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プロクラステス解法の体系化

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(1)

プロクラステス解法の体系化

その他のタイトル A Systematization of Procrustes Analyses

著者 柴田 満

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 20

号 1

ページ 15‑44

発行年 1988‑12‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00022636

(2)

プロクラステス解法の体系化

柴 田

A Systematization of Procrustes Analyses  Mitsuru SHIBATA 

Abstract 

The  purpose  of  this  study , is  to  systematize  the  Procrustes  analyses  and  is  to  propose  the  criteria  of  application for a synthetic  system  for  confirming  a multidimensional  structure  model.  Nowadays,  Procrustes  analy‑

ses  have  been  generalized  so  that  the  methods  can  be  applicable  to  dif ferrent  multivariate  solutions  from  i:he  different  many  (at  least  two  or  more)  groups. 

The author pointed  out  that  every  sort  of  Procrustes  analysis  is  mathe‑

matically  the  special  case  of  the  generalized  Procrustes analysis and he pro‑

posed  the criteria  for its  application  from a new  point  of  view  in  this  frame work.  And  the  hierarchical  structure  of  these criteria  for  application  was  ex plained  by  means  of  both  mathematical  formulations  and  also  numerical  ex‑

amples. 

The  factor  solutions  of  the  YG  Personality  Inventory  obtained  from 3  groups  of  highschoolboys  were  checked  numerically  by  means  of  both  sum  of  squares  of  differences  of  orthogonal  Procrustes  solutions  and  also  of  cor relation  coefficient of  coordinate  axes.  (author  abstract) 

Key words:  Procrustes problem, factor  analysis,  multivariate analysis,  constraint of  coordinate axes, YG Personality Inventory 

抄 録

この研究の目的は,プロクラステス解法の体系化をはかるとともに,このプロクラステス解法 に基礎をおく多次元構造モデルを確認するためのシステムの適用基準を提示することである。現 今,プロクラステス解法は,異なる多くの(すくなくとも2群かそれ以上)集団からの異種の多 変量解析解に適用できるまでに一般化された。

著者は,様々なプロクラステス解法を,この一般化されたプロクラステス解法の特殊形である と指摘した上で,この枠組みのもとで,新たな観点からの適用基準を提案した。また,この適用 基準の階層構造が,数学的展開と数値例によって解説された。

3群の高校生男子から得られたY G性格検査の資料の因子分析解が,直交プロクラステス解の 誤差平方和および座標軸間相関の観点からの数値例検証に用いられた。

キーワード:プロクラステス問題,因子分析法,多変量解析法,座標軸の固定, Y G性格検査

(3)

〔 要 約 目 次 〕

(17)

(これまでに提示された様々なプロクラステス解法にもとづく確認システムを再整 理し,これらの方法を体系化するための視点を提起する)

〔方法〕・・(20)

1.  解法選択の基本的枠組み

(多変量解析法の種類や比較の対象となる被験者集団の数を考慮した選択基準 を提起するとともに,この研究を通じて,プロクラステス解法を体系化するた めの新たな視点を導入する)

2.  実質科学的諸提案

(方法1で提起した新たな視点が,確認システムにおける単純構造の原理によ る回転にも拡張可能であることが示される)

3.  数値例検証のための分析と被験者

〔結果と解釈〕 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(35)

1.  誤差平方和についての数値例検証

Table 1 2群間解法と多群間解法の誤差平方和の比較 2.  因子間相関についての数値例検証

Table 2 多群間解法によって導かれたプロクラステス回転行列 Table 3 2群間解法によって導かれたプロクラステス回転行列 Table 4準拠構造行列

〔考察〕 (41)

1.  プロクラステス解法の選択基準 2.  体系化のための基本的枠組み

3.  心理測定法におけるプロクラステス解法の位置づけ

〔参考文献〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(43)

(4)

〔 問 題 〕

近年,数多くの多変量解析法が開発され,様々な心理学的構成概念の構造が,多次元空間にお ける変量の布置を手がかりとして,実質科学的に解釈されるようになってきた。しかし,多次元 空間を形成する座標軸体系を確立するには様々な困難を伴うことが多く, しばしば,実質科学者 を困惑させることがある。

われわれは,この多次元空間の比較確認をめざした一連の論文(辻岡・柴田 1983,柴田・辻岡 1983,  1984,  柴田 1985, 1986,  1987a,  1987b)を通じて,実質科学的な解釈が容易であるとと もに,集団の数や解析法の相違を問わず,安定した構造を示す多次元構造をみいだすための確認 システムを構成してきた。そして,これら一連の研究では,変換行列の直交制限のもとで,対応 解析解の間の最大近似 (maximumapproximation)を実現する直交プロクラステス解法に属 する解法群と解析解の構造の解釈を容易にする機能をもつ単純構造の原理(principleof simple  structure)による回転法を結合し, 同一の座標軸間相関のもとで比較確認する方法が有望な方 法の 1つであることを示した。

本稿は,この構想に基づいて開発された様々な確認システムを,具体的な研究の場面でいかに 選択し,活用していくかを明示することを第一の目的とするものである。また,これと同時に,

これまでに提案した確認システムの体系的な整理をも企図したものである。そこで,本稿では,

まず,これまでに構成された数種の確認システムを再整理し,その特徴と機能を示しておく。

これまでに開発された確認システムの整理法あるいは分類法は,それらをいずれの視点から把 握するかによって異なってくる。すなわち,取り扱える群あるいは集団の数という観点で分類す れば, 2群を対象とする一連の方法(辻岡・柴田 1983, 柴田・辻岡 1983, 1984,  柴田 1986, 1987a)  と多群を対象とする一連の方法(柴田 1985, 1987b)に分類される。また, 取り扱え る解析法の種類という観点で分類すれば,主に因子分析法を対象とする一連の方法(辻岡・柴田 1983, 柴田・辻岡 1983, 1984, 柴田 1985)と広く単純ユークリッド・モデルに基づく多変量解 析法を対象とする一連の方法(柴田 1986, 1987a,  1987b)に大別され,比較を試みる多次元空 間の種類の観点で分類すれば,比較の観点を因子と変量の関連を示す因子パタンや因子構造にお く一連の方法(辻岡・柴田 1983,柴田・辻岡 1984,柴田 1985, 1986,  1987a,  1987b)と因子 得点におく一連の方法(柴田・辻岡 1983, 1984)に分類することもできる(なお, この3つの 観点からの分類は,後述の方法において,新たな観点からの再分類が行われる。)。

ここでは,まず,これらの相互関係を明らかにする目的で,個々の確認システムを簡単に整理 し,その類似点・相違点を明らかにする。まず,辻岡・柴田 (1983) 2群の因子パタンある いは因子構造の最大化をはかる確認システムを構成した。このシステムでは,第一段階として,

直交プロクラステス解法の中から, Schonemann(1966)の解法を採用し,標的およびプロクラ ステス回転の対象となる 2群の直交因子解のもとで,対応変量ベクトル頂点間のユークリッド距

‑ 17  ‑

(5)

離を最小二乗法的に最小化する。そして,第二段階として,この2群の解を同一の因子軸体系に 導くために,標的群を単純構造へ導くための回転行列によって,両解を変換するという 2段階の 手順がとられた。また,この論文では,上記のような手順をとることによって,斜交回転された 後でも最小化された距離が維持されることが示されるとともに, 2群の直交因子解の最小二乗近 似の一意性について言及し,解法過程を実質科学的にとらえなおした。さらに,類似度の評価指 標として,従来の一致性係数や誤差平方和の指標に加えて,対応変量ベクトル頂点間のユークリ

ッド距離や対応変量ベクトル間の央角度などの補助指標を導入し,総合的な観点から評価を行う ことを提案した。

ついで,柴田・辻岡 (1983)は,因子パタンや因子構造と表裏一体の関係にある因子得点をと りあげ, 2群の直交因子得点行列の最小二乗近似をはかる方法が,原理的に,先の直交因子解の 場合と同様のものであり,対応ベクトル頂点間のユークリッド距離の最小化という同一の目標を もった方法であることを示した。この確認システムでは,まず縦断的因子分析法として提案され Nesselroade(1972)の方法を基礎に,それを標的設定型に修正した方法(柴田・辻岡 1983, pp. 151‑153)を新たに提案した。この方法は,測定内容の対応する因子得点ベクトル間の相関 を最大化する方法であるとともに,因子得点が平均0で分散1の標準化得点である場合には,原 理的に,先のSchonemannの解法と同様であり,対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離 を最小二乗法的に最小化する方法として位置づけられる。また,これとともに,第二段階として の単純構造への回転問題が論じられ,斜交回転後も対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離 が保持できることを示した。また,ここでも類似度の評価指標として,従来の因子得点間相関や 誤差平方和の指標に加えて,対応個人ベクトル頂点間のユークリッド距離や対応個人ベクトル間 の央角度などの補助指標を導入し,総合的な観点から評価を行うことを提案した。

また,これら 2つの研究結果をふまえて,柴田・辻岡 (1984)は,因子バタン(あるいは因子 構造)と因子得点の両面から,総合的に因子の不変性をとらえていくことが必要であると主張し た。しかし,この両者の最小二乗解は,必ずしも同時に実現できるものではなく,一方のユーク リッド距離の最小化が,他方のユークリッド距離を拡大してしまう可能性についても,二律排反 性の問題として論じられた。また, この論文では, 2群の因子行列を対象とする Cliff(1966)  の解法や2群の因子得点行列を対象とする Nesselroadeの解法に代表される相互回転型あるい は正準回転型解法に言及し,一般に,解釈しずらい結果となりがちな正準解を単純構造へ導く手 順が述べられ,さらに,標的設定型の解法との類似点と相違点が述べられた。また,このような 解法上の諸問題のみならず,先の2つの論文で提案した指標も含めて,解法の結果を評価する各 指標の問題点についても言及している。

これら因子分析を対象とする 2群間問題の基礎的研究を継承して,柴田 (1985, 1986,  1987a,  1987b) この確認システムの構想を,われわれが実際の研究場面で直面する様々な実質科学 的要請に応えうるように拡張した。すなわち,実際に行われている多くの研究を概観するとき,

(6)

われわれが実際に研究を遂行していくためには,研究対象となる多様な集団の分析結果を同時に 比較する多群間比較の方法や異なる多変量解析法を用いた場合の分析結果を比較する異種解析間 比較の方法が必要となるが,このような機能と目的をもった解法を,先の確認システムの構想の 中に位置づけていこうとしたのである。

まず,柴田 (1985)は,多群の因子パタンあるいは因子構造を比較するための確認システムを 構成した。 この研究の主目的は, Kristof & Wingersky (1971)TenBerge (1977)によ って提案された多群間の直交プロクラステス解法が,先の Schonemann2群間解法といかな る関連をもっているのかを明らかにすることであり,さらに,この関連にもとづいて,同一の因 子間相関のもとでの対応因子の類同性比較を行える確認システムを構成することであった。その 結果, 2群間解法で示された解の最小二乗法的一意性が多群間解法においても継承され, さら に,この最小二乗距離が,単純構造の原理による同一の因子軸体系への斜交回転の後も維持され た。また, TenBergeによる最小二乗近似であるための必要条件や十分条件の証明や解析アル ゴリズムの解説を補足しながら,新たな実質科学的観点を示した。

ついで,柴田 (1986)では,多次元尺度法をはじめ,様々な多変量解析法が提案され,実際に 使用されている現状をみるとき,多くの研究者間のコミュニケーションを可能にするには,因子 分析以外の解析法をも比較の対象とする必要があるという認識のもとに,異種解析間の確認シス テムを構成した。 この研究では, 直交プロクラステス解法として, 従来の座標軸の回転に加え て,座標空間全体としての拡張あるいは短縮 (centraldilation)  と座標原点の移動 (transla tion)を許容する Schonemann& Carroll (1970)の解法を採用するとともに,この解法を新 たな視点,すなわち射影子と幾何学的表現によって再解釈した。また,上記のような視点から,

Schonemann & Carrollの解法をとらえなおすことによって,難解なこの種の解法に対する実 質科学者の理解を求め,研究者間のコミュニケーションをはかろうとした。そして,このような 検討を通して,座標の拡張・短縮や原点移動を伴う解法においてもプロクラステス変換による最 大近似を損なうことなく,同一の斜交座標軸体系上での比較が可能であることを示した。

また,柴田 (1987a)では, Schonemann & Carrollの解法に基づく確認システムを, 実際 に,因子分析法,主成分分析法,計量多次元尺度法,非計量多次元尺度法,正準相関分析法の各解 析法の解に適用し,数値例の比較を試みた。また,この研究では,単純ユークリッドモデルに基 づく解析法を対象とする Schonemann& Carrollの解法の実際的な適用範囲を探索するとと もに, 分析の出発行列の設定方法を変えるなど様々な観点から実質科学的知見の蓄積をはかっ た。また,これと同時に,拡張・短縮や原点移動の操作が,多変量解析の諸方法の解に与える影 響について検討した。この過程では,このSchonemann& Carrollの解法と先のSchonemann の解法を数理論および数値例によって比較し,具体的な個別の適用にあたって,両者のいずれを 採用するのが望ましいかについての選択基準を提案した。

ついで,柴田 (1987b)は,上記の一般化問題のもっとも拡張された方法として, 異種解析か

‑ 19  ‑

(7)

つ多群の解析解を比較するための確認システムを構成した。この研究では,まず,直交プロクラ ステス解法として, Gower (1975)の解法およびTenBerge (1977,  pp. 274275)の修正解 法を検討し,さらに,これらの解法における座標空間の拡張・短縮法を独自の立場から修正した 解法(柴田1987b,pp. 217219)を提案して,その有効性を検証した。また,このような検証を 通じて,異種解析かつ多群というもっとも一般化された解法においても,プロクラステス変換と 単純構造への回転が無理なく行われ, 同一の座標軸体系上での比較が可能であることが示され

本稿では,以上のような研究経過をふまえて,これら各種のプロクラステス解法の数理論的な 側面からの再整理を行い,また数値例比較の結果をもふまえた上で,実際の解法の適用にあたっ て,いかなる選択基準を採用するのが望ましいかを考察する。すなわち,各種の解法を再整理し た上で,様々な資料,様々な出発行列,様々な解析法, 2群あるいは多群の様々な組み合わせを 現出する実際の適用場面において,いかなる場合に,いずれの解法にもとづく確認システムを適 用するのが最適であるかの選択基準を提案したいと考えているのである。このような構想のもと 以下の方法論的な再整理においては, 先の確認システムの分類法, すなわち, 2群か多群 か,異種解析解を含むか否か,因子パクンの比較か因子得点の比較かの整理法に従い,順を追っ て体系的整理を試みる。また,この解法の再整理の過程では,従来のプロクラステス解法の発展 過程にとらわれず,いくつかの新たな視点からの提案が行われる。

〔 方 法 〕

1.  解法選択の基本的枠組み

問題において述ぺたとおり, 本稿での方法論的検証の主眼は, 実際の適用場面を想定しなが ら,多様なプロクラステス解法に基づく確認システムの適用方法を明らかにするところにある。

したがって,ここでの方法論の検討は,通常のように,なんらかの意図をもった特定の方法を念 頭において,目的関数を構成し,その解法や解説を行うという手順をとらず,適用場面や分析目 的ごとに, 2種あるいは数種の方法を想定し,それらの方法のうち,いずれの方法を用いるのが 最適であるかを明らかにすることが目的となる。また,複数の方法の使用が必要でかつ可能であ る場合には,それらをいかように組み立てて適用していくのが有効であるのかについても検討を 試みたい。そこで,本稿では,多群の同種あるいは異種の多次元解を実際に所有し,それらの解 の比較を試みたいと実際に考えている研究者を想定し,その立場に立って最適の方法を選択する 場合を考えてみる。

(1)比較する解の数とプロクラステス解法

このような観点から,多次元空間の比較法としてのプロクラステス解法の実際の適用場面を考

(8)

えるとき,最初に考慮しなければならないことは,適用の対象が, 2群の解であるのか多群の解 であるのかについての問題である(もちろん,当面するデークが2群のみであれば,この問題を 考慮する必要はないが, 先述した本稿の立場から, 多群の解を所有している場合を想定してい る。)。先に述べたとおり, プロクラステス問題を適用する場合には, この群の数の問題に加え て,比較の対象となる解を導いた多変量解析法の種類(後述する出発行列の種類も含めて)の問 題や因子パタン(あるいは因子構造)と因子得点のいずれの比較を目的とするかについての問題 が存在している。しかし,解析法の種類の問題は,当面する多群の解が,相互に異種の解から成 るか否かを明らかにすれば,必然的に決定できるし,また,因子パクンか因子得点かの問題は,

当面,因子分析法にのみ関わる問題であるので,全体的な構成の流れの中に組み込みながら方法 論的考察を進めたい。なお,この後者の因子パタンか因子得点かの問題は,辻岡・柴田 (1983), 柴田・辻岡 (1983, 1984)においては,因子分析法単独の問題として取り扱っているが,本稿で は,後述するような視点,すなわち,多変量解析法全体の枠組みの中から新たにとらえなおし,

全体的構成の中に位置づけている。

これらの観点を総合すれば,研究者が,まず考慮しなければならないことは,当面するすぺて の群を同時に比較する多群間解法を用いるか,すぺての群,あるいは特定の群を 2群づつ組み合 わせながら,数回の2群間解法を施すかの選択に関する問題であり,両者の場合の相違を理論的 に検討し,その分析結果の特質を理解しなければならない。もちろん,この選択は,各研究者の 研究意図と深く関わるものであり,その意図によって, 2群あるいは多群のいずれか一方のプロ クラステス解法を施行すればよい場合もあろうし,両方の適用が必要な場合もあろう。この群の 数の問題に対しては,因子分析解相互の場合については,柴田 (1985)において,また,異種の 解析解相互の場合については, 柴田 (1987b)において, それぞれ簡単に知見を述べているが,

ここでは,解析法の種類にかかわらず,この問題に共通する留意点を整理しておく。すなわち,

分析の対象となる解析法の種類がいかなる種類のものであれ, 2群間解法を用いる場合と多群間 解法を用いる場合の分析結果の相違点は,それぞれのプロクラステス解法がめざす最小化の目標 の相違にある。換言すれば, 2群間解法では,組み合わされた2群のみを考慮した最小二乗解が 導かれるのに対し, 多群間解法では, 所与の多群の間に成立する最小二乗解を追及するのであ

これらの関係は,つぎのような代数的表現によって理解できる。たとえば, 3種 類 の か<m (nは変量数, m は因子数;以下同様)の因子分析解, A1,A2, A3 (ともに階数をm とする)が 存在する場合を考え,この3つの解を対象に, 2群づつの組み合わせによる 2群間解法を適用す る場合と 3群同時に多群間解法を適用する場合を考えてみよう。そして,先の一連の確認システ ムの研究をふまえて, 2群間プロクラステス解法としては, Cliff(1966)の解法を,多群間のプロ クラステス解法としては, TenBerge (1977)の解法を用いるものとしよう。ここで, 2群間解法 の例として, Schonernann(1966)の解法を用いず, 2つの解の相互回転を想定した Cliffの解

(9)

法を用いた理由は,もう一方の対比の対象としての多群間解法が,すべての解の相互回転を想定 したものであることに加えて,この Cliffの解法が Schonemannの解法と同一の基本原理(す なわち,対応変量ベクトル頂点間のユークリッド距離の最小化;柴田・辻岡1984参照)を用い,

2群間解法における最小二乗解の必要十分条件を満たすからに他ならない (TenBerge 1977,  柴田1985参照)。換言すれば,ここでの代数的論証は, Cliffの解法のみならず, Schonemann の解法にも同様に通じるものである。

このような前提のもとに, 2群づつの組み合わせを順次行う。まず, A1A2の組み合わせ において,後者を標的とした場合の前者に対するプロクラステス回転行列を T12,前者を標的と した場合の後者に対するプロクラステス回転行列を T21,A, Asの組み合わせにおいて,後者 を標的とした場合の前者に対するプロクラステス回転行列を T,s,前者を標的とした場合の後者 に対するプロクラステス回転行列を T31,A2Asの組み合わせにおいて,後者を標的とした場 合の前者に対するプロクラステス回転行列を T2a,前者を標的とした場合の後者に対するプロク ラステス回転行列を Ta2とする。なお,これらの回転行列は,ともに mxm次で, 階数は m とする。

このとき,行列 T12'A1'A2T21,  T13'Ai'A3 T31,  T23'A2'Aa T32 (1‑1) T12'A1'A =412

(1‑2)  T13'Ai'AaTa1 =41a  (1‑3) T2a'A2'AaTa2=42a 

となり,ともに対称(この場合は対角)で半正値の行列となり, 2群の最小二乗解としての必要 十分条件を満たす解となる(対角行列の場合については,柴田 1985参照)。また,この3つの式 の右辺の対角行列の各要素は,因子行列の組み合わせをそれぞれ, S12=Ai'A2,S13=A1'Aa, S23 

=Ai'Aaとしたとき,この行列 S12,813,  S2sの主積率, 従積率の固有分解によって求まる各固 有値となることが知られている (TenBerge 1977, 柴田・辻岡 1984,柴田 1985)。さらに,こ のような前提のもとに,この3つの対角行列のそれぞれの跡和 (trace)の総和を,

(2) mas =tr(412) +tr(41a) +tr(42a) 

と表現するとき,これが, 3群の解の組み合わせのもとでの多群間プロクラステス解法の目的関 数の上限を与えることも示されている (TenBerge 1977, 柴田 1985)。しかし,このような2 群づつの組み合わせによって求めた解を,そのまま多群間の解として用いることはできない。な ぜならば,このような 2群づつの組み合わせによって求められたプロクラステス回転行列の間に

は,通常,

(3‑1)  T12=/=T1a  (3‑2) T21=/=T2a  (3‑3)  Ts1=/=Ta2 

‑ 22 ‑

(10)

という関係が成立し, 1つの因子解に 1つの回転行列を求めようとする多群間解法の構想を満た すことができないからである。たとえば,因子解 A,に対しては, T,2,Tis2つの回転行列が 用意されているが,この2種の回転の結果は,一般に, A,T12=1=A1 T13となり, 異なった解を導

く。このような解は,多群の間の全体としての最小二乗解を導くものではない。

すなわち,多群間解法の目的関数(誤差平方和を定義する関数)は, 3群のそれぞれの未知の 正規直交の mxm次の回転行列を T1,T2,  T3とするとき,

(4) f1(T1,  T2,  T3) =~tr(A;T;-A;Tが (A;T;-A;T;)

i(j 

と定義され,この各回転行列の正規直交条件のもとでの関数の最小化によって,一意の回転行列 を求める関数として設定される。また,この式を,最大化を目標とする関数として,

(5)  /2CT1,  T2,  T3)=r;tr(T;'A/A;T;) 

1

と定義し,同じく各回転行列の正規直交条件のもとで,この関数を最大化し, 1つの因子解に1 つの回転行列を求める関数として設定される (TenBerge 1977, 柴田 1985)。換言すれば,多群 の間の全体としての最小二乗解を一意に定めるには,各因子解に対して,それぞれ1つのプロク

ラステス回転行列が設定される一意の解を求めなければならないのである。

一方,この (4)式の最小化あるいは (5)式の最大化をめざす多群間解法において求められ る実際の最小二乗解は,その必要条件を満たすものの,十分条件を満たすことができない (Ten Berge 1977, 柴田 1985)。すなわち,実際に求められた回転行列を用いて,先の2群づつの組み 合わせに基づく (2)式の解法の結果と多群間解法についての (5)式の解法の結果の跡和の大 小関係を示すと,

(6)  tr(.d,2) +tr(.d,a) +tr(.d6tr(Ti'A,'A2T2)+tr(T1'A,'Aぶ)+tr(T2''Aぶ)

という関係が成立し,一般に (2)式で示される2群の組み合わせにおける上限値を下まわるこ とが多い。また, 最大値をとれた場合にのみ上限値と等しくなる。 このような関係は, (6) の個々の項にも及び,各項ごとに,

(7 ‑ 1)  tr(412) =tr(T12'Ai'A2 T21)~tr(Ti'Ai'Aぶ)

(7 ‑2)  tr(d1a) =tr(Tia'A1'Aa Ta1)~tr(T1'Ai'Aぶ)

(7 ‑3)  tr(il23) =tr(T23'A2'A3T32)~tr(T2'Ai'Aぶ)

という関係が成立し,いずれも 2群間解法の跡和の方が大きく(あるいは等しく)なる。

(11)

また,この一方で, 2群づつの組み合わせにおいて求められる 2つの回転行列のうちのいずれ 1つを選択して固定した場合(たとえば, A1に対しては T12というふうに固定した場合)に は,一般に,

(8)  tr(T12'A1'A2T21) +tr(T12'A1'AaTa2) +tr(T21'ふ,AaTa2) 

~tr(Ti'Ai'Aぶ)+tr(Ti'A1'Aぶ)+tr(T21AlAぶ)

という関係が成立し,多群間解法における跡和の方が大きく(あるいは等しく)なる。

このような知見を総合すれば, 2群間解法は, (6)式あるいは (7‑1) 式 (7‑3) に示されるような特徴をもつ反面, この解で多群の解の間の比較を行う場合には, (3‑1)

 

(3‑3)式および (8) 式に示される問題点を有する。

したがって,研究者の側の主眼が,多群の因子解の間の類同性の確認,換言すれば,多数の因 子解がともに同一あるいは類似の構造を示すことを確認することによって, 1つの確立した多次 元モデルを提起することにあるのであれば,まず,多群の因子解の間の全体としての最小二乗解 を一意に導く多群間解法を施行する必要があろう。すなわち,多群間解法は,代数的には,多群 の解の間の最小二乗近似を一意に示せるプロクラステス解法として位置づけられ,実質科学的に は,多次元モデルの確立をめざす局面において有効な方法として位置づけられると考えられるの である。

もちろん,多群の解を収集する目的は,このような多次元モデルの確立をめざす場合のみでは ないし,逆に多群の解の間の相違を明らかにしたい場合さえある。しかし,本稿の主題であるプ ロクラステス解法がめざすところは, あくまでも,多次元構造の不変性 (invariance)あるいは 類同性を追及するところにあり,相違点を明確化する問題をあつかうものではない。

また,多群の資料が,多群間解法によるモデル構成を目的としてではな<, 2群の相互比較を 目的として収集されることがある。たとえば,研究対象とする2種類の属性の異なる集団がある とき,標本集団を順次取り替えながら,繰り返し比較を行う目的で,両群に属する標本をそれぞ れ複数群収集し,結果として多群の資料とその因子解を得た場合などがあげられる。また,研究 の対象が,条件の異なる 3つの群(仮にA B C群とする)の解のうちの2群づつの組み 合わせ,すなわち, A群とB群の比較, A群とC群の比較, B群とC群の比較にある場合もあろ う。このような場合には,研究対象に忠実に 2群づつ組み合わせて, 2群間用のプロクラステス 解法を施す必要がある。すなわち,このような組み合わせに対して,多群間解法を用いた場合,

先の (6) 式および (7‑1) 式 (7‑3)式から明らかなように,比較したい 2群の解の間 の最小二乗近似をみることができないからである。

このように,多群間解法を用いる方が適切な場合と 2群間解法を用いる方が適切な場合が存在 するが,一方で,この両者の解法を併用する必要が生じる場合もあろう。たとえば,多群間解法

Table 3 O r t h o g o n a l  t r a n s f o r m a t i o n  m a t r i c e s  by C l i f f ' s  P r o c r u s t e s  a n a l y s i s   ( T a r g e t :  u p p e r ;  s e c o n d  g r o u p ,  l o w e r ;  t h i r d  g r o u p )  Axes  1  2  3  4  5  6  7  1  0
Table 4 C o m p a r i s o n  among 3  t y p e s  o f  f a c t o r  s o l u t i o n  on t h e  r e f e r e n c e  a x e s  [ u p p e r ;  Ten'  B e r g e ' s  s o l u t i o n :   m i d d l e ;   C l i f f ' s   s o l u t i o n  ( t a r g e t ;   s e c o n d

参照

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