5.4.1 TomoTherapy における最適な深さスケーリング係数
TomoTherapy 6 MV X線におけるDelta4ファントム材質の最適な深さスケーリング係数を検討 するため、モデルプランを作成し、計測を行った。
通常、CT値-物理密度変換テーブルを用いて深さスケーリングを行うTomoPlanningStationに おいて、物理密度を深さスケーリング係数に用いた計画線量と、Delta4の計測線量はファントム材 質によらず一致しなかった。Delta4の計測線量は、Cplを深さスケーリング係数に用いた計画線量 よりもScandiDos社推奨値を深さスケーリング係数に用いた計画線量の方が一致した。
本結果より、TomoTherapy では、Delta4 ファントム材質の最適な深さスケーリング係数は ScandiDos社推奨値であり、PWDTファントムのDelta4は単純な照射条件において、計画線量と 計測線量が非常によく一致する事が明らかになった。
27
5.4.2 Varian Clinac21EX における最適な深さスケーリング係数
Varian Clinac21EXの4 MV X線および10 MV X線におけるDelta4ファントム材質の最適な 深さスケーリング係数を検討するため、Pinnacle および Eclipse を用いてモデルプランを作成し、
計測を行った。
Pinnacle および Eclipse において、物理密度を深さスケーリング係数に用いた計画線量と、
Delta4の計測線量は一致しなかった。
Pinnacle で作成した4 MV X線を除いて、各線質で深さスケーリング係数に CplとScandiDos 社推奨値を用いた計画線量はほぼ等しかった。またPinnacleで作成した4 MV X線はPMMAお よびPWDTの双方で計画線量と計測線量の誤差が約2%あり、一致しなかった。
また、本検討では10 MV X線において、僅かではあるがPMMAファントムの方がPWDTファ ントムよりも計画線量と計測線量の誤差が少なかった。
本結果より、Varian Clinac21EXの4 MV X線および10 MV X線では、Delta4ファントム材質の 最適な深さスケーリング係数はScandiDos社推奨値であるが、Pinnacleの4 MV X線に対して、
深さスケーリング係数を含め更なる再考の必要性が示唆された。
5.4.3 Varian Clinac21EX における Delta4 の線量校正の確かさ
Varian Clinac21EXの4 MV X線および10 MV X線におけるDelta4ディテクタの計測線量の 確かさを明らかにするため、Delta4 線量校正ファントムに挿入した電離箱の計測線量と Pinnacle およびEclipseの計画線量、さらに5 cm深の水吸収線量を比較、検討した。
4 MV X線において各校正ファントムの計測線量とPinnacleの計画線量は、約1%の誤差があ った。10 MV X線においてはPWDTの校正ファントムの計測線量とEclipseの計画線量は1%の 誤差があった。
また5 cm深の水吸収線量と4 MV X線のPMMAおよびPWDT校正ファントムの計測線量と の線量誤差はそれぞれ0.9%、0.4%となった。10 MV X線に対するPWDT校正ファントムの計測 線量との誤差は0.5%となった。
本結果により、水5 cm深と等価となるように調整されているDelta4の線量校正ファントムのファ ントムスケーリングを考慮した線量校正を行う必要がある事が示唆された。
28
6 章 結語
現在、IMRT において線量検証には様々な方法が存在し、利便性の高い多次元検出器は急 速に普及している。しかし、多次元検出器による線量検証は不確かさが多く、正確な計測結果を 得るためには、計画線量および計測線量において確かさを得る事が重要である。
そのため本研究では、ビームエネルギーに対する多次元検出器のファントム材質の最適な Cpl
を検討するため、行った研究を以下に示す。
1. TomoTherapy 6 MV X線、Varian Clinac21EX 4 MV X線および10 MV X線において、水と 多次元検出器のファントム材質、PMMAおよびPWDTの実効線減弱係数effの計測と計算 を行い、Cplを得た。この結果、ビームエネルギーごとにCplは変化し、線質によるCplが必要と なる可能性が示唆された。
2. 各線質においてモデルプランを作成し、物理密度、CplおよびScandiDos社推奨値の3つの 深さスケーリング係数を用いて計算した計画線量と、Delta4の計測線量を比較した。Pinnacle の4 MV X線を除いて、全ての線質でScandiDos社推奨値を使用する事で問題がない事が 明らかになった。
3. Delta4 ディテクタの計測線量の確かさを確認するため、線量校正ファントムに挿入した電離 箱の計測線量、治療計画装置の計画線量および5 cm深の水吸収線量を比較した。その結 果、エネルギーに対するファントムの減弱特性を校正ファントムに対して考慮しなくてはなら ない可能性が示唆された。
本研究により、線質ごとにPMMAおよびPWDTの最適な深さスケーリング係数が明らかになり、
線質と治療計画装置の組み合わせによって計画線量の精度は異なった。同時にエネルギーに対 するファントムの減弱特性を線量校正ファントムに考慮しなくてはならない可能性も明らかになっ た。
そのため、今後の研究では線量校正ファントムの深さスケーリングやフルエンススケーリングを 考慮した線量校正方法を提案する事で、Delta4 による線量検証において、より正確な計画線量と 計測線量を得る事に寄与したいと考えている。
29
7 章 参考文献
1) James L Bedford, et al.: Evaluation of the Delta4 phantom for IMRT and VMAT verification.
Phys. Med. Biol. 54, N167-N176, 2009
2) M. Geurts, et al.: Longitudinal study using a diode phantom for helical tomotherapy IMRT QA.
Med. Phys. 36, 4977-4983, 2009
3) 齋藤秀敏, 他: 光子ビーム線量測定のための固体ファントムの減弱特性, 医用標準線量 10: 19-28, 2005
4) Faiz M. Khan, et al.: AAPM Report No.32, Clinical electron beam dosimetry. 83, 1991 5) 河内, 遠山, 小島, 他:強度変調放射線治療の線量検証法, JJMP 30, 21-34, 2010 6) [OnLine] Available: NIST: X-Ray Mass Attenuation Coefficients
http://www.nist.gov/pml/data/xraycoef
7) Katja M. Langen, et al.: QA for helical tomotherapy: Report of AAPM Task Group 148. Med.
Phys. 37, 4817-4853, 2010
8) 日本放射線腫瘍学会編: 強度変調放射線治療(IMRT)ガイドライン, 2008
9) Nikos Papanikolaou, et al.: AAPM Report No.85 Tissue inhomogeneity corrections for megavoltage photon beams, 47-54, 2004
10) 荒木不次夫: 水等価固体ファントムによる吸収線量測定に必要な物理データの算出, 医用 標準線量 14, 19-24, 2009
11) Ramaswamy Sadagopan, et al.: Characterization and clinical evaluation of a novel IMRT quality assurance system. Jornal of Applied Clinical Medical Physics, 10, 104-118, 2009 12) 遠山尚紀, 幡野和男, 他: 詳説 強度変調放射線治療 物理・技術的ガイドラインの詳細,
中外医学社, 2010
13) 日本医学物理学会編: 外部放射線治療における吸収線量の標準測定法, 通商産業研究社, 2002
14) Faiz M. Khan: The Physics of Radiation Therapy. Wolters Kluwer, 2010
15) 橋本慎平: 補償フィルタIMRTの吸収線量測定に関する研究, 首都大学東京大学院人間健 康科学研究科放射線科学系 修士論文, 東京, 2009