積極性に影響を及ぼし、科学技術の進歩に不利となると説く 者がいる」(最高人民法院民事審判第一庭編著・前掲論文〔注 1〕123 頁)。米国でも同 様の懸念が存在する。CarlaM.Roberts,WorthyofRejection:CopyrightasCommunity Property,100YaleLawJournal1053,January1991,1062.

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 (1)経済的利益に関する夫妻の一方と他方配偶者との高度の一致性  夫妻は、永久に共同生活を行うことを目的として結合するものである。夫 妻間には相互扶助義務がある(現行「婚姻法」第 20 条 1 項)。夫妻は、共同 で子女を扶養教育する任務を担う(現行「婚姻法」第 21 条 1 項)。夫妻双方 はいずれも、他方配偶者による高齢者の扶養に協力する職責を担う(2012 年改正「高齢者権利利益保障法」〔原文:老年人権益保障法〕〔訳注 24〕第 14 条 3 項)。総括すれば、夫妻は苦楽を共にする。よって、自己のための財産の 創造と双方のための財産の創造との間に、根本的な差異は存しないのである。  (2)夫妻の一方が取得した財産性知的所有権の源泉としての非経済的動機 の可能性  米国パートナー弁護士王(Wang)は次のように指摘する〔原注 45〕。「創造性 の追求(driveforcreativity)が特定の人格面において支配的地位を占める という事実は、経済的リターンまたは賞賛を受けることがなくても創作を継 続する特定の芸術家によりすでに実証されている。画家ゴッホがその一例で ある」。また、「社会的動機(socialincentive)が特定の人格面において支配 的地位を占めるという事実も、学術的地位を勝ち取るためおよび学兄から認 められることを目的に、夜半まで研究に従事し奥の深い専門論文著作を執筆 する終身教授により、これを例証することができる。社会的動機は、通常は、 遠今に名を響かせることと単純化することができよう」。総括すれば、権利 の取得は、「自己満足」または「学兄の称賛」を源泉とする可能性がある。  (3)所有権の共有または債権の準共有の夫妻の一方の生産または仕事の積 極性への影響の欠如  「婚姻法」第 17 条 1 項 1 号および 2 号の規定によれば、夫妻の一方が取得 する「賃金・賞与」および「生産・経営から生じた収益」は、「夫妻の共同        45)PETERJWONG.Assertingthespouse’scommunitypropertyrightsinCopyright.Idaho LawReview,1995,31(1):1087-1101.

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所有に帰する」。「婚姻法解釈(二)」第 11 条 3 号の規定によれば、「男女双方」 が「取得すべき養老年金または破産配当金」に係る債権は、夫妻の共同所有 に帰する。夫妻の一方(とくに専業主婦の夫および共稼ぎ夫妻中収入が比較 的多い一方配偶者)の積極性がこれにより消極的な影響を受けることを明ら かにする証拠は存しない。そうだとすれば、夫妻の一方が取得した知的所有 権の積極性が消極的な影響を受けることはありえない〔原注 46〕  (4)米国の実証材料による証左の提供可能性  現代米国においては、十州が法定共同財産制を実施している〔原注 47〕。その 余の州は、夫婦別産制を実施している(ただし、「主に 1960 ~ 70 年代」、「コ モン・ロー」を実施する州は『均等配分制度』を創設した。すなわち、離婚 時に、権利の帰属の如何を問わず、『婚姻財産』は夫妻双方の共同努力の成果 と認められ、各当事者はいずれも請求権を有する」〔原注 48〕。ニューヨーク州最 高裁判事シモンズ(Simons)は 1985 年、次のように指摘している〔原注 49〕。「均 等な配分(Equitabledistribution)は、次に掲げる前提のうえに成り立つも のである。婚姻は、他の特徴を有するほか、経済的パートナーシップとして        46)米国学者アマンダ・トレフェセンは次のように指摘する。「仮に既婚の作者が自己の努力 の成果が夫妻の共有に帰することを意識することにより創造的な仕事が終了するという のが事実だとしたら、なぜすべての既婚者にそれが当てはまらないのか? 彼らはなぜ 仕事をやめないのか? 共同財産制を実施する各州において、着実励行、技芸および時 間を通じて取得した一切の収入および財産は、夫妻がこれを享有し、労働成果が夫妻 共有に帰せしめられることを理由として全配偶者(作者および非作者を含む)が生産を 終了する可能性は、あまり大きくない」。AmandaTrefethen・前掲論文(注 33)p259. 47)CAROLINEBERMEONEWCOMBE.Theoriginandcivillawfoundationofthe communitypropertysystem;whyCaliforniaadoptedit,andwhycommunityproperty principlesbenefitwomen.UniversityofMarylandLawJournalofRace,Religion,Gender andClass,2011,6(1):p1-37. 48)ALICIABROKARSKELLY・前掲論文(注 38)p59-125 参照。 49)NEWYORKSUPREMECOURT・前掲論文(注 38)p585.

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特徴を有し、夫妻双方は、配偶者、父母、雇用労働者または家庭の主婦の身 分で、これに対し貢献をなす」)。しかし、「夫妻の一方の創造性に関しては、 共同財産制を実施する州は、別産制を実施する州より少ない。逆に、すべて の州のうち、『最大数量の文学、芸術、映画、コンピュータ・ソフトウェア、 その他著作権を享有可能な作品』は、カリフォルニア州より生まれているの である」〔原注 50〕

 (二)取得配偶者による権利行使を妨害するおそれの欠如

 知的所有権者は、各種財産性知的所有権を自ら行使することができる。当 該知的所有権を夫妻の共同所有に帰せしめることは、取得配偶者による権利 行使を妨害することにはならない。これは、「物権法」第 96 条が次のように 明確に規定しているからである。「共有者は、約定に従い、共有に係る不動 産または動産を管理する。約定がない場合または約定が不明確な場合は、各 共有者はいずれも、管理に係る権利および義務を有する」。ここでいう「管理」 には、解釈上、「使用収益」を含む〔原注 51〕

 (三) 取得配偶者による他の者への使用許諾または譲渡を妨害する

おそれの欠如

 現行「著作権法」の立法目的には、「社会主義精神文明および物質文明に 有益な作品の奨励」および「普及」を含む(第 1 条)。現行「特許法」の立 法目的には、「発明創造の応用の推進」を含む(第 1 条)。現行「商標法」の 立法目的には、「商標専用権の保護」を含む(第 1 条)。「商標専用権」には「登 録商標の譲渡」(現行「商標法」第 39 条 1 項)および「自己の登録商標の他 の者への使用許諾」(同法第 40 条 1 項)を含むことにかんがみれば、その目        50)PETERJWONG・前掲論文(注 45)p1087-1101 参照。 51)王澤鑑・前掲書(注 36)347 頁

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的には自然人による登録商標専用権の他の者への使用許諾または譲渡の「奨 励」の意味を含むことは疑問の余地がない。  当該知的所有権を夫妻の共有に帰せしめることは、取得配偶者による他の 者への使用許諾または譲渡を妨害することにはならない。その理由は次のと おりである。  (1)処分権のない契約の有効性  最高人民法院「『中華人民共和国婚姻法』の適用に係る若干の問題に関す る 解釈(一)」(2001 年 12 月 24 日制定)(以下「婚姻法解釈(一)」〔訳注 25〕 略称する)第 17 条 2 号前段は次のように規定する。「婚姻法第 17 条の『夫 または妻は、夫妻共同所有財産につき、平等の処理権を有する。』という規 定は、次のように理解されなければならない。(二)夫または妻が日常生 活の必要によらずに夫妻共同財産を処理する重要な決定を行う場合、夫妻双 方は、平等な協議に基づき、合意を達成しなければならない」〔原注 52〕。「重要 な処理決定」には、解釈上、他の者への使用許諾または譲渡を含むことは疑 問の余地がない〔原注 53〕。よって、学者のなかには次のように懸念する者もい る〔原注 54〕。「仮に」、「知的所有権中の財産権」を「夫妻共有と定めるならば、 夫妻の一方が知的所有権の実施を希望する場合、他方配偶者の同意を得なけ        52)夫妻共有著作財産権が「共同創作」に基づかずに取得されることにかんがみれば、「著作 権法実施条例」第 9 条を適用すべきではない。夫妻共同特許財産権が「共同完成」発明 創造に基づかずに取得されるものであることにかんがみれば、現行「特許法」第 15 条を 適用すべきではない。夫妻共有登録商標専用権は「同一商標の登録共同出願」に基づき 取得されるものではないため、上記の規定を類推適用すべきではない。 53)王澤鑑先生は次のように指摘する。「所有権」の「処分権能」には、「事実上の処分と法 律上の処分」を含む。後者には、「債権行為(賃貸・売買等)と物権行為(所有権の移 転および放棄・担保物権の設定等)」を含む(王澤鑑・前掲書〔注 36〕154 ~ 155 頁)。 54)裴樺「也談離婚時知識産権尚未取得的収益的帰属──兼評〈婚姻法司法解釈(二)〉第 12 条」 『当代法学』2010 年第 5 期所収。

参照

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