• 検索結果がありません。

利潤率と実質賃金率の動的関係 : 好況過程の分析 のために

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "利潤率と実質賃金率の動的関係 : 好況過程の分析 のために"

Copied!
28
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

利潤率と実質賃金率の動的関係 : 好況過程の分析 のために

著者 浅利 一郎

雑誌名 静岡大学法経研究

42

3‑4

ページ 328‑302

発行年 1994‑03‑08

出版者 静岡大学法経学会

URL http://doi.org/10.14945/00002986

(2)

利潤率 と実質賃金率の動的関係

一一― 好況過程の分析のために 一一―

 

 

 

<目

>

はじめに一―問題の所在

個別資本における利潤率・ 実質賃金率・ 稼働率

社会的総資本における利潤率 と実質賃金率

好況期の利潤率・ 実質賃金率の運動把握をめぐって

1.は

じめに一―問題の所在

利潤率は、一定期間内の経済活動の結果 として取得 した利潤額の総資本に対 する比率であり、個別企業にとって経済活動の成果や資本の効率を評価する最 も基本的な指標である9利潤率は個別企業が直接 コン トロールできる変数では ない。利潤率の分母たる総資本は、生産設備などの固定資本 と生産に必要な原 材料などの流動資本そして雇用労働者へ支払った賃金総額の総計である。それ に対 し、分子の利潤量は生産 した商品がい くらでどの くらい販売されたかに依 存 し、個別企業が営業業務 に力 をいれた として も事後的にのみ売上総額が決 まってはじめて計算・ 把握される

9他

方、一定期間に雇用された労働量に対 し 支払われた貨幣賃金総額を雇用労働量で割った値が貨幣賃金率であり、その貨 幣賃金率で購入できる商品量が実質賃金率である。実質賃金率は、任意の商品 で表すことができるが、国民経済計算上の指標 としては実質賃金率=貨幣賃金 /一般物価水準で定義することができる。労働者は労働組合などをとおして 貨幣賃金率を要求できるとしても、諸商品の価格 を直接決めることはできない ので、個別資本にとっての利潤率 と同様に、労働者にとっても実質賃金率はや

(328)"

(3)

法経研究42巻

304号

(1994年)

はり事後的に与えられる。つまり、利潤率 も実質賃金率 も個別経済主体が決め ることができる変数ではな く、社会的総資本の経済活動の総過程の結果 として 決 まる。個別企業の利潤率は個別利潤率 という点では確かにミクロ的な経済指 標であるが、実質賃金率同様に社会的総資本のマクロ的な諸関係の中でのみそ の水準は与 えられるのである。

一定期間内の社会的総資本の経済活動 を全体 としてマクロ的に把握 した場 合、利潤 と賃金はその期間内に生産された付加価値総額の分配 としてあらわれ る。 このような利潤 と賃金の分配関係は、期間内の関係 としてみると付加価値 総額の分割であるから、一見すると「一方が増大すれ他方は減小する」 という 関係にあるかのように見える。しかし、 これを、あらかじめ与えられた一定の 付加価値額 を2つの部分に分割する単純な関係 として とらえるのは誤 りであ る。利潤 と賃金の分配関係は社会的総資本の総過程 として実現するのであるか ら、数量的な関係を含めて付加価値の生産 と総体的な関係 として分析・ 把握さ れなければならない。

以下では、第 1に 、固定的生産設備 をもつ個別企業を想定して利潤率 と実質 賃金率および稼働率の関係を定式化する。そして、第 2に 、社会的総資本の総 過程を通 して実現される利潤率 と実質賃金率の関係を、最 も基本的な資本蓄積 モデルを設定することにより解明する。第 3に 、筆者は好況期の利潤率 と実質 賃金率の関係・ 運動について既 に論 じた ことがあるが9それに対 し海野八尋 (1994)氏 から批判をいただしてぃる9氏は筆者の議論の結論に基本的には同 意されなが らも、その分析方法に関しては批判的な見解をしめされてお り、 こ の点について筆者の見解を明 らかにする。

2.個別資本 における利潤率 と実質賃金率の関係

いまある個別企業を考え、それを企業 グということにしよう。企業 グはス トッ クとして生産諸設備 を保有 し、それらを用いて生産・販売活動をおこなう。生 産諸設備は機械や建家など種類の異なる諸財からな り、当該期間において企業

′の固定資本を構成する ')議

論を単純化するために、固定資本は生産諸設備の 諸要素のかなり安定 した比率で構成され、かつその比率で生産能力た りうると しよう。すなわち、生産諸設備はそれらのある組合わせで生産に用いられる。

そして、生産諸設備の組合わせの基本ユニットを考えて、そのスカラー倍でも

?

 (327)

(4)

て企業 グの生産能力を定義すると、生産能力は生産設備の基本ユニットの実数 倍 ん で表すことができる。

企業 グは一定期間 (例えば、1年)に生産能力 κ を用いて、企業 グの生産 物をχ単位を生産 した としよう。企業 グはこの期間内に、る の生産のために原 材料 として第 ノ財をzJ・単位購入かつ投入 し(ノ=1,¨0,解)、労働 をニグ単位雇用 する。企業 グの生産活動を概念化すると図1である。

1:企

業 ′の生産活動の基本図式

図 1は 、固定的生産設備を含む生産プロセスの簡略な図式であり、問題はこの ような生産活動をおこならた企業 グの利潤率である。利潤率の計算のためには、

その定義にしたがつて、当該期間内の企業 グの利潤額 と総資本額を求めなけれ ばならない。ところが、企業 グは、利潤額や総資本額を計算する際の基本情報で ある諸財の価格や貨幣賃金率を自らが決めることはできず、また企業 グが独占 企業でないかぎり企業 グは生産物価格 も直接決定することはできない。 これら の価格は、はじめに述べたように社会的総資本の蓄積過程の結果 として事後的 に決 まるのであり、その限 りでは個別企業の利潤率 も同様である。

個別企業 グの利潤率は社会的総資本の総過程の結果 として事後的に決 まる。

しか し、企業 グの意志決定や生産行動がその利潤率にたいし何の影響 もないか というと決 してそうではない。利潤率に影響する最 も重要な企業 グの意志決定 は、ス トックとして保有する生産能力 る の稼働 と生産量にかんするそれであ る。

そこで、この点を見るために利潤率の定義式を考察 しよう。生産物価格を夕J,

原材料価格 を島,貨幣賃金率を ω、生産設備の基本ユニットあた りの原価償却 費 と維持費の合計を κ′とすると、企業 グの利潤額 Π′は、

企業 ′:

κ ,

(生産能力)

ZJ・J (ノ=1,¨

,2),  

  

一一一一→

(原材料投入

)  (雇

用労働量)

χ (生産量)

(326)55

(5)

法経研究42巻

304号

(1994年)

Π′=夕為 ― ヽ卜、十ωιJ)一t,(ノ=1,¨0,解)

それに対 し、当該期の総資本 は、流動資本′乃Dと雇用労働量 に支払 う賃金 総額("ι)、 お よび生産能力 る の評価額である固定資本の合計である。そこで、

生産設備 の基本 ユニ ッ トの評価値 を夕履とすると生産能力 る の評価額 は,″κ であるか ら、総資本 ηは次のように計算 され る。

η=夕氏 十Σ」島場Jtt ωιJ

したがって、(2.1)式(2.2)式よ り利潤率 はヽ

2   = タゴκ ― 〃影滉+"ι)一z2・κJ

夕々メリリ十ωL′ … … … …… …… (2.3) 利潤率の定義式(2.3)において、諸価格 (夕,ん)の水準は社会的総資本の総 過程の結果 として市場で決められる。また生産設備の基本ユニットの評価値 夕滋

と固定資本 コス トκゴは、企業 グが決算の時に独自判断で決めるとしても、多か れ少なかれそれらの実勢価格に依存する。利潤率の定義式(2.3)から諸価格の偏 微分係数の符号を見ると以下である。

新 >0,券<0:げ =lr¨ ,a

券 <0,新 <0,券

<0

これ より、比較静学的な意味で「生産物価格 夕′が高いほ ど利潤率 角は高 く、原 材料価格 島・生産設備の基本ユニ ッ トの評価値 夕たJ・貨幣賃金率

"・固定資本 コ ス トχ′は、それぞれが高いほ ど利潤率 ηは低い」ことが明かである。また、(2.3) 式の右辺の分子分母 を生産物価格 夕がでわって利潤率 角を相対価格 で表現 す る

と、利潤率 場にかんす る企業 グの生産物で表 した実質賃金率 ω′

="/タ

の偏微 分係数 も負にな り、実質賃金率 ω′が高いほ ど利潤率4は低 い ことがわかる。し か し、企業 グに とって諸価格 (′J,2,紗)の水準 したがってまた実質賃金率の水 準 は、社会的総資本の総過程 の結果 として事後的に市場で決め られ る変数であ

る。

他方、利潤率の定義式(2.3)において、企業 ′が独 自の判断で決めるのは図1 (325)

(6)

利潤率と実質賃金率の動的関係 の基本図式にしめされる生産活動にかかわる、生産能力

4に

たいする生産量 ,購入原材料zJ・

"雇

用労働量 ι′の決定である。そこで、κ

,る

,zJ・ぉ ιJの

間の関係を考察 しよう。この点に関連 して注意する必要があることは、る と場,

ニグの関係はフロー量の間の関係であるのに対 し、

4は

ス トックであるというこ とである。まず最初にフロー量間の関係については、企業 グの生産物1単位を生 産するのに必要な原材料および労働量は一定で、かつ 場およびZJは生産量 馬 に比例するとしよう。すなわち、生産技術のフロー量間の関係を固定技術係数 であらわして、原材料 としての各財の投入係数 と労働投入係数を次のように書

くことができる。

… ¨… … 。(2.4)

労働投入係数

,const.・…・::.…………(2.5) 次 に、ス トックとしての生産能力 る と生産量 る の関係 を見 ると、それをフロー 量の間の関係のように互 いに比例的な もの とすることはで きない。なぜなら、

企業 グに とって生産能力 ん はス トック として当該期間内 は一定であるのに対 し、それを用いて生産す る生産量 為 は企業 グが決めることがで きる変数だか ら である。企業 グは生産物 に対す る需要予測 にしたがって、生産能力 ん の もとで 生産量 を増加 させた り縮小 させた りす ることがで きる。需要の拡大が見込めな い ときには生産能力 る の一部 を遊休 させ生産量 を抑 える。反対 に需要拡大期 に は、残業 な どによ り生産能力 る の標準的な利用 を超 えて生産量 を拡大 させ るこ とがで きる。そこで、企業 グが期間中に生産能力 ろ を標準的に稼働する時の標 準生産量 を χtとす る と、生産能力 る の標準産 出係数 を次の ように定義で き

る。

標準産出係数

2・:/る ,const.

生産能力 馬 をもちいて生産 した実際の生産量 為 は、標準生産量 χlにたいす る比率 を稼働率 めとして次のように表す ことにしよう。

稼働率

   : c=為 /Xt  

………(2.7) したがって、生産能力 る と実際の生産量 χ の関係 は(2.6)式(2.7)式よ り、

(324) 57

(7)

法経研究42巻

304号

(1994年)

=幾 #氏 =à… ……… …鬱D

となり、生産能力 馬 のもとでの企業 グの生産量の決定は稼働率 らの決定の問題 として処理することかできる。生産量の決定の問題 を稼働率の決定の問題 とし て処理することにより、企業 グが当該期間内に需要の状態に応 じて何回 も生産 量の調整を行 うという企業行動を描 きだすことが可能になる。たとえば、当初 の市場の需要見込みが予想 したより少なかった場合、企業 ′は当該期間をとお して過剰製品在庫がでないように生産量を調整 し、生産量=販売量を実現 しよ うとする。期間内の需要の伸びが当初見込みを上回る場合には、企業 ′は期間途 中に生産計画を上方修正 し、当初計画に比 して稼働率を上げ生産量を増やす。

利潤率の定義式(2.3)では、企業 グの生産量 るが全て売れた として利潤率を計 算 しているが、 ここでは以上のような企業行動を想定 している9

企業 ′の生産量決定に関する考察を基礎に、 もう一度利潤率の議論に戻 ると

(2.4)、 (2.5)、 (2.8)式を利用して利潤率の定義式(2.3)を次のように書 き換 え

ることができる。

=      

20

(2.9)式で らの偏微分係数を調べれば明らかに名 /Jあ>0であり、比較静学 的意味で、「高い稼働率 あには高い利潤率 綺が対応する」。ここで比較静学的と いうのは、条件を一定にして同じ生産能力に対し異なる稼働率で操業する2つ のケースの比較をおこなうという意味である。(2.9)式の表現で稼働率 金が直 接入っている項は次の2個所であるから、「高い稼働率には高い利潤率が対応す る」理由も次の2つとなる。第1に(2.9)式の分子第 2項 の中括弧{(Σれの+

"み)一χゴ/島 ●2・}は生産物 1単位の費用=単位費用である。この単位費用の表現 から明らかなように高い稼働率aに応じて生産物 1単位当たりの固定費 J/

めの は小さくなる。その結果として低い単位費用は単位当たり利潤額を増大さ せることにより高い利潤率に対応する。第2に、分母の第 1項(九J/Ca2・)は 産物 1単位あたりの固定資本であり、固定資本の生産効率の逆数である。(2.8) 式より、あの/九J=為/夕んであるから、これは当該期間中一定の固定資本夕々 氏がいくらの生産物数量を生産するために用いられたかをあらわす。そこで固 定資本の生産効率aJ2・/九を固定資本の回転 とみなすと、稼働率の上昇は固定 資本の回転数を上昇させ(したがつて、その逆数は小さくなり)、 利潤率を高め 58(323)

(8)

る方向に作用す るg)

企業 ′の生産活動 において貨幣賃金率

"は

生産開始 にあたって労働者 を雇 用す る時点ではわかっているが、生産物価格 は事後的に社会的総資本の総過程 の結果 として決 まる。個別企業の利潤率 は社会的総資本の総過程の結果 として 諸価格 とともに決 ま り、それゆえ(2.9)式の関係 において稼働率、相対価格 と実 質賃金率、利潤率 は当該期間内の結果 としてワンセ ッ トである。 とりわけ利潤 率の水準 の決定 に とって重要な相対価格 と実質賃金率 は、社会的総資本 の再生 産・ 蓄積過程のなかでは、市場 における諸個別資本の生産量決定=供給 と諸個 別資本の資本蓄積=需要 に関連 している。節 をあらためて社会的総資本の総過 程の中での利潤率 と実質賃金率お よび稼働率の関係 を考察 しよう。

3。 社会 的総 資本 お け る利 潤 率 と実質 賃 金率

個別企業 レベルの生産量 (稼働率)と利潤率お よび実質賃金率の関係 にかん す る前節の考察 をふ まえて、社会的総資本の再生産過程の もとで利潤率 を規定 す る要因 を考察 よう。 そのために、社会的総資本の資本蓄積モデル を構築 し、

´総資本の利潤率の規定要因 を分析す る。

総資本の利潤率 は個別資本の利潤率 と同様 に、社会的総資本の総過程の結果 として、当該期の相対価格 と実質賃金率 とともにその水準が同時 に決 まる。 こ こでは、需給関係 を明示的に導入 した社会的総資本の一部門集計モデル を構築 す る。需給関係 を明示的 に導入 した資本蓄積モデルであるとはいえ、一部門集 計モデルではその考察範囲か ら価格関係が事実上抜 け落 ちる。あるいは、価格 の問題 は後述するように、実質賃金率の決定の問題 に限定 されて しまう。 しか し、考察対象 を社会的総資本の需要供給 と利潤率0実質賃金率の関係 に限定す るな らば、一部門集計モデルによる考察 は、それが社会的総資本の蓄積過程の 一側面の分析である限 り理論的に有効 な第一次接近である。

3‑1 

社会的総資本の資本蓄積の基本モデル

本稿の資本蓄積 モデルは次の前提 の もとで構築 され る。

前提

1:生

産物 は消費財 として も生産財 として も用い られ る。1部門モデル。

前提

2:労

働者 は期首 に貨幣賃金 を受取 り、期末 に消費財 の購入 にその全てを

(322)″

(9)

法経研究42巻

304号

(1994年)

支出する。すなわち労働者は貯蓄をしない。資本家の消費は捨象する。

前提

3:資

本は固定生産設備をもち、原材料などの流動生産財を購入 し労働者 を雇用 して生産をおこなう。以下ではス トックとして当該期 に資本が 保有する固定生産設備を生産能力 という。

前提

4:考

察対象の期間にわたって固定生産設備=生産能力の廃棄はないもの とする,)

なお、生産能力 ん 、標準生産量 χt、 現実生産量 ん の生産能力の稼働にかか わる関係、および現実生産量 為、流動生産財 4、 雇用労働量 ιιのあいだの生 産技術にかんする関係を以下のように定義 してお く。

=C̀

ただ し、ぁ

=為

tは稼働率、σt/氏 (const。)は標準生産係数である。

また、

4=2る

,流動生産財投入係数 物 はconst.

ιι

=JXJ,労

働投入係数 ′は const.・・………。(3.3)

 生産 と供給 資本は貨幣賃金率

"′を与件 として期待利潤率 を実現 しうる生産物価格 ρ

設定して、生産能力 ん の稼働 と生産量 為 を決定する。生産量 ん の決定は同時̀を

に、る の生産のために必要な原材料等の流動生産財

4の

購入 と貨幣賃金率 紗ι での必要労働量 二ιの雇用についての決定を含んでいる。

したがつて、社会的資本の生産 と供給は次のように表すことができる。

総資本の生産

,4,ιι  

市場への供給

ρ

̀χ

 市場の総需要

資本の生産活動にかかわ り派生する需要は、市場における需要価格 をタザとし て流動生産財の補填需要 タカに と賃金の支払 を受 けた労働者の消費需要 ω′ι′

である。 この他に市場の重要な需要項 目として資本蓄積にかかわる投資需要ま たは蓄積需要がある。いま資本が新規に購入 しようとする固定生産設備=生

"(321)

(10)

能力の増加分 を みとすると、蓄積需要 はρゴムである。 したがって、市場の総需 要 は次の ようになる。

市場 の総需要

"‰

+物L′+タザム

 

市場価格

生産物市場で事前の供給①と事前の需要②は一致しているとは限らない。

(事

)    (供

)    (需

) 生産物市場

 : 

ρ

̀為

≠ タブ」に 十

ι

̀十タブ鳥

生産物市場 は超過供給 の場合 もあれば、超過需要の場合 もあ りうる。超過供 給の場合、本稿 の資本蓄積モデルでは企業が期間中に生産能力の稼働 を調整 し 需要 に対応す る生産量 を市場 に供給す る。このような供給側の調整 を とお して、

市場では需要 と供給が一致す る市場価格 が需要側 の主導 によ リタι=タザとして 決 まる。市場が事前的関係 において超過供給であるとい うことは、経済全体が 好景気の状態 にない とい うことを意味す る。 このような場合、市場価格 は需要 側の力 によ り決 ま り、その水準 は、資本が投資需要 を計画す る時 に想定 した価 格 タブまたはそれ よ り低い価格水準 になる。ここでは、超過供給の場合の こうし た市場の価格調整 を想定 して、需給 を一致 させ る市場価格 は夕ι=タに決 まると

している。

それに対 し、経済全体が好景気の状態 にあ り事前的関係 において市場が超過 需要の場合 には、市場価格 は上昇 しはじめる。市場価格の上昇 は、需要側 に再 調整 を強いる。前提 によ り労働者 はその賃金所得 ωιι′を消費財の購入 に全て支 出する。また、資本 は価格が上昇 して も流動生産財

%の

補填 を再生産続行 のた めにお こな う。問題 は蓄積需要である。市場価格の上昇 は資本 に投資計画の再 検討 をせ まる。 ある企業 に とって市場価格の上昇 は、その投資資金のファイナ ンスを困難 にさせ当初の投資計画 を縮小 させ る要因になる。他の企業 にとって は、市場の超過需要状態 と市場価格 の上昇 は当該企業の生産物への需要の一層 の拡大であると判断 して、投資計画 を拡大修正する。 こうして企業の投資計画 の変更が需要側の調整 の主要なファクターになるが、本稿では、価格が上昇 し て も社会的総資本全体の投資 はその まま実行 され ると想定す る。 こうした調整

(320)α

(11)

法経研究42巻

304号

(1994年)

を経て市場では供給 と需要が一致す る市場価格が成立する。

本稿 の資本蓄積モデルでは、いずれの場合 も事後的には需要 と供給 を一致 さ せ る市場価格が成立す る。すなわち、

(事)    (供 )    (需 )

生産物市場 :  タサ =夕ι4+"工ι+夕

 U潤率 と実質賃金率

(3.4)式は直接的には生産物市場の需給一致をあらわすが、本稿の資本蓄積モ デルでは、貨幣賃金率 紗ιを与件 として生産量 馬 と投資計画 為かきまった時の 市場価格 ριの決定式である。当該期の貨幣賃金率

にたいして市場価格 夕ιがき まると実質賃金率 ω,と利潤率 角が同時に決 まる。

すなわち、利潤率 4は 当該期の総資本にたいする利潤量の比率であるから、

=

ただ し、(3.5)式でμは生産能力の基本ユニ ッ

のための実質 コス トであ リー定 とす る<1, 卜当た りの減価償却 お よび維持

const。)。他方、実質賃金率ωιは、

実質賃金率は定義により(3。6)式であり、これを生産物市場の需給一致をあら わす(3.4)式との関係でみると、(3.4)式では貨幣賃金率 場を与件 として生産量 る と投資計画 んかきまった時の市場価格 夕ιの決定式であるから、実質賃金率は 事実上、生産物市場の諸関係で決 まると見 ることができる

9言

い換 えると、

(3.4)式および(3.6)式において、実質賃金率は社会的総資本の生産量 る と投資 計画 ムが決定されるとそれらに従属的にその水準が決 まる,の

3‑2  分析

1‑一

一期間内の関係

(3.4)式(3.5)式を、(3.1)〜 (3.3)お よび(3.6)を用いて整理すると、

6t6: m6rc*

ra.rl6rc* g,

ω

̀=サ

=」

デイ甥冠吾華晋霊競子

(319)

(12)

ただし、

gt=4/ん

であり社会的総資本の蓄積率である。

(3.7)式は ′期の生産物市場の需給一致をあらわし、当該期の稼働率Qと 積率gtが決 まった ときの実質賃金率 ωιの決定式である。それに対 し(3.8)式は、

当該期の稼働率 あと(3.7)式から決 まる実質賃金率 ωιにより利潤率 角が決定さ れることを意味 している。別稿では稼働率 あと蓄積率&の決定について資本稼 働率決定態度 と蓄積率決定態度の問題 として論 じたが,。ここでは あと&に する ω

̀と 場の期間内の関係を(3.7)式(3.8)式を中心に見ていこう。

最初に(3.7)式を取 り上げる。(3.7)式は、生産量(稼働率)が決 まったとき、

蓄積需要 (蓄積率)の大 きさによって生産物市場で需給を一致させるような、

貨幣賃金率にたいする市場価格が、 したがって実質賃金率が決まることを意味 する。 この関係をグラフに描いのが図 2の「g一ω直線」である。(3.7)式を変 形すると、

&=一

れσ

̀一

(1‑%)/′

}

であるか ら、g― ω直線 の横軸 の切片

OBの

横 座標 は (1‑2)/Jであ り

Bは

定点 となる。他方、縦軸の切片

04の

縦座標 は あσ

(1‑%)で

ある か ら、′期 の稼働率aの大 きさによ り

4の

位置が きまり、′期の g― ω直 線が確定す る。′期 の稼働率 めに対応 す るg一 ω直線 が 図2の位 置 にあ る とす ると、今期の総資本の蓄積率&が

決 まれば、生産物市場 において需要 と 供給 を一 致 させ る水準 に実質 賃 金率

Qが

決 まる。

次 に、(3.8)式をグラフに表 したのが 3の「 ″―ω 曲線」であるg幼′期の稼

2:g̲ω

直線

働率 あの大 きさが決 まると、(3.8)式よ り γ一ω 曲線の位置が決 まる。この関係 を見 るために、(3.8)式において縦軸の切片である ωι

=0の

時の ′期 の最大利 潤率 ″χと、横軸の切片である 特

=0の

時の ′期 の最大実質賃金率 ω rα″を求 めてみよう。

(318)ω

(13)

法経研究42巻

304号

(1994年)

(3.8)式 で

Q=0と

す る と、

マα

=¥一     

0

同様に(3.8)式

4=0と

して ω′αχをもとめると、

ω rα

=VT命

(3.10),(3.11)式 より、′期の稼働率 あが決 まるとγ―ω曲線の位置が確定する ことがわかる。また、(3.10),(3.11)式 は、稼働率 あが どんなに大 きくても″―

ω曲線には上限があることも意味している。すなわち、(3.10)と (3.11)式より、

 

 +∞

 +∞

ryo* + rt,ax- (t-rn),/m

ω rαχ

 

 

ω ttαχ

=(1 %)/′

′期の稼働率に対 して ″―ω曲線が図 3の 位置にあるとすると、図 2に より

′期 の蓄積率&に対 して決 まる ω′ 対応 して、図 3に Qをとると″一ω 曲 線から′期の利潤率 角が決定する。

(3.7),(3.8)式 に関す る以上の考察 は、′期の期間内の関係 として利潤率 を決定する関係 を見た ものである。′

期 の資本 の稼働率 めと蓄積率&に して市場は市場価格を決定 し、それに より、一組の (ω t,得)が決 まる。比較 静学的意味で、高い稼働率 あには、高

3:r―ω曲線

い位置のg一ω直線 と高い位置の ″―ω曲線が対応することは(3.9)式および (3.10),(3.11)式から明かである。しかし、本稿の資本蓄積モデルでは、(3.7), (3.8)式は各期間において成 り立つ関係である。(3.7)式は生産物市場の市場調 整 と需給一致による市場価格の決定を表 してお り、各期において事後的に成立 する関係である。また(3.8)式は各期において(3.7)式により決 まる市場価格に 対する(貨幣賃金率を与件 として)不U潤率の計算式である。 したがって、(3.7), α (31つ

の とき

の とき

(14)

利潤率と実質賃金率の動的関係 (3.8)式は、社会的総資本の蓄積過程における稼働率 と蓄積率の期間を越 えての 変動が利潤率 と実質賃金率の運動にどのような影響 を与えるかを分析すること を可能にしている。

3‑3  分析2‑一一 動学的関係

′期には、社会的総資本が決定 した稼働率aと蓄積率&に対 し市場の需要供 給関係をとおして実質賃金率 ωιと利潤率 釣が決 まることはすでにみた通 りで ある。次期 (′

+1期

)にはいると資本は、′期の市場の状況 と利潤率 角の水準 を判断の基礎にして ′+1期の稼働率a+1と蓄積率 &+1を 決める。そして、′十 1期にも(3.7),(3.8)式の関係 により′+1期の実質賃金率 ω絆1と利潤率 角+1

が決 まる。それでは、稼働率が ′期の 心から ′

+1期

には あ+1に変化 し、また蓄 積率が ′期の農から′+1期には&+1に 変化 した とき、′期から ′

+1期

にかけ て実質賃金率 と利潤率はどのよう動 くだろうか。

そこで、実質賃金率の決定式たる(3.7)を変形 して、

η=望F撃甥 冠デ華響霊競ン

この両式 を基礎 に、′期 の稼働率 あと蓄積&から ′+1期にそれぞれが変化 し た ときの利潤率 ″と実質賃金率の変化 を調べ るために、分析の便宜上、時間 ′ にかんする連続分析 に組かえて(3.12),(3.8)式 を時間 ′に関 して微分 してみ よ

'0(3.12)式

,(3.8)式をそれぞれ次の一般関数形式であ らわ し時間 ′で微分 す る。

ὼ=λ(a,&) η=/(ωι,a)

ただし、あと/は(3.12),(3.8)式 の関数記号である。上2式 を時間 ′で微分し て、

ωδ δ

+4g

″=ん あ十九 δ

(316)

(15)

法経研究42巻

304号

(1994年)

ただし、力δ,4はそれぞれ(3.12)式の δ,gにかんする偏微分係数、,/δ

(3.8)式の ωにかんする偏微分係数である。また、上付きドットは微分演算 子 ″

/″

で各変数の時間にかんする微分をあらわす。これをω と″について 解いて、

ωδ δ

+4g

γ=ん δ δ+4g)+ん δ

これ よ り、 ω と

ι

=響

意弓争 )=

″を(3.12),(3.8)よ り実際に求 めると、

両式の分母は正だから(3.13),(3.14)式 より時間を通 してのQと 角の運動は、

堪 妻に従って、実質賃金率 ωιは 上昇・ 不変・ 低下、

(1+η)一角語 姜に従って、利潤率 角は上昇・ 不変・ 低下。

とくに、利潤率 角は稼働率 と蓄積率の変化だけでな くその時点の利潤率の高さ 角にも依存 していることに注意する必要がある。そこで、社会的総資本の資本蓄 積 を考えて δ

>0,g>0の

局面に分析 を限定 して、時間を通 しての ωιと為の運 動をまとめると次のようになる。

Φ

=a/a,Ψ

=g/δ=晩

/(1+η

)とお くと、(3.8),(3.12)式 より、Φ

>

Ωであるか ら10δ>0、 g>0に限つて見 ると次の3ケースがあ り、(3.13), (3.14)式よりそれぞれのケースで利潤率 と実質賃金率の変動方向がわかる。

 Ψ≧Φ>Ω のとき、″>o,ωすなわち、利潤率は上昇、実質賃金率 は低下 または不変 (等)。

 Φ のとき、グ>0,ω >0  すなわち、利潤率・実質賃金率 ともに

(315)

(16)

上昇。

 Φ>Ω ≧Ψ のとき、″≦0,ω>0  すなわち、利潤率は低下または不変(等 )、 実質賃金率は上昇。

以上を図解すると図4である。

′期の稼働率 めに対応する(3.9)式g―ω直線が上図の直線ABである。ま

た、あに対 して決 まる(3.8)式の ″一ω 曲線を下図の曲線 abと する。このとき、

′期の蓄積率&が決 まると、(3.9),(3.8)式 によって決定 される ω,と 略が図の ように示 され る。次 に、′+1期にか け

て、総資本が稼働率 あ+1を上 げた とす る。稼働率 δの上昇 は(3.9)式よ りわ か るように ′+1期の g一 ω直線 を上 方へ押 しあげ、上図の直線A'Bの位置 になった とす る。また、′+1期の ″―

ω 曲線 は(3.10),(3,11)式 に示 され る ように、′

+1期

の稼働率 あ+1の上昇 に ともない上 方 にシフ トし下 図 の曲線 ab'に 移動する。

さて、そこで稼働率の上昇率が図で は、 どのよう表せ るか考 えよう。

(3.9)式より、g一 ω直線の縦軸の切片 の高 さは (1‑π )であるか ら、

04=ら

σ(1‑%) 04'=あ+lσ (1‑%)

とな り、′期か ら ′

+1期

にか けて稼働 率の変化率(あ+1‑a)/れは、図中の記

号 で、

a+1‑a̲И

F̲EF

a  以 cE

4:rとωの変化

(314) 67

(17)

法経研究42巻

304号

(1994年)

それに対 して蓄積率が ′期の&(=CE)から′

+1期

に上昇 してg件1になった として、gt.1がCFよ リイヽさければ に

F>&+1>&=CE)、

EF=CF一CE>

&+1 &であるから、蓄積率の変化率 (&+1 &)/&は

へ計

=器

>t計

となり、蓄積率の変化率(&+1‑&)/gtは稼働率の変化率(あ+1‑あ)/ぁより小 さく、実質賃金率 ω は ′期から′+1期にかけて上昇する。また、&+1が CFよ

り大 きければ

(&+1>CF>&=CE)、

&+1に たいして ′

+1期

g―ω直線から 決 まるQ+1は′期の ωιよ り低下する。図4上図 にしめされ るこの関係 は、

(3.13)式で 甚 ―甚 姜0に 応じて あ 姜0と同値である。

次 に、′期の稼働率aに比 して上昇 した ′

+1期

の稼働率 あ+1に対応す る ′十 1期の ″―ω 曲線の位置 を調べ よう。既 に述べた ように、′期の ″一ω 曲線 に く らべて ′+1期の ″―ω 曲線 は上方にシフ トしているが、 どこまで シフ トして いると考 ぇられるのだろうか。 まず、図4上図の ′+1期の g一 ω直線 の もと で、′+1期&+1が ′期 の&に等 し く変化 しなかった とす ると、(3.14)式にお いてg=0,δ >0,特

>0,σ >0よ

り ″

<0と

な り、′

+1期

の禾U潤率 毎1は

′期の 特に較べて低下す る。この関係が、図4下図の曲線av上の点gであ らわ

されてお り、これが ′+1期の ″一ω 曲線の位置関係 を示 している。そこで、今 度 は逆 に曲線a'b'上で ′+1期の利潤率 毎1が前期 と同 じ水準 にある点 をみ る と点hである。 この ときの実質賃金率 ω に対応す る ′

+1期

の g一 ω直線 (直 A'B)上の点 をとると点Hである。 したがって、先の利潤率 と実質賃金率の 動向にかんする3つのケースは、次のように図4の関係 に対応 していることが わかる。

 

Ψ≧Φ

 

のとき、γ>0,あすなわち、利潤率は上昇、実質賃金率 は低下または不変(等)。

 

 

図4の A'B直 線上のA'Fの時。点 Fを 含む。

 

Φ>Ψ

 

のとき、″>0,ω

>0 

すなわち、利潤率・実質賃金率ともに

上昇。

 

4の A'B直線上のFHの時。

 

Φ≧Ψ

 

のとき、″≦0,ω

>0 

すなわち、利潤率は低下または不変(等

)、 実質賃金率は上昇。

 

4の A'B直 線上のHGの時。点Hを含む。

(313)

(18)

利潤率と実質賃金率の動的関係

4.好

況期の利潤率 と実質賃金率の運動 把握 をめ ぐって

筆者は、前節で議論 してきた利潤率 と実質賃金率の動学的な関係の把握を基 礎に、好況期の資本蓄積の過程における利潤率 と実質賃金率の運動を考察 した

ことがあるgo最初に簡単に筆者の考え方を要約 しておこう。

4‑1  好況期の資本蓄積 と利潤率・ 実質賃金率の運動

不況を脱 してようや く市場の回復がはじまる好況前期には、個別資本は生産 能力の遊体 をかかえ、利潤率 もまだ低水準にある。好況前期は、利潤率 も稼働 率 も回復 しつつあるとはいえ低稼働率・ 低蓄積率によって特徴づけることがで きる。市場において需要の回復がはじまり、個別資本は他の企業に回復 しつつ ある需要を奪われないために、遊体 している生産能力を稼働 させ市場に供給を おこないはじめる。市場の継続的な拡大は、資本の蓄積需要の本格化をまたな ければならないが、蓄積率 もゆっくりと上昇 しはじめる。市場における需要の 拡大が堅調なもの と判断されるようになると、市場の獲得をめぐる個別資本間 の競争 も一層激烈になる。個別資本は低稼働率にある生産能力利用を急速に高 め、他方で生産能力の整備のために投資をしはじめる。好況前期の低利潤率の もとで、稼働率の上昇率が蓄積率の増加率を上回わるならば、前節で分析 した ケース②の状況が生 じる。個別資本における低稼働率からの回復は、すでにみ たように生産能力の利用を高めることにより、第 1に 生産物1単位当た りの費 用を低下させることにより、第 2に 総資本の回転をを高め りことにより個別資 本の利潤率の上昇要因になる。 もちろん、稼働率の上昇にともなう生産量の拡 大は、市場における需要の回復に対応 していなければない。市場における需要 の拡大に支えられた稼働率の上昇 と蓄積率の回復は、好況前期の資本蓄積のひ

とつのパターンとして利潤率の上昇 と実質賃金率の上昇を出現させる。

資本蓄積が進展 し利潤率がある水準を越 えると好況期の資本蓄積 も本格化す る。 この段階にはいると、個別資本の生産能力の稼働率には技術的・経営的に 上限があるために稼働率はその上限に近づき、その上昇率を鈍化させる。稼働 率がその上限に近づ くと個別資本は生産能力の一層の拡充のための投資をおこ ない、蓄積率はより上昇する。稼働率が上限に近づ くにしたがって、前節の図 3に 示 した γ一ω曲線の上方シフ トもとまり利潤率 と実質賃金率の同時上昇

(312)″

(19)

法経研究42巻

304号

(1994年)

の局面は終わる。その結果、稼働率の上昇は鈍化・ 低下 し、蓄積率の上昇はそ れを上回るようにな り、資本蓄積がこの局面にはいると利潤率の上昇には実質 賃金率の低下が ともなう。市場の需給状態を反映する市場価格の上昇は貨幣賃 金率の上昇をうわまわ り利潤率の上昇には確実に実質賃金率の低下が ともなう

ようになる。 こうして社会的総資本の資本蓄積は好況後期の局面にはいる。

もちろん、以上は好況期の資本蓄積の展開にともなう利潤率 と実質賃金率、

稼働率 と蓄積率の運動の素描であり、社会的総資本の資本蓄積過程で利潤率や 実質賃金率がどのように動 くかは、市場における諸資本の競争圧力 と資本の稼 働率決定態度・ 蓄積率決定態度に依存 している。好況期の資本蓄積の進展 と、

資本の稼働率決定態度・ 蓄積率決定態度を想定 した好況期の利潤率・ 実質賃金 率の動学的展開については浅利 〔1990〕 を参照 してもらいたい。

4‑2  海野八尋の批判

海野は筆者の利潤率 と実質賃金率の間の動学的関係の分析 と好況期の資本蓄 積の動向の考察について次のように言 う。「 この見解は稼働率上昇による利潤率 上昇、実質賃金率上昇の共存の可能性の指摘 という限 りでは妥当である。より 具体的に資本主義的蓄積、好況局面の分析を行 う場合 この可能性が理論的にも 確認されるべきである。 しかし、浅利のこの主張の展開過程は先に見たように 正 しくない。浅利において上述の論点を導 くための利潤率、実質賃金率 と稼働 率の関係は恒等式の書換えによって置き換 えられた決定関係式上で説明されて いる。 しかし、浅利の主張の上で重要な比重を占めている稼働率は元の恒等式 で示されているように本来利潤率、実質賃金率の規定要因ではない。それは式 の書換えによって形式的に現れたにすぎず、浅利はその形式的な表現を決定関 係の表現 とした。その取替 えにもかかわらず、稼働率上昇による費用の低下が 好況時の利潤率上昇 と実質賃金率上昇 を共存 させ得 るという指摘 自体 は正 し い。 この正 しい結論 はしか し浅利のように説明 されるべ きではなかった。」

(pp.13‑14)(16)

海野の「浅利 の この主張の展開過程 は先 に見た ように正 しくない」 とい う批 判のポイン トは主 に以下 ある。それ らに対す る反論 を述べ る前 に、本稿 の記号

と式 を用いて海野の批判 を要約 してお こう。

前節でみたように、本稿 の資本蓄積 モデルの基本式 は(3.4),(3.5),(3.6)式 ある。それ らをもう一度書 くと、

η (311)

(20)

(生産物市場の需給一致)

ρι=夕ι″″+紗工′+タ (利潤率)

=

(実質賃金率)

Q=サ

4=⊇F華:f華晋 豊 鏡 子

上記3式の決定関係はすでに詳 しく述べたように、′期の貨幣賃金率 を与件 と して、(3.4)式は資本の生産量 る と資本蓄積 んが決 まった ときの ′期の市場価 格が需給を一致させる水準に決 まることをあらわす。(3.5)式は、その市場価格 と貨幣賃金率にたいする利潤率の計算式である。また(3.6)式は ′期の貨幣賃金 率 と(3.4)式で決 まる ′期の市場価格による実質賃金率の定義式である。本稿で はこの3式を、分析の便宜上次の2式に還元 した。すなわち、

6ro: mBtc*

oilfito*

gt

海野の批判の第1点は、(3.7)式は生産物市場の需給一致 を表す「恒等式」だか らそれ を変形 して(3.12)式の ような実質賃金率 の決定式 とす ることはで きな い、 とい うものである。 また、前稿でお こなったように1の (3.7)式か らもとめ (3.12)式(3.8)式に代入 し整理す ると、

=

となるが、 この式 も(3.7)式の「恒等式」 を変形 して(3.8)に代入 した ものであ るか ら利潤率の決定式 とす ることは誤 りである、 とい う。

1の批判 の系 として次の問題提出をお こなう。海野 によれば、生産物市場 の需給一致 をあらわすにす ぎない「恒等式」(3.7)式を書換 えて もとめた ηにか んす る(4.1)式では研U潤率 ″は蓄積率g、 滞貨率sの増加関数、稼働率 δの減 少関数 に見 える。」 それに対 し利潤率の定義・計算式(3.8)式では「利潤率 ″は

(310)π

(21)

法経研究42巻

304号

(1994年)

常 に稼働率の増加関数」である。「いったい どち らが正 しいのであろうか。 (3.8)式では、「見掛 け上稼働率増加 に対 し、利潤率 は増加す るように見 える が」「 これは見掛 け上の ことにすぎない。」「設定 されたモデル、条件 において稼 働率 は利潤率、実質賃金率の積極的規定要因ではない、 といわなければならな い。」「恒等式(II‑1)式 (本稿の(3.7)式に相当)から実質賃金率 に関す る(II一

5)(本稿 の(3.12)式に相当)、 利潤率に関する (Ⅱ‑11)式 (本稿 の(4.1)式 相 当)を導 出 し、 これ を決定 関係 として扱 うこ とは誤 りで あ る。」(以上、

pp.10‑11)

4‑3 

利潤率・ 実質賃金率 にかんする比較静学分析 と動学分析

海野 の批判 に対す る筆者 の見解 は第2節および第3節で基本的には示 してい ると考 えるが、海野の誤解が どこにあるのかを明確 にすために必要な限 りで議 論 を深 めよう。

最初 に利潤率 と稼働率の関係 の問題か ら取 り上 げると、利潤率の定義式であ り計算式である(3.8)式では利潤率 は稼働率の増加関数であるのに対 し、(4.1) 式では利潤率 は稼働率の減少関数である。それでは「 どち らが正 しいのか」 と 海野 は間 う。 これについては「 どち らが正 しいのか」 と問 うこと自体が誤解 に もとづいている。すなわち、(3.8)式において勝U潤rは常 に稼働率の増加関 数」であると言 うことは、利潤率の計算式 としての(3.8)式で稼働率 δにかんす る比較静学分析 をこなうことを意味 している。すなわち、この表現 は(3.8)式 偏微分 してその偏微分係数の符号がマイナスであるとい うことをいっていると 考 えることがで きる。そして、(3.8)式の稼働率 δの比較静学的理解 は先の図3 で見れば、高い稼働率 には高い ″一ω 曲線が対応 し、同 じ ω の大 きさには高い 利潤率が対応することを主張 しているにす ぎない。それに対 し、(4.1)式をして

「利潤率rは蓄積率g、 滞貨率の増加関数、稼働率 δの減少関数」 とい うとき には、(4.1)式(3.7)式(3.8)式か ら求めた式であるか ら、(3.7)式(3.8)式 を同時 に満たす (″)の稼働率 δにかんす る比較静学分析 を行 っていること を意味す る。すなわち、&を一定 にして高い稼働率のケース と低 い稼働率のケー スを比較 して、 どち らのケースの方が不U潤率 は高いかを調べ ることである。図 4は動学的関係 を示すために作成 した図であるが、 これ を比較静学的 に再解釈 すると、低 い稼働率のケースの g一 ω直線 は図4の直線AB、 ″―ω 曲線 は曲線 abであ り、高い稼働率のそれ らは直線A'Bと曲線a'b'である としよう。 その上

72(309)

参照

関連したドキュメント

(5) 補助事業者は,補助事業により取得し,又は効用の増加した財産(以下「取得財産

の主として労働制的な分配の手段となった。それは資本における財産権を弱め,ほとん

⑥法律にもとづき労働規律違反者にたいし︑低賃金労働ヘ

あり、各産地ごとの比重、屈折率等の物理的性質をは じめ、色々の特徴を調査して、それにあてはまらない ものを、Chatham

告—欧米豪の法制度と対比においてー』 , 知的財産の適切な保護に関する調査研究 ,2008,II-1 頁による。.. え ,

具体的な施策としては、 JANIC

 千葉 春希 家賃分布の要因についての分析  冨田 祥吾 家賃分布の要因についての分析  村田 瑞希 家賃相場と生活環境の関係性  安部 俊貴

③ 特殊燃料 5,000 リットル<算入:算入額 300 万円>.