IIC‑3 生ごみのコンポスト化 (『人間と地球環境』
プロジェクトメンバー研究中間報告 : 地球環境保 全とエコシステム)
著者 中崎 清彦
雑誌名 静岡大学学内特別研究報告
巻 1
ページ 87‑88
発行年 1999‑06
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00008239
Ⅱ C‑3
[研
究 目的
]人間活動、生産活動 による資源・エネルギーの 消費とそれに伴 って掃卜 出され た物質によって地域 および地球規模での環境 問題が深刻化 し、我 々人 類および地球上の生態系 の生存基盤を脅かすまで に至 っている。排 出され た排水・廃棄物の処理す るという従来の環境保全対策は、汚染負荷を時間 的、空間的にツケ回 しを していることに他な らな い。排水・廃棄物処理 における莫大な資源・エネ ルギーの消費を低減 し、地球環境への汚濁負荷を 低減す るためにも、人間活動・生産活動のゼ ロエ ミッション化をめ ざ した新たな物質循環を含む社 会 システムを構築す ることが急がれている。
ゼ ロエ ミッションを考えるとき、業種間あるい は産業間でネ ッ トワー クを形成 し、ある業種の廃 棄物を他の業種の原料 と して利用す る方法を有効 な手段 とす ることが できる。 また、このために廃 棄物を原料 に変換す るための要素技術の開発は欠 くことができない。 コンポス ト化は人間活動や生 産活動の廃棄物を、農業や公園の緑化 に利用す る ことによってゼ ロエ ミッションの実現を助ける技 術 として注 目を集 めて きて いる。
本学キ ャンパスにおいて も、大学生協やカフェ テ リア、あるいは学生寮な どで生 ごみが排 出され ているが、本研究 では、大谷キ ャンパス第
1食堂 に設置 されたコンポス ト化装置の性能を評価す る ことを 目的と して い る。
[こ
れ までの成果
]1.コ ンポス ト中の菌相解析
1‐
1 大腸菌群の検定
コンポス ト化装置 は大谷 キ ャンパス第
1食堂裏 に設置 されてお り、食堂か らリト出された生 ごみに 種菌 として β菌を接種 し ,温 度
80℃で数時間処理 す るシステムとな っている。装置か ら取 り出 した コンポス ト中に大腸菌群が存在す るか確か めるた めに、デスオキシヨー レイ ト培地
(大腸菌群検索 用培地 )上 で培養試験 を行 った。培養温度 は37
℃、培養期間は48時 間 と した。大腸菌群はこの培 地上で、赤色混濁 コロニーを形成す るので、それ
生ごみのコンポス ト化
工学部 中崎清彦
を計数す ることによって試料 中の大腸菌濃度を測 定す ることができる。検定の結果、大腸菌群は全 く検出されず、装置は衛生的処理の観点か らすれ ば十分な性能を持つ ことが確か め られ た。
1‐
2 コンポス ト化を担 う微生物
装置か ら取 り出 したコンポス ト中に存在す る微 生物 の種類 と濃度 を測定 した。培地 には TS寒 天 培地を用い、培養温度 は常温性微生物では
30℃、 好熱性微生物では
60℃、培養期 間はいずれの微生 物 も
3日間と した。菌体濃度 は、常温性微生物、
好熱性微生物の いずれ もが 105cellS/g¨ 乾燥重量 と 低濃度であることが わか った。 コ ンポス ト化の過 程で有機物が良好 に分解 し、 よ く腐熟 したコンポ ス トができているときには、 コンポス ト中に、通 常、常温性および好熱性微生物 と もに
lX108から
lx109cells/g― 乾燥重量存在す るこ とが知 られ てい
る。そのため、今回の試料は コンポス トとしては 微生物数が極めて少ないという結果 にな った。 こ れ は有機物の分解が十分 に進む前 に過度の乾燥が お こったため と考 え られ た。
1‑3 接種 した β菌の役割
本 コンポス ト化 システムでは生 ごみに種菌 と し て β菌を接種 して、装置に投入 しているが、接種
したβ菌の役割につ いて検討 した。なお、 β菌は 純粋培養 された単一の微生物ではな く、複数の微 生物を含む市販の微生物資材であ る。 まず、 β菌 を TS寒 天培地上で培養 し、装 置か ら取 り出 した コンポス ト中に存在する微生物の種類、および濃 度 と比較 した。 β菌 中には、常温性微生物、好熱 性微生物の いずれ もが 108cellS/g― 乾燥 重量の濃度 で存在 した。コンポス ト中の微生物 は上述 した通 りβ菌 中の菌体濃度 に比べ て3桁 低 いことか ら、
接種 した微生物が装置内におけ るコ ンポス ト化の 過 程 で増殖 で きて いな いこ とを示 して い る。 ま た、寒天平板上の コロニーの形態か らも、 コンポ ス ト中の微生物 とβ菌に含まれ る微生物は異なる ことが確かめ られ た。本 コンポス ト化 システムに おいては , β菌は種菌 としての効果を十分 に発揮
しているとは考えに くい結果 とな った。
1‐
4 分子生物学的手法の応用
‑87‑
β菌 とそれを種菌 と して作製 したコンポス トの 微生物相を分子生物学的手法を用いて比較 し、 コ ンポス トの微生物相が β菌の微生物相を反映 して いるか否かを検討 した。
β菌、およびコンポス トをそれぞれ滅菌水 にホ モジナイズ した。懸濁液 を遠心チ ュープに移 し、
固形物を除去 した後、菌体 を回収 した。 これを リ ゾチーム ,RNaseお ょび 10%SDSを 加 えて溶菌処
理 し ,そ の上清を回収 して フェノール・ クロロホ ルムで処理 し ,さ らにエ タ ノールを加え ることで
DNAを 沈殿、回収 した。 回収 され た DNAは 、マ イクロス ピンカラムを用 いてさらに精製 した。精 製 され た DNAサ ンプル を用 いて 16SrDNA領 域を
LA Taq polymeraseを用 いて PCRで 増幅 させ、制限 酵素
HaeⅢを用いて切断 して ,ゲ ル電気泳動のパ ター ンを観察 した。
β菌 とコンポス トで泳動パ ター ンは、大 きく異 な っていた。この結果、 コンポス ト中で優勢な微 生物は β菌 由来ではない と考え られ た。 したが っ て、コ ンポス トの微生物相 に与え るβ菌添加の効 果は極 めて小 さいと考 え られた。
なお、 β菌ではゲル電気泳動パター ンにサイズ の異な るバ ン ドが多 くみ られたのに対 し、 コンポ ス トでは限 られたバ ン ドだけがみ られた。
80℃と いう高温条件下のコンポス ト化では、耐熱性の微 生物のみが選択的され、微生物相が単純化 したと 考えられた。
2.コ ンポス トの腐熟度検定
装置か ら取 り出したコンポス トは ,有 機物が ど の程度分解されたものなのか ,研 究室内の試験装 置で検定 した。コンポス ト ,お が くず ,種 菌を乾 燥重量比で 101911に 混合 し、PHは
8.5付近 ,含
水率は約 55%に 調整 して試験試料を作成 した。
検定に用いた装置は容積約 27Zの 円筒型で耐熱 性塩化 ビニルでできている。上述の方法で作成 し た試料を試験装置中に投入 し ,底 部 よ り通気 し た。室温か ら設定温度まで 自己発熱で昇温させた 後、通気量の増減で 50℃ 等温に制御 した。試験装 置か らの排気ガスは炭酸ガスメータに導き、炭酸 ガス濃度を連続的に測定 した。また ,通 気速度 も 測定 し ,排 気ガス中の炭酸ガス濃度 と通気速度と か ら ,炭 酸ガスの累積発生量を計算 した。また、
投入試料中の炭素量をあ らか じめ元素分析で求め ておいて、そのうちの どれだけが試験期間中に炭 酸ガスとして揮散 したか と定義 した炭素変化率で 有機物分解程度を定量 した。試験期間は
8日間と
した。なお、対照試験 として、第
1食堂か ら排 出 されたコンポス ト化 しない生 ごみその ものを用い れば、両者の試験における炭酸ガス発牛量の差か ら、装置か ら取 り出 したコンポス トの有機物分解 量を推測できる。
生ごみそのもの とコンポス トの試験結果を上
L較す ると炭酸ガス発生量と炭素変化率の経時変化が よ く類似 した。コンポス トが、有機物のよ く分解 されたものであれば、生ごみを用いた試験に比べ て炭酸ガス発生量 も炭素変化率も小 さ くな らなけ ればな らない。ここで得 られた結果は ,装 置か ら 取 り出 したコンポス トの有機物分解 は十分でな く、未熟であったことを示 している。本研究で は、残念なが らコンポス ト化 したもの と全 く同一 の生ごみを使用す ることができなか ったので分解 率の厳密な比較 はできないが、この コンポス トは 生ごみの有機物がわずか数 %程 度分解 したものに す ぎないと計算 され た。
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