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平成 24 年度社会福祉学研究科修士論文要旨
職業的アイデンティティにおける ボランティア活動の意味
江本 こず江
本研究では、仕事を持ちながらボランティア活動を することが職業人にもたらす影響について、仕事とボ ランティア活動とを個人における職業人としての役割 と市民としての役割という複数役割の所有と捉え、両 役割間の距離感と葛藤という視点から考察を行った。
仕事とボランティア活動との特徴を整理すると、仕事 とボランティア活動とでは類似する点が多く、その違 いは、賃金という報酬を前提とした活動か否かという 違いのみが明確であった。このことから、①両役割間 の距離が近づきやすく混同しやすい、②仕事という社 会的役割が喪失しても、ボランティア活動が社会的役 割を担うことに対するセーフティネットとして職業人 に機能しやすい、③両役割間の葛藤が起きた場合に統 合が生じやすい、ことを推測した。
仕事を持ちながらボランティア活動をしている職業 人、または、過去に仕事を持ちながらボランティア活 動をしていた人を対象にインタビュー調査を実施し、
12 事例のデータを得て分析した。分析では、インタ ビュー内容を、仕事とボランティア活動とは同一とす る未分化の語り、仕事とボランティア活動とは別物で あるとする相対視の語り、仕事とボランティア活動と に距離を置きながらも共通であるとする統合の語りの 3つに分類した。また、未分化の語りと統合の語りと の比較を行い、未分化の語りに比べ統合の語りは巾が 広く抽象度の高いレベルでの語りとなっていることを 見出した。さらに、3つに分類された語りの前後関係 に着目して順序づけを行い、未分化の語りから相対視 の語り、相対視の語りから統合の語りというプロセス があることを見出した。
これらのインタビュー内容と分類の結果から、仕事 を持ちながらボランティア活動をすることが職業人に もたらす影響は、仕事とボランティア活動とを混同し やすいこと、職業人に社会的貢献という自己の役割認 識を強化しやすいこと、職業的アイデンティティを強 化しやすく、また、仕事とボランティア活動との比較 を通して職業的アイデンティティの巾を広げ柔軟さを 得やすいこと、と考察した。