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集団間協同を促進する目標設定に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)集団間協同を促進する目標設定に関する研究 キーワード:集団間協同 ,目標相互依存関係,目標コミットメント,集団透過性. 目的と問題. 所. 属. 行動システム専攻. 名. 前. 中園. 晴貴. れば,集団の目標のみならず組織の目標も関係してく. 【目的】. る。そこで本研究では,組織・集団の目標相互依存関. 本研究は,同一の組織に所属する集団間の葛藤を抑. 係および目標コミットメントの検討を行う。なお,本. 制し,協同を促進するための方略を目標設定の観点か. 研究の場合,組織が大学,集団が教員と職員に該当す. ら検討することが目的である。その導入として,大学. る。また,職員(教員)の目標とは職員(教員)とし. における文部科学省大学教育改革支援事業の場面での. て本人や所属部署が掲げている目標を指し,大学の目. 職員側から見た教員と職員の集団間協同を取り上げる。. 標とは中期目標など大学全体の目標を指す。. 【問題】. 目標相互依存関係. 目標相互依存関係(Goal Inter-. 組織は共有された目標を達成するための. dependence)は集団の目標や報酬が関係している度合. 手段として内部に複数の集団をつくり,多くの成果は. いであり,協同的関係,競争的関係および独立的関係. それら複数の集団の協同によるものである。しかし,. の 3 関係から成る(Deutsch, M., 1973)。協同的関係は. 集団同士が互いに足を引っ張ったり,集団の文化の相. 集団の目標に矛盾がなく,集団が揃って成果を収めよ. 違により意思疎通が阻害されたりといった事態が起き. うとする関係,競争的関係は集団の目標が葛藤・矛盾. ており,問題への対処やコンプライアンスの支障とな. しており,集団が勝ち負けに分かれようとする関係,. っている。組織や集団には,このような事態を回避し,. 独立的関係は目標にも成果にも両集団は関わろうとし. 組織における集団間協同を促進する方略が必要である。. ていない関係である。本研究では,大学の目標と職員. 集団間協同. の目標および教員の目標と職員の目標における目標相 大学における集団間協同. 業種や場面に特異的な集団. 互依存関係をそれぞれ検討する。. 間協同を研究するにあたり,本研究では業種を大学に, 場面を文部科学省大学教育改革支援事業に,集団を教. 目標コミットメント. 成員や集団がその目標を重要視. 員と職員に,視点を職員に絞って検討する。大学は改. している度合いが目標コミットメント(Goal Com-. 革や競争力強化が求められており,そのために必要な. mitment)である(DeShon, R. P. & Landis, R. S.,. 教員と職員の集団間協同は関心が高まりつつある。し. 1997)。目標は成員に認知され,行動の指標になるもの. かし,時として教員と職員は「相手は自分の仕事を邪. だが,必ずしも自ら設定するものでも自身だけに設定. 魔する」 「相手が自分の期待通りに動いてくれない」 「職. されるものでもない。ゆえに,自身が関係している目. 務内容の解釈に相違がある」 「対等に感じない」などと. 標をどれほど重要視しているのかが重要である。本研. して,必要な集団間協同が阻害されている事態も存在. 究においては,職員から見た職員の目標および大学の. する。集団間協同が阻害されれば,質の高い教育プロ. 目標へのコミットメントの 2 つを検討する。. グラムの立案や実施は困難であろう。なお,大学の教 集 団 透 過 性 ( Permeability of Group. 員と職員では集団の性質が大きく異なるので,この点. 集団透過性. を考慮して検討する。. Boundaries)は,社会的アイデンティティ理論(Tajfel. H., Turner, J. C., 1979)を背景にしたもので,個人が 組織や集団は共有された目. 他集団に移動できる可能性を指す(Ellemers, N., Van. 標に基づき形成されており,各集団の目標,目標達成. Knippenberg, A., de Vries, N. & Wilke, H., 1988)。こ. のための方略,目標達成による成果・報酬などは集団. れは,能動的に他集団に関わろうとすることであり,. 間協同する際に相互に深く関わってくる(Tjosvold, D.,. 成員が所属する集団を変えるものではない。本研究で. 1984)。また,組織が集団を内包していることを考慮す. は,職員が教員に対して感じる集団透過性を検討する。. 目標に基づく集団間協同. 1.

(2) 集団間協同.  意見が対立したときには,最優先事項を協議し,両. 協同(Cooperation)は,共有された目標. を追求するため,関係性を深め共同作業を協調して一. 者そのために全力で作業する。. 緒に行うことである(Lu, L. & Argyle, M., 1991)。組.  目標は必要になれば深く読み解いて具現化していく. 織内の集団は集団間協同する前提で設計され,そのこ. が,それ以外では意識できていない場合もある。. とにより生産性や成果の向上させている(Tjosvold, D.,.  公式の場以外での交流も大切にしている。. 1984)。協同に関する研究の多くは企業など職場におけ る主に営業場面(e.g. Tjosvold, D. & Tsao, Y., 1989 ;. 集団透過性・その他. Cengiz, Y., 2000 ; Cengiz, Y. & Shelby, D. H., 2001)で.  教員と職員の文化は全く異なり,双方で異動が無い. の個人間協同である。集団間協同は外務系官庁や産官. ことが最大の特徴。. 連携の場面(e.g. Leonardelli, G. J. & Toh, S. M., 2011 ;.  教員は個人で働いているが職員は集団で働いている。. Chen, G. & Tjosvold, D., 2012)が検討されているが,.  長く働いていれば,教員に教員というラベルを貼っ. 個人間協同に比べ数が少ない。また,大学において,. て態度を変えることはなくなる。. 組織の目標と集団の目標における目標相互依存関係に 研究 II. 着目したものは無く,本研究で検討を行うこととする。 【目的】 研究 I. 大学教育改革支援事業において,目標相互依存関係,. 【目的】. 目標コミットメントおよび集団透過性が教員と職員の. 質問紙の尺度作成のため,大学教育改革支援事業に. 集団間協同与える影響を実証的に検討する。. おける教員と職員の集団間協同や目標の葛藤などの状 況を具体化する。. 【仮説】 H1. 大学の目標と職員の目標および教員の目標と職員. 【方法】 インタビュー調査(半構造化). の目標の両目標関係における協同的関係,大学の 大学教育改革支援事. 目標および職員の目標への目標コミットメント,. 業への豊富な経験があり,明確な中期目標などを掲げ. 集団間協同はそれぞれ正の相関関係にあるだろう。. ている大学の学生系・教学系部署の教員および職員(3. H2. 集団透過性が高い職員は,低い職員よりも,それ. 国私立大学,教員 1 名,職員 5 名)に対し実施した。. ぞれ,大学の目標と職員の目標および教員の目標. 時期は 2013 年 4 月-5 月。. と職員の目標の両目標関係における協同的関係, 大学の目標および職員の目標への目標コミットメ. 【結果】. ントを高く示し,より集団間協同を行うだろう。 H3. 大学の目標と職員の目標における競争的関係は,. 具体的な集団間協同  あらゆる情報を収集し,教員や役員によって策定さ. 教員の目標と職員の目標における競争的関係より,. れた方針について,法制,行政,財政の見地から助. 集団間協同を阻害する影響が大きいだろう。. 言を行う。  複数の分野の教員を招集する際,分野と教員の情報. 【方法】. を提供する(複数の事業を経験していたり,部局を. 質問紙調査. 大学教育改革支援事業に過去携わった,. 異動したりする職員は教員の分野について詳しい)。. または現在携わっている大学職員 123 名。九州地域大 学教育改善 FD・SD ネットワークの協力を得て,同ネ.  教員と職員は異なるフィールドで仕事をしており, それを理解することが必要。. ットワークの運営校・賛同校・賛同者に回答を依頼し た。質問紙の配布と回答は各大学の協力者に委任した。. 目標における葛藤. なお,研究 I でインタビュー調査を行った職員には回答.  大学全体の目標や中期的計画の策定にあたっては,. を依頼していない。時期は 2013 年 7 月-8 月。. 教員だけでなく職員も意見を出して参画する。  自分の目標は上司の目標を参考に設定し,上司の目. 有効回答. 回答の不備を除く 12 大学 105 名(85.4 %)。. 男性 64 名,女性 41 名。平均年齢 40.6 歳(SD = 11.0). 標は中期目標などを参考に設定している。. (1 名不明)。平均勤続年数 15.2 年(SD = 12.1)。.  葛藤は徹底的な議論を行うしか解決できない。. 2.

(3) 尺度. 目標相互依存関係:Chen, G. & Tjosvold, D.. 【分析・結果】. (2012)を日本語訳し,主語を大学,教員および職員. 仮説検定 H1 相関分析の結果を Table 1 に示す。集団. へ変更した。15 項目から成る。確認的因子分析(重み. 間協同は,大学の目標と職員の目標および教員の目標. づけなし最小二乗法,プロマックス回転)したところ,. と職員の目標の両目標関係共に競争・独立的関係が負. 想定していた 3 因子構造は支持されず,協同的目標相. の相関を示した(r = -.40,r = -.25)が,協同的関係は. 互依存関係,競争・独立的目標相互依存関係の 2 因子. 相関を示さなかった。その他一部の変数と有意であっ. が抽出された。大学の目標と職員の目標:RMR = .056,. たものの,比較的強いものは職員の目標へのコミット. GFI = .975,AGFI = .964,協同的関係α = .59,競争・. メントとの正の相関(r = .34)のみである。目標コミ. 独立的関係α = .87,教員の目標と職員の目標:RMR. ットメントは,強弱の差はあるがその他の変数と有意. = .076,GFI = .964,AGFI = .949,協同的関係α = .73,. に相関している。以上から,仮説 H1 は一部支持された。. 競争・独立的関係α = .87。分析では,各回答において それぞれの評定の平均値を得点とした。. 仮説検定 H2 集団透過性の 2 群(高群,低群)に関す. 目標コミットメント:Hollenbeck, J. R., Klein, H. J.,. る t 検定の結果を Table 2 に示す。大学の目標と職員の. O'Leary, A. M. & Wright, P. M.(1989)を日本語訳し. 目標および教員の目標と職員の目標の両目標関係にお. た。9 項目から成る。大学の目標α = .82,職員の目標. いて,高群は高い協同的関係を示し(ps < .01),低い. α = .83。分析では,各回答においてそれぞれの評定の. 競争・独立的関係を示した(p < .01,p < .001)。また,. 平均値を得点とした。. 大学の目標および職員の目標共に高群は高い目標コミ. 集団透過性:Jackson, L. A., Sullivan, L. A., Harnish,. ットメントを示した(p < .001,p < .05)。一方,集団. R. & Hodge, C. N.(1996)を参考に 4 項目から成る尺. 間協同は集団透過性の高低による有意差はみられなか. 度を作成した。α = .64。分析では,各回答において評. った(n.s.)。以上から,仮説 H2 は一部支持された。. 定の平均値を得点とした。また,全回答において平均 値 2.8 を境に,集団透過性の高群(N = 47)および低. 仮説検定 H3 集団透過性,大学の目標と職員の目標お. 群(N = 58)に分類した。. よび教員の目標と職員の目標の両目標関係における競. 集団間協同:Lu, L. & Argyle, M.(1991)および Cengiz,. 争・独立的関係,集団間協同に関する構造共分散分析. Y. & Shelby, D. H.(2001)の内,語句の変更により大. の結果を Figure 1 に示す。大学の目標と職員の目標に. 学内の場面に修正できるものを日本語訳した。これに. おける競争・独立的関係のみが集団間協同を阻害する. 研究 I を基に作成した項目を加え,合計 28 項目を尺度. という結果となり,仮説は不支持といえる。なお,集. とした。α = .94。分析では,各回答において評定の平. 団透過性が大学の目標と職員の目標および教員の目標. 均値を得点とした。. と職員の目標の両目標関係における競争・独立的関係. 目標相互依存関係. 目標コミットメント. Table 1. 相関分析表(N = 105) 2 -.49 ** 大学の目標と職員の目標 1. 協同的 2. 競争・独立的 教員の目標と職員の目標 3. 協同的 4. 競争・独立的 5. 大学の目標 6. 職員の目標. 3 .48 ** -.28 **. 4 -.34 ** .64 ** -.45 **. 5 .42 ** -.58 ** .35 ** -.51 **. 7. 集団間協同 ** p < .01. 目標相互依存関係. 目標コミットメント 集団間協同. Table 2. 集団透過性に関するt 検定結果(N = 105) 集団透過性 高群 低群 大学の目標と職員の目標 協同的 3.65 3.34 競争・独立的 2.06 2.45 教員の目標と職員の目標 協同的 3.4 2.98 競争・独立的 2.17 2.81 大学の目標 3.73 3.33 職員の目標 3.93 3.67 3.61 3.41. 3. 6 .37 ** -.58 ** .27 ** -.40 ** .71 **. 7 .18 -.40 ** .05 -.25 ** .28 ** .34 ** ―. t. p. 2.78 3.11 3.31 5.28 3.84 2.43 1.49. 0.006 0.002 0.001 0.000 0.000 0.017 0.140.

(4) を抑制していることが示された。集団透過性は目標の. えに,本研究の結果の一般化には限界がある。しかし,. 捉え方を左右すると考えられ,集団透過性の高い認知. 仕事内容や所掌範囲が異なるからこそ,単一の集団で. は間接的に集団間協同を促進することが示唆された。. はできないことを達成する集団間協同の効果があると も考えられる。よって,各集団の性質が大きく異なる という大学のような特徴を持つ組織や場面では,本研. -.17 大学の目標と職員の目標における 競争・独立的関係 -.41. -.40. e 集団透過性 -.54. 究の示唆を参考にすることができるだろう。. .55. 課題・展開. -.16 集団間協同. り精巧なデータが取得できたが,集団間協同の全体像 を明らかにするためには他にも検討すべき要素がある。. e -.30 教員の目標と職員の目標における 競争・独立的関係. 本研究は一部の場面に限定することによ. e. まず,集団間協同を教員側からも検討する必要がある だろう。ただし,両集団の性質が大きく異なることを 考慮し,タスクの相違による具体的な集団間協同の相. RMR = .003,GFI = 1.000,AGFI = .999,NFI = 1.000,RMSEA = .000. 違を十分に検討する必要がある。また,本研究は目標. Figure 1. 構造共分散分析結果. という観点から検討したが,目標の内容やその意図ま での検討には至っていない。このことにより,目標関. 【考察】. 係の捉え方が目標の内容やその意図の勘違いに起因す. 研究 II における仮説は一部支持などに留まるものの,. ることを否定できない。今後,目標相互依存関係を競. 本研究の場面における集団間協同の様子を窺うことの. 争的もしくは独立的と捉えてしまう理由を検討する際. できる結果であった。すなわち,集団間協同は単一の. に,具体的な目標を示したり内容の理解度を測定した. 目標へのコミットメントと正の相関関係にあるが,目. りする必要があるだろう。加えて,本研究の結果では,. 標関係に視点を変えると協同的目標相互依存関係のよ. 本研究の場面における集団間協同は集団透過性や目標. うな積極的な認識とは有意な関係が無く,逆に競争・. とどのような関係にあるのか明確にすることができて. 独立的目標相互依存関係と負の相関関係にある。この. いない。本研究で取り上げた目標以外に意識している. ことから,本研究の場面において,自身に直接関係の. 目標が存在する可能性やどのような経緯で設定された. ある目標を受け入れるということは集団間協同を促す. 目標であるのかということも検討する必要があるだろ. が,その目標が他の目標と葛藤・矛盾していると集団. う。今後の研究においては,これらの変数を追加する,. 間協同を阻害されてしまうと考えることができる。こ. もしくはより場面を限定して検討することなどが求め. の際,集団透過性の高低で目標や目標関係の認識は有. られる。. 意差があるが集団間協同は有意差がなく,集団透過性 と集団間協同は直接の関係にない。ただし,集団間協. 主要引用文献. 同への負の影響に関しては,大学の目標と職員の目標. DeShon, R. P. & Landis, R. S. (1997). The dimen-. における競争・独立的目標相互依存関係を介して存在. sionality of the Hollenbeck, Williams, and Klein. する。以上から,本研究の場面において,集団間協同. (1989) measure of goal commitment on complex. を促進する目標設定は,少なくとも競争・独立的目標. tasks. Organizational Behavior and Human Deci-. 相互依存関係にあると捉えられないよう理解を促すこ. sion Processes, 70(2), 105-116. Deutsch, M. (1973). The resolution of conflict : con-. と,また,その際より重要視するのは集団を包含する. structive and destructive processes. New Haven,. 大学全体の目標であると言えるだろう。. United States. Yale University Press. Ellemers, N., Van Knippenberg, A., de Vries, N. &. 総合考察 本研究の最終的な目的は,同一組織内における集団. Wilke, H. (1988). Social identification and perme-. 間協同を促進する目標設定を検討することであり,そ. ability of group boundaries. European Journal of. の際,目標は組織全体の目標と集団固有の目標という. Social Psychology, 18(6), 497-513. Tjosvold, D. (1984). Cooperation theory and organi-. 階層的な関係にあり,成員一人あたり複数の目標に沿. zations. Human Relations, 37(9), 743-767.. っているという場面の代表として大学に焦点した。ゆ. 4.

(5)

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