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44 オープンリーグの競争均衡度合について されてきた. 1)2) 対戦チーム同士の実力差が拮抗しているほど需要量が増加するという理論であり, リーグ内の競争が均衡することの重要性を示している. チームスポーツのリーグにおいては, 欧州サッカーに代表される, 昇降格制度を有し, 選手の労働市場に対す

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Academic year: 2021

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オープンリーグにおける競争均衡度合に関する研究

―Jリーグ・ディヴィジョン 1 の均衡度合変化の測定―

川 名 光太郎

  平 田 竹 男

Research on Competitive Balance in the Open League:

Measuring the Trends in the Competitive Balance of

the J. League Division 1

Kotaro KAWANA

and Takeo HIRATA

Abstract

  In this research, we focused on the competitive balance in the open league. We aimed to find out the effect of the league system’s change, with or without new entries, and find out the relationship between wages and competitive balance. This research analyzed the J. League (Japan Professional Football League), which changed from a closed league to an open league, and the English Premier League, which changed the revenue structure and increased its turnover in recent years. To measure competitive balance, we used the Herfindahl Index of Competitive Balance(HICB), the Five Club Concentration Index of Competitive Balance (C5 index). As a result, it was found that in the Premier League, competitive balance has declined in recent years. But in the J. League, on the other hand, after 1999, the year that the Second tier (J2) was made and the League adopted the promotion and relegation system, competitive balance slowly increased. Imbalance of Wages in the Premier League was substantially larger than in the J. League. From these results, we made a suggestion that adoption of a promotion and relegation system is one of the factors which improve competitive balance.

Key words:Competitive Balance, J. League, Herfindahl Index

1.序     論  古くからプロスポーツが発展してきた欧米に おいては,経済学,経営学的立場からプロス ポーツリーグを分析した研究が数多く存在す る.先行研究の対象は,スポーツ種目,国など が多種多様に渡っているが,スポーツリーグを 対象として分析する研究の中で,近年特に注 目されているのが,競争均衡度合(Competitive Balance),すなわちリーグ内の競争の激しさに 関する研究である.競争均衡度合についての研 究は,Rottenberg1)の研究を始めとしてこれま で欧米で多数行われてきており,プロスポーツ チームにとって重要な収入源である入場料収入 は,試合結果の不確実性,すなわちチーム同士 の実力差に左右されることがこれまでに指摘  †原稿受付 2009 年 10 月 14 日  *早稲田大学大学院スポーツ科学研究科 〒169-8050 東京都新宿区西早稲田 1-6-1

 *Graduate School of Sport Sciences, Waseda University, 1-6-1, Nishi-Waseda, Shinjuku-ku, Tokyo, Japan (169-8050) 原著論文

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されてきた.1)2)対戦チーム同士の実力差が拮抗 しているほど需要量が増加するという理論であ り,リーグ内の競争が均衡することの重要性を 示している.  チームスポーツのリーグにおいては,欧州 サッカーに代表される,昇降格制度を有し,選 手の労働市場に対する規制を行わない自由競 争のリーグシステムであるオープンリーグと, ア メ リ カ4 大 ス ポ ー ツ リ ー グ(NFL,MLB, NHL,NBA)や日本のプロ野球に代表される, リーグ参入障壁を設けているクローズドリーグ の2 つの形態が存在するが,先行研究では特に クローズドリーグ特有の,レベニュー・シェア リングやドラフト制度などの戦力均衡施策が リーグ内競争に及ぼす影響に着目した研究が多 く存在している.Rottenberg1)は,リーグの自由 競争を制限しようとする様々な干渉や規制を実 施してもリーグ内の競争均衡度合は変化しない と い う 主 張(Invariance Principle)を唱えてお り,El-Hodiri and Quirk2),Fort and Quirk3)ら に よって妥当性を支持されたが,Szymanski and Kesenne4)は,レベニュー・シェアリングの強化 が競争均衡度合を低下させることを例証した. このようにリーグ内の干渉,規制が競争均衡度 合に与える影響については今まで研究されてき たものの,自由競争の中で競争均衡度合がどの 程度まで上昇するのか,もしくは低下するのか, といった点に着目した研究はまだ少ない.  そこで本研究ではオープンリーグにおける競 争均衡度合に着目して研究を進めていく.オー プンリーグにおいてはサラリーキャップやドラ フト制度などの競争均衡度合を高めるための施 策は通常行われていない.よって同一リーグ内 において選手人件費への投資額に開きが発生す ると考えられる.人件費と成績の関係について の先行研究を見てみると,Szymanski ら5)はイ ングランドのプロサッカーリーグを題材にし て,人件費と成績との間に相関関係が存在し, 人件費の高いチームは良い成績を収める傾向が あることを明らかにしており,内田・平田6) J リーグにおいても同様の関係が見られること を明らかにしている.  これらの研究から,リーグ内に他クラブと比 べて多額の人件費を投入するクラブが存在し, 下位クラブと人件費への投資額に大きな差があ る場合,リーグ内の競争均衡度合が低下するの ではないかと考えられる.また,いずれかのチー ムの独占,もしくは複数チームによる寡占状態 が起きやすいとも考えられる.  オープンリーグを対象として競争均衡度合 を分析した研究としては,ドイツ・ブンデス リーガの競争均衡度合を測定したBrandes and Franck7)や,イングランド・Division1 ならびに プレミアリーグにおける競争均衡度合を測定し たMichie and Oughton8)など,欧州のサッカー リーグを対象とした研究がいくつか存在する.  前述したアメリカの4 大スポーツリーグを対 象とした研究と比較して数は少ないものの,欧 州のサッカーリーグを対象とした研究が行われ ているのに対して,日本のプロスポーツリーグ を対象とした競争均衡度合の研究はこれまで行 われてこなかった.  そこで本研究では,我が国において,昇降格 制度を有する代表的なリーグである,J リーグ (日本プロサッカーリーグ)に着目する.J リー グは,開幕当初は10 チームによる完全クロー ズドリーグであったが,徐々にチーム数を増加 させていき,1999 年には J リーグ・ディビジョ ン2(以下 J2)を作りオープンリーグへと移行 している.リーグへの新規参入が出来ないク ローズドリーグ形式で行っていたリーグが,昇 降格制度を導入してオープンリーグへと移行し たケースは世界においても珍しく,研究対象と する意義は大きいと考えられる.  クローズドリーグからオープンリーグへと移 行したJ リーグにおいて競争均衡度合がどのよ うに変化したのかを明らかにすることで,リー グ形式の変化(新規参入の有無)が競争均衡度 合変化に与える影響を検証し,またリーグ内に おける人件費の均衡度合との間にどのような関 連性があるのかを明らかにすることを,本研究 の目的とする.

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2.研 究 手 法 2.1 研究対象  前述の通り,本研究では,J リーグ(日本プ ロサッカーリーグ)に着目し,クローズドリー グからオープンリーグへのリーグ形式の変化が 競争均衡度合に与える影響を見ていく.  また,J リーグと比較するために,同じく昇 降格制度を有するイングランド・プレミアリー グにおいても同様の分析を行い,J リーグの結 果と比較していく.プレミアリーグは1992 年 にそれまでのフットボールリーグから独立す る形で発足しており,テレビ放映権やスポン サーなどの契約を独立して結ぶなど,リーグ 内の収入構造変化が起こったリーグである. 1991-92 年シーズン,プレミアリーグ全体の売 上は1 億 7000 万ユーロ(約 272 億円)だったが, 2005-06 シーズンには,マンチェスター・ユナ イテッドだけで1 億 6800 万ユーロ(約 269 億 円)の売上を上げるほどになり,リーグ全体で は20 億ユーロ(約 3240 億円)と,12 倍近い 成長を遂げている.図1で示したとおり,欧州 で最も収入規模の大きいサッカーリーグへと成 長したリーグである.また,プレミアリーグは 近年外国人投資家によるクラブ買収が進んでい るリーグでもある.2003 年のロマン・アブラ モビッチによるチェルシー買収を皮切りに,マ ルコム・グレイザーによるマンチェスター・ユ ナイテッド買収,ジレット,ヒックスによるリ バプール買収など海外投資家によるビッグクラ ブの買収が相次ぎ,投資家の資金力を下にさら なるクラブ規模の拡大を遂げている.過去に Michie and Oughton8)がイングランド・Division1 ならびにプレミアリーグを対象として,1947 年から2004 年までの競争均衡度合を分析して いるが,本研究では近年の収入拡大と構造変化 が競争均衡度合にいかなる影響を与えたのかを 分析するために,J リーグとの比較対象とした. 2.2 成績と人件費の均衡度合測定方法  本研究では,J リーグ(J1)とイングランド・ プレミアリーグにおける競争均衡度合の推移を 明らかにするために,まずシーズン成績の均衡 度合がどのように変化しているかを測定する. 測定方法は,ドイツ・ブンデスリーガの競争均 衡度合を測定したBrandes and Franck7)の手法を 参考にする.具体的には,上位チームによる寡

占度合を測定するために上位5 クラブの支配率

(式1)を用い,全体の均衡度合を測定するた めにハーフィンダール指数(式2)を用いる.

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 Si は順位「i 位」クラブの占める勝ち点の割 合であり,N はリーグ内のクラブ数である.  上位5 クラブの支配率は,シーズン成績の上 位5 クラブの勝ち点が,全クラブの勝ち点にお いて占めている割合である.また,この式では 全クラブの勝ち点にどれだけのバラつきがある のかが計れないため,全体の均衡度合を測定す るためにハーフィンダール指数を用いる.ハー フィンダール指数はもともとある産業における 上位企業の集中度,寡占度合を測るために使用 される指数であり,企業規模の分布全体の不均 等度をも示す指数である.求め方は各企業の市 場シェアの二乗和である.本研究では,各クラ ブの勝ち点シェアの二乗和で計算する.  なお,上記式はリーグ内のクラブ数変化に よって数値が大きく変動するため,式3,式4 を適用することでチーム数の増減に結果が左右 されないようにする.        C5*100 C5index =           5/N

式3:C5 index of competitive balanceC5 index

 両指数ともに,数値が小さければ小さいほど 競争均衡度合が高いことを示す.ハーフィン ダール指数(HICB)は完全に均衡している場 合(全試合引き分けの場合)100 を示す.   分析の対象年度は,J リーグ(J1)は勝ち点 制度を導入した1995 年から 2008 年,プレミア リーグは過去20 年間(1989 ~ 2008 年)とす る.また,上記式に加え,過去10 年間で勝ち 点の格差がどの程度広がったのかを分析するた めに,ローレンツ曲線を用いて分析を行う.ロー レンツ曲線は,所得格差の分析に使用される指 標であり,チーム数の累積百分率を横軸に,勝 ち点の累積百分率を縦軸に置きプロットする. ローレンツ曲線が対角線から離れれば離れるほ ど不平等な状態を表わす.  次に,J リーグ(J1),プレミアリーグにお いて人件費の均衡度合にどの程度差が存在する のかを明らかにするために,単年度(2007 年) における人件費のC5 index ならび HICB を測定 する.用いる計算式は,成績の均衡度合測定と 同様であり,C5 index は上位 5 クラブの人件費 合計が全体の人件費に占める割合を,(5 ÷ N) で割った後に100 倍した値であり,HICB は各 クラブの人件費シェアの2 乗和を,(1 ÷ N) で割った後に100 倍した値である.C5 index は 数値が高ければ高いほど上位5 クラブの寡占率 が高いことを示し,HICB は数値が高ければ高 いほど全体のバラつきが大きいこと示す.分 析に用いる人件費のデータは,以下を参照と する.まず,J1 の各クラブにおける「人件費」 についてはJ リーグが公式ホームページ9)にお いて2005 年度より公開を行っている各クラブ の財務状況データである「2007 年度 J リーグ クラブ経営公開資料」から,2007 年度におけ る各クラブの「選手・チームスタッフ人件費支 出」の項目を用いて分析を行う.プレミアリー グの「人件費」についてはDeloitte 社が発行し

ている Annual Review of Football Finance, 200810) の中から,06 ~ 07 年度における各クラブの人 件費項目のデータを用いて分析を行う. 3.研 究 結 果 3.1 成績の均衡度合推移  J リーグ(J1)とプレミアリーグにおける成 績の均衡度合推移を測定した図が,図2であ る.図2から,J リーグにおいては 1995 年か ら1998 年にかけてハーフィンダール指数,上 C5tɁ

Ϩ

Sit, 5 1

式 1:The five club concentration ratio(C5)

HtɁ

Ϩ

Sit,

N i㧩1

2

式2:The Harfindahl index(HI)

HICBɁȁȁȁȿHI 100 1/n

式4: The Harfindahl index of competitive balance HICB)

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位5 クラブの支配率が共に上昇しており,競争 均衡度合が低下している事がわかる.しかしな がら,1999 年を境に両変数とも低下傾向を示 しており,2008 年度はもっとも低い数値を示 している.以上のことから,J リーグにおいて は1999 年以降成績の均衡度合が上昇している ことがわかる.  次にプレミアリーグを分析した結果を見て みると,プレミアリーグ発足前の3 年間はハー フィンダール指数,上位5 クラブの支配率共に 低い数値を示しているが,プレミアリーグ発足 以降徐々に上昇傾向を示し,特に2004 年以降 は高い数値を示している.以上の結果から,プ レミアリーグにおいては,近年成績の均衡度合 が低下し,上位5 クラブによる支配率が高まっ ていることがわかる.これらの結果に対し,ロー レンツ曲線を使用した分析でも同様の傾向が読 み取れる.  図3は1998 年と 2008 年シーズンにおける J リーグの各クラブ勝ち点を使用して描いたロー レンツ曲線である.10 年前のシーズンと比較 して,2008 年シーズンは①で示した部分の面 積が狭くなっていることが見て取れる.これは, 各クラブの勝ち点が全体に対して占める比率が 拮抗していることを表わしている.  また,図4は97/98 シーズンと 07/08 シーズ ンにおけるプレミアリーグの各クラブの勝ち点 を用いて,同様の分析を行った結果である.こ の図から,プレミアリーグにおいては,10 年 前と比較して,全体の勝ち点に対して高い比率 を占めているクラブと,わずかな比率しか占め ていないクラブの間の格差が大きく広がってい ることがわかる. 3.2 人件費の均衡度合測定結果  表1は2007 年(プレミアリーグは 06/07 シー ズン)における,各クラブの人件費総額をま とめた表である.J1 の平均は 15 億 3300 万円, プレミアリーグの平均は77 億 6200 万円となっ ている(1 ポンド 160 円で計算).次に,人件 費の均衡度合を測定した結果を記した表が表2 である.リーグ全体の人件費のバラつきを示し たHICB は,プレミアリーグが 133.10,J リー グが108.63 という結果になった.また上位 5 クラブの支配率を示したC5 index はプレミア リーグが187.5343,J リーグが 133.5387 という 結果になった.ハーフィンダール指数,上位 5 クラブの支配率共にプレミアリーグが J1 を 大きく上回っている.この結果から,人件費に おいても,プレミアリーグはリーグ内における ঺ጚרᘖࡇӳਖ਼ᆆ HICB C5 index 図2 J1 とプレミアリーグの競争均衡度合推移(1989(J1 は 1995)~ 2008)

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バラつきが大きく,特に上位5 クラブが全体に 対して占める比率が非常に高いことがわかる. またJ リーグに関しては,人件費支出の最も多 い浦和レッズが他を引き離しているものの,そ の他のクラブは人件費支出額が拮抗している. HICB は完全に均衡している状態を表す 100 に 近い数字を示しており,均衡度合の高さが伺え る.  この傾向は,縦軸にリーグ順位,横軸に人件 費支出を置きプロットした図5によって顕著に 認識できる.J1 所属クラブが縦方向に配置さ れているのに対して,プレミアリーグ所属クラ ブが大きく横に広がっていることがわかる. 4.考     察  J リーグとプレミアリーグにおける競争均衡 㽲 㽳

Cumulative percentage of Clubs

Cumulative percentage of points

Cumulative percentage of Clubs

㽲 㽳 Cumulative percentage of p oints 2008 1998 図3 1998 年と 2008 年シーズンにおける J リーグのローレンツ曲線 2008

Cumulative percentage of Clubs

㽳 1998

Cumulative percentage of Clubs

Cumulative percentage of points Cumulative percentage of points

(7)

度合を3 つの測定手法を用いて測定したとこ ろ,J リーグにおいては,J2 を創設し昇降格制 度を取り入れた以降は,成績の均衡度合が上昇 していることが伺えた.リーグシステムの変化 のみが成績の均衡度合上昇の原因とは断定でき ないが,この傾向は最新である2008 年シーズ ンまで続いており,昇降格制度の導入が競争均 衡度合を改善することを示唆していると考えら れる.すならち,昇降格制度の導入により自由 競争の度合を強めることによって,レベニュー・ シェアリングなどの施策等が存在しなくても, 競争均衡度合が高まるという示唆を得ることが できたと言える.また実際に各クラブが人件費 に投じている額も,非常に均衡していることが わかった.  次にプレミアリーグにおいては,1992 年の プレミアリーグ発足以降,競争均衡度合が低下 傾向を示しており,その傾向は特に過去5 年程 度にかけて強くなっている.  また,人件費の均衡度合を測定したところ, J1 とプレミアリーグとの間には大きな開きが あり,この人件費の均衡度合の差が,成績の均 衡度合の差に現れているのではないかと考える ことが出来る.  過去5 年にかけてのプレミアリーグにおける 競争均衡度合の低下が示されたことから,海外 の投資家による買収の影響が競争均衡度合の低 下として表れているのではないかと考えられ る.海外の投資家がプレミアリーグのクラブを 買収し,巨額の資金を投じてチームを強化す る理由は,プレミアリーグでの勝利が投資に対 するリターンをもたらすと認識しているからに 他ならないだろう.海外向けのTV 放映権料は 順位によって傾斜配分され,上位クラブは欧州 チャンピオンズリーグへの道が開ける.欧州 チャンピオンズリーグに出場し,勝ち残ること で,TV 放映権収入,興行収入はさらに増し, 中位クラブ,下位クラブとの資金力の差はさら に広がることになる.この強力なインセンティ ブこそが,いわゆるビッグクラブを作る要因と なっていると考えられる.以上を踏まえると, J リーグとプレミアリーグの間に存在する,競 争均衡度合の差の要因の一つとしては,「上位 クラブへのインセンティブの強さ」という点が 挙げられるのではないだろうか. 5.本研究の結論と今後の課題  本研究では,J リーグ(J1)の競争均衡度合 の推移を明らかにするために,上位5 クラブに よる支配率(C5 index),ハーフィンダール指 数(HICB),ローレンツ曲線を用いて分析を行 表 1 J 1 と プ レ ミ ア リ ー グ 各 ク ラ ブ の 人 件 費 (2007 年(06/07 シーズン)) 浦和 2,841 Chelsea 21,251 横浜FM 1,961 Manchester U 14,770 G 大阪 1,927 Arsenal 14,352 名古屋 1,770 Liverpool 12,414 鹿島 1,736 Newcastle 9,996 柏 1,693 West Ham 7,066 F 東京 1,680 Tottenham 7,009 川崎 1,639 Aston Villa 6,911 磐田 1,575 Everton 6,148 大宮 1,384 Middlesbrough 6,123 新潟 1,374 Portsmouth 5,902 神戸 1,317 Blackburn 5,874 千葉 1,310 Manchester C 5,821 大分 1,283 Fulham 5,627 清水 1,263 Charlton 5,488 広島 1,236 Bolton 4,914 横浜FC 862 Reading 4,770 甲府 741 Wigan 4,397 Sheffield 3,587 Watford 2,822 ※単位:百万円(1 ポンド 160円として計算) 表2 人件費におけるハーフィンダール指数と上 位5クラブの支配率 2007 HICB(英) 133.1058 HICB(J) 108.6341 C5 index(英) 187.5343 C5 index(J) 133.5387

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い,プレミアリーグと比較した.また,人件 費の均衡度合に関しても,上位5 クラブによる 支配率とハーフィンダール指数を用いて分析し た.  分析の結果,J リーグにおいては,J2 を創設 し昇降格制度を導入した1999 年を境に,成績 の均衡度合が上昇傾向を示していることが明ら かになり,特に近年は均衡度合が高まっている ことがわかった.また,人件費に関しては,J リーグはプレミアリーグと比較して均衡度合が 高いことが明らかになった.  本研究の限界として,競争均衡度合の推移は 計れるが,競争成績均衡度合を高める要因を特 定する事は出来ない事が挙げられる.分析方法 を今後検討していく余地があるだろう.また, リーグ内の競争均衡度合が,観客動員などの需 要面にどのような影響を与えているのかを明ら かにすることも,今後求められるだろう.この 点に関しては,観客数の規定要因を探ったHart et al.11)や河合・平田12)が用いた,従属変数を「観 客動員数」,説明変数を「観客動員数を規定す る変数」と置いた回帰式を応用することで説明 できる可能性があるので,今後の課題としたい. 参 考 文 献

1 )Rottenberg, S.;The Baseball Players' Labor Market, The Journal of Political Economy Vol.64, No.3, pp. 242-258, 1956.

2 )El-Hodiri, M. and Quirk, J.;An economic model of a professional sports league, The Journal of Political Economy, Vol.79, No.6, pp.1302-1319, 1971.

3 )Fort, R. and Quirk, J.;Cross-Subsidization, Incentives and Outcomes in Professional Team Sports Leagues, Journal of Economic Literature, Vol.33, No.3, pp.1265-99. 1995.

4 )Szymanski, S. and Kesenne, S.;Competitive Balance and Gate Revenue Sharing in Team Sports, Journal of Industrial Economics, Vol.52, No.1, pp.165-77, 2004.

5 )Szymanski, S. and Kuyper,T.;Winners & Losers, Penguin Books, pp.157-193, 2000.

6 )内田亮,平田竹男,プロスポーツクラブにお ける成績と選手賃金(推定年俸)の関係-J リー グクラブにおける分析,スポーツ産業学研究, Vol.18, No.1, pp.79-86, 2008.

7 )Brandes and Franck;How Fans May Improve Competitive Balance-An Empirical Analysis of the German Bundesliga, Institute for Strategy and Business Economics University of Zurich, Working Paper, No. 41, 2006.

8 )Michie, J. and Oughton, C.;Competitive Balance in Football:Trends and Effects, Football Governance Research Centre, Research Paper 2004, No. 2, 2004.

9 )2007 年度 J リーグクラブ経営公開資料,http: //www.j-league.or.jp/aboutj/jclub/2007-8/pdf/ club2008.pdf, 2009 年 1 月閲覧.

10)Deloitte and Touche Tohmatsu, Annual Review of

㗅 ૏ ੱઙ⾌(⊖ਁ౞) 1䊘䊮䊄䋽160౞䈪⸘▚ 䂦䋽䊒䊧䊚䉝䊥䊷䉫䉪䊤䊑 䂺䋽J1䉪䊤䊑 図5 2007 年度における,J1 とプレミアリーグの順位と人件費の関係

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Football Finance, 2008.

11)Hart, R. A., et al.;A statistical analysis of association football attendance, Applied Statistics, 24, 1, pp.17-27, 1975.

12)河合慎祐,平田竹男,J リーグの観客数に影響 を与える要因に関する研究,スポーツ産業学 研究,Vol.18, No.2, pp.11-20, 2008.

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