連 結 財 務 諸 表 に 関 す る 意 見 書 の 批 判 − 仮 案 と 意 見 書 を 比 較 し て − 龍 家 勇 一 郎
目 次 一
︑ は し が き 二
︑ 財 務 諸 表 公 表 体 系 に お け る 連 結 財 務 諸 表 の 位 置 づ け の 問 題 三
︑ 連 結 の 範 囲 の 問 題 四
︑ 非 連 結 重 要 従 属 会 社 の 取 扱 に 関 す る 問 題 五
︑ 連 結 財 務 諸 表 の 実 務 導 入 に つ い て 以 上 一︑は し が き
昨年︵昭和四十一年七月五日︶ ﹁連結財務諸表に関する意見書﹂ ︵仮案︶が公表されて以来︑各経済団体︑学界︑
実務家から多くの意見︑批判が発表された︒企業会計審議会第一部会では︑これらの意見︑批判を加味しながら︑慎
重審議の結果︑昭和四十二年五月十九日付を以て︑﹁連結財務諸表に関する意見書﹂が大蔵大臣に答申された︒
経 営 と 経 済
(仮案)のときのそれと比較するとき︑最終﹁意見書﹂の万が︑内容的にはるかに整備され︑苦心の跡が歴然とし
ている︒﹁本意見書﹂はその内容を二大別し︑一は﹁財務諸表の連結について﹂という前文的なものと︑二は﹁連結
財務諸表に関する諸基準﹂という本文的なもので構成されていて︑
の連結について﹂という前文的なものに︑ (仮案)より数段すぐれている︒特に﹁財務諸表
﹁本意見書における諸基準は︑連結に関する会計慣行が一般化されていな
い︑わが国の現状を背景にして︑明らかにされたものであるので︑今後連結に関する会計慣行の普及及び連結財務諸
表の制度佑の段階において再検討ないし補足すべき点も生ずるものと思われるよとし︑﹁企業会計審議会として︑そ
の制度佑に際しては︑改めて意見を求められることを希望するよと︒
このことは︑経済界の時期尚早論や反対論のある中で発表されたものであるが︑﹁意見書﹂がいかに連結財務諸表
の会計慣行が普及されるのを期待しているかがわかる︒また﹁注解﹂に関しても︑暫定注解のときの内容よりも︑数
段とすぐれ︑詳細な仮設例を設けて説明している点は︑連結会計慣行のない︑わが国において︑よい指導となり︑あ
る意味では︑連結財務諸表に関する問題点は︑乙の注解の中で述べられているとも︑受けとられるのである︒
しかし﹁注解﹂の例示を読む場合に注意しなければならない乙とは︑それが実務を指導する唯一の解決策を示した
ものでなく︑他にも別な会計処理方法が考えられるということである︒また﹁意見書﹂の内容についても︑
﹁怠
見書
﹂
の前文中に︑制度佑の段階において再検討ないし︑補足すべき点も生ずるものと思われると指摘しているように︑検
討の予地を残しているのである︒
﹁本意見書﹂は連結会計の慣行を育成して行く過程で︑アメリカの連結財務諸表のそれを模範とし︑英国会社法に
おける支配力基準(乙の場合は取締役会の過半数獲得能力)や綜合財務諸表の併立を避けたことは︑今後わが国の土
壊で連結財務諸表の育成上︑幾多の問題を残しているといえる︒
筆者は昨年(昭和四十一年十一月)﹁税経通信﹂において︑筆者の︑この問題に関する東京証券取引所上場会社資
本金
一
OO
億円以上の重なる会社の実態調査の資料に基づき︑経済界の連結財務諸表制度佑に対する態度を知り︑実
務導入上向問題点として環境の整備︑必要性などを強調しているので︑本稿では(仮案)と(意見書)との比較して︑
その注目巧べき点として︑つぎの四つをあげ私見を述べたいと思う︒
一︑財務諸表公表体系における連結財務諸表の位置づけの問題
二︑連結の範囲の問題
三︑非述結重要従属会社の取扱に関する問題
四︑連結財務諸表実務導入への私見
( 註 )
ω
龍家勇一郎稿P
連結
財務
諸表
に関
する
意見
書と
︑実
務導
入上
の問
題点
d(税経通信︑一九六六年十一月号) 二
︑ 財 務 諸 表 公 表 体 系 に お け る 連 結 財 務 諸 表 の 位 置 づ け の 問 題
わが国において連結財務諸表制度導入の問題が︑やかましくなったのは︑昭和四十年三月大蔵大臣が企業会計審議
会に対して︑いかにして監査態勢を充実強佑すべきかについて諮問を行ってからである︒その背景にあったものは若
干の会社の不正経理が表面化し︑支配︑従属会社間取引を介在して︑不当な経理関係が行われたため︑と推測される︒
しかし今回の﹁意見書﹂は﹁連結財務諸表制度の問題を単に支配︑従属関係会社の監査に寄与するという観点から
だけでなく︑一般に財務諸表制度の充実改善を目ぎすという広い見地から取り上げられた﹂︑乙とに注目したい︒
意見書﹂としては︑連結財務諸表の効果としてつぎの四つの機能をあげられる︒
一「
連結
財務
諸表
に関
する
意見
容の
批判
経 営 と 経 済
三四
会社の利害関係者に対して︑企業集団を構成する会社の財務的情報を提供するのに役立つ︒
支配従属関係にある会社の財務諸表監査の充実︑改善に寄与する︒
企業課税の実質的合理佑に寄与する︒
支配的立場にある会社の経営者に対して︑経営管理上必要な情報を提供する︒
そして連結財務諸表作成の目的として︑﹁単一の組織体の構成単位とみなされる二つ以上の会社の財務諸表を結合し
て︑単一の組織体としての経営成績及び財政状態を真実公正に︑かつ明瞭に報告することであるよと規定し︑乙の点
に関する﹁注解1﹂では︑﹁企業集団全体としては︑単一の経済的実体とみなしうるにしても︑企業集団の構成会社
は︑それぞれ別個の法人として存在しているものであり︑これらの各個別会社に係る債権︑債務等の法的な権利義務 付
同
同 国
関係︑配当等について法的規制等は︑個別財務諸表によって処理されるものであるので︑連結財務諸表が作成される
場合においても︑個々の構成会社の個別財務諸表の必要性が消滅するものでない︒﹂と明瞭に述べられており︑個別財
務諸表と連結財務諸表との関連について述べている︒
このことは﹁仮案﹂の説明のときより︑非常に丁寧でありその考え方の基本の中には︑企業集団を一つの経済的実
体として把握し︑これに連結財務諸表を対応させ︑他方乙れとは別に︑個々の構成会社に個別財務諸表を対応させる
という形で︑いわば二本建の財務報告体系を想定し︑従来の個別財務諸表のみによる情報を連結財務諸表を加えた情
報へと拡大し︑以て財務諸表制度の充実︑改善を期待していることがうかがえるのである︒
乙の場合二つの財務諸表のうち︑いずれが主で︑いずれが従であるかという点については︑﹁意見書﹂は︑何んの
指摘もなく︑両財務諸表の重要性が等しく認識されていることは︑アメリカの連結会計慣行を範としているにしては︑
注目すべきことである︒それは︑アメリカの連結会計慣行としては連結財務諸表が個別財務諸表よりも明らかに主視
されているからである︒
例えばA︑I︑c︑P︑Aの公式の考え方は︑集団企業の財務情報を公正に示すためには︑連結財務諸表が個別財
務諸表より有意義であり︑前者の作成︑公表が通常必要とされるのに対し︑後者(親会社の個別財務諸表)は︑場合
によれば必要とされるに過ぎない︒
また
A︑A︑Aにおいても︑ほぼ同様につぎのように述べている︒﹁過安半世紀の間に︑連結財務諸表はアメリカ
の会社の公表財務報告諸表の中で︑ますますその比重を加えてきた︒その上︑それを構成する諸会社の個別の財務諸
表を添附せずに︑連結財務諸表のみを提示するという傾向が増した︒これらの傾向が明確に意味するものは︑連結財
務諸表が一つ一つの個別的財務諸表よりも︑有効であり︑今では︑第二義的乃至補足的というよりも︑むしろ主要な
位置を占めると考えてもよいという乙と代ある︒しかし︑ある種の状況の下では︑構成単位たる会社の個別的財務諸
9u
表も重要であり公表されるべきである︒﹂と︒
乙の
よう
な︑
A.I.c.p.AやA.A.A会計原則の考え方には︑連結財務諸表が基本的には︑個別財務諸表
円 ︒
に代替しうるものであるという潜在性が大きく横戸わっているのではないかといわれる方もいる︒しかしこのような
d告考え万はわが国の学者の論攻にもみられるところである︒即ち﹁経済的実質において︑単一の組織体としての活動及
ぴ状態を表示しようとする連結財務諸表が︑利害関係者の判断の実質的基礎として重視されることは当然であり将来
の財務諸表のあり方を考える場合に︑連結財務諸表の地位の相対的優位性が高まる乙とは︑一つの必然的動向と考え
てよいであろうこと︒
しかし︑現在の﹁意見書﹂から受けとられるところのものは︑連結財務諸表も個別財務諸表ともに︑等しく重視す
るということであって︑連結財務諸表が作成されても︑それが全面的に︑従来の個々の財務諸表の地位に取って代る
連結
財務
諸表
に関
する
意見
書の
批判
五
経 営 と 経 済
一 一 一 六
ものでないことを﹁注解1﹂で述べている︒今回﹁意見書﹂で打ち出された連結個別の両財務諸表を等しく重視する
という行き万は︑将来も尊重さるべき意見だと思うし︑連結財務諸表制度の問題を単に支配従属関係会社の監査に寄
与するという観点からだけでなく︑一般に財務諸表制度の充実改善に大いに役立つと忠うのである︒筆者が昨年度(
昭和四十一年八月l昭和四汗二年三月)の実態調査したとき︑このような二本立の財務諸表を作成し新聞紙上に公表
回 ︒
せし会社は一社のみであるが今後この﹁意見書﹂の公表によって︑企業側に積極的協力観が生れ︑
行か盛熟すること期待するものである︒
(1)
﹀
‑H
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ロ円
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神田
) (5) (4) (3) (2)
中島省吾訳A︑A︑A会計原則一一二頁 白鳥圧之助稿連結財務諸表意見書における基本的連結会計観について(産業経理七月号一九六七)
意見書の主要問題点(実務会計六月号一九六七)
日立製作所(公表個別連結貸借対照表による) 中島省吾稿 一日も早く連結慣
E 貸 借 対 照 表 ( 昭 和41年3月31日現在)
連結財務諸表に関する意見書の批判
( 資 産 の 部 ) ( 負 債 の 部 )
流 動 資 産 288,549,815,55円4 流 動 負 債 225,822,634,15円6
固 定 負 債 83,669,968,439 固 定 資 産 164,206,344,618 社長その期他借の固入定債金負債 5320,,6O9429756,,,847日3353D,,,O2180500 9
引 当 金 14,487,146,878
( 資 本 の 部 ) 資 本 金 78,750,000,000 法 定 準 備 金 23,509,507,887
繰社開債延発発資行差産費金 43875642,3,44452211,,,44O70760 6 利喜評本益価準準積備備立金金金 687,,,8肌E9ED1,,Om12O8D,,,7O126OD2 5 剰 余 金 26,973,365,288
別前当期途期緯積越利立利金益益 1744,,,775600039,,3848801日3,,,O7507日90 9 資 本 合 計 129,232,873.175
資 産 合 計 453,212,622,648 会E耳債及び資変目~ 453,212,622,648
七
(註) (1)売掛金より控除した取立不能見込額53,724.079円
(2 )有形固定資産減価償却累計額90,464,544,730円 (3 )子会社に対する短期金銭債権43,784,349,119円 長期金銭債権22,585,875,190円 短期金銭債務18,618.932,403円
(4)有価証券並びに棚卸資産の評価は低価法によりました。
株 主 の 皆 様 へ
11111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111111/J111111111111111111"lIlll1llllllllllllltl也
経 営 と 経
所 済
作製
立 日 株式会社
連結財務諸表についてのお知らせ
昭和41年3月31日に終了する1年間の当社及び系列会社の業績を 総合した連結財務諸表は、下記の通りでありますので御参考まで にお知らせいたします。
連 結 貸 借 対 照 表 (昭和41年3月31日現在)
340百万円,230
199,717
52,263
88,250
120,560
8,330
144,194
78,750
16,376
49,068
613,314
負債及び資本の部 流 動 負 債
短 期 借 入 金 支払手形及び買掛金 そ の 他 の 流 動 負 債 固 定 負 債 少 数 株 主 持 分
資 本
資 本 金 資 本 剰 余 金 利 益 剰 余 金 合 計 部
38百万円2,638
81 ,527
20,716
144,880
116,804
18,711 I !
55,973 11
13,454 1I
155,186 11
6,063 11
613,314 ! I
流 動 資 産 現 金 及 び 預 金 市場性ある有価証券 受取手形及び売掛金 棚 卸 資 産 そ の 他 の 流 動 資 産 長期売出金及び貸付金 投 資 勘 定 有 形 固 定 資 産 そ の 他 の 資 産 合 計
の
連 結 損 益 計 算 書 (自昭和40年4月1日至昭和41年3月31日)
/i、
乙の連結財務諸表は、当社及び当社が直接又は間接に50%
を超える株式を保有する主要な子会社の財務諸表を連結し たものであります。
連結に際して内部勘定及び重要な内部取引高は、除去して あります。
(註)1. 2.
三
︑ 連 結 の 範 囲 の
問 題
意見書によると﹁会社か他の会社の発行済株式総数(議決権のない株式を除く)の過半数の株式を実質的に所有す
る場合︑前者を支配会社といい︑後者を従属会社というo﹂ものとし﹁支配会社の決算日に︑従属会社との連結財務諸 表を作成しなければならない︒﹂と定めているD
(仮案)では︑支配︑従属会社の概念規定を前述の持株基準(議決権を有する過半数の株式の所有)の外に︑支配
力基準(会社が他の会社の取締役会の構成を支配する関係)の二方面から規定し︑更らに連結範囲決定の尺度として
持株基準を採用するという規定がみられたものである︒これが今回の﹁意見書﹂では︑持株基準一本に割り切った点
が注目すべきことである︒
これは︑英国会社法のごとき支配力基準を併立させなくて︑基本的には問︒m
己主
芯ロ
ω
戸A.I.C.p.A│
やA.A.A会計原則とも一致している点にその特色がみられる︒わが国においては︑連結会計慣行が充分に成熟
していない現状を顧慮して︑客観的数量的尺皮を欠くところの支配力基準によらず︑持株基準によって連結範囲の画
定がなされたことと思われる︒
そ乙で問題となるのは︑監査実施準則で﹁実質的支配︑従属会社﹂の範囲が︑その﹁申合せ﹂事項で定められてお
り︑それと今回の﹁意見書﹂の範囲と異なることである︒監査実施準則では﹁実質的支配︑従属会社﹂の範囲の項で︑
監査目的として﹁会計処理の妥当性を確める︒﹂として︑関係事項を照会して︑文書による回答を求め︑必要に応じて︑
﹁実質的支配︑従属会社﹂は公認会計士の往査対象会社となっていることであその会社に﹁往査﹂する︒とあって︑
る ︒
連結
財務
諸表
に関
する
意見
書の
批判
九
経 営 と 経 済
O 四
そして︑新監査実施準則の﹁申合せ事項﹂では︑その範囲はつぎのごとき四つを原則として定めτ
いる
︒ 付発行済株式総数の過半数の株式を実質的に所有する関係 同取締役総数の過半数を派遣し︑継続的な取引を所有する関係 国発行済株式総数が百分の拾をこえる株式を実質的に所有し︑かっ売掛金︑貸付金等の経済的供与額が常時相
手会社の負債及び資本額の二分の一をこえている関係︒
伺
ω i ω
に準ずる関係で︑実質的に支配従属関係があると認めるに足る重要な関係︒
そして被監査会社の財政状態︑経営成績に重要な関係を有すると認めるもの︒となっており︑支配力基準や実質的
基準(営業上︑金融上の関係で支配する)が︑そのなかに入っている︒故に﹁意見書﹂から支配力基準等が削除され
ているが監査実施準則の方でカバーしているから︑ょいといってしまえば︑それまでであるが︑連結財務諸表の基準
と監査実施準則の基準の一致が望まれる︒
これらの点に関し実務家から︑連結財務諸表制度佑されたときの効果の一つとしてあげる監査面への効果について︑
疑問を感じ︑支配︑従属会社の監査充実のために監査基準の強佑(必要ある場合には子会社の往査)で充分であり︑
莫大な費用と時間とをかけて︑わざわざ連結財務諸表作成の必要性は認め難い︒と︒
監査基準および監査諸準則の改善の問題は︑先︑きに連結財務諸表に関する問題とともに︑大蔵大臣から企業会計審
議会に諮問され︑すでに答申されて昭和四十一年度から公認会計士による子会社の監査制度が実施されているのであ
り︑必要な場合は子会社に往査することができるようになっているのである︒
しかし﹁往査﹂には前提があり︑まず書類を机の上で調べてみて必要がある場合に﹁往査﹂するという限られた監
査項目だけである︒したがって﹁往査﹂が完全に行なわれたとしても︑やはり関係会社に関する財務的情報が十分に
得られるということにはならない︒その意味からいっても連結財務諸表は監査のためにどけあるのではないか︑監査
の観点からいっても連結しなければ十分に効果があがらないといえる︒
今回の﹁意見書﹂が当面連結会計慣行の助成のための啓蒙的役割を中心とする場合はよいが︑将来において制度佑
の基準の明示という役割を果たす場合には︑連結の範囲において﹁監査実施準則﹂の﹁申合せ事項﹂の範囲と連結財
務諸表に関する会計原則との聞に︑相違点があることは好しくないことと思惟する︒
監査実施準則の第二︑﹁通常の監査手続﹂の中にも︑会社の採用する会計処理の原則及び手続が﹁企業会計原則﹂
に準拠しているか︑どうかを調査するとあって︑持株基準のみならば︑支配力基準等は監査の対象から︑はずされる
こととなる︒然るに︑その﹁申合せ﹂事項の範囲にはあるという矛盾をどうすることもできないからである︒
このように監査実施準則の﹁申合せ﹂事項に持株基準の外に支配力基準や実質的基準(営業上の関係で支配する)
が入っているのに拘らず︑連結財務諸表制度の方が持株基準のみでその制度佑に当り︑意図した支配︑従属関係会社
の監査に寄与するとか︑経営管理に役立つとかの効用が完全に期し得られるかどうか︒また連結財務諸表制度の導入
に対し︑賛成しない人々を完全に納得さすに充分であろうか︒吏らに株式の所有率の過半数を占有していても従属会
社が支配会社に常時相当の多額の貸付金があるような場合などは︑支配会社が従属会社を実質的に支配している権限
を有しているかどうか疑問である︒
らだ
けで
なく
︑
﹁意見書﹂前文にあるように﹁連結財務諸表制度の問題は単に支配︑従属関係会社の監査に寄与するという観点か
一般に財務諸表制皮の充実︑改善を目指すという広い見地から取り上げられた︒﹂ものである︒連結財
務諸表制度の導入は︑いわば︑わが国の財務報告の革命を意味するものであって︑乙れは当然企業会計原則の拡張に
発展するものであるからである︒換言すれば︑親会社の単独(個別)財務諸表は︑述結制度佑のあかつきには︑その
連結財務諸表に関する立見書の批判
四
経 営 と 経 済
四
企業の財政状態や経営成績は連結財務諸表と合わせみることによって︑始めてその企業の実体を表示し得るものとな
るからである︒英国及び西独では︑親会社の個別財務諸表には︑必ず連結財務諸表を添付することを義務づけている︒
アメリカでも︑通常親会社の個別財務諸表に連結財務諸表を併せて公表されるとき意見の表明ができるものとされて
いる︒従属会社の個別財務諸表のみに関する監査意見では︑通常親会社勘定に連結される目的で作成されており︑乙
の目的に合致するように妥当に作成されているとの文言がみられる︒わが国の連結制度佑に関連して︑個別財務諸表
に関する英米の監査報告上の取扱いは︑大いに将来参考となるものである︒このように連結財務諸表の制度佑には︑
監査報告と密接に結びつくものであるから︑監査実施基準と企業会計原則と分離して考えるのは︑適切でないように
思われる︒今後両者の聞の調整が望ましい︒
また一般に連結財務諸表の必要性を認識せしめ︑肯定さす論拠は営業上連結する必要がある実質的基準乃至支配力
基準が︑形式的基準たる持株基準より︑はるかに説得力をもっている︒わが国においても︑かたくな形式的基準にけ
によることなく︑その弾力的適用の可能性に途き閃く必要性があるように思われる︒この点に関して私案を提供して
︒
いる
学者
もあ
る句
︑
将来連結財務諸表が制度化されるに際して再検討されることを望むものである︒
註 (2) (1)
稲葉洲臣稿二夫務界の自に映る連結財務諸表意見書︑実務会計(七月号一九六七)
青木倫太郎稿二地結意見書読後所感︑実務会計(七月号一九六七)
支配
力基
準の
一般
に肯
定で
きる
論拠
とし
て︑
つぎ
の三
つを
あぐ
︒
ω
支配
会社
の取
締役
会
ω株主総会
閉経理担当重役と公認会計士の合議︒
四︑非連結重要従属会社の取扱に関する問題点
述結財務諸表の問題は︑その連結の範囲が決定すれば︑連結作業は半分は終ったといわれる程重大であるが︑これ
に関述して(仮案)と比較して注目すべき取扱いをしたものに︑非連結重要従属会社の問題がある︒
(仮案)では︑但し︑つぎの場合に該当する会社は︑財務諸表の連結の範囲から除外するものとする︒として︑
つ
ぎの︑五つを例挙していた︒
付株式保有が単に一時的なものと認められる場合
同従属会社が会社更生法上の更生手続中の場合又は破産の状態にある場合︒
日従属会社が在外会社であって︑連結することが︑特に困難な事情にある場合︒
倒従属会社の営業の種類︑内容等が支配会社のそれと︑全く関係がないか又はいちじるしく異なっているため︑
合理的に単一の組織体として取扱うことができない場合︒
国
従属会社の規模が単独に又は数会社あわせても︑その総資産又は取引高等において支配会社に比較して重要性
を認め難い程皮に小さい場合︒
乙れが今回の意見書ではHi側までのものは﹁除外するものとする︒﹂と規制されているに反し︑第伺の重要性の項
目が
Hi伺の除外例から独立して︑別記され主要性のそれは﹁除外することができる﹂として︑区別されたことであ
この点について公認会計士協法中間報告では︑重要性の少ない従属会社については︑連結から除外するが︑つぎの る ︒
司自ム場合は述結するものとしている︒
述結
財務
諸表
に関
する
立見
書の
批判
四
経 営 と 経 済
四四
全株を所有されている子会社︑またはほとんど一00%に近い株式を所有されている会社は︑原則として連結
する
︒ 同
連結の結果がある子会社︑または子会社群を含めるか含めないかによって異なった判断を生ぜしめることとな
る場合には︑必ず連結する︒
ととなるからと思われる︒しかし﹁意見書﹂では︑ こ
れは
一
OO
Mm持株に近い場合で利益操作のなされているような従属会社を除外することは︑合理的判断を妨げる乙
﹁合理的判断を妨げない程度のものである場合は︑除外すること
ができるo﹂としているので︑あまり障害はない︒
なお﹁注解3﹂において︑アメリカにおける証券取引委員会の﹁財務諸表規則﹂
a a
巳己
目︒
ロパ
wl凶
)の
nL
要な従属会社﹂の定義を引用して︑重要性の基準を総資産と取引高という規模の大きさに求めている︒
ここでの問題点は︑会田教授も引用されているように︑この場合の﹁総資産﹂を何時の時点の﹁総資産﹂なのか︑
﹁取引高﹂をどの期間のもので判定するかの問題が残っている︒SECでは︑この問題にふれていないが︑ラパポー
ト
93 33 1)
はSECの取扱基準からして︑総資産額は連結貸借対照表の最近の決算日現在で判定すべきであり︑
取引高は連結に含まれる数年間にわたってではなしに登録年度の最後の会計年度期中の取引高によって判定すべきで
q u
み の ザ
hvOL﹂0
﹁ 重
わが国においても︑今後連結制度を実施する段階においては︑参考資料としてSECの取扱基準を掲げるにとどま
らず︑もっと具体的に明確にする必要があると思われる︒SECの定義のように︑わが国の連結慣行に摂取されて発
展してゆくか︑あるいは別個の定義が確立されてゆくかは︑今後に侯たなければならない︒
重要性の原則の適用に関して︑つぎに注目しなければならない問題に内部利益の消去がある︒
﹁会社相互間取引によって取得した棚卸資産及び固定資産その他の資産に含まれる未実現損益は消
却しなければならない︒﹂として棚卸資産︑固定資産を同じに取扱った︒しかるに﹁意見書﹂では︑上文の次に但書と
して﹁ただし︑固定資産に含まれる未実現損益が僅少な金額である場合は︑これを消却しないことができるよと条項
が追加され︑重要性原則の適用に対して取扱上差異をもうけたことである︒
﹁仮
案﹂
では
︑
このことは棚卸資産の内部利益の消去計算は︑棚卸資産の範囲内で解決し︑他の計算に影響しない︒しかるに固定
資産の場合には︑消去計算がその固定資産に止まらず減価償却費の計算も修正しなければならない︒さらに︑その固
定資産が製造費用資産であれば︑製造原価に組込まれた減価償却費にまで︑さかのぼり︑製造原価の修正をせねばな
らない︒また︑固定資産の消却計算の正確性についても︑一定の限界がある︒これらの理由が棚卸資産と固定資産と
の差異をつけたと見られるのであるが︑しからば棚卸資産については︑内部利益の消去計算は絶対的に要求されるの
か︑重要性原則の適用は不可なのか条文だけでは疑問が生ずるのである︒
しかし︑個別会計の場合︑同様に連結会計においても︑重要性原則は適用されるのは当然である︒すなわち︑棚卸4 資産の内部利益消去計算にさいしても︑重要性原則が適用されうるとみるのは︑理論上当然と思われる
fq
債権︑債務の相殺消去に関しても︑乙の重要性原則の適用が考えられる︒関連会社の聞の債権︑債務の金額は︑原
則的には一致するはずであり︑不一致があるはずがない︒しかし︑現実の問題として両者聞の未達事項が整理しても︑
なお︑且つ不一致が存在する場合︑どう処理すべきであるか明確でない︒僅少な不一致額は︑連結計算の停滞を防ぐ
¥ ︑
︑
意味からも︑これを他の債権︑債務の勘定に振替えて処理する場合もあると考えられる︒このことは損益取引(関係
会社間)についても同様である︒
更ら
に︑
﹁意見書﹂の脚注事項のなかで非連結従属会社との関係にふれて︑つぎのように述べられている︒
連結
財務
諸表
に関
する
意見
書の
批判
四 五
(1) お
びよ
四六
非連結従属会社に対する投資原価︑支配会社の持分︑その従属会社の当期純利益︑その他必要な財務的情報︑
経 営 と 経 済
ω連結会社と非連結従属会社との間の未実現損益について︑それらに重要性が認められる場合に
脚注事項として表示することを要求しているロしかし財務諸表公表の目的は︑主として会計専門家でない一般の大衆
や利害関係者に︑企業又は企業集団の財政状態および経営成績を知ってもらうためである︒したがって︑それらの人
々に連結財務諸表上の純利益に︑脚注事項の非連結従属会社の純利益や︑更らに会社との間の未実現利益等を加減参
照して判断してもらうことになる︒
連結の範囲から︑ある従属会社を除外したことについては︑正当な理由があったからであるから︑たまたま︑多額
の未実現損益があるからという理由で連結を要求したり︑又未実現損益が少ないという理由で︑連結の範囲から︑除
外することは妥当でない︒少なくとも︑非連結にかかわる未実現損益は︑これを消去する乙とに重点をおかないと︑
連結の結果が連結の基本原則ないし︑目的にそわないことになる︒
財務諸表による情報公開は︑脚注事項によって補うべきものでなく︑財務諸表自身だけで︑果たすことが当然だか
らで
ある
︒
いづれにせよ︑連結会計の実践上の過程では︑重要性原則の適用の問題は︑今後充分に検討すべき問題を含んで︑
いる
とい
える
︒
つぎに非連結重要従属会社に関する問題で綜合財務諸表の取扱いについて︑﹁仮案﹂と﹁意見書﹂とは非常な相還を
みせた︒﹁仮案﹂では︑連結の範囲から除外された従属会社については︑附属明細表として綜合財務諸表を作成する
乙ととなっていた︒乙れが︑今回の﹁意見書﹂では︑全然削除された乙とである︒
乙れは︑経団連︑東京商工会議所及び租税研究会や実務界から綜合財務諸表の必要性ならび効果が認められないと
して廃止を主張していた︒また公認会計士協会や産業経理協会などは︑綜合財務諸表の簡略ル加を希望した実情による
Fりものと判断される︒筆者もさきに発表した論文において︑実態調査の上から︑その簡素佑を要望しておいたのである︒
綜合財務諸表は︑各会社の個別財務諸表を適当に結合するとともに︑﹁仮案﹂の6および8に掲げる相殺消却の万
法によって︑連結の場合と同一または同等の情報を提供するように作成を要望されていた︒これが前記各団体の反対
や述結慣行の未成熟のため︑時期尚早として一時中止となったものと思う︒
しかし︑諸外国の連結規定や連結実務をみると︑非連結の重要従属会社については︑脚注事項のみで表示すること
なく︑ある程度の情報を公開しているだけでなしに︑従属会社の個別財務諸表ないし︑綜合財務諸表の添付を要求し
ている︒わが国も連結慣行が成熟するにつれて︑乙の点に関して再検討の必要にせまられるものと思われる︒
(2) (1) 宮田 山石 芳 伊藤勝夫若連結財務諸表二ハ頁
アメリカ証券取引委員会財務諸表規則第一条の2(抄)
投資額及び貸付額が︑連結基準に基づく︑親会社及び従属会社の資産額の何%をこえるとき
従属会社の売上高及び営業収入が︑親会社及び従属会社の売上高及び営業収入の何%を乙えるとき
当該従属会社が一又は二以上の従属会社の親会社であって︑これらの従属会社とともに︑全体として考えた場合に︑重
白) (a)
(c)
一安
な従
属会
社を
構成
する
とき
︒
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ロ ロ 江 口 問 問M 22 Hg ω
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0 円四ロ吋
m w =
一 ∞ ∞
∞ (5) (4) (3)
稲垣富士男稿二地結財務諸表に関する意見書批判(産業経理六月号一九六七)
龍家勇一郎稿二辿結財務諸表意見書(仮案)批判(税経通信十一月号一九六六)
連結財務諸表に関する意見書の批判
t四ゴ
経 営 と 経 済
/¥ 四
五
︑ 連 結 財 務 諸 表 の 実 務 導 入 に つ い て
以上述べたように︑連結基本原則︑連結の範囲︑除外された重要従属会社の取扱いに関する問題について︑今後再
検討すべき問題が残っている︒しかし︑乙の﹁意見書﹂は︑今日の︑わが国の企業会計の発展段階において︑啓蒙的
解説と基準の明示という︑やや次元を異にする二つの役割を担い︑また実施を容易にしようとする条件緩和的な主張
と基準の確立︑維持の主張との折衷︑妥協を必要としていたのである︒したがってこの﹁意見書﹂貫くものは︑理論
的一貫性でなく︑むしろ現在の時点で︑できるだけ早く連結の制度を慣行として確立するための実際的判断であった
唱i
とい
えよ
う︒
そもそも︑会計基準は長期にわたって︑生み出された会計慣行をもととして︑その慣行の検討︑整理を通じて確立
されるべきものである︒したがって︑連結財務諸表を制度佑するためには︑理想的には︑法令の強制によらないで︑
財務諸表上の必要性から︑その必要に応じて︑採用した連結会計慣行を整理検討して確立さるべきものである︒しか
しわが国では︑不幸なことに︑そのような会計慣行が全般的に確立されておらず︑僅かにA︑D︑R等外資導入の必
要に関連して︑外国の会計基準に従って︑連結を行っている企業が二十社位ある程度に過ぎない実情にある︒故に連
結財務諸表の会計慣行を制度佑するためにはまず法令が必要とされる事情にある︒今回の﹁意見書﹂の全文が一方で
連結慣行の確立を促進するような奨励的考慮を払い︑他方でその方法があまりに慾意的あるいは︑未熟にならないよ
うにある程度の原則を確立︑明示するような態度をとったことは理解できるのである︒
かかる︑現状で連結財務諸表制度を実務に導入するには︑いかにあるべきかを考察してみよう︒乙乙で最も重要な
問題は連結財務諸表制度佑の必然性乃至必要の認識が︑根本的理由になると思われる︒実務界の反対論を説なえる人
の中には︑連結の制度佑に最も強い関心を示されているものは︑会計学の諸先生方と一部識者に限定されており︑
︒ 白
般の世論には程遠いものがあると︒
そして連結財務諸表の制度化が円滑に行われるためには︑先ず何よりも連結を必要とする世論が一般化せざるを得
ないような経済環境︑換言すれば資本自由佑が安心して行なえるような経済環境の熟成が必要であると︒そのために
は︑﹁意見書﹂にいう制度佑の前提条件として例挙する一年決算の慣行の普及︑証取法上の財務諸表様式の簡素化商
法の諸規定との調整税法の諸規定との調整等を計るだけの受入態勢の整備のみでは︑現実問題としては︑不充分で独
禁法︑公取法等の大幅改正を通じて企業合併︑企業連繋を容易ならしめる乙と︑並びに企業の内部留保に対する大幅
減税及び長期金利の大幅引下げ政策等の強力な推進を通じて︑企業の内部留保の充実と企業集中をはかり︑産業態勢
の整備充実をはかる乙とが最重要な前提条件であると︒
かかる見解は︑わが国実業界全般の現実が︑英米先進国の如く︑財務諸表の連結を必要とする程に成熟していない
からといえる︒われわれとしては︑連結財務諸表の制度佑は︑企業が好むと好まざるとに拘らずぺ長期的に見た場合︑
必然性があると信じている︒
連結決算制度ほ︑アメリカでは五十年以上の永い会計慣行として行なわれており︑一九一七年には︑連結納税制度
が実施されているといった歴史をもっているものである︒イギリスでは会社法の改正によって︑一九四八年以来連結
制度を実施し︑ドイツは株式法の改正によって昨年(一九六六)以来連結制度を導入するに至っている︒
わが国においても︑企業集団という実体が存在している以上︑企業集団の項上会社が︑その企業集団の全体として
の業績を把握する必要があり︑それを知ることによって︑企業集団を運営して行く必要な制度であり当然採り入れな
ければならない制皮であるD
連結
財務
諸表
に関
する
意見
書の
批判
四 九