川崎 医 療 短 期 大 学 紀 要
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号 :53‑57 2 0 0 4 5 3
イメージングプレートを用いた鉛ディスク法による散乱 X線含有率の測定
天 野 貴 司 \ 荒尾 信 一 \ 松宮 昭
l大 倉 保 彦\ 北 山 彰 \ 林 明子
l山下 一也
2Measurement o f S c a t t e r e d R a d i a t i o n f o r Lead D i s c Method Using t h e Imaging P l a t e Taka s h i A M A N0 1 , S h i n i c h i A R A 0 , 1 Akira MATSUMIYA 1 ,
Yasuhik o OK U RA 1 , Akira KITAYAMA1 , Akiko HAYASHI1 and Ka z u y a Y AMAS HIT A
2キーワード: イメージングプレート,ディジタル画像,散 乱 X 線含有率
概 要
散乱 X 線は, X 線画像のコントラストを低下する因子であり,散乱 X 線の含有率を定量的に解析することは重要である . 今回われわれは鉛ディスク法を用いて,イメージングプレートによって得られたディジタル画像中の散乱 X 線含有率の測 定を試みた.そして,従来のアナログ画像とディジタル画像の散乱 X 線含有率の 測定結果を 比較し,鉛ディスク法がディ
ジタル画像に応用可能であるかを検討した .その結果,両者の測定結果は一致し,これまでのアナログ画像での測定法が ディジタル画像へ応用可能であることを確認した .
1 . 緒
‑[l散 乱 X 線は , X 線画像のコントラストを低下する大 きな要因であり, X 線画像中の散乱 X 線の含有率を定 量的に解析 する こと は重要である . 増感紙/フィルム系 を対象としたアナログ画像中の散乱 X 線含有率の測定 法には ,鉛ディスクを用いた方法(以下,鉛ディスク 法 )
1,2)や蛍光量計を用いた方法などがある . これらの測 定法は , アナログ画像ではほぼ確立している .しかし,
ディジタル画像へ応用できるかどうかを確認した報告 はまだない.
今回われわれは ,散乱体からの散乱 X 線の放散が 比 較 的少ない場合に適用される鉛ディスク法を用いて , イメージングプレ ー ト(以下, I P ) で得られたディジ タル画像 中の散乱 X 線含有率の測定を試みた . そして , 従来のアナログ画像とディジタル画像の測定結果を比
(
平成1 6
年1 0
月5
日受理)1川 崎 医 療 短 期 大 学 放 射 線 技 術 科,2
(
前)川 崎 医 療 短 期 大 学 放 射 線 技術科' D epa r tment o f R a d i o l og i c a l T e c hn o l o g y , Kawasak i Co l l e g e o f A l l i ed H e a l t h Pro f e s s i o n s
' ( F o r m e r l y ) D e p a rtm e n t o f R a d i o l o g i c a l T e c h no l o g y , K awasak i Co l l e g e o f A l l i e d H e a l t h P r o f e s s i o n s
較し,鉛ディスク法がディジタル画像に応用可能であ ることが確認できたので報告する .
2 . 実 験 方 法
図 1 は,鉛ディスク法の幾何 学的 な配置図である . 焦点一受光系 間距離は 1 5 0 c m , 散乱体は,厚さ 3c m のア ク リ ル(横 x 縦 : 3 0 c mX 3 0 cm) を使用した.鉛ディス クは ,直径 8 m m から 2mm まで 1 mm 間隔で,厚さ 2mm の ものを散乱体 中央の表面に配置した .照射野は,散 乱 体の大きさ ( 30 c mX 3 0 c m ) とした .
I P は,富士フィルムメディカル社製( 以下,富士社 製)の ST ‑ V N を使用し , 次に述べる二つの方法で,
アナログ画像 とディジタル画像を撮影した . アナログ画像の撮影:
散 乱 X 線含有率は , 増感紙/フィルム系などの受光系 の X 線吸収特性に依存する .したがって , I P を用いた ディジタル画像と 比較するには,増感紙ではなく, IP を使ってアナ ログ画像を撮影する必要かある . ここで,
輝尽性蛍光体の I P は,輝尽発光(赤外線などの 2 次 的な刺 激によって,蓄積しているエネルギー を蛍光と
して発光す る現象)だけ でな〈瞬時発光の特性 も持っ
ている . われわれはその特徴を 利用し, 増感紙の代 り
5 4
天野貴司・
荒尾信ー・
松宮昭・大倉保彦・北山
彰・
林明子 ・ 山下一也
ナ
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セ3
カ[ i "
│
3
ー写 互 濃 度
D
(a)鉛ディスクの写亘濃度 [P
ls ・・・
1 1
│
1 鉛デ『スク 1 fo了
濃2Op 度
I D 1
3
(b)特性曲線あるいはオーバーオール特性曲線Ds
LO ゜ 5
150cm10 15 20 距 離[mm]
25
L O ゜
2 3
IogE:比露光量(対数)
有 効 露 光 量 変 換
1 r ゜
5 0 5 1 1
ー
距 離 m
﹇ m Es
100 E:比霞 光 量
1000
図 2
20 25
(c)鉛ディスクのX線強度
鉛ディスク法の概念図
3
゜ c m
30cm
図 1
幾何学的な配置図
に I P をカセッテ (EC‑A: 富士社製)に装填し, I P / フィルム系としてアナログ画像を撮影した.使用した IP の蛍光体 (BaFX:E u ) の発光色は青紫色である.
したがって X 線フィルムは,青紫色に感光波長域をも つレギュラフィルム (RX‑U: 富士社製)を使用した.
そして I P をカセッテ後面側に配置した片面 I P / 両面 フィルム系で鉛ディスクの撮影をした.撮影条件は,
管電圧 7 0 k V , 管電流 5 0 m A , 撮影時間 0 . 5 秒で,アルミニ ウム板 4 . 0 m m と銅板 0 . 5 m m を付加フィルタとした.また,
有効露光量変換に必要な特性曲線は,距離の逆 2 乗則 を応用した X 線センシトメトリー(距離法)で,鉛デ ィスクの撮影と同様の管電圧,管電流, 付 加 フィルタ で計測をした.鉛ディスクと X 線センシトメトリーの 試料は,それぞれ 3 枚ずつ作成した.
撮影した鉛ディスクと特性曲線のステップ試料は,
自動現像機 (CEPROS ‑ M: 富士社製)で同時現像をし
た.写真処理後,鉛ディスク像の中央部分とその周辺 部,特性曲線のステップ像の写真濃度をコニカミノル タ社製 PDA‑ 1 5 (アパーチャ直径: 1 .0 m m ) で計測した.
デイジタル画像の撮影:
アナログ画像で使用したカセッテに I P を装填し,
アナログ画像と 同 じ撮影条件,幾何学的配置で鉛ディ スクの撮影と X 線センシトメトリーをした.撮影後の I P は I P 専用のカセッテに戻し,画像読取り装置 (FCR 5 0 0 0 M A p l u s :富士社製)で読取り処理をした.読取
りの条件は,サンプリング間隔 l O O μ r n ,濃度分解能 1 0 b i t , 読取り感度 (S値 ) 2 0 0 固定で,ラチチュード ( L 値 )
を 1.0‑ 4 . 0 まで 1 . 0 間隔で変化し線形処理した.試料は,
L 値 ごとに 3 枚ずつ作成した.
読取り後, ドライ画像記録装置 (CR‑DPL) でフィ ルムを出力し,鉛ディスクと特性曲線のステップ像を 取得した.そして,アナログ画像と同様の手法で写真 濃度の計測をした.
散 乱 X線含有率の計測 :
図 2 は,鉛ディスク法によって散乱 X 線含有率を計 測する概念図である.図 2 ( a ) において,撮影の時に入 射する X 線強度を[。, 散乱体透過後の X 線強度を L と すると, L は,直接 X 線の強度 l p と散乱 X 線の強度 L S
の和である.ここで,鉛ディスク上の写真濃度 D s は,
直接 X 線を含まない散乱 X 線 強 度 L S によって得られた
もので,鉛ディスク周辺部の写真濃度 且 は , 直 接 X
イメージング プ レ ー ト を 用 い た鉛ディ スク 法 に よ る 散 乱
X
線 含 有 率 の 測 定5 5
線強度 l p と散乱 X 線強度 I s の両方を含んだ全透過 X 線強度 I t によって得られた写真濃度となる .したがっ て , Ds と D t を図 2 ( b ) の特性曲線, ディジタル画像 においてはオーバーオー)吋寺性曲線
3)を用いて有効露光 量変換し,図 2 ( c ) の相対的な散乱 X 線 強 度 凪 と 全 透 過 X 線 強 度 且 を 求 め , 次 の 定 義 式 を 用 い て 散 乱 X 線 含有率 S [%]を算出した .
s =五 XlOO [%]
Et
3 . 結
:.E1=E 叶 E s
果
図 3は,図 2 ( b ) において有効露光量変換に使用する アナログ画像 ( I P / フィルム系 )の特性曲線 ( 図 3 ( a ) )
とディジタル画像のオーバーオール特性曲線(図 3 ( b ) ) である . オーバーオール特性曲線は,やや滑らかさに 欠けるが,同じ幾何学的配置で X 線センシトメトリー をしたアナログ画像の特性曲線が非常に滑らかである から,測定による影響ではない .
表 1 は,散乱 X 線含有率 S の定義式で算出した測定 結果である .鉛ディスクの直径が小さくなるにしたが って,鉛ディスク周辺からの散乱 X 線の混入が増える ため,散乱 X 線含有率が少しずつ増加する傾向となっ た .
図 4 は,表 1 の結果をもとに,鉛ディスクの直径と 散乱 X 線含有率の関係を図示したものである . ここで,
最小鉛ディスク(直径 2 mm) の散乱 X 線含有率は ,「 限
3 2 2
. ,
I I . I . ー ー
I.
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.
‑
/写
真 濃
度 写
真 渓 度
3
L値=1.0 L値=2.0 L値= 3.0 L値= 4.0
゜ ゜
1
比露光磁(対数)( a ) アナログ画像の特性曲 線
2 0 。 1
比露光豆(対数)
( b ) ディジタル画像のオーバーオール特性曲線
2
図
3表 1
特性曲線 とオーパーオール特性曲線
鉛デ ィスク直下の散乱 X線含有率 ( % )
鉛 デ ィ ス ク の直径
2 m m 3 m m 4 m m 5 m m 6 m m 7 m m 8 m m
アナログ画像I P /
フィルム3 5 . 9 3 5 . 5 3 5 . 1 3 4 . 0 3 3 . 3 3 2 . 4 3 2 . 0
散乱
X
線含有率(%)ディジタル画像
L 値
=1 . 0 L 値= 2 . 0 L 値= 3 . 0 L 値= 4 . 0
3 5 . 7 3 5 . 7 3 5 . 9 3 6 . 6
3 5 . 5 3 4 . 8 3 5 . 9 3 5 . 9
3 4 . 8 3 4 . 4 3 5 . 9 3 6 . 6
3 4 . 0 3 3 . 7 3 5 . 3 3 5 . 2
3 2 . 8 3 3 . 7 3 4 . 1 3 4 . 4
3 2 . 1 3 2 . 7 3 3 . 1 3 3 . 3
3 1 . 5
3 2 . 4
3 2 . 6
3 2 . 5
56
天野貨司・
荒尾信一•
松宮 昭・大倉保彦・北山
彰・林 明子・
山下一也50
4 5 0 0 l
• I P
/フィルム( r = 0 9 9 ) • I P
/フィルム( r = 0 . 9 9 ) 40
--♦--L 値 = 1 O(r = 0 . 9 4 )
--♦--L 値= 2 . 0 ( r = 0 . 9 4 )
9 9ま9 ,
:
r 9 苓9i l l / ‑ 30
冊30
押
外挿抑
g
:益
溢
20
佃琺品溢20
1 0 10
゜ 2
; 鉛ディスクの直径3 ( a ) L 値= 4 1 . 0 [mm] 5 6 7 8 ゜ ゜ 2
鉛ディスクの直径3 ( b ) L 値= 4 2 . 0 [mm] 5 6 7 8 50
4 5 0 0 l
• I P
/フィルム( r = 0 . 9 9 ) • I P
/フィルム( r = 0 . 9 9 ) 40
--♦--L 値= 3O ( r = 0 . 9 9 )
--♦--L 値= 4 . 0 ( r = 0 . 9 9 )
しrざ----•., l
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外挿l l i J ‑ 30
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畠 益 2 0
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益1 0
゜
2 3 4 5 6 7 8
゜ 2 3 4 5 6 7 8
鉛ディスクの直径
[ mm ]
鉛ディスクの直径[mm]
( c ) L 値= 3 . 0 ( d ) L
値=4 . 0
図
4
鉛ディスクの直径と散乱X
線含有率の関係りなく」真の散乱 X 線含有率に近い値を示す. しかし,
鉛ディスクの直径が 0
mmのときに真の散乱 X 線含有率 となる. したがって,指数関数近似による外挿によっ て,直 径 0
mmでの散乱 X 線含有率を推定した .
rは指 数関数近似による 相 関 係数である.近似 曲線は,すべ て高い相関を示した.
表 2 は,図 4 の外挿によって得られた真の散乱 X 線 含有率の結果である . アナログ画像の散乱 X 線含有率 は 3 7 . 7 %であり,ディジタル画像の測定結果は, L 値 の変化に対して , アナログ画像の測定結果の土 1 . 0 %の 範囲内であった .
4 . 考 察
X 線画像のコントラストは, X 線画像の画質を決定 する 3 因子(鮮鋭度,粒状度, コントラスト)の一つ であり , コントラストの低下によって画質の劣化や画 像情報の損失を生じる .特に ,散乱体からの散乱 X 線 の影響が大き〈 , 散 乱 X 線の定量的な解析
4,5)や散乱 X 線 の除去
6)に関して ,これ までさまざまな研究の報告があ る.ディジタル画像の撮影法そのものは , , これまでの アナログ画像のそれと大きな違いはない .両画像 系 で
表
2
外挿による真の散乱X
線含有率 (%) アナログ画像真の散乱X線含有率(%),一、9
ア イ ジ タ ル 画 像
I P /
フィルムL
値=1 . 0 L
値=2 . 0
L
値=3 . 0
L
値=4 . 0 37 . 7 37 . 8 36 . 7 37 . 9 38 . 7
は,受光系と画像(写真)処理が大きく異なる . しか し,ディジタル画像であっても散乱 X 線の影響は無視 できないので,そ の解析は重要である.
表 2 の実験結果から,アナロ グ画像と ディジタル画
像 の 散 乱 X 線含有率を比較すると, L 値に関係なくほ
ぼ正確に一致した . このことは,アナログ画像での鉛
ディスク法が,ディジタル画像へ応用可能であること
の証左である . L 値の違いは, X 線フィルム上のコン
トラストのバランスに 影響するが,散乱 X 線含有率と
は直接関係がない. したがって, L 値 に関係なくほぼ
同じ散乱 X 線含有率であ ったこ とは,今回の実験の妥
当性を示す.この L 値 の変化 によって撮影に最適な寛
容 度 が 変化する. 鉛ディスクを最適かつ容易に撮影す
イメージングプレートを用いた鉛ディスク法による散乱 X 線含有率の測定 5 7
るには, L 値 2 . 0 以上が良い . L 値 4 . 0 では寛容度が広 すぎるので,鉛ディスクの直径の変化を写真濃度の微 妙な違いとして測定が困難になる .今 回の実験では L 値 2 . 0 か 3 . 0 が最適であった.また, S 値を 2 0 0 固定にし
たが, S 値を変えてもオーバーオール特性曲線が左右 に平行移動するだけであり,散乱 X 線含有率には影響 がない .
5 . 謝 辞
本研究の一部は,平成1 4 年度私立大学教育研究高度 化推進特別補助によ って行った .
6. 文 献
1)
田中 仁 , 斎 藤 勲 ,
山本千秋, 山田勝彦(編集):医用放 射線技術実験[臨床編],東京:共立出版, p p . 49‑52, 1 9 9 9 . 2 ) 内田 勝,小寺吉衛,藤田広志:基礎放射線画像工学,東
京
: オーム社, pp . 9 6 ‑1 0 0 , 1 9 9 8 .
3)
藤田広志(班長): ディジタルラジオグラフ
ィの画質評価く1 . 特性曲線〉 , 日放技学会誌 4 6 ( 9 ) , 1 580‑ 1 5 8 1 , 1 9 9 0 . 4 )小縣裕二,松本光弘,佐藤和彦,滝川
厚,中森伸行,金森仁志:モンテカルロ法による散乱