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光学活性チエナミシンの合成

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(1)

光学活性チエナミシンの合成

著者 本多 利雄

雑誌名 星薬科大学紀要

号 28

ページ 9‑19

発行年 1986

URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000059/

(2)

Pr㏄. Hoshi Pharm. Nα28,1986

光学活性チエナマイシンの合成

本  多 利  雄

星薬科大学・医薬品化学研究所 有機合成化学研究室

Synthesis of Thienamycin in an Optically Active Form

TOsHlo HoNDA

1ηsオ鋤τθ6ゾMθ硫碗α1C加〃25s的,πos万σηψθγs吻

はじめに

 Thienamycin(1)1)は1976年Merck研究陣に

ょり,放線菌の一種であるS『γ幼オ0物 εεSτα斑砂α

の培養炉液から単離精製されたβ一1actam系抗生 物質であり,グラム陽性菌,グラム陰性菌および 緑膿菌に対して高い抗菌活性を示し,さらにβ一 1actamase阻害作用をも有している.構造上の特 徴としては従来のpenicillil1系あるいはcephalo・

sporin系化合物と異なり1一位に炭素原子を有して

どが挙げられる.Thienamycil1の単離後,同様 な特徴を有する化合物が続々と単離され,それら もやはり高い抗菌活性を示すことが報告されてい るが,現在のところthienamycin以上のものは 出ていない.以上のような構造上の特徴を有する 化合物をcarbapenemと総称する. Thienalnycin

.耳ユ、_

HO

1〜

CO 2 H

s〈>NH2

いること,さらに従来1一位に存在していた硫黄 原子は環外に存在していること,また従来のアミ ノ基に代わってアルキル基(hydroxyethyl基)を 6一位の側鎖として有していること,および5,6一 位の立体化学がtransの関係を有していることな

c8rbapenem

はその高い抗菌活性故,第四世代の抗生物質とし て期待される化合物であるが,天然界よりの産出 量が極めて微量であるため,医薬品として供する には合成に頼らざるを得ないということも衆知の 事実である.また,その合成においては抗菌活性 発現に重要な役割を果たす5,6,および8位の立体 化学を制御し,かつ望むべき一方の立体異性体を 選択的に作り出さなくてはならないという問題点 がある.さらに従来のpenicillin系と比較して高 い歪みを有する化合物であるため,bicyclo系を

どのように構築するかという点も合成化学上重要

本研究の一部は昭和59年度星薬科大学大谷研究助成の対象となったものである(紀要委員会).

(3)

Py㏄. Hoshi Pharm. No.28,1986

な問題点である.Thiena皿ycinの合成に関して は,これ迄膨大な論文が報告されているが,ここ ではその光学活性体の合成についてのみ紹介する こととする.

 (1) 糖よりの変換

 D・Glucoseは最も入手容易な光学活性源の一つ

であり,かつ4個の不斉炭素(正確には5個と言う べきであろうがanomeric positionはアルデヒド と等価であり,ここでは不斉炭素と数えないこと とする)を有している.最初にD・・glucoseを利用し thienamycinへの変換を行ったのはDurette2)で

ある.すなわちD−91ucoseより数行程を経て得ら

D−Clucose −一一一」_ Hむ一一一 一_

O白13

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『NH2   0

5〜

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を合成した.次いでpropanedithiolにてacetal 化し4へと変換後,還元,加水分解,さらに得ら れたβ一アミノ酸(5)を」ゾ亙dicyclohexy1 carbodiimide(DCC)にてアセトニトリル中,閉 環反応に付しβ・1actam環を合成している.得ら れた化合物6はthienamycin合成の重要な中間

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  rr〈c・(・c…1・

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 むけ

撒㌃一_・

6〜

体であり,既にMerck groupによりその変換が 報告されている.第二のD・91ucoseの利用法はカ ルボソ酸単位の導入にWittig反応を用いている 点が特徴である3).すなわちD−glucoseより化合

物7を合成し,酸化後,得られるケトソ体に methoxymethyldiphenylphosphine oxideのリチ ウム塩を反応させenol ether(8)へと導いた.

化合物8をpyridinium chlorochromate(PCC)

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6

10〜

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1 1

12〜

にて酸化を行い対応するester(9)とした後,さ らに酸化反応に付すとlactone体(10)が得られ る,加水素分解にて窒素の保護基を除去したのち,

lactone環を開環,次いでester化反応に付した のち,得られたβ一アミノ酸(11)をDCCにて閉

環を行うことにより目的とするazetidinone(12)

の合成を達成している.全く同様な考え方により D−91ucoseを利用したthienamycinの第三の合 成法4)も報告されているが,そのschemeをあげ

るのみにする.

(4)

Pr㏄. Hoshi Pharm. No.28」986

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            (CH3S)zCH OCH3

 糖を原料とする合成はこの他にもD・glUCOS−

amine5)を用いる方法, D−mannito16)を用いる方 法も報告されているがここでは文献をあげるにと

どめる.

 (1) アミノ酸を原料とする合成

 糖と並び広く使用される光学活性源はアミノ酸 である.Thienamycin合成に関しても種々のア

ミノ酸が原料として使用されており,以下その例 を挙げることとする.まずMerck研究陣による 報告7)においてはアスパラギン酸(13)が原料と して使用されている.アスパラギン酸(13)をdi・

benzyl esterとし,さらに∧時rimethylsily1化 後,生成する14をGrignard試薬と反応させβ一 lactam体(15)を合成し,次いでNaBH、により

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…9 R.S〜NHCO2pNB

(5)

Pr㏄. Hoshi Pharm. No、28,1986

還元を行いalcoho1体(16)へ変換している.こ れをmesylate(17)を経てiodide(18)へ導いた 後,窒素をsilyl化し化合物19とし, C−1単位と して2・1ithio−2−(trimethylsily1)・1,3−dithianeを反

応させることにより化合物20を合成した.化合物

(20)とacetaldehydeとのaldo1縮合においては 側鎖のhydroxyethyl基が直接導入され,化合物 21を与えるが8位の立体化学を制御することは困 難である.一方20にN−acetylimidazoleを反応さ せacety1基を導入後, K−Selectrideで還元を行 うことにより望む方の立体化学を有する化合物

(23)が選択的に生成する.化合物22は,また21の 酸化反応によっても容易に合成されることが判明 しており,ここに側頭部の立体選択的導入反応が 確立された.化合物(23)は対応するカルボン酸

(24)へと変換後,imidazolide(25)とし正宗法を 利用してC−2単位の延長を行いβ一ketoester(26)

を合成した.26は脱シリル化,ジアゾ交換反応,

次いで分子内carbenoid insertion反応に付すこ とにより双環性化合物(29)へと導いている.最

後にcysteaminyl基の導入を行い30とし,脱保 護(一般にcarbapenem系化合物は高い歪みを有 する環構造のため化学的に不安定であり,bicyclO 環を構築後は中性条件下に反応を行わなけれぽな らない.それ故保護基としては一般にかnitro・

benzyl(PNB), o・nitrobenzyl(ONB),あるいは allyl基等の中性条件下に除去可能な保護基が使 用される)を行ってthienamycinの合成が達成 された.本合成法は(+)−thienamycinの最も秀 れた合成法と考えられ,使用されている反応,保 護基等β一lactam系抗生物質合成においての重要 な問題点を完壁なまでに解決している.それ故前 述した合成法および後述する合成法も概してこの Merck法における中間体合成に留まっているに

すぎない.

 アミノ酸を用いる光学活性体の別途合成法とし ては三共groupによるL−threonine8)およびD−

allothreonineg)よりの変換が挙げられる.すなわ ちL・threonine(31)を立体保持でプロム体(32)

へ変換し,さらにamide(33)へと導いた後,塩

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  C◎OH

L一了hreonine

  翌

HO  Br       HO  Br

H_一一一杜ご叫一一

32〜 33〜

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ノ ・・・・…、・3

 0    、DF,1P

D〜¶P:2σq−Dimethoxyphenyl

34〜

基にて閉環を行いβ・lactam(34)を光学活性体と して得る方法である.本法においては閉環の際に 臭素原子の付け根の炭素の立体が保持されている のが特徴である.すなわち中間体としてepoxide が生成し,その分子内閉環反応の際に再びinver・

sionが起っている結果である.またプロム体(35)

をNaOHにてepoxide(36)へ導き,次いで phenylthiomethyl chlorideと処理後,酸化する ことによりsulfone(37)を合成し,前法と同様に 閉環を行えばβ一lactam体(38)が3,4−trans体 として収率良く合成出来る.化合物34および38は,

それぞれ数行程を経てMerck研究陣の中間体へ

鷲,_忠。一ガ

35〜 36〜 37〜

rs°2c6H51)BuLi

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38〜

Rsp−OCH3C6H題

(6)

Pr㏄. Hoshi Phatm. No.28,1986

O−Anothreonine 旦9  x=NH2 40 X=Br

41〜

誘導されているが,これらの合成法においては hydroxyethyl基の立体化学が見事に制御されて いる.同様にD−allothreolline(39)をプロム体

(40)へ変換後,アミド(40)のDBU閉環を行え ばβ・1actam体(42)が95%という高収率で生成 する.この反応においては水酸基はアセチル化に より保護され,epoxideの生成を防いでおり,閉

     R 臨!

φ.一+÷%

   OH O−Glc

42〜 43〜

環の機構はSN2型で進行していると考えること

が出来る.

 (3)Terpeneよりの変換

 糖およびアミノ酸を原料とするthienamycin合 成が多数報告されているのに対し,terpeneを原 料に用いた例は現在のところ一例が報告されてい るにすぎない1°).すなわちloganine(44)より容

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     NHAc

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     CO2H   NH2

      OH

47〜

易に変換される化合物(45)のenol ether部の 酸化開裂,次いで対応するオキシム(46)の Beckmann転位にょりアミノ基を導入しcyclo−

pentanone体(47)を合成している.これを Baeyer−Villiger反応および脱保護に付すことに

よりlactone体(48)が得られる.化合物(48)

はMerck研究陣により既にthienamycinへと

変換されており,その中間体合成に成功したこと になる.

48〜

 (4)ペニシリンよりの変換

 6−Aminopenicillanic acid(6・APA)は入手容易

な光学活性源であり,β一lactam系抗生物質の合成

においては最も有用な原料と考えられる.事実

cephalosporin系抗生物や他の多くの半合成抗生

物質は6−APAより誘導されている.6−APAは

アミノ酸(vallineとcysteine)より生合成され

るため,ペニシリンよりの変換として特に分類す

るのは少々見当違いかも知れないが,前述したご

とくこの分野では特殊な位置を占める化合物なの

(7)

Pr㏄. Hoshi Pharm. No.28,1986

49〜

 X ・古ゴ

O     

    CO2Bz

X=C6H5Se

   憩

で一項をもうけた.すなわち6・APA benzyl ester を亜硝酸ソーダにてdiazo化し得られるdiazo 体(49)をdiphenyldiselenideと処理すると化合 物50が生成する11).これをMeMgBrの存在下に acetaldehydeと反応させるとhydroxyethy1基 の導入された化合物51および52が78%の収率で約

  OH 悟顯}

   ° さ・2B・

51〜

ゴ.

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凸 苫

C 十

52〜

CO2Bz

30:1の生成比で得られるということが判明した.

Phenylseleneny1基の代わりに臭素あるいは phenylthio基を使用しても同様な反応は進行する が立体異性体の生成比はphenylselenenyl基と比 較して良くない.主生成物51は次いで残りのPhSe 基を還元的に除去し,化合物53へと変換後,水酸

51〜

 O   >02R

55〜

     

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54〜

   

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ゴ︐

53〜

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CO2R

56〜

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  SO2CH3

57〜

R= Bz

基の保護および酸化反応を行いsulfone体(54)

を合成している.化合物(54)はDBNにて望む べき立体化学を有する55へ異性化後,Melおよび KOtBuにて開環を行い56とし,最後にKMnO、

または03にて酸化を行いazetidinone(57)を 合成した.これよりthienamycinへの変換も同 groupにより達成されている.原料として使用し た6−APAは6位にamino基を有している為,

そのhydroxyethyl基への立体選択的変換反応に

細心の注意が払われており興味ある合成法といえ よう.他にも6−APAよりthienamycinへの変 換は数例報告されているがここでは紙面の関係上 割愛させて頂くことにする.

 (5)不斉合成

 これまで述べてきた合成例は光学活性源を巧み に最終物質に組み込む方法,いわゆる誘導法であ る.Thienamycin合成における不斉合成も誘導 法と同様,数多くの報告がなされているが,主に

 む 

儂耳〕〔ご一

Thienamycln  ↓

…°°C〔C°°CH・

    NHZ

58〜

(8)

Pr㏄. Hoshi Pharm. No,28,1986

hydroxyethy1基を有するazetidinoneの合成で あり,Merck groupの全合成の初期の中間体合 成といえよう.その中でも大野らによる酵素を利 用した合成法12)は注目するに値する合成法であ る.すなわち対象化合物の対称性に着目し,対応 するmeso体を酵素を使用して特異的に光学活性 体を得ようとする考え方である.Thienamycin における対称性をさがした場合,化合物57へと到 達する.57はmeso体であり,どちらか一方の esterを特異的に切断することが出来れぽ一方の 光学異性体のみが純粋に得られる筈である.化合 物(59)をpig liver esteraseにて加水分解を行 い,得られるestercarboxylic acid(60)を閉環 反応に付すとβ一lactam(61)が好収率で得られる.

一 方amino基をbenzyl chloroformateにて保 護したのち,同様な反応を行えぽ対掌体(64)が 得られる.化合物(64)はthienamycinと同一

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61〜

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の立体配置を有しており,thienamycin合成の中 間体として重要な化合物である.この合成法は前 述したごとく,分子の対称性に着目した合成であ る.また酵母菌を不斉合成に利用した例としては 次の合成法がある13).すなわちethyl acetoacetate のパン酵母(Baker s yeast)による不斉還元体で あるhydroxy−acid(65)をimine(66)と反応さ

HO

        Ph

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     N EtO2C

65〜

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67〜

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せるとazetidinone(67)がchelation controlに より立体選択的に得られる.この二級水酸基を光 延法によって反転後,官能基の保護および酸化反 応によりカルボン酸(68)とし,最後に四酢酸鉛 にて既知のazetidinone(69)へと導く方法であ る.また63のantipodeであるhydroxy−acid(70)

を原料に使用して同様なazetidinoneを得る方法

も報告されておりi4),以下のschemeにその合成

法を示す.

 さらに同様にhydroxy−acidを原料とし,chela・

tion controlにより立体化学を制御したthiena−

mycinの中間体合成15)もいくつか報告されてお り,それらについては文献を参照されたい.

 Azetidinone環の合成はimineとketeneによ

(9)

Pr㏄. Hoshi Pharm. No.28,1986

りし、。、CH3>_

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HO SiMe

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(+)一

る〔2+2〕環化付加反応が一般に多く用いられて いるがimine部あるいはketene部に活性源を存 在させ不斉誘起させる方法もそれぞれ幾つか報告

されているが,ここでは省略することとする.

 我々はthienamycinの5,6,および8位の立体

化学を制御する反応としてnitroneと01e丘nの 1,3・dipdar cycloaddition反応が有用であること をラセミ体の合成で確認している16).すなわち diethyl acetonedicarboxylate(71)より数行程で 得られるaldehyde(72)をbenzylhydroxylamine

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      召 Ph

(10)

Pt㏄. Ho8hi Pham. No.28,1986

と反応させ対応するnitrone(73)とし,これを benzyl crotonateと処理したところ望むべき立体 化学を有するisoxazolidine体(74)が高い選択性 を有して生成することが判明した.このisoxazo・

lidine体はthienamycinの5,6,および8位に対 応する相対配置を満足しており,還元的開環反応,

次いでDCCによる再閉環反応によりazetidinone

(75)へと変換することが可能である,化合物(75)

はさらに脱ケタール化,ジアゾ交換反応および carbene insertion反応により目的とするbicyclic compound(76)へと導いた.以上のようにnitrone

とcrotonateの1,3−dipolar cycloadditionは立 体選択的に進行することが判明したので次に本反 応に不斉誘起反応を導入した17).まずaldehyde

(72)と光学活性アミンより誘導したhydroxy1・

amine(77)を反応させ光学活性なnitrone(78)

を合成し,ラセミ体合成の場合と同様にbenzyl

      o⑩

      呼

72〜

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HO

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80〜 81〜

(11)

P了㏄.Hoshi Phaτm. No.28,1986

crotonateと1,3−dipolar cycloadditionに付した ところ目的とするisoxazolidineが得られた.本 化合物を先と同様に処理してazetidinone(79)へ 誘導し,N,0−bissilyl化後ester交換反応を行っ て対応するPNB ester(80)へと導いた.さらに 脱シリル化および脱ケタール化を順次行うことに

より目的物であるβ・keto ester(81)を合成した.

本化合物の族光度は(L)一(一)一α一phenylethyl・

hydroxylamineを活性源として使用した場合,天 然型である(+)・thienamycinの合成中間体と一 致し,またその値も文献値とよく一致することか ら,1,3・dipolar cycloadditionのenantioselec−

tivityは非常に高いものであると考えられる.一 方(R)一(+)・α・phenylethylhydroxyl amineを原 料に用い,同様な反応を行ったところ(一)−thiena・

mycin合成中間体であるβ・keto ester(81の

antipode)が得られる.

 おわり【こ18)

 Carbapenem系抗生物質は一般に従来のβ一 lactam系抗生物質より高い抗菌活性を示すが,

また菌からの産出量も極めて微量であり,その構 造の不安定さとあいまって,我々合成に携わる者 の格好の対象化合物となっている.さらに天然物 として単離されるこれら同族体は一般に腎臓にお けるdehydropeptidaseという酵素で容易に分解 されてしまうため医薬品としての使用は困難とさ れており,その安定化を目指して様々な化学修飾 が試みられている.その一例として最近ではMK O787(単にMK 787と呼ぶ場合もある)とよばれ る1のホルムイミド誘導体(82)とdihydro−

peptidase酵素の阻害剤であるcilastatine(83)

の合剤による開発が行われており,またRS−533

OHH H

     S〜NHR    CO2H

⊥R=H 磐 R=CH3NH

㌻㍗㌔

   CO・H

83〜

鞘誕)㍗

   ご

(84)とよばれる誘導体も近年合成され,酵素阻害 剤なしでの開発も検討されている、さらに同様な

目的で1・β・methylthienamycinの合成も活発に 行われているが,夢の抗菌剤の開発には人為的な 操作,換言すれぽ, 人間のdesignによる化合物 の開発 が必須であり,その基礎知識を天然物が 供給してくれるものと考えることが出来る.合成 化学的に医薬品をとらえた場合,化学修飾等によ

りその活性(β・1actamで言えば抗菌活性)を高め ることは最も重要なことではあるが,それ以上に その化合物の体内動態(吸収,組織移行性,代謝 等)に影響をおよぼす工夫が必要とされてくるで

あろう.

 紙面の関係上thienamycinの合成,それも光 学活性体合成のいくつかの例を紹介したにすぎな いが,β一1actamの化学は生化学的にはもちろん のこと有機合成の面からも極めて興味深い分野で あり,ひとつひとつの反応がそれぞれ,重要な意 味を有している.今後の化学の発展にともなう

夢の抗菌剤の開発 を強く期待している.

辞謝

 Thienamycin合成の研究に対して昭和59年度大谷研 究助成金を賜りましたことを厚く御礼申し上げます.ま たこの研究に対し御指導,御鞭燵を賜りました亀谷哲治 学長および有機合成化学研究室の諸氏に厚く感謝致しま

す.

(12)

Pπ㏄.Hoshi Pham. No.28,1986

1

︶︶︶︶︶︶ 2345︵り7 ︶

8

︶︶ 90  1

11)

12)

13)

14)

15)

16)

17)

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参照

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