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平成26年度社会福祉学研究科博士論文・修士論文要旨

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Academic year: 2021

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 本研究においては、19世紀後半、英国の子どもの ための博愛慈善団体ドクター・バーナードホームが、

1880年代後半から1890年代前半にかけて経験した、虐 待の疑いで施設入所した児童の施設における、監護権 をめぐる裁判闘争の経過を、児童養護実践史の観点か ら一次史料を用いながら歴史的研究を行った。そして、

一連の裁判がきっかけとなり成立することとなった 1891年児童監護法について言及し、各条項の内容を明 らかにするとともに、英国初の総合的な児童法である 1908年児童法との関連についても補足した。

 序章で本研究の対象・目的・方法について触れた後、

第1章においては、バーナードホームにおける児童養 護実践の全体像を一次史料から明らかにした。主に第 1章では、バーナードホームの年次報告書の内容から、

その施設実践内容等について言及した。第2章では本 研究で対象とする裁判事例についての考察を行い、各 裁判事例が背景として有していた子どもの親権の問題 やキリスト教の宗派間の対立問題にも触れた。第3章 および第4章では上記の裁判と法制度の確立に関して、

1891年児童監護法と1908年児童法の関連条項につい て考察を行い、終章において本研究の結論を述べた。

 バーナードホームは1880年代後半から1890年代前 半にかけて、院児の返還を求める3人の親からの人身 保護礼状を施設創設者バーナードが受け、それを拒否 したことで裁判へと発展した。3つの裁判事例(マー サ・タイケース/ジョン・ロディケース/ハリー・ゴ セージケース)はいずれも、児童虐待の疑いがある母 が、子の返還を求めたものであった。再び母親からの 虐待を被る恐れがある3人の院児の生活を守るために バーナードは子の返還を拒否したが、英国のコモンロ ー(慣習法)の伝統において、親権の強さが際立って いた当時の法制度の下で、バーナードは、裁判により、

院児を虐待の疑いにある親に返還しなければならない という命令を裁判所から受けた。バーナードは、院児 が過ごした家庭環境の劣悪さや虐待の危険性から、子 の返還に応じない構えを見せた。しかし、結果として 裁判所は、子どもの監護権は親権者である母親にあ り、裁判所は子どもの監護権に関して、子の返還を求 める実親に対して返還を拒否する命令を下すことはで

きないという判決が下されバーナードは敗訴となった

(1893年まで上告は継続)。

 バーナードが3つの裁判に敗訴してゆく中で、彼の 支援者は、裁判の中で問題となった、博愛慈善団体が 運営する子どもの施設における監護権が法的に認めら れていない点、親権を拒否できる法的権限が裁判所に はないという点を憂慮し、法制化の動きに乗り出した。

これが児童監護法案(custody of children bill)である。

しかし、児童監護法案は、子どもの親権における親の 権力の強さが慣習法の伝統の中にあり、時期尚早と見 なされ、いったん廃案となってしまった。

 その後、バーナードホーム理事で、貴族院大法官の ロバート・アンダーソン(Robert Anderson)が「議会 制定法による道徳性」(「Morality by Act of Parliament」)

と題する論説を公にした。この中でアンダーソンは、

議会制定法が、法律の矛盾や問題点を刷新してゆくこ との重要性を述べた。この論説の中でアンダーソンは ゴセージケースをはじめとする、矛盾を抱えた法の問 題を解消していくために、新たな議会制定法の必要性 を述べた。こうして施設における子どもの監護権に関 し裁判所が一定の命令を下す権限を認めた1891年児 童監護法(Custody of Children Act 1891)が制定さ れることとなった。同法はわずか6条からなる小さな 法律ではあったが、それまで声を上げることができな かった博愛慈善施設における子どもの監護権が法的に 認められることとなった。これはバーナードホームに おける裁判闘争の経験と実践が導いた成果であり、児 童養護実践史の歩みの中で子どもの生活問題が確認さ れ、実際に変革のための行動が起こり、変化が生まれ ていくという一連の流れを確認することができる。バ ーナードホームの実践は、このような法制度の変革を 生み出し、その実践からは、生活権や教育権の保証と いう、「子どもの権利擁護」の視点を読み取ることが できるのではないかと本研究では考える。

- 71 - 岩手県立大学社会福祉学部紀要 第17巻(2015.3)

ドクター・バーナードホームの児童養護実践と英国1891年児童監護法の成立

―1880年代後半の裁判事例を中心として―

高松  誠

平成26年度社会福祉学研究科博士論文・修士論文要旨

博士論文

参照

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