修 士 学 位 論 文
多次元検出器ファントム材質の 深さスケーリングに関する研究
平成 25 年 1 月 10 日 提出
首都大学東京大学院
人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域
学修番号: 11897610 氏 名:谷 謙甫
( 指導教員名:齋藤 秀敏)
目次
要旨
1章 序論 1
1.1 強度変調放射線治療における線量検証 1
1.1.1 多次元検出器の特長 2
1.1.2 多次元検出器の問題点 2
1.2 研究の主題 3
2章 多次元検出器 4
2.1 多次元検出器について 4
2.2 多次元検出器のファントム材質 7
3章 深さスケーリング 9
3.1 治療計画装置における深さスケーリング 9
3.2 固体ファントムの深さスケーリング 11
4章 深さスケーリング係数Cplの決定 12
4.1 目的 12
4.2 方法 13
4.2.1 実効線減弱係数effの決定 13
4.2.2 深さスケーリング係数Cplの算出 13
4.3 結果 15
4.3.1 実効線減弱係数eff 15
4.3.2 深さスケーリング係数Cpl 17
4.4 小括 17
5章 モデルプランによる最適な深さスケーリング係数の検討 18
5.1 目的 18
5.2 方法 19
5.2.1 TomoTherapyのモデルプランによる検証 19
5.2.2 Varian Clinac21EXのモデルプランによる検証 19
5.2.3 Varian Clinac21EXの校正ファントムモデルプランによる検証 20
5.3 結果と考察 22
5.3.1 TomoTherapyにおける検証 22
5.3.2 Varian Clinac21EXにおける検証 23
5.3.2.1 Delta4の計測線量と各計画線量の検証 23
5.3.2.2 Delta4校正ファントムにおける計測線量と 各計画線量の検証 25
5.4 結論 26
5.4.1 TomoTherapyにおける最適な深さスケーリング係数 26
5.4.2 Varian Clinac21EXにおける最適な深さスケーリング係数 27
5.4.3 Varian Clinac21EXにおけるDelta4の線量校正の確かさ 27
6章 結語 28
7章 参考文献 29
8章 謝辞 30
要旨
強度変調放射線治療(Intensity modulated radiation therapy, IMRT)は同じ照射野内において 照射する放射線の強度を変調することにより、正常組織への線量寄与を抑え、目的部位へ線量 を集中させる放射線治療である。IMRT の線量分布は、標的体積と近接するリスク臓器との間に 急峻な線量勾配を生み出すため、全ての治療計画に対して、治療開始前に線量検証を実施し、
計画線量と実際の照射線量を確認しなければならない。
近年、線量分布の検証において解析が容易な二次元検出器および多次元検出器が急速に普 及している。多次元検出器の多くは固体ファントムと検出器基板から成る。
本研究では、より正確な吸収線量分布を計測する事を目的とし、多次元検出器(Delta4, ScandiDos社)のファントム材質であるPMMAおよびPlastic Water DT(PWDT)の最適な深さスケ ーリング法を提案する。
はじめに各ビームエネルギーに対する水、PMMA および PWDT の実効線減弱係数effを計 測および計算から得た。このeffより各ビームエネルギーに対するPMMAおよびPWDTの深さ スケーリング係数Cplを算出した。このCplが臨床運用上適切かを明らかにするため、治療計画装 置により、単純な照射条件のモデルプランを作成し、Delta4 による計測を行った。モデルプランの 線量計算を行う際、物理密度、本研究で算出したCplおよびScandiDos社推奨値の3つを深さス ケーリング係数として用い、比較、検討した。
その結果、ScandiDos 社推奨値を用いた計画線量が全ての線質で、Delta4 の計測線量と最も 一致した。また通常、CT値-物理密度変換テーブルを用いて深さスケーリングを行う治療計画装 置の計画線量と、Delta4の計測線量は全ての線質で一致しない事が明らかになった。
さらに Delta4 の計測線量の確かさを検証するため、線量校正と同じ照射条件のモデルプラン
の作成および計測を行った。
その結果、校正ファントムに挿入した電離箱の計測線量と計画線量の線量誤差は、上記のモ デルプランの線量誤差と同様の傾向を示した。そのため Delta4 によって、より正確な計測線量を 得るためには、線量校正ファントムのスケーリングを行う必要がある事が示唆された。
1
1 章 序論
1.1 強度変調放射線治療における線量検証
強度変調放射線治療(Intensity modulated radiation therapy, IMRT)は同じ照射野内において 照射する放射線の強度を変調させることにより、正常組織への線量寄与を抑え、目的部位へ線 量を集中させる放射線治療である。
IMRTは3次元原体照射(3-dimensional conformal radiation therapy, 3D-CRT)の1つであるが、
従来行われてきた3D-CRTとの大きな違いはインバースプランニングによる最適化計算である。従
来の 3D-CRT は、照射角度、照射ビームの形状、各角度の線量のウェイトを決定し、その結果か
ら線量分布を取得する方法である。一方、インバースプランニングは標的体積やリスク臓器への 線量制約を設定し、その目的が達成できるような照射野形状や線量ウェイトを、最適化計算を繰り 返し行うことで決定する方法である。インバースプランニングによる IMRT の線量分布は MLC を 用いて、標的体積と近接するリスク臓器との間に急峻な線量勾配を生みだす。そのため全ての治 療計画に対して、治療開始前に線量検証を実施し、計画線量と実際の照射線量を確認しなけれ ばならない。
線量検証は評価点線量検証と線量分布検証に分類される。現在一般的な手法は、吸収線量 の計測が可能な電離箱を用いて評価点の吸収線量の検証を行い、空間分解能に優れたフィル ムを用いて線量分布の検証を行う事である。
近年、線量分布の検証において解析が容易な二次元検出器および多次元検出器が急速に普 及している。しかし、そのような状況に対して多次元検出器に関する物理特性に関する報告は少 ないのが現状である。
そのため本研究では、線量検証における多次元検出器の不確かさを低減させるため、線質に よるファントム材質の深さスケーリング係数の検討を行った。
2
1.1.1 多次元検出器の特長
フィルムでは1度の照射で、基本的にCoronal(冠状面)、Sagittal(矢状面)、またはAxial(横断 面)の1 断面の線量分布しか得る事が出来ない。また、フィルムの種類によっては、照射後からス キャンするまでにしばらく時間を要するものもある。
これに対して、多数の半導体検出器または電離箱を一定間隔(一般的に5 mmもしくは10 mm)
に配列した多次元検出器は、治療計画装置で計算された計画線量とリニアックからの投与線量 の比較を照射後すぐに行う事が出来る。この時、測定線量と計画線量の各検出器における線量 差と位置誤差の統計的解析が可能である。また、二次元検出器と比べ、実際の治療と同じ条件 での全門検証が可能という利点がある。さらに、各門の統計解析並びに、Step and Shoot IMRTに おいては各セグメントの線量解析およびMLCの動作解析が可能な多次元検出器もある。
このように従来から行われていたフィルムによる線量分布検証を簡略化できる利点がある。
1.1.2 多次元検出器の問題点
前項で多次元検出器の特長を挙げたが、次のような問題点もある。
多次元検出器はフィルムに比べ空間分解能が低く、検出器間の線量分布は補間により評価さ れ、正確な線量相違の検出が困難である領域も存在する。また、臨床導入前に多次元検出器の 物理特性として、方向依存性、線量再現性、線量直線性、線量率依存性、温度依存性、照射野 依存性、体積平均効果などを十分に検証する必要がある。特に、全門検証において、検出器平 面に平行に入射するビームは、検出器の方向依存性により誤差を生じる可能性が大きい。
多くの多次元検出器は、検出器基板と固体ファントムから成り、正確な吸収線量を測定するた めには、使用されている固体ファントムの減弱特性およびフルエンス特性を考慮しなくてはならな い。
多次元検出器は比較校正により吸収線量評価が可能であるが、以上の問題点により、電離箱 による絶対線量評価やフィルムによる線量分布計測と比べ不確かさが多い。
3
1.2 研究の主題
IMRT の線量計算は通常の外部放射線治療と異なりインバースプランニングにより計算を行う ため、計算過程は複雑になる。また、治療計画や QA・QC が適切になされないと治療成績の低 下・有害事象の増加をもたらす危険性がある。そのため、治療計画の検証は重要な項目となる。
治療計画装置のコミッショニングは水を基準として行うため、ファントムを用いた測定を行う際は、
計画線量の確かさを向上させるため、ファントムの水に対する光子の減弱特性やフルエンス特性 を考慮する必要がある。本研究では多次元検出器において、より正確な吸収線量分布を計測す る事を目的とし、以下の研究を行った。
1. 複数のリニアックビームに対する多次元検出器ファントムの実効線減弱係数の計測
2. 多次元検出器ファントムの深さスケーリング係数Cplの算出
3. モデルプランによる計測線量と計画線量の比較
4. 多次元検出器の線量校正精度の検討
これら 4 項目の検討を、IMRT 専用リニアックである TomoTherapy(公称エネルギー6 MV, Accuray社)および汎用的なリニアックであるClinac21EX(公称エネルギー4 MV, 10 MV, Varian 社)で行った。TomoTherapyは専用治療計画装置で1門の固定照射の計画線量を計算する事が 出来ない。またフラットニングフィルターがない特種なビームプロファイルを持つ。そのため比較と して汎用的なリニアックのClinac21EXの4 MVおよび10 MVのX線についても検討を行った。
本研究では、各リニアックビームおよび各治療計画装置に対して、多次元検出器ファントムの 最適なCplを提案する。
4
2 章 多次元半導体検出器
2.1 多次元半導体検出器について
本研究において検討した多次元検出器は ScandiDos 社製の Delta4 である。Delta4 は IMRT やIMAT(Intensity Modulated Arc Therapy)、TomoTherapyのhelical IMRTなどの線量分布計測 を行い、治療計画装置で計算した線量分布と一致しているかを評価するQA機器である。その外 観を図2.1に示す。Delta4は円筒形ファントム内の直交2平面に1069個のp型シリコン半導体 検出器を配列した多列半導体ファントムである。検出器中央部分の 6 cm×6 cm の領域には 5 mm間隔で、その他の20 cm×20 cmの領域には10 mm間隔で、面積0.0078 cm2の半導体検出 器が配置されている。円筒形ファントムの直径は 22 cm で全長は 40 cm ある。検出器基板は、
Vertical方向軸から左右にそれぞれ40度、50度の角度を成して配置されている。
図2.1 Delta4の外観
5
線量検証において検証プランの照射が終わると即座に、図 2.2 に示す画面を出力する。画面 上部に 2 枚のディテクタで計測した相対線量分布を表示し、下部には Dose Profiles と Dose Statistics をタブの切り替えにより表示する。図 2.2 (a)に、ディテクタの相対線量分布と Dose Profilesの表示画面を示す。Dose Profilesでは、ディテクタ上における任意の直線上の計測線量
(プロット点)と計画線量(実線)を示している。(b)はディテクタの相対線量分布とDose Statisticsの 表示画面を示す。Dose Statisticsでは、プラン全体の計画線量と計測線量の統計的な誤差を示し ている。画面下部の左のグラフが計画線量と計測線量の線量誤差を1%ごとに頻度分けしたDose Deviation (DD)である。中央に表示されているグラフは計画線量と計測線量の位置誤差を1 mm ごとに頻度分けしたDistance To Agreement (DTA)である。右に表示されているグラフはプラン全 体の評価指標の1つとなる indexである。
ある基準点mと比較点cの indexは次式で表される。
2 acc 2 2
acc
2( , ) ( , )
) ,
( D
r r d
r r r r
rm c m c m c
ここでr(rm,rc)と(rm,rc)は基準点mと比較点cのDTAとDD、daccは位置誤差の施設許容 値、Daccは線量誤差の施設許容値である。各計測点mにおいて最少となるminとなるを 値 として、 値が各計算点cにおいて1以下の比率が施設基準を上回っているかどうかを検討する 事が indexによる評価手法である。
Bedfordらにより、IMRTおよびIMATの6例の線量検証において、電離箱の計測線量誤差と Dela4の計測線量誤差は最大でも2.5 %以内で一致したと報告されている 1)。またGeurtsらは、
TomoTherapyのhelical IMRT線量検証264例において、低線量域における電離箱の測定値と Delta4の測定値の差は最大で0.7 %であったと報告している2)。しかし、これらは評価および使用 経験の報告である。
(2.1)
6
(a) 任意の直線上の計画線量(実線)と計測線量(プロット点)
(b) プラン全体の計画線量と計測線的な誤差 図2.2 Delta4における線量検証の解析画面
7
2.2 多次元検出器のファントム材質
Delta4は検出器と検出器基板および円筒形ファントムにより構成されている。使用されているフ ァントム材質は、PMMA(Poly methyl methacrylate)とPlastic Water DT (PWDT)の2種類がある。
齋藤らの報告 3)では以下の方法でファントムの電子濃度*e[×1023 cm-3]などの基本データを 求めている。
ファントムの組成および密度は、カタログおよび文献から引用している。ファントムが原子番号 Zi、質量数Aiの元素で構成され、その重量比がwiである場合、単位質量当たりの電子数、すな わち電子密度e[g-1]は次式より算出される。
i i
i i A
A Z w N
e
ここでNAはアボガドロ定数でNA=6.022 × 1023 mol-1である。
また単位体積当たりの電子数、すなわち電子濃度e*[×1023 cm-3]は次式で計算される。
e* e
以上の方法により理論的に求められたPMMAおよびPWDTの2種類のファントムと水の元素 組成、質量密度 [g cm-3]、電子密度e[×1023 g-1]、電子濃度e*[×1023 cm-3]、ファントム/水の 相対電子密度(e)pl,water、相対電子濃度(e*)pl,waterおよび実効原子番号Z を表2.1に示す。
一方で、Delta4を使用する上でScandiDos社は、PMMAファントムで1.147、PWDTファントム で1.001 と各ファントムの相対電子濃度を記載、推奨している。特に、このPMMA の推奨値に対 するリファレンスとして、AAPM Report No.32 4)が示されている。しかし、そこでは、PMMAの相対 電子濃度が1.147である事の算出方法に関しての記載はなく、電子線測定の経験的値であり得る と記されている。
そのため本研究では、この齋藤らの報告3)をリファレンスデータとして用いる。
(2.2)
(2.3)
8
表2.1 水と固体ファントムの元素組成、質量密度、電子密度および電子濃度、実効原子番号3)
Components Water PMMA Plastic Water DT
H 0.119 0.0805 0.0740
B 0.0226
C 0.5998 0.4670
N 0.0156
O 0.888 0.3196 0.3352
Mg 0.0688
Al 0.0140
Cl 0.0024
[g cm-3] 0.998 1.190 1.039
e [×1023 g-1] 3.343 3.248 3.220
water pl, e)
( 1.000 0.972 0.963
e*
[×1023 cm-3] 3.336 3.865 3.345
water
* pl, e)
( 1.000 1.159 1.003
Z (m=3.5) 7.51 6.56 7.63
9
3 章 深さスケーリング
3.1 治療計画装置における深さスケーリング
現在、放射線治療において治療計画は CT 値を利用して線量計算が行われる。Hounsfield Unitで表されるCT値は、ピクセルごとの物質の線減弱係数mと水の線減弱係数wとを用いて 以下の式で計算される。
w w
1000 m
HU
放射線治療に用いられる高エネルギー光子と物質の相互作用はコンプトン散乱が主である。こ れに対して、kVCTでのX線と物質の相互作用は光電吸収とコンプトン散乱である。したがって、
深部量を評価する場合、光電吸収とコンプトン散乱の断面積で決定されるCT値を、コンプトン散 乱の断面積で決定する単位体積当りの電子数、すなわち電子濃度に変換する必要がある。この ため治療計画用CT装置で電子濃度が既知のファントムを用いて撮像し、得られたCT値と電子 濃度の関係、すなわちCT値-電子濃度変換テーブルを作成し、治療計画装置での線量計算で 深さスケーリングを行っている。
治療計画装置では通常、計算アルゴリズムとして Convolution/SuperPosition 法が用いられる。
Convolution/SuperPosition法はモデルベースアルゴリズムの1つであり、ある点で解放されるエネ ルギー(Total Energy Released per Mass; TERMA)と、その点からの線量付与の広がりを示す kernel を重畳積分することで線量分布を計算するアルゴリズムである。Convolution/SuperPosition 法の計算式を以下に示す。
T r h r r dr
r
D() ( ) ( ; )
こ こ でT(r
)は 電 子 濃 度
の 物 質 内 の 相 互 作 用 点r に お け る TERMA を 示 し 、 ); (r
r
h は電子濃度
の相互作用点rから電子濃度 の計算関心点rへの線量付与の 広がりを示す。式(3.2)から分かるように、治療計画装置でSuperPosition法などを用いて線量計算を行うために、
各位置座標rに電子濃度 を与えなくてはならない。これは、まずCT画像の計算領域内の各ピ クセルに対して、3次元的に平均化処理を行い、2 mm×2 mm×2 mm程度のボクセルに変換し、
平均化されたCT値を持つ。その後、線源を基準(r0)とした位置座標グリッドrが与えられる。この 各rに対して、CT値‐電子濃度変換テーブルより、各 が与えられる。SuperPosition法において、
このにより物質中の線量付与の広がり方、つまりkernelの挙動が変化する。またTERMAとは、
質量減弱係数とエネルギーフルエンスの積であるため、相互作用点rの持つ により質量減弱 係数が変化し、一般的に次式で表される。
(3.2) (3.1)
10
e El dl
r r r Φ E r r
T ( ,)
2 0 0) ( ) ( )
(
ここでは線減弱係数、E は入射光子のエネルギー、Φ(r0)は線源
r0からの入射光子フルエ
ンス、lは物質表面から相互作用点rまでの深さを表す。
エネルギーや入射光子フルエンス、線減弱係数は治療計画装置において、ビームモデリング 時の測定データから決められる。そのため、モデルベースアルゴリズムを線量計算に用いる治療 計画装置において、正確に電子濃度 を位置座標グリッドrに、すなわち計算対象の物質に与 える事は、正確な線量計算を行う上で必要不可欠と言える。
(3.3)
11
3.2 固体ファントムの深さスケーリング
水吸収線量計測において固体ファントムを利用する場合、深さスケーリングによる補正を施す 必要がある。これは、固体ファントムの密度と元素組成が基準媒質である水と異なることによって、
ファントム内での放射線の吸収・散乱に違いが生じるためである。この2つの媒質の深さを関係づ け、水等価深を算出するための係数が深さスケーリング係数Cplであり、次式で定義される。
pl water
pl d
C d
ここで、dwaterは水での測定深であり、dplは固体ファントムでの水等価深である。
固体ファントムの深さスケーリング係数Cplを決定する方法は主に2つある。1つは水と固体ファ ントムの電子濃度比による深さスケーリングである。このスケーリング法は2.1項で述べたようにコン プトン効果の断面積が電子濃度に依存する事を利用する。深さスケーリング係数 Cpl は水と固体 ファントムの相対電子濃度(e*)waterと(*e)plの比から決定し、次式により算出する。
water e*
* pl e pl
water
pl ( )
) (
d C d
ここで(e*)waterと(e*)plはそれぞれ水と固体ファントムの相対電子濃度である。
2 つ目のスケーリング法は水と固体ファントムの実効線減弱係数比から求める方法である。この 方法の利点は実際に使用するビームの深部線量、すなわち線質から求める事ができ、全ての相 互作用を考慮している点である。本研究では水とファントムにおいて、深部線量比より各実効線減 弱係数を求め、次式によりCplを算出する。
water eff
pl eff pl
water
pl ( )
) (
d C d
ここで(eff)waterと(eff)plは水と固体ファントムの実効線減弱係数である。
(3.4)
(3.5)
(3.6)
12
4 章 深さスケーリング係数
C
plの決定4.1 目的
前述のように、線量検証には様々な計測方法が存在する。また、ほとんどの計測方法で固体フ ァントムが用いられている。固体ファントムは密度や元素組成等が多様なため、水と比べた固体フ ァントムの光子に対する特性を計測に反映する必要がある。つまり、ファントムを用いた線量検証 において、計画線量の確かさを向上させるためには、ファントムの水に対する光子の減弱特性、
すなわち深さスケーリングを考慮する必要がある。
この深さスケーリングを治療計画装置で行う際、CT 値-相対電子濃度変換テーブルを用いる 計画装置とCT値-物理密度変換テーブルを用いる計画装置がある。
しかし通常、CT 値-物理密度変換テーブルを用いる治療計画装置で、Delta4 ファントムに物 理密度による深さスケーリングを適用しても、治療計画装置の計画線量とDelta4の計測線量は一 致しない。この原因が深さスケーリング係数にあると考え、リニアックから出力されるビームにおけ る実効線減弱係数を計測および計算により求め、Delta4の2つのファントム材質における深さスケ ーリング係数Cplを求める事を本章の目的とした。
表4.1にPMMAおよびPWDTの物理密度、相対電子濃度およびScandiDos社の推奨値を示 す。
表4.1 PMMAとPWDTの物理密度、相対電子濃度3)およびScandiDos社推奨値 物理密度 相対電子濃度 ScandiDos社推奨値
PMMA 1.19 1.159 1.147
PWDT 1.04 1.003 1.001
13
4.2 方法
4.2.1 実効線減弱係数effの決定
リニアックから出力されるビームに対する水およびPMMAのeff cm-1は、SCD一定の元、深さ に対する計測値の変化から求めた。散乱線の影響を少なくするため、TomoTherapy においては 照射野を2.5 cm×6.25 cm、Varian Clinac21EXにおいては4 cm×4 cmに設定した。水または PMMA中で、電離箱線量計(TM30013, PTW社)を用いてビーム軸上での深さを変化させた場合 の電位計(UNIDOS webline, PTW)の表示値を指数関数近似し、得られた回帰曲線の傾きから
effを決定した。測定点は5 cmから20 cm深までの6点の表示値を用いた。
PWDT については複数のスラブファントムを所有していないため、以下の方法で半実験的に
PWDT eff)
( 求めた。
線減弱係数は物質の組成と光子のエネルギーによって決まる。そのためファントムのeffを 求めるために、各線質の実効的なエネルギーEeffを求める必要がある。この実効的なエネルギー Eeffを求めるために、本研究ではNISTの光子エネルギーに対する元素の質量減弱係数 の データと、文献3)より引用した水の元素組成、重量比wiおよび質量密度 を用いて、光子エネル ギー(1~5 MeV)に対する水の線減弱係数waterを得た。その結果を図4.1に示す。
そしてこの線減弱係数waterに、計測により得た各線質の水の実効線減弱係数(eff)waterを 代入する事で各線質のEeffを得た。
同様にPWDTの光子エネルギーに対する線減弱係数PWDTを、NISTの光子エネルギー(1~5 MeV)に対する元素の質量減弱係数 のデータと、文献 3)より引用した PWDTファントムの元 素組成、重量比wiおよび質量密度より得た。
このPWDTに、各線質のEeffを代入する事で、各線質のPWDTの実効線減弱係数(eff)PWDT を得た。
図4.2に水、PMMAおよびPWDTの光子エネルギーに対する線減弱係数の変化を示す。
4.2.2 深さスケーリング係数
C
plの算出各線質において、水の実効線減弱係数(eff)waterに対する 2 つの固体ファントムの実効線減 弱係数から、式(3.6)より深さスケーリング係数Cplを算出した。
14 2 x 10-2
4 x 10-2 6 x 10-2 8 x 10-2
0 1 2 3 4 5 6
photon energy (MeV) linear attenuation coefficient;
(cm-1 )図4.1 水の光子エネルギーに対する線減弱係数の変化
2 x 10-2 4 x 10-2 6 x 10-2 8 x 10-2
0 1 2 3 4 5 6
water PWDT PMMA
line ar a tt enu at io n c oe ff ic ie nt ; (c m
-1)
photon energy (MeV)
図4.2 各ファントムの光子エネルギーに対する線減弱係数の変化
15
4.3 結果
4.3.1 実効線減弱係数eff
TomoTherapyにおいて深部線量から求めた指数関数近似式は水ではrD89.1e0.0500dとなり、
PMMA で はrD108.0e0.0578d と な っ た 。 よ っ て 、 水 と PMMA の 実 効 線 減 弱 係 数eff は 0500
. 0 )
(eff water cm-1, (eff)PMMA0.0578 cm-1 と決定した。また、この(eff)waterを図(4.1) に代入し、この線質におけるEeffは1.95 MeVとなった。方法4.2.1より(eff)PWDT0.0501 cm-1 となった。
Varian Clinac21EX において、深部線量から求めた指数関数近似式は 4 MV で、水で e d
rD112.8 0.0529 、PMMA で rD109.1e0.0610d と な っ た 。10 MV に お い て は 、 水 で e d
rD112.4 0.0337 、PMMAでrD109.5e0.0388dとなった。
よって、4 MVにおいて(eff)water0.0610 cm-1, (eff)PMMA0.0529 cm-1と決定した。また、
10 MVにおいては(eff)water0.0388 cm-1, (eff)PMMA0.0337 cm-1と決定した。この各エネ ルギーにおける(eff)waterを式(4.1)に代入し、各ビームのEeffは4 MVで1.75 MeV、10 MVで 4.06 MeVとなった。この各Eeffと方法4.2.1より4 MVにおいて(eff)PWDT0.0530 cm-1、 10 MVにおいて(eff)PWDT0.0337 cm-1となった。
この結果を表4.1および図 4.3に示す。この結果より、フラットニングフィルターのない特殊なビ ームプロファイルの TomoTherapy の 6 MV X 線の実効エネルギーは汎用的なリニアックである Varian Clinac21EXの4 MV X線の実効エネルギーと近い事が分かった。この結果から各線質の Cplを次項で求める。
表4.1 各線質におけるeffとEeff
TomoTherapy 6 MV Clinac21EX 4MV Clinac21EX 10MV
eff(cm-1)
Water 0.0500 0.0529 0.0337
PMMA 0.0578 0.0610 0.0388
PWDT 0.0501 0.0530 0.0337
Eeff (MeV) 1.95 1.75 4.06
16
20 40 60 80 100
0 5 10 15 20 25
Water PMMA
relative depth dose; rD
depth in phantom; d (cm) rD=89.1e -0.0500d rD=89.1e -0.0500d
rD=108.0 e -0.0578d
(a) TomoTherapy 6MV X線
20 40 60 80 100
0 5 10 15 20 25
Water PMMA
relative depth dose; rD
depth in phantom; d (cm) rD=109.1e -0.0610d
rD=112.8 e-0.0529 d
(b) Varian Clinac21EX 4MV X線
20 40 60 80 100
0 5 10 15 20 25
Water PMMA
relative depth dose;rD
depth in phantom; d (cm) rD=112.4 e-0.0337 d
rD=109.5 e-0.0388 d
(c) Varian Clinac21EX 10MV X線
図4.3 各ビームの深部線量曲線とその指数関数近似式
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表4.2 各線質に対するPMMAおよびPWDTのCpl
Clinac21EX 4 MV TomoTherapy 6 MV Clinac21EX 10MV
PMMA 1.158 1.157 1.151
PWDT 1.002 1.002 1.001
4.3.2 深さスケーリング係数
C
pl式(3.6)および表4.1に示した各線質のeffより、PMMAとPWDTのCplはTomoTherapyにお いて、(Cpl)PMMA=1.157、(Cpl)PWDT=1.002 となった。Varian Clinac21EX においては 4 MV で
PMMA pl)
(C =1.158、(Cpl)PWDT=1.002 となり、10 MVでは(Cpl)PMMA =1.151、(Cpl)PWDT=1.001と なった。この結果を表4.2にまとめて示す。前項の結果と同様に、TomoTherapyの6 MV X線と Clinac21EXの4 MV X線はPMMAおよびPWDTの双方でCplは非常に近い値となった。しか しPMMAファントムでは、Clinac21EXの10 MV X線のCplは2つの線質とは異なる値を示した。
4.4 小括
本章ではTomoTherapyおよびVarian Clinac21EXの各線質におけるPMMAおよびPWDTの Cplを求めるため、計測および計算を行った。本章で求めた Cplは、TomoTherapy および Varian Clinac21EX 4 MV X線の比較的、Eeffが低いX線で、表2.1に示したリファレンスデータの相対
電子濃度(e*)pl,waterと非常に近い値を示した。
しかし、Delta4のベンダーであるScandiDos社の推奨値は本結果とは異なる。ScandiDos社推 奨のDelta4ファントム材質の各推奨値は表4.1に示したように、PMMAで1.147、PWDTで1.001 である。この値が全ての線質において推奨されている。
そ こ で 本 研 究 の Cpl が臨 床 運用 上、 妥 当で ある か の 検討を 行 う必 要が あ る 。 次章 で は TomoTherapy 6 MV、Varian Clinac21EX 4 MVおよび10 MVにおいて実際にモデルプランを作 成し、治療計画装置の計画線量とDelta4および電離箱の計測線量を比較する。各ファントムの深 さスケーリング係数として最適な値を検討する。
18
5 章 モデルプランによる最適な深さスケーリング係数の検討 5.1 目的
前章では水および Delta4 のファントム材質、PMMA と PWDT のeffを計測および計算により 求め、各線質に対するPMMAおよびPWDTのCplを求めた。治療計画装置における深さスケー リングは通常、CT値を相対電子濃度もしくは物理密度に変換する事で行う。
しかし、PMMAおよびPWDTのCpl、物理密度およびScandiDos社の推奨値には差異があっ た。
そのため、前章で求めたCplが適切か明らかにするため、各線質に対する各ファントムの最適な 深さスケーリング係数を検討する。
本章ではTomoTherapy 6 MV X線、Varian Clinac21EXの4 MV X線および10 MV X線に対 して、表5.1に示した各ファントムの3つの深さスケーリング係数を用い、作成したモデルプランで Delta4による計測を行った。
同時に、Delta4ディテクタの計測線量の確かさを明らかにするため、Varian Clinac21EXの各線 質に対して、Delta4 線量校正ファントムに挿入した電離箱の計測線量と Pinnacle および Eclipse の計画線量を比較、検討した。
この2つの検討を行う事により、Delta4ファントム材質の最適な深さスケーリング係数を明らかに することを本章の目的とした。
表5.1 各線質に対するCpl、物理密度およびScandiDos社推奨値 (a) PMMAファントム
PMMA Cpl 物理密度 ScandiDos
Clinac21EX 4 MV 1.158
1.190 1.147 TomoTherapy 6 MV 1.157
Clinac21EX 10 MV 1.151
(b) PWDTファントム
PWDT Cpl 物理密度 ScandiDos
Clinac21EX 4 MV 1.002
1.040 1.001 TomoTherapy 6MV 1.002
Clinac21EX 10 MV 1.001
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5.2 方法
5.2.1
TomoTherapy
のモデルプランによる検証TomoTherapyはHelical IMRTという特殊な回転照射を行うIMRT専用機器であるため、Delta4 デジタルファントムの中心部、直径6 cm、長さ20 cmの円柱形のPTVを作成した。制約条件は、
このPTVのD95に対して2 Gyを与え、治療計画装置TomoPlanningStation (ver.4.1.2, Accuray 社)を用いてプランを作成した。表5.1に示した2つのファントムのそれぞれ3つの深さスケーリン グ係数を用いた計6つのプランに対して、Delta4ディテクタの中心素子における計測線量と計画 線量を比較、検討した。これはDelta4校正時に中心素子の線量を基準として各ディテクタの感度 を校正するためである。
IMRT 治療計画は最適化計算を繰り返し行い、照射条件を決定するが、本検討では 6 つのモ デルプランの照射条件を同一にする必要がある。そのため1つのモデルプランを作成後、他の5 つのモデルプランは線量検証用 (DQA) プランで作成した。それにより、全てのモデルプランで 同一の照射条件となり、線量計算の際、深さスケーリング係数を変える事で計画線量のみ異なる プラン間の検討を行った。
なお、TomoPlanningStationはIMRT専用の治療計画装置であるため固定1門での照射計画 を作成する事が出来ない。そのため、TomoTherapyにおいてはDelta4のディテクタによる計測線 量に対するTomoPlanningStationの計画線量の検討のみを行い、校正用ファントムに挿入した電 離箱の計測線量と計画線量とのの検討は行わなかった。図5.1にTomoTherapyにおけるモデル プランのAxial, CoronalおよびSagittalの3断面の線量分布を示す。
また、本検討においてはディテクタが変わる事によるソフトウェア上の不確かさを無くすため、
PWDTファントムのDelta4ディテクタをPMMAファントムに差し替え、計測値を得た。
5.2.2 Varian
Clinac21EX
のモデルプランによる検証Varian Clinac21EX は TomoTherapyとは異なり、複数の汎用治療計画装置によっての治療計 画を作成する事が可能である。本研究では、治療計画装置にEclipse(ver.10.0, Varian社)および Pinnacle(ver.9.2, PHILIPS社)を用いた。Eclipseは通常、深さスケーリングにCT値‐電子濃度変換 テーブルを用い、PinnacleではCT値‐物理密度変換テーブルを用いる。
この2つの治療計画装置を用いて、Delta4のデジタルファントムに対して、照射野10 cm×10 cm、照射角度0度、90度、180度、270度から100 MUずつ照射するモデルプランを作成した。
TomoTherapyと同様に表5.1に示した6つの深さスケーリング係数に対して計画を作成し、評価 はディテクタの中心素子における計測線量と計画線量を比較、検討した。このモデルプランの Axial面の線量分布を図5.2に示す。
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5.2.3 Varian
Clinac21EX
の校正ファントムによる検証Delta4 の線量校正は、各校正ファントムに電離箱(SCD=100 cm)を挿入し、電位計を用いて、
照射野10 cm×10 cm、照射角度0度から200 MU照射し、絶対線量を計測する。この絶対線量 が、同じ条件で照射されたディテクタの中心素子の感度と等しくなるように校正する。また、この絶 対線量は5 cm深での水吸収線量と等しくなるように各校正ファントム厚が調整されている。
つまり、各校正ファントムに挿入した電離箱の絶対線量、校正ファントムにおける電離箱の空洞 部分に対して治療計画装置が計算する計画線量、および深さ5 cmの水吸収線量、この3つの線 量が等しくないと、Delta4の計測線量には不確かさがあるという事になる。
そのため、Delta4校正ファントムのCT画像を取得し、PinnacleおよびEclipseで、Delta4の線 量校正と同条件のモデルプランを作成した。計画線量を算出するためにファントム中のファーマ 形電離箱の有感体積部分にROI (Region Of Interest)を作成し、このROIの線量の中央値を計画 線量とした。図5.3にEclipseでのモデルプラン作成画面を示す。
電離箱(TM30013, PTW社)および電位計(UNIDOS webline, PTW社)を用いて、各線質に対 する各ファントムの校正線量を計測した。他のモデルプランと同様に、表 5.1に示した 2 つのファ ントムとそれぞれ3つの深さスケーリング係数を用いた計6つのプランに対して検討を行った。
さらに、比較のためモニタ校正用の一軸型水槽と、同型の電離箱と電位計を用いて、深さ5 cm の水吸収線量を各線質において計測した。
図5.1 TomoTherapyにおけるモデルプランの3断面の線量分布
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図5.2 Varian Clinac21EXにおけるモデルプランの線量分布
図5.3 Eclipseのモデルプラン作成画面
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5.3 結果と考察
5.3.1 TomoTherapyにおける検証
方法5.2.1に示したモデルプランにおいて、PMMAファントムのDelta4中心素子の計測線量は 1.959 Gyとなり、PWDTファントムのDelta4中心素子の計測線量は2.043 Gyとなった。
PMMA ファントムのモデルプランにおいて、Delta4 中心部の各計画線量は物理密度を深さス ケーリング係数として用いたプランで1.893 Gy、Cplを用いたプランで1.921 Gy、ScandiDos社推奨 値を用いたプランで1.926 Gyとなった。PWDTファントムのモデルプランにおいて、Delta4中心部 の各計画線量は物理密度を深さスケーリング係数として用いたプランで2.006 Gy、Cplを用いたプ ランで2.033 Gy、ScandiDos社推奨値を用いたプランで2.035 Gyとなった。この結果をまとめて表 5.2に示す。
TomoTherapyでは通常、深さスケーリングにCT値-物理密度変換テーブルを用いる。しかし、
本検討では物理密度を深さスケーリング係数に用いたプランとDelta4ディテクタの計測線量は一 致しなかった。
モデルプランに対するDelta4の計測線量は、PMMAおよびPWDT共に、Cplを用いた計画線 量よりも、ScandiDos社推奨値を用いた計画線量と一致した。
表5.2 TomoTherapyにおけるDelta4の計測線量と計画線量
()内はDelta4の計測線量に対する計画線量の誤差(%) 治療計画装置 ファントム 計測線量
(Gy)
計画線量 (Gy) (誤差(%))
物理密度 Cpl ScandiDos TomoPlannigStation PMMA 1.959 1.893 (-3.4) 1.921 (-2.0) 1.926 (-1.7)
PWDT 2.043 2.006 (-1.8) 2.033 (-0.5) 2.035 (-0.4)
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5.3.2 Varian
Clinac21EX
における検証5.3.2.1 Delta4の計測線量と各計画線量の検証
方法5.2.2に示したモデルプランにおいて、PMMAファントムのDelta4中心素子の計測線量は 4 MVで2.407 Gy、10 MVで2.986 Gyとなり、PWDTファントムのDelta4中心素子の計測線量は 4 MVで2.808 Gy、10 MVで3.292 Gyとなった。
Pinnacleで作成したPMMAファントムのモデルプランにおいて、Delta4中心部における各計画 線量は、物理密度を深さスケーリング係数として用いたプランが 4 MV で 2.319 Gy、10 MV で 2.938 Gy、Cplを用いたプランが4 MVで2.350 Gy、10 MVで2.974 Gy、ScandiDos社推奨値を 用いたプランが4 MVで2.360 Gy、10 MVで2.974 Gyとなった。
同様にPinnacleで作成したPWDTファントムのモデルプランにおいて、Delta4中心部における 各計画線量は、物理密度を深さスケーリング係数として用いたプランが4 MVで2.702 Gy、10 MV で3.188 Gy、Cplを用いたプランが4 MVで2.742 Gy、10 MVで2.974 Gy、ScandiDos社推奨値 を用いたプランが4 MVで2.742 Gy、10 MVで3.223 Gyとなった。
また、Eclipseで作成したPMMAファントムのモデルプランにおいて、Delta4中心部における各 計画線量は、物理密度を深さスケーリング係数として用いたプランが4 MVで2.352 Gy、10 MV で2.943 Gy、Cplを用いたプランが4 MVで2.393 Gy、10 MVで2.976 Gy、ScandiDos社推奨値 を用いたプランが4 MVで2.395 Gy、10 MVで2.978 Gyとなった。
同様に Eclipseで作成したPWDTファントムのモデルプランにおいて、Delta4中心部における 各計画線量は、物理密度を深さスケーリング係数として用いたプランが4 MVで2.763 Gy、10 MV で3.207 Gy、Cplを用いたプランが4 MVで2.810 Gy、10 MVで3.240 Gy、ScandiDos社推奨値 を用いたプランが4 MVで2.810 Gy、10 MVで3.240 Gyとなった。
この結果をまとめて表5.3に示す。
Pinnacle および Eclipse とも物理密度を深さスケーリング係数に用いた計画線量は、ファントム やビームエネルギーに因らず、Delta4の計測線量と一致しなかった。また TomoTherapy と同様、
全てのモデルプランで深さスケーリング係数にCplを用いた計画線量よりもScandiDos社推奨値を 用いた計画線量の方が、Delta4の計測線量と一致した。
PinnacleおよびEclipseを用いた本検討では、TomoTherapyに比べ、計画線量に対する深さス ケーリング係数の影響が少なかった。前述のように治療計画装置は通常、深さスケーリングに CT 値-相対電子濃度変換テーブルまたは CT 値-物理密度変換テーブルを用いる。しかし、治療 計画装置は計算速度を上げるため、変換テーブルを連続値ではなく、離散値として処理をしてい る。本結果より、PinnacleおよびEclipseは、TomoTherapyに比べ、この離散化誤差が大きい事が 考えられる。
TomoTherapyの6 MV X線のみでなく、Varian Clinac21EXの4 MV X線および10 MV X線 でも、モデルプランによる検証は、ScandiDos社推奨値を深さスケーリング係数に用いた計画線量 がDelta4の計測線量と最も一致した。
この原因として、治療計画装置の計算アルゴリズムの計算精度、リニアックビームの日々の出力
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変動などが考えられる。10 MV X 線では他の線質と異なり、Pinnacle およびEclipse の双方で、
PWDTの方がPMMAよりも誤差が大きかった。図4.2に示したようにPWDTファントムは、光子エ ネルギーに対する線減弱係数および相対電子濃度が水と非常に近い。そのため理論上は水と減 弱特性の異なるPMMAファントムに比べ、PWDTファントムの方が正確な計画線量と計測線量を 得る事が出来るはずである。この事から、各線質における Delta4 の計測線量の確かさ、つまり
Delta4 の線量校正の確かさを確認、検討する必要がある。そこで線量校正ファントムの計測線量
と計画線量との比較を行い、次項にその検証結果を示す。
表5.3 Varian Clinac21EXにおけるDelta4の計測線量と各計画線量
()内はDelta4の計測線量に対する計画線量の誤差(%) (a) 4 MV X線
治療計画装置 ファントム 計測線量 (Gy)
計画線量(Gy)と誤差(%)
物理密度 Cpl ScandiDos Pinnacle PMMA 2.407 2.319 (-3.6) 2.350 (-2.3) 2.360 (-1.9)
PWDT 2.798 2.702 (-3.4) 2.742 (-2.0) 2.742 (-2.0) Eclipse PMMA 2.407 2.352 (-2.3) 2.393 (-0.6) 2.395 (-0.5) PWDT 2.798 2.763 (-1.3) 2.810 (0.4) 2.810 (0.4)
(b) 10 MV X線 治療計画装置 ファントム 計測線量
(Gy)
計画線量(Gy)と誤差(%)
物理密度 Cpl ScandiDos Pinnacle PMMA 2.986 2.938 (-1.6) 2.974 (-0.4) 2.974 (-0.4)
PWDT 3.269 3.188 (-2.5) 3.223 (-1.4) 3.223 (-1.4) Eclipse PMMA 2.986 2.943 (-1.5) 2.976 (-0.4) 2.978 (-0.3) PWDT 3.269 3.207 (-1.9) 3.240 (-0.9) 3.240 (-0.9)
表5.4 Varian Clinac21EXにおけるDelta4校正ファントムに挿入した電離箱の 計測線量と各計画線量
()内は計測線量に対する計画線量の誤差(%) (a) 4 MV X線
治療計画装置 ファントム 計測線量 (Gy)
計画線量(Gy)と誤差(%)
物理密度 Cpl ScandiDos Pinnacle PMMA 1.827 1.798 (-1.6) 1.805 (-1.2) 1.806 (-1.2)
PWDT 1.817 1.787 (-1.6) 1.798 (-1.0) 1.798 (-1.0) Eclipse PMMA 1.827 1.829 (0.1) 1.839 (0.6) 1.840 (0.7) PWDT 1.817 1.806 (-0.6) 1.819 (0.1) 1.819 (0.1)
(b) 10 MV X線 治療計画装置 ファントム 計測線量
(Gy)
計画線量(Gy)と誤差(%)
物理密度 Cpl ScandiDos Pinnacle PMMA 1.924 1.917 (-0.3) 1.924 (0.0) 1.925 (0.0)
PWDT 1.934 1.914 (-1.0) 1.923 (-0.6) 1.923 (-0.6) Eclipse PMMA 1.924 1.918 (-0.3) 1.924 (0.0) 1.925 (0.1) PWDT 1.934 1.905 (-1.5) 1.914 (-1.0) 1.914 (-1.0)