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症例 睡眠時呼吸障害に伴う著明な低 CO 2 血症が心室細動の発生に関与したと考えられる拡張型心筋症の 1 例 A case of dilated cardiomyopathy who experienced repetitive ventricular fibrillation associate

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Academic year: 2021

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はじめに 近 年,心 血 管 疾 患 と 睡 眠 呼 吸 障 害(sleep disor-dered breathing;SDB)との関連が指摘されている が,中でもSDB を合併した心不全患者では致死性 不整脈の危険が増大することが報告されており1), SDB の管理は心不全患者の予後を決定する重要な 因子であると考えられる.

SDB は閉塞性無呼吸(obstructive sleep apnea; OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea; CSA)に大別され,心不全症例ではどちらも合併し うることが知られている.特にCSA は心不全患者 に特徴的で,中でもチェーン・ストークス呼吸を伴 う 中 枢 性 睡 眠 時 無 呼 吸(central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration;CSR-CSA)合併症例で は,夜間の致死性不整脈による突然死が多いことが

A case of dilated cardiomyopathy who experienced repetitive ventricular

fibrillation associated with severe hypocapnia

1) Division of Cardiovascular Medicine, Department of Internal Medicine, Jichi Medical University School of Medicine, 2) Kokubunji Sakura Clinic

Kana Kubota1) , Yuichiro Yano1) , Mitsunobu Murata1,2) , Yasushi Imai1) , Masahisa Shimpo1) , Kazuomi Kario1)Abstract》 1) 自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門,2) 国分寺さくらクリニック

久保田香菜

1)

矢野裕一朗

1)

村田光延

1,2)

今井

1)

新保昌久

1)

苅尾七臣

1)

睡眠時呼吸障害に伴う著明な低 CO

2

血症が心室細動の

発生に関与したと考えられる拡張型心筋症の 1 例

症 例

症例は 52 歳の男性.拡張型心筋症の経過中にうっ血性心不全をきたし,夜間就寝中に心室細動(ventricular fibrillation;VF)の頻発を認めた.VF をきたした際に著しい低 CO2血症,および呼吸性アルカローシスを呈し ており,その原因としては重症の中枢性睡眠時無呼吸による無呼吸の後に引き続く一過性過呼吸が原因と考え られた.突然死回避のため植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator;ICD)を挿入した上で,無 呼吸に対して adaptive servo ventilation(ASV)導入を行ったところ心室性不整脈の頻度は著減した.今回われ

われは,著しい低 CO2血症または呼吸性アルカローシスが VF のトリガーになったと思われる症例を経験した ので文献的考察を加え報告する. (2015.12.21 原稿受領;2016.3.18 採用) ● 低 CO2血症 ● 呼吸性アルカローシス ● 心室細動 ● 拡張型心筋症 ● 睡眠時無呼吸 久保田香菜:自治医科大学内科学講座循環器内科学部門(〒 329-0498 栃木県下野市薬師寺 3311 番地の 1) 責任著者 Key words

(2)

報告されており,その誘因として睡眠中の低CO2血

症が注目されている.

CSA を有する心不全症例に低 CO2血症(PCO2<

35mmHg)を伴う場合,PCO2が正常な症例と比較し

て 心 室 期 外 収 縮(premature ventricular contrac-tion;PVC)が高頻度であることが報告され2) ,さら に心室頻拍(ventricular tachycardia;VT)や VF と いった致死性の心室性不整脈も高頻度に出現するこ とが示唆されている.また近年では低CO2血症では なく,血清アルカローシスが心室性不整脈の誘因で あるといった報告3)もなされている. 今回われわれは,CSR-CSA を有する重症心不全 患者でVF をきたした際,著しい低 CO2血症および 呼吸性アルカローシスを伴っていた 1 例を経験した ので報告する. 症例 患者:52 歳,男性. 主訴:呼吸困難,下腿浮腫,体重増加. 既往歴:特記事項なし. 家族歴:特記事項なし. 現病歴:2008 年 10 月にうっ血性心不全,心房細 動で近医総合病院に緊急入院,特発性拡張型心筋症 と診断された.カルベジロール 10mg,利尿薬を投 与されて通院加療を行っていた.2012 年 7 月上旬に 呼吸困難,下腿浮腫,体重増加で入院し,急性心不 全の診断で加療され,状態は改善傾向にあった.第 10 病日の午後 8 時半頃,就寝中にVF となり,電気 的除細動(150 J)を 1 回施行され,洞調律に回復し た.アミオダロン持続静注開始,また低K 血症(3.2 mEq/L)を認めていたため,塩化カリウム持続静注 による補正を開始したが,翌朝までに計 4 回VF と なり,その度に電気的除細動で洞調律に復帰した. VT/VF storm の管理および ICD の挿入が考慮され たため第 11 病日に当院へ転院搬送となった. 入院時身体所見:身長 174 cm,体重 75.3 kg(BMI 24.8kg/m2),血圧 116/82 mmHg,脈拍 82 bpm・ 整,SpO2(酸素 7 L 投与)100%,意識清明,心音:Ⅰ 音/Ⅱ音正常,Ⅲ音/Ⅳ音聴取せず,心雑音なし,呼 吸音・清,下腿浮腫なし. 入院時検査所見:血液検査(血算)WBC 10,000/ mL,RBC 537×104/mL,Hb 17.2 g/dL,Ht 52.3%, Plt 18.3×104 /mL,(凝固)PT-INR 1.76,(生化学) TP 5.3 g/dL,Alb 2.8 g/dL,BUN 13 mg/dL,Cr 0.83mg/dL,UA 7.9 mg/dL,T-Bil 4.2 mg/dL, D-Bil 1.5 mg/mL,AST 45 mU/mL,ALT 39 mU/ mL,LDH 412 mU/mL,CPK 251 mU/mL,Na 134 mEq/L,K 4.1 mEq/L,Cl 99 mEq/L,CRP 0.92 mg/ dL,(血液ガス(酸素 5 L マスク投与))pH 7.692, pCO219.1mmHg,pO2121.3mmHg,HCO3

22.7

mEq/L,BE 5.9 mEq/L,AnGap 14.1 mEq/L,Lac 2.2mEq/L. 胸部 X 線写真:臥位撮影,CTR 65%,左第 2〜4 弓突出し肺動脈および左房・左室が拡大,肺うっ血 像を認めた. 心電図(図 1):洞調律,心拍数 87/分,QRS 軸正 常,V1−4誘導でR 波増高不良,V1−6誘導で陰性T 波, V4−5で陰性T 波,QTc 582 msec と延長を認めた. 心臓超音波検査:左室壁厚は 10.2 mm と正常範 囲である,左室壁運動はびまん性に低下しており, 左 室 駆 出 率(left ventricular ejection fraction; LVEF)は 22.3%であった.左房(45.7 mm),左室(左 室拡張末期径/左室収縮末期径 64.2/59.0mm),右 室(45.0 mm)の拡大あり,軽度僧帽弁逆流,軽度三 尖 弁 逆 流 を 認 め た.推 定 収 縮 期 肺 動 脈 圧 は 20 mmHg であった.左室拡張早期波(E 波)最大流速 0.93m/s,E 波最大流速と心房収縮期波(A 波)最大 流速との比(E/A)3.20,DcT 101 msec と短縮し拘 束型パターン,下大静脈径は 10mm で呼吸性変動 を認めた. 経過:転院時の心電図で QTc 582 msec と著明な 延長を認めたため,アミオダロン持続静注は中止し, また低カリウム血症が不整脈の原因の 1 つと考え, 塩化カリウムの持続静注で血清カリウム値の補正を 継続した.しかしながらカリウム値は正常化し, QT 間隔延長も 346〜533 msec 程度(心房細動)まで

(3)

改善していた(図 2A)にもかかわらず第 18 病日の午 前 2 時頃と午後 11 時頃にVF の出現あり.1 回目は DC(150 J)で洞調律へ回復,2 回目は自然停止した. 24 時間心電図モニターで夜間就眠後に連結時間の 短いPVC が頻発し,R on T を介して VF に移行す る(図 2B)傾向がみられたこと,またリドカイン静 注によりPVC の減少が認められたことから,眠前 に メ キ シ チ レン 150mg の内服を開始した.また QT 間隔に注意しながらアミオダロン(200 mg 内 服)を再開した.突然死予防のため,第 20 病日に ICD 挿入術を施行した. 転院時および第 18 病日のVF 発症時に採取した 血液ガス検査で,いずれも著しい低CO2血症および 呼吸性アルカローシスを認めたことから,SDB と 心室性不整脈の関連性に着目し,第 24 病日にType 2 の終夜睡眠ポリグラフィー(polysomnography; PSG)と,動脈圧ラインを挿入して 2 時間毎の動脈 血液ガス検査を同時に行った.PSG では CSR-CSA を認め(図 3A),血液ガス検査では最大 pH 7.49 の 呼 吸 性 ア ル カ ロ ー シ ス,お よ び 最 低 PCO2 29 mmHg の低 CO2血症を認めた(図 3B).本検査日に はVF は認めなかったものの,就寝後に多源性の PVC 頻発や非持続性 VT がみられた.またアルカ ローシス,低CO2血症時の心電図においてQT 間隔 のさらなる延長やT 波の変化など,心電図変化は 検出されなかった.

CSR-CSA に対して第 27 病日から adaptive ser-vo ventilation(ASV)を導入し,初期設定は呼気時圧 レ ベ ル (expiratory positive airway pressure; EPAP)5 cmH2O,吸気時圧レベル(inspiratory

posi-tive airway pressure;IPAP)8〜15 cmH2O とした.

ASV 導入後 4 日目に施行した PSG では無呼吸低呼 吸指数(apnea hypopnea index;AHI)は導入前 31.9 と比較して 2.2 と明らかに改善した.しかし動脈血 液ガス検査では夜間の呼吸性アルカローシスは改善 せず,PVC の頻度にも改善はみられなかった.その Ⅰ Ⅱ Ⅲ aVR V1 V2 V3 V4 V5 V6 aVL aVF 図 1 入院時心電図

(4)

原因として一回換気量が 800mL 以上と多く,過換 気になっていることが考えられたため,IPAP を 5〜 10cmH2O に変更したところ,夜間の動脈血液ガス 検査ではPCO2>30 mmHg,pH>7.4 と低 CO2血症 および呼吸性アルカローシスの改善がみられ(図 4),PVC の頻度の減少を認め,以後,ICD の定期的 な監視を行っているがVT/VF のエピソードは全く 認められていない. 考察 今回われわれは,CSR-CSA を有する重症心不全 患者でVF をきたした際,著しい低 CO2血症および 呼吸性アルカローシスが存在した 1 例を経験した. 抗不整脈薬の内服のほか,ASV 導入による CSR-CSA の改善により夜間の低 CO2血症および呼吸性 アルカローシスを予防し,VF の出現防止を図った. 睡眠中の呼吸は呼吸中枢に存在するCO2化学受容 器により制御されているが,心不全患者では①低心 拍出状態による循環遅延と生理学的死腔の増加,② 体液シフトによる中心血液量の増加,肺動脈圧の上 昇,咽頭組織圧の上昇4),③低酸素や交感神経系の 亢進5)など種々の要因によってCO2化学受容器感受 A 25m/s V1 V2 V3 V4 V5 V6 B 75m/s 図 2 心電図 A:VF 発生前日(第 17 病日)の心電図(胸部誘導) QT 間隔:346〜533 msec B:VF 発生時のモニター心電図(第 18 病日)

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性が亢進しているため,周期性呼吸(CSR-CSA)が 発生しやすい状況にある.CSR-CSA では CO2化学 受容器感受性の亢進により,無呼吸によるCO2上昇 を感知すると過換気となり,その結果CO2の低下を きたすという呼吸サイクルを繰り返している.近年, こうした周期性呼吸による低CO2血症と致死性不整 脈の関連が注目されており,その機序として低CO2 血症が心筋にもたらす様々な影響が関与していると 考えられる.低CO2血症は心筋への酸素供給を低下 させ,冠血流低下,冠血管抵抗上昇や冠攣縮誘発な どを引き起こす作用があるといわれており,これら によって起こった心筋虚血のため,心室性不整脈が 起こりやすくなると推察される6). Javaheri や Sin らは,重症心不全患者で夜間心室 性不整脈を有する症例では有意にCSR-CSA の頻 度が高いことを報告した7,8).しかしながら,これら の研究は不整脈発現時の血中pH や PCO2の動きを 捉えたものではなく,CSR-CSA 患者における睡眠 A B P-Flow T-Flow THO ABD Snore SpO2 BODY S 90 20 20 -20 -40 -20 -4 0 0 0 94 93 89 88 87 89 96 91 86 86 949592 91959390 86 86 86 87 S SSS SSS SSS SSS SSS SSS SSS SSS SSS S S 4 8 12 -40 4 8 12 -84 -400 40 80 78 82 86 90 94 98 25 30 35 40 45 7.35 7.37 7.39 7.41 7.43 7.45 7.47 7.49 18 : 00 20 : 00 22 : 00 0: 00 2: 00 4: 00 6: 00 8: 00 pH pCO2 pH 7.49 (mmHg) 就寝 起床 pCO2 29mmHg 図 3 第 24〜25 病日夜間の呼吸状態,pH,pCO2の推移 A:PSG 波形 B:夜間動脈血液ガス検査 15 20 25 30 35 40 7.3 7.35 7.4 7.45 7.5 7.55 7.6 7.65 7.7 第 10 病日 14 : 00 第 18 病日 2 : 00 第 25 病日 6 : 00 第 30 病日 3 : 00 第 32 病日 3 : 00 第 35 病日 3 : 00 pH pCO2 (mmHg) ICD移植 AHI 31.9 VF VF AHI 2.2 ASV導入 Titration メキシレチン150mg アミオダロン200mg 図 4 睡眠中の pH,pCO2の推移

(6)

時の血中pH や PCO2の変化については不明である. 今回のわれわれの報告のように,VF 発症時と著し い低CO2血症と呼吸性アルカローシスをリアルタイ ムに捉えた報告はこれまでにない.また,致死的不 整脈をきたすようなCSR-CSA 患者の血中 pH は, 覚醒時や起床後よりも睡眠時に上昇し,PCO2も睡 眠時に低下するという日内変動を示した報告はこれ までにない. 本症例ではASV を導入しその設定を至適化する ことでPVC や VF の発現が抑制された.ASV 導入 によるAHI の改善だけでは PVC の頻度は減少せ ず,適切なマニュアルタイトレーションを行った後 に過換気および低CO2血症,呼吸性アルカローシス の改善を確認することで,PVC および VF の発現 が抑制された.このことは低CO2血症および呼吸性 アルカローシスが不整脈の抑制に重要であることを 示唆している. ただし,本症例は経過中に心室性不整脈を抑制す るために,アミオダロンやリドカインの内服を開始 しており,これらの薬剤が少なからず不整脈発症の 抑制に寄与した可能性はある.しかしながら,これ らの薬剤では低CO2血症および呼吸性アルカローシ スが改善できる見込みは少ない. またアルカローシスに伴う低カリウム血症が心室 性不整脈発生頻度を増加させた原因とも考えうる が,当 院 へ 転 院 後 の 血 清 カ リ ウ ム 値 は 一 貫 し て 4.0〜4.5mEq/L を維持していた. もう一点,本症例では転院時に著明なQTc 延長 を認めており,VF の原因の 1 つとして関与してい た可能性がある.転院後にアミオダロン持続静注を 中止するなど改善に努めたが,もともと長年の心房 細動があり,第 13 病日からは心房細動に戻ってい たため心拍によってはQT 間隔が延長しており,そ の関与を完全に否定することはできない. またASV は CSR-CSA に対して,そのときの呼 吸状態に合わせて補助の程度を変動させ,最終的に 自 発 呼 吸 を 安 定 さ せ る 呼 吸 補 助 療 法 器 で あ る. Teschler らは,ASV

は持続的気道陽圧法(continu-ous positive airway pressure;CPAP),2 層式気道 陽 圧(bi-level positive airway pressure;Bi-level PAP),酸素療法よりも CSR-CSA に対して効果的 であると報告した9).また陽圧呼吸によりSDB が改 善されるとPVC10)や発作性心房細動11)が減少するこ とがこれまで知られてきたが,これはSDB の改善 に伴う自律神経の安定化が寄与しているものと思わ れる.Oldenburg らは CSR-CSA を有する心不全患 者でASV を使用すると,自律神経活性安定化作用 と運動耐用能改善効果があると示した12). 結語 CSR-CSA を有する重症心不全患者で VF をきた した際,著しい低CO2血症および呼吸性アルカロー シスが存在した 1 例を経験した.重症心不全患者に おける致死性不整脈と低CO2血症もしくはアルカ ローシスと関連性をリアルタイムに捉えた稀有な 1 例報告である.致死的不整脈および突然死予防とい う観点からASV による SBD 改善の重要性を再認 識した. 文 献

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11) Abe H, Takahashi M, Yaegashi H, et al:Efficacy of

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12) Oldenburg O, Schmidt A, Lamp B, et al:Adaptive

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参照

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